説明

エポキシ樹脂組成物、封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】半田耐熱性に優れ、かつ成形時における離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ性等とのバランスに優れるエポキシ樹脂組成物及び電子部品装置を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂系硬化剤、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)グリセリントリ脂肪酸エステルを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物、好ましくは、前記(C)成分中に含まれるポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)成分としての配合量Ac1と前記(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの配合量Aとの重量比Ac1/Aが3/1から1/5までの範囲であるエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、電子部品の高集積化が年々進み、またパッケージの表面実装化が促進されてきている。更に地球環境へ配慮した企業活動が重要視され、有害物質である鉛を2006年までに特定用途以外で全廃することが求められている。しかしながら、鉛フリー半田の融点は従来の鉛/スズ半田に比べて高いため、赤外線リフロー、半田浸漬等の半田実装時の温度も従来の220〜240℃から、今後240℃〜260℃へと高くなる。このような実装温度の上昇により、実装時に樹脂部にクラックが入り易くなり、信頼性を保証することが困難になってきているという問題が生じている。更にリードフレームについても、外装半田メッキも脱鉛する必要があるとの観点から、外装半田メッキの代わりに事前にニッケル・パラジウムメッキを施したリードフレームの適用が進められている。このニッケル・パラジウムメッキは一般的な封止材料との密着性が低く、実装時に界面において剥離が生じ易く、樹脂部にクラックも入り易い。
【0003】
このような課題に対し、半田耐熱性の向上に対して低吸水性のエポキシ樹脂や硬化剤を適用することにより(例えば、特許文献1、2、3参照。)、実装温度の上昇に対して対応が取れるようになってきた。その半面、このような低吸水・低弾性率を示すエポキシ樹脂組成物は架橋密度が低く、硬化直後の成形物は軟らかく、連続生産では金型への樹脂トラレ等の成形性での不具合が生じ、生産性を低下させる問題があった。
また、連続成形性向上への取り組みとしては、離型効果の高い離型剤の適用が提案されている(例えば、特許文献4参照。)が、離型効果の高い離型剤は必然的に樹脂硬化物の表面に浮き出しやすく、連続生産すると樹脂硬化物表面の外観及び金型表面を著しく汚してしまう欠点があった。樹脂硬化物表面の外観に優れるエポキシ樹脂組成物として、特定の構造を有するシリコーン化合物を添加する手法等が提案されている(例えば、特許文献5、6参照。)が、離型性は不充分で連続成形においてエアベント部分で樹脂が付着してエアベントを塞ぐことにより、未充填等の成形不具合を生じさせる等、連続成形性の低下を引き起こす問題があった。以上より、半田耐熱性、離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ全ての課題に対応した封止用エポキシ樹脂組成物が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−3161号公報
【特許文献2】特開平9−235353号公報
【特許文献3】特開平11−140277号公報
【特許文献4】特開2002−80695号公報
【特許文献5】特開2002−97344号公報
【特許文献6】特開2001−310930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、半田耐熱性が良好で、成形時における離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観、又は金型汚れ性等とのバランスに優れるエポキシ樹脂組成物及び電子部品装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂系硬化剤、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)グリセリントリ脂肪酸エステルを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物、
【0007】
[2] 前記ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)が下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである第[1]項に記載のエポキシ樹脂組成物、
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、R1は水素、メチル基、フェニル基、又はR2から選ばれる基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つ以上がR2で表されるポリカプロラクトン基を有する有機基である。n1の平均値は1以上、50以下の正数である。上記R2において、aの平均値は1以上、20以下の正数であり、R3は炭素数1〜30の有機基である。)
【0008】
[3] 前記(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの滴点が70℃以上、120℃以下である第[1]項又は第[2]項に記載のエポキシ樹脂組成物、
[4] 前記(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの酸価が10mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下である第[1]項ないし第[3]項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、
[5] 前記(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの平均粒径が20μm以上、70μm以下であり、全グリセリントリ脂肪酸エステル中における粒径106μm以上の粒子の含有比率が0.1重量%以下である第[1]項ないし第[4]項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、
[6] 前記(D)グリセリントリ脂肪酸エステルがグリセリンと炭素数24以上、36以下の飽和脂肪酸とのトリエステルである第[1]項ないし第[5]項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、
