ウエハ支持部材
【課題】均熱性の良好なウェハ支持部を提供する。
【解決手段】ウェハ支持部材10は、基体3と、絶縁体5と、基体と絶縁体とを接合する接合層90とを具備したウェハ支持部材であって、接合層は、第1の層91と該第1の層よりも絶縁体側に位置する第2の層92とを有する複数の層の積層構造であり、第1の層と第2の層との熱伝導率が異なることから、ウエハを載置する面の均熱性を良好にできる。
【解決手段】ウェハ支持部材10は、基体3と、絶縁体5と、基体と絶縁体とを接合する接合層90とを具備したウェハ支持部材であって、接合層は、第1の層91と該第1の層よりも絶縁体側に位置する第2の層92とを有する複数の層の積層構造であり、第1の層と第2の層との熱伝導率が異なることから、ウエハを載置する面の均熱性を良好にできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、CVD、PVD及びスパッタリングを用いた成膜装置やエッチング装置に用いられるウェハ支持部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、CVD、PVD及びスパッタリングを用いた成膜装置やエッチング装置には、例えば、半導体ウェハ又はガラスを支持するためのウェハ支持部材が用いられている。このようなウェハ支持部材を用いながら半導体ウェハ等を加熱する場合、半導体ウェハ等に加わる熱のばらつきを小さくすることが求められている。そのため、絶縁体と基体とを接合する接合材の均熱性を向上させることが求められている。
【0003】
そこで、特許文献1に開示されているように、接合材にスペーサを挟み込むことによって接合材の厚みのばらつきを小さくしたウェハ支持部材を備えた静電チャックが提案されている。
【0004】
また、特許文献2に開示されているように、接合材と絶縁体との接合面において、接合材を複数の領域に分けて、各領域における接合材の熱伝導率を互いに異なるように構成したウェハ支持部材を備えた静電チャックが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−258072号公報
【特許文献2】特開2006−13302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなスペーサを用いた場合、複数のスペーサを用いる必要があるので、これらのスペーサ自体の厚みのばらつきが問題となる。複数のスペーサにおける厚みのばらつきが、接合材における厚みのばらつき以上である場合、接合材の厚みのばらつきを小さくすることができず、却って半導体ウェハ等に加わる熱のばらつきを大きくしてしまう。また、スペーサの厚みばらつきを小さくしようとすると、高い精度の加工が要求されるため、製造コストの上昇を招いてしまう。
【0007】
また、特許文献2に開示されているようなウェハ支持部材を用いた場合、絶縁体と接合材の接合性を向上させることが求められる。これは、接合材と絶縁体との接合面において、各領域における接合材の熱伝導率が互いに異なるため、熱分布が不均一になるだけではなく、熱膨張に差が生じて各領域間で絶縁体との接合性にばらつきが生じるからである。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、均熱性を向上させつつも、絶縁体と接合材との接合性のばらつきを小さくしたウェハ支持部とその製造方法、及びこれを用いた静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るウェハ支持部材は、基体と、絶縁体と、前記基体と前記絶縁体とを接合する接合層とを具備したウェハ支持部材であって、前記接合層は、第1の層と該第1の層よりも前記絶縁体側に位置する第2の層とを有する複数の層の積層構造であり、前記第1の層と前記第2の層との熱伝導率が異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の様に構成された本発明に係るウェハ支持部材は、前記接合層を第1の層と該第1の層よりも前記絶縁体側に位置する第2の層とを有する複数の層の積層構造として前記第1の層と前記第2の層との熱伝導率を異ならせているので、ウェハを載置する面の均熱性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す平面図である。
【図2】図1に示す実施形態における縦断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す断面図である。
【図6】第1の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第1の層を基体の上に配設する工程を示す断面図である。
【図7】第1の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第2の層を第1の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図8】第1の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、絶縁体を第2の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第2の層を絶縁体の上に配設する工程を示す断面図である。
【図10】第2の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第1の層を第2の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図11】第2の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、基体を第1の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図12】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す平面図である。
【図13】図12に示す第5の実施形態における縦断面図である。
【図14】本発明の第5の実施形態における変形例にかかる第2の層の拡大断面図である。
【図15】本発明の第5の実施形態における変形例にかかる第1の層の拡大断面図である。
【図16】本発明の第7の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す断面図である。
【図17】本発明の第8の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す断面図である。
【図18】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第1の層を基体の上に配設する工程を示す断面図である。
【図19】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第2の層を第1の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図20】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、絶縁体を第2の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図21】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の変形例の製造方法における、第2の層を絶縁体の上に配設する工程を示す断面図である。
【図22】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の変形例の製造方法における、第1の層を第2の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図23】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の変形例の製造方法における、基体を第1の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図24】本発明の一実施形態にかかる静電チャックを示す断面図である。
【図25】本発明の一実施形態にかかる静電チャックの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のウェハ支持部材について図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
図1、2に示すように、本発明に係る第1の実施形態のウェハ支持部材1は、基体3と、絶縁体5と、基体3と絶縁体5とを接合する接合層9とを具備している。接合層9は、第1の層11と第1の層11よりも絶縁体5側に位置する第2の層13とを含む複数の層の積層構造である。そして、第1の層11の厚みL1と第2の層13の厚みL2とが異なる。また、絶縁体5における第2の層13との接合面と反対側の面には、均熱板15が配設されている。
【0014】
このウェハ支持部材1において、絶縁体5の一方の主面がウェハが載置される載置面となっており、絶縁体5の他方の主面が接合層9を介して基材3と接合される。以下、他の実施形態のウェハ支持部材についても同様である。
【0015】
このように、接合層9が、互いに厚みの異なる第1の層11と第2の層13とを有していることにより、接合層9が1つの層からなる場合と比較して、接合層9の厚みを確保しつつも接合層9の厚みのばらつきを小さくすることができる。
【0016】
例えば、第1の実施形態のウェハ支持部材1では、第1の層11と第2の層13のうちの一方を接合層9の厚みを確保するために比較的厚い層とし、他方の層を膜厚調整層として形成することが可能になり、接合層9全体の厚みのばらつきを小さくすることが可能になる。
【0017】
