説明

エッチング装置および半導体基板の水洗方法

【課題】ウェットエッチング装置のリンス用純水の使用量を削減し、処理能力を高める。
【解決手段】半導体基板2を化学薬液処理にてエッチングし水洗するウェットエッチング装置1において、前記半導体基板に化学薬液処理を行う薬液槽4と、前記半導体基板に付着した前記薬液を希釈・除去する粗水洗槽5と、該粗水洗槽処理後に、前記半導体基板に残留・付着した前記薬液を純水に置換させるQDR(クイックダンプリンス)槽6と、を備えたウェットエッチング装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体基板であるシリコンウエハ等のような板状基板を化学処理にてエッチングし水洗するエッチング装置および水洗方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題に対する関心の高まりに伴い太陽電池が注目されている。現在、太陽電池としては結晶系シリコン太陽電池が最も多く生産され普及している。結晶系シリコン太陽電池の製造工程において、結晶系シリコン太陽電池に用いられるシリコンウエハの表面に形成された拡散防止膜の除去等のエッチングを行なう際には、ウエット処理による化学処理で膜の除去を行い、その後、化学処理でシリコンウエハに付着した薬液を水に置換する水洗処理を含むエッチング工程が必須となっている。このエッチング工程では、生産性の向上等による製造コストの削減のために、複数のシリコンウエハを同時に処理するバッチ式処理が主流になっている。
【0003】
また、上記水洗処理では純水が用いられる。純水が用いられるのは、置換するための水に不純物が含まれていると、水に含まれる不純物がシリコンウエハに付着し、その後の熱処理等で再結合中心になる可能性があるからである。
【0004】
図3は、特許文献1に開示されているエッチング装置である。シリコン基板55を、まずエッチング反応槽52に入れる。エッチング反応槽52には、フッ酸、硝酸の混合水溶液が入っており、シリコン基板55が混合水溶液によってエッチングされる。その後、水洗槽53にて化学反応を停止させるための水洗を行う。水洗槽53の後、図示されていないが、さらに別の水洗槽により水洗し、その後、乾燥する。54は水蒸気の吹出し口であり、ドラフト51内の湿度を90%以上にするためのものである。これは、シリコン基板55にステイン膜が付着しないようにするためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−202906号公報(平成18年8月3日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、水洗槽にて化学反応を停止させた後も、シリコン基板に残留した混合水溶液により化学反応が起こる可能性があるため、シリコン基板に残留した混合水溶液を適切に純水へ置換させる必要があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリコンウエハに付着した薬液を、適切に純水へ置換させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエッチング装置は、半導体基板を化学処理にてエッチングし水洗するエッチング装置において、半導体基板に化学処理を行う薬液槽と、半導体基板に付着した薬液を希釈させる粗水洗槽と、粗水洗槽処理後に、半導体基板に付着した薬液を純水に置換させるQDR(クイックダンプリンス)槽と、を備える。
【0009】
ここで、本発明のエッチング装置は、粗水洗槽は、濃度測定器を備え、濃度測定器は、薬液の濃度を測定し、測定結果に基づいてQDR槽の純水の交換回数を決めてもよい。
【0010】
また、本発明のエッチング装置は、QDR槽処理後に、純水をオーバーフローさせるリンス槽を備えてもよい。
【0011】
また、本発明のエッチング装置は、半導体基板は、シリコンウエハであってもよい。
【0012】
また、本発明のエッチング装置は、薬液は、フッ酸であってもよい。
【0013】
本発明の半導体基板の水洗方法は、半導体基板を化学処理して水洗する半導体基板の水洗方法において、半導体基板に化学処理である薬液処理を行う第1工程と、半導体基板に付着した薬液を希釈させる第2工程と、半導体基板に付着した薬液を純水に置換させる第3工程と、を有する。
【0014】