[7] 前記ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量Ac1と前記(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの配合量Aとの重量比Ac1/Aが3/1から1/5までの範囲である第[1]項ないし第[6]項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、
[8] 前記(A)エポキシ樹脂がビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を含む第[1]項ないし第[7]項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、
【0009】
[9] 前記(A)エポキシ樹脂が下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(a1)を含む第[1]項ないし第[7]項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、n2の平均値は、1以上、10以下の正数である。)
【0010】
[10] 前記(B)フェノール樹脂系硬化剤がビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂を含む第[1]項ないし第[9]項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、
【0011】
[11] 前記(B)フェノール樹脂系硬化剤が下記一般式(3)で表されるフェノール樹脂(b1)を含む第[1]項ないし第[9]項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、
【化3】

(ただし、上記一般式(3)において、n3の平均値は、1以上、10以下の正数である。)
【0012】
[12] 第[1]項ないし第[11]項のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物が電子部品封止用である封止用エポキシ樹脂組成物、
[13] 第[12]項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止してなることを特徴とする電子部品装置、
[14] 第[12]項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物が半導体封止用である半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[15] 第[14]項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従うと、電子部品装置実装時において優れた半田耐熱性を示すとともに、素子の封止成形時における離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ性等とのバランスに優れる封止用エポキシ樹脂組成物が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン及びグリセリントリ脂肪酸エステルを配合することにより、素子の封止成形時において離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観が良好で金型汚れも発生し難いという優れた成形性を示すとともに、電子部品装置実装時の半田耐熱性に優れた封止用エポキシ樹脂組成物が得られるものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明で用いられる(A)エポキシ樹脂とは、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。耐半田性の向上という観点からは、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(a1)がより好ましい。粘度上昇を抑える観点から、下記一般式(2)において、n2の平均値は1以上、10以下の正数であることが好ましく、1以上、6以下の正数であることがより好ましく、1以上、3以下の正数であることが特に好ましい。
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、n2の平均値は、1以上、10以下の正数である。)
【0016】
本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)全体の配合割合の下限値については、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。また、エポキシ樹脂(A)全体の配合割合の上限値については、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、12重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、耐半田性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0017】
本発明で用いられる(B)フェノール樹脂系硬化剤とは、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ナフトールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。耐半田性の向上という観点からは、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂が好ましく、下記一般式(3)で表されるフェノール樹脂(b1)がより好ましい。粘度上昇を抑える観点から、下記一般式(3)において、n3の平均値は1以上、10以下の正数であることが好ましく、1以上、6以下の正数であることがより好ましく、1以上、2以下の正数であることが特に好ましい。
【化3】

(ただし、上記一般式(3)において、n3の平均値は、1以上、10以下の正数である。)
【0018】
本発明で用いられるフェノール樹脂系硬化剤(B)の配合割合の下限値については、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、2重量%以上であることが好ましく、4重量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。また、フェノール樹脂系硬化剤(B)の配合割合の上限値については、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、耐半田性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0019】