また、第1の実施形態では、図2に示すように、第1の層11の厚みL1が、第2の層13の厚みL2よりも大きいことが好ましい。第1の層11よりも絶縁体5側に位置する第2の層13の厚みL2が、第1の層11の厚みL1よりも小さい場合には、絶縁体5に面する接合層9の表面の凹凸を小さくできるからである。そのため、接合層9と絶縁体5の接合性をより高めることができる。絶縁体5と接合層9の接合性をより高めたい場合には、上記の構成が有効となる。
【0018】
本実施形態のウェハ支持部材1を構成する基体3としては、例えば、アルミニウム及び超硬のような金属、若しくは、これらの金属とセラミックスの複合材を用いることができる。絶縁体5としては、例えば、セラミック焼結体を用いることができる。具体的には、Al2O3、SiC、AlN及びSi3N4を用いることができる。特に、耐腐食性の観点から、基体3としてはAl2O3又はAlNを用いることが好ましい。
【0019】
接合層9としては、絶縁体5と基体3とを接合できるものであればよく、例えば、樹脂を用いることができる。具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂を用いることができる。また、接合層9を構成する複数の層が、略同一の成分を含有していることが好ましい。これにより、接合層9を構成する各層の間での接合性が高められるので、接合層9の形状を安定して保つことができる。特に、接合層9を構成する複数の層が、略同一の樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0020】
また、接合層9は、フィラーを含有していることが好ましい。フィラーを含有していることにより、接合層9の均熱性を向上させることができるので、絶縁体5及び基体3の均熱性を向上させることができる。
【0021】
フィラーとしては、絶縁体5及び基体3と同等以上の熱伝導性を有しているものであれば良く、例えば、金属粒子やセラミックス粒子を用いることができる。具体的には、金属の場合、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることができる。また、セラミックスの場合、Al2O3、SiC、AlN又はSi3N4を用いることができる。
【0022】
さらには、接合層9を構成する各層の境界部分にフィラーの一部が存在することが好ましい。フィラーがアンカーとして作用するので、各層の接合性をより高めることができるからである。
【0023】
また、接合層9の厚みは、0.2〜1.5mmであることが好ましい。接合層9の厚みが0.2mm以上である場合には、絶縁体5と基体3との間に生じる熱応力及び物理的な応力を緩和し、絶縁体5又は基体3にクラックが生じる可能性を小さくできる。また、接合層9の厚みが1.5mm以下である場合には、接合層9の厚みのばらつきを抑制できる。
【0024】
また、接合層9がフィラーを含有している場合、接合層9を構成する各層のうちで最も厚みの小さい層(本実施形態においては第2の層13)の厚みは、フィラーの径よりも大きいことが好ましい。これにより、フィラー自体によって接合層9の厚みのばらつきが生じることを抑制できる。定量的には、接合層9を構成する各層のうちで最も厚みの小さい層の厚みが、0.03mm以上であることが好ましい。
【0025】
また、第1の実施形態における第1の層11のように相対的に厚みの大きい層が、本実施形態における第2の層13のように相対的に厚みの小さい層よりも、弾性率が高いことが好ましい。相対的に厚みの小さい層において絶縁体5(又は基体3)との強固な接合性が確保される一方で、相対的に厚みの大きい層において熱応力に対する高い応力緩和の効果が得られるからである。
【0026】
(製造方法)
次に、第1の実施形態のウェハ支持部材1の製造方法について図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
図6〜図8に示すように、第1の実施形態に係るウェハ支持部材1の製造方法は、第1の層11及び第2の層13を有する接合層9を介して基体3と絶縁体5とを接合する工程を備えている。そして、この基体3と絶縁体5とを接合する工程が、第1の層11を基体3の上に配設する工程と、第1の層11よりも厚みの小さい第2の層13を第1の層11の上に配設する工程(図6)と、絶縁体5を第2の層13の上に配設する工程(図7)とを備えている。
【0028】
このように、相対的に厚みの大きい第1の層11の上に相対的に厚みの小さい第2の層13を配設する工程を備えていることにより、第2の層13が、第1の層11の厚みのばらつきを抑えるように作用する。言い換えれば、第2の層13が、接合層9全体の厚みのばらつきを抑えるために第1の層11の厚みのばらつきを吸収する膜厚調整層としての機能を果たすように形成される。そのため、接合層9が1つの層からなる場合と比較して、接合層9の厚みを確保しつつも接合層9の厚みのばらつきを小さくできる。結果として、絶縁体5の表面における均熱性を高めることができる。
【0029】
このとき、第1の層11を基体3の上に配設する工程の後であって、第2の層13を第1の層11の上に配設する工程の前に、第1の層11における第2の層13との接合面を平面状に加工する工程を備えていることが好ましい。
【0030】
これにより、第1の層11の厚みのばらつきを小さくできるので、接合層9の厚みのばらつきをさらに小さくできる。第1の層11における第2の層13との接合面を平面状に加工する方法としては、例えば、第1の層11における第2の層13との接合面をプレスする方法及び第1の層11における第2の層13との接合面をすりきる方法が挙げられる
。なおここで、平面状に加工するとは、加工をする前と比較して第1の層11の表面の凹凸を小さくすることを意味しており、厳密に平面にすることを意味するものではない。
【0031】
また、同様に、第2の層13を第1の層11の上に配設する工程の後であって、絶縁体5を第2の層13の上に配設する工程の前に、第2の層13における絶縁体5との接合面を平面状に加工する工程を備えていることが好ましい。
【0032】
これにより、接合層9の厚みのばらつきをより抑制することができる。第2の層13における絶縁体5との接合面を平面状に加工する方法としては、上記の第1の層11と同様の方法を用いればよい。なおここで、平面状に加工するとは、第1の層11に関して既に示したように、厳密に平面にすることを意味するものではない。
【0033】
また、接合層9が熱硬化性樹脂である場合には、第1の層11を基体3の上に配設する工程の後であって、第2の層13を第1の層11の上に配設する工程の前に、第1の層11を構成する接合材(以下、第1の接合材とする)の硬化温度以上で第1の層11を加熱する工程を備える事がより好ましい。これにより、第1の層11の厚みばらつきを小さくできるからである。
【0034】
また、第2の層13を構成する接合材(以下、第2の接合材とする)の硬化温度が、第1の接合材の硬化温度よりも小さく、第2の層13を第1の層11の上に配設する工程の後に、第2の接合材の硬化温度以上であって、第1の接合材の硬化温度以下の温度で接合層9を加熱する工程を備える事がより好ましい。これにより、第2の接合材のみを硬化させることができるので、接合層9の厚みばらつきを更に小さくできる。
【0035】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態にかかるウェハ支持部材1について説明をする。
【0036】
第2の実施形態にかかるウェハ支持部材1は、図3に示すように、接合層9が、第1の層11と第2の層13との間に位置する第3の層17を有する。そして、第3の層17の厚みL3は、第1の層11の厚みL1よりも小さく、かつ、第2の層13の厚みL2よりも大きい。このような第3の層17を有することにより、接合層9の基体3側から絶縁体5側に向かって、段階的に接合層9を構成する各層の厚みを小さくできるので、絶縁体5に面する接合層9の表面の凹凸を小さくできる。そのため、接合層9と絶縁体5の接合性をより一層高めることができる。
【0037】
また、この第2の実施形態によれば、例えば、第1の層11の厚みのばらつきを、第3の層17により粗調整した上で第2の層13によって微調整するようなことも可能であり、接合層9全体の膜厚のばらつきをより小さくできる。
【0038】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態にかかるウェハ支持部材1について説明をする。
【0039】
第3の実施形態にかかるウェハ支持部材1は、図4に示すように、第1の層11の厚みL1が、第2の層13の厚みL2よりも小さい。第1の層11よりも絶縁体5側に位置する第2の層13の厚みL2が、第1の層11の厚みL1よりも大きい場合には、基体3に面する接合層9の表面の凹凸を小さくできるからである。そのため、接合層9と基体3の接合性をより高めることができる。絶縁体5と基体3の接合性をより高めたい場合には、上記の構成が有効となる。
【0040】
この第3の実施形態のように第1の層11の厚みL1を第2の層13の厚みL2よりも
小さくするような場合に、第1の層11を膜厚調整層として機能させる場合には、以下の製造方法により製造すればよい。
【0041】
(製造方法)
以下、第3の実施形態にかかるウェハ支持部材1の製造方法について説明をする。
【0042】
図9〜図11に示すように、第3の実施形態のウェハ支持部材1の製造方法は、第1の層11及び第2の層13を有する接合層9を介して基体3と絶縁体5とを接合する工程を備えている。そして、この基体3と絶縁体5とを接合する工程が、第2の層13を絶縁体5の上に配設する工程(図9)と、第2の層13よりも厚みの小さい第1の層11を第2の層13の上に配設する工程(図10)と、基体3を第1の層11の上に配設する工程とを備えている。
【0043】
このように、相対的に厚みの大きい第2の層13の上に相対的に厚みの小さい第1の層11を配設する工程を備えていることにより、第1の層11が、第2の層13の厚みのばらつきを抑えるように作用する。そのため、接合層9が、1つの層からなる場合と比較して、接合層9の厚みを確保しつつも接合層9の厚みのばらつきを小さくできる。
