説明

エポキシドに基づく接着剤を用いる金属−ポリマー結合

非ハロゲン化ポリマーへ金属基材を結合する方法であって、特に、ポリオレフィンオーバーコートを金属性のチューブまたはパイプに結合する方法であって、金属基材の表面の標準還元電位よりも、より正の標準還元電位Eを有する、酸化状態における、少なくとも1種の金属イオンMの塩を含むエポキシ系接着剤を用いる方法;本方法により互いに結合した金属基材および非ハロゲン化ポリマーを含有する物品;非ハロゲン化ポリマーの層が硬化したエポキシ系接着剤で結合した金属基材製のチューブまたはパイプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ系接着剤を用いることにより金属を非ハロゲン化ポリマーへ結合する分野に関する。特有の用途は、ポリオレフィン保護コーティングで、特にポリエチレン(=PE)またはポリプロピレン(=PP)保護コーティングで塗装した、金属チューブの、特に地中パイプライン用のチューブの成形加工である。
【0002】
本発明において、「金属基材」または「金属性基材」という用語は、連続金属層を有する非金属性基材、または金属性材料(例えば金属網)で不連続にのみ覆われた非金属性基材などの金属を含む。金属被覆された非金属性基材は、一部がプラスチック材料(例えば熱硬化性物質またはコンポジット)製であってよい。
【0003】
「非ハロゲン化ポリマー」という用語は、ハロゲン含有モノマーの重合により形成されていないポリマーを意味する。したがって、これら非ハロゲン化ポリマーのハロゲン含量は、ゼロまたはゼロ付近であるべきである。しかしながら、「非ハロゲン化」ポリマーが多少のハロゲン含有不純物を含有することは排除できない。ただし、本発明の意味する「非ハロゲン化ポリマー」において、ハロゲン含量は、1重量%以下、特に0.1重量%以下である。
【0004】
本明細書中で、用語「チューブ」および「パイプ」は、置き換えることができる。「チューブ」という用語はパイプを含み、「パイプ」という用語はチューブを含む。
【背景技術】
【0005】
従来技術によるPEまたはPP塗装パイプの製造では、コンバージョンコーティング溶液で、例えばCr(VI)を含有する酸性溶液で、鋼鉄パイプの外表面を前処理する。次いで、パイプを約200℃まで加熱し、通常パウダーコーティングとして塗布するエポキシ系プライマーで塗装する。約200℃で、ホットメルト接着剤でプライマーをオーバーコートし、その上に、約200℃で押し出し方法によりPEまたはPPコーティングを塗布する。その後、パイプを水で周囲温度まで冷却する。したがって、この方法は、コンバージョンコートされた鋼鉄表面と最終のPEまたはPPオーバーコートとの間で、2つの異なる接着層の塗装を必要とする。さらに、上記方法は、約200℃までのパイプ温度を必要とし、パイプの大きさのためにエネルギー多消費である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
処理工程の数を減らすことが、本発明の目的である。方法のエネルギー消費量の合計を減らすことも、さらなる目的である。もちろん、改良された方法で塗装したパイプの性能、特にPEまたはPPオーバーコートのベース金属への接着の性能が期待され、このような製品に対する技術的要求を満たす塗装パイプの腐食特性が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ポリマーを(任意に前処理した)金属表面に結合するための接着剤として、エポキシドに基づく安定な1液のカチオン硬化型組成物を使用する。この組成物は金属イオンを含有する開始剤を含有し、開始剤の金属イオンを還元することができる金属性基材と接触すると、エポキシモノマー、樹脂またはプレポリマーの重合工程を開始する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
酸化還元カチオン重合は、酸化工程および還元工程を含む。遊離のまたは分子内のまたはイオンのいずれかの原子が、電子を失う際、原子は酸化され、その酸化数が増加する。遊離のまたは分子内のまたはイオンのいずれかの原子が、電子を得る際、原子は還元され、その酸化数が減少する。1つの原子が電子を得て、別の原子がその電子を提供し酸化されなければならないように、酸化と還元は常に同時に起こる。酸化還元対において、一方の種が還元剤として働き、他方は酸化剤として働く。酸化還元反応が起こる際、還元剤は還元される別の反応物に電子を与える、または、提供する。したがって、還元剤自体は、電子を失うため酸化される。酸化剤は電子を受けてまたは得て、それ自体を還元しながら還元剤を酸化させる。酸化還元対の2つの試薬の相対的な酸化力または還元力を比較することで、どちらが還元剤でどちらが酸化剤であるかを決定できる。還元剤または酸化剤の強さは、それらの標準還元電位(Ered)または標準酸化電位(Eox)から決定できる。
【0009】
金属塩の形態のルイス酸を、カチオン重合の開始剤として使用する。多数の強ルイス酸開始剤が、モノマーの直接開始反応で機能することが示されている(図式1)(Collomb,J.、Gandini,A.、Cheradamme,H.著、「Macromol. chem. Rapid Commun.」、1980年、第1489−1491頁)。より強いルイス酸ほど、その開始力がより強くなる。