また、(A)エポキシ樹脂及び(B)フェノール樹脂系硬化剤の配合比率としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と全フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下であることが好ましい。当量比がこの範囲であると、エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、又は樹脂硬化物の物性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0020】
本発明では、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)と、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルと、を併用することが必須である。これにより、エポキシ樹脂マトリックスと(D)グリセリントリ脂肪酸エステルとを適正な状態に相溶化させることができるため、これらを併用したエポキシ樹脂組成物は、その成形時において、樹脂硬化物表面の外観と離型性とを両立させることができ、連続成形性が良好になる。
【0021】
一方、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルを使用せずに、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)のみを使用した場合では、離型性が不充分となり、連続成形性が低下する。また、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を使用せずに、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルのみを使用した場合では、エポキシ樹脂マトリックス中における(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの相溶化が不充分となり、樹脂硬化物表面の外観が悪化する。ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量Ac1と(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの配合量Aとの重量比Ac1/Aとしては、3/1から1/5までの範囲が好ましく、この範囲内にあるときが最も両者を併用する効果が高くなる。尚、(C)成分としてポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を用いる場合のポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量Ac1とは、エポキシ樹脂と反応させる前のポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の全エポキシ樹脂組成物に対する配合量を意味する。
【0022】
本発明で用いられるポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)は、ポリカプロラクトンとオルガノポリシロキサンを混合し、白金触媒下50〜100℃で反応させることで得られる。ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)としては、特に限定するものではないが、下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンが好ましい。
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、R1は水素、メチル基、フェニル基、又はR2から選ばれる基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つ以上がR2で表されるポリカプロラクトン基を有する有機基である。n1の平均値は1以上、50以下の正数である。上記R2において、aの平均値は1以上、20以下の正数であり、R3は炭素数1〜30の有機基である。)
【0023】
前記一般式(1)において、R1は水素、メチル基、フェニル基、又はR2から選ばれる基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つ以上がR2で表されるポリカプロラクトン基を有する有機基である。R2において、aの平均値は1以上、20以下の正数であり、R3は炭素数1〜30の有機基である。ポリカプロラクトン基を有する有機基の炭素数が上記範囲内であると、エポキシ樹脂マトリックスとの相溶性が適正な状態となり、樹脂硬化物表面の外観悪化を抑えることができる。また、前記一般式(1)において、n1の平均値は1以上、50以下の正数である。n1の平均値が上記範囲内であると、オルガノポリシロキサン自体の粘度が適正な範囲となるため、流動性の悪化を引き起こす恐れが少ない。
【0024】
前記(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を使用すると、流動性の低下を引き起こさず、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルのように樹脂との相溶性が悪い離型剤を用いた場合においても、樹脂硬化物表面の外観を良好にすることができる。
【0025】
ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)の製法については、特に限定するものではないが、例えば、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)をエポキシ樹脂と硬化促進剤により溶融・反応させることで得ることができる。ここで言う硬化促進剤とは、オルガノポリシロキサン(c1)のポリカプロラクトン基とエポキシ化合物のエポキシ基との硬化反応を促進させるものであればよく、後述するエポキシ樹脂(A)のエポキシ基とフェノール樹脂系硬化剤(B)のフェノール性水酸基との硬化反応を促進させる硬化促進剤と同じものを用いることができる。また、ここで言うエポキシ化合物とは、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、前述したエポキシ樹脂(A)と同じものを用いることができる。ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を使用すると、更に、連続成形後の型汚れが発生し難く、連続成形性が極めて良好になる。
【0026】
(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)の配合量は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)での配合量として、全エポキシ樹脂組成物中0.01重量%以上、3重量%以下であることが好ましい。配合量が上記範囲内であると、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルによる樹脂硬化物表面の外観汚れを抑えることができる。また、配合量が上記範囲内であると、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)自体による樹脂硬化物表面の外観悪化を抑えることができる。