【0044】
このとき、第2の層13を絶縁体5の上に配設する工程の後であって、第1の層11を第2の層13の上に配設する工程の前に、第2の層13における第1の層11との接合面を平面状に加工する工程を備えていることが好ましい。
【0045】
これにより、接合層9の厚みのばらつきをさらに小さくできる。第2の層13における第1の層11との接合面を平面状に加工する方法としては、例えば、第2の層13における第1の層11との接合面をプレスする方法及び第2の層13における第1の層11との接合面をすりきる方法が挙げられる。なおここで、平面状に加工するとは、加工をする前と比較して第2の層13の表面の凹凸を小さくすることを意味しており、厳密に平面にすることを意味するものではない。
【0046】
また、同様に、第1の層11を第2の層13の上に配設する工程の後であって、基体3を第1の層11の上に配設する工程の前に、第1の層11における基体3との接合面を平面状に加工する工程を備えていることが好ましい。
【0047】
これにより、接合層9の厚みのばらつきをより小さくできる。第1の層11における基体3との接合面を平面状に加工する方法としては、上記の第2の層13と同様の方法を用いればよい。なおここで、平面状に加工するとは、第2の層13に関して既に示したように、厳密に平面にすることを意味するものではない。
【0048】
また、第2の層13を絶縁体5の上に配設する工程の後に、第2の層13を構成する接合材(以下、第2の接合材とする)の硬化温度以上で第2の層13を加熱する工程を備える事がより好ましい。これにより、第2の層13の厚みばらつきを小さくできるからである。
【0049】
また、第1の層11を構成する接合材(以下、第1の接合材とする)の硬化温度が第2の接合材の硬化温度よりも小さく、第1の層11を第2の層13の上に配設する工程の後に、第1の接合材の硬化温度以上であって、第2の接合材の硬化温度以下の温度で接合層9を加熱する工程を備えることがより好ましい。これにより、第1の接合材のみを硬化させることができるので、接合層9の厚みばらつきを更に小さくできる。
【0050】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態にかかるウェハ支持部材1について説明をする。
【0051】
第4の実施形態にかかるウェハ支持部材1は、図5に示すように、接合層9が、第1の層11と第2の層13との間に位置する第3の層17を有する。そして、第3の層17の厚みL3が、第1の層11の厚みL1よりも大きく、かつ、第2の層13の厚みL2よりも小さいことがより好ましい。このような第3の層17を有することにより、接合層9の絶縁体5側から基体3側に向かって、段階的に接合層9を構成する各層の厚みを小さくできる。これにより、接合層9と基体3の接合性をより高めつつ、接合層9の絶縁体5と面する部分にかかる熱応力をより緩和させることができる。
【0052】
<第5の実施形態>
図12、13に示すように、第5の実施形態のウェハ支持部材10は、基体3と、一方の主面をウェハが載置される載置面とする絶縁体5と、基体3と絶縁体5の他方の主面とを接合する接合層90とを具備している。接合層90は、第1の層91と第1の層91よりも絶縁体5側に位置する第2の層92とを含む複数の層の積層構造である。そして、第1の層91の熱伝導率と第2の層92の熱伝導率とが異なる。また、絶縁体5における第2の層92との接合面と反対側の面(以下、主面ともいう)には、均熱板15が配設されている。尚、第5の実施形態において、第1の実施形態等と同様のものには同様の符号を付して示している。
【0053】
このように、接合層90が、互いに熱伝導率の異なる第1の層91と第2の層92とを有していることにより、接合層90の均熱性を向上させつつも、接合層90と絶縁体5との接合性のばらつきを小さくできる。
【0054】
そして、第2の層92の熱伝導率が、第1の層91の熱伝導率よりも高いことが好ましい。絶縁体5側に位置する第2の層92の熱伝導率が相対的に高いことにより、絶縁体5の主面に伝わる熱の均熱性をより向上させることができるからである。
【0055】
接合層90としては、絶縁体5と基体3とを接合できるものであればよく、例えば、樹脂を用いることができる。具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂を用いることができる。また、接合層90を構成する複数の層が、略同一の樹脂成分を含有していてもよい。これにより、接合層90を構成する各層の間での接合性が高められるので、接合層90の形状を安定して保つことができる。
【0056】
なお、ここで、略同一の樹脂成分を含有しているとは、同種の樹脂を含有していることを意味している。具体的には、上記したシリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂のいずれかを各層が含有していることを意味する。
【0057】
熱伝導性が互いに異なる第1の層91及び第2の層92を構成するには、例えば、互いに異なる成分の材料を用いればよい。
【0058】
たとえば、第1の層91の材料をシリコーン樹脂とし、第2の層92の材料をエポキシ樹脂とすることができる。このとき、エポキシ樹脂の熱伝導率を絶縁層5の熱伝導率と略同一とすることで絶縁層5と接合層90との接合面の凹凸を緩和し均熱性を向上することができる。
【0059】
また別な例として、第1の層91の材料をシリコーン樹脂とし、第2の層92の材料を熱伝導率の異なるシリコーン樹脂とすることもできる。このとき、第2の層92のシリコーン樹脂の熱伝導率を絶縁層5の熱伝導率と略同一とすることで絶縁層5と接合層90との接合面の凹凸を緩和し均熱性を向上するとともに、第1の層91と第2の層92の接合
性を向上することができる。熱伝導率はフィラーの含有量を調整することで容易に得ることができる。
【0060】
また、後述するように、添加するフィラー51の表面積或いは含有量が互いに異なることによっても、熱伝導率が互いに異なる第1の層91及び第2の層92を構成することができる。
【0061】
なお、各層の熱伝導率は、公知の熱線法やレーザーフラッシュ法を用いることで測定することができる。
【0062】
また、接合層90は、フィラー51を含有していることが好ましい。フィラー51を含有していることにより、接合層90の均熱性を向上させることができるので、絶縁体5及び基体3の均熱性を向上させることができる。
【0063】
フィラー51としては、絶縁体5及び基体3と同等以上の熱伝導性を有していることが好ましく、例えば、金属粒子やセラミックス粒子を用いることができる。具体的には、金属の場合、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることができる。また、セラミックスの場合、Al2O3、SiC、AlN及びSi3N4を用いることができる。
【0064】
さらには、接合層90を構成する各層の境界部分にフィラー51の一部が存在することが好ましい。フィラー51がアンカーとして作用するので、各層の接合性をより高めることができるからである。
【0065】
また、接合層90がフィラー51を含有している場合、接合層90を構成する各層の厚みは、フィラー51の径よりも大きいことが好ましい。これにより、フィラー51自体によって接合層90の厚みのばらつきが生じることを抑制できる。定量的には、接合層90を構成する各層の厚みが、0.03mm以上であることが好ましい。
【0066】
また、接合層90がフィラー51を含有している場合において、第2の層92は、第1の層91よりもフィラー51の含有比率が大きいことが好ましい。フィラー51の含有比率が大きいほど、熱伝導率が高くなるので、上記の構成であることにより、第2の層92の熱伝導率を第1の層91の熱伝導率よりも高くできる。
【0067】
接合層90に含有されるフィラー51の含有比率は、例えば、以下のようにして評価すればよい。まず、絶縁体5の主面に対して垂直であって、第1の層91及び第2の層92を含むように断面を得る。この断面において、第1の層91及び第2の層92におけるフィラー51の断面積の総和をそれぞれ測定する。そして、各々の層におけるフィラー51の断面積の総和を各々の層全体の断面積で割る。このようにして得られた値を、上記フィラー51の含有比率とすることができる。得られた含有比率の値を用いることにより、第1の層91及び第2の層92におけるフィラー51の含有比率を比較できる。なお、上記のように断面全体で評価しても良いが、評価を簡便にするため、断面のうちの一部を抽出して評価してもよい。
【0068】
また、接合層90がフィラー51を含有している場合において、第2の層92は、第1の層91よりも含有されるフィラー51の表面積の比率が大きいことが好ましい。フィラー51の表面積が大きいほど、熱伝導率が高くなるので、上記の構成であることにより、第2の層92の熱伝導率を第1の層91の熱伝導率よりも高くできる。
【0069】
以下、フィラー51の表面積の比率の意義を、評価方法に基づき明らかにする。
【0070】
接合層90に含有されるフィラー51の表面積の比率は、例えば、以下のようにして評価される。まず、絶縁体5の主面に対して垂直であって、第1の層91及び第2の層92を含むように断面をとる。この断面において、第1の層91及び第2の層92における接合層90とフィラー51の境界線の総和をそれぞれ測定する。そして、各々の層における境界線の総和を各々の層全体の断面積で割る。このようにして得られた値を、上記フィラー51の表面積の比率とすることができる。得られた上記表面積の比率の値を用いることにより、第1の層91及び第2の層92におけるフィラー51の表面積の比率を比較できる。なお、上記のように断面全体で評価しても良いが、評価を簡便にするため、断面のうちの一部を抽出して評価してもよい。
【0071】
