説明

エポキシ・シリコーン混成樹脂組成物及びその製造方法、並びに発光半導体装置

【解決手段】 (A’)一分子中に1個以上の脂肪族不飽和一価炭化水素基をもち、かつ少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基をもつ有機ケイ素化合物、
(B)エポキシ当量250以上の芳香族エポキシ樹脂、もしくは芳香環を一部又は完全に水添した水添型エポキシ樹脂、
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)白金族金属系触媒、
(E)アルミニウム系硬化触媒、
(F)粘度が25℃で50mPa・s以下である非環式低粘度液状エポキシ樹脂
を必須成分とすることを特徴とするエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物。
【効果】 本発明のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の硬化物で被覆保護された発光半導体装置は、耐熱試験による変色も少なく、発光効率も高いため長寿命で省エネルギーに優れる発光半導体装置を提供することが可能となり、産業上のメリットは多大である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物表面における埃付着が全くなく、かつ低弾性で耐クラック性、接着性に優れた発光半導体被覆保護材として有効なエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物及びその製造方法、並びにこれを用いて発光半導体素子を被覆してなる発光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の発光半導体装置には素子がリード電極上に配置され、その周囲を透明樹脂で覆われた砲弾型と称される図3のような発光半導体装置が使用されていたが、近年実装工程の簡略化から図1及び図2に示されるような「表面実装型」と称される発光半導体装置が主流になりつつある。
【0003】
なお、図1〜3において、1はガラス繊維強化エポキシ樹脂製筐体、2は発光素子、3,4はリード電極、5はダイボンド材、6は金線、7は被覆保護材である。
【0004】
発光ダイオード(LED)等の発光半導体素子の被覆保護用樹脂組成物としては、その硬化体が透明性を有することが要求されており、一般にビスフェノールA型エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤を用いて得られるものが用いられている(特許文献1:特許第3241338号公報、特許文献2:特開平7−25987号公報参照)。
しかし、かかる透明エポキシ樹脂においても、樹脂の吸水率が高いために耐湿耐久性が低い、特に短波長の光に対する光線透過性が低いために耐光耐久性が低い、あるいは光劣化により着色するという欠点を有していた。
【0005】
そのため、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を一分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、及び一分子中に少なくとも2個のSiH基を含有するケイ素化合物、ヒドロシリル化触媒からなる光半導体素子の被覆保護用樹脂組成物も提案されている(特許文献3:特開2002−327126号公報、特許文献4:特開2002−338833号公報参照)。
【0006】
しかし、このようなシリコーン系の硬化物は耐クラック性を改良しようとすると一般に硬化物表面にタックがのこり、埃が容易に付着し光の透過性を損なう欠点がある。
【0007】
そのため、高硬度シリコーン樹脂を保護被覆用に使用したものが提案されている(特許文献5:特開2002−314139号公報、特許文献6:特開2002−314143号公報参照)。
【0008】
しかし、これらの高硬度シリコーン樹脂ではまだ接着性が乏しく、セラミック及び/又はプラスチック筐体内に発光素子が配置され、その筐体内部をシリコーン樹脂で充填したケース型の発光半導体装置では、−40℃〜120℃での熱衝撃試験で、シリコーン樹脂が筐体のセラミックやプラスチックから剥離してしまう問題点が生じていた。
【0009】
また、これら欠点を補う可能性をもつ組成物として、特開昭52−107049号公報(特許文献7)のエポキシ樹脂とシリコーン樹脂の成形組成物についても、接着力、変色の問題が生じていた。また更に、発光素子に使用されるSiC、GaAs、GaP、GaAsP、GaAlAs、InAlGaP、InGaN、GaN等の各種の化合物半導体の光学結晶の屈折率が高いため、被覆保護樹脂の屈折率がジメチル系シリコーン樹脂のように低い場合、被覆樹脂と光学結晶との界面で反射して発光効率が低下する欠点があった。
【0010】
このため、出光率を高めるための手段として反射防止膜をつけるなどの手法が提案されている(特許文献8:特開2001−246236号公報、特許文献9:特開2001−217467号公報参照)。しかし、反射防止膜を作製するためには工程が増え、コスト高になってしまう。
【0011】
【特許文献1】特許第3241338号公報
【特許文献2】特開平7−25987号公報
【特許文献3】特開2002−327126号公報
【特許文献4】特開2002−338833号公報
【特許文献5】特開2002−314139号公報
【特許文献6】特開2002−314143号公報
【特許文献7】特開昭52−107049号公報
【特許文献8】特開2001−246236号公報
