説明

エアバッグドア

【課題】ドア破断予定部の破断に伴い、このドア破断予定部を跨いで装着されている貼着シール材を容易に破断させるようにする。
【解決手段】機能性部材40をドアパネル22,24の外面に配設するため、ドア破断予定部30を跨いだ状態でこれらドアパネル22,24の外面に装着される貼着シール材46に、ドア破断予定部30に沿って所要長のシール切込み部52を設ける。このシール切込み部52は、ドア破断予定部30の破断が最初に始まる部位およびその近傍に設けられている。これにより、ドア破断予定部30の破断に伴う貼着シール材46の破断を、シール切込み部52の存在により容易化させ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグドアに関し、更に詳細には、車両内装部材を構成する基材に設けられ、ドア破断予定部で相互に分離するドアパネルと、貼着シール材を介しドア破断予定部を跨いだ状態で隣接するドアパネルの外面に装着される機能性部材と、これらドアパネルおよび機能性部材の外側に存在する発泡体とからなり、エアバッグ装置の作動によるドア破断予定部の破断に伴い貼着シール材および機能性部材を破断させ、開放後のドアパネルの端縁部に該機能性部材を露出させるようにしたエアバッグドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年生産される殆どの乗用車には、対向車との衝突事故の発生時における乗員保護を図る装置の一つとして、運転席用のエアバッグ装置および助手席用のエアバッグ装置が標準的に装備されている。例えば図7および図8に例示するように、助手席用のエアバッグ装置60は、乗員室内の前方に組付けた車両内装部材であるインストルメントパネル10の内側に、乗員席から見えないよう格納した状態で搭載されている。このため、インストルメントパネル10を構成する合成樹脂製の基材12には、エアバッグ装置60のインフレータケース62に対応する位置に、このエアバッグ装置60の作動時に外方へ開放するエアバッグドアADが設けられている。
【0003】
前述したエアバッグドアADは、(a)基材12に一体的に形成されて常には該基材12の一部として構成されるタイプ(基材一体タイプ)と、(b)基材12と別体に形成されて該基材12に組付けられるタイプ(基材別体タイプ)とに大別され、図7に例示のエアバッグドアADは前述した(b)のタイプである。このような基材別体タイプのエアバッグドアADは、例えばオレフィン系の熱可塑性エラストマ(TPO)等の柔軟性に富んだ樹脂素材からなるドア成形部材20に形成され、基材12に開設した開口設置部18に対してドア成形部材20を組付けることで、基材12の一部として構成されるようになっている。ここで図示例示のエアバッグドアADは、ドア成形部材20に両Y字形のドア破断予定部30を延設することで4枚のドアパネル22,24,26,28に分割される四方開きタイプであって、エアバッグ64の押圧力を受けた各ドアパネル22,24,26,28は、これらドアパネル22,24,26,28の境界ラインに沿設した前述のドア破断予定部30の破断により相互に分離した後に、一側端縁に沿って設けた各々のヒンジ部32を中心として開放するようになっている。なおドア成形部材20の背面側には、各ドアパネル22,24,26,28を囲繞する矩形状の筒体部34が一体的に形成されており、ドア成形部材20はこの筒体部34を介してエアバッグ装置60のインフレータケース62に連結支持されている。
【0004】
また前述したインストルメントパネル10は、質感および触感等の向上を図るために、その全体または上半分程度の部位等が、所要形状にインジェクション成形された前述の基材12と、この基材12の外面における所要領域に形成された所要厚の発泡体14と、この発泡体14の外面に被着されて該発泡体14を被覆する表皮材16とから構成された3層構造となっているものがある。このような3層構造をなす部位にエアバッグドアADが設けられる場合は、図8に例示したように、基材12からドア成形部材20の外面に亘って所要厚の発泡体14が存在するようになり、インストルメントパネル10の外側からは開放前のエアバッグドアADの存在が認識されないようになっている。なお、このようなインビジブルタイプのエアバッグドアは、例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