さらに、第2の層92に含有されるフィラー51の平均粒径が、第1の層91に含有されるフィラー51の平均粒径よりも小さいことがより好ましい。これにより、第2の層92に含有されるフィラー51の含有量を抑制しつつ、接合層90の均熱性を向上させつつも、接合層90の耐久性を向上させることができる。フィラー51の含有量が多くなるほど、均熱性が向上するが、一方で、耐久性が低下する。しかしながら、上記の構成であることにより、フィラー51の含有量を抑制しつつも、フィラー51の表面積を大きくできるので、第2の層92の均熱性を向上させつつも、第2の層92の耐久性を向上させることができるからである。
【0072】
また、図10に示すように、第2の層92に含有されるフィラー51が、第1の層91に含有されるフィラー51と比較して、接合層90と絶縁体5の接合面に対して平行な偏平形状であることが好ましい。これにより、第2の層92に含有されるフィラー51の含有量を抑制しつつ、接合層90と絶縁体5の接合面における均熱性を向上させることができるからである。これにより、接合層90の耐久性を向上させることができる。
【0073】
また、接合層90の厚みは、0.2〜1.5mmであることが好ましい。接合層90の厚みが0.2mm以上である場合には、絶縁体5と基体3との間に生じる熱応力及び物理的な応力を緩和し、絶縁体5又は基体3にクラックが生じる可能性を小さくできる。また、接合層90の厚みが1.5mm以下である場合には、接合層90の厚みのばらつきを抑制できる。
【0074】
(製造方法)
次に、第5の実施形態に係るウェハ支持部材の製造方法について図面を用いて詳細に説明する。
【0075】
図18〜図20に示すように、第5の実施形態のウェハ支持部材10の製造方法は、第1の層91及び第2の層92を有する接合層90を介して基体3と絶縁体5とを接合する工程を備えている。そして、この基体3と絶縁体5とを接合する工程が、図18に示すように、第1の層91を基体3の上に配設する工程と、図19に示すように、第2の層92を第1の層91の上に配設する工程と、図20に示すように、絶縁体5を第2の層92の上に配設する工程とを備えている。
【0076】
ここで、特に、第5の実施形態に係るウェハ支持部材の製造方法においては、第1の層91と第2の層92の構成材料として熱伝導率が異なる材料を用いる。
【0077】
尚、この第5の実施形態に係るウェハ支持部材の製造方法において、第1の実施形態の製造方法と同様に、第2の層92が、接合層90全体の厚みのばらつきを抑えるために第1の層91の厚みのばらつきを吸収する膜厚調整層としての機能を果たすように形成してもよい。このようにすると、絶縁体5の表面における均熱性をさらに高めることができる。また、第2の層92を膜厚調整層として形成する場合の好ましい形態等は、第1の実施
形態の製造方法の説明において説明したものと同様である。
【0078】
なお、ウェハ支持部材10は、上記の製造方法によって作製されるものに限定されることはなく、基体3と絶縁体5とが接合層90を介して接合されるのであれば、どのような製造方法によって形成されても良い。
【0079】
例えば、上記の実施形態のように第1の層91を基体3の上に配設した後に、第2の層92を第1の層91の上に配設してもよいが、第2の層92を第1の層91の上に配設した後に、第1の層91及び第2の層92を基体3の上に配設してもよい。また、図21に示すように、第2の層92を絶縁体5の上に配設した後に、図22に示すように、第1の層91を第2の層92の上に配設し、さらに、図23に示すように、基体3を第1の層91の上に配設してもよい。
【0080】
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態にかかるウェハ支持部材について説明をする。
【0081】
第6の実施形態にかかるウェハ支持部材10においては、第1の層91が第1のフィラー51を含有し、かつ、第2の層92が第2のフィラー51を含有する。そして、第2のフィラー51が、第1のフィラー51よりも熱伝導率が高い。これにより、第2の層92の熱伝導率を第1の層91の熱伝導率よりも高くすることができる。
【0082】
<第7の実施形態>
次に、第7の実施形態にかかるウェハ支持部材について説明をする。
【0083】
図16に示すように、第7の実施形態にかかるウェハ支持部材10においては、接合層90が、第1の層91と第2の層92との間に位置する第3の層93を有する。そして、第3の層93は第1の層91よりも熱伝導率が大きく、かつ、第2の層92は第3の層93よりも熱伝導率が大きい。このように、絶縁体5側に向かって接続層の熱伝導率を段階的に高くすることによって、放熱による熱損失を抑制しつつ、接合層90の均熱性をさらに向上させることができる。
【0084】
<第8の実施形態>
次に、第8の実施形態にかかるウェハ支持部材について説明をする。
【0085】
図17に示すように、第8の実施形態にかかるウェハ支持部材10においては、接合層90が、第2の層92よりも絶縁体5側に位置するとともに絶縁体5と接合する第4の層94を有し、第4の層94は、接合層90を構成する他の層よりもフィラー51の含有量が少ないことが好ましい。これにより、絶縁体5と接合層90の接合強度を向上させることができる。これは、フィラー51の含有量が少なくなることにより、絶縁体5と接合層90の接合強度が向上するからである。
【0086】
特に、第4の層94は、フィラー51を含有しないことがより好ましい。これにより、絶縁体5と接合層90の接合強度をさらに向上させることができる。
【0087】
また、第4の層94は、第2の層92よりも厚みが小さいことが好ましい。これにより、第2の層92で均熱性を向上させつつも、第4の層94で絶縁体5と接合層90の接合強度を向上させることができるからである。
【0088】
次に、本発明に係る実施形態の静電チャックについて説明する。
【0089】
図24に示すように、本実施形態の静電チャック200は、第1〜第9の実施形態に係るウェハ支持部材1(10)と、絶縁体5中に位置してウェハを静電吸着する電極21と、電極21が埋設された絶縁体5中に位置する発熱抵抗体23とを備えている。発熱抵抗体23は、電極21よりも基体3側に位置するように絶縁体5に埋設されている。絶縁体5の載置面に半導体ウェハを載置して、電極21に通電することにより、半導体ウェハを静電チャック200に吸着させることができる。
【0090】
また、本実施形態の静電チャック200は、電極21が埋設された絶縁体5中に発熱抵抗体23を備えている。本実施形態の静電チャック200は、接合層9(90)が互いに厚みの異なる第1の層11(91)と第2の層13(92)とを有していることにより、絶縁体5の表面の均熱性が高められているので、発熱抵抗体23へ通電した場合において、半導体ウェハに加えられる熱のばらつきが低減される。発熱抵抗体23としては、例えば、W、Mo、Tiの炭化物、窒化物、珪化物を主成分とするものを用いることができる。
【0091】
また、図24に示すように、発熱抵抗体23及び電極21が一つの絶縁体5中に位置してもよいが、図25に示すように、発熱抵抗体23が埋設された絶縁体5と、電極21が埋設された絶縁体5とが別体形成され、接合部材25を介して接合されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1,10・・・ウェハ支持部材
3・・・基体
5・・・絶縁体
9,90・・・接合層
11,91・・・第1の層
13,92・・・第2の層
15・・・均熱板
17,93・・・第3の層
21・・・電極
23・・・発熱抵抗体
25・・・接合部材
51・・・フィラー
94・・・第4の層
200・・・静電チャック
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、CVD、PVD及びスパッタリングを用いた成膜装置やエッチング装置に用いられるウェハ支持部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、CVD、PVD及びスパッタリングを用いた成膜装置やエッチング装置には、例えば、半導体ウェハ又はガラスを支持するためのウェハ支持部材が用いられている。このようなウェハ支持部材を用いながら半導体ウェハ等を加熱する場合、半導体ウェハ等に加わる熱のばらつきを小さくすることが求められている。そのため、絶縁体と基体とを接合する接合材の均熱性を向上させることが求められている。
【0003】
そこで、特許文献1に開示されているように、接合材にスペーサを挟み込むことによって接合材の厚みのばらつきを小さくしたウェハ支持部材を備えた静電チャックが提案されている。
【0004】
また、特許文献2に開示されているように、接合材と絶縁体との接合面において、接合材を複数の領域に分けて、各領域における接合材の熱伝導率を互いに異なるように構成したウェハ支持部材を備えた静電チャックが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−258072号公報
【特許文献2】特開2006−13302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなスペーサを用いた場合、複数のスペーサを用いる必要があるので、これらのスペーサ自体の厚みのばらつきが問題となる。複数のスペーサにおける厚みのばらつきが、接合材における厚みのばらつき以上である場合、接合材の厚みのばらつきを小さくすることができず、却って半導体ウェハ等に加わる熱のばらつきを大きくしてしまう。また、スペーサの厚みばらつきを小さくしようとすると、高い精度の加工が要求されるため、製造コストの上昇を招いてしまう。
【0007】
