説明

エンコーダ装置、駆動装置、及びロボット装置

【課題】位置情報を高精度に検出することができるエンコーダ装置を提供する。
【解決手段】エンコーダ装置は、第1信号を出力する第1のエンコーダと、第2信号を出力する第2のエンコーダと、第1信号に基づいて、第1のエンコーダの回転位置情報を示す第1位置情報を生成する第1位置情報生成部と、第2信号と第2のエンコーダの回転位置情報の補正値を示す補正テーブルとに基づいて、第2のエンコーダの回転位置情報を示す第2位置情報を生成する第2位置情報生成部と、第1位置情報と第2位置情報とを用いて前記第1位置情報に対する第2位置情報の相対的な変位を検知する判定部と、第2位置情報の相対的な変位を検知した場合に、第2位置情報の変位に応じて補正テーブルを生成する補正テーブル生成部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ装置、駆動装置、及びロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットやサービスロボットなど、人と協調作業を行うロボット装置が知られている。このようなロボット装置は、エンコーダ装置を備えた駆動装置によって駆動され、エンコーダ装置が検出した位置情報に基づいて、出力軸などの位置制御及び速度制御を行っている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−245191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したロボット装置が稼動する外部環境は電気的な外乱の中で動作している場合があり、とりわけ電界/磁界の外乱(通称“ノイズ”)によって、エンコーダ装置は検出した位置情報の位置ずれ(位置情報の変位)が発生する場合がある。また、エンコーダ装置は、減速機や駆動部の使用による磨耗などの要因によっても、位置情報の変位が発生する場合がある。こうした位置情報の変位が発生すると、エンコーダ装置が検出する位置情報の検出精度が低下する場合があるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、位置情報の変位が発生した場合に、位置情報を高精度に検出することができるエンコーダ装置、駆動装置、及びロボット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明は、駆動部によって回転される入力軸の回転位置に応じた第1信号を出力する第1のエンコーダと、前記入力軸と動力伝達部を介して連結される出力軸の回転位置に応じた第2信号を出力する第2のエンコーダと、前記第1信号に基づいて、前記第1のエンコーダの回転位置情報を示す第1位置情報を生成する第1位置情報生成部と、前記第2信号と前記第2のエンコーダの回転位置情報の補正値を示す補正テーブルとに基づいて、前記第2のエンコーダの回転位置情報を示す第2位置情報を生成する第2位置情報生成部と、前記第1位置情報と前記第2位置情報とを用いて前記第1位置情報に対する前記第2位置情報の相対的な変位を検知する判定部と、前記判定部によって前記第2位置情報の相対的な変位を検知した場合に、前記第2位置情報の変位に応じて前記補正テーブルを生成する補正テーブル生成部とを備えることを特徴とするエンコーダ装置である。
【0007】
また、本発明は、上記のエンコーダ装置を備えることを特徴とする駆動装置である。
【0008】
また、本発明は、上記の駆動装置を備えることを特徴とするロボット装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、位置情報を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による駆動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の駆動装置におけるエンコーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の駆動装置における信号処理回路の構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態における第2のエンコーダの偏心誤差を説明する図である。
【図5】同実施形態における補正テーブルと偏心誤差との一例を示すイメージ図である。
【図6】本発明の一実施形態による再生成後の補正テーブルと偏心誤差との一例を示すイメージ図である。
【図7】図1の駆動装置におけるエンコーダ装置の構成の別の一例を示す第2のブロック図である。
【図8】図1の駆動装置における信号処理回路の構成の別の一例を示す第2のブロック図である。
【図9】図1の駆動装置を備えるロボット装置の一例を示すブロック図である。
【図10】本発明の一実施形態による再生成後の補正テーブルと偏心誤差との別の一例を示す第2のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態によるエンコーダ装置及び駆動装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態による駆動装置1を示すブロック図である。
この図において、駆動装置1は、ギヤ2、第1のエンコーダ3、第2のエンコーダ4、モータ7、入力軸10、及び出力軸11を備えている。なお、駆動装置1は、エンコーダ装置20を備え、エンコーダ装置20は、第1のエンコーダ3及び第2のエンコーダ4を備えている。
【0012】
モータ7(駆動部)は、入力軸10を回転させる。ギヤ2(動力伝達部)は、入力軸10の回転に応じて、予め定められているギヤ比(例えば、1/100)で減速して出力軸11を回転させる。すなわち、この駆動装置1においては、モータ7が入力軸10を回転させ、この入力軸10が回転することにより、ギヤ2を介して出力軸11が回転する。
【0013】
第1のエンコーダ3は、1回転型のアブソリュートエンコーダであって、モータ7によって回転される入力軸10の回転位置に応じた第1の検出信号(第1信号)を出力する。
第2のエンコーダ4は、1回転型のアブソリュートエンコーダであって、入力軸10とギヤ2を介して連結される出力軸11の回転位置に応じた第2の検出信号(第2信号)を出力する。
すなわち、第1のエンコーダ3は、モータ7の入力軸10の位置変位を検知する機能を有しており、機械角360度の何処に位置するのかを検知できる1回転型のアブソリュートエンコーダである。なお、1回転型のアブソリュートエンコーダとは、回転情報として何回転、回ったかを示す多回転情報を検知する事が出来ないエンコーダのことである。ここで、第1のエンコーダ3は、例えば、13ビットの分解能(0〜8191)のアブソリュートエンコーダである。
【0014】
なお、駆動装置1では、ギヤ2が、予め定められているギヤ比で入力軸10と出力軸11とを連結している。そのため、エンコーダ装置20は、1回転型のアブソリュートエンコーダである第1のエンコーダ3と、1回転型のアブソリュートエンコーダである第2のエンコーダ4とを用いて、エンコーダ装置全体としては、多回転型アブソリュートエンコーダとして機能する。
【0015】