【0010】
【化1】

【0011】
全てのルイス酸金属塩がカチオン重合型モノマーと反応するとは限らない。多くは、貯蔵安定な1成分のカチオン重合系の開始剤成分として処方化できる。これらの例において、開始剤の分解および重合の活性化は、通常、熱または電磁放射硬化方法により達成される(Castell,P.ら著、「Polymer」、2000年、41(24)、第8465−8474頁)。
【0012】
本発明は、エポキシ系接着剤を用いた、ポリマーを金属基材へ結合するための代替重合開始方法を利用する。この代替方法において、カチオン重合を開始する種は、金属イオンMの金属表面との酸化還元反応によって、金属イオンMを含有する開始剤成分から生じる。
【0013】
本発明の1つの態様は、金属基材を非ハロゲン化ポリマーに結合する方法であって、
i)金属または非ハロゲン化ポリマーにエポキシ系接着剤を塗布する工程、
ii)金属基材と非ハロゲン化ポリマーを接合させる工程、および
iii)エポキシ系接着剤を硬化させる工程
を含み、
ここで、上記エポキシ系接着剤は、
a)エポキシ基を有する1種以上のモノマー、樹脂またはプレポリマー、および
b)nの酸化状態にある金属イオンMの少なくとも1種の塩を含有する開始剤成分、ここで、金属イオンMは、金属基材の表面の標準還元電位よりも高い標準還元電位Eを有し、標準還元電位Eは、金属イオンMのnの酸化状態からゼロの酸化状態への、または金属イオンMのnの酸化状態からmの酸化状態への、金属イオンMの還元に対する標準還元電位のいずれかであり、mはnよりも小さいがゼロよりも高い、
を含む。
【0014】
工程iii)において、約15℃ないしはそれ以上の温度で硬化を起こすことができる。例えば、工程ii)において、周囲温度で、例えば約15℃〜約30℃の範囲の温度で、金属基材と非ハロゲン化ポリマーを結合させてよく、そして、工程iii)において、この温度で接着剤を硬化させてよい。あるいは、周囲温度で金属基材と非ハロゲン化ポリマーを結合させてよいが、その後、工程iii)において、接着剤の硬化を達成するために、約30℃ないしはそれ以上の温度、例えば30℃〜110℃の範囲の温度に加熱してもよい。
【0015】
金属基材と非ハロゲン化ポリマーを「結合する」特別な方法は、非ハロゲン化ポリマーの金属基材上への押し出しである。この方法において、非ハロゲン化ポリマーの粘度が押し出し方法に十分な低さになる温度まで、非ハロゲン化ポリマーを加熱すべきである。この温度は、200℃までないしはそれ以上の範囲であってよい。金属基材は、非ハロゲン化ポリマーの押し出し温度以下の温度を有してよい。この態様において、非ハロゲン化ポリマーと金属基材は、工程ii)において異なる温度を有してよい。
【0016】
例えば、非ハロゲン化ポリマーを、エポキシ系接着剤をのせたパイプ表面上に押し出しにより塗装する場合、非ハロゲン化ポリマーの温度は、エポキシ系接着剤と接触する際、一般的に、周囲温度と押し出し温度との間であってよい。この温度は、200℃までないしはそれより高くてよい。金属パイプがこの値以下の温度を有する場合、特に110℃以下の場合、非ハロゲン化ポリマーが200℃までないしはそれより高い温度で金属パイプ上に押し出される際、エポキシ系接着剤の実際の「硬化温度」は、パイプ温度と押し出し温度の中間である。
【0017】
金属基材は、例えば、鉄または鋼鉄、亜鉛メッキ鋼または合金亜鉛メッキ鋼、アルミネート化鋼鉄(aluminated steel)、銅または銅合金、亜鉛または亜鉛合金、真ちゅう、アルミニウムまたはアルミニウム合金であり得る。亜鉛めっき鋼は、電解的にまたは熱浸漬コーティングによるいずれかで、亜鉛で塗装された鋼鉄である。合金亜鉛メッキ用に、亜鉛−ニッケルまたは亜鉛−アルミニウム合金のような亜鉛合金のいずれかをコーティングに使用する、または亜鉛−鉄合金が鋼鉄および亜鉛の内部に形成される温度まで亜鉛コーティングを加熱する。
【0018】
1つの態様において、エポキシ系接着剤を塗布する前に、腐食防止前処理により金属基材の表面を前処理する。例えば、前処理は、金属表面とCr(VI)イオンを含有する酸性溶液との接触を含むクロメート法であり得る。あるいは、金属表面をフルオロ錯体またはTiおよび/またはZrの酸性溶液と接触させることにより前処理することができる。このような前処理方法は、技術水準において既知である。
【0019】
さらに好ましい態様において、エポキシ系接着剤は、さらに、腐食防止剤を含む。先行技術でこの目的に対し既知の腐食抑制剤(または防食顔料)を用いることができる。次の例が挙げられ得る:酸化マグネシウム顔料、特にナノ形状のもの、微粉化および極微粉化硫酸バリウムまたは商標名「Shieldex(登録商標)」で知られるようなカルシウムケイ酸塩に基づく腐食防止顔料。リン酸鉄、リン酸亜鉛、および鉄−亜鉛リン酸塩のような金属リン酸塩を腐食防止剤として使用してよい。特に適する腐食防止剤は、モリブデン酸亜鉛および有機表面処理で修飾されたリン酸亜鉛である。それらの粒子は、好ましくは、本質的に球形であり、粒子の少なくとも99.8%が、44μm篩を通過するような粒径を有する。このような無機腐食防止剤に加えて、またはその代わりに、技術水準で既知の有機腐食防止剤も使用してよい。
