説明

インダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路

【課題】実装面積が小さいサージ吸収保護回路の提供。
【解決手段】インダクタ負荷Rは導線101に接続され、他端は導線102により電界効果トランジスタFETのドレインDに接続され、電界効果トランジスタに対して双方向ツェナーダイオードZDと第一抵抗RGSを導線104により並列に設け、電界効果トランジスタのソースSより導線103をアースし、第一抵抗RGSの他端側は導線105により前記導線103に接続し、双方向ツェナーダイオードと第一抵抗RGS間の導線104に電界効果トランジスタのゲートGに接続する導線106を分岐させ、この導線106の他端に第二抵抗Rを設けたインダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子への電源供給回路やDC−DCコンバータなどの電源回路、もしくはソレノイドに電気信号を伝えるインダクタ負荷ドライブ回路において、インダクタ(コイル)の負荷を駆動した場合に発生するサージのクランプ電圧を抑制する保護回路に関するものである。本発明は、特に、Field effect transistor(電界効果トランジスタ:以下、「FET」と記載する。PチャンネルMOSFET、NチャンネルMOSFETも含む。)と双方向ツェナーダイオードを用い、ドライブ・トランジスターにサージエネルギーを吸収させるインダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路に関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタ負荷駆動offに際し、逆起電力吸収素子としてサージキラーが設けられている。かかる逆起電力吸収素子としてバリスタやCR、フライホイールダイオードまたはパワー・ツェナーダイオードなどが使用されている。
【0003】
例えば、図2に示すように、インダクタを持つ負荷Rを駆動する第1のスイッチング素子(バイポーラトランジスタまたは、MOSトランジスタ)と、駆動回路と、スイッチング素子の出力端とグランド間に設けられた分圧抵抗と、分圧抵抗の分圧点に入力端が接続される第2のスイッチング素子と、第2のスイッチング素子と第1のスイッチング素子の入力端間に接続される定電圧素子(ツェナーダイオード)を持つサージ吸収回路が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図2の回路において、ドライブ回路1が通電信号(すなわHIレベル)を出すと抵抗R3を通してTR1(FET)はONする。このためTR1のドレイン電圧E1はLOとなる。次にドライブ回路1が非通電信号(すなわちLOレベル)を出すとTR1はOFFしようとする。ところがRLはインダクタを持っているので逆起電圧によりサージ電圧が発生し電圧E1は上昇する。この時、抵抗R1と抵抗R2の分圧点の電圧も上昇する。TR1がONを開始する電圧をVTH,ZDの発生する電圧をVZ,TR2のベース−エミッタ間電圧をVBEとする。
【0005】
分圧点の電圧がVTH+VZ+VBEを越えたとき、TR1はONを始める。そのためRLにながれ電流が増加するので電圧E1は低下する。すると、抵抗R1と抵抗R2の分圧点の電圧も低下しVTH+VZ+VBEを下回りTR1はOFF方向になる。以上を繰り返し電圧E1は一定に保たれる。
【0006】
また、図3に示す電解効果トランジスタQを用いた駆動回路において、電解効果トランジスタQのゲートGとソースSとの間にツェナーダイオードZD11、ZD12〜ZDn1、ZDn2を複数並列に設け、nチャネル電解効果トランジスタのソースと接地側との間またはpチャネル電界効果トランジスタのソースと電源側との間にインダクタンス負荷(電動パワーステアリング装置の補助トルク電動機の電機子コイル)を接続し、このインダクタンス負荷に流れる電流を前記電解効果トランジスタQで制御する駆動回路も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
更に、図4に示すように、インダクタンス性の負荷(例えばモータ)11と、負荷11への通電状態を制御するNチャンネルMOSFET(トランジスタ)13と、MOSFET13を駆動する駆動回路15とを備えている保護回路10であって、負荷11とMOSFET13とは、MOSFET13の方が電源電流の通流方向上流側となるように、通電路17に直列に介装され、通電路17は電源ライン19とグランドとの間に介装され、駆動回路15とMOSFET13のゲートとの間には、抵抗21が介装され、通電路17には、MOSFET13と並列になるようにダイオード23が接続され、ダイオード23は、その順方向が電源ライン19から通電路17に供給される電源電流の通流方向と逆向きになるように接続されている保護回路が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