【特許文献9】特開2001−217467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、本来相溶性のよくないエポキシ樹脂、特に、高分子量エポキシ樹脂とシリコーン樹脂を用いた場合においても均一に溶解し、かつ耐衝撃性、光透過性に優れた発光半導体被覆保護材として好適なエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物及びその製造方法並びにこれを用いて被覆され、発光効率の高い発光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)一分子中に1個のケイ素原子結合水酸基をもつ有機ケイ素化合物、(B)エポキシ当量250以上の芳香族エポキシ樹脂、もしくは芳香環を一部又は完全に水添した水添型エポキシ樹脂、(E)アルミニウム系硬化触媒及び(F)粘度が25℃で50mPa・s以下である非環式低粘度液状エポキシ樹脂を必須成分とし、かつ硬化物が透明なエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物で封止保護することで発光効率が高く、信頼性に優れた発光半導体装置が得られることを見出したものである。
【0014】
即ち、本発明者らは、先に表面タック性がなく、かつ接着性に優れ、しかも耐衝撃性、光透過性に優れた発光半導体被覆保護材として好適なエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物及びこれを用いて被覆され、発光効率の高い発光半導体装置を提案した(特願2003−390482号参照)。
【0015】
しかし、更に鋭意検討を重ねた結果、エポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の必須成分であるシリコーン樹脂とエポキシ樹脂が組合せによっては相溶し難い場合があり、特に、エポキシ樹脂が高分子量体の場合に顕著であったが、その結果として、透明な硬化物が得られず、光透過性が不十分となってしまう場合があり、この点の解決が望まれた。
このような要望に対し、上述した(F)成分の粘度が25℃で50mPa・s以下である非環式低粘度液状エポキシ樹脂を配合することが有効であることを知見したものである。
【0016】
特に、新規なエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物として、
(A’)一分子中に1個以上の脂肪族不飽和一価炭化水素基をもち、かつ少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基をもつ有機ケイ素化合物、
(B)エポキシ当量250以上の芳香族エポキシ樹脂、もしくは芳香環を一部又は完全に水添した水添型エポキシ樹脂、
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)白金族金属系触媒、
(E)アルミニウム系硬化触媒、
(F)粘度が25℃で50mPa・s以下である非環式低粘度液状エポキシ樹脂
を必須成分とする、ヒドロシリル化反応とエポキシ樹脂の硬化反応が共存するエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の硬化物で発光半導体素子を封止することで、硬化物の表面タック性もなく、低弾性及び透明性を兼ね備え、接着性も良好な発光半導体装置が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0017】
従って、本発明は、
(A’)一分子中に1個以上の脂肪族不飽和一価炭化水素基をもち、かつ少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基をもつ有機ケイ素化合物、
(B)エポキシ当量250以上の芳香族エポキシ樹脂、もしくは芳香環を一部又は完全に水添した水添型エポキシ樹脂、
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)白金族金属系触媒、
(E)アルミニウム系硬化触媒、
(F)粘度が25℃で50mPa・s以下である非環式低粘度液状エポキシ樹脂
を必須成分とするエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、発光半導体素子が、
(A)一分子中に1個以上のケイ素原子結合水酸基をもつ有機ケイ素化合物、
(B)エポキシ当量250以上の芳香族エポキシ樹脂、もしくは芳香環を一部又は完全に水添した水添型エポキシ樹脂、
(E)アルミニウム系硬化触媒、
(F)粘度が25℃で50mPa・s以下である非環式低粘度液状エポキシ樹脂
を必須成分とするエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の透明硬化物で封止保護された発光半導体装置、更に、発光半導体素子が上記(A’)〜(F)成分を必須成分とするエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の透明硬化物で封止保護された発光半導体装置を提供する。
