説明

インプリント装置及び方法、並びに物品の製造方法

【課題】 使用コストの点で有利なインプリント装置を提供すること。
【解決手段】 基板上のインプリント領域への樹脂の塗布と、塗布された樹脂の型による成形とを含む処理を行うインプリント装置は、樹脂を吐出する複数の吐出口を含む吐出部を有し、前記インプリント領域に樹脂を塗布する塗布手段と、同一サイズの複数のインプリント領域に対する前記処理の間に、樹脂を吐出する前記複数の吐出口の範囲を切替えるように、前記塗布手段を制御する制御手段と、を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置及び方法、並びに物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、ナノスケールの微細パターンの転写を可能にする技術であり、磁気記憶媒体や半導体デバイスの量産向けナノリソグラフィ技術の1つとして実用化されつつある。このインプリント技術により、電子線描画装置等の装置を用いて微細パターンが形成された型を原版としてシリコンウエハやガラスプレート等の基板上に微細パターンが形成される。この微細パターンは、基板上にインプリント樹脂を塗布し、基板上の樹脂と型のパターンとを互いに押し付けた状態で、その樹脂を硬化させることによって形成される。
【0003】
現時点において実用化されているインプリント技術としては、熱サイクル法および光硬化法がある。熱サイクル法では、熱可塑性のインプリント樹脂をガラス転移温度以上の温度に加熱し、樹脂の流動性を高めた状態で樹脂と型とを互いに押し付ける。そして、冷却した後に樹脂から型を引き離すことによりパターンが形成される。また、光硬化法では、光(紫外線)硬化型のインプリント樹脂を使用し、樹脂と型とを互いに押し付けた状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、硬化した樹脂から型を引き離すことによりパターンが形成される。なお、本願においては、光硬化樹脂が光照射により硬化する前のインプリント材(モノマー等)も簡単のため樹脂と称することとする。熱サイクル法は、樹脂の温度制御のため転写に時間を要し、また、温度変化により樹脂の寸法が変化するという問題がある。光硬化法には、そのような問題が存在しないため、光硬化法がナノスケールの半導体デバイスの量産において有利である。
【0004】
これまで、樹脂の硬化方法や用途に応じて、多様なインプリント装置が実現されてきた。半導体デバイス等の量産を前提とした場合、インプリント樹脂の塗布とパターンの転写とを基板上のインプリント領域(ショット領域ともいう)ごとに繰り返す装置が有効である。このような装置が特許文献1に開示されている。このインプリント装置は、基板の位置決め、樹脂の塗布、樹脂の成形、光照射およびアライメント計測のための各ユニットを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4185941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示する従来のインプリント装置で用いる樹脂は、ディスペンサとも呼ばれている塗布機構により基板に塗布される。現在市販されているディスペンサは一列に複数の吐出口が配置されている。現行の露光装置の最大ショット領域(最大露光領域、例えば33x26mm)と同等の領域をインプリントする場合、ディスペンサは33mmまたは26mmにわたって複数の吐出口を配置したものが適している。
【0007】
ここで、33x26mmは最大露光領域であり、半導体デバイスの大きさは様々であることから、実際の露光領域は必ずしも最大となるとは限らない。インプリント装置の場合も同様であり、そのため、33mmまたは26mmにわたって樹脂を塗布できるディスペンサを備えたとしても、その全ての吐出口が常に使用されるとは限らないことになる。
【0008】
インプリント樹脂としての紫外線硬化樹脂は、型への樹脂の高速充填性の要求から、揮発性が高いものとなりうる。このため、吐出口内の樹脂は、使用していない期間が長く(例えば数時間に)なると、ほとんど揮発しまう。しかしながら、完全になくなるわけではなく、吐出口に残渣物の詰まり等が起こりうる。このため、長期間非使用だった吐出口を含む場合、均一な塗布ができないことがある。そこで、長期間非使用だった吐出口を再度使用する場合には、基板への塗布を行う前に、当該吐出口からの複数回の樹脂の吐出(「空うち」ともいう)が必要となる。
【0009】
そのため、インプリント装置は、所定時間(例えば1時間)非使用の吐出口がある場合、その吐出口から吐出されたインプリント樹脂を受けて装置内に拡散しないようにする容器(以下、ポット)を備えるのがよい。そして、そのポット内に複数回の「空うち」を自動的に行う機能を備えるとよい。なお、更に非使用時間が長い場合には、吐出口の洗浄や交換が必要となりうる。
【0010】
