説明

エポキシ樹脂組成物、その硬化物、半導体封止材料、半導体装置、及びエポキシ樹脂

【課題】硬化物の耐熱性、組成物調整後の連続性形成性を向上させる。
【解決手段】フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)、並びに、メチレン基、アルキリデン基及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)の各構造部位を有しており、かつ、前記フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)及び前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)が、前記メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)を介して結合した構造を分子構造内に有するフェノール樹脂(ph1)と、
4,4’−ビフェノールとの混合物をエピハロヒドリンと反応させて得られるエポキシ樹脂を主剤として使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低粘度で連続性形成に優れ、かつ非ハロゲン系で高度な難燃性と耐ハンダクラック性を兼備した硬化物を与えるエポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、硬化物、半導体封止材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、電気絶縁性、高耐熱性、耐湿性、寸法安定性等の諸物性に優れる点から半導体封止材やプリント回路基板、ビルドアップ基板、レジストインキ等の電子部品、導電ペースト等の導電性接着剤やその他接着剤、アンダーフィルなどの液状封止材、液晶シール材、フレキシブル基板用カバーレイ、複合材料用マトリックス、塗料、フォトレジスト材料、顕色材料等で広く用いられている。これらの中でも半導体やプリント配線基板などのエレクトロニクス材料分野においては、封止材や基板材料等として用いられており、これらの分野における技術革新に伴って高性能化への要求が高まっている。
近年、これら各種用途、とりわけ先端材料用途において、硬化物の高耐熱化の向上が求められており、例えば、半導体封止材料分野では、BGA、CSPといった表面実装パッケージへの移行、更に鉛フリー半田への対応により、リフロー処理温度が高温化するに至り、よって、これまでに増して耐湿耐半田性に優れる電子部品封止樹脂材料が求められている。
かかる要求特性に応える電子部品封止材料としては、例えば、ヒドロキシ基含有芳香族化合物とアルコキシ基含有芳香族化合物とカルボニル基含有化合物とを反応させたフェノール樹脂をエピハロヒドリンと反応させたエポキシ樹脂が開示されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−274236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1において開示されているエポキシ樹脂は、硬化物の耐熱性には優れるものの、エポキシ樹脂自体の成形時の溶融粘度が高く、また、組成物調整後の連続性形成性に劣る為、電子部品封止材料用途における耐ハンダクラック性の改善効果も充分ではなかった。
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化物の耐熱性に優れ、また、エポキシ樹脂自体の成形時の溶融粘度が低く組成物調整後の連続性形成性に優れ、電子部品封止材料用途における耐ハンダクラック性が飛躍的に改善されたエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)、並びに、メチレン基、アルキリデン基及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)の各構造部位を有しており、かつ、前記フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)及び前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)が、前記メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)を介して結合した構造を分子構造内に有するフェノール樹脂(ph1)と、4,4’−ビフェノールとを予め混合した混合物をエピハロヒドリンと反応させて得られるエポキシ樹脂が、低粘度であり、且つ硬化剤との組成物としたときに硬化性と連続成形性に優れ、また硬化物に優れた耐ハンダクラック性を付与することが可能であることを見出し本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が、
フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)、並びに、メチレン基、アルキリデン基及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)の各構造部位を有しており、かつ、前記フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)及び前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)が、前記メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)を介して結合した構造を分子構造内に有するフェノール樹脂(ph1)と、
4,4’−ビフェノールとの混合物をエピハロヒドリンと反応させて得られるものであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する。
本発明は、更に、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
本発明は、更に、前記エポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とする半導体封止材料。
本発明は、更に、前記半導体封止材料を用いることを特徴とする半導体装置。
本発明は、更に、フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)、並びに、メチレン基、アルキリデン基及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)の各構造部位を有しており、かつ、前記フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)及び前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)が、前記メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)を介して結合した構造を分子構造内に有するフェノール樹脂(ph1)と、
4,4’−ビフェノールとの混合物をエピハロヒドリンと反応させて得られる分子構造を有することを特徴とするエポキシ樹脂に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、硬化物の耐熱性には優れ、また、エポキシ樹脂自体の成形時の溶融粘度が低く組成物調整後の連続性形成性に優れ、電子部品封止材料用途における耐ハンダクラック性が飛躍的に改善されたエポキシ樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は実施例1で得られたエポキシ樹脂(A−1)のGPCチャート図である。
【図2】図2は実施例2で得られたエポキシ樹脂(A−2)のGPCチャート図である。
【図3】図3は実施例3で得られたエポキシ樹脂(A−3)のGPCチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、前記フェノール樹脂(ph1)と4,4’−ビフェノールの混合物をエピハロヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂である。
【0010】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いられるエポキシ樹脂(A)の原料の一成分である前記フェノール樹脂(ph1)は、
フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)、並びに、メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)の各構造部位を有しており、かつ、前記フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)及び前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)が、前記メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)を介して結合した構造を分子構造内に有するフェノール樹脂であることを特徴としている。
【0011】
ここで、前記フェノール樹脂は、フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)、並びに、メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)(以下、これを単に「メチレン基等(X)」と略記する)の各構造単位をそれぞれ、「P」、「B」、「X」で表した場合、下記構造部位A1
【0012】
【化1】