なおまた、本発明は、(B)成分と(F)成分を均一に混合した後、(A’)成分と(C)成分及び(D)成分と(E)成分を加えて均一に混合するエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の硬化物で被覆保護された発光半導体装置は、耐熱試験による変色も少なく、発光効率も高いため長寿命で省エネルギーに優れる発光半導体装置を提供することが可能となり、産業上のメリットは多大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の発光半導体素子を被覆保護する被覆保護材として好適に用いられるエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物としては、(A)一分子中に1個以上のケイ素原子結合水酸基をもつ有機ケイ素化合物、(B)エポキシ当量250以上の芳香族エポキシ樹脂、もしくは芳香環を一部又は完全に水添した水添型エポキシ樹脂、(E)アルミニウム系硬化触媒及び(F)粘度が25℃で50mPa・s以下である非環式低粘度液状エポキシ樹脂を必須成分とし、かつ硬化物が透明なエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物、特に、(A’)一分子中に1個以上の脂肪族不飽和一価炭化水素基をもち、かつ少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基をもつ有機ケイ素化合物、(B)エポキシ当量250以上の芳香族エポキシ樹脂、もしくは芳香環を一部又は完全に水添した水添型エポキシ樹脂、(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、(D)白金族金属系触媒、(E)アルミニウム系硬化触媒及び(F)粘度が25℃で50mPa・s以下である非環式低粘度液状エポキシ樹脂を含有してなるヒドロシリル化反応とエポキシ樹脂の硬化反応が共存するエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物である。
【0020】
ここで、(A)成分及び(A’)成分としての一分子中に1個以上のケイ素原子結合水酸基(シラノール基)を有する有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン、オルガノシロキサン、オルガノシルアルキレン、オルガノシルアリーレン等が挙げられ、特にオルガノシラン、オルガノシロキサンの場合は、下記一般組成式(1)で示されるものを使用することができる。
1a2b(HO)c(R3O)dSiO(4-a-b-c-d)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有する置換もしくは非置換の一価炭化水素基、R2は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない置換もしくは非置換の一価炭化水素基、R3は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。cは正数、a,b,dは0又は正数であるが、但し、(A’)成分の場合はa>0であり、また(A)成分、(A’)成分がオルガノシランである場合には、cは正の整数、a,b,dは0又は正の整数であって、a+b+c+d=4であり、オルガノポリシロキサンの場合にはa+b+c+d<4である。)
この場合、R1、R2、R3は炭素数が1〜10、特に1〜6の範囲にあるものが好適である。
【0021】
具体的には、R1としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基などが代表的なものとして挙げられる。R2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基などが代表的なものとして挙げられる。R3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基やフェニル基等のアリール基などを例示することができる。
【0022】
代表的な水酸基含有オルガノシランとしては、トリフェニルシラノール、ジフェニルメチルシラノール、ジフェニルシランジオール、テトラメチル−ジヒドロキシジシロキサン、ビニルジフェニルシランジオールなどである。
【0023】
また、アルコキシ基等の加水分解可能な基を含んだシラノール基含有オルガノシラン、オルガノシロキサンは加水分解可能なシランの加水分解又は一部加水分解によって製造することができる。代表的なシランとしては、CH3(CH3O)C65SiOH、CH3(C25O)C65SiOH、(CH2=CH)(CH3O)C65SiOH、C65(CH3O)Si(OH)OSi(OH)(CH3O)C65などである。
【0024】
オルガノポリシロキサンの好適なシロキサン単位は、(CH32(OH)SiO1/2、(CH32SiO、CH3(C65)(OH)SiO1/2、CH3SiO3/2、CH3(C65)SiO、C37(CH3)SiO、(CH2=CH)(C65)(OH)SiO1/2、C65(CH2=CH)(CH3)SiO1/2、(CH2=CH)(CH3)SiO、C65(OH)SiO、(C652SiO及びC65(CH32SiO1/2を含み、かつ少量のSiO2単位を含んでもよい。この種のオルガノポリシロキサンはシロキサン単位に対応するオルガノクロロシランを加水分解し、更にヒドロキシル基を縮合させることで必要量の水酸基を残し重合させることで容易に得ることができる。
【0025】
なお、(A)、(A’)成分がオルガノポリシロキサンの場合、上記式(1)において、a,b,c,dは0≦a≦0.5、特に0≦a≦0.2(但し、(A’)成分の場合0.001≦a≦0.5、特に0.01≦a≦0.2)、0≦b≦2.2、特に0.5≦b≦2、0.001≦c≦0.5、特に0.01≦c≦0.2、0≦d≦0.5、特に0≦d≦0.2であることが好ましく、a+b+c+dは0.8≦a+b+c+d≦3、特に1≦a+b+c+d≦2.5であることが好ましい。
【0026】
具体的には、下記構造で示されるようなオルガノポリシロキサンが好適な化合物として例示される。
【0027】
【化1】