ここで、3層構造をなすインストルメントパネル10に設けたエアバッグドアADでは、エアバッグ装置60の作動により膨張するエアバッグ64の押圧力が各ドアパネル22,24,26,28に加わった際に、ドア破断予定部30の破断に伴って発泡体14および表皮材16が夫々破断することで、各ドアパネル22,24,26,28の開放が許容される。従って、開放する各ドアパネル22,24,26,28の端縁部には、前述した発泡体14の破断面が所要厚に露出するようになり、殊に乗員席側へ開放するドアパネル22は同じく乗員席側へ膨張展開するエアバッグ64の下側に位置するため、場合によっては該エアバッグ64がドアパネル22の端縁部に接触して発泡体14の一部が破片となって乗員席側へ分離・飛散する虞がある。
【0006】
そこで、前述した発泡体14の破片の飛散を防止するため、図9に例示するように、少なくとも乗員席側へ開放するドアパネル22の外面に別途予備成形した機能性部材40を貼着シール材46を介して装着し、開放する該ドアパネル22の端縁部に該機能性部材40を臨ませるようにすることで、エアバッグ64が発泡体14と接触しても該発泡体40が飛散するのを防止する対策が採られている。ここで機能性部材40は、例えばウレタン原料を発泡成形して得られた原反から図示の所要形状に切り出されたウレタンフォーム等の多孔質部材等であって、成形された発泡体14と同等程度の弾力性を有しているが、エアバッグ64が接触しても破片が分離・飛散しないものである。
【特許文献1】特開平11−198751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで前述した機能性部材40は、その側端面42がドア破断予定部30に正確に一致する状態でドアパネル22の外面に装着するのが望ましい。すなわち図8において、機能性部材40の側端面42がドア破断予定部30よりも右側に位置した状態で該機能性部材40をドアパネル22に装着した場合、開放したドアパネル22の端縁部には機能性部材40が露出せずに発泡体14が露出することとなり、該機能性部材40を装着した意味が全くなくなってしまうからである。しかしながら、側端面42をドア破断予定部30に正確に一致させた状態で機能性部材40をドアパネル22へ装着することは熟練した作業員であってもかなり困難であるため、実際には図8に例示したように、ドア破断予定部30を跨いだ状態でドアパネル22とこれに隣接するドアパネル24との外面に貼着シール材46を利用して機能性部材40を装着することで、開放するドアパネル22の端縁部に機能性部材40を確実に臨ませるようにする方法が採られている。
【0008】
ここで、前述したように両ドアパネル22,24の外面に機能性部材40を装着した場合では、各ドアパネル22,24,26,28の開放に際し、前述した貼着シール材46および機能性部材40がドア破断予定部30に沿って破断する必要がある。しかしながら貼着シール材46は、一般的に市販されている両面テープ等で構成されているため、エアバッグ64の押圧力が作用しても破断し難くてドア破断予定部30を破断させる抵抗となっていた。
【0009】
従って本発明は、少なくともドア破断予定部を跨いで装着されている貼着シール材に、該ドア破断予定部に沿ってシール切込み部を設けておくことで、ドア破断予定部の破断に伴う該貼着シール材の破断を容易化するよう構成したエアバッグドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、
車両内装部材を構成する基材に設けられ、ドア破断予定部で相互に分離するドアパネルと、貼着シール材を介し前記ドア破断予定部を跨いだ状態で隣接する前記ドアパネルの外面に装着される機能性部材と、これらドアパネルおよび機能性部材の外側に存在する発泡体とからなり、エアバッグ装置の作動による前記ドア破断予定部の破断に伴い前記貼着シール材および機能性部材を破断させ、開放後のドアパネルの端縁部に該機能性部材を露出させるようにしたエアバッグドアにおいて、
前記貼着シール材に、前記ドア破断予定部に沿って所要長のシール切込み部を設けたことを特徴とする。
これにより、前記ドア破断予定部の破断に伴う前記貼着シール材の破断を、前記シール切込み部の存在により容易化することを可能とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るエアバッグドアによれば、少なくともドアパネルに機能性部材を装着する貼着シール材に、ドア破断予定部に沿った所要長のシール切込み部を設けたことにより、ドア破断予定部の破断に伴う貼着シール材の破断が該シール切込み部の存在により容易化され、各ドアパネルが適切に開放するようになる有益な効果を奏する。また、機能性部材にも所要長の部材切込み部を設けるようにすれば、ドア破断予定部の破断に伴う機能性部材の破断も容易化される利点等がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係るエアバッグドアにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0013】