このように、インプリント領域(ショット領域)のサイズがさまざまである場合、「空うち」の必要性から、必ずしもインプリント樹脂を効率良く使用することができないという課題がある。これは、低コストなリソグラフイーに有望なインプリント技術としては、これまで認識されていなかった課題である。よって、本発明は、使用コストの点で有利なインプリント装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの側面は、基板上のインプリント領域への樹脂の塗布と、塗布された樹脂の型による成形とを含む処理を行うインプリント装置であって、
樹脂を吐出する複数の吐出口を含む吐出部を有し、前記インプリント領域に樹脂を塗布する塗布手段と、
同一サイズの複数のインプリント領域に対する前記処理の間に、樹脂を吐出する前記複数の吐出口の範囲を切替えるように、前記塗布手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするインプリント装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば、使用コストの点で有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1の概念を示す図
【図2】光硬化法を用いたインプリント方法の説明図
【図3】インプリント装置の構成を示す図
【図4】本発明の実施形態2の概念を示す図
【図5】吐出口内の樹脂残量の経時変化を示す図
【図6】インプリント装置の処理の流れを示す図
【図7】インプリント動作を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を例示的に説明する。本発明は、ナノスケールの微細パターンの形成に有用であるが、ナノスケールよりも大きいスケールのパターンの形成にも適用可能である。
【0015】
まず、図2を参照して、光インプリント法によるパターン転写の流れを説明する。図2(a)は、インプリント樹脂(以下、樹脂)13に型(モールド)11を押し付ける工程を示している。この樹脂としてモノマーを用いるのが現在では主流である。型11は、石英等の紫外線を透過する材料によって製作されており、下面(パターン面)15には、樹脂を成型するためのパターンが形成されたパターン領域16が設けられている。シリコンウエハ又はガラスウエハ等の基板12上に塗布した紫外線硬化樹脂13と型11とを互いに押し付けることにより、樹脂13が流動して、パターン領域16に形成されたパターンの凹部に樹脂が充填され、樹脂が成型される。
【0016】
図2(b)で示される工程では、樹脂13と型11とが互いに押し付けられている状態で、不図示の紫外線光源から型11を介して紫外線14を樹脂13に照射する。この結果、紫外線硬化樹脂13は、型11のパターンに対応する形状に硬化する。
【0017】
図2(c)で示される工程では、基板12上の樹脂13から型11を引き離す動作(離型)が行われる。基板12上の樹脂13は、型11のパターンに対応した形状に硬化したまま基板12上に留まるため、型11に形成されたパターンに対応した樹脂のパターンが基板12上に形成されることになる。形成(転写)された樹脂13のパターンは、従来の露光装置を用いたフォトリソグラフィー工程によって形成されたパターンと同等のものとなっている。このため、半導体デバイスの製造における以降の工程は、従来の露光装置を用いた場合と同様としうる。
【0018】
このような光インプリント法によれば、ステッパ等の半導体露光装置と同様に、基板上の各インプリント領域(ショット領域)に微細パターンを繰り返し転写(形成)することができる。
【0019】
型11には、型11と基板12上のインプリント領域との位置合わせ(アライメント)を行うために、型11の位置や姿勢の検出に使用するマーク(アライメントマーク)が形成されている。同様に、基板にもマーク(アライメントマーク)が形成されている。
【0020】
次に、図3を参照して、本実施形態1に係るインプリント装置の構成を説明する。31は、基板12を保持して少なくとも水平方向に移動可能であって、基板上の任意のインプリント領域を型11に対向する位置に移動可能な基板ステージである。基板ステージ31は、後述の吐出機構と基板との相対位置を変化させる駆動部(駆動手段)を構成する。基板12は、基板ステージ31に含まれる基板チャックによって保持される。32は、基板ステージ31に保持された基板12のインプリント領域に光硬化樹脂を塗布する塗布機構(ディスペンサ)である。ディスペンサは、例えば、Xaar社からXaar760の商品名で市販されている。Xaar760は、吐出口数764個、吐出口ピッチ70.6μmの仕様を有する。これを使用すれば、約53mm(0.0706*763=53.9mm)の長さにわたって一度に樹脂を塗布することができる。塗布機構32が装置内に固定されている場合、基板ステージ31の走査移動等の移動をともなって塗布機構32からインプリント領域への樹脂の塗布が行われる。基板ステージ31の1回の走査移動での樹脂の塗布領域(矩形領域)は、一辺はディスペンサの長さで決まり(上述のXaar760なら約53mm)、直交する他辺は基板ステージ31の走査移動距離で決まる。