(但し、k,m,nは正数で、k+m+nは下記の粘度を満足する数である。)
【0028】
なお、(A),(A’)成分がオルガノポリシロキサンである場合、特に(A),(A’)成分が基本的に直鎖状構造のジオルガノポリシロキサンである場合、回転粘度計(BM型)による粘度測定法(以下、同様)による25℃の粘度が10〜1,000,000mPa・s、特に100〜100,000mPa・sであることが好ましい。また、(A),(A’)成分が分子中に3官能性シロキサン単位や4官能性シロキサン単位(SiO2)を含んだ分岐状又は三次元網状構造のものである場合には、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によるポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜100,000、特に1,000〜10,000程度であることが好ましい。
【0029】
このように、ケイ素原子結合水酸基含有オルガノポリシロキサンとしては、液状から固体状のものであるが、高重合度(上記粘度測定で1,000mPa・s以上あるいは重量平均分子量が1,000以上)のオルガノポリシロキサンではケイ素原子結合水酸基含有量が0.5〜15質量%、特に1.5〜10質量%のものが好ましい。0.5質量%未満ではエポキシ基との反応性に乏しく、かつ15質量%を超えると、オルガノポリシロキサンを安定的に製造することができない場合がある。これらの有機ケイ素化合物のうち、分子中にアルケニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基を有するものが(A’)成分として適用されるものである。
【0030】
これらのオルガノシラン、オルガノ(ポリ)シロキサンの他に、シラノール基含有オルガノシルエチレン、オルガノシルフェニレン等のオルガノシルアルキレン、オルガノシルアリーレンや、シルエチレン、シルフェニレン結合をもったシラノール基含有オルガノシラン、オルガノポリシロキサンも本発明に使用することができる。
【0031】
次に、(B)成分はエポキシ当量250以上の芳香族エポキシ樹脂、もしくは芳香環を一部又は完全に水添した水添型エポキシ樹脂であり、骨格に芳香族あるいは脂肪族環の環構造を持つ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂等のトリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、前記各種エポキシ樹脂のフェニル基を水素添加した水添型エポキシ樹脂などを挙げることができるが、エポキシ当量250以上の芳香族又は脂肪族エポキシ樹脂、もしくは芳香環を一部又は完全に水添した水添型エポキシ樹脂であれば上記樹脂に限定されるものではない。中でも光による劣化を防止するため水添型のエポキシ樹脂が好適に使用される。
【0032】
エポキシ樹脂の(F)成分を除く全有機樹脂(即ち、(A),(B)成分の合計、あるいは(A’),(B),(C)成分の合計)に占める比率は5〜80質量%である。5質量%未満ではエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の硬化物強度が十分に得られず、この種の材料で発光半導体装置を封止保護した場合、温度サイクルなどの試験で容易に樹脂クラックが発生したり、接着不良が生ずるおそれがある。一方、80質量%を超えるとエポキシ樹脂分が多くなり、発光素子が紫外線等を発光するような場合、エポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の硬化物が紫外光により劣化してしまう。このため、より望ましくは10〜50質量%である。
【0033】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、架橋剤として作用するものであり、該成分中のSiH基と(A’)成分中のビニル基等の脂肪族不飽和一価炭化水素基とが付加反応(ヒドロシリル化)することにより硬化物を形成するものである。かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、例えば、下記平均組成式(2)
m(R4nSiO(4-m-n)/2 (2)
(式中、R4は脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、m及びnは、0.001≦m<2、0.7≦n≦2、かつ0.8≦m+n≦3を満たす数である。)
で表され、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するものが挙げられる。
【0034】
ここで、上記式(2)中のR4は、脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜10、特に炭素数1〜7の一価炭化水素基であることが好ましく、例えばメチル基等の低級アルキル基、フェニル基等のアリール基等、前述の一般式(1)の置換基R2で例示したものが挙げられる。また、m及びnは、0.001≦m<2、0.7≦n≦2、かつ0.8≦m+n≦3を満たす数であり、好ましくは0.05≦m≦1、0.8≦n≦2、かつ1≦m+n≦2.7となる数である。ケイ素原子に結合した水素原子の位置は特に制約はなく、分子の末端でも途中でもよい。
【0035】
具体的には、例えば両末端トリメチルシリル基封鎖のメチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシリル基封鎖のジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシリル基封鎖のメチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシリル基封鎖のジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、ペンタメチルトリハイドロジェンシクロテトラシロキサン、トリ(ジメチルハイドロジェンシロキサン)メチルシラン等が挙げられる。
【0036】
また、下記構造で示されるような化合物も使用することができる。
【化2】