本発明に係るエアバッグドアは、基材、発泡体および表皮材からなる3層構造の種々車両内装部材に設けられ、1枚のドアパネルからなる片開きタイプ、2枚のドアパネルからなる両開きタイプ、4枚のドアパネルからなる四方開きタイプ、等として実施可能である。そこで後述する実施例では、車両内装部材として3層構造をなすインストルメントパネルを例示し、このインストルメントパネルに対して4枚のドアパネルからなる四方開きタイプのエアバッグドアを設けた場合につき説明する。従って、図7〜図9を引用して説明した従来技術の項における既出の部材・部位と同一の部材・部位については、同一の符号を付して説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、好適実施例に係るエアバッグドアを配設したインストルメントパネルを、該エアバッグドアの配設部位で一部破断して示した部分平面図であり、図2は、図1のII−II線断面図である。本実施例のエアバッグドアADは、車両内装部材であるインストルメントパネル10を構成する基材12に設けられ、相互の境界ラインに沿って延設したドア破断予定部30で相互に分離するドアパネル22,24,26,28と、貼着シール材46を介しドア破断予定部30を跨いだ状態で隣接するドアパネル22,24の外面に装着される機能性部材40と、これらドアパネル22,24,26,28および機能性部材40の外側に存在する発泡体14とからなる。そして、エアバッグ装置60の作動によるドア破断予定部30の破断に伴い貼着シール材46および機能性部材40を該ドア破断予定部30に沿って破断させ、開放後のドアパネル22の端縁部に該機能性部材40を露出させるようにしたものである。
【0015】
基材12は、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等に適宜強化剤を添付したオレフィン系樹脂素材を、インジェクション成形技術に基づいて成形した大型の合成樹脂成形部材である。そして、基材12の外部表面における上面から乗員席側に至る上半分の領域が、発泡体14および基材12が配設される3層構造部分となっている。この3層構造部分において、エアバッグ装置60のインフレータケース62に対応する部位には、エアバッグドアADを形成したドア成形部材20を組付けるための開口設置部18が略矩形状に開設されている。
【0016】
エアバッグドアADは、ドア成形部材20に延設した両Y字形のドア破断予定部30が破断することで分割される4枚のドアパネル22,24,26,28から構成され、乗員席側およびフロントウィンドウ側へ開放するドアパネル22,24は略台形状を呈し、左右方向へ開放するドアパネル26,28は略三角形状を呈している。ドア破断予定部30は、各ドアパネル22,24,26,28の境界ラインに沿って横断面V字状の溝を延設した結果としてこれらの厚みよりも薄くなった薄肉脆弱部位であり、エアバッグ装置60の作動により膨張を開始したエアバッグ64の押圧力がこれらドアパネル22,24,26,28の裏面に加わった際には、これによる応力が集中的に付与されることで破断が惹起される。なおドア破断予定部30は、ドアパネル22,24の境界ラインに沿って延在する中央破断予定部30Aと、この中央破断予定部30Aの両端に延在する側方破断予定部30B,30Bとからなっている。
【0017】
各ドアパネル22,24,26,28には、その一側端縁、すなわちドア破断予定部30に臨んでいない残りの一側端縁に沿ってヒンジ部32が形成されている。このヒンジ部32は、ドアパネル22,24,26,28の厚みの1/2程度の厚みに設定した所要幅の薄肉帯状部分であって、エアバッグ64の押圧力が加わっても破断しないと共に、膨張するエアバッグ64に押されてドアパネル22,24,26,28が押上げられる際に撓曲的または屈曲的に変形して、開放変位する該ドアパネル22,24,26,28を筒体部34へ連結させながら支持するようになっている。
【0018】
機能性部材40は、基本的には図9に例示した従来のものと同一であって、乗員席側へ開放するドアパネル22の約3/4の領域およびフロントウィンドウ側へ開放するドアパネル24の開放端側に所要幅領域に対応する台形板状を呈しており、厚みは発泡体14の厚みと同等ないし若干小さい3〜8mm程度に設定されている。このような機能性部材40は、例えば(a)大型の原反から当該台形形状に切り出されたウレタンフォーム、(b)図示しない発泡成形型により当該台形板状に発泡成形されたウレタンフォーム等、適宜の弾力性を有する多孔質部材である。なお、ドア破断予定部30を跨いだ状態で装着する際のドアパネル24に対するオーバーラップ量(幅寸法S)は、少なくとも1mm以上で、好ましくは10mm程度に設定される。