【0020】
腐食防止剤は、通常、エポキシ系接着剤の合計重量に対して0.5〜30重量%、好ましくは1〜10重量%の量で存在する。
【0021】
エポキシ系接着剤が腐食防止剤を含む場合、金属基材の別のコンバージョンコーティング工程は不要であり、この処理工程を省略でき、その結果、技術水準と比較して処理手順がより短くなり環境影響が減少する。したがって、エポキシ系接着剤が腐食防止剤を含む場合、金属基材の表面がエポキシ系接着剤と接触する前に、金属基材の表面に腐食防止前処理を施す必要がない。しかしながら、高い耐腐食性が必要である場合には、接着剤が腐食防止剤を含むとしても、金属基材の表面がエポキシ系接着剤と接触する前に腐食防止前処理を施してよい。
【0022】
一般に、本発明において使用する組成物のエポキシ樹脂として、1分子あたりに少なくとも約2個の1,2−エポキシ基を有する多くのポリエポキシドが適当である。ポリエポキシドは、飽和の、不飽和の、環式のまたは非環式の、脂肪族の、脂環式の、芳香族のまたは複素環のポリエポキシド化合物であってよい。適当なポリエポキシドの例としては、ポリグリシジルエーテルが挙げられ、これはエピクロロヒドリンまたはエピブロモヒドリンとポリフェノールとの、アルカリの存在下での反応により製造される。そのための適当なポリフェノールは、例えば、レゾルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、および1,5−ヒドロキシナフタレンである。ポリグリシジルエーテルのベースとしての、他の適当なポリフェノールは、フェノールとノボラック樹脂型のホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドとの既知の縮合生成物である。
【0023】
原則として適当な他のポリエポキシドは、多価アルコールまたはジアミンのポリグリシジルエーテルである。このようなポリグリシジルエーテルは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたはトリメチロールプロパンなどの多価アルコールから誘導される。
【0024】
他のポリエポキシドは、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、例えば、グリシドールまたはエピクロロヒドリンと脂肪族もしくは芳香族のポリカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸)またはダイマー脂肪酸との反応生成物である。
【0025】
他のエポキシドは、オレフィン系−不飽和の脂環式化合物のエポキシ化生成物から、または、天然油および脂肪から誘導される。
【0026】
ビスフェノールAまたはビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの反応により誘導した液状エポキシ樹脂が特に好ましい。室温で液体の前記エポキシ樹脂は、通常、150〜約480のエポキシ等量を有する。
【0027】
室温で固体のエポキシ樹脂を、さらにまたは代わりに使用してもよく、同様にポリフェノールとエピクロロヒドリンから得られる;ビスフェノールAまたはビスフェノールFに基づき、45〜130℃の、好ましくは50〜80℃の融点を有するものが特に好ましい。これらは、液体エポキシ樹脂とは実質的に異なり、そのより高い分子量のために室温で固体となる。固体エポキシ樹脂は、通常、400のエポキシ等量を有する。
【0028】
エポキシ系接着剤は、好ましくは、少なくとも2官能性のエポキシ樹脂を含む。それは、ビスフェノールAまたはビスフェノールFに基づくのが好ましい。それは、好ましくは室温で液体である。Epon(登録商標)828は、このような2官能性のエポキシ樹脂の例である。2官能性のエポキシ樹脂に加えて、多官能性のエポキシ樹脂が存在してもよい。さらに、エポキシ系接着剤は、2官能性または多官能性であり得る脂環式のエポキシ樹脂を含んでよい。例としては、シクロヘキサンエポキシドに基づく2官能性エポキシ樹脂、例えばエポキシシクロヘキサンメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸塩3.4−、または3,4−エポキシシクロヘキサンメチル3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボン酸塩である。
【0029】
エポキシ系接着剤は、エポキシ系接着剤の合計重量に基づいて約10〜約98重量パーセントのエポキシ樹脂を含んでよい。好ましくは、30〜80重量パーセントのエポキシ樹脂を含む。芳香族のおよび脂環式のエポキシ樹脂の混合物を使用する場合、芳香族エポキシ樹脂が、35〜60重量パーセント、特に40〜55重量パーセントの量で存在するのが好ましい。その際、脂環式エポキシ樹脂は、好ましくは10〜20重量パーセントの量で存在し、ここで、全ての重量パーセントはエポキシ系接着剤の合計重量に対するものである。
【0030】