また、本発明に用いられる(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を添加する効果を損なわない範囲で、他のオルガノポリシロキサンを併用することができる。
【0027】
本発明で用いられる(D)グリセリントリ脂肪酸エステルは、グリセリンと飽和脂肪酸より得られるトリエステルであり、これを用いたエポキシ樹脂組成物の離型性を向上させる効果が非常に優れている。グリセリンと飽和脂肪酸とのモノエステル、ジエステルでは、十分な離型効果を有さず、連続成形性に劣る。本発明に用いられる(D)グリセリントリ脂肪酸エステルとしては、具体的にはグリセリントリカプロン酸エステル、グリセリントリカプリル酸エステル、グリセリントリカプリン酸エステル、グリセリントリラウリン酸エステル、グリセリントリミリスチン酸エステル、グリセリントリパルミチン酸エステル、グリセリントリステアリン酸エステル、グリセリントリアラキン酸エステル、グリセリントリベヘン酸エステル、グリセリントリリグノセリン酸エステル、グリセリントリセロチン酸エステル、グリセリントリモンタン酸エステル、グリセリントリメリシン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、炭素数24以上、36以下の飽和脂肪酸とのグリセリントリ脂肪酸エステルが、エポキシ樹脂組成物の離型性と樹脂硬化物表面の外観の観点から、好ましい。尚、本発明中の飽和脂肪酸の炭素数とは、飽和脂肪酸中のアルキル基とカルボキシル基の炭素数を合計したものを指す。
【0028】
本発明で用いられる(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの滴点は、70℃以上、120℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以上、110℃以下である。滴点は、ASTM D127に準拠した方法により測定することができる。具体的には、金属ニップルを用いて、溶融したワックスが金属ニップルから最初に滴下するときの温度として測定される。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。滴点が上記範囲内にあると、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルは熱安定性に優れ、連続成形時に(D)グリセリントリ脂肪酸エステルが焼き付きにくい。そのため、金型からの樹脂硬化物の離型性に優れるとともに、連続成形性にも優れる。さらに、上記範囲内であると、エポキシ樹脂組成物を硬化させる際、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルが充分に溶融する。これにより、樹脂硬化物中に(D)グリセリントリ脂肪酸エステルが略均一に分散する。そのため、樹脂硬化物表面における(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの偏析が抑制され、金型の汚れや樹脂硬化物の外観の悪化を低減することができる。
【0029】
本発明で用いられる(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの酸価は、10/mg以上、50mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、40mgKOH/g以下である。酸価は樹脂硬化物との相溶性に影響を及ぼす。酸価は、JIS K 3504に準拠した方法により測定することができる。具体的には、ワックス類1g中に含有する遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数として測定される。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。酸価が上記範囲内にあると、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルは、樹脂硬化物中において、エポキシ樹脂マトリックスと好ましい相溶状態となる。これにより、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルと、エポキシ樹脂マトリックスとが、相分離を起こすことがない。そのため、樹脂硬化物表面における(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの偏析が抑制され、金型の汚れや樹脂硬化物の外観の悪化を低減することができる。さらに、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルが樹脂硬化物表面に存在するため、樹脂硬化物は金型からの離型性に優れる。一方、エポキシ樹脂マトリックスとの相溶性が高すぎると、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルが樹脂硬化物表面に染み出すことができず、充分な離型性を確保することができない場合がある。
【0030】
本発明で用いられる(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの平均粒径は、20μm以上、70μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以上、60μm以下である。平均粒径は、例えば(株)島津製作所製のSALD−7000などのレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、溶媒を水として、重量基準の50%粒子径として測定することができる。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。上記範囲内にあると、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルは、樹脂硬化物中において、エポキシ樹脂マトリックスと好ましい相溶状態となる。これにより、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルが樹脂硬化物表面に存在し、金型からの硬化物の離型性に優れる。一方、エポキシ樹脂マトリックスとの相溶性が高すぎると、樹脂硬化物表面に染み出すことができず、充分な離型性を確保することができない。さらに、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルと、エポキシ樹脂マトリックスとが好ましい相溶状態にあるため、樹脂硬化物表面における(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの偏析が抑制され、金型の汚れや樹脂硬化物の外観の悪化を低減することができる。またさらに、上記範囲にあると、エポキシ樹脂組成物を硬化させる際、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルが充分に溶融する。そのため、エポキシ樹脂組成物は流動性に優れる。