【0019】
貼着シール材46は、基本的には図9に例示した従来のものと同一であって、例えば一般的に市販されている公知の両面テープ等であって、前述した機能性部材40と同一の形状・サイズに裁断されたものである。このような貼着シール材46は、その表側貼着面48を前述した機能性部材40の裏面に貼着して該機能性部材40に貼着した後、その裏側貼着面50をドアパネル22,24の外面へ貼着することで、ドア破断予定部30の中央破断予定部30Aを跨いだ状態で機能性部材40をドアパネル22,24に装着させるようになる。
【0020】
表皮材16は、厚みが1mm程度の柔軟性に富んだ薄肉シート状材であって、インストルメントパネル10の外面に露出する表面(意匠面)には、シボ模様や幾何学模様等が再現されている。このような表皮材16は、(1)樹脂シート材から真空成形技術に基づいて予備成形されたもの、(2)樹脂粉末からパウダースラッシュ成形技術に基づいて予備成形されたもの、(3)ウレタン原料からスプレー成形技術に基づいて予備成形されたもの、(4)ウレタン原料から反応射出成形(RIM)技術に基づいて成形されたもの、等が選択的に実施可能である。なお、エアバッグドアADの配設部位を被覆する部分の裏面には、ドア破断予定部30と同一の両Y字形に延在する表皮破断予定部36が形成されている。
【0021】
発泡体14は、密度が0.15〜0.25g/cm程度の比較的高い反発特性を有する高密度ウレタンフォームから形成されている。このような発泡体14は、ドアパネル22,24の外面に機能性部材40を装着したドア成形部材20を組付けた基材12および予備成形した前述の表皮材16を、図示しない発泡成形型の型内にセットして、これら基材12および表皮材16の間でウレタン原料を発泡させることで両者間に発泡・介在させたものである。従って、ドアパネル22,24の外面に装着した機能性部材40は、発泡成形された発泡体14に埋設された状態となっており、この機能性部材40に対応した部分では発泡体14が該機能性部材40に含浸している。
【0022】
但し、機能性部材40が発泡体14と同等程度の弾力性を具有しているため、この機能性部材40が位置する部位およびそれ以外の部位は、表皮材16の外側から指先等で押圧しても同等の触感が得られるようになっている。なお実施例では、機能性部材40の厚みを発泡体14の厚みより若干小さく設定してある場合、機能性部材40と表皮材16との間には発泡体14が薄く存在するため、この発泡体14が両者の接着剤として機能するようになる。
【0023】
そして本実施例のエアバッグドアADでは、図1〜図3に例示したように、前述した貼着シール材46にドア破断予定部30に沿って所要長のシール切込み部52を設けると共に、この貼着シール材46によりドアパネル22,24に装着された前述の機能性部材40に、該シール切込み部52に沿って所要長の部材切込み部54を設けた構造となっている。これにより、エアバッグ装置60の作動により膨張を開始したエアバッグ64の押圧力が各ドアパネル22,24,26,28に加わることでドア破断予定部30が破断するに際し、該ドア破断予定部30の破断に伴う貼着シール材46の破断を前述したシール切込み部52の存在により容易化すると共に、機能性部材40の破断を前述した部材切込み部54の存在により容易化したことを特徴としている。
【0024】
前述したシール切込み部52および部材切込み部54は、エアバッグ64の押圧力によるドア破断予定部30の破断が最初に始まる部位およびその近傍部位、すなわち該ドア破断予定部30における中央破断予定部30Aの中間部位に沿って、所要長(例えば50〜100mm程度)に形成されている。すなわち貼着シール材46においては、エアバッグ64の押圧力が加わってドアパネル22,24が上方へ変位することで、シール切込み部52の両端に応力が集中するようになるため、このシール切込み部52の両端からドア破断予定部30に沿って破断が一気に進行するようになる。また機能性部材40においては、エアバッグ64の押圧力が加わってドアパネル22,24が上方へ変位することで、部材切込み部54の両端に応力が集中するようになるため、この部材切込み部54の両端からドア破断予定部30に沿って破断が一気に進行するようになる。
【0025】
なお、シール切込み部52および部材切込み部54は、ドア破断予定部30に跨っている部位の全体に連続的に形成するようにしてもよい。また、ドア破断予定部30に沿って、ミシン目状(断続的)に形成するようにしてもよい。
【0026】
前述したシール切込み部52および部材切込み部54は、図5に例示するように、ドア成形部材20の裏側からドア破断予定部30に沿って適宜の切込み手段56を突入することにより、該ドア破断予定部30に沿って形成される。これにより、シール切込み部52および部材切込み部54が、ドア破断予定部30に正確に一致した状態で成形され得る。ここで切込み手段56としては、公知の超音波カッターまたは熱刃カッター等が好適に実施可能であり、スリット状やミシン目状等の様々な形態に形成し得る。