【0021】
33は、型11を保持して高精度に上下動可能なインプリントヘッドである。インプリントヘッド33は、塗布機構32によって基板12上に塗布された樹脂13に型11を押し付けたり(押型)、引き離したり(離型)する。34は、型11と樹脂13とを互いに押し付けた状態で樹脂13を硬化させるために型11を介して光(典型的には紫外線)を樹脂13に照射する照射光学系(照明光学系)である。35は、型11と基板12との間の位置合わせを行うため、型11および基板12の少なくとも一方に形成されたマークの位置を検出する検出系である。37は、塗布機構32から吐出する樹脂の液滴の経路を模式的に示す。38は、型11および基板12の少なくとも一方に形成されたマークの位置をマーク検出系35が検出する光路を模式的に示している。39は、照射光学系34が樹脂13を照射する光路を模式的に示している。51は、上述した各部(31・32・33・34・35)の動作を制御する制御部(コントローラ)である。
【0022】
次に、図7を参照しながら本実施形態のインプリント装置におけるインプリント動作を例示的に説明する。図7(a)は、インプリントヘッド33によって保持された型11の直下に基板12の中心がある状態を示している。ここで、41は基板12の中心付近のインプリント領域、42は基板12の外周付近のインプリント領域を表す。図7(b)は、基板12のインプリント領域41に対して塗布機構32によって樹脂の塗布を開始する直前の状態を示している。このとき、基板12の中心付近が塗布機構32の直下周辺に位置している。図7(c)は、基板上のインプリント領域41に対して塗布機構32による樹脂の塗布が終了した直後の状態を示している。図7(b)に示す状態から図7(c)に示す状態に至る間、インプリント領域41の全域に樹脂43を塗布するために、塗布機構32による樹脂の吐出と基板ステージ31に保持された基板の移動とが並行してなされている。図7(d)は、インプリント直後(即ち、基板12のインプリント領域41に塗布された樹脂43と型11とを互いに押し付けた状態で樹脂を硬化させ、該樹脂から型11を引き離した直後)の状態を示している。当該インプリントによって、型11のパターン面に形成されているパターンに対応した樹脂のパターン45がインプリント領域41に形成される。
【0023】
つづいて、図1を参照して、本発明のナノインプリント装置および方法に係る実施形態1を構成する概念を説明する。図1において、デイスペンサ32の吐出部Dは、総数N個(Nは整数)の吐出口(ノズルともいう)を含む。各吐出口はピッチPで配置されている。吐出部Dの長手方向にわたって吐出部Dにより樹脂を塗布できる最大の長さLdは、Ld=(N−1)*Pにより表される(但し、塗布後の基板上での樹脂の広がりは考慮していない)。
【0024】
この長さLdは、吐出部Dの長手方向に沿ったN個の吐出口にわたるサイズであって、一度にインプリント可能な矩形領域の一辺の長さを決定することになる。図1は、インプリント領域の一辺Lが吐出部Dの吐出口の総数M個(Mは整数かつN>M)分に相当する場合を示している。そのため、図1(a)は、図中上部のM個の吐出口を使用し、非使用吐出口群と記載した下部のN−M個の吐出口は使用しない場合を示している。
【0025】
次に、図1(b)は、図1(a)のインプリント領域(ショット領域)の次のインプリント領域での吐出口の使用状態を示す。この場合は、図中下部のM個の吐出口を使用し、非使用吐出口群と記載した上部のN−M個の吐出口は使用しない。なお、使用吐出口群の切替えに応じてインプリント領域と吐出部Dとの相対位置関係を変更するように、制御部51は、駆動部(基板ステージの位置)を制御する。当該相対位置の変更は、使用する吐出口群とインプリント領域とが整合するようになされる。
【0026】
このようにして、図1(a)の状態と図1(b)の状態とをインプリント領域毎に交互に繰り返して使用することにより、連続的な非使用時間を短縮して吐出部Dの総数N個の吐出口を使用することができる。このため、本発明の課題の解決が可能となる。
【0027】
なお、使用する吐出口のセットを切替えるタイミングは、使用する樹脂の特性や、インプリント装置に要求されるスループット等により決定されうる。そして、当該切替えのタイミングは、例えば、インプリント領域毎、複数のインプリント領域毎、インプリント領域の行毎、インプリント領域の複数行毎、基板毎(基板の交換に応じたタイミング)等を選択肢として、その中から選択可能である。
【0028】