【0031】
また、全(D)グリセリントリ脂肪酸エステル中における粒径106μm以上の粒子の含有比率は、0.1重量%以下であることが好ましい。この含有比率は、JIS Z 8801の目開き106μmの標準篩を用いて測定することができる。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。上記の含有比率であれば、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルがエポキシ樹脂組成物中に略均一に分散し、金型の汚れや樹脂硬化物の外観の悪化を抑制することができる。また、エポキシ樹脂組成物を硬化させる際、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルが充分に溶融するため、流動性に優れる。
【0032】
本発明で用いられる(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの配合量の下限値については、エポキシ樹脂組成物中に、0.01重量%以上が好ましく、より好ましくは0.03重量%以上である。配合量の下限値が上記範囲内にあると、金型からの樹脂硬化物の離型性に優れる。また、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの配合量の上限値については、エポキシ樹脂組成物中に、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。配合量の上限値が上記範囲内にあると、リードフレーム部材との密着性が良好となり、半田処理時におけるエポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物とリードフレーム部材との剥離を抑制することができる。またさらに、金型汚れや樹脂硬化物表面の外観の悪化を抑制することができる。
【0033】
本発明で用いられる(D)グリセリントリ脂肪酸エステルは、市販のものを入手し、必要により粒度調整して使用することができる。
本発明で用いられる(D)グリセリントリ脂肪酸エステルを用いることによる効果を損なわない範囲で、他の離型剤を併用することもできる。併用できる離型剤としては、例えばカルナバワックス等の天然ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩類等が挙げられる。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂系硬化剤、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)グリセリントリ脂肪酸エステルを必須成分とするが、その他の主要構成成分として(E)硬化促進剤、(F)無機充填材等を配合することができる。
【0035】
本発明に用いることができる(E)硬化促進剤としては、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基と(B)フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを用いることができる。例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0036】
本発明に用いることができる(E)硬化促進剤の配合割合の下限値については、特に限定されないが、全半導体封止用樹脂組成物中0.05重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、硬化性の低下等を引き起こす恐れが少ない。また、(E)硬化促進剤の配合割合の上限値については、特に限定されないが、全半導体封止用樹脂組成物中1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0037】
本発明に用いることができる(F)無機充填材としては、一般に封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられ、最も好適に使用されるものは、球状の溶融シリカである。これらの(F)無機充填材は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用しても差し支えない。またこれらがカップリング剤により表面処理されていてもかまわない。(F)無機充填材の形状としては、流動性の観点から、できるだけ真球状であり、かつ粒度分布がブロードであることが好ましい。
【0038】
本発明に用いることができる(F)無機充填材の含有量の下限値については、全エポキシ樹脂組成物中78重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。含有量の下限値が上記範囲内であると、成形時における充分な流動性を得ることができる。また、(F)無機充填材の含有量の上限値については、全エポキシ樹脂組成物中93重量%以下であることが好ましく、91重量%以下であることがより好ましい。含有量の上限値が上記範囲内であると、実装時における良好な耐半田性を得ることができる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記(A)〜(F)成分以外に、更に必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等のカップリング剤;カーボンブラック等の着色剤;シリコーンオイル、ゴム等の低応力添加剤;臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン等の難燃剤等の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0040】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記(A)〜(F)成分、その他の添加剤等を、ミキサー等を用いて充分に均一に混合したもの、その後、更に熱ロール、ニーダー、押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕したものなど、必要に応じて適宜分散度や流動性等を調整したものを用いることができる。
【0041】
封止を行う素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等で特に限定されるものではなく、電子部品装置の形態も特に限定されない。低圧トランスファー成形などの方法で封止された電子部品装置は、そのまま、或いは80〜200℃の温度で15秒〜10時間かけて完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
本発明の電子部品装置の形態としては、特に限定されないが、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)等が挙げられる。
【0042】