開始剤成分の金属イオンMは、(任意に前処理された)金属表面と接触することにより電気化学的に還元されるように選択され、金属表面の標準還元電位および開始剤成分の金属イオンMの標準還元電位に応じて、その最初のnの酸化状態から、ゼロの酸化状態へ(そのため、反応するいくらかの金属イオンMが金属表面上にメッキする)、またはnの酸化状態からmの酸化状態へ(mはnよりも小さいがゼロよりも高い)のいずれかで還元される。例えば、Mは、Ce(III)に還元され得るCe(IV)、または(VII)もしくは(VI)の酸化状態から(IV)もしくは(II)の酸化状態へ還元され得るMnであってよい。金属表面が鉄よりもより腐食されないならば、金属イオンMに可能な別の酸化還元対は、Fe(III)/Fe(II)である。
【0031】
本明細書において標準還元電位に言及することは、種が電子を得て、還元される傾向を示す。標準還元電位は、標準条件下(25℃、1M濃度、1atmの圧力および純粋状態の元素)で測定される。
【0032】
電気化学列は、物質の標準電位に基づく酸化力および還元力の基準である。物質の標準電位は、水素電極に対する測定である。負の標準電位を有する金属は、溶液中で水素イオンを還元する熱力学的傾向を有し、一方、正の標準電位を有する金属のイオンは、水素ガスによって還元される傾向を有する。図式2(下記)に示す反応性系列は、電気化学列の延長である。
【0033】
【表1】

【0034】
通常、反応性系列で高い位置にある金属または元素のみが、反応性系列でより下の別の金属または元素を還元することができ、例えば鉄は、錫を還元することができるが、カリウムを還元することはできない。図式2に示されるものから反応性系列の順序を(変える)逆にすることも可能である。しかしながら、用語「より高い」および「より低い」は、図式2に示す順序において、最も上に最も高い反応性を有し、最も下に最も低い反応性を有する反応性系列に関すると理解される。本発明に関連して、いずれにしても、開始剤成分の金属は、塗布される表面で還元性であるように選択されるのが好ましい。
【0035】
開始剤は、金属イオンMの酸化還元電位が上に定義した基準を満たす限り、DE10 2006 057 142に開示されている化合物から選択してよい。
【0036】
エポキシ系接着剤製剤自体に開始剤成分を添加してもよい。しかしながら、開始剤成分の前駆体を添加することもできるため、開始剤成分自体がエポキシ系接着剤製剤中で形成される。例えば、開始剤成分AgSbFの代わりに、塩AgNOおよびNa−またはKSbFを接着剤製剤に添加することもできる。金属イオンMが有機配位子に結合した開始剤成分を使用することを意図する場合、AgSbFのような金属塩と配位子を接着剤製剤に別々に添加することもできる。
【0037】
組成物の開始剤成分が遷移金属カチオンを含むのが、遷移金属塩であるため好ましい。金属イオンは、有機配位子に結合しなくてよいが、配位子で置換されていてもよい。金属イオンMが有機錯体の一部である場合、すなわち金属イオンMが少なくとも1個の有機配位子と結合している場合、1個以上のC=C二重結合を有する配位子で、金属が有機配位子に結合する位置が1個以上のC=C二重結合であるのが好ましい。このような配位子の例は、開鎖または環状のモノオレフィン、ジエンまたはトリエンであり、シクロへキセン、シクロドデセン、ヘキサジエン、デカジエン、例えば1,9−デカジエン、オクタジエン、例えば1,7−オクタジエン、シクロオクタジエン、例えば1,5−シクロオクタジエンなどである。しかしながら、クラウンエーテルまたは2個以上のエーテルエーテル結合を有する開鎖エーテルも、配位子として存在することができる。好ましいクラウンエーテルは、ジベンゾ−18−クラウン−5、およびこれよりも大きいクラウンエーテルである。好ましい2個以上のエーテルエーテル結合を有する開鎖エーテルは、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、およびブタンジオールジビニルエーテルであり、これらはさらに、以下で可能な促進剤としても記載される。
【0038】
金属Mが有機配位子と結合しているか否かという事実と独立して、金属塩対イオンは、無機強酸または有機強酸のアニオンから好ましくは選択され得る。強酸は、0以下のpK値を有する酸として定義される。有機強酸の例としては、いわゆる「超酸」から選択してよい。無機強酸のアニオンは、例えば、ClO、BF、PF、SbF、AsF、(CBアニオン、(CGaアニオン、カルボランアニオン、トリフルイミド(トリフルオロメタンスルホネート)アニオン、ビス−トリフルイミドアニオン、それらに基づくアニオンおよびそれらの組合せからなる群から選択してよい。さらに望ましくは、金属塩対イオンを、ClO、BF、PF、SbFおよびそれらの組合せからなる群から選択してよい。溶解性および安定性の理由からSbFが特に好ましい。
【0039】
特に金属基材が鉄または鋼鉄からなる場合、好ましい金属イオンMは、銀、銅およびそれらの組合せを含む。それらの対イオンは、好ましくはClO、BF、PF、SbFおよびそれらの組合せからなる群から選択される。SbFが特に好ましい。開始剤の例は、Ag(BF)、Ag(PF)、Ag(トリフルオロメタンスルホネート)、Cu(BF、Zn(BFである。
【0040】