であらわされる構造部位を必須として分子構造内に含むものである。
【0013】
本発明では、このような特徴的な化学構造を有することから、分子構造中の芳香族含有率が高くなる。
【0014】
ここで、前記フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)は、様々な構造をとり得るものであり、具体的には、以下のP1〜P16の構造式で表されるフェノール、ナフトール、及びこれらの芳香核上の置換基としてアルキル基を有する化合物から形成される芳香族炭化水素基であることが誘電性能に優れる点から好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
ここで、前記各構造は、該構造が分子末端に位置する場合には、1価の芳香族炭化水素基となる。また、上掲した構造のうちナフタレン骨格上に他の構造部位との結合位置を二つ以上有するものは、それらの結合位置は同一核上であってもよいし、或いは、それぞれ異核上にあってもよい。
【0017】
以上詳述したフェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)は、特に芳香核上の置換基としてメチル基を有するものは、エポキシ樹脂硬化物自体に優れた難燃性を付与でき、近年、電子部品分野において要求の高いハロゲンフリーの材料の設計が可能となる。
【0018】
更に、前記フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)は、前記構造式P6、P7、P8、及びP9に代表されるようにフェノール骨格のオルソ位にメチル基を有するものが、硬化物の耐熱性及び誘電特性の改善効果が顕著なものとなり好ましい。
【0019】
次に、フェノール樹脂構造中に含まれる前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)は、縮合多環式芳香核上の置換基としてアルコキシ基を有する1価又は多価の芳香族炭化水素基であり、具体的には下記構造式B1〜B15で表されるアルコシキナフタレン型の構造、又は、下記構造式B16で表されるアルコキシアントラセンが挙げられる。
【0020】
【化3】

【0021】
ここで、前記各構造は、該構造が分子末端に位置する場合には、1価の芳香族炭化水素基となる。また、上掲した構造のうちナフタレン骨格上に他の構造部位との結合位置を二つ以上有するものは、それらの結合位置は同一核上であってもよいし、或いは、それぞれ異核上にあってもよい。
【0022】
以上詳述した前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)のうち、とりわけ、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性が良好なものとなる点からアルコキシナフタレン型の構造を有するものが好ましく、特に、エポキシ樹脂硬化物の難燃性に優れ、近年、電子部品分野において要求の高いハロゲンフリーの材料の設計が可能となる点から、前記構造式B1〜B13に代表される、メトキシ基又はエトキシ基を置換基として有するナフタレン構造、およびそれらに更にメチル基を置換基として有する構造から形成される芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0023】
次に、フェノール樹脂構造中に有する、メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)は、例えば、メチレン基の他、アルキリデン基としては、エチリデン基、1,1−プロピリデン基、2,2−プロピリデン基、ジメチレン基、プロパン−1,1,3,3−テトライル基、n−ブタン−1,1,4,4−テトライル基、n−ペンタン−1,1,5,5−テトライル基が挙げられる。また、芳香族炭化水素構造含有メチレン基は、下記X1〜X9の構造のものが挙げられる。
【0024】
【化4】


これらの中でも特に誘電効果に優れる点からメチレン基であることが好ましい。
【0025】
本発明で用いるフェノール樹脂は、各構造部位(P)、(B)及び(X)の上記各具体例で示した構造の任意の組み合わせを採り得る。このような各構成部位から構成されるフェノール樹脂の分子構造は、前記した通り、フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)、およびメチレン基等(X)の各構造単位をそれぞれ、「P」、「B」、「X」で表した場合、下記構造部位A1
【0026】
【化5】

