説明

ウェーハ洗浄装置

【課題】
洗浄液を効率的に処理してミストを発生させず、部品交換の必要のない低コストのウェーハ洗浄装置を提供すること。
【解決手段】
洗浄槽21と、回転テーブル22と、洗浄ノズル14と、回転テーブル22外周部近傍に設けられたリング23と、回転テーブル22の底部外周縁に設けられた複数の板状部材25とにより、洗浄液を飛散させず、ミストを吸引しながらウェーハの洗浄を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や電子部品が形成されたウェーハ等のワークを個々のチップに分割するダイシング装置に搭載されたダイシング後のワークを洗浄するウェーハ洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面に半導体装置や電子部品が多数形成されたウェーハは、ダイシング装置によって個々のチップに切断されて分割される。図1にダイシング装置の例を示す。ダイシング装置1は、互いに対向配置され、先端にブレード2とホイールカバー(不図示)が取付けられた高周波モータ内蔵型のスピンドル3、3と、ワークW表面を撮像する撮像手段4と、ワークWを吸着保持するワークテーブル5とを有する加工部6が設けられている。
【0003】
ダイシング装置1は、加工部6の他に加工済みのワークWをスピン洗浄するウェーハ洗浄装置7と、フレームFにマウントされたワークWを多数枚収納したカセットを載置するロードポート8と、ワークWを搬送する搬送手段9と、撮像手段4により撮像された画像を表示し各部への動作を入力する表示手段10と、各部の動作を制御する不図示のコントローラ等とから構成されている。
【0004】
このように構成されたダイシング装置1ではブレード2を高速回転させてブレード2とウェーハWとが接触する加工部分に研削水及び冷却水を供給しながら加工し、冷却効果と研削粉等の加工残留物(以下、コンタミと称する)を洗い流す効果とを持たせている。
【0005】
しかし、研削水及び冷却水による洗い流し作用だけではコンタミ除去機能は不十分であって、ダイシング装置1ではスピンナと称されるウェーハ洗浄装置7により、ダイシング後のウェーハWを洗浄してコンタミを除去するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
以下に従来使用されるウェーハ洗浄装置7の構成を説明する。ウェーハ洗浄装置7には図2に示すようにウェーハ洗浄装置7全体を覆う洗浄槽11が設けられている。洗浄槽11内には、洗浄するワークWを保持してモータ12により回転する回転テーブル13、回転テーブル13へ向けて純水等の洗浄液を噴射しながら揺動する洗浄ノズル14が設けられている。
【0007】
このように構成されたウェーハ洗浄装置7では、不図示の吸引手段またはクランプ装置等により回転テーブル13でワークWをフレームFごとまたはワークWのみを保持するともに、図3に示すようにモータ12により矢印θ方向へ回転テーブル13を高速回転させ
る。回転テーブル13の回転に合わせ洗浄ノズル14より洗浄液を噴射させ、回転テーブル13の外周部と中心部との間を保持されたワークWの表面に沿って矢印A方向に揺動移動することでワークW全体の洗浄が行われる。
【0008】
このとき、回転テーブル13上に叩き付けられて遠心力によって回転テーブル13より飛散した洗浄液は洗浄槽11の内壁に当りミスト状になってウェーハ洗浄装置7からダイシング装置1内に流れ出る。これを防止する為に洗浄槽11の内壁にはミスト防止布15が四方に取り付けられ、洗浄槽11下部に排出口16が設けられている。ミスト防止布15は不織布等の柔らかい厚みのある布等により形成これにより、飛散した洗浄液が洗浄槽11の内壁に直接強く当たることがなくなり、ミストとなってダイシング装置1内に流れることが防止される。
【特許文献1】特開2003−273055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のようにミストを防止するため洗浄槽11の内壁にミスト防止布15を取り付けると、ダイシングの際に生じたワークW表面に形成された膜やチップの破片がミスト防止布15に刺さり、ワークWより洗い流されたコンタミが付着してミスト防止布15上で固まるため定期的に清掃、交換等のメンテナンス作業が必要となる。このようなメンテナンス作業は部品の交換費及び人件費等の製造コストを引き上げる原因となり、量産、低価格化が望まれる半導体装置や電子部品の製造においては大きな問題となっていた。
【0010】