また、特許文献2に開示されているようなウェハ支持部材を用いた場合、絶縁体と接合材の接合性を向上させることが求められる。これは、接合材と絶縁体との接合面において、各領域における接合材の熱伝導率が互いに異なるため、熱分布が不均一になるだけではなく、熱膨張に差が生じて各領域間で絶縁体との接合性にばらつきが生じるからである。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、均熱性を向上させつつも、絶縁体と接合材との接合性のばらつきを小さくしたウェハ支持部とその製造方法、及びこれを用いた静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るウェハ支持部材は、基体と、絶縁体と、前記基体と前記絶縁体とを接合する接合層とを具備したウェハ支持部材であって、前記接合層は、第1の層と該第1の層よりも前記絶縁体側に位置する第2の層とを有する複数の層の積層構造であり、前記第1の層と前記第2の層との熱伝導率が異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の様に構成された本発明に係るウェハ支持部材は、前記接合層を第1の層と該第1の層よりも前記絶縁体側に位置する第2の層とを有する複数の層の積層構造として前記第1の層と前記第2の層との熱伝導率を異ならせているので、ウェハを載置する面の均熱性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す平面図である。
【図2】図1に示す実施形態における縦断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す断面図である。
【図6】第1の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第1の層を基体の上に配設する工程を示す断面図である。
【図7】第1の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第2の層を第1の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図8】第1の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、絶縁体を第2の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第2の層を絶縁体の上に配設する工程を示す断面図である。
【図10】第2の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第1の層を第2の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図11】第2の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、基体を第1の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図12】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す平面図である。
【図13】図12に示す第5の実施形態における縦断面図である。
【図14】本発明の第5の実施形態における変形例にかかる第2の層の拡大断面図である。
【図15】本発明の第5の実施形態における変形例にかかる第1の層の拡大断面図である。
【図16】本発明の第7の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す断面図である。
【図17】本発明の第8の実施形態にかかるウェハ支持部材を示す断面図である。
【図18】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第1の層を基体の上に配設する工程を示す断面図である。
【図19】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、第2の層を第1の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図20】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の製造方法における、絶縁体を第2の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図21】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の変形例の製造方法における、第2の層を絶縁体の上に配設する工程を示す断面図である。
【図22】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の変形例の製造方法における、第1の層を第2の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図23】本発明の第5の実施形態にかかるウェハ支持部材の変形例の製造方法における、基体を第1の層の上に配設する工程を示す断面図である。
【図24】本発明の一実施形態にかかる静電チャックを示す断面図である。
【図25】本発明の一実施形態にかかる静電チャックの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のウェハ支持部材について図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
図1、2に示すように、本発明に係る第1の実施形態のウェハ支持部材1は、基体3と、絶縁体5と、基体3と絶縁体5とを接合する接合層9とを具備している。接合層9は、第1の層11と第1の層11よりも絶縁体5側に位置する第2の層13とを含む複数の層の積層構造である。そして、第1の層11の厚みL1と第2の層13の厚みL2とが異なる。また、絶縁体5における第2の層13との接合面と反対側の面には、均熱板15が配設されている。
【0014】
このウェハ支持部材1において、絶縁体5の一方の主面がウェハが載置される載置面となっており、絶縁体5の他方の主面が接合層9を介して基材3と接合される。以下、他の実施形態のウェハ支持部材についても同様である。
【0015】
このように、接合層9が、互いに厚みの異なる第1の層11と第2の層13とを有していることにより、接合層9が1つの層からなる場合と比較して、接合層9の厚みを確保しつつも接合層9の厚みのばらつきを小さくすることができる。
【0016】
例えば、第1の実施形態のウェハ支持部材1では、第1の層11と第2の層13のうちの一方を接合層9の厚みを確保するために比較的厚い層とし、他方の層を膜厚調整層として形成することが可能になり、接合層9全体の厚みのばらつきを小さくすることが可能になる。
【0017】
また、第1の実施形態では、図2に示すように、第1の層11の厚みL1が、第2の層13の厚みL2よりも大きいことが好ましい。第1の層11よりも絶縁体5側に位置する第2の層13の厚みL2が、第1の層11の厚みL1よりも小さい場合には、絶縁体5に面する接合層9の表面の凹凸を小さくできるからである。そのため、接合層9と絶縁体5の接合性をより高めることができる。絶縁体5と接合層9の接合性をより高めたい場合には、上記の構成が有効となる。
【0018】
本実施形態のウェハ支持部材1を構成する基体3としては、例えば、アルミニウム及び超硬のような金属、若しくは、これらの金属とセラミックスの複合材を用いることができる。絶縁体5としては、例えば、セラミック焼結体を用いることができる。具体的には、Al2O3、SiC、AlN及びSi3N4を用いることができる。特に、耐腐食性の観点から、基体3としてはAl2O3又はAlNを用いることが好ましい。
【0019】
接合層9としては、絶縁体5と基体3とを接合できるものであればよく、例えば、樹脂を用いることができる。具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂を用いることができる。また、接合層9を構成する複数の層が、略同一の成分を含有していることが好ましい。これにより、接合層9を構成する各層の間での接合性が高められるので、接合層9の形状を安定して保つことができる。特に、接合層9を構成する複数の層が、略同一の樹脂を主成分とすることが好ましい。
【0020】
また、接合層9は、フィラーを含有していることが好ましい。フィラーを含有していることにより、接合層9の均熱性を向上させることができるので、絶縁体5及び基体3の均熱性を向上させることができる。
【0021】
フィラーとしては、絶縁体5及び基体3と同等以上の熱伝導性を有しているものであれば良く、例えば、金属粒子やセラミックス粒子を用いることができる。具体的には、金属の場合、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることができる。また、セラミックスの場合、Al2O3、SiC、AlN又はSi3N4を用いることができる。
【0022】
さらには、接合層9を構成する各層の境界部分にフィラーの一部が存在することが好ましい。フィラーがアンカーとして作用するので、各層の接合性をより高めることができるからである。
【0023】
また、接合層9の厚みは、0.2〜1.5mmであることが好ましい。接合層9の厚みが0.2mm以上である場合には、絶縁体5と基体3との間に生じる熱応力及び物理的な応力を緩和し、絶縁体5又は基体3にクラックが生じる可能性を小さくできる。また、接合層9の厚みが1.5mm以下である場合には、接合層9の厚みのばらつきを抑制できる。
【0024】
また、接合層9がフィラーを含有している場合、接合層9を構成する各層のうちで最も厚みの小さい層(本実施形態においては第2の層13)の厚みは、フィラーの径よりも大きいことが好ましい。これにより、フィラー自体によって接合層9の厚みのばらつきが生じることを抑制できる。定量的には、接合層9を構成する各層のうちで最も厚みの小さい層の厚みが、0.03mm以上であることが好ましい。
【0025】