であらわされる構造部位を必須として分子構造内に含むものであるが、更に具体的には、下記構造式A2及びA3で表される構造、
【0027】
【化6】

【0028】
下記構造式A4又はA5


で表される構造を繰り返し単位とするノボラック構造の分子末端に、下記構造式A6
【0029】
【化7】

で表される構造を有する構造、その他下記構造式A7〜A8
【0030】
【化8】


で表される構造を繰り返し単位とする交互共重合体構造が挙げられる。
【0031】
本発明においては、前記フェノール樹脂(ph1)は、上記のように各種の構造をとり得るが、その分子末端に前記構造式A6で表される構造を有することにより、エポキシ樹脂硬化物の誘電正接を著しく低減できることができる。よって、特に前記構造式A3の構造を有するフェノール樹脂、或いは、前記A4又はA7を繰り返し単位とし、かつ、その分子末端に前記構造式A6で表される構造を有するフェノール樹脂が好ましく、特に本発明の効果が顕著に現れる点から、前記構造式A3の構造を有するフェノール樹脂、或いは、前記A4を繰り返し単位とし、かつ、その分子末端に前記構造式A6で表される構造を有するフェノール樹脂が好ましい。
【0032】
更に、前記フェノール樹脂(ph1)は、後述するようにヒドロキシ基含有芳香族化合物(a1)とアルコキシ基含有芳香族化合物(a2)と、カルボニル基含有化合物(a3)とを、反応させることによって製造することができ、この際、上記した各種の構造の他、フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)、及びメチレン基等(X)の各構造単位をそれぞれ、「P」、「B」、及び「X」で表した場合に、下記構造式
【0033】
【化9】

で表される構造の化合物も同時に生成し、該フェノール樹脂中に含まれる。本発明では該化合物の含有量が比較的高い方が、該フェノール樹脂自体の溶融粘度を低減でき、かつ得られるエポキシ樹脂硬化物の誘電特性に優れたものとなる為好ましく、具体的には該樹脂中、1〜30質量%となる範囲でフェノール樹脂中に含まれることが好ましい。特に、このような効果が顕著なものとなる点から、3〜25質量%、なかでも3〜15質量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
また、同様に、ヒドロキシ基含有芳香族化合物(a1)とアルコキシ基含有縮合多環式芳香族化合物(a2)と、カルボニル基含有化合物(a3)とを反応させる結果、その生成物たるフェノール樹脂中に、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)、並びに、メチレン基等(X)の各構造単位をそれぞれ、「B」、「X」で表した場合に、下記構造式
【0035】
【化10】