図1は、本発明に係る封止用エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間は金線4によって接続されている。半導体素子1は、封止用樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【実施例】
【0043】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
実施例1
エポキシ樹脂1:下記式(2)で表されるエポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC3000P。エポキシ当量274、軟化点58℃。下記式(2)において、n2の平均値3.8。) 8.13重量部

【化2】

【0044】
フェノール樹脂系硬化剤1:下記式(3)で表されるエポキシ樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851SS。水酸基当量203、軟化点107℃。下記式(3)において、n3の平均値は3.5。) 5.47重量部
【化3】

【0045】
オルガノポリシロキサン1:下記式(4)で表されるオルガノポリシロキサン(ポリカプロラクトンとオルガノポリシロキサンを混合し、白金触媒下80℃で反応させることで得た。) 0.20重量部
【化4】

【0046】
グリセリントリセロチン酸エステル(グリセリンとセロチン酸を混合し、減圧下、180℃の条件で脱水縮合させ、得られた生成物を粉砕することによって得た。滴点80℃、酸価20mgKOH/g、平均粒径45μm、粒径106μm以上の粒子0.0重量%。) 0.20重量部
1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという)
0.20重量部
溶融球状シリカ(平均粒径21μm) 85.00重量部
カップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン) 0.40重量部
カーボンブラック 0.40重量部
を混合し、熱ロールを用いて、95℃で8分間溶融混練して冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0047】
評価方法
スパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。単位はcm。判定基準は70cm未満を不合格、70cm以上を合格とした。
【0048】
連続成形性:低圧トランスファー自動成形機(第一精巧製、GP−ELF)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間70秒で、80ピンクワッドフラットパッケージ(80pQFP;Cu製リードフレーム、パッケージ外寸:14mm×20mm×2mm厚、パッドサイズ:6.5mm×6.5mm、チップサイズ6.0mm×6.0mm×0.35mm厚)を、エポキシ樹脂組成物により連続で700ショットまで封止成形した。判定基準は未充填等全く問題なく700ショットまで連続成形できたものを◎、未充填等全く問題なく500ショットまで連続成形できたものを○、それ以外を×とした。
【0049】
パッケージ外観及び金型汚れ性:上記連続成形性の評価において、300、500及び700ショット成形後のパッケージ表面及び金型表面について、目視で汚れを評価した。パッケージ外観判断及び金型汚れ基準は、700ショットまで汚れていないものを◎で、500ショットまで汚れていないものを○で、300ショットまで汚れていないものを△で、汚れているものを×で表す。また、上記連続成形性において、300ショットまで連続成形できなかったものについては、連続成形を断念した時点でのパッケージ外観及び金型汚れ状況で判断した。
【0050】
耐半田性:上記連続成形性の評価において成形したパッケージを、175℃、8時間加熱処理を行って後硬化し、次いで85℃、相対湿度60%で168時間加湿処理後、260℃の半田槽にパッケージを10秒間浸漬した。半田に浸漬させたパッケージ20個の半導体素子とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面の密着状態を、超音波探傷装置()により観察し、剥離発生率[(剥離発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]を算出した。単位は%。耐半田性の判断基準は、剥離が発生しなかったものは◎、剥離発生率が5%以上、10%未満のものは○、10%以上、20%未満のものは△、20%以上のものは×とした。
【0051】
実施例2〜9、比較例1〜5
表1及び2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び2に示す。
実施例1以外で用いた原材料を以下に示す。
エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX−4000。エポキシ当量190g/eq、融点105℃。)
エポキシ樹脂3:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN−1020 62。エポキシ当量200g/eq、軟化点62℃。)
フェノール樹脂系硬化剤2:パラキシリレン変性ノボラック型フェノール樹脂(三井化学(株)製、XLC−4L。水酸基当量168g/eq、軟化点62℃。)
【0052】
オルガノポリシロキサン2:下記式(5)で表されるオルガノポリシロキサン(ポリカプロラクトンとオルガノポリシロキサンを混合し、白金触媒下80℃で反応させることで得た。)
【化5】

【0053】
オルガノポリシロキサン3:下記式(6)で表されるオルガノポリシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製SILSOFT034)
【化6】

【0054】
反応生成物A:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、YL−6810、エポキシ当量170g/eq、融点47℃)66.1重量部を140℃で加温溶融し、オルガノポリシロキサン1(式(4)で表されるオルガノポリシロキサン)33.1重量部及びトリフェニルホスフィン0.8重量部を添加して、30分間溶融混合して反応生成物Aを得た。
グリセリントリモンタン酸エステル(クラリアントジャパン(株)製LICOLUBE WE4、滴点85℃、酸価25mgKOH/g、平均粒径45μm、粒径106μm以上の粒子0.0重量%)
グリセリントリメリシン酸エステル(グリセリンとメリシン酸を混合し、減圧下、180℃の条件で脱水縮合させ、得られた生成物を粉砕することによって得た。滴点95℃、酸価30mgKOH/g、平均粒径45μm、粒径106μm以上の粒子0.0重量%)
グリセリンジセロチン酸エステル(グリセリンとセロチン酸を混合し、減圧下、180℃の条件で脱水縮合、蒸留させ、得られた生成物を粉砕することによって得た。滴点75℃、酸価25mgKOH/g、平均粒径45μm、粒径106μm以上の粒子0.0重量%)