ここで、図5を参照して、非使用状態の吐出口内での樹脂残量の経時変化を説明する。図5の横軸は経過時間を示し、縦軸は吐出口に残っている樹脂の量を正規化して示す。最初の経過時間0の時に樹脂は量1だけ残っているとする。インプリント装置で使用する樹脂は揮発性が高いため、経過時間T1では1/5に、経過時間T2では1/10に、と樹脂の量は減少していく。このまま時間が経過して樹脂が全て無くなれば、まだしも良い。しかしながら、時間の経過とともに起こる樹脂の酸化や、フレアー光による樹脂の硬化等、何らかの原因により、非使用時間が長い吐出口を使用した樹脂の塗布が不全となり、本発明が解決しようとする課題が生じうる。
【0029】
次に、図6を参照して、所定の領域単位毎(例えば、インプリント領域毎)に使用する吐出口のセットを切替えて行うインプリント装置の処理の流れを説明する。この動作の流れは、例えば、コンピュータが実行可能なプログラムに従ってコンピュータを含む制御部51により制御されうる。
【0030】
最初に、ステップS601において、実行すべきジョブの情報をインプリント装置にロードする。当該ジョブの情報は、インプリント処理のレシピの情報を含み、当該レシピ情報は、使用する型の特定、使用する樹脂の特定、使用する樹脂の特性、要求されたスループット、および使用する吐出口群を切替えるタイミングの少なくとも1つに関する情報を含んでいる。ステップS602において、制御部51は、ジョブの情報に基づいて、吐出口群の切替えの態様やタイミングを含むインプリント装置の動作条件を設定する。図6に示した流れでは、上部のM個の吐出口と下部のM個の吐出口とをインプリント領域毎に切替えて使用する条件を設定した例を示した。各インプリント領域に対して使用する吐出口の範囲(吐出口群)を予め設定するようにしてもよい。
【0031】
次にステップS603において、インプリントヘッド33に型11をロードし、すなわちインプリントヘッド33の型チャック(モールドチャック)に型11(モールド)を保持させる。また、基板ステージ31に基板12をロードし、すなわち基板ステージ31の基板チャック(ウエハチャック)に基板12(ウエハ)を保持させる。
【0032】
つづいてステップS604において、型11と基板12とを位置合わせするためのグローバルアライメント計測をマーク検出系35を用いて行う。グローバルアライメント計測では、基板ステージ31に保持された基板上の選択された複数のインプリント領域(サンプル・インプリント領域)に形成されたアライメントマークの位置を検出する。そして、その検出結果に基づいて、各インプリント領域を型11に位置合わせするための基板ステージ31の位置を求める。
【0033】
そしてステップS605では、ステップS604での計測結果に基づいて基板ステージ31の動作を制御しつつ、図1(a)に示した吐出部Dの上部の吐出口のセット(上部吐出口群)を用いて、最初のインプリント領域に対し樹脂の塗布を行う。つづくステップS606において、そのインプリント領域に関して、インプリントヘッド33による樹脂に対する押型、型11により成形された樹脂の照射光学系34による硬化、および硬化した樹脂からのインプリントヘッド33による離型を行う。
【0034】
次にステップS607において、未処理のインプリント領域の有無を判断し、あればステップS609へ移行し、なければステップS608へ移行する。ステップS609では、インプリント領域を切替えるために、ステップS604での計測結果に基づいて基板ステージ31のステップ移動を行う。
【0035】
そしてステップS610では、基板ステージ31の動作を制御しつつ、図1(b)に示した吐出部Dの下部の吐出口のセット(下部吐出口群)を用いて、切替えられたインプリント領域に対し樹脂の塗布を行う。つづくステップS611において、そのインプリント領域に関して、ステップS606と同様に、樹脂に対する押型、成形された樹脂の硬化、および硬化した樹脂からの離型を行う。
【0036】
次にステップS612において、未処理のインプリント領域があるか否かの判断を行い、あればステップS613へ移行し、なければステップS608へ移行する。ステップS613では、インプリント領域を切替えるために、ステップS604での計測結果に基づいて基板ステージ31のステップ移動を行う。その後、未処理のインプリント領域がなくなるまで、ステップS605・S606とステップS610・S611とが交互に繰り返される。
【0037】
ステップS608では、未処理の基板の有無を判断し、あればステップS614に移行し、なければ処理を終了する。ステップS614では基板ステージ31への新たな基板のロードを行い、その後ステップS604に移行して処理を継続する。
【0038】
以上の流れの中で説明したように、吐出部Dにおいて使用する吐出口のセットをインプリント領域毎に切替えてインプリント動作を行うことにより、本発明の目的を達成することができる。
【0039】