本発明はこのような問題に対して成されたものであり、ウェーハ洗浄装置の回転テーブルから飛散する洗浄液を効率的に処理してミストを発生させず、部品交換の必要のない低コストのウェーハ洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、洗浄槽と、上面側にワークを保持して回転する前記洗浄槽の内部に設けられた回転テーブルと、 前記回転テーブルに向けて洗浄液を噴射する洗浄ノズルと、前記回転テーブル外周部近傍に設けられたリングと、前記回転テーブルの上面側から下面側に向う気流を該回転テーブルの外周部と前記リングとの間に発生させる該回転テーブルの底部外周縁に設けられた気流発生手段と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項1の発明によれば、ウェーハ洗浄装置には洗浄槽と、回転テーブルと、洗浄ノズルとを備えている。回転テーブルの外周部近傍には回転テーブル外周部を覆うようにリングが設けられている。また、回転テーブルの底部外周縁には、回転テーブルの上面側から下面側に向う気流を回転テーブルの外周部とリングとの間に発生させる気流発生手段が設けられている。
【0013】
これにより、回転テーブルに噴射され遠心力により回転テーブルから飛散する洗浄液は、リングにより回転テーブルの下面側へ導かれる。また、気流発生手段と回転テーブルの回転により発生した気流によって、回転テーブル外周部とリングとの間には回転テーブル上面側から下面側へ流れる気流が生じる。これにより回転テーブルより飛散した洗浄液は回転テーブルの下面側へ導かれ、洗浄槽の底部へ集められる。洗浄槽の底部へ集められた洗浄液は排出口より排出され、ミストが発生した場合も気流発生手段と回転テーブルの回転により発生した気流により洗浄槽の底部へ向って流れるため洗浄槽から漏れ出すことがない。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記リングは、前記回転テーブル上面側の開口部よりも前記回転テーブル下面側の開口部が広く開口していることを特徴としている。
【0015】
請求項2の発明によれば、回転テーブルの外周部近傍に設けられたリングは回転テーブル上面側の開口部よりも回転テーブル下面側の開口部が広く開口した形状に形成されている。これにより、遠心力により回転テーブルから飛散しリングに当った洗浄液は回転テーブルの下面側へ導かれ、洗浄槽の底部へ集められる。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記リングは、前記回転テーブルに固定され該回転テーブルと共に回転することを特徴としている。
【0017】
請求項3の発明によれば、リングは回転テーブルに固定され、回転テーブルと共に回転する。これにより、回転テーブルより飛散した洗浄液を回転テーブルの下面側へ導くリングが容易に回転テーブル外周部近傍に配置され、回転テーブルから飛散する洗浄液を効率的に処理することが可能となる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1、2、または3のいずれか1項の発明において、前記リングの外周縁近傍には前記洗浄槽に固定されている整流板が設けられていることを特徴としている。
【0019】
請求項4の発明によれば、リングの外周縁近傍には洗浄槽に固定されている整流板が設けられ、リングにより回転テーブル下面側へ導かれた洗浄液の一部が整流板により洗浄槽の底へ向って流れる。これにより、回転テーブルから飛散する洗浄液を効率的に処理することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明のウェーハ洗浄装置によれば、回転テーブル近傍に設けられたリングと気流発生手段により、ウェーハ洗浄装置の回転テーブルから飛散する洗浄液を効率的に処理してミストを発生させず、部品交換の必要のない低コストのウェーハ洗浄装置とすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明に係るウェーハ洗浄装置の好ましい実施の形態について詳説する。まず初めに、本発明に係わるウェーハ洗浄装置の構成について説明する。図4は本発明に係わるウェーハ洗浄装置の斜視図である。
【0022】
ウェーハ洗浄装置20は図4に示すように洗浄槽21が設けられ、洗浄槽21内には、洗浄するワークWを保持してモータ12により回転する回転テーブル22、回転テーブル22へ向けて純水等の洗浄液を噴射しながら揺動する洗浄ノズル14が設けられている。
【0023】