【0037】
なお、本成分は分子構造上直鎖状、分岐状、環状、網状のいずれであってもよい。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、通常、R4SiHCl2、(R43SiCl、(R42SiCl2、(R42SiHCl(R4は、前記の通りである)のようなクロロシランを加水分解するか、加水分解して得られたシロキサンを平衡化することにより得ることができる。
【0038】
なお、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、上記(A’)成分の硬化有効量であり、特にそのSiH基が(A’)成分中のビニル基等の脂肪族不飽和基の合計量あたり0.1〜4.0、特に好ましくは1.0〜3.0、更に好ましくは1.2〜2.8のモル比で使用されることが好ましい。0.1未満では硬化反応が進行せずシリコーンゴム硬化物を得ることが困難であり、4.0を超えると、未反応のSiH基が硬化物中に多量に残存するため、ゴム物性が経時的に変化する原因となるおそれがある。
【0039】
(D)成分の白金族金属系触媒は、本発明の組成物の付加硬化反応を生じさせるために配合されるものであり、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものがあるが、コスト等の見地から白金系のもの、例えば、H2PtCl6・mH2O,K2PtCl6,KHPtCl6・mH2O,K2PtCl4,K2PtCl4・mH2O,PtO2・mH2O,PtCl4・mH2O,PtCl2,H2PtCl4・mH2O(mは、正の整数)等や、これらと炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を例示することができ、これらは単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。これらの触媒成分の配合量は、所謂触媒量でよく、通常、前記(A’)〜(C)成分の合計量あたり、白金族金属換算(質量)で0.1〜1,000ppm、好ましくは1〜300ppmの範囲で使用される。
【0040】
(E)成分のシラノールとエポキシ基を重合させるアルミニウム系硬化触媒としては、具体的には三水酸化アルミニウム、あるいはアルミニウムアルコラート、アルミニウムアシレート、アルミニウムアシレートの塩、アルミノシロキシ化合物及びアルミニウムキレートからなる群から選択された触媒量の有機アルミニウム化合物が例示される。触媒量としては(A)成分又は(A’)成分と(B)成分との合計量に対し0.1〜10質量%、より望ましくは0.3〜5質量%である。0.1質量%未満では十分な硬化速度が得られず、10質量%を超えると、硬化が早すぎて目的とする発光半導体装置を製造することができない場合がある。
【0041】
(F)成分の粘度が25℃で50mPa・s以下(なお、粘度の測定法は上記の通りである)である非環式低粘度液状エポキシ樹脂としては、具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,3−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、1,3−ジグリシジルグリセリルエーテル、1,3−ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサンなどが例示されるが、これに限定されるものではない。使用量としては、(B)成分のエポキシ樹脂に対し、0.1〜10質量%、より望ましくは1.0〜8.0質量%である。0.1質量%未満では十分な相溶化剤としての効果が得られず、10質量%を超えると、クラック耐性等が不十分となり、目的とする発光半導体装置を製造することができない場合がある。
【0042】
本発明のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の接着性を向上させるため、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するオルガノシラン、オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物などの(G)接着助剤を任意成分として、必要に応じて添加配合してもよい。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物及び一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)、ケイ素原子に結合したアルケニル基(例えばSi−CH=CH2基)、アルコキシシリル基(例えばトリメトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基など)、エポキシ基(例えばグリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基)から選ばれる官能性基を少なくとも2種、好ましくは2又は3種含有する、通常、ケイ素原子数4〜30、特には4〜20程度の、直鎖状又は環状構造のシロキサン化合物(オルガノシロキサンオリゴマー)が挙げられる。
【0043】
この場合、(G)成分の接着助剤として、下記一般式(3)で示されるオルガノオキシシリル変性イソシアヌレート化合物及び/又はその加水分解縮合物(オルガノシロキサン変性イソシアヌレート化合物)が好適に使用される。
【化3】