ところで、第1のエンコーダ3は、内部に、信号処理回路6を有している。この信号処理回路6には、第2のエンコーダ4が検出した第2の検出信号が、通信線12を介して入力される。そして、信号処理回路6は、第1のエンコーダ3が検出した第1の検出信号と、第2のエンコーダ4が検出した第2の検出信号とに基づいて、入力軸10の回転回数とともに1回転内の位置変位を示す合成位置データ(多回転位置情報)を合成する。また、信号処理回路6は、第1の検出信号と第2の検出信号とに基づいて、故障などを検出して、その結果としてエラーステータス情報を生成する。そして、信号処理回路6は、合成した合成位置データとエラーステータス情報とを、通信ライン9を介して、コントローラ8に出力する。
【0016】
これにより、コントローラ8は、その合成位置データにより、入力軸10の回転回数及び1回転内の位置変位を検出することが可能となる。また、コントローラ8は、エラーステータス情報により、例えば、モータ7の回転機構の異常、ギヤ2の異常、第1のエンコーダ3又は第2のエンコーダ4に内蔵されている後述する回転ディスク301、回転ディスク401の異常などによる、エンコーダ装置20の故障を検出することができる。
【0017】
次に、図2と図3とを用いて、駆動装置1のエンコーダ装置20の構成について詳細に説明する。なお、図2及び図3において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図2は、図1の駆動装置1におけるエンコーダ装置20の構成を示すブロック図である。
まず、図2を用いて、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4との構成について説明する。
【0018】
第1のエンコーダ3は、入力軸の回転に伴い回転するマーカが機械角360度の何処に位置するのかを検知できる1回転型のアブソリュートエンコーダである。この第1のエンコーダ3は、例えば、1回転型のアブソリュートエンコーダであって、光学式エンコーダである。
【0019】
第1のエンコーダ3は、所定のM系列コードによって定められたアブソリュートパターンとインクリメンタルパターンとを有する回転ディスク301を備えている。この回転ディスク301は、入力軸10の回転に伴い回転する。発光素子302から発光された光は、この回転ディスク301の各々のパターンを通って、受光センサ303に入光される。そして、受光センサ303は、アブソリュートパターンから検出される信号と、インクリメンタルパターンから検出される信号との二種類の信号を、第1の検出信号として、信号処理回路6に出力する。
【0020】
この受光センサ303から出力される二種類の信号における一方の信号であって、アブソリュートパターンから検出される信号は、絶対位置検出用信号(又は、M系列信号)として、信号処理回路6(後述する絶対位置検出回路611)に出力される。
また、受光センサ303から出力される二種類の信号における他方の信号であって、インクリメンタルパターンから検出される信号は、第1のインクリメンタル信号(又は、2相擬似正弦波)として、信号処理回路6(後述する第1の内挿回路612)に出力される。
【0021】
第2のエンコーダ4は、モータ7の入力軸10からギヤ2を介して接続された出力軸11の回転における変位位置、すなわち、位置情報を検知する機能を有している。この第2のエンコーダは、磁気式の1回転に1λ(≒位相角、360度)の変位を生じる90度の位相差を有する擬似正弦波を出力する。第2のエンコーダ4は、例えば、1回転型のアブソリュートエンコーダであって、磁気式エンコーダである。第1のエンコーダ3は、例えば、11ビットの分解能(0〜2047)のアブソリュートエンコーダである。
第2のエンコーダ4は、ディスク面上においてN極とS極とに2分割されている領域を有する回転ディスク401(円盤)を備えている。すなわち、回転ディスク401は、N極とS極との磁極構成を持つ円盤である。この回転ディスク401は、出力軸11の回転に伴い、回転する。
【0022】
この回転ディスク401上には、磁気センサ装置402が配置されている。この磁気センサ装置402は、回転ディスク401が回転する円周上に配置されている2つの磁気センサ403と磁気センサ404とを備えている。この2つの磁気センサ403と磁気センサ404とは、例えば、互いの位置が、回転ディスク401の回転中心軸に対して90度の角度となるようにして所定の位置に配置されているホール素子である。
【0023】
磁気センサ装置402は、N極とS極とを有する回転ディスク401が回転磁石として一回転することに応じて、一回転につき1パルスの正弦波状の信号を出力する。なお、磁気センサ装置402は、互いに90度の角度を有する磁気センサ403と磁気センサ404とを有しているため、この磁気センサ装置402からは、各々の磁気センサにより、90度の位相差を有する2相擬似正弦波(例えば、A、Bの2相信号)が出力される。この磁気センサ装置402が出力する2相擬似正弦波は、第2の検出信号すなわち第2のインクリメンタル信号として、信号処理回路6(後述する第2の内挿回路621)に出力される。
【0024】
次に、図3を用いて、信号処理回路6の構成について説明する。
図3は、エンコーダ装置20おける信号処理回路6の構成を示すブロック図である。
この図において、信号処理回路6は、第1の位置データ検出回路61、第2の位置データ検出回路62、位置データ合成回路63、位置データ比較・照合回路64、外部通信回路65、補正テーブル生成部67、及び記憶部68を備えている。
【0025】
第1の位置データ検出回路61(第1の位置情報生成部)は、受光センサ303から入力された第1の検出信号に基づいて、入力軸10の回転における位置変位を示す第1の位置データ(第1位置情報)を検出する。すなわち、第1の位置データ検出回路61は、第1の検出信号に基づいて、第1のエンコーダ3の回転位置情報を示す第1位置情報を生成する。
また、第1の位置データ検出回路61は、絶対位置検出回路611、第1の内挿回路612、位置検出回路613、及び変換テーブル記憶部614を備えている。
【0026】
絶対位置検出回路611は、受光センサ303から出力された絶対位置検出用信号を、変換テーブル記憶部614で変換(デコード)することにより、絶対位置情報を検出する。すなわち、絶対位置検出回路611は、受光センサ303から出力された絶対位置検出用信号に該当する絶対位置情報を変換テーブル記憶部614から読み出すことにより、絶対位置検出用信号を絶対位置情報に変換して、絶対位置情報を検出する。
変換テーブル記憶部614には、絶対位置検出用信号(M系列信号)と、入力軸の一回転内における絶対位置を示す情報であって、所定の分解能である絶対位置情報とが関連付けて予め記憶されている。この絶対位置情報とは、入力軸10の回転における絶対位置を示す情報である。
【0027】
第1の内挿回路612は、受光センサ303から出力された第1のインクリメンタル信号を内挿処理する。すなわち、第1の内挿回路612は、受光センサ303から出力された2相擬似正弦波である第1のインクリメンタル信号を、電気的に細分化を行う。
位置検出回路613は、絶対位置検出回路611が検出した絶対位置情報と第1の内挿回路612が内挿処理した第1のインクリメンタル信号とに基づいて、第1の位置データを検出する。一例として、位置検出回路613は、絶対位置検出回路611が検出した絶対位置情報と、第1の内挿回路612が細分化したインクリメンタル信号とを、予め定められている算出方法により、整合をとりながら合成する。これによって、位置検出回路613は、絶対位置検出回路611が検出した絶対位置情報より高い分解能の絶対位置情報である第1の位置データを生成する。
【0028】