この保護回路10は、ダイオード31とツェナーダイオード33とを備えている。ダイオード31とツェナーダイオード33とは、負荷11と並列になるように通電路17に接続された導電路35に直列に介装されている。ダイオード31は、その順方向が前記電源電流の通流方向と逆方向になるように接続されており、ツェナーダイオード33はその順方向が前記電源電流の通流方向が一致するように接続されている。ツェナーダイオード33の逆降伏電圧は、電源ライン19によって印加される電圧よりも所定レベルだけ高い値に設定される。このような保護回路10の構成により、回路構造(通電路17)が電源ライン19に適切な向きで接続されている場合においては、負荷11の電源オフ時にツェナーダイオード33の逆降伏電圧を上回るサージ電圧が負荷11によって発生された場合には、ツェナーダイオード33およびダイオード31を介して負荷11の両端子間が導通状態となり、MOSFET13にサージ電流が流れるのを防止することができる。
【0009】
また、回路構造が電源ライン19に正負逆向きに誤って接続された場合には、ツェナーダイオード33によって、電源ライン19からの逆向きの電源電流がダイオード31を介してMOSFET13に流れるのを阻止することができ、MOSFET13に過電流が流れるのを防止することができる。本発明が適用される回路構造における負荷の電源オフ時のサージ電圧対策を図りつつ、回路構造が電源に正負逆向きに誤って接続された場合に、トランジスタに過電流が流れるのを防止することができる保護回路を提供する。
【0010】
更にまた、図5に示すように、電源から与えられる電源電流が通流される通電路に介装されたインダクタンス性の負荷11と、前記通電路に介装され、前記電源電流の前記負荷への通電状態を制御するトランジスタ13とを備える回路構造に対して設けられる保護回路10であって、前記通電路における前記トランジスタの前記電源電流の通流方向上流側の部分とグランドとを接続する導電路に、グランド側から前記通電路側に向けて順方向になるように介装されたツェナーダイオード31と、前記導電路における前記ツェナーダイオード31とグランドとの間の部分に接続され、前記ツェナーダイオードがオンするのに伴ってオンし、前記トランジスタに対して所定電圧を出力して前記トランジスタをオンさせる駆動回路15とを備える保護回路10も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0011】
この保護回路10では、負荷11の電源オフによってサージ電圧が発生した場合には、ツェナーダイオード31がonし、これに伴ってチャージポンプ回路15がonし、そのチャージポンプ回路15からの所定電圧の出力電圧によってMOSFET13がonされる。これにより、サージ電圧発生時にMOSFET13にかかる電圧を抑制することができ、MOSFET13の大型化を抑制することができる。
【0012】
これら特許文献に示されるように、ツェナーダイオードを利用する保護回路においては、(1)入力電圧Vinが大きく変化しないものを使用する、又は、(2)入力電圧Vinが大きく変化してもツェナーダイオードに加わる電圧変化を小さくする保護回路を挿入する必要がある。
【0013】
また、コイルOFF時に発生するサージ電圧を吸収する逆起電力吸収素子としてバリスタやCRは、コイルサージ吸収ユニット(例えば、富士電機テクニカ株式会社製SZ−Zシリーズ(商品名))は、電磁接触器、補助継電器のコイル端子に接続端子を共締めするだけで簡単に取り付けられる利点を有するが、ピーク電圧値にバラツキが多く、サージ電圧を低く抑制することが困難であり、さらに、インダクタ負荷をドライブする素子の最大電圧、許容損失等の選定に注意を払わなければならない。その他、バリスタ、CR、フライホイールダイオードまたはパワー・ツェナーダイオードによるサージ吸収素子はサージ電流・電圧とその消費電力を満足する定規格が必要で、外形寸法が大きく、値段も高価であった(例えば、非特許文献1参照。)。
【0014】
【特許文献1】特開平6−89972号公報
【特許文献2】特開2003−299345号公報
【特許文献3】特開2003−47287号公報
【特許文献4】特開2004−208469号公報