また、第1の実施形態における第1の層11のように相対的に厚みの大きい層が、本実施形態における第2の層13のように相対的に厚みの小さい層よりも、弾性率が高いことが好ましい。相対的に厚みの小さい層において絶縁体5(又は基体3)との強固な接合性が確保される一方で、相対的に厚みの大きい層において熱応力に対する高い応力緩和の効果が得られるからである。
【0026】
(製造方法)
次に、第1の実施形態のウェハ支持部材1の製造方法について図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
図6〜図8に示すように、第1の実施形態に係るウェハ支持部材1の製造方法は、第1の層11及び第2の層13を有する接合層9を介して基体3と絶縁体5とを接合する工程を備えている。そして、この基体3と絶縁体5とを接合する工程が、第1の層11を基体3の上に配設する工程と、第1の層11よりも厚みの小さい第2の層13を第1の層11の上に配設する工程(図6)と、絶縁体5を第2の層13の上に配設する工程(図7)とを備えている。
【0028】
このように、相対的に厚みの大きい第1の層11の上に相対的に厚みの小さい第2の層13を配設する工程を備えていることにより、第2の層13が、第1の層11の厚みのばらつきを抑えるように作用する。言い換えれば、第2の層13が、接合層9全体の厚みのばらつきを抑えるために第1の層11の厚みのばらつきを吸収する膜厚調整層としての機能を果たすように形成される。そのため、接合層9が1つの層からなる場合と比較して、接合層9の厚みを確保しつつも接合層9の厚みのばらつきを小さくできる。結果として、絶縁体5の表面における均熱性を高めることができる。
【0029】
このとき、第1の層11を基体3の上に配設する工程の後であって、第2の層13を第1の層11の上に配設する工程の前に、第1の層11における第2の層13との接合面を平面状に加工する工程を備えていることが好ましい。
【0030】
これにより、第1の層11の厚みのばらつきを小さくできるので、接合層9の厚みのばらつきをさらに小さくできる。第1の層11における第2の層13との接合面を平面状に加工する方法としては、例えば、第1の層11における第2の層13との接合面をプレスする方法及び第1の層11における第2の層13との接合面をすりきる方法が挙げられる
。なおここで、平面状に加工するとは、加工をする前と比較して第1の層11の表面の凹凸を小さくすることを意味しており、厳密に平面にすることを意味するものではない。
【0031】
また、同様に、第2の層13を第1の層11の上に配設する工程の後であって、絶縁体5を第2の層13の上に配設する工程の前に、第2の層13における絶縁体5との接合面を平面状に加工する工程を備えていることが好ましい。
【0032】
これにより、接合層9の厚みのばらつきをより抑制することができる。第2の層13における絶縁体5との接合面を平面状に加工する方法としては、上記の第1の層11と同様の方法を用いればよい。なおここで、平面状に加工するとは、第1の層11に関して既に示したように、厳密に平面にすることを意味するものではない。
【0033】
また、接合層9が熱硬化性樹脂である場合には、第1の層11を基体3の上に配設する工程の後であって、第2の層13を第1の層11の上に配設する工程の前に、第1の層11を構成する接合材(以下、第1の接合材とする)の硬化温度以上で第1の層11を加熱する工程を備える事がより好ましい。これにより、第1の層11の厚みばらつきを小さくできるからである。
【0034】
また、第2の層13を構成する接合材(以下、第2の接合材とする)の硬化温度が、第1の接合材の硬化温度よりも小さく、第2の層13を第1の層11の上に配設する工程の後に、第2の接合材の硬化温度以上であって、第1の接合材の硬化温度以下の温度で接合層9を加熱する工程を備える事がより好ましい。これにより、第2の接合材のみを硬化させることができるので、接合層9の厚みばらつきを更に小さくできる。
【0035】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態にかかるウェハ支持部材1について説明をする。
【0036】
第2の実施形態にかかるウェハ支持部材1は、図3に示すように、接合層9が、第1の層11と第2の層13との間に位置する第3の層17を有する。そして、第3の層17の厚みL3は、第1の層11の厚みL1よりも小さく、かつ、第2の層13の厚みL2よりも大きい。このような第3の層17を有することにより、接合層9の基体3側から絶縁体5側に向かって、段階的に接合層9を構成する各層の厚みを小さくできるので、絶縁体5に面する接合層9の表面の凹凸を小さくできる。そのため、接合層9と絶縁体5の接合性をより一層高めることができる。
【0037】
また、この第2の実施形態によれば、例えば、第1の層11の厚みのばらつきを、第3の層17により粗調整した上で第2の層13によって微調整するようなことも可能であり、接合層9全体の膜厚のばらつきをより小さくできる。
【0038】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態にかかるウェハ支持部材1について説明をする。
【0039】
第3の実施形態にかかるウェハ支持部材1は、図4に示すように、第1の層11の厚みL1が、第2の層13の厚みL2よりも小さい。第1の層11よりも絶縁体5側に位置する第2の層13の厚みL2が、第1の層11の厚みL1よりも大きい場合には、基体3に面する接合層9の表面の凹凸を小さくできるからである。そのため、接合層9と基体3の接合性をより高めることができる。絶縁体5と基体3の接合性をより高めたい場合には、上記の構成が有効となる。
【0040】
この第3の実施形態のように第1の層11の厚みL1を第2の層13の厚みL2よりも
小さくするような場合に、第1の層11を膜厚調整層として機能させる場合には、以下の製造方法により製造すればよい。
【0041】
(製造方法)
以下、第3の実施形態にかかるウェハ支持部材1の製造方法について説明をする。
【0042】
図9〜図11に示すように、第3の実施形態のウェハ支持部材1の製造方法は、第1の層11及び第2の層13を有する接合層9を介して基体3と絶縁体5とを接合する工程を備えている。そして、この基体3と絶縁体5とを接合する工程が、第2の層13を絶縁体5の上に配設する工程(図9)と、第2の層13よりも厚みの小さい第1の層11を第2の層13の上に配設する工程(図10)と、基体3を第1の層11の上に配設する工程とを備えている。
【0043】
このように、相対的に厚みの大きい第2の層13の上に相対的に厚みの小さい第1の層11を配設する工程を備えていることにより、第1の層11が、第2の層13の厚みのばらつきを抑えるように作用する。そのため、接合層9が、1つの層からなる場合と比較して、接合層9の厚みを確保しつつも接合層9の厚みのばらつきを小さくできる。
【0044】
このとき、第2の層13を絶縁体5の上に配設する工程の後であって、第1の層11を第2の層13の上に配設する工程の前に、第2の層13における第1の層11との接合面を平面状に加工する工程を備えていることが好ましい。
【0045】
これにより、接合層9の厚みのばらつきをさらに小さくできる。第2の層13における第1の層11との接合面を平面状に加工する方法としては、例えば、第2の層13における第1の層11との接合面をプレスする方法及び第2の層13における第1の層11との接合面をすりきる方法が挙げられる。なおここで、平面状に加工するとは、加工をする前と比較して第2の層13の表面の凹凸を小さくすることを意味しており、厳密に平面にすることを意味するものではない。
【0046】
また、同様に、第1の層11を第2の層13の上に配設する工程の後であって、基体3を第1の層11の上に配設する工程の前に、第1の層11における基体3との接合面を平面状に加工する工程を備えていることが好ましい。
【0047】
これにより、接合層9の厚みのばらつきをより小さくできる。第1の層11における基体3との接合面を平面状に加工する方法としては、上記の第2の層13と同様の方法を用いればよい。なおここで、平面状に加工するとは、第2の層13に関して既に示したように、厳密に平面にすることを意味するものではない。
【0048】
また、第2の層13を絶縁体5の上に配設する工程の後に、第2の層13を構成する接合材(以下、第2の接合材とする)の硬化温度以上で第2の層13を加熱する工程を備える事がより好ましい。これにより、第2の層13の厚みばらつきを小さくできるからである。
【0049】
また、第1の層11を構成する接合材(以下、第1の接合材とする)の硬化温度が第2の接合材の硬化温度よりも小さく、第1の層11を第2の層13の上に配設する工程の後に、第1の接合材の硬化温度以上であって、第2の接合材の硬化温度以下の温度で接合層9を加熱する工程を備えることがより好ましい。これにより、第1の接合材のみを硬化させることができるので、接合層9の厚みばらつきを更に小さくできる。
【0050】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態にかかるウェハ支持部材1について説明をする。
【0051】
第4の実施形態にかかるウェハ支持部材1は、図5に示すように、接合層9が、第1の層11と第2の層13との間に位置する第3の層17を有する。そして、第3の層17の厚みL3が、第1の層11の厚みL1よりも大きく、かつ、第2の層13の厚みL2よりも小さいことがより好ましい。このような第3の層17を有することにより、接合層9の絶縁体5側から基体3側に向かって、段階的に接合層9を構成する各層の厚みを小さくできる。これにより、接合層9と基体3の接合性をより高めつつ、接合層9の絶縁体5と面する部分にかかる熱応力をより緩和させることができる。
【0052】
<第5の実施形態>