第2の位置データ検出回路62(第2の位置情報生成部)は、磁気センサ装置402から入力された第2の検出信号と、第2のエンコーダ4の回転位置情報の補正値を示す後述する補正テーブル681とに基づいて、出力軸11の回転における位置変位を示す第2の位置データ(第2位置情報)を検出する。すなわち、第2の位置データ検出回路62は、第2の検出信号と補正テーブル681とに基づいて、第2のエンコーダ4の回転位置情報を示す第2位置情報を生成する。
また、第2の位置データ検出回路62は、第2の内挿回路621を備えている。
【0029】
第2の内挿回路621は、第2のエンコーダ4の磁気センサ装置402から出力された第2のインクリメンタル信号(2相擬似正弦波)を内挿処理して、出力軸11の回転における位置変位を示す位置データを検出する。なお、第2のエンコーダ4は、入力軸10と出力軸11との間の伝達誤差を含んだ回転位置変位を検出する。そのため、第2の内挿回路621は、記憶部68に記憶されている補正テーブル681を用いて、検出した位置データを補正した第2の位置データを生成する。
ここで、入力軸10と出力軸11との間の伝達誤差とは、ギヤ2自体が本質的に有する誤差を示している。例えば、理想的な出力軸11の回転中心に対して、ギヤ2の回転系の中心がずれていた場合に、後述する偏心誤差成分が累積誤差として現れる。本実施形態では、第2の内挿回路621が、主に偏心誤差による上述の伝達誤差を、補正テーブル681を用いて補正する。
【0030】
位置データ合成回路63は、第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データと、第2の位置データ検出回路62が検出した第2の位置データとを合成して、入力軸10の回転回数とともに1回転内の位置変位を示す合成位置データを生成する。なお、この位置データ合成回路63は、第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データと、第2の位置データ検出回路62が検出した第2の位置データとを合成する場合に、予め定められたギヤ比情報に基づいて合成位置データを合成する。そして、位置データ合成回路63は、生成した合成位置データを、外部通信回路65を介して、通信ライン9を通じてコントローラ8に出力する。
【0031】
位置データ比較・照合回路64(判定部)は、第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データと、第2の位置データ検出回路62が検出した第2の位置データとを用いて、第1の位置データに対する第2の位置データのずれ(第2位置情報の相対的な変位)を検知する。つまり、位置データ比較・照合回路64は、例えば、第1の位置データとギヤ比情報とに基づいて、第2の位置データの推定値(第2の推定値)を算出する。そして、位置データ比較・照合回路64は、第2の位置データ検出回路62が検出した第2の位置データと、算出したこの第2の位置データの推定値とを比較及び照合する。そして、位置データ比較・照合回路64は、比較及び照合した結果、第2の位置データのずれを検知した場合に、エラーステータス情報を、外部通信回路65を介して、通信ライン9を通じてコントローラ8に出力する。
なお、位置データ比較・照合回路64は、例えば、第2の位置データのずれ量が予め定められた閾値である第1閾値以上であると判定した場合に、「第2の位置データのずれを検知した」と判定する。
【0032】
また、位置データ比較・照合回路64は、第2の位置データのずれを検知した場合に、第2の位置データと、第1位置データから算出される第2の位置データの推定値とに基づいて、第2の位置データのずれ量(変位量)を算出する。そして、位置データ比較・照合回路64は、第2の位置データのずれを検知した場合に、補正テーブル681を再生成させる指令(以下、再生成指令という)と共に、算出したずれ量を補正テーブル生成部67に出力する。つまり、位置データ比較・照合回路64は、ノイズによる誤動作や使用による磨耗、衝突、滑り(例、出力軸やギヤの滑り)や負荷などの何らかの要因によって、入力軸10と出力軸11との回転における相対位置関係にずれが生じた場合(変位状態)に、この再生成指令を補正テーブル生成部67に出力する。例えば、位置データ比較・照合回路64は、第2の位置データのずれ量が予め定められた閾値である第1閾値以上である場合に、「第2の位置データのずれを検知した」と判定し、再生成指令を補正テーブル生成部67に出力してもよい。
【0033】
補正テーブル生成部67は、位置データ比較・照合回路64から出力された再生成指令に応じて、位置データ比較・照合回路64によって算出される第2の位置データのずれ量に基づいて補正テーブル681を生成する。つまり、補正テーブル生成部67は、位置データ比較・照合回路64によって第2の位置データのずれを検知した場合に、第2の位置データのずれに応じて補正テーブル681を再生成する。そして、補正テーブル生成部67は、再生成した補正テーブル681を記憶部68に記憶させる。なお、補正テーブル681を生成する方法の詳細は、後述する。
【0034】
記憶部68は、例えば、不揮発性メモリであり、補正テーブル681と偏心情報682とを記憶する。
補正テーブル681は、第2のエンコーダ4の回転位置情報の補正値を示す情報である。補正テーブル681において、第2のインクリメンタル信号(2相擬似正弦波)によって検知された伝達誤差を含んだ第2の位置データと、補正された第2の位置データとが関連づけられている。例えば、記憶部68に入力されるアドレス情報に伝達誤差を含んだ第2の位置データを用いて、補正された第2の位置データを出力させるように、補正テーブル681は、予め作成されている。これにより、第2の内挿回路621は、伝達誤差を含んだ第2の位置データに基づいて、補正された高精度な第2の位置データを得ることができる。
【0035】
偏心情報682は、入力軸10と出力軸11との間の伝達誤差の主要な要因である偏心誤差成分に関する情報である。偏心情報682は、例えば、第2のエンコーダ4に設けられた回転ディスク401(円盤)の半径Rと、予め測定されている入力軸10の中心と出力軸11の中心との偏心量εとである。なお、この半径Rは、位置情報を示すパターンを有するこの回転ディスク401の中心からパターンまでの距離情報である。
【0036】
ここで、偏心誤差成分と補正テーブル681について、図4及び図5を用いて補足説明をする。
図4は、本実施形態における第2のエンコーダ4の偏心誤差を説明する図である。
この図において、ポイントP1は、出力軸11の中心点を示している。また、円状の軌跡L1は、第2のエンコーダ4の回転ディスク401(出力軸11)がポイントP1を中心に回転した場合に、回転ディスク401の中心が描く軌跡を示している。ここで、回転ディスク401の中心とポイントP1とのずれ量を示す変位量を偏心量εとした場合、偏心誤差成分θは、関係式(1)によって表現される。
【0037】
θ = 2・sin−1 (ε/R) ・・・ (1)
【0038】
したがって、偏心情報682である回転ディスク401の半径Rと偏心量εとに基づいて、上記の式(1)を用いることによって、偏心による累積誤差である偏心誤差成分θを算出することができる。なお、この例では、最大の偏心誤差量は、(θ/2)となる。
【0039】