特に、金属基材が鋼鉄の場合(鋼鉄は上記の通りコンバージョンコートされてよい)、最も好ましい開始剤成分はAgSbFである。しかしながら、特に溶解性の理由のために、Ag(配位子)SbFが別の好ましい開始剤成分であってよく、ここで、配位子は、クラウンエーテル、またはシクロへキセン、シクロドデセン、ヘキサジエン、デカジエン、例えば1,9−デカジエン、オクタジエン、例えば1,7−オクタジエン、シクロオクタジエン、例えば1,5−シクロオクタジエン、などの開鎖または環状のモノオレフィン、ジエンまたはトリエンからなる群から好ましくは選択される)。配位子の数nは、1または通常2であり得る。配位子は、ダイマー、オリゴマー、またはポリマーを形成するように、2個の金属イオンMで架橋してもよい。もちろん、前の段落で述べた他の銅塩または銀塩が、金属イオンでこのような配位子を有してもよい。
【0041】
金属塩の溶解性を、対イオンを変えること、金属塩の金属への配位子の追加および/または置換およびそれらの組合せにより改良してよい。これにより、適度な溶解性が得られるに従って、表面と金属塩との間での効果的な電子移動が達成される。
【0042】
金属イオンMを含有する開始剤成分は、エポキシ系接着剤の合計重量に対して、通常0.1〜10重量パーセントの量で、好ましくは0.3〜7重量パーセントの量で存在する。例えば、AgSbFを開始剤成分として使用する場合、それは0.3〜3重量パーセントの量で存在してよい。より高い分子量を有するAg(シクロオクタジエン)SbFを開始剤成分として使用する場合、それは、好ましくは1,5〜5重量パーセントの量で存在する。銅化合物類似体を使用する場合、AgおよびCu化合物の分子量比を用いて、それらの好ましい範囲を計算することができる。
【0043】
一般に、ここで使用される接着剤組成物は、追加のエッチング液または酸化物除去剤の必要なく、酸化された金属表面で硬化できる。しかしながら、本発明で使用する組成は、所望により酸化物除去剤を含有する。エッチング液または酸化物除去剤に含まれる例は、例えば、本発明の製剤中に塩化物イオンおよび/または亜鉛(II)塩を含有するものであり、いずれの酸化物層のエッチングも可能である。これは、(ゼロ−酸化状態)金属を順に下位にするため、遷移金属塩を還元できるのに十分に活性化される。
【0044】
ここで使用する酸化還元カチオン系は、追加のいずれの還元剤も必要としない。酸化還元反応に関与できる金属基材に塗布するまで、それらは安定であるため、従来の還元剤成分の役割を果たす。本発明で使用する組成物は、1液組成物としてさえ貯蔵安定的であり、特別な包装を必要としない。
【0045】
本発明で使用する組成物は、効率的な硬化のための追加の触媒を必要としない。本発明は、組成物を塗布し硬化させる金属表面に関して、適当な選択の開始剤成分を使用する。したがって、酸化還元化学で促進された表面を、カチオン型硬化性エポキシ組成物での硬化を開始するために利用できる。しかしながら、当然のことながら、本発明で使用する組成物は、任意に、金属表面と組成物の開始剤成分との間の電子移動に影響する触媒を含んでよい。これは、より早い硬化速度が必要とされる場合に有用であり得る。適当な触媒は遷移金属塩を含む。触媒は消費されることなく硬化反応を加速する。このことにより、触媒と、続く段落に記載する硬化反応の間に消費される硬化促進剤とが区別される。
【0046】
好ましい態様において、エポキシ系接着剤は、硬化促進剤、好ましくは少なくとも1個のビニルエーテル官能基を含有する種をさらに含む。少なくとも1個のビニルエーテル基を含有する促進剤種は、硬化速度を著しく促進する。促進剤種は、次の構造を有し得る。
【0047】
【化2】

[式中、mは0または1であってよく;
nは0〜5であってよく;
、R、およびRは同一または異なり、水素、C−C20アルキル鎖(直鎖状、分枝状または環状)およびC−C20アリール部分およびそれらの組合せからなる群から選択してよく;
XはC−C30の、飽和のまたは不飽和の、環式のまたは非環式の部分であってよく;
、R、RおよびXは、独立して、エーテル結合、硫黄結合、カルボキシル基、およびカルボニル基を含有しても、しなくてもよい。]
【0048】
上記の式において、X、R、R、およびRが、例えばハロゲン置換、ヘテロ原子置換等の、分子の機能を実質的に変更することなく置換されたそれらの変形体および誘導体を含んでよいことは、当業者に理解される。
【0049】
望ましくは、ビニルエーテル成分は、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル、ビス−(4−ビニルオキシブチル)アジペート、エチル−1−プロペニルエーテル、ビス−(4−ビニルオキシブチル)イソフタレート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]テレフタレート、ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレート、ビス[[4−[(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]グルタレート、トリス(4−ビニルオキシブチル)トリメリテート、Vectomer(登録商標)2020(CAS no. 143477−70−7)、2−エチルヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert.−ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリ−THF−ジビニルエーテル、ポリグリコールに基づくモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノール−ジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノール−モノビニルエーテル、およびそれらの組合せからなる群から選択される。好ましいビニルエーテルは、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、およびブタンジオールジビニルエーテルである。