ここで、本発明の半導体基板の水洗方法は、第2工程において、薬液の濃度を測定して薬液の濃度の測定結果により、第3工程における純水に置換させるための純水の交換回数を決めてもよい。
【0015】
また、本発明の半導体基板の水洗方法は、第3工程後に、半導体基板に付着した薬液を純水に置換させるための第4工程を有してもよい。
【0016】
また、本発明の半導体基板の水洗方法は、半導体基板は、シリコンウエハであってもよい。
【0017】
また、本発明の半導体基板の水洗方法は、薬液は、フッ酸であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粗水洗槽処理後に、QDR槽を設けることで、シリコンウエハに付着した薬液を、適切に純水に置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】シリコンウエハのエッチング装置の本発明の一例を示す模式図である。
【図2】シリコンウエハのエッチング装置の本発明の他の一例を示す模式図である。
【図3】シリコンウエハのエッチング装置の従来の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明のエッチング装置の一例を示す模式図である。エッチング装置1は、薬液槽4、粗水洗槽5、QDR(クイックダンプリンス)槽6、リンス槽7、乾燥槽8の5槽を直列にした構成になっている。半導体基板であるシリコンウエハ2は複数枚がキャリア3にセットされ、キャリア3ごとに各槽にて処理される。
【0021】
薬液槽4には、化学処理にてエッチングする薬液が満たされている。次の粗水洗槽5は、化学処理でシリコンウエハに付着した薬液を希釈させる槽であり、純水が満たされている。また、粗水洗槽5の純水交換は、キャリア3を複数処理した後に行う。次のQDR槽6とリンス槽7は、化学処理でシリコンウエハに付着した薬液を純水に置換する槽であり、QDR槽6は、溜まっている純水を一旦抜き、再度純水を溜めることで上記置換を行う。ここで、QDR槽の純水の交換回数1回とは、溜まっている純水を一旦抜き、再度純水が溜まるまでとする。また、QDR槽でのこの処理をQDR処理とし、QDR処理回数を1回とする。リンス槽7は、常に純水をオーバーフローさせておき一定時間浸けることでさらに上記置換を行う。次の乾燥槽8は、キャリア3と、キャリア3にセットされたシリコンウエハ2とを乾燥させる槽である。また、エッチング装置1内は、排気手段12、13によって排気され、エッチング装置1外に対して陰圧状態である。以下、エッチング装置1の動作を説明する。
【0022】
シリコンウエハの処理前には、シャッター9、10、11、23、24が全て閉じられている。図示されていない搬送ベルト等で、シャッター23の手前に、シリコンウエハ2が100枚入ったキャリア3が搬送される。次に、シャッター23が開き、ローダー側にシリコンウエハ2の入ったキャリア3を移動させる。その後、シャッター23が閉じる。次に、シャッター9が開き、搬送手段15によってキャリア3をつかみ、薬液槽4の上方に移動させる。シャッター9を通過すると、シャッター9は閉じる。その後、搬送手段15によってキャリア3を薬液槽4に浸ける。薬液槽4に数分浸けて保持することで、シリコンウエハ2に化学処理がなされ、シリコンウエハ2に形成された膜がエッチングされる。
【0023】
次に、薬液槽4から、搬送手段15によってキャリア3が引き上げられ、キャリア3は粗水洗槽5の上方に移動する。その後、搬送手段15によってキャリア3を粗水洗槽5に浸ける。粗水洗槽5に数分浸けて保持することで、シリコンウエハ2を純水で水洗する。これにより、キャリア3およびシリコンウエハ2に付着した薬液の希釈が行われる。なお、この粗水洗槽5の純水は、一回毎に交換するのではなく、複数のキャリア3を処理した後に行われる。
【0024】
次に、粗水洗槽5から、搬送手段15によってキャリア3が引き上げられ、キャリア3はQDR槽6の上方に移動する。その後、搬送手段15によってキャリア3を、純水が満たされたQDR槽6に浸ける。その後、QDR槽6上のシャワーリング14と、図示されていないQDR槽6の下部に設置されてある給水孔とから純水をQDR槽6に追加し、一定時間オーバーフローさせる。その後、シャワーリング14による純水の供給を止め、QDR槽6の下部に設置されてある給水孔を閉じて、図示されていないQDR槽6の下部に設置されてある排水孔を空けて排水しQDR槽6内の純水を急速排水する。QDR槽6内の純水が空になるまで排水した後、QDR槽6の下部に設置されてある排水孔を閉め、シャワーリング14と、QDR槽6の下部に設置されてある給水孔とから純水を供給して、QDR槽6の満水位置まで純水を満たし、その後、オーバーフローさせる。これにより、キャリア3およびシリコンウエハ2に付着した薬液を純水に置換させる。キャリア3がQDR槽6に浸かってからの上記の一連の動作を、QDR槽の純水の交換回数1回とする。ここで、必要回数、QDR槽の純水の交換を行う。