で表される構造を有する化合物が混入する場合がある。本発明では、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性の点から、かかる化合物の含有率は低いことが望ましく、できれば全く存在しないことが好ましい。よって、フェノール樹脂(ph1)中に占める該化合物の含有率は、5質量%以下、なかでも3質量%以下、特に2質量%以下であることが好ましい。
【0036】
また、前記フェノール樹脂(ph1)は、ICI粘度計で測定した150℃における溶融粘度が0.1〜5.0dPa・sの範囲であるのものが、成形時の流動性や硬化物の耐熱性などが優れる点で好ましい。更に、前記フェノール樹脂は、その水酸基当量が、120〜500g/eq.の範囲のものが、硬化物の難燃性と誘電特性が一層良好となる点から好ましい。また、ここで、本発明では、このような水酸基当量及び溶融粘度の条件を具備するものが、本発明の新規フェノール樹脂となる。上記水酸基当量は、特に150〜350g/eq.の範囲のであることが、硬化物の誘電特性と、組成物の硬化性とのバランスが特に優れたものとなる。
【0037】
更に、前記フェノール樹脂(ph1)は、フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)と、前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)との存在比が、モル比で前者/後者=30/70〜98/2なる範囲であるであることが、硬化物の難燃性と誘電特性が一層良好となる点から好ましい。
【0038】
前記フェノール樹脂(ph1)は、ヒドロキシ基含有芳香族化合物(a1)とアルコキシ基含有芳香族化合物(a2)と、カルボニル基含有化合物(a3)とを、反応させることによって製造することができる。
【0039】
上記製造方法に用いられるヒドロキシ基含有芳香族化合物(a1)は、具体的には、フェノール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの無置換フェノール類、クレゾール、フェニルフェノール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、iso−プロピルフェノール、t−ブチルフェノールなどの一置換フェノール類、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、メチルヘキシルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノールなどの二置換フェノール類、メシトール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール等の三置換フェノール類、1−ナフトール、2−ナフトール、メチルナフトールなどのナフトール類が挙げられる。
これらは、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
これらのなかでも、硬化物及び難燃性の点から1−ナフトール、2−ナフトール、クレゾール、フェノールが特に好ましい。
【0041】
次に、アルコキシ基含有芳香族化合物(a2)は、具体的には、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、1−メチル−2−メトキシナフタレン、1−メトキシ−2−メチルナフタレン、1,3,5−トリメチル−2−メトキシナフタレン、2,6−ジメトキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、1−エトキシナフタレン、
1,4−ジメトキシナフタレン、1−t−ブトキシナフタレン、1−メトキシアントラセン、等が挙げられる。
これらの中でも成形時の硬度を高められることから、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレンが好ましい。
【0042】
次に、カルボニル基含有化合物(a3)は、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族系アルデヒド、グリオキザール等のジアルデヒド、ベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、4−ビフェニルアルデヒド、ナフチルアルデヒド等の芳香族系アルデヒド、ベンゾフェノン、フルオレノン、インダノン等のケトン化合物が挙げられる。
【0043】
これらのなかでも得られる硬化物の難燃性にすぐれる点からホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、4−ビフェニルアルデヒド、ナフチルアルデヒドが好ましい。
【0044】
上記したヒドロキシ基含有芳香族化合物(a1)とアルコキシ基含有縮合多環式芳香族化合物(a2)と、カルボニル基含有化合物(a3)とを反応させる方法としては、具体的には、
1)ヒドロキシ基含有芳香族系化合物(a1)とアルコキシ基含有縮合多環式芳香族化合物(a2)とカルボニル基含有化合物(a3)とを実質的に同時に仕込み、適当な重合触媒の存在下で加熱撹拌して反応を行う方法、また、
2)アルコキシ基含有縮合多環式芳香族化合物(a2)1モルに対して、0.05〜30モル、好ましくは2〜30モルのカルボニル基含有化合物(a3)を反応させた後に、ヒドロキシ基含有芳香族系化合物(a1)を仕込んで反応させる方法
3)ヒドロキシ基含有芳香族系化合物(a1)とアルコキシ基含有縮合多環式芳香族化合物(a2)とを予め混合しておき、ここにカルボニル基含有化合物(a3)を連続的乃至断続的に系内に加えることによって、反応を行う方法
が挙げられる。尚、ここで実質的に同時とは、加熱によって反応が加速されるまでの間に全ての原料を仕込むことを意味するものである。
【0045】
次に、本発明のエポキシ樹脂(A)は、前記したフェノール樹脂(ph1)と4,4’−ビフェノールを混合して混合物を得た後、これをエピハロヒドリンと反応させることによって得られるものである。
【0046】
ここで、前記フェノール樹脂(ph1)と4,4’−ビフェノールとの混合割合は、フェノール樹脂(ph1)70質量%以上90質量%以下に対し、4,4’−ビフェノールが10質量%以上30質量%以下であり、好ましくはフェノール樹脂(ph1)75質量%以上85質量%以下に対し、4,4’−ビフェノールが15質量%以上25質量%以下である。4,4’−ビフェノールの使用量が少なすぎると、低溶融粘度が十分得られず、また連続成形性改善が効果も少ない。更に得られたエポキシ樹脂が結晶化しないので、軟化点が低く作業性に問題がある。ここで本発明のエポキシ樹脂(A)の溶融粘度は、150℃のICI粘度で0.1〜1.0dPa・sの範囲、特に0.1〜0.7dPa・sの範囲であることが好ましい。一方、4,4′−ビフェノールの使用量が多すぎると、溶融粘度は低くなるが、官能基濃度が高くなり吸湿性が高まり使用可能な耐ハンダクラック性が得られないし、それ以上多量に使用すると、4,4’−(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェノールが混練時に相溶せず充分な特性を発現する硬化物が得られない。
【0047】