【0050】
ビニルエーテル成分は、開始剤成分の金属イオンMに対し錯化剤特性を有し得るため、錯化剤でもあり、エポキシ系接着剤中でのそれらの溶解性を改善することができる。
【0051】
少なくとも1個のビニルエーテル官能基を含有する促進剤成分または錯化剤は、カチオン重合の速度を著しく加速する。促進剤成分は、組成物全体の重量に対し60w/w%まで、例えば組成物全体の重量に対し5〜50w/w%、好ましくは組成物全体の重量に対し5〜20w/w%の量で存在してよい。
【0052】
さらに、エポキシ系接着剤は、先に述べた腐食防止剤粒子とは異なる、(電子顕微鏡により測定して)1μm以下の平均粒径を有する粒子をさらに含んでよい。このような追加の粒子は、例えばレオロジー改良剤として作用し得る。このような粒子の例は、沈降シリカまたはヒュームドシリカの種々の形態である。それらの粒径(凝集体に対して電子顕微鏡により測定)は、通常0.5μmより小さいが0.1μmより大きい。
【0053】
これら粒子は、通常、エポキシ系接着剤の合計重量に対して0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の量で存在する。
【0054】
エポキシ系接着剤は、さらなる成分を含んでよい。例としては:
−開始剤成分の追加の可溶化剤、例えばクラウンエーテル:0〜10重量パーセント、好ましくは0.3〜7重量パーセント;
−充填剤(腐食防止剤およびレオロジー改良剤の他に):0〜70重量パーセント、好ましくは1〜50重量パーセント;
−軟化剤、例えばアミノ−末端ポリエーテルに基づく追加のエポキシ−ポリマー、エポキシ系(反応性)ゴム、またはエポキシ樹脂と異なるポリマー、例えばブタジエンおよび/またはイソプレンのポリマーまたはコポリマーのような、熱可塑性のポリウレタンまたはゴム:0〜60重量パーセント、好ましくは2〜50重量パーセント。これらの反応性軟化剤に加えてまたはその代わりに、エポキシ系接着剤組成物中に、またはそれ以上に、ゴムを含むことが、添加剤は、硬化した接着剤を頑丈にし、硬化した接着剤が応力下で割れる傾向を減らすため、特に有利である。ここで使用する、「ゴム」という用語は、ゴムおよびエラストマーの両方を含む。適当なゴムは、熱可塑性ゴムを含む。ゴムの種類の例は、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリブタジエン、イソブチレンポリマー、アルファ−オレフィンエラストマー、エチレン−プロピレンエラストマー、エチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、水素化天然ゴムなどを含む。熱可塑性ブロックコポリマーは、本発明で使用するゴムの特に好ましい種類の1つである。このような物質は、1以上の軟質またはエラストマー部分(「B」)に共有結合する、1以上のベース部分(「A」)を含有する。A部分は、ポリスチレン、ポリ(アルファ−メチルスチレン)、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリカーボネートなどであってよい。B部分は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(エチレン−コブチレン)、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルなどであってよい。ブロックコポリマーは、直鎖状、分枝状、放射状または星型構造を有してよく、例えば、一般構造A−B−A、(A−B)などに対応してよい。SIS、SEBSおよびSBSブロックコポリマーが、このような物質の具体的な種類の例である。カルボキシ基または他の基で官能化され、エポキシ系接着剤組成物の他の成分と反応することができる、ブタジエン−コポリマーのような液状ゴムを用いてもよい。
【0055】
上記のようなエポキシ系接着剤を使用すると、非ハロゲン化重合性物質の表面を活性化する必要なしに、ポリオレフィンなどの非ハロゲン化重合性物質を、金属基材に結合できる。技術水準において知られるように、ポリマーの、特にポリオレフィンの結合は、例えば強酸化体での処理、フレーム処理、またはプラズマ処理による表面活性化を通常必要とする。これらの処理工程は、本発明の方法に必要ではない。したがって、1つの態様において、本発明の方法は、非ハロゲン化ポリマー基材をエポキシ系接着剤と接触させる前に物理的にまたは化学的に活性化させないという事実によって特徴付けられる。
【0056】