図12、13に示すように、第5の実施形態のウェハ支持部材10は、基体3と、一方の主面をウェハが載置される載置面とする絶縁体5と、基体3と絶縁体5の他方の主面とを接合する接合層90とを具備している。接合層90は、第1の層91と第1の層91よりも絶縁体5側に位置する第2の層92とを含む複数の層の積層構造である。そして、第1の層91の熱伝導率と第2の層92の熱伝導率とが異なる。また、絶縁体5における第2の層92との接合面と反対側の面(以下、主面ともいう)には、均熱板15が配設されている。尚、第5の実施形態において、第1の実施形態等と同様のものには同様の符号を付して示している。
【0053】
このように、接合層90が、互いに熱伝導率の異なる第1の層91と第2の層92とを有していることにより、接合層90の均熱性を向上させつつも、接合層90と絶縁体5との接合性のばらつきを小さくできる。
【0054】
そして、第2の層92の熱伝導率が、第1の層91の熱伝導率よりも高いことが好ましい。絶縁体5側に位置する第2の層92の熱伝導率が相対的に高いことにより、絶縁体5の主面に伝わる熱の均熱性をより向上させることができるからである。
【0055】
接合層90としては、絶縁体5と基体3とを接合できるものであればよく、例えば、樹脂を用いることができる。具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂を用いることができる。また、接合層90を構成する複数の層が、略同一の樹脂成分を含有していてもよい。これにより、接合層90を構成する各層の間での接合性が高められるので、接合層90の形状を安定して保つことができる。
【0056】
なお、ここで、略同一の樹脂成分を含有しているとは、同種の樹脂を含有していることを意味している。具体的には、上記したシリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂のいずれかを各層が含有していることを意味する。
【0057】
熱伝導性が互いに異なる第1の層91及び第2の層92を構成するには、例えば、互いに異なる成分の材料を用いればよい。
【0058】
たとえば、第1の層91の材料をシリコーン樹脂とし、第2の層92の材料をエポキシ樹脂とすることができる。このとき、エポキシ樹脂の熱伝導率を絶縁層5の熱伝導率と略同一とすることで絶縁層5と接合層90との接合面の凹凸を緩和し均熱性を向上することができる。
【0059】
また別な例として、第1の層91の材料をシリコーン樹脂とし、第2の層92の材料を熱伝導率の異なるシリコーン樹脂とすることもできる。このとき、第2の層92のシリコーン樹脂の熱伝導率を絶縁層5の熱伝導率と略同一とすることで絶縁層5と接合層90との接合面の凹凸を緩和し均熱性を向上するとともに、第1の層91と第2の層92の接合
性を向上することができる。熱伝導率はフィラーの含有量を調整することで容易に得ることができる。
【0060】
また、後述するように、添加するフィラー51の表面積或いは含有量が互いに異なることによっても、熱伝導率が互いに異なる第1の層91及び第2の層92を構成することができる。
【0061】
なお、各層の熱伝導率は、公知の熱線法やレーザーフラッシュ法を用いることで測定することができる。
【0062】
また、接合層90は、フィラー51を含有していることが好ましい。フィラー51を含有していることにより、接合層90の均熱性を向上させることができるので、絶縁体5及び基体3の均熱性を向上させることができる。
【0063】
フィラー51としては、絶縁体5及び基体3と同等以上の熱伝導性を有していることが好ましく、例えば、金属粒子やセラミックス粒子を用いることができる。具体的には、金属の場合、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることができる。また、セラミックスの場合、Al2O3、SiC、AlN及びSi3N4を用いることができる。
【0064】
さらには、接合層90を構成する各層の境界部分にフィラー51の一部が存在することが好ましい。フィラー51がアンカーとして作用するので、各層の接合性をより高めることができるからである。
【0065】
また、接合層90がフィラー51を含有している場合、接合層90を構成する各層の厚みは、フィラー51の径よりも大きいことが好ましい。これにより、フィラー51自体によって接合層90の厚みのばらつきが生じることを抑制できる。定量的には、接合層90を構成する各層の厚みが、0.03mm以上であることが好ましい。
【0066】
また、接合層90がフィラー51を含有している場合において、第2の層92は、第1の層91よりもフィラー51の含有比率が大きいことが好ましい。フィラー51の含有比率が大きいほど、熱伝導率が高くなるので、上記の構成であることにより、第2の層92の熱伝導率を第1の層91の熱伝導率よりも高くできる。
【0067】
接合層90に含有されるフィラー51の含有比率は、例えば、以下のようにして評価すればよい。まず、絶縁体5の主面に対して垂直であって、第1の層91及び第2の層92を含むように断面を得る。この断面において、第1の層91及び第2の層92におけるフィラー51の断面積の総和をそれぞれ測定する。そして、各々の層におけるフィラー51の断面積の総和を各々の層全体の断面積で割る。このようにして得られた値を、上記フィラー51の含有比率とすることができる。得られた含有比率の値を用いることにより、第1の層91及び第2の層92におけるフィラー51の含有比率を比較できる。なお、上記のように断面全体で評価しても良いが、評価を簡便にするため、断面のうちの一部を抽出して評価してもよい。
【0068】
また、接合層90がフィラー51を含有している場合において、第2の層92は、第1の層91よりも含有されるフィラー51の表面積の比率が大きいことが好ましい。フィラー51の表面積が大きいほど、熱伝導率が高くなるので、上記の構成であることにより、第2の層92の熱伝導率を第1の層91の熱伝導率よりも高くできる。
【0069】
以下、フィラー51の表面積の比率の意義を、評価方法に基づき明らかにする。
【0070】
接合層90に含有されるフィラー51の表面積の比率は、例えば、以下のようにして評価される。まず、絶縁体5の主面に対して垂直であって、第1の層91及び第2の層92を含むように断面をとる。この断面において、第1の層91及び第2の層92における接合層90とフィラー51の境界線の総和をそれぞれ測定する。そして、各々の層における境界線の総和を各々の層全体の断面積で割る。このようにして得られた値を、上記フィラー51の表面積の比率とすることができる。得られた上記表面積の比率の値を用いることにより、第1の層91及び第2の層92におけるフィラー51の表面積の比率を比較できる。なお、上記のように断面全体で評価しても良いが、評価を簡便にするため、断面のうちの一部を抽出して評価してもよい。
【0071】
さらに、第2の層92に含有されるフィラー51の平均粒径が、第1の層91に含有されるフィラー51の平均粒径よりも小さいことがより好ましい。これにより、第2の層92に含有されるフィラー51の含有量を抑制しつつ、接合層90の均熱性を向上させつつも、接合層90の耐久性を向上させることができる。フィラー51の含有量が多くなるほど、均熱性が向上するが、一方で、耐久性が低下する。しかしながら、上記の構成であることにより、フィラー51の含有量を抑制しつつも、フィラー51の表面積を大きくできるので、第2の層92の均熱性を向上させつつも、第2の層92の耐久性を向上させることができるからである。
【0072】
また、図10に示すように、第2の層92に含有されるフィラー51が、第1の層91に含有されるフィラー51と比較して、接合層90と絶縁体5の接合面に対して平行な偏平形状であることが好ましい。これにより、第2の層92に含有されるフィラー51の含有量を抑制しつつ、接合層90と絶縁体5の接合面における均熱性を向上させることができるからである。これにより、接合層90の耐久性を向上させることができる。
【0073】
また、接合層90の厚みは、0.2〜1.5mmであることが好ましい。接合層90の厚みが0.2mm以上である場合には、絶縁体5と基体3との間に生じる熱応力及び物理的な応力を緩和し、絶縁体5又は基体3にクラックが生じる可能性を小さくできる。また、接合層90の厚みが1.5mm以下である場合には、接合層90の厚みのばらつきを抑制できる。
【0074】
(製造方法)
次に、第5の実施形態に係るウェハ支持部材の製造方法について図面を用いて詳細に説明する。
【0075】
図18〜図20に示すように、第5の実施形態のウェハ支持部材10の製造方法は、第1の層91及び第2の層92を有する接合層90を介して基体3と絶縁体5とを接合する工程を備えている。そして、この基体3と絶縁体5とを接合する工程が、図18に示すように、第1の層91を基体3の上に配設する工程と、図19に示すように、第2の層92を第1の層91の上に配設する工程と、図20に示すように、絶縁体5を第2の層92の上に配設する工程とを備えている。
【0076】
ここで、特に、第5の実施形態に係るウェハ支持部材の製造方法においては、第1の層91と第2の層92の構成材料として熱伝導率が異なる材料を用いる。
【0077】
尚、この第5の実施形態に係るウェハ支持部材の製造方法において、第1の実施形態の製造方法と同様に、第2の層92が、接合層90全体の厚みのばらつきを抑えるために第1の層91の厚みのばらつきを吸収する膜厚調整層としての機能を果たすように形成してもよい。このようにすると、絶縁体5の表面における均熱性をさらに高めることができる。また、第2の層92を膜厚調整層として形成する場合の好ましい形態等は、第1の実施
形態の製造方法の説明において説明したものと同様である。
【0078】
なお、ウェハ支持部材10は、上記の製造方法によって作製されるものに限定されることはなく、基体3と絶縁体5とが接合層90を介して接合されるのであれば、どのような製造方法によって形成されても良い。
【0079】
例えば、上記の実施形態のように第1の層91を基体3の上に配設した後に、第2の層92を第1の層91の上に配設してもよいが、第2の層92を第1の層91の上に配設した後に、第1の層91及び第2の層92を基体3の上に配設してもよい。また、図21に示すように、第2の層92を絶縁体5の上に配設した後に、図22に示すように、第1の層91を第2の層92の上に配設し、さらに、図23に示すように、基体3を第1の層91の上に配設してもよい。