図5(a)は、第1のエンコーダ3の第1の位置データが“0”の場合に、第2のエンコーダ4の第2の位置データが“0”である相対位置関係を示す図である。つまり、図5(a)は、第2の位置データのずれ量が“0”である場合(変位のない無変位状態)を示す図である。また、図5(b)は、偏心誤差成分θに基づいて算出された、第2のエンコーダ4の偏心誤差分布の一例である。この図において、横軸は、第2のエンコーダ4における第2の位置データを示しており、縦軸は、偏心誤差量を示している。つまり、波形W1は、第2の位置データに対応する偏心誤差量を示している。また、例えば、図5(b)の位置情報0度(0°)は、図4の円状の軌跡L1において最も磁気センサ403又は404(光学式エンコーダの場合、受光センサ)に近い位置としている。
また、図5(c)は、偏心誤差成分θに基づいて算出された補正テーブル681の一例を示す図である。この図において、横軸は、第2のエンコーダ4における補正前の第2の位置データを示しており、縦軸は、第2のエンコーダ4における補正後の第2の位置データを示している。つまり、波形W3は、偏心誤差成分θに基づいて算出された、補正テーブル681を示している。なお、波形W2は、偏心誤差が全くない場合の例(補正をしない場合の例)を示したものである。
【0040】
ここで、図5(c)に示される補正テーブル681(波形W3)は、偏心誤差成分θに基づいて算出される。また、偏心誤差成分θは、偏心情報682である回転ディスク401の半径Rと偏心量εとに基づいて、上述の式(1)を用いて算出される。つまり、補正テーブル681(波形W3)は、回転ディスク401の半径Rと偏心量εとに基づいて、生成することができる。
なお、第2のエンコーダ4は、例えば、11ビットの位置データを検出し、0〜2047の第2の位置データを出力する。したがって、図5(c)における横軸の0度〜360度の位置データは、補正テーブル681において、0〜2047のデータとして示される。
【0041】
次に、本実施形態におけるエンコーダ装置20の動作について説明する。
まず、エンコーダ装置20が、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とを用いて出力軸11における合成位置データを検出する動作を説明する。
【0042】
エンコーダ装置20において、まず、第1の位置データ検出回路61は、受光センサ303から入力された第1の検出信号に基づいて、第1の位置データを検出する。なお、第1の位置データ検出回路61における絶対位置検出回路611は、受光センサ303から出力された絶対位置検出用信号を、変換テーブル記憶部614を用いて絶対位置情報に変換することにより、その絶対位置情報を検出する。また、第1の内挿回路612は、受光センサ303から出力された第1のインクリメンタル信号を内挿処理する。そして、位置検出回路613は、絶対位置検出回路611が検出した絶対位置情報と第1の内挿回路612が内挿処理した第1のインクリメンタル信号とに基づいて、第1の位置データを検出(合成)する。
【0043】
また、第2の位置データ検出回路62は、磁気センサ装置402から入力された第2の検出信号と、補正テーブル681とに基づいて、第2の位置データ(第2位置情報)を検出する。
【0044】
次に、位置データ合成回路63は、第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データと、第2の位置データ検出回路62が検出した第2の位置データとを合成して、入力軸10の回転回数とともに1回転内の位置変位を示す合成位置データを生成する。なお、この位置データ合成回路63は、第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データと第2の位置データ検出回路62が検出した第2の位置データとを合成する場合に、予め定められたギヤ比情報に基づいて合成位置データを合成する。これにより、エンコーダ装置20は、出力軸11における合成位置データを検出する。
【0045】
なお、生成した合成位置データは、位置データ合成回路63によって、外部通信回路65を介して、通信ライン9を通じてコントローラ8に出力される。
これにより、コントローラ8は、生成した合成位置データを検出することができ、コントローラ8は、検出した合成位置データに基づいて、駆動装置1の様々な制御を行うことができる。
【0046】
次に、ノイズや使用による磨耗、衝突、滑り(例、出力軸やギヤの滑り)や負荷などの何らかの要因により、入力軸10と出力軸11との回転における相対位置関係にずれ(位置情報の相対的な変位)が生じた場合におけるエンコーダ装置20の動作について説明する。なお、ここでは、入力軸10と出力軸11との回転における相対位置関係にずれが生じる前の状態は、例えば、図5(a)に示されるように、第1のエンコーダ3の第1の位置データが“0”の場合に、第2のエンコーダ4の第2の位置データが“0”となる相対位置関係にある。そして、上述のような何らかの要因(不測要因)により、入力軸10と出力軸11との回転における相対位置関係にずれが生じ、図6(a)に示されるような相対位置関係になった場合の例を説明する。また、この場合、相対位置関係にずれが生じる前の偏心誤差分布、及び補正テーブル681は、図5(b)及び(c)に示される状態にあるものとして説明する。
【0047】
エンコーダ装置20において、入力軸10と出力軸11との回転における相対位置関係にずれが生じた場合に、位置データ比較・照合回路64が、補正テーブル681を再生成させる再生成指令を補正テーブル生成部67に出力する。つまり、位置データ比較・照合回路64は、例えば、第1の位置データとギヤ比情報と第1のエンコーダ3の分解能B1と第2のエンコーダの分解能B2とに基づいて、第2の位置データの推定値(第2の推定値)を算出する。
そして、位置データ比較・照合回路64は、第2の位置データ検出回路62が検出した第2の位置データと、算出したこの第2の位置データの推定値とを比較及び照合する。なお、位置データ比較・照合回路64は、この比較及び照合する際に、第2の位置データのずれ量を算出する。位置データ比較・照合回路64は、例えば、第2の位置データのずれ量が予め定められた閾値である第1閾値以上(例えば、10LSB(量子化単位)以上)であると判定した場合に上述の再生成指令を補正テーブル生成部67に出力する。
【0048】
補正テーブル生成部67は、位置データ比較・照合回路64から出力された再生成指令に応じて、位置データ比較・照合回路64によって算出される第2の位置データのずれ量に基づいて補正テーブル681を再生成する。
ここでは、図6(a)に示されるように、第1のエンコーダ3の第1の位置データが“0”の場合に、第2のエンコーダ4の第2の位置データが“20”となる相対位置関係に変位した場合を説明する。つまり、第2の位置データのずれ量が“20”である場合となる。
【0049】
図6(b)において、波形W5は、第2の位置データのずれ量が“20”である場合の偏心誤差の分布を示している。なお、波形W4は、第2の位置データのずれが生じる前の偏心誤差の分布を示している。この図において、第2の位置データのずれ量に応じて、偏心誤差の分布は、ずれのない状態(無変位状態)に対して横軸方向にシフトすることを示している。また、例えば、第1のエンコーダ3の第1の位置データを基準とした場合、第2位置情報の変位方向は、上述した第2の位置データの推定値と第2の位置データとを比較することで算出できる。