前記混合物とエピハロヒドリンと反応させる方法は、具体的には、前記混合物中のフェノール性水酸基1モルに対し、エピハロヒドリン2〜10モルを添加し、更に、フェノール性水酸基1モルに対し0.9〜2.0モルの塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。この塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリン類を留出せしめ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリン類は反応混合物中に連続的に戻す方法を採用してもよい。
【0048】
これらのなかでも反応中にビフェノール骨格含有化合物の結晶析出を抑制するために、アルカリ濃度を30質量%以下、反応温度を60℃以上で反応させるのが好ましい。
【0049】
なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン類の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類とを併用することが好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
【0050】
また、前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜二種以上を併用してもよい。
【0051】
前述のエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲が好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより高純度のエポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0052】
このようにして得られたエポキシ樹脂(A)は、それ自体溶融粘度が低いものとなる。具体的には、該エポキシ樹脂(A)は、150℃におけるICI粘度計における溶融粘度が0.1〜1.0dPa・sの範囲であって、かつ、エポキシ当量が220g/eq.〜300g/eq.の範囲であることが、組成物調整後の連続性形成性に優れ、電子部品封止材料用途における耐ハンダクラック性が飛躍的に改善される点から好ましい。
【0053】
本発明のエポキシ樹脂組成物はエポキシ樹脂成分として前記したエポキシ樹脂(A)の他、本発明の特性を損なわない範囲においてその他のエポキシ樹脂と併用して使用することもできる。この場合、前記エポキシ樹脂(A)が全エポキシ樹脂100質量%中、30質量%以上含有されていることが好ましく、特に50質量%以上含有されていることが好ましい。
【0054】
前記その他のエポキシ樹脂としては、特に制限されるものではなく、種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,ビスフェノールS型エポキシ樹脂,ビスフェノールAD型エポキシ樹脂,レゾルシン型エポキシ樹脂,ハイドロキノン型エポキシ樹脂,カテコール型エポキシ樹脂,ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂,ビフェニル型エポキシ樹脂,テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂,硫黄含有エポキシ樹脂,スチルベン型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂,トリグリシジルシソシアヌレート、メトキシナフタレン変性アラルキル型エポキシ樹脂、メトキシナフタレン変性ノボラック樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂,トリフェニルメタン型エポキシ樹脂,テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂,ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂,フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(通称ザイロック樹脂のエポキシ化物),ナフトールホルムアルデヒド縮合型エポキシ樹脂,ナフトールノボラック型エポキシ樹脂,ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂,ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂,ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂,芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂,ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール樹脂のエポキシ化物),ビフェニル変性ナフトール型エポキシ樹脂(ビスメチレン基でナフトール核が連結された多価ナフトール樹脂のエポキシ化合物)、アルコキシ基含有ノボラック型エポキシ樹脂、アルコキシ基含有フェノールアラルキル樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂,特開平4−11662号や特開平11−166035号に記載された各種9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシドから誘導されるエポキシ樹脂などが挙げられる。また,前記エポキシ樹脂は単独で用いてもよく,2種以上を混合してもよい。これらのエポキシ樹脂の中でも、特に低粘度である点では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂が好ましく、難燃性に優れる点では、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0055】
発明のエポキシ樹脂組成物に用いられる硬化剤(B)は、種々のエポキシ樹脂用硬化剤が使用でき、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などのエポキシ樹脂用硬化剤が挙げられる。
【0056】
具体的には、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂;フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂等のビスアラルキルを結節基として水酸基含有芳香族構造が連結された構造を含有する多価芳香族化合物;フェノールトリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物等を始めとする多価フェノール化合物、及びこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、並びにグアニジン誘導体などが挙げられる。またこれらの硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0057】
これらの硬化剤のなかでも、ビスアラルキルを結節基として水酸基含有芳香族構造が連結された構造を含有する多価芳香族化合物、前記したフェノール樹脂(ph1)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が難燃性に優れる点から好ましく、アラルキル型フェノール樹脂が好ましい。また、例えば、成形性を高めたい場合は、フェノールノボラック樹脂が好ましく、また、上記硬化剤は用途及び要求特性により適宜併用することができる。
【0058】
ビスアラルキルを結節基として水酸基含有芳香族構造が連結された構造を含有する多価芳香族化合物としては、具体的には、下記一般式(1)
【0059】
【化11】