金属基材に結合させる非ハロゲン化ポリマー基材は、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリカーボネート、ナイロンのようなポリアミド、ポリエーテル、およびポリエステル、例えばポリアルキレンテレフタレートからなる群から選択してよい。特に重要なポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)であり、それらは地中のチューブの外側のコーティングまたはパイプライン表面として使用される。
【0057】
金属のまたは非ハロゲン化ポリマーの基材上に、チューブまたはパイプの表面上に、エポキシ系接着剤を、(周囲温度でまたは硬化温度以下の高温で)液体としてまたは粉末状で塗布してよい。液体として、基材上にブラシがけしてまたはスプレーしてよい。より小さい部分を、続く過剰の接着剤の除去と共に、エポキシ系接着剤中に浸漬してもよい。エポキシ系接着剤を、例えば静電塗装方法で、基材上に粉体としてスプレーした後、基材の温度を上げることにより溶解させてもよい。あるいは、基材を粉体の溶解より高い温度に(しかし、その硬化温度より低い温度に)予備加熱し、周囲温度で粉体を予備加熱した基材上にスプレーしてもよく、それは、少なくとも部分的に溶解して表面に付着する。
【0058】
1つの特有の目的は、チューブのPEまたはPPコーティングを、通常は鋼鉄表面であるチューブの(外側または内側の)金属表面へ結合するための改良方法を提供することである。したがって、本発明の特有の態様において、金属基材はチューブであり、工程i)において、エポキシ系接着剤を外側のチューブ表面に塗布し、工程ii)において、エポキシ−接着層に、押し出しによりポリマーを塗布する。
【0059】
工程i)において、外側または内側のチューブ表面にエポキシ系接着剤を塗布する前に、チューブを加熱する必要は全くないが、例えば少なくとも60℃に加熱してもよく、しかし、通常、110℃以下であり、特に150℃以下である。(技術水準とは異なり)より高い温度にチューブを加熱することは不要である。工程ii)において、特にPE−またはPP−基材のポリマーを、工程i)に関連して予備加熱されていても、されていなくてもよい外側または内側のチューブ表面に、200℃より高い温度で押し出す。コーティング速度は6m/分の範囲であり得る。コートされたチューブを、周囲温度の水で冷却してもよい。
【0060】
通常は、硬化後のエポキシ系接着剤は、約1〜500μmの厚みを有する。その重合性オーバーコート(例えばPEまたはPP層)の厚みは、通常、0.2〜10mmの範囲である。
【0061】
本発明の方法によれば、(コンバージョンコートされていてよい)金属基材の表面と重合性オーバーコートとの間に、唯一の接着層が存在する。追加のプライマーを塗布する必要がなく、物質を節約するため、より経済的な方法となる。前述した特定の態様において、接着剤を塗布する前に、金属性基材をコンバージョンコートする必要はない。そのため、処理手順が短縮され、消費化学物質の量および生じる廃棄物の量が減少する。これらの態様において、コンバージョンコーティングのための、有毒かつ発がん性のCr(VI)化合物を使用する必要がないことが、特に重要である。
【0062】
したがって、パイプコーティングのための技術水準と比較して、本発明の方法は、処理工程の数を減らし、金属性基材の温度を下げることが可能である。これは、顕著なエネルギー節約をもたらす。特に長距離パイプラインに使用されるチューブの大きさを考慮する場合に、これは、経済的なおよび生態学的な利点を有する。チューブを全く加熱しない場合、乾燥機空間はもはや不要である。
【0063】
本発明の別の態様は、本発明の方法により互いに結合した、金属基材および非ハロゲン化ポリマーを含有する物品である。本発明の特有の物品は、非ハロゲン化ポリマーのコーティングがなされた金属基材製のチューブであり、特にPE−またはPP−コーティングが硬化したエポキシ系接着剤で結合し、好ましくはそれが重合性コーティングを金属表面へ結合するための唯一の接着剤である。本発明の方法において使用されるエポキシ系接着剤は1つであってよい。本発明のチューブは、特に、地中パイプラインに使用してよい。もちろん、それらを表面パイプラインとして同様に用いてもよい。
【0064】
最後に、本発明は、本発明の方法により、非ハロゲン化ポリマーで、特にPE−またはPP−基材で塗装された金属基材製のチューブを含む。
【実施例】
【0065】
本発明の方法において使用できるエポキシ系接着剤を、以下の表に従い成分を混合させて調製した。実験例4は、金属含有開始剤を使用しない参考である。この接着剤は、ポイオレフィンを金属に結合することができない。
【0066】
冷間圧延鋼鉄(CRS)を金属性基材として用い、架橋性PEをポリマーとして用いたピール試験において、PE層の破損が見られる。これは、接着層の凝集力および接着層とPE−層の間の接着力が、PE−層自体よりも強いことを意味する。
【0067】
組成物(全組成物に対する重量パーセント)。実験例4(開始剤なし)および実験例8および10(本発明の開始剤なし)は比較参考実験である。
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材を非ハロゲン化ポリマーに結合する方法であって、
