説明

エンジン自動停止装置

【課題】エンジンを所定の条件下で自動停止させるエンジン自動停止装置において、エンジンの自動停止タイミングを走行状態に応じて最適化する。
【解決手段】エンジンを所定の条件下で自動停止させるエンジン自動停止装置において、車速を検知する車速センサ37と、スロットル開度を検知するスロットルセンサ39と、車両の走行履歴を記憶する走行履歴記部43aと、前記車速、スロットル開度および走行履歴に応じてエンジンを自動停止させるエンジン停止制御部7aとを含み、エンジン停止制御部7aは、所定のエンジン停止条件が成立してから走行履歴に応じた待機時間の経過後にエンジンを停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン自動停止装置に係り、特に、車両の走行履歴を考慮してエンジンを自動停止させるエンジン自動停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを動力源とした電気自動車は、環境に優しく加減速の応答性が良い反面、現在のところバッテリの能力的限界から航続距離が小さく、また走行距離当りのエネルギ単価も高くて経済性に劣るという欠点がある。そこで、電気自動車の欠点を補いつつその利点を生かすものとして、モータとエンジンとを搭載したハイブリッド車両が実用化されている。
【0003】
このようなハイブリッド車両としては、モータのみを車両の動力源とし、エンジンはバッテリを充電するためのジェネレータの駆動源として使用する「シリーズハイブリッド 方式」と、車両の動力源としてモータおよびエンジンを併設し、両者を走行条件等に応じて使う「パラレルハイブリッド方式」と、上記2方式を走行状況に応じて使い分ける「シリーズ・パラレル併用式」とが一般に知られている。
【0004】
このようなハイブリッド車両において、停車時の無駄な燃料消費をさらに抑え、かつ排ガスの排出量を低減させるために、アクセルがオフで車速が所定値以下であり、かつバッテリの充電残量が十分であればエンジンを停止する技術が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2000−115908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術では、アクセルの状態と車速とに基づいてエンジン停止条件が成立すれば、バッテリの充電残量が不足していない限りはエンジンが自動停止されてしまい、その際に走行履歴が考慮されることがなかった。したがって、渋滞路を走行するとエンジンの自動停止および再始動が繰り返されてしまい。また、渋滞路の走行に合わせて、エンジンの自動停止条件が成立してから実際に停止させるまでの待機時間を長く設定してしまうと、今度は空いている道路を走行中に信号等で停車しても、エンジンが直ぐには停止されないという技術課題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、エンジンを所定の条件下で自動停止させるエンジン自動停止装置において、エンジンの自動停止タイミングを走行状態に応じて最適化できるエンジン自動停止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、エンジンを所定の走行または運転条件下で自動停止させるエンジン自動停止装置において、以下のような手段を講じた点に特徴がある。
【0008】
(1)車速を検知する車速センサと、スロットル開度を検知するスロットルセンサと、
【0009】
車両の走行履歴を記憶する走行履歴記憶手段と、前記車速、スロットル開度および走行履歴に応じてエンジンを自動停止させるエンジン停止制御手段とを含むことを特徴とする。
【0010】
(2)前記エンジン停止制御手段は、所定のエンジン停止条件が成立してから走行履歴に応じた待機時間の経過後にエンジンを停止させることを特徴とする。
【0011】
(3)前記エンジン停止制御手段は、停車頻度が高いほど前記待機時間を長くすることを特徴とする。
【0012】
(4)前記待機時間に関する初期値を記憶する手段をさらに具備し、前記エンジン停止制御手段は、走行履歴に関する情報が少ない場合には、車速およびスロットル開度の検知結果が所定の条件を満足したときから前記初期値の経過後にエンジンを停止させることを特徴とする。
【0013】
(5)前記走行履歴が所定時間内の停車回数であることを特徴とする。
【0014】
(6)エンジンの動力を駆動輪へ伝達する動力伝達手段を有し、前記エンジンを所定の走行または運転条件下で自動停止させるエンジン自動停止装置において、エンジンと動力伝達手段との間に配置され、前記エンジンが所定回転数に達したところで前記エンジンの動力を前記動力伝達手段へ伝達する発進クラッチと、車速を検知する車速センサと、スロットル開度を検知するスロットルセンサと、車両の走行履歴を記憶する走行履歴記憶手段と、前記車速、スロットル開度および走行履歴に応じてエンジンを自動停止させるエンジン停止制御手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0016】
(1)請求項1の発明によれば、エンジン停止タイミングが車速およびスロットル開度のみならず走行状態をも考慮して決定されるので、エンジンを走行状態に応じて最適なタイミングで自動停止できるようになる。
【0017】
(2)請求項2の発明によれば、エンジン停止条件が成立してから走行履歴に応じた待機時間の経過後にエンジンが停止されるので、エンジンを走行状態に応じて最適なタイミングで自動停止できるようになる。
【0018】
(3)請求項3の発明によれば、エンジン停止条件が成立してからエンジンが自動停止されるまでの待機時間が、車両の停車頻度が高いほど長くなるので、渋滞路を走行中であれば頻繁なエンジン停止/始動が回避される一方で、空いている道路を走行中のように停車頻度が低い場合には、エンジン停止条件が成立してからエンジン停止までの待機時間が短くなって無駄なアイドリングを防止できるので、最適なエンジン停止制御が可能になる。