回転テーブル22の外周部近傍にはリング23が固定され、回転テーブル22とともに回転する。リング23の外周縁には洗浄槽21に固定されている整流板24が設けられている。
【0024】
回転テーブル22は不図示の吸引手段またはクランプ装置等によりワークWをフレームFごとまたはワークWのみを保持してモータ12により回転する。図5に示すように回転テーブル22の底部外周縁には気流発生手段としての板状部材25、25・・が設けられている。各板状部材25は図6に示すように回転テーブル22の内周側から外周縁方向へ向って設けられ、回転テーブル22が図4に示すモータ12によって矢印θ方向へ回転することにより、矢印Bで示される回転中心である回転軸22A方向かつ下方である洗浄槽21底部に向かって流れる気流を発生させる。板状部材25は一般的なターボファンまたはシロッコファンの羽根形状と同じであり、詳細説明は省略する。
【0025】
リング23は図5に示すように不図示の固定具(後述する図7に示す固定具23C)により回転テーブル22外周部近傍に取り付けられる。リング23は回転テーブル22に取り付けられた際における回転テーブル22上面側の開口部23Aよりも回転テーブル22下面側の開口部23Bが広く開口した形状に形成されている。これにより、リング23は回転テーブル22外周部近傍に容易に配置され、回転テーブル22より飛散する洗浄液は回転テーブル22の下面側に向けて傾斜したリング23の内面に当り、斜面に沿って洗浄槽21底部へ流れていく。
【0026】
整流板24は中央部にリング23と同等の傾斜角を備えた開口部24Aが形成され、図7に示すように洗浄槽21に取り付けられるとともに開口部24Aがリング23の外周縁近傍に配置される。これにより、洗浄槽21底部は回転テーブル22の上部側と下部側で隔離され、リング23の内面に当り洗浄槽21底部へ流れた洗浄液は跳ね返ることなく洗浄槽21底部に貯留されて排出口16より外部へ排出される。
【0027】
次に本発明に係わるウェーハ洗浄装置の作用について説明する。図7に示すウェーハ洗浄装置20は、洗浄槽21が設けられ、洗浄槽21内には、モータ12により回転する回転テーブル22、回転テーブル22へ向けて純水等の洗浄液を噴射しながら揺動する洗浄ノズル14が設けられている。
【0028】
ウェーハ洗浄装置20では、回転テーブル22でワークWをフレームFごとまたはワークWのみを保持するともに、モータ12により図5に示す矢印θ方向へ回転テーブル22を高速回転させる。更に、回転テーブル22の回転に合わせ洗浄ノズル14より洗浄液を噴射させ、回転テーブル22の外周部と中心部との間を保持されたワークWの表面に沿って洗浄ノズル14を揺動移動することでワークW全体の洗浄を行なう。
【0029】
このとき、図8に示すように回転テーブル22上に叩き付けられた洗浄液は、遠心力によって回転テーブル22上より外周縁方向である矢印S1方向へ飛散し、回転テーブル22の外周部近傍に固定されて回転テーブル22と共に回転するリング23内面の傾斜面に当たる。
【0030】
リング23内面の傾斜面に当った洗浄液は一部が傾斜面に沿って矢印S2方向へ流れ、整流板24を伝い洗浄槽21底部へ流れていき、一部はミスト状となりリング23の内側に飛散する。
【0031】
リング23内面に当たりミスト状となった洗浄液は、回転テーブル22と板状部材25によって発生した図6に示す矢印B方向の気流により、図8に示す矢印S3方向へ吸引されて回転テーブル22の下部側へ送られ、洗浄槽21底部に滞留するとともに、排出口16から不図示の吸引手段によって外部へ排出される。
【0032】
これらにより洗浄槽21の底部へ集められた洗浄液は、跳ね返りなどにより装置外部へ飛散することがない。更に、板状部材25によって生じる気流によりリング23内面と回転テーブル22の外周縁との間に生じる回転テーブル22上面側から下面側に向かう気流がミストを洗浄槽21底部に向って吸引し、ミストの外部への浮遊を防ぎ効率的に排出口16より外部へ排出させる。
【0033】
以上、説明したように、本発明に係わるウェーハ洗浄装置によれば、回転テーブルの外周部近傍に固定されて回転テーブルと共に回転するリングと回転テーブル底部外周縁に設けられた板状部材により、ウェーハ洗浄装置の回転テーブルから飛散する洗浄液を効率的に処理してミストを発生させず、部品交換の必要のない低コストのウェーハ洗浄装置とすることが可能となる。
【0034】