(式中、R5は、下記式(4)
【化4】

で表される有機基又は脂肪族不飽和結合を含有する一価炭化水素基であるが、少なくとも1個は式(4)の有機基であり、R6は水素原子又は炭素数1〜6の一価炭化水素基、sは1〜6、特に1〜4の整数である。)
【0044】
ここで、R5の脂肪族不飽和結合を含有する一価炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数2〜8、特に2〜6のアルケニル基が挙げられる。また、R6の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基などの炭素数1〜8、特に1〜6の一価炭化水素基が挙げられ、好ましくはアルキル基である。
【0045】
上記(G)成分として具体的には、下記のものを例示することができる。
【化5】

(式中、m,nはそれぞれm+nが2〜50、好ましくは4〜20を満足する正の整数である。)
【0046】
【化6】

【0047】
【化7】

【0048】
このような有機ケイ素化合物のうち、得られる硬化物の接着性が特に優れている化合物としては、一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基とアルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子(SiH基)とを有する有機ケイ素化合物であることが好ましい。
【0049】
本発明において、上記(G)成分(任意成分)の接着助剤の配合量は、(A)成分又は(A’)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、通常10質量部以下(即ち、0〜10質量部)、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜1質量部程度配合することができる。(G)成分の配合量が少なすぎると基材に対する接着性に劣る場合があり、多すぎると硬化物の硬度が低下したり、硬化物の表面タック性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0050】
本発明のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物は、接着力が強いため樹脂硬化や実装時のIRリフローによる剥離を起こすことはない。また、その硬化した樹脂はデュロメータタイプAで70以上の硬さをもち、硬化物の表面に対する埃の付着もなく、低弾性特性を有することからセラミックやプラスチックの筐体との熱膨張係数の違いによる応力を吸収できるため、低温側−40℃、高温側120℃の熱衝撃試験を1,000サイクル行ってもクラックが発生することはない。
【0051】
本発明のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物は、(A),(B)及び(E)成分あるいは(A’),(B),(C),(D)及び(E)成分を混合し、加熱することによって容易に製造することができる。(A’),(B),(C),(D),(E)成分を混合すると室温でも硬化が進行するので、作業可能時間を長くするためにアセチレンアルコール系化合物、トリアゾール類、ニトリル化合物、リン化合物などの反応抑制剤を微量添加することが好ましい。また、本発明のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物を波長変更するための蛍光体や酸化チタン微粉末(TiO2)などのような光散乱剤等を添加することもできる。
【0052】
この場合、(B)成分と(F)成分を均一に混合した後、これに(A)成分及び(E)成分、又は(A’)成分と(C)成分及び(D)成分と(E)成分を加えて均一に混合することが好ましく、このような配合方法を採用することにより、通常、(A)成分又は(A’)成分との均一な混合が困難な場合が多い(B)成分を、予め(F)成分と均一に混合することにより、(A)成分に対するぬれ性が向上したり、(B)成分単独の場合より低粘度化することによる撹拌の容易さから、上記各成分を均一に混合しやすくなる。(A)成分又は(A’)成分と(B)成分とを均一に混合することが困難な場合には、より長時間の撹拌操作やよりせん断応力の高い撹拌操作が必要となるが、例えば機械撹拌を用いて、より長時間又はより高せん断応力下での混合を行うと、混合撹拌時に発生する熱のために、揮発分を含む樹脂組成物や熱硬化性の樹脂に対しては好ましくない場合がある。
【0053】
更に、本発明の目的を逸脱しない範囲で、ヒュームドシリカや沈降性シリカなどの補強性充填材、難燃性向上剤、有機溶剤などを添加してもよい。また、公知の変色防止剤、例えば有機リン系変色防止剤を添加することもできる。
【0054】
なお、(A’),(B),(C),(D),(E)成分を必須に含有し、エポキシ樹脂の縮合とヒドロシリル化付加反応を併用して硬化させる組成物のほうが、(A),(B),(E)成分を必須に含有し、エポキシ樹脂の縮合のみによって硬化物を形成する組成物に比較して発光半導体素子に対する接着性、信頼性の点で、より優れているため望ましいものである。
【0055】
また、本発明の発光半導体を被覆保護するための(A),(B),(E)成分あるいは(A’),(B),(C),(D),(E)成分を必須成分とする組成物(被覆保護材)をポッティングや液状インジェクションなどで使用する場合は液状であることが好ましく、25℃の粘度は10〜1,000,000mPa・s、特には100〜1,000,000mPa・s程度が好ましい。一方、トランスファー成形で発光半導体装置を製造する場合は、上記の液状樹脂を使用することもできるが、液状樹脂を増粘させて固形化し、ペレット化した後、成形することでも製造することができる。
【0056】
本発明の被覆保護材は、発光半導体を被覆保護するために使用される。この場合、発光半導体としては、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイ等を挙げることができる。発光半導体を被覆保護する態様は特に制限されるものではないが、図1,2に示されるように、開口部を有する筐体内に配置された発光半導体を覆って筐体内に被覆保護材を充填し、これを硬化させる等の方法を採用し得る。また、図3で示されるようなマトリックス化された基板状にLEDを搭載したものを印刷法、トランスファー成形、インジェクション成形などで製造することもできる。
【0057】
なお、本発明の被覆保護材の硬化条件は、室温(25℃)で72時間から200℃で3分間と、その作業条件に合わせて任意であり、生産性と発光素子や筐体耐熱性とのバランスから適宜選定することができる。トランスファー成形やインジェクション成形の場合は150〜180℃の温度で20〜50kgf/cm2の圧力で1〜5分間成形することで容易に製造することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、Me、Ph、Viはそれぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を示し、部は質量部を示す。
【0059】
まず、実施例、比較例の被覆保護材の評価方法を示す。
[評価方法]
シリコーン系ダイボンド材の調製
下記式(I)
【化8】