そこで、補正テーブル生成部67は、位置データ比較・照合回路64によって算出される第2の位置データのずれ量に基づいて補正テーブル681を再生成する場合に、既に生成されている補正テーブル681を記憶部68から読み出して、第2の位置データのずれ量分シフトすることにより、補正テーブル681を再生成する。補正テーブル生成部67は、再生成した補正テーブル681を記憶部68に記憶させる。これにより、第2の位置データのずれに対応した新しい補正テーブル681が生成され、エンコーダ装置20は、第2の位置データのずれを補正することが可能になる。
【0050】
図6(c)は、補正テーブル生成部67によって再生成された補正テーブル681の一例を示す図である。この図において、波形W7は、補正テーブル生成部67によって再生成された補正テーブル681を示している。再生成された補正テーブル681(波形W7)は、図5(c)によって示される再生成前の補正テーブル681(波形W3)をシフトさせたテーブルとなる。そのため、この例では、波形W7は、波形W7a部分と波形W7b部分を有する補正テーブルになっている。なお、波形W6は、偏心誤差が全くない場合の例(補正をしない場合の例)を示したものである。
【0051】
以上のように、本実施形態におけるエンコーダ装置20は、第1の位置データ検出回路61が、受光センサ303から入力された第1の検出信号に基づいて、第1のエンコーダ3の回転位置情報を示す第1位置情報を生成する。また、第2の位置データ検出回路62が、磁気センサ装置402から入力された第2の検出信号と、第2のエンコーダ4の回転位置情報の補正値を示す補正テーブル681とに基づいて、第2のエンコーダ4の回転位置情報を示す第2位置情報を生成する。そして、位置データ比較・照合回路64が、第1の位置データと第2の位置データとを用いて第2の位置データのずれ(変位)を検知し、補正テーブル生成部67が、位置データ比較・照合回路64よって第2の位置データのずれを検知した場合に、第2の位置データのずれに応じて補正テーブル681を再生成する。エンコーダ装置20は、ノイズや使用による磨耗、衝突、滑り(例、出力軸やギヤの滑り)や負荷などの何らかの要因により、入力軸10と出力軸11との回転における相対位置関係にずれが生じた場合に、補正テーブル681を再生成する。
【0052】
これにより、エンコーダ装置20は、第2の位置データのずれを補正することが可能になる。そのため、ノイズや使用による磨耗、衝突、滑り(例、出力軸やギヤの滑り)や負荷などの何らかの要因により、入力軸10と出力軸11との回転における相対位置関係にずれ(エンコーダ装置における位置情報の変位)が生じた場合であっても、位置情報の変位を修正することができる。また、本実施形態におけるエンコーダ装置20は、上述のような位置情報の変位が生じた場合であっても、位置情報を高精度に検出することができる。
【0053】
また、本実施形態において、位置データ比較・照合回路64は、第2の位置データと、第1の位置データから算出される第2の推定値と、に基づき第2の位置データの変位量を算出する。そして、補正テーブル生成部67は、位置データ比較・照合回路64によって算出される第2の位置データのずれ量に基づいて補正テーブル681を生成する。つまり、補正テーブル生成部67は、既に生成されている補正テーブル681を記憶部68から読み出して、第2の位置データのずれ量分シフトすることにより、補正テーブル681を再生成する。
これにより、補正テーブル生成部67は、入力軸10及び出力軸11の回転状態において補正テーブル681を再生成して更新することができる。したがって、本実施形態におけるエンコーダ装置20は、入力軸10及び出力軸11の回転状態において上述のような位置情報の変位が生じた場合に、常に(又は動的に)位置情報を高精度に検出することができる。
【0054】
また、本実施形態において、補正テーブル生成部67は、位置データ比較・照合回路64によって第2の位置データのずれ量が予め定められた第1閾値以上であると判定された場合に、補正テーブル681を再生成する。
これにより、第2の位置データのずれ量に許容範囲が設けられるため、エンコーダ装置20は、ノイズなどにより第1のエンコーダ3及び第2のエンコーダ4に誤検出が発生した場合に、誤って補正テーブル681を再生成して更新してしまうことを防止できる。また、エンコーダ装置20は、第2の位置データのずれが、既に生成されている補正テーブル681によって対応できる範囲のずれである場合に、不要な補正テーブル681の再生成を防止することができる。
【0055】
また、本実施形態において、補正テーブル生成部67は、生成した補正テーブル681を記憶部68に記憶させる。そして、記憶部20は、不揮発性メモリ(不揮発性記憶部)である。
本実施形態におけるエンコーダ装置20は、第2のエンコーダ4の第2位置情報と第1のエンコーダ3の分解能B1と第2のエンコーダ4の分解能B2とに基づいて、入力軸10の多回転情報(例、回転回数)を算出する構成である。したがって、エンコーダ装置20は、入力軸10の多回転情報を不揮発性メモリに保持させるためのバックアップ用バッテリを備える必要がない。
【0056】
また、本実施形態において、第1のエンコーダ3は、入力軸10の回転における絶対位置情報を検出するアブソリュートエンコーダである。
これにより、入力軸10の回転位置情報であり、第1のエンコーダ3の回転位置情報を示す第1の位置データを正確に検知することができる。
【0057】
また、本実施形態において、第1のエンコーダ3は、光学式のエンコーダであり、第2のエンコーダ4は、磁気式のエンコーダである。
これにより、検出系が2重化されるため、外乱に対して強く、エンコーダ装置20の信頼性を向上させる事が可能となる。
【0058】
なお、上記の実施形態において、補正テーブル生成部67は、既に生成されている補正テーブル681を第2の位置データのずれ量分シフトする方法(第1の生成方法)により、補正テーブル681を再生成する形態を説明したが、以下の方法によって、補正テーブル681を再生成する形態でもよい。補正テーブル生成部67は、第1の位置データと、第2の位置データと、入力軸10と出力軸11との間の伝達誤差を示す伝達誤差情報と、に基づいて補正テーブルを再生成する形態でもよい。
【0059】
例えば、伝達誤差情報は、偏心情報682である回転ディスク401の半径Rと偏心量εであり、補正テーブル生成部67は、回転ディスク401の半径R及び偏心量εと、第2の位置データのずれ量とに基づいて、図6(c)に示される補正テーブル681を算出により再生成(生成)する(第2の生成方法)。なお、第2の位置データのずれ量は、上述したように、第1の位置データと第2の位置データとから算出される。
【0060】
第2の位置データのずれ量は、第2のエンコーダ4の分解能より細かく算出できる。そのため、この場合において補正テーブル生成部67は、正確に第2の位置データのずれ量が反映された補正テーブル681を生成することができる。既に生成されている補正テーブル681をシフトして補正テーブル681を再生成する第1の生成方法の場合、1LSB単位(1量子化量単位)によるシフトになる。そのため、エンコーダ装置20は、この第2の生成方法によって補正テーブル681を再生成する場合に、第1の生成方法によって補正テーブル681を再生成する場合よりも、精度よく補正することができる。
【0061】