【0027】
そして図4に例示するように、切込み手段56による裏側からの切込み量Dは、ドア破断予定部30の最深部から貼着シール材46の表側貼着面48までの距離をH1、該ドア破断予定部30の最深部から機能性部材40の上面までの距離をH2とした場合、H1<D<H2となるように調節すれば、シール切込み部52および部材切込み部54が同時に形成される。
【0028】
このように構成された本実施例のエアバッグドアADは、エアバッグ装置60の作動により膨張を開始したエアバッグ64の押圧力を受けて各ドアパネル22,24,26,28が上昇すると、先ずドア破断予定部30における中央破断予定部30Aに応力が集中するようになり、この中央破断予定部30Aから破断が始まるようになる。これにより、貼着シール材46および機能性部材40では、ドア破断予定部30の中央破断予定部30Aの破断に伴い、シール切込み部52および部材切込み部54の夫々の両端部位から両方向へ破断が略同時に進行するようになる。
【0029】
そして、中央破断予定部30Aから側方破断予定部30B,30Bへ破断が進行してドア破断予定部30が両Y字形に破断するのに追従して、貼着シール材46および機能性部材40の両方も両Y字形に破断するようになり、図6に例示するように、各ドアパネル22,24,26,28の開放変位が許容されるようになる。ここで、乗員席側へ開放するドアパネル22の端縁部およびフロントウィンドウ側へ開放するドアパネル24の端縁部には、機能性部材40が露出して発泡体14が殆ど露出しないようなるため、万一、膨張途中のエアバッグ64がこれらドアパネル22,24の端縁部に接触したとしても、発泡体14が飛散することを好適に防止し得る。
【0030】
このように本実施例のエアバッグドアADでは、貼着シール材46にドア破断予定部30に沿った所要長のシール切込み部52を設けると共に、この貼着シール材46によりドアパネル22,24に装着された機能性部材40に、該シール切込み部52に沿った所要長の部材切込み部54を設けたことにより、ドア破断予定部30の破断に伴う貼着シール材46の破断および機能性部材40の破断を、シール切込み部52の存在および部材切込み部54の存在により容易化した。従って、エアバッグ装置60の作動時に各ドアパネル22,24,26,28が適時に適切に開放するようになり、エアバッグ64の膨張展開が適切になされる。また、インストルメントパネル10の成形後に、切込み手段56によりシール切込み部52および部材切込み部54を成形するので、これらシール切込み部52および部材切込み部54をドア破断予定部30に一致させ得る。
【0031】
なお、前述した機能性部材40がウレタンフォームから形成されている場合、外力による引裂き力が加わった際に比較的簡易に破断するようになるため、この機能性部材40に対する部材切込み部54の形成を省力することも可能である。すなわち、少なくとも前述の貼着シール材46にだけ、ドア破断予定部30に沿った所要長のシール切込み部52を設けるようにすれば、ドア破断予定部30の破断に伴う貼着シール材46の破断をシール切込み部52の存在により容易化できるので、エアバッグドアADの適切な開放が実現可能となる。なお、前述した切込み手段56によりシール切込み部52のみを形成する場合は、該切込み手段56の切込み量Dを距離H1と同一となるように調節すればよい。
【0032】
前述した実施例では、ドアパネル22およびドアパネル24の外面に機能性部材40を装着する形態を例示したが、この機能性部材40および貼着シール材46を更に大型化して、ドアパネル26およびドアパネル28にも部分的にかかるよう装着する場合もあり得る。この場合には、これら貼着シール材46および機能性部材40が、ドア破断予定部30における側方破断予定部30Bを跨いだ状態で装着されるため、更に側方破断予定部30Bに沿って所要長のシール切込み部を貼着シール材46に追加して設けると共に、該シール切込み部52に沿って所要長の部材切込み部を機能性部材40に追加して設けるようにしてもよい。
【0033】
本発明に係るエアバッグドアは、前述した4枚のドアパネル22,24,26,28から構成される四方開きタイプのエアバッグドアADに限定されるものではなく、2枚のドアパネルからなる両開きタイプや、1枚のドアパネルからなる片開きタイプにも好適に実施可能である。
【0034】