【0080】
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態にかかるウェハ支持部材について説明をする。
【0081】
第6の実施形態にかかるウェハ支持部材10においては、第1の層91が第1のフィラー51を含有し、かつ、第2の層92が第2のフィラー51を含有する。そして、第2のフィラー51が、第1のフィラー51よりも熱伝導率が高い。これにより、第2の層92の熱伝導率を第1の層91の熱伝導率よりも高くすることができる。
【0082】
<第7の実施形態>
次に、第7の実施形態にかかるウェハ支持部材について説明をする。
【0083】
図16に示すように、第7の実施形態にかかるウェハ支持部材10においては、接合層90が、第1の層91と第2の層92との間に位置する第3の層93を有する。そして、第3の層93は第1の層91よりも熱伝導率が大きく、かつ、第2の層92は第3の層93よりも熱伝導率が大きい。このように、絶縁体5側に向かって接続層の熱伝導率を段階的に高くすることによって、放熱による熱損失を抑制しつつ、接合層90の均熱性をさらに向上させることができる。
【0084】
<第8の実施形態>
次に、第8の実施形態にかかるウェハ支持部材について説明をする。
【0085】
図17に示すように、第8の実施形態にかかるウェハ支持部材10においては、接合層90が、第2の層92よりも絶縁体5側に位置するとともに絶縁体5と接合する第4の層94を有し、第4の層94は、接合層90を構成する他の層よりもフィラー51の含有量が少ないことが好ましい。これにより、絶縁体5と接合層90の接合強度を向上させることができる。これは、フィラー51の含有量が少なくなることにより、絶縁体5と接合層90の接合強度が向上するからである。
【0086】
特に、第4の層94は、フィラー51を含有しないことがより好ましい。これにより、絶縁体5と接合層90の接合強度をさらに向上させることができる。
【0087】
また、第4の層94は、第2の層92よりも厚みが小さいことが好ましい。これにより、第2の層92で均熱性を向上させつつも、第4の層94で絶縁体5と接合層90の接合強度を向上させることができるからである。
【0088】
次に、本発明に係る実施形態の静電チャックについて説明する。
【0089】
図24に示すように、本実施形態の静電チャック200は、第1〜第9の実施形態に係るウェハ支持部材1(10)と、絶縁体5中に位置してウェハを静電吸着する電極21と、電極21が埋設された絶縁体5中に位置する発熱抵抗体23とを備えている。発熱抵抗体23は、電極21よりも基体3側に位置するように絶縁体5に埋設されている。絶縁体5の載置面に半導体ウェハを載置して、電極21に通電することにより、半導体ウェハを静電チャック200に吸着させることができる。
【0090】
また、本実施形態の静電チャック200は、電極21が埋設された絶縁体5中に発熱抵抗体23を備えている。本実施形態の静電チャック200は、接合層9(90)が互いに厚みの異なる第1の層11(91)と第2の層13(92)とを有していることにより、絶縁体5の表面の均熱性が高められているので、発熱抵抗体23へ通電した場合において、半導体ウェハに加えられる熱のばらつきが低減される。発熱抵抗体23としては、例えば、W、Mo、Tiの炭化物、窒化物、珪化物を主成分とするものを用いることができる。
【0091】
また、図24に示すように、発熱抵抗体23及び電極21が一つの絶縁体5中に位置してもよいが、図25に示すように、発熱抵抗体23が埋設された絶縁体5と、電極21が埋設された絶縁体5とが別体形成され、接合部材25を介して接合されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1,10・・・ウェハ支持部材
3・・・基体
5・・・絶縁体
9,90・・・接合層
11,91・・・第1の層
13,92・・・第2の層
15・・・均熱板
17,93・・・第3の層
21・・・電極
23・・・発熱抵抗体
25・・・接合部材
51・・・フィラー
94・・・第4の層
200・・・静電チャック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、絶縁体と、前記基体と前記絶縁体とを接合する接合層とを具備したウェハ支持部材であって、
前記接合層は、第1の層と該第1の層よりも前記絶縁体側に位置する第2の層とを有する複数の層の積層構造であり、
前記第1の層と前記第2の層との熱伝導率が異なることを特徴とするウェハ支持部材。
【請求項2】
前記第1の層及び前記第2の層の少なくとも一方が、フィラーを含有し、
前記第2の層は、前記第1の層よりもフィラーの含有比率が大きいことを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持部材。
【請求項3】
前記第1の層及び前記第2の層の少なくとも一方が、フィラーを含有し、
前記第2の層は、前記第1の層よりも含有されるフィラーの表面積の比率が大きいことを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持部材。
【請求項4】
前記第1の層が第1のフィラーを含有し、かつ、前記第2の層が第2のフィラーを含有し、
前記第2のフィラーは、前記第1のフィラーよりも熱伝導率が大きいことを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持部材。
【請求項5】
前記接合層は、前記第1の層と前記第2の層との間に位置する第3の層を有し、
該第3の層は前記第1の層よりも熱伝導率が大きく、かつ、前記第2の層は前記第3の層よりも熱伝導率が大きいことを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持部材。
【請求項6】
前記接合層は、前記第2の層よりも前記絶縁体側に位置するとともに前記絶縁体と接合する第4の層を有し、前記第4の層は、前記接合層を構成する他の層よりもフィラーの含有量が少ないことを特徴とする請求項2に記載のウェハ支持部材。
【請求項7】
前記第4の層は、フィラーを含有しないことを特徴とする請求項6に記載のウェハ支持部材。
【請求項8】
前記第4の層は、前記第2の層よりも厚みが小さいことを特徴とする請求項6に記載のウェハ支持部材。
【請求項9】
前記接合層を構成する複数の層は、略同一の樹脂成分を含有していることを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持部材。
【請求項1】
基体と、絶縁体と、前記基体と前記絶縁体とを接合する接合層とを具備したウェハ支持部材であって、
前記接合層は、第1の層と該第1の層よりも前記絶縁体側に位置する第2の層とを有する複数の層の積層構造であり、
前記第1の層と前記第2の層との熱伝導率が異なることを特徴とするウェハ支持部材。
【請求項2】
前記第1の層及び前記第2の層の少なくとも一方が、フィラーを含有し、
前記第2の層は、前記第1の層よりもフィラーの含有比率が大きいことを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持部材。
【請求項3】
前記第1の層及び前記第2の層の少なくとも一方が、フィラーを含有し、
前記第2の層は、前記第1の層よりも含有されるフィラーの表面積の比率が大きいことを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持部材。
【請求項4】
前記第1の層が第1のフィラーを含有し、かつ、前記第2の層が第2のフィラーを含有し、
前記第2のフィラーは、前記第1のフィラーよりも熱伝導率が大きいことを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持部材。
【請求項5】
前記接合層は、前記第1の層と前記第2の層との間に位置する第3の層を有し、
該第3の層は前記第1の層よりも熱伝導率が大きく、かつ、前記第2の層は前記第3の層よりも熱伝導率が大きいことを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持部材。
【請求項6】
前記接合層は、前記第2の層よりも前記絶縁体側に位置するとともに前記絶縁体と接合する第4の層を有し、前記第4の層は、前記接合層を構成する他の層よりもフィラーの含有量が少ないことを特徴とする請求項2に記載のウェハ支持部材。
【請求項7】
前記第4の層は、フィラーを含有しないことを特徴とする請求項6に記載のウェハ支持部材。
【請求項8】
前記第4の層は、前記第2の層よりも厚みが小さいことを特徴とする請求項6に記載のウェハ支持部材。
【請求項9】
前記接合層を構成する複数の層は、略同一の樹脂成分を含有していることを特徴とする請求項1に記載のウェハ支持部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−129539(P2012−129539A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22016(P2012−22016)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2010−500730(P2010−500730)の分割
【原出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2010−500730(P2010−500730)の分割
【原出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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