また、別の一実施形態として、上述の伝達誤差情報は、出力軸11を一回転させて検出した第1の位置データと第2の位置データとに基づいて取得される情報でもよい。例えば、位置データ比較・照合回路64が、第2の位置データのずれ量が予め定められた閾値の第1閾値以上であると判定した場合に、エラーステータス情報を、外部通信回路65を介して、通信ライン9を通じてコントローラ8に出力する。例えば、コントローラ8は、補正モードとして、モータ7をゆっくり回転(低速回転)させて、出力軸11を一回転させる。この出力軸11を一回転させる際(回転中)に、検出された第1の位置データと第2の位置データとを、例えば、位置データ比較・照合回路64を介して、補正テーブル生成部67が取得する。補正テーブル生成部67は、この取得した第1の位置データと第2の位置データとに基づいて、図6(b)に示されるような第2のエンコーダ4の測定誤差(伝達誤差情報)を取得する。
【0062】
ここで、第2のエンコーダ4の測定誤差は、出力軸11を一回転させて取得するため、第2のエンコーダ4の全回転位置データ(0〜2047)に対応する測定誤差である。そして、補正テーブル生成部67は、この第2のエンコーダ4の測定誤差を用いて、補正テーブル681を再生成する(第3の生成方法)。
これにより、上述のような位置情報の変位が生じた場合に、出力軸11を一回転させて伝達誤差情報を再取得するので、補正テーブル生成部67は、第2の位置データのずれ量に基づいて、シフト又は算出によって補正テーブル681を生成する場合よりも、精度よく補正可能な補正テーブル681を生成することができる。つまり、この第3の生成方法は、第1の生成方法及び第2の生成方法に比べて、より精度よく第2位置情報を補正可能な補正テーブル681を生成することができる。
【0063】
また、上述の伝達誤差情報は、出力軸11を回転させて検出した第1の位置データと第2の位置データとに基づいて、第2のエンコーダ4の測定誤差における上限値と下限値とに対応する第2のエンコーダの位置データでもよい。この場合、補正テーブル生成部67は、取得した上限値と下限値とに対応する第2のエンコーダの位置データに基づいて、補正テーブル681を再生成する。一例として、補正テーブル生成部67は、第2のエンコーダ4の測定誤差における上限値及び下限値に対応する第2のエンコーダの位置データと、回転ディスク401の半径R及び偏心量εとに基づいて、補正テーブル681を算出する(第4の生成方法)。
これにより、補正テーブル生成部67は、上述した出力軸11を一回転させて伝達誤差情報を取得する場合(第3の生成方法)よりも、補正テーブル681を生成するために必要な期間を短縮することができる。
【0064】
なお、上記の実施形態において、補正テーブル681における複数の生成方法(第1〜第4の生成方法)を説明したが、第2の位置データのずれ量に応じて、複数の生成方法を切り替えて使用してもよい。次に、補正テーブル681における複数の生成方法を切り替えて使用する形態の一例を説明する。
【0065】
例えば、位置データ比較・照合回路64は、第2の位置データのずれ量が第1閾値より小さい予め定められた第2閾値以上(例えば、5LSB以上)であり、且つ第1閾値より小さい場合に、この第2閾値を第2の位置データのずれ量として、再生成指令を補正テーブル生成部67に出力する。また、位置データ比較・照合回路64は、第2の位置データのずれ量が第1閾値以上である場合に、エラーステータス情報を、外部通信回路65を介して、通信ライン9を通じてコントローラ8に出力する。
【0066】
補正テーブル生成部67は、第2の位置データのずれ量が第1閾値より小さく、且つ第1閾値より小さい予め定められた第2閾値以上である場合に、位置データ比較・照合回路64から出力された第2の位置データのずれ量(第2閾値)に基づいて、第1の生成方法又は第2の生成方法により補正テーブル681を再生成する。また、補正テーブル生成部67は、第2の位置データのずれ量を第2閾値とすることにより、さらに簡易に補正テーブル681を再生成することができる。
また、コントローラ8は、第2の位置データのずれ量が第1閾値以上である場合に、モータ7をゆっくり回転させて、出力軸11を一回転させ、補正テーブル生成部67に補正テーブル681を再生成させる。補正テーブル生成部67は、第2の位置データのずれ量が第1閾値以上である場合に、第3の生成方法又は第4の生成方法により補正テーブル681を再生成する。
【0067】
本実施形態におけるエンコーダ装置20は、補正テーブル生成部67が、第2の位置データのずれ量が小さい場合(ずれ量が第2閾値から第1閾値の間である場合)に、簡易な生成方法(第1の生成方法又は第2の生成方法)により補正テーブル681を生成する。また、補正テーブル生成部67が、第2の位置データのずれ量が大きい場合(ずれ量が第1閾値以上である場合)に、第2位置情報を精度よく補正可能な生成方法(第3の生成方法又は第4の生成方法)により補正テーブル681を生成する。これにより、第2の位置データのずれ量が小さい場合に、補正テーブル681の生成期間を短縮することができ、第2の位置データのずれ量が大きい場合に、精度よく補正可能な補正テーブル681を生成することができる。
【0068】
次に、本発明の別の一実施形態によるエンコーダ装置及び駆動装置について図面を参照して説明する。なお、本実施形態において、第2のエンコーダ4の出力軸11が2回転以上回転する場合であっても適用可能なエンコーダ装置の一例について説明する。なお、図7に示すエンコーダ装置20aは、出力軸11が1回転以下であっても適用可能である。
図7は、図1の駆動装置1におけるエンコーダ装置20の構成の別の一例を示す第2のブロック図である。この図において、図2と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。エンコーダ装置20aは、第1のエンコーダ3aと第2のエンコーダ4とを備えている。
また、図8は、図1の駆動装置における信号処理回路6の構成の別の一例を示す第2のブロック図である。この図において、図3と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
図7において、第1のエンコーダ3aは、所定のM系列コードによって定められたアブソリュートパターンとインクリメンタルパターンと磁気パターン305とを有する回転ディスク301aを備えている。この回転ディスク301aは、入力軸10の回転に伴い回転する。発光素子302から発光された光は、この回転ディスク301の各々のパターンを通って、受光センサ303に入光される。
そして、受光センサ303は、アブソリュートパターンから検出される信号と、インクリメンタルパターンから検出される信号との二種類の信号を信号処理回路6aに出力する。また、また、磁気センサ304は、磁気パターン305が通過したことを検出する信号(多回転検出信号)を、信号処理回路6aに出力する。
【0070】
また、図8において、信号処理回路6aは、第1の位置データ検出回路61、第2の位置データ検出回路62、位置データ合成回路63a、位置データ比較・照合回路64a、外部通信回路65、補正テーブル生成部67、記憶部68、及び多回転検出回路69を備えている。
多回転検出回路69は、磁気センサ304から出力された多回転検出信号に基づいて、入力軸10の回転回数を示す多回転情報を検出する。多回転検出回路69は、検出した多回転情報を位置データ合成回路63及び位置データ比較・照合回路64に出力する。
【0071】