(式中、Xはベンゼン環、ナフタレン環、若しくはこれらの芳香核にアルキル基を有する構造部位であり、Arはベンゼン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン骨格、若しくはこれらの芳香核にアルキル基を有する構造部位であり、Rは同一でも異なっていてもよい水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基であり、nは1〜4である。)で表されるアラルキル型フェノール類;
【0060】
また、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂としては、具体的には、下記一般式(2)
【0061】
【化12】


(式中、Xは置換基を有していてもよい芳香環であり、Arはフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、若しくはこれらの芳香核にアルキル基を有する構造部位でありnは1〜4である。)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。
これらの硬化剤はそれぞれ単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0062】
本発明のエポキシ樹脂組成物における硬化剤(B)の配合量としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物の機械的物性等が良好である点から、エポキシ樹脂(A)及び必要に応じて併用されるその他のエポキシ樹脂とのエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤中の活性基が0.5〜1.5当量になる量が好ましい。
【0063】
また、必要に応じて本発明のエポキシ樹脂組成物に硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0064】
以上詳述した本発明のエポキシ樹脂組成物は、当該樹脂自体が優れた難燃性付与効果を有するものである為、従来用いられている難燃剤を配合しなくても、硬化物の難燃性が良好である。しかしながら、より高度な難燃性を発揮させるために、例えば半導体封止材料の分野においては、封止工程での成形性や半導体装置の信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤(C)を配合してもよい。
【0065】
かかる非ハロゲン系難燃剤(C)を配合したエポキシ樹脂組成物は、実質的にハロゲン原子を含有しないものであるが、例えばエポキシ樹脂に含まれるエピハロヒドリン由来の5000ppm以下程度の微量の不純物によるハロゲン原子は含まれていても良い。
【0066】
前記非ハロゲン系難燃剤(C)としては、例えば、
リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0067】
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0068】
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0069】
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5−ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0070】
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0071】
また、前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0072】
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0073】
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0074】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0075】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0076】
また、前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0077】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0078】
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0079】
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0080】
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0081】
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0082】
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0083】
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0084】
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0085】
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO−MgO−HO、PbO−B系、ZnO−P−MgO系、P−B−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V−TeO系、Al−HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0086】
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0087】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0088】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0089】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、エポキシ樹脂組成物の全体量に対して65質量%、より好ましくは85質量%から95質量%が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0090】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、イオントラップ剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0091】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種用途に応じて従来知られている方法に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0092】
本発明のエポキシ樹脂組成物が用いられる用途としては、半導体封止材料、積層板、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ダイアタッチ剤、アンダーフィル、グラブットプ材、TCP用液状封止材、導電性接着剤、液晶シール材、フレキシブル基板用カバーレイ、レジストインキなどの電子回路基板等に用いられる樹脂組成物、高い屈折率が求められる光導波路,樹脂注型材料、複合材料、接着剤、絶縁塗料等のコーティング材料等が挙げられ、これらの中でも特に半導体封止材料に好適に用いることができる。
【0093】
半導体封止材用に調製されたエポキシ樹脂組成物を作製するためには、エポキシ樹脂と硬化剤、充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合して溶融混合型のエポキシ樹脂組成物を得ればよい。その際、充填剤としては、通常シリカが用いられるが、その充填率はエポキシ樹脂組成物100質量部当たり、充填剤を30〜95質量%の範囲が用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上が特に好ましく、それらの効果を格段に上げるためには、80質量部以上が一層その効果を高めることができる。半導体パッケージ成形としては、該組成物を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物である半導体装置を得る方法がある。
【0094】
本発明のエポキシ樹脂組成物をプリント回路基板用組成物に加工するには、例えばプリプレグ用樹脂組成物とすることができる。該エポキシ樹脂組成物の粘度によっては無溶媒で用いることもできるが、有機溶剤を用いてワニス化することでプリプレグ用樹脂組成物とすることが好ましい。前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤を用いることが好ましく、単独でも2種以上の混合溶剤としても使用することができる。得られた該ワニスを、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などの各種補強基材に含浸し、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得ることができる。この時用いる樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。また該エポキシ樹脂組成物を用いて銅張り積層板を製造する場合は、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、銅張り積層板を得ることができる。
【0095】
本発明のエポキシ樹脂組成物をレジストインキとして使用する場合には、例えば該エポキシ樹脂を各種不飽和二重結合又は不飽和二重結合とカルボキシル基を分子内に含有した樹脂の硬化剤として用い、カチオン重合触媒、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
【0096】
本発明のエポキシ樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該エポキシ樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0097】
本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該硬化性樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0098】