なお、図6ではインプリント領域毎に吐出口の範囲を切替える場合を示した。しかし、切替えるタイミングは、使用する樹脂の特性およびインプリント装置に対するスループット要求の少なくとも一方に基づいて制御部51が決定または選択するようにしてもよい。また、インプリント装置のユーザに選択させるようにしてもよい。制御部51やユーザの選択肢としては、前に例示したものが挙げられる。
【0040】
以上のように、同一サイズの複数のインプリント領域に対する処理の間に、樹脂を吐出する複数の吐出口の範囲(吐出口群)を切替えるように、塗布機構を制御部が制御することにより、本発明の目的を達成することができる。また、樹脂を吐出する吐出口の範囲(吐出口群)を切替えることにより、樹脂の特性に応じて予め定められた時間内に各吐出口からインプリント領域に樹脂を吐出させるように、塗布機構を制御部が制御することにより、本発明の目的を達成することができる。ここで、当該予め定められた時間は、図5を参照して説明した樹脂残量の経時変化に基づいて定められたものとしうる。また、経過時間ごとに吐出口から樹脂を吐出させたときの塗布精度に基づいて定められたものとしうる。当該塗布精度は、吐出口からの樹脂の吐出量や吐出方向等、塗布に関する何らかの特性値の精度を用いうる。
【0041】
なお、インプリント装置は、上述のポットを備えて上述の「空うち」により吐出口の初期化を行う初期化部(初期化手段)を備えることが好ましい。その場合、制御部51は、予め定められた時間内に各吐出口から樹脂を吐出させることができなかった場合、吐出口の初期化を当該初期化部に行わせるようにしうる。
【0042】
[実施形態2]
図4を参照して、本発明のナノインプリント装置および方法に係る実施形態2を構成する概念を説明する。実施形態1では2種類の吐出口のセット(範囲)を切替えたが、本実施形態では3種類の吐出口のセットを切替えるようにしている。
【0043】
図4において、インプリント領域の図中縦の辺は、吐出部Dの長手方向の長さの半分より短い。この場合、実施形態1(図1)の構成では、なお非使用吐出口が存在してしまう。このため、ここでは3種類の吐出口のセットを切替える例を説明する。インプリント領域に樹脂を塗布するにあたり、図4(a)は図中上部の吐出口のみを使用する状態を示し、図4(b)は図中中央部の吐出口のみを使用する状態を示し、図4(c)は図中下部の吐出口のみを使用する状態を示している。
【0044】
この場合も、実施形態1と同様に、複数の吐出口範囲を切替えるタイミングは、使用する樹脂の特性や要求されるスループット等に基づき、先に例示したような選択肢の中から選択されうる。
【0045】
このようにして、本実施形態の構成によっても、本発明の目的を達成することができる。
【0046】
なお、インプリント装置は、その仕様における最大インプリント領域の一辺の長さに対応する吐出口の数(N)より多くの吐出口を有する吐出部を利用する場合がある。その場合でも、特定のN個の吐出口以外の吐出口を無効として利用しない場合には、当該特定のN個の吐出口を吐出部(有効な吐出部)として本発明を適用することができる。当該無効な吐出口は使用しないため、その管理状態は不問であるからである。このような場合にも、本発明の目的を達成することができる。
【0047】
また、切替えられる複数の吐出口の範囲(吐出口群)それぞれは、連続した複数の吐出口からなるものには限定されない。すなわち、型の凹部の密度(配置)等に依存して、飛び飛びの複数の吐出口を含むものであってもよい。
【0048】
[物品の製造方法の実施形態]
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、前述したインプリント装置(押印装置)を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板等)にパターンを転写(形成)するステップを含む。さらに、パターンを転写された前記基板をエッチングするステップを含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、エッチングステップの代わりに、パターンを転写された前記基板を加工する他の加工ステップを含みうる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内において様々な変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
半導体デバイスや、MEMS(Micro Electro−Mechanical Systems)、磁気記憶媒体などの物品を製造するための微細パターンの形成に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
32 塗布機構(塗布手段)
D 吐出部
51 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のインプリント領域への樹脂の塗布と、塗布された樹脂の型による成形とを含む処理を行うインプリント装置であって、
樹脂を吐出する複数の吐出口を含む吐出部を有し、前記インプリント領域に樹脂を塗布する塗布手段と、