位置データ合成回路63aは、第1の位置データ検出回路61が検出した第1の位置データと、第2の位置データ検出回路62が検出した第2の位置データとこの多回転情報とを合成して、入力軸10の回転回数とともに1回転内の位置変位を示す合成位置データを生成する。なお、この合成位置データは、多回転情報に基づいて合成されるため、出力軸11が複数回転する場合にも対応している。位置データ合成回路63aは、生成した合成位置データを、外部通信回路65を介して、通信ライン9を通じてコントローラ8に出力する。位置データ合成回路63のその他の機能は、図3に示される位置データ合成回路63と同様である。
【0072】
位置データ比較・照合回路64aは、例えば、第1の位置データと、ギヤ比情報と、第1のエンコーダ3aの分解能B1aと、第2のエンコーダ4の分解能B2と、多回転情報とに基づいて、第2の位置データの推定値(第2の推定値)を算出する。そして、位置データ比較・照合回路64aは、第2の位置データ検出回路62が検出した第2の位置データと、算出したこの第2の位置データの推定値とを比較及び照合する。位置データ比較・照合回路64aのその他の機能は、図3に示される位置データ比較・照合回路64と同様である。
【0073】
以上により、本実施形態におけるエンコーダ装置20aは、第1のエンコーダ3aから出力される多回転検出信号に基づいて、入力軸10の回転回数を検出する多回転検出回路69を備えている。そのため、出力軸11の多回転に対応した回転位置情報を検出することができる。
なお、本実施形態において、入力軸10の回転回数を検出することにより、出力軸11の多回転に対応させる形態を説明したが、第2のエンコーダ4における出力軸11の回転回数を検出する形態でもよい。この場合も同様に、出力軸11の多回転に対応した回転位置情報を検出することができる。
また、本実施形態において、磁気センサ305を用いて回転回数を検出する形態を説明したが、絶対位置検出用信号を用いて回転回数を検出する形態でもよい。この場合、回転位置データ“0”を通過する回数をカウントすることにより、実現してもよい。
【0074】
なお、本発明の実施形態における駆動装置1は、上記で説明したエンコーダ装置20(又は20a)を備えている。そのため、エンコーダ装置20(又は20a)と同様の効果を得ることができる。したがって、駆動装置1は、エンコーダ装置20(又は20a)に位置情報の変位が生じた場合に、位置情報の変位を修正することができる。また、本実施形態におけるエンコーダ装置20は、上述のような位置情報の変位が生じた場合であっても、位置情報を高精度に検出することができる。
【0075】
また、この駆動装置1は、産業用ロボットやサービスロボットなどのロボット装置に適用することができる。次に、その適用例について説明する。
図9は、図1の駆動装置1を備えるロボット装置5の一例を示すブロック図である。
この図において、ロボット装置5は、多軸駆動形ロボットアームであり、2つの駆動装置(1A、1B)と、2つのアーム部(51、52)と、制御装置55とを備えている。なお、この図において、図1に示される駆動装置1を駆動装置(1A、1B)として示す。
【0076】
駆動装置1Bは、アーム部52を駆動させ、駆動装置1Aは、アーム部52に設けられてアーム部51を駆動させる。駆動装置1Bは、支柱53を介して台座54に固定されている。この台座54は、例えば車輪などを備えており、水平方向に移動可能であってもよい。
【0077】
なお、駆動装置1Aと接続されない側のアーム部51の端部は、例えば、作業対象に対して機械的な作用を生じさせる手先部が備えられる。この手先部とは、例えば、作業対象を挟持する挟持部、作業対象を溶接する溶接部、作業対象を切断する切断部、又は、作業対象であるネジやボルトを開閉する開閉部などのことである。なお、アーム部51自体が、このような手先部そのものであってもよい。
【0078】
制御装置55は、信号線56を介して入力された駆動装置(1A、1B)の回転位置に基づいて、駆動装置(1A、1B)を制御する。これにより、アーム部(51、52)の回転位置が制御され、アーム部51の端部に備えられる手先部の位置が制御される。なお制御装置55は、制御線57を介して、駆動装置(1A、1B)を制御する。また、この制御装置55は、制御線57を介して、手先部を制御してもよい。
【0079】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
上記の各実施形態において、位置データ比較・照合回路64(又は64a)は、第2の位置データと、第1の位置データとから算出される第2の位置データの推定値とを比較及び照合する形態を説明したが、他の形態でもよい。例えば、位置データ比較・照合回路64(又は64a)は、第1の位置データと、第2の位置データから算出される第1の位置データの推定値(第1の推定値)とを比較及び照合する形態でもよい。この場合、位置データ比較・照合回路64(又は64a)は、第1の位置データのずれ量(変位量)を用いて第2の位置データのずれ量を算出する。つまり、第2の位置データの推定値を用いる形態と、第2の位置データの推定値を用いる形態とのいずれの場合も、第2の位置データのずれ量を算出することができる。
【0080】
また、上記の各実施形態において、エンコーダ装置20(又は20a)は、モータ7及びギヤ2を含まない形態で説明したが、モータ7及びギヤ2のいずれか又は両方を含む形態でもよい。
また、動力伝達部であれば、ギヤ2に限定されるものでななく、例えば、減速機、プーリ、伝達方向変換等でもよい。
また、上記の各実施形態において、エンコーダ装置20は、補正テーブル681を備えている形態を説明したが、エンコーダ装置20は補正テーブル681を備えずに、駆動装置1が備えている形態でもよい。
【0081】
また、上記の各実施形態において、伝達誤差として、出力軸11の中心と第2のエンコーダ4における回転ディスク401の中心とのずれによる偏心誤差の例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、入力軸10と出力軸11との偏心誤差を含める形態でもよい。つまり、入力軸10と出力軸11との偏心誤差とは、例えば、入力軸10と出力軸11との偏心であって、この軸同士を精度よく組み立てたつもりでも軸部材の剛性や噛み合わせ、負荷などにより回転させると発生する誤差を示す。
上記の各実施形態において、記憶部68は、補正テーブル681と偏心情報682とを記憶する形態を説明したが、補正テーブル681と偏心情報682とをそれぞれ異なる記憶部が記憶する形態でもよい。
【0082】
また、上記の各実施形態において、エンコーダ装置20(又は20a)は、第1のエンコーダ3に光学式のエンコーダを用い、第2のエンコーダ4に磁気式のエンコーダを用いる組合せの形態で説明したが、他の組合せを用いる形態でもよい。なお、異なる方式のエンコーダを組合せた方が、信頼性を向上することができる。
また、上記の各実施形態において、エンコーダ装置20(又は20a)は、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4とがアブソリュートエンコーダである形態で説明したが、他のエンコーダを用いる形態でもよい。また、本実施形態における光学式のエンコーダは、透過式であっても反射式であってもよい。なお、本実施形態における入力軸10は、中空状の軸部材であってもよい。入力軸10が中空の場合、出力軸11を入力軸10の軸内に延伸し、第2のエンコーダ4を第1のエンコーダ3と同様にモータ7側に配置してもよい。また、本実施形態における出力軸11は、中空状の軸部材であってもよい。また、例えば、本実施形態におけるエンコーダ装置20(又は20a)の位置データ比較・照合回路64による入力軸10と出力軸11との相対位置関係の変位の検知は、位置情報の検出と同期させて行ってもよいし、第1のエンコーダ3又は第2のエンコーダ4の分解能に応じて所定間隔と同期させて行ってもよい。