カルナバワックス
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
実施例1〜9は、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)グリセリントリ脂肪酸エステルをともに含むものであり、(C)成分の配合量や種類を変えたもの、(D)成分の配合量や種類を変えたもの、或いは、樹脂の種類や無機充填材の配合量を変えたものを含むものであるが、いずれにおいても、流動性(スパイラルフロー)、連続成形性、パッケージ外観、金型汚れ性、耐半田性の全てに亘って、良好な結果が得られた。
【0058】
一方、比較例1は(D)グリセリントリ脂肪酸エステルを用いていないものであるが、離型性が不充分なため、連続成形性が低下する結果となった。
また、比較例2は(C)成分の代わりにポリカプロラクトン基を有さないオルガノポリシロキサン3を用いたものであるが、(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの分散が不充分となり、パッケージ表面の外観が悪化し、金型キャビティが汚れる結果となった。
また、比較例3は(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの代わりに、グリセリンジ脂肪酸エステルを用いたものであるが、充分な離型性が得られず、連続成形性が劣る結果となった。
また、比較例4は(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの代わりに、カルナバワックスを用いたものであるが、ワックスが樹脂硬化物表面に均一に出てこないため、連続成形性が劣る結果となった。
比較例5は、(C)成分、(D)成分をともに用いていないものであるが、離型性が不充分なため、連続成形性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に従うと、半導体装置実装時において優れた半田耐熱性を示すとともに、半導体素子の封止成形時における離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ性等とのバランスに優れる封止用エポキシ樹脂組成物が得られるため、工業的な樹脂封止型半導体装置、特に表面実装用の樹脂封止型半導体装置の製造に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【符号の説明】
【0061】
1 半導体素子
2 ダイボンド材硬化体
3 ダイパッド
4 金線
5 リードフレーム
6 封止用樹脂組成物の硬化体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂系硬化剤、
(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)とエポキシ樹脂との反応生成物(c2)、
並びに
(D)グリセリントリ脂肪酸エステル
を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)が下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、R1は水素、メチル基、フェニル基、又はR2から選ばれる基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つ以上がR2で表されるポリカプロラクトン基を有する有機基である。n1の平均値は1以上、50以下の正数である。上記R2において、aの平均値は1以上、20以下の正数であり、R3は炭素数1〜30の有機基である。)
【請求項3】
前記(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの滴点が70℃以上、120℃以下である請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの酸価が10mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの平均粒径が20μm以上、70μm以下であり、全グリセリントリ脂肪酸エステル中における粒径106μm以上の粒子の含有比率が0.1重量%以下である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記(D)グリセリントリ脂肪酸エステルがグリセリンと炭素数24以上、36以下の飽和脂肪酸とのトリエステルである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量Ac1と前記(D)グリセリントリ脂肪酸エステルの配合量Aとの重量比Ac1/Aが3/1から1/5までの範囲である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記(A)エポキシ樹脂がビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を含む請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記(A)エポキシ樹脂が下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(a1)を含む請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、n2の平均値は、1以上、10以下の正数である。)
【請求項10】
前記(B)フェノール樹脂系硬化剤がビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂を含む請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記(B)フェノール樹脂系硬化剤が下記一般式(3)で表されるフェノール樹脂(b1)を含む請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【化3】

(ただし、上記一般式(3)において、n3の平均値は、1以上、10以下の正数である。)
【請求項12】
前記エポキシ樹脂組成物が請求項1ないし請求項11のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物が電子部品封止用である封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止してなることを特徴とする電子部品装置。
【請求項14】
請求項12に記載の封止用エポキシ樹脂組成物が半導体封止用である半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−127455(P2008−127455A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313621(P2006−313621)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】