また本発明に係るエアバッグドアは、インストルメントパネルに設けたものに限定されるものではなく、これ以外にドアパネル等に設けたサイドエアバッグ装置に付帯されるエアバッグドアや、ピラーガーニッシュおよびルーフサイドパネル(ルーフパネル)等に設けたカーテンエアバッグ装置に付帯されるエアバッグドア等も対象とされる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るエアバッグドアは、車両内装部材を構成する基材に設けられ、ドア破断予定部で相互に分離するドアパネルと、貼着シール材を介しドア破断予定部を跨いだ状態で隣接するドアパネルの外面に装着される機能性部材と、これらドアパネルおよび機能性部材の外側に存在する発泡体とからなり、エアバッグ装置の作動によるドア破断予定部の破断に伴い貼着シール材および機能性部材を破断させ、開放後のドアパネルの端縁部に該機能性部材を露出させるようにしたエアバッグドアであって、エアバッグ装置を搭載した種々自動車等に好適に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】好適実施例に係るエアバッグドアを配設したインストルメントパネルを、該エアバッグドアの配設部位で一部破断して示した部分平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】エアバッグドアを形成したドア成形部材を示した概略斜視図であって、ドア破断予定部の裏側から形成されたシール切込み部および部材切込み部を示している。
【図4】ドア破断予定部に沿って形成したシール切込み部および部材切込み部を示した説明断面図である。
【図5】ドア破断予定部に沿って切込み手段を突入させることで、シール切込み部および部材切込み部を形成する状態を示した説明断面図である。
【図6】各ドアパネルの開放開始直後の状態を示した説明断面図であって、ドアパネルにエアバッグの押圧力が加わってドア破断予定部が破断することにより、貼着シール材および機能性部材が該ドア破断予定部に沿って容易に破断することを示している。
【図7】エアバッグドアを設けた部位を一部破断して示したインストルメントパネルの部分斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】ドアパネルの外面に、貼着シール材を介して機能性部材を装着する状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
12 基材
14 発泡体
22,24 ドアパネル
30 ドア破断予定部
40 機能性部材
46 貼着シール材
52 シール切込み部
54 部材切込み部
56 切込み手段
60 エアバッグ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内装部材を構成する基材(12)に設けられ、ドア破断予定部(30)で相互に分離するドアパネル(22,24)と、貼着シール材(46)を介し前記ドア破断予定部(30)を跨いだ状態で隣接する前記ドアパネル(22,24)の外面に装着される機能性部材(40)と、これらドアパネル(22,24)および機能性部材(40)の外側に存在する発泡体(14)とからなり、エアバッグ装置(60)の作動による前記ドア破断予定部(30)の破断に伴い前記貼着シール材(46)および機能性部材(40)を破断させ、開放後のドアパネル(22,24)の端縁部に該機能性部材(40)を露出させるようにしたエアバッグドアにおいて、
前記貼着シール材(46)に、前記ドア破断予定部(30)に沿って所要長のシール切込み部(52)を設けた
ことを特徴とするエアバッグドア。
【請求項2】
前記シール切込み部(52)は、前記ドア破断予定部(30)の破断が最初に始まる部位およびその近傍に設けられている請求項1記載のエアバッグドア。
【請求項3】
前記機能性部材(40)に、前記シール切込み部(52)に沿って所要長の部材切込み部(54)を設けた請求項1または2記載のエアバッグドア。
【請求項4】
前記シール切込み部(52)または前記部材切込み部(54)は、前記ドアパネル(22,24)の裏側から前記ドア破断予定部(30)に沿って突入させた適宜の切込み手段(56)により、該ドア破断予定部(30)に沿って形成される請求項1〜3の何れかに記載のエアバッグドア。
【請求項5】
前記機能性部材(40)は、適宜の弾力性を有する多孔質部材である請求項1〜4の何れかに記載のエアバッグドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−62421(P2006−62421A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244411(P2004−244411)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】