【0083】
また、上記の各実施形態において、信号処理回路6及び信号処理回路6の各回路(各部)は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリ及びCPU(Central processing unit)を備えて、プログラムによって実現されてもよい。
【0084】
また、上記の各実施形態において、補正テーブル生成部67が、第1〜第4の生成方法を用いて、補正テーブルを生成する形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1のエンコーダ3と第2のエンコーダ4との相対位置関係を再定義できる場合には、補正テーブル生成部67は、回転ディスク401の半径Rと偏心量εとに基づいて、図10に示されるように補正テーブル681を生成してもよい。この場合、図10(b)及び(c)に示されるように、正の値の誤差値と、負の値の誤差値とがシフトして、位置データ“0”の場合に誤差が“0”になる補正テーブル681が生成される(波形W11参照)。これにより、補正テーブル生成部67は、第2の生成方法を用いた場合と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0085】
1,1A,1B…駆動装置、2…ギヤ、3,3a…第1のエンコーダ、4…第2のエンコーダ、7…モータ、10…入力軸、11…出力軸、20,20a…エンコーダ装置、61…第1の位置情報生成部、62…第2の位置情報生成部、64,64a…位置データ比較・照合回路、67…補正テーブル生成部、68…記憶部、401…回転ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部によって回転される入力軸の回転位置に応じた第1信号を出力する第1のエンコーダと、
前記入力軸と動力伝達部を介して連結される出力軸の回転位置に応じた第2信号を出力する第2のエンコーダと、
前記第1信号に基づいて、前記第1のエンコーダの回転位置情報を示す第1位置情報を生成する第1位置情報生成部と、
前記第2信号と前記第2のエンコーダの回転位置情報の補正値を示す補正テーブルとに基づいて、前記第2のエンコーダの回転位置情報を示す第2位置情報を生成する第2位置情報生成部と、
前記第1位置情報と前記第2位置情報とを用いて、前記第1位置情報に対する前記第2位置情報の相対的な変位を検知する判定部と、
前記判定部によって前記第2位置情報の相対的な変位を検知した場合に、前記第2位置情報の変位に応じて前記補正テーブルを生成する補正テーブル生成部と
を備えることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項2】
前記補正テーブル生成部は、前記判定部によって算出される前記第2位置情報の変位量に基づいて前記補正テーブルを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記補正テーブル生成部は、前記第1位置情報と、前記第2位置情報と、前記入力軸と前記出力軸との間の伝達誤差を示す伝達誤差情報と、に基づいて前記補正テーブルを生成する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記伝達誤差情報は、前記第2のエンコーダに設けられた円盤であって、位置情報を示すパターンを有する該円盤の中心から前記パターンまでの距離情報と、予め測定されている前記入力軸の中心と前記出力軸の中心との偏心量と、に基づき算出される
ことを特徴とする請求項3に記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記伝達誤差情報は、
前記出力軸を一回転させて検出した前記第1位置情報と前記第2位置情報とに基づいて取得されることを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
前記伝達誤差情報は、
前記出力軸を回転させて検出した前記第1位置情報と前記第2位置情報とに基づいて、前記第2のエンコーダの測定誤差における上限値と下限値とに対応する前記第2のエンコーダの位置情報を含み、
前記補正テーブル生成部は、
取得した前記上限値と前記下限値とに対応する前記第2のエンコーダの位置情報に基づいて、前記補正テーブルを生成することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のエンコーダ装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記第2位置情報と、前記第1位置情報から算出される第2の推定値と、に基づき前記第2位置情報の変位量を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記第1位置情報と、前記第2位置情報から算出される第1の推定値と、に基づく前記第1位置情報の変位量を用いて前記第2位置情報の変位量を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエンコーダ装置。
【請求項9】
前記補正テーブル生成部は、前記判定部によって前記第2位置情報の変位量が予め定められた第1閾値以上であると判定された場合に、前記補正テーブルを生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のエンコーダ装置。
【請求項10】
前記補正テーブル生成部は、
前記変位量が前記第1閾値より小さく、且つ前記第1閾値より小さい予め定められた第2閾値以上である場合に、前記第2閾値を前記変位量として、前記第2閾値と前記伝達誤差情報とに基づいて、前記補正テーブルを生成する
ことを特徴とする請求項9に記載のエンコーダ装置。
【請求項11】
前記補正テーブルを記憶する記憶部を備え、
前記補正テーブル生成部は、
生成した前記補正テーブルを前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のエンコーダ装置。
【請求項12】
前記記憶部は、不揮発性記憶部であることを特徴とする請求項11に記載のエンコーダ装置。
【請求項13】
前記第1のエンコーダは、前記入力軸の回転における絶対位置情報を検出するアブソリュートエンコーダであることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のエンコーダ装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のエンコーダ装置を備えることを特徴とする駆動装置。
【請求項15】
請求項14に記載の駆動装置を備えることを特徴とするロボット装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−137310(P2012−137310A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287987(P2010−287987)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】