【非特許文献1】富士電機テクニカ(株)、“電磁開閉器用コイルサージ吸収ユニットSZ−Z形”、{online}、{平成19年10月26日検索}、インターネット<URL:http://www.fe-technica.co.jp/html/shohin/41/SZ-Z.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、低いサージ電流・電圧で使用できるインダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、インダクタ負荷(R)を駆動する電界効果トランジスタ(FET)のインダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路(100)において、前記インダクタ負荷(R)は導線(101)に接続され、他端は導線(102)により前記電界効果トランジスタ(FET)のドレイン(D)に接続され、前記電界効果トランジスタ(FET)に対して双方向ツェナーダイオード(ZD)と第一抵抗(RGS)を導線(104)により並列に設け、前記電界効果トランジスタ(FET)のソース(S)より導線(103)をアース(GND)し、前記第一抵抗(RGS)の他端側は導線(105)により前記導線(103)に接続し、前記双方向ツェナーダイオード(ZD)と第一抵抗(RGS)間の導線(104)に前記電界効果トランジスタ(FET)のゲート(
G)に接続する導線(106)を分岐させ、この導線(106)の他端に第二抵抗(R)を設けたことを特徴とする、インダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路(100)を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
インダクタ(L)on時には、電流(I)が実線で示される矢印aの方向に流れている。
【0018】
インダクタ(L)off時にIをピークとする電流(ILP)が流れようとする(矢印b参照)が、FETはoff状態なので電圧VDSが上昇する。
【0019】
電圧VDSがV+Vを越えたあたりから電流I(矢印c参照)が流れ始めるがゲート・ソース間電圧VGSが能動状態の閾値に達しないためFETはoffの状態のまま保たてられる。
【0020】
ゲート・ソース間電圧VDSがV+V+VGS(電圧VGSがFET能動状態の閾値)まで上昇すると、FETがonし、電流ILPが流れる。
【0021】
FETのD−G間に接続されている双方向ツェナーダイオードは、FETに対してNFB(ネガティブ・フィードバック)が掛けられた状態と考えられ、インダクタ(L)がエネルギーを放出している間のドレイン・ソース間電圧VDSは(V+V+VGS)でほぼ一定値(例えば30ボルト)となる。
【0022】
すなわち、双方向ツェナーダイオードに流れる電流Iは小電流のため小信号用のものが使用でき、インダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路のコストが低減でき、また、寸法も小さい。サージ電圧はVでほぼ決定され、バラツキが小さい故に選定が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1を用いて本発明をさらに詳細に説明する。図1はドライブ駆動するインダクタ負荷Rに発生するサージを吸収するインダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路の図である。
【0024】
図1にインダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路100において、このサージ吸収回路は、主としてインダクタL、第1スイッチの役目をなすMOSFET、サージキラーとしての双方向ツェナーダイオード(ZD)、インダクタ負荷(R)の抵抗の他に、ゲート・ソース間第一抵抗器(RGS)および第二抵抗器(R)を備える。
【0025】
このインダクタ負荷(R)を駆動する電界効果トランジスタ(FET)のインダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路(100)において、前記インダクタ負荷(R)は導線(101)に接続され、他端は導線(102)により前記電界効果トランジスタ(MOSFET)のドレイン(D)に接続され、前記電界効果トランジスタ(MOSFET)に対して双方向ツェナーダイオード(ZD)と第一抵抗(RGS)を導線(104)により並列に設け、前記電界効果トランジスタ(MOSFET)のソース(S)より導線(103)をアース(GND)し、前記第一抵抗(RGS)の他端側は導線(105)により前記導線(103)に接続し、前記双方向ツェナーダイオード(ZD)と第一抵抗(RGS)間の導線(104)に前記電界効果トランジスタ(MOSFET)のゲート(G)に接続する導線(106)を分岐させ、この導線(106)の他端に第二抵抗(R)が設けられている。第二抵抗(R)の導線先には図示されていないが駆動回路が結線される。
【0026】