同一サイズの複数のインプリント領域に対する前記処理の間に、樹脂を吐出する前記複数の吐出口の範囲を切替えるように、前記塗布手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
基板上のインプリント領域への樹脂の塗布と、塗布された樹脂の型による成形とを含む処理を行うインプリント装置であって、
樹脂を吐出する複数の吐出口を含む吐出部を有し、前記インプリント領域に樹脂を塗布する塗布手段と、
前記樹脂を吐出する前記複数の吐出口の範囲を切替えることにより、前記樹脂の特性に応じて予め定められた時間内に前記複数の吐出口それぞれからインプリント領域に樹脂を吐出させるように、前記塗布手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項3】
前記サイズは、前記複数の吐出口の長手方向に沿った前記複数の吐出口にわたるサイズである、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記吐出部と前記基板との相対位置を変化させる駆動手段を有し、
前記制御手段は、インプリント領域と前記吐出部との相対位置を前記切替えに応じて変更するように、前記駆動手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記制御手段は、レシピ情報に応じて前記切替えのタイミングを決定する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記レシピ情報に含まれる前記樹脂を特定する情報に応じて前記切替えのタイミングを決定する、ことを特徴とする請求項5に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記レシピ情報に含まれる前記型を特定する情報に応じて前記切替えのタイミングを決定する、ことを特徴とする請求項5に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記制御手段は、要求されたスループットの情報に応じて前記切替えのタイミングを決定する、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記制御手段は、各インプリント領域に対して前記範囲を予め設定する、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記制御手段は、基板の交換に応じて前記切替えを行うように前記塗布手段を制御する、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記複数の吐出口を初期化する初期化手段を有し、
前記制御手段は、前記複数の吐出口それぞれから前記時間内に樹脂を吐出させることができなかった場合、前記初期化手段に前記初期化を行わせる、
ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項12】
前記型により成形された樹脂に光を照射して当該樹脂を硬化させる照射手段を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のインプリント装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載のインプリント装置を用いて樹脂のパターンを基板に形成する工程と、
前記工程において前記パターンを形成された基板を加工する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項14】
樹脂を吐出する複数の吐出口から基板上のインプリント領域への樹脂の塗布と、塗布された樹脂の型による成形とを含む処理を行うインプリント方法であって、
同一サイズの複数のインプリント領域に対する前記処理の間に、樹脂を吐出する前記複数の吐出口の範囲を切替える、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項15】
樹脂を吐出する複数の吐出口から基板上のインプリント領域への樹脂の塗布と、塗布された樹脂の型による成形とを含む処理を行うインプリント方法であって、
前記樹脂を吐出する前記複数の吐出口の範囲を切替えることにより、前記樹脂の特性に応じて予め定められた時間内に前記複数の吐出口それぞれからインプリント領域に樹脂を吐出させる、
ことを特徴とするインプリント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−129802(P2011−129802A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288817(P2009−288817)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】