【0019】
(4)請求項4の発明によれば、走行履歴に関する情報が少ない場合には、エンジン停止条件が成立してから、予め登録されている初期値の経過後にエンジンが停止されるので、走行開始から間もない期間においても最適なエンジン停止制御が可能になる。
【0020】
(5)請求項5の発明によれば、停車頻度を簡単に求められるようになる。
【0021】
(6)請求項6の発明によれば、アイドル状態ではエンジンの動力が発進クラッチで遮断されて動力伝達機構へ伝達されず、したがって動力伝達機構が作動しないので、燃料消費率を向上させることができる。また、エンジン停止タイミングが車速およびスロットル開度のみならず走行状態をも考慮して決定されるので、エンジンを走行状態に応じて最適なタイミングで自動停止でき、その結果、燃料消費率を更に向上させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明を適用したハイブリッド車両の一実施形態の側面図である。
【0023】
ハイブリッド車両は、車体前方に前輪WFを軸支するフロントフォーク1を有し、このフロントフォーク1はヘッドパイプ2に枢支されており、ハンドル3の操作によって操舵可能とされている。ヘッドパイプ2からは後方かつ下方に向けてダウンパイプ4が取り付けられており、このダウンパイプ4の下端からは中間フレーム5が略水平に延設されている。さらに、中間フレーム5の後端からは、後方かつ上方に向けて後部フレーム6が形成されている。
【0024】
このように構成された車体フレーム10には、動力源を含むパワーユニット11の一端が枢着されている。パワーユニット11は、その後方の他端側に駆動輪である後輪WRが回転可能に取り付けられると共に、後部フレーム6に取り付けられたリヤクッションにより吊り下げられている。
【0025】
車体フレーム10の外周は車体カバー13で覆われ、車体カバー13の後方かつ上面には搭乗者が着座するシート14が固定されている。シート14よりも前方には搭乗者が足を置くステップフロア15が形成されている。シート14の下方には、ヘルメットや荷物等を収納するためのユーティリティスペースとして機能する収納ボックス100が設けられている。
【0026】
図2は、上記したハイブリッド車両のシステム構成を示したブロック図であり、前記パワーユニット11は、エンジン20と、エンジン始動機および発電機として機能するACGスタータモータ21aと、クランク軸22に連結されてエンジン20の動力を後輪WRへ伝達する無段変速機(動力伝達手段)23と、クランク軸22と無段変速機23の入力軸との間の動力伝達を断接させる発進クラッチ40と、発動機または発電機として機能する駆動モータ21bと、エンジン20および駆動モータ21bから後輪WR側には動力を伝達するが、後輪WRからエンジン20側には動力を伝達しない一方向クラッチ(一方向動力伝達手段)44と、無段変速機23からの出力を減速して後輪WRに伝達する減速機構69とを備えて構成されている。エンジン20の回転数Neはエンジン回転数センサ36により検知される。
【0027】
エンジン20からの動力は、クランク軸22から発進クラッチ40、無段変速機23、一方向クラッチ44、駆動軸60および減速機構69を介して後輪WRに伝達される。他方、駆動モータ21bからの動力は、駆動軸60および減速機構69を介して後輪WRに伝達される。つまり、本実施形態では駆動軸60が駆動モータ21bの出力軸を兼ねている。
【0028】
ACGスタータモータ21aおよび駆動モータ21bにはバッテリ74が接続されている。このバッテリ74は、駆動モータ21bが発動機として機能する際、およびACGスタータモータ21aが始動機として機能する際は、これらモータ21a、21bに電力を供給し、ACGスタータモータ21aおよび駆動モータ21bが発電機として機能する際は、これらの回生電力が充電されるように構成されている。
【0029】
エンジン20の吸気管16内には空気量を制御するスロットルバルブ17が回動自在に設けられている。このスロットルバルブ17は、搭乗者が操作するスロットルグリップ(不図示)の操作量に応じて回動する。スロットルバルブ17とエンジン20との間には、燃料を噴射するインジェクタ18と、吸気管内の負圧を検出する負圧センサ19が配設されている。スロットルバルブ17の開度θthはスロットルセンサ39により検知される。点火装置38は、点火プラグ45へ所定の点火タイミングで点火エネルギを供給する。車速は車速センサ37により検知される。
【0030】
制御ユニット7は、車両が停車した際にエンジン20を自動停止させるエンジン停止制御部7aと、車両の走行状態を監視する走行監視部7bと、電圧センサ47により検知されるバッテリ電圧に基づいてバッテリ74の充電残量を監視すると共に、停車時にバッテリ74の充電を制御する充電制御部7cとを含む。
【0031】
ROM42は、後に詳述するエンジン停止条件をスロットル開度θthと車速Vとをパラメータとして定めたθth/Vテーブル42aと、エンジン停止条件が成立してから実際にエンジンを停止させるまでの待機時間Tkと停車頻度Mstopとの対応関係を定めたTk/Mstopテーブル42bとを含む。RAM43は、前記走行監視部7bにより検知された走行状態の履歴を記憶する走行履歴記憶部43aを含む。
【0032】
次に、図3を参照しながらエンジン20および駆動モータ21bを含むパワーユニット11の構成について説明する。
【0033】
エンジン20は、クランク軸22にコンロッド24を介して連結されたピストン25を備えている。ピストン25は、シリンダブロック26に設けられたシリンダ27内を摺動可能であり、シリンダブロック26はシリンダ27の軸線が略水平になるように配設されている。シリンダブロック26の前面にはシリンダヘッド28が固定され、