電界効果トランジスタ(FET)としては、パワーMOSFETを用いる。
【0027】
双方向ツェナーダイオードは、第二スイッチ的役目をなすもので、逆起電圧吸収時においては僅かな電流しか流れないため、小信号のもので、そのツェナー電圧は、パワーMOSFETの許容電圧VDSより安全なレベルで低く且つ、インダクタ(コイル)駆動電圧よりも高いものを使用する。双方向ツェナーダイオードは双方のツェナーダイオードが同能力であっても、パワーMOSFETのドレイン側に接続されているツェナーダイオードが小信号のものであってもよい。この小信号ツェナーダイオードが必要な理由は、パワーMOSFETのD−S間をonさせるための信号が第二抵抗Rを介してG−S間に電圧VGSが印加され、パワーMOSFETのD−S間がonしたときにツェナーダイオードの順方向特性により第一抵抗RGSに流れている電流がドレインへ流出してしまい、VGS低下によりVDSが上昇してしまうのを防ぐためである。
【0028】
前記のようなインダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路100とすることにより、1)インダクタ(L)on時には、電流(I)が実線で示される矢印aの方向に流れている。2)インダクタ(L)off時にIをピークとする電流(ILP)が流れようとする(矢印b参照)が、FETはoff状態なので電圧VDSが上昇する。3)電圧VDSがV+Vを越えたあたりから電流I(矢印c参照)が流れ始めるがゲート・ソース間電圧VGSが能動状態の閾値に達しないためFETはoffの状態のまま保たてられる。4)ゲート・ソース間電圧VDSがV+V+VGS(電圧VGSがFET能動状態のしきい値)まで上昇すると、FETがonし、電流ILPが流れる。5)FETのD−G間に接続されている双方向ツェナーダイオードは、FETに対してNFBが掛けられた状態と考えられ、インダクタ(L)がエネルギーを放出している間のゲート・ソース間電圧VDSは(V+V+VGS)でほぼ一定値となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のインダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路100は、実装面積が小さく、通常負荷に並列に実装する逆起電力吸収素子が不要となる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】インダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路の図である。
【図2】サージ吸収回路の図である。(公知)
【図3】駆動回路の図である。(公知)
【図4】別態様のサージ吸収回路の図である。(公知)
【図5】別態様のサージ吸収回路の図である。(公知)
【符号の説明】
【0031】
100 インダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路 FET 電界効果トランジスタ L インダクタ(コイル) ZD 双方向ツェナーダイオード GND アース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタ負荷(R)を駆動する電界効果トランジスタ(FET)のインダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路(100)において、前記インダクタ負荷(R)は導線(101)に接続され、他端は導線(102)により前記電界効果トランジスタ(FET)のドレイン(D)に接続され、前記電界効果トランジスタ(FET)に対して双方向ツェナーダイオード(ZD)と第一抵抗(RGS)を導線(104)により並列に設け、前記電界効果トランジスタ(FET)のソース(S)より導線(103)をアース(GND)し、前記第一抵抗(RGS)の他端側は導線(105)により前記導線(103)に接続し、前記双方向ツェナーダイオード(ZD)と第一抵抗(RGS)間の導線(104)に前記電界効果トランジスタ(FET)のゲート(G)に接続する導線(106)を分岐させ、この導線(106)の他端に第二抵抗(R)を設けたことを特徴とする、インダクタ負荷ドライブ回路の逆起電力吸収回路(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−118620(P2009−118620A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288037(P2007−288037)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(391011102)株式会社岡本工作機械製作所 (161)
【Fターム(参考)】