【0025】
次に、QDR槽6から、搬送手段15によってキャリア3が引き上げられ、キャリア3はリンス槽7の上方に移動する。その後、搬送手段15によってキャリア3をリンス槽7に浸ける。リンス槽7では、純水をオーバーフローさせながら、一定時間キャリア3を浸ける。これにより、さらに、キャリア3およびシリコンウエハ2に付着した薬液を純水に置換させる。
【0026】
次に、リンス槽7から、搬送手段15によってキャリア3が引き上げられる。シャッター10が開き、搬送手段15によってキャリア3は乾燥槽8の上方に移動する。その後、シャッター10が閉じ、搬送手段15によってキャリア3を乾燥槽8に移動させる。乾燥槽8では、一定時間温風をあて、キャリア3と、キャリア3内のシリコンウエハ2とを乾燥させる。
【0027】
次に、乾燥槽8から、搬送手段15によってキャリア3が引き上げられ、シャッター11が開き、搬送手段15によってアンローダー側にキャリア3を移動させる。シャッター11を通過すると、シャッター11は閉じる。次に、シャッター24が開き、図示されていない搬送ベルト等に移動させる。その後、シャッター24が閉じる。
【0028】
以下に、結晶系シリコン太陽電池の製造工程において、シリコンウエハの表面に形成された拡散防止膜である酸化シリコン膜除去の処理を示す。使用したエッチング装置の構成は、図1と同じであり、動作も上記に示したとおりである。シリコンウエハの大きさは155mm×155mm、厚さは200μmであり、100枚のシリコンウエハが入るキャリアを用い、その大きさは、500mm×200mmである。
【0029】
薬液槽4には、純水に対し濃度30%のフッ酸である溶液が満たされている。
【0030】
粗水洗槽5での純水交換は、キャリア3処理ごとには行われないので、粗水洗槽5の純水交換前の薬液濃度が最も高くなる場合、すなわち、粗水洗槽5でのシリコンウエハに付着した薬液の希釈が不十分である場合でも、後の槽でシリコンウエハに付着した薬液を純水に置換することができるように、QDR槽6の純水の交換回数が設定される。ここで、粗水洗槽5の純水は、フッ酸の濃度が20%になると交換する。フッ酸の濃度が20%でも、後の槽でシリコンウエハに付着した薬液を純水に置換することができるようにするには、QDR槽6の純水の交換回数は3回であった。また、QDR槽6の満水位置まで純水を満たす際の流量であるQDR条件は、流量50リットル/分である。
【0031】
よって、粗水洗槽処理後に、QDR槽を設けることで、シリコンウエハに付着した薬液を、適切に純水に置換することができる。
【実施例2】
【0032】
図2は、本発明のエッチング装置の他の一例を示す模式図である。粗水洗槽5には濃度測定器21が取り付けられ、測定された薬液濃度値は、随時、制御装置22に送られる。制御装置22は、送られてきた薬液濃度値によりQDR槽6の純水の交換回数を決め、シャワーリング14およびQDR槽6にその回数を指示する。濃度測定器21には、(株)堀場製作所製のフッ酸濃度モニターCM−200Aを用いた。上記以外は、実施例1と同様である。また、用いたシリコンウエハの大きさは155mm×155mm、厚さは200μmであり、100枚のシリコンウエハが入るキャリアを用い、その大きさは、500mm×200mmである。
【0033】
薬液槽4には、純水に対し濃度30%のフッ酸である溶液が満たされている。
【0034】
粗水洗槽5の純水は、フッ酸の濃度が20%になると交換する。また、QDR槽6の満水位置まで純水を満たす際の流量であるQDR条件は、流量50リットル/分である。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示すとおり、粗水洗槽5のフッ酸の濃度が5%未満の時はQDR槽の純水の交換回数を1回、5%以上10%未満の時はQDR槽の純水の交換回数を2回、10%以上20%未満の時はQDR槽の純水の交換回数を3回とした。
【0037】