本発明の硬化物を得る方法としては、一般的なエポキシ樹脂組成物の硬化方法に準拠すればよいが、例えば加熱温度条件は、組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すればよいが、上記方法によって得られた組成物を、室温〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。成形方法などもエポキシ樹脂組成物の一般的な方法が用いられ、特に本発明のエポキシ樹脂組成物に特有の条件は不要である。
【実施例】
【0099】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、150℃における溶融粘度はASTM D4287に準拠し測定した。また、GPCは下記の条件にて測定した。
[GPCの測定条件]
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0100】
合成例1〔フェノール樹脂(B−1)の合成〕
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、o−クレゾール432.4g(4.00モル)と2−メトキシナフタレン158.2g(1.00モル)と41%ホルムアルデヒド水溶液179.3g(2.45モル)を仕込み、シュウ酸9.0gを加えて、100℃まで昇温し100℃で3時間反応させた。ついで、水を分留管で捕集しながら41%ホルムアルデヒド水溶液73.2g(1.00モル)を1時間かけて滴下した。滴下終了後,150℃まで1時間で昇温し、更に150℃で2時間反応させた。反応終了後、更にメチルイソブチルケトン1500gを加え、分液ロートに移し水洗した。次いで洗浄水が中性を示すまで水洗後、有機層から未反応のo−クレゾールと2−メトキシナフタレン、及びメチルイソブチルケトンを加熱減圧下に除去し、フェノール樹脂(B−1)を得た。得られたフェノール樹脂の軟化点は76℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は1.0dPa・s、水酸基当量は164g/eq.であった。
【0101】
合成例2〔フェノール樹脂(B−2)の合成〕
o−クレゾール324.3g(3.00モル)と,最初に用いる41%ホルムアルデヒド水溶液132.3g(1.83モル)を用いた以外は合成例1と同様にしてフェノール樹脂(B−2)を得た。得られたフェノール樹脂の軟化点は71℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は0.4dPa・s、水酸基当量は178g/eq.であった。
【0102】
実施例1 〔エポキシ樹脂(A−1)の合成〕
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例1で得られたフェノール樹脂(B−1)の113.8g(水酸基0.69当量)、4,4’−ビフェノール28.5g(水酸基当量0.31当量)、エピクロルヒドリン463g(5.0モル)、n−ブタノール139g、テトラエチルベンジルアンモニウムクロライド2gを仕込み溶解させた。70℃に昇温した後、20%水酸化ナトリウム水溶液220g(1.1モル)を5時間かけて滴下した。その後、同条件で0.5時間撹拌を続けた。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール350gとを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水150gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去してエポキシ樹脂(A−1)176gを得た。得られたエポキシ樹脂(A−1)の溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は0.4dPa・s、エポキシ当量は230g/eq.であった。得られたエポキシ樹樹脂(A−1)のGPCチャートを図1に示す。
【0103】
実施例2 〔エポキシ樹脂(A−2)の合成〕
実施例1においてフェノール樹脂(B−1)及び4,4’−ビフェノールを、フェノール樹脂(B−1)の137.1g(水酸基0.84当量)、4,4’−ビフェノール15.3g(水酸基当量0.16当量)を用いた以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂(A−2)185gを得た。得られたエポキシ樹脂(A−2)の溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は0.6dPa・s、エポキシ当量は240g/eq.であった。得られたエポキシ樹樹脂(A−2)のGPCチャートを図2に示す。
【0104】
実施例3 〔エポキシ樹脂(A−3)の合成〕
実施例1においてフェノール樹脂(B−1)及び4,4’−ビフェノールを、フェノール樹脂(B−2)97.9g(水酸基0.55当量)、4,4’−ビフェノール41.9g(水酸基当量0.45当量)を用いた以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂(A−3)178gを得た。得られたエポキシ樹脂(A−3)の溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は0.2dPa・s、エポキシ当量は225g/eq.であった。得られたエポキシ樹樹脂(A−3)のGPCチャートを図3に示す。
【0105】
比較例1 〔エポキシ樹脂(A−4)の合成〕
実施例1において、フェノール樹脂(B−1)及び4,4’−ビフェノールの混合物に代え、フェノール樹脂(B−1)164.0g(水酸基当量1.0当量)のみを用いた以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂(A−4)を得た。得られたエポキシ樹脂(A−4)の溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は1.0dPa・s、エポキシ当量は252g/eq.であった。
【0106】
比較例2 〔エポキシ樹脂(A−5)の合成〕
実施例1において、フェノール樹脂(B−1)及び4,4’−ビフェノールの混合物に代え、4,4’−ビフェノール93.0g(水酸基当量1.0当量)のみを用いた以外は実施例1と同様の反応を試みたが、水酸化ナトリウムを滴下中に結晶が析出しエポキシ樹脂を得ることができなかった。
【0107】
比較例3〔エポキシ樹脂(A−6)の合成〕
実施例1においてフェノール樹脂(B−1)及び4,4’−ビフェノールの混合物を、オルソクレゾールのボラック樹脂の90.6g(水酸基0.76当量)、4,4’−ビフェノール22.8g(水酸基当量0.25当量)を用いた以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂(A−6)150gを得た。得られたエポキシ樹脂(A−6)の溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は1.0dPa・s、エポキシ当量は195g/eq.であった。
【0108】
実施例4〜12と比較例4、5
表1に示す各種の材料を用い、2本ロールを用いて80℃の温度で10分間溶融混練してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物について、下記手法によりゲルタイムを測定し硬化性の評価とスパイラルフローの評価を行った。また、前記エポキシ樹脂組成物は、トランスファー成形機により、金型温度175℃、成形圧力7.0MPa、ラム速度5cm/秒、硬化時間180秒の条件で行った。その後175℃で5時間さらに硬化せしめた後に、下記方法により硬化物の物性を確認した。得られた硬化物の物性は表3〜5にまとめた。
【0109】
ゲルタイム: エポキシ樹脂組成物0.15gを175℃に加熱したキュアプレート(THERMO ELECTRIC社製)上に載せ、ストップウォッチで計時を開始する。棒の先端にて試料を均一に攪拌し、糸状に試料が切れてプレートに残るようになった時、ストップウォッチを止める。この試料が切れてプレートに残るようになるまでの時間をゲルタイムとした。
スパイラルフロー: EMEI−1−66に準拠したスパイラルフロー測定金型を用いて、前記2本ロールで混練したエポキシ樹脂組成物を金型温度175℃、成形圧力7.0MPa、ラム速度5cm/秒の条件で流動距離(cm)を求めた。
ショアD: 直径50mm×厚さ3mmの円板状の金型に成形し、成形後ただちにショアD型硬度計を用いて測定した。
連続成形性: 直径50mm×厚さ3mmの円板状の金型に成形し、300、500及び700ショット成形後のパッケージ表面及び金型表面について目視で汚れを評価した。
700ショットまで汚れていないものを◎、500ショットまで汚れていないものを○、300ショットまで汚れていないものを△、300ショット以前に汚れが発生しているものは×とした。
ハンダクラック: 金型温度175℃、成形圧力7.0MPa、ラム速度5cm/秒、硬化時間180秒の条件で、エポキシ樹脂組成物によりシリコンチップ等を封止して80ピン・クワッド・フラット・パッケージ(80pQFP;Cu製リードフレーム、パッケージ外寸:14mm×20mm×2mm厚、パッドサイズ:6.5mm×6.5mm、チップサイズ6.0mm×6.0mm×0.35mm厚)を得る成形を行なった。
成形したパッケージを、175℃、8時間加熱処理を行って後硬化し、次いで85℃、相対湿度60%で168時間加湿処理後、260℃の半田槽にパッケージを10秒間浸漬した。半田に浸漬させたパッケージ20個の半導体素子とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面の密着状態を、超音波探傷装置(日立建機ファインテック社製 mi−scope 10)により観察し、剥離発生率[(剥離発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]を算出した。耐半田性の判断基準は、剥離が発生しなかったものは◎、剥離発生率が5%以上、10%未満のものは○、10%以上、20%未満のものは△、20%以上のものは×とした。
ピール強度(密着性の指標): 30μm厚みのアルミ箔上に100mm×70mm×3mmの試験片を金型温度175℃、成形圧力7.0MPa、ラム速度5cm/秒、硬化時間180秒の条件で成形し、10mm幅に切りだして試験片を作成した。得られた試験片を用いJIS−K6481に準拠した方法でピール強度を測定した。
難燃性: UL−94試験法に準拠し、厚さ1.6mmの試験片5本を用いて、燃焼試験を行った。
【0110】
【表1】