なお、本実施の形態では整流板は洗浄槽21の内壁面にのみ取り付けられているが、本発明はそれに限らず、図9に示すウェーハ洗浄装置20Aのように、回転テーブル22の底部に回転テーブル22とともに回転する湾曲したリング状の整流板26を設け、洗浄槽21底部に整流板26により上部を覆われる湾曲したリング状の整流板27を設けてもよい。これにより、回転テーブル22の回転と板状部材25により生じた回転軸22A方向に向かって流れる気流が洗浄槽21底部に向って効率よく流れ、吸引したミストが排出口16より効率よく排出される。
【0035】
また、本実施の形態では板状部材25は図6に示すように設けられ、回転テーブル22が矢印θ方向へ回転することにより回転テーブル22の中心方向下方に向かって流れる気流を発生させているが本発明はこれに限らず、図10に示す板状部材25Aにより矢印Cで示される回転テーブル22外周方向かつ下方である洗浄槽21底部に向かって流れる気流を発生させるようにしても好適に実施可能である。板状部材25Aは、一般的な軸流ファンの羽根形状であり、詳細説明は省略する。
【0036】
これにより、図11に示すように遠心力によって回転テーブル22上より外周縁方向である矢印S1方向へ飛散しリング23内面の傾斜面に当った洗浄液は、一部が傾斜面に沿って矢印S2方向へ流れ、整流板24を伝い洗浄槽21底部へ流れていき、ミスト状となった洗浄液は、回転テーブル22と板状部材25Aによって発生した図10に示す矢印C方向の気流により、矢印S4方向へ吸引されて回転テーブル22の下部側へ送られ、排出口16から不図示の吸引手段によって外部へ排出される。
【0037】
更に、本実施の形態では回転テーブル22にリング23が固定され、リング23の外周縁近傍に整流板24が配置されているが、本発明はそれに限らず、リング23を回転テーブルには固定せず、洗浄槽21に固定する等により回転テーブル22の外周部近傍にリング23を配置しても好適に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ダイシング装置の外観を示す斜視図。
【図2】従来のウェーハ洗浄装置の外観を示した斜視図。
【図3】従来のウェーハ洗浄装置の上面図。
【図4】本発明に係わるウェーハ洗浄装置の外観を示した斜視図。
【図5】本発明に係わるウェーハ洗浄装置のリングと回転テーブルを示した斜視図。
【図6】回転テーブルの底面正面図。
【図7】本発明に係わるウェーハ洗浄装置の側面断面図。
【図8】本発明に係わるウェーハ洗浄装置の側面断面の一部を拡大した図。
【図9】本発明に係わるウェーハ洗浄装置の別の実施形態を示した側面断面図。
【図10】別の実施の形態による回転テーブルの底面正面図。
【図11】別の実施の形態によるウェーハ洗浄装置の側面断面の一部を拡大した図。
【符号の説明】
【0039】
1…ダイシング装置,2…ブレード,3…スピンドル,4…撮像手段,5…ワークテーブル,6…加工部,7、20、20A…ウェーハ洗浄装置,8…ロードポート,9…搬送手段,10…表示手段,11、21…洗浄槽,12…モータ,13、22…回転テーブル,14…洗浄ノズル,15…ミスト防止布,16…排出口,23…リング,24、26、27…整流板,25、25A…板状部材(気流発生手段),W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽と、
上面側にワークを保持して回転する前記洗浄槽の内部に設けられた回転テーブルと、
前記回転テーブルに向けて洗浄液を噴射する洗浄ノズルと、
前記回転テーブル外周部近傍に設けられたリングと、
前記回転テーブルの上面側から下面側に向う気流を該回転テーブルの外周部と前記リングとの間に発生させる該回転テーブルの底部外周縁に設けられた気流発生手段と、を備えたことを特徴とするウェーハ洗浄装置。
【請求項2】
前記リングは、前記回転テーブル上面側の開口部よりも前記回転テーブル下面側の開口部が広く開口していることを特徴とする請求項1に記載のウェーハ洗浄装置。
【請求項3】
前記リングは、前記回転テーブルに固定され該回転テーブルと共に回転することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウェーハ洗浄装置。
【請求項4】
前記リングの外周縁近傍には前記洗浄槽に固定されている整流板が設けられていることを特徴とする請求項1、2、または3のいずれか1項に記載のウェーハ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−3816(P2010−3816A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160631(P2008−160631)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】