で表される末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体(粘度3Pa・s)100部、下記式(II)
【化9】

で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン(粘度15mPa・s)2.5部、塩化白金酸2−エチルヘキシルアルコール変性溶液(Pt濃度2質量%)0.03部、エチニルシクロヘキシルアルコール0.05部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン7部及び平均粒径9μmの球状アルミナ微粉末400部を均一混合して、シリコーンダイボンド材を調製した。
【0060】
樹脂の混合方法
樹脂の混合は、所定の配合物を予めスパチュラ等で約30秒程度手で撹拌した後、真空ミキサーARV−200(シンキー(株)製)にて撹拌することにより行った。
【0061】
発光半導体装置の作製方法
発光素子として、InGaNからなる発光層を有し、主発光ピークが470nmのLEDチップを用いて、図3に示すような発光半導体装置を作製した。発光素子2をリード電極にシリコーン系ダイボンド材5を用い、180℃で10分間加熱して固定した。発光素子2とリード電極3,4を金線6にて接続させた後、被覆保護材7をポッティングし、180℃で1時間硬化し、発光半導体装置を作製した。
耐湿試験及び赤外線リフロー
作製した発光半導体装置を、85℃/85%RHの恒温恒湿室内に168時間放置した後、赤外線リフロー装置(260℃)に3回通して、外観のクラックが発生した数及び/又は剥離が発生した数を観察した。
表面埃付着性
作製した発光半導体装置に微粉末シリカを降りかけ、表面に付着させた後、エアーを吹きかけることで半導体装置表面に付着した微粉末シリカを除去できるかどうか確認した。
光透過率変化
それぞれの硬化物(厚み1mm)を100℃の雰囲気下で1,000時間放置した後、初期の光透過率と1,000時間後の光透過率を測定し、光透過率の保持率を測定した。
【0062】
[実施例1]
エポキシ当量が310のビスフェノールA型エポキシ樹脂20部、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル1.0部を手撹拌後、ミキサーで90秒間混合した後、下記式
【化10】

(但し、k=65、m=30、n=2)
で示されるポリシロキサン50部、シロキサン単位が(PhSiO3/20.6(MeSiO3/20.2(ViMeSiO2/20.2の組成(モル比)で示され、ケイ素原子に結合した水酸基を8質量%含有するオルガノポリシロキサン30部、下記式
【化11】

で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5部、下記式
【化12】

で示される接着助剤0.3部、及び、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部、アルミニウムアセチルアセトン0.1部を加え、手撹拌した後、180秒間ミキサーにて混合することにより、エポキシ・シリコーン混成樹脂組成物を調製した。
この組成物を、150℃、4時間にて加熱成形して硬化物を形成し、JIS K6301に準拠して、硬度(ショアD)を測定した。この組成物を150℃、4時間の条件で硬化(以下、同様)させたものは無色透明なものであった。
この樹脂組成物を用いて発光半導体装置を作製した。
【0063】
[実施例2]
エポキシ当量が310のビスフェノールA型エポキシ樹脂20部と、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル1.0部を実施例1と同様の混合方法で予めよく混合した後、シロキサン単位が(PhSiO3/20.6(MeSiO3/20.2(ViMeSiO2/20.2の組成(モル比)で示され、ケイ素原子に結合した水酸基を8質量%含有するオルガノポリシロキサン80部、下記式
【化13】