i)金属または非ハロゲン化ポリマーにエポキシ系接着剤を塗布する工程,
ii)金属基材と非ハロゲン化ポリマーを接合させる工程、および
iii)エポキシ系接着剤を硬化させる工程
を含み、
ここで、該エポキシ系接着剤は、
a)エポキシ基を有する1種以上のモノマー、樹脂またはプレポリマー、および
b)nの酸化状態にある金属イオンMの少なくとも1種の塩を含有する開始剤成分、ここで、金属イオンMは、金属基材の表面の標準還元電位よりも高い標準還元電位Eを有し、標準還元電位Eは、金属イオンMのnの酸化状態からゼロの酸化状態への、または金属イオンMのnの酸化状態からmの酸化状態への、金属イオンMの還元に対する標準還元電位のいずれかであり、mはnよりも小さいがゼロよりも高い、
を含む方法。
【請求項2】
金属基材の表面とエポキシ系接着剤を接触させる前に、該金属基材の表面に腐食防止の前処理を適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
接着剤がさらに腐食防止剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属基材の表面とエポキシ系接着剤を接触させる前に、該金属基材の表面に腐食防止の前処理を適用しない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
金属イオンMが、有機配位子に結合していないか、または、少なくとも1個の有機配位子と結合しているかのいずれかであって、好ましくは、該有機配位子は、1個以上のC=C二重結合を有し有機配位子への金属の結合位置が1個以上のC=C二重結合である、または、該有機配位子は、クラウンエーテルもしくは2個以上のエーテル結合を有する開鎖エーテルである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
金属イオンMが遷移金属であり、好ましくはCu、Ag、およびそれらの組合せから選択される請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
金属イオンMの塩が、無機強酸または有機強酸の対イオン、好ましくはClO、BF、PF、SbF、AsF、(CB、(CGa、カルボラン、トリフルイミド、ビス−トリフルイミド、およびそれらの組合せからなる群から選択される無機強酸または有機強酸の対イオンを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
エポキシ系接着剤が、硬化促進剤を含む、好ましくは少なくとも1個のビニルエーテル官能基を含有する種を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
非ハロゲン化ポリマーを、エポキシ系接着剤と接触させる前に、物理的にまたは化学的に活性化させない、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
非ハロゲン化ポリマーが、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエーテル、およびポリエステルからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
金属基材がチューブまたはパイプであって、
工程i)において、チューブまたはパイプの内部表面または外部表面にエポキシ系接着剤を塗布し、および
工程ii)において、非ハロゲン化ポリマーをエポキシ−接着剤層に押し出しにより塗装する
請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
チューブまたはパイプが、工程i)の後で工程ii)の前に、150℃以下の温度、好ましくは110℃以下の温度を有する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の方法により互いに結合した、金属基材および非ハロゲン化ポリマーを含有する物品。
【請求項14】
非ハロゲン化ポリマーのコーティングが、硬化したエポキシ系接着剤で結合した金属基材製のチューブまたはパイプ。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれかに記載の方法を用い、非ハロゲン化ポリマーで塗装した金属基材製のチューブまたはパイプ。

【公表番号】特表2012−517914(P2012−517914A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549541(P2011−549541)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051611
【国際公開番号】WO2010/094599
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【出願人】(501194879)ロックタイト (アール アンド ディー) リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】LOCTITE (R & D) LIMITED
【Fターム(参考)】