【0111】
尚、表1中の略号は以下の通りである。
【0112】
【表2】

【0113】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた実施例4〜8及び11、12では、難燃剤を配合しなくても、得られる硬化物において充分な難燃性を発現すると共に、半導体封止材料、とくにエリアアレイ型の半導体装置に好適に用いることができることを確認した。しかしながら、比較例1は流動性が悪いばかりか、連続性形成と耐ハンダクラック性も悪い。比較例2は、4,4’−(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェノールの結晶が残存し評価可能な硬化物が得られなかった。また比較例3は流動性、耐ハンダクラック性が悪いばかりか十分な難燃性を示さなかった。これらの比較例から明らかなように、比較例で用いたエポキシ樹脂組成物では、その硬化物の性能において十分に満足できるレベルではないことが確認できた。
【0114】
また、非ハロゲン系難燃剤を配合して得られた実施例9、10においても、流動性、連続成形性、ハンダクラック性に優れることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が、
フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)、並びに、メチレン基、アルキリデン基及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)の各構造部位を有しており、かつ、前記フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)及び前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)が、前記メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)を介して結合した構造を分子構造内に有するフェノール樹脂(ph1)と、
4,4’−ビフェノールとの混合物をエピハロヒドリンと反応させて得られるものであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)が、前記フェノール樹脂(ph1)70質量%〜90質量%と4,4’−ビフェノール10質量%〜30質量%の混合物をエピハロヒドリンと反応させて得られるエポキシ樹脂である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(A)の150℃におけるICI粘度計における溶融粘度が0.1〜1.0dPa・s、エポキシ当量が220g/eq.〜300g/eq.の範囲であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記硬化剤(B)が、ビスアラルキルを結節基として水酸基含有芳香族構造が連結された構造を含有するヒドロキシ芳香族化合物である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
更に硬化促進剤を含有する請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
更に無機充填剤を含有する請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
更に非ハロゲン系難燃剤(C)を含有する請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
非ハロゲン系難燃剤(C)が、リン系難燃剤(c1)、窒素系難燃剤(c2)、シリコーン系難燃剤(c3)、無機系難燃剤(c4)、有機金属系難燃剤(c5)からなる群から選ばれる1種以上の難燃剤である請求項7記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とする半導体封止材料。
【請求項11】
請求項10記載の半導体封止材料を用いることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)、並びに、メチレン基、アルキリデン基及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)の各構造部位を有しており、かつ、前記フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(P)及び前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(B)が、前記メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(X)を介して結合した構造を分子構造内に有するフェノール樹脂(ph1)と、
4,4’−ビフェノールとの混合物をエピハロヒドリンと反応させて得られる分子構造を有することを特徴とするエポキシ樹脂。
【請求項13】
前記フェノール樹脂(ph1)70質量%〜90質量%と4,4’−ビフェノール10質量%〜30質量%の混合物をエピハロヒドリンと反応させて得られる分子構造を有する請求項12記載のエポキシ樹脂。
【請求項14】
150℃におけるICI粘度計における溶融粘度が0.1〜1.0dPa・s、エポキシ当量が220g/eq.〜300g/eq.であることを特徴とする請求項12又は13記載のエポキシ樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−26385(P2011−26385A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171079(P2009−171079)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】