で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5部、下記式
【化14】

で示される接着助剤0.3部、及び、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部、アルミニウムアセチルアセトン0.1部を加え、実施例1と同様に混合することにより、エポキシ・シリコーン混成樹脂組成物を調製した。
この組成物を、150℃、4時間にて加熱成形して硬化物を形成し、JIS K 6301に準拠して、硬度(ショアD)を測定した。この組成物を硬化させたものは無色透明なものであった。
この樹脂組成物を用いて発光半導体装置を作製した。
【0064】
[実施例3]
実施例2において使用したビスフェノールA型エポキシ樹脂を、エポキシ当量が290の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名YX8034:JER)に変えた他は実施例2と全く一緒の組成で実施例1と同様にしてエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物を調製し、硬化物を形成し、実施例1と同様に測定した結果を表1に示した。硬化物は無色透明であった。
この樹脂組成物を用いて発光半導体装置を作製した。
【0065】
[実施例4]
実施例3において使用したアルミニウムアセチルアセトンに変えて安息香酸アルミニウムを0.8部添加した以外は実施例3と一緒の組成で実施例1と同様にしてエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物を調製し、硬化物を形成し、実施例1と同様に測定した結果を表1に示した。硬化物は無色透明であった。
この樹脂組成物を用いて発光半導体装置を作製した。
【0066】
[実施例5]
(CH3SiO3/20.45(PhSiO3/20.4(CH3PhSiO)0.15からなり、ケイ素原子結合水酸基を5質量%含有するオルガノポリシロキサン70部、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名YX8034:JER)30部、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル1.5部、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM403:信越化学工業(株)製)1部、安息香酸アルミニウム1.5部を溶融しながら十分混合し、エポキシ・シリコーン混成樹脂組成物を得た。硬化物は無色透明であった。
この樹脂組成物を用いて発光半導体装置を作製した。
【0067】
[比較例1]
実施例1において使用したヘキサンジオールジグリシジルエーテルを不使用とした以外は実施例1と同様の操作を行った。硬化物を形成したが、硬化物は半透明であった。
【0068】
[比較例2]
(CH3SiO3/20.45(PhSiO3/20.4(CH3PhSiO)0.15からなり、ケイ素原子結合水酸基を5質量%含有するオルガノポリシロキサン60部、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名YX8034:JER)40部、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名KBM403:信越化学工業(株)製)1部、安息香酸アルミニウム1.5部を溶融しながら十分混合し、エポキシ・シリコーン混成樹脂組成物を得た。硬化物は無色透明であった。
この樹脂組成物を用いて発光半導体装置を作製した。
【0069】
実施例1〜5及び比較例2の樹脂組成物を用いて発光素子を封止し、特性を評価した。
上記実施例、比較例の被覆保護材の評価結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】表面実装型半導体発光装置の一例(発光素子が絶縁性の筐体上にダイボンドされたもの)を示す発光ダイオードの断面図である。
【図2】表面実装型半導体発光装置の他の例(発光素子が筐体に挿入されたリード電極上にダイボンドされたもの)を示す発光ダイオードの断面図である。
【図3】砲弾型半導体発光装置を示す発光ダイオードの断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 筐体
2 発光素子
3,4 リード電極
5 ダイボンド材
6 金線
7 被覆保護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A’)一分子中に1個以上の脂肪族不飽和一価炭化水素基をもち、かつ少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基をもつ有機ケイ素化合物、
(B)エポキシ当量250以上の芳香族エポキシ樹脂、もしくは芳香環を一部又は完全に水添した水添型エポキシ樹脂、
(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(D)白金族金属系触媒、
(E)アルミニウム系硬化触媒、
(F)粘度が25℃で50mPa・s以下である非環式低粘度液状エポキシ樹脂
を必須成分とすることを特徴とするエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物。
【請求項2】
発光半導体素子封止用である請求項1記載のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の(B)成分と(F)成分を均一に混合した後、(A’)成分と(C)成分及び(D)成分と(E)成分を加えて均一に混合することを特徴とするエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
発光半導体素子が請求項1又は2記載のエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の透明硬化物で封止保護された発光半導体装置。
【請求項5】
発光半導体素子が、
(A)一分子中に1個以上のケイ素原子結合水酸基をもつ有機ケイ素化合物、
(B)エポキシ当量250以上の芳香族エポキシ樹脂、もしくは芳香環を一部又は完全に水添した水添型エポキシ樹脂、
(E)アルミニウム系硬化触媒、
(F)粘度が25℃で50mPa・s以下である非環式低粘度液状エポキシ樹脂
を必須成分とするエポキシ・シリコーン混成樹脂組成物の透明硬化物で封止保護された発光半導体装置。
【請求項6】
エポキシ・シリコーン混成樹脂組成物が、(B)成分と(F)成分を均一に混合した後、(A)成分及び(E)成分を加えて均一に混合することによって得られたものである請求項5記載の発光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−265274(P2006−265274A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81054(P2005−81054)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】