ここで、エッチング装置のQDR槽6における純水使用量を、粗水洗槽にフッ酸の濃度測定器を取り付けていない場合と比較して見た。実施例1は、粗水洗槽にフッ酸の濃度測定器取り付けていない場合であり、QDR槽の純水の交換回数は3回である。1キャリアを1ロットとして100ロット流した場合のQDR槽における純水使用量を表2に示す。なお、表2の値は、実施例1のQDR槽における純水使用量を1とした場合の、実施例2のQDR槽における純水使用量である。
【0038】
【表2】

【0039】
表2の結果から、実施例1のQDR槽における純水使用量を1とした場合、実施例2のQDR槽における純水使用量は、0.65であった。
【0040】
これから、QDR槽を設け、粗水洗槽の薬液濃度値により、QDR槽の純水の交換回数を最適化することで、余分な純水使用量を削減することができ、また、余分なQDR槽の純水の交換を行うことがないので、エッチング装置の処理能力を高めることができ、製造時の処理能力を高めることができた。
【0041】
結晶系シリコン太陽電池の製造工程における他のエッチング工程、または洗浄工程で用いられるエッチング装置、または洗浄装置においても同様の結果が得られた。ここで、洗浄工程とは、例えば、半導体基板の表面に存在するパーティクルを除去する工程、または、エッチングペースト、ドーピングペースト、マスキングペースト等の残留物である残渣を除去する工程等である。
【符号の説明】
【0042】
1 エッチング装置、2 シリコンウエハ、3 キャリア、4 薬液槽、5 粗水洗槽、6 QDR槽、7 リンス槽、8 乾燥槽、9 シャッター、10 シャッター、11 シャッター、12 排気手段、13 排気手段、14 シャワーリング、15 搬送手段、21 濃度測定器、22 制御装置、23 シャッター、24 シャッター、51 ドラフト、52 エッチング反応槽、53 水洗槽、54 水蒸気の吹出し口、55 シリコン基板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を化学処理にてエッチングし水洗するエッチング装置において、
前記半導体基板に化学処理を行う薬液槽と、前記半導体基板に付着した前記薬液を希釈させる粗水洗槽と、前記粗水洗槽処理後に、前記半導体基板に付着した前記薬液を純水に置換させるQDR槽と、を備えたエッチング装置。
【請求項2】
前記粗水洗槽は、濃度測定器を備え、前記濃度測定器は、前記薬液の濃度を測定し、
前記測定結果に基づいて前記QDR槽の純水の交換回数を決める請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記QDR槽処理後に、純水をオーバーフローさせるリンス槽を備えた請求項1または2に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記半導体基板は、シリコンウエハである請求項1〜3のいずれかに記載のエッチング装置。
【請求項5】
前記薬液は、フッ酸である請求項1〜4のいずれかに記載のエッチング装置。
【請求項6】
半導体基板を化学処理して水洗する半導体基板の水洗方法において、
前記半導体基板に前記化学処理である薬液処理を行う第1工程と、
前記半導体基板に付着した前記薬液を希釈させる第2工程と、
前記半導体基板に付着した前記薬液を純水に置換させる第3工程と、を有する半導体基板の水洗方法。
【請求項7】
前記第2工程において、前記薬液の濃度を測定して前記薬液の濃度の測定結果により、前記第3工程における純水に置換させるための純水の交換回数を決める請求項1に記載の半導体基板の水洗方法。
【請求項8】
前記第3工程後に、前記半導体基板に付着した前記薬液を純水に置換させるための第4工程を有する請求項6または7に記載の半導体基板の水洗方法。
【請求項9】
前記半導体基板は、シリコンウエハである請求項6〜8のいずれかに記載の半導体基板の水洗方法。
【請求項10】
前記薬液は、フッ酸である請求項6〜9のいずれかに記載の半導体基板の水洗方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−129266(P2012−129266A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277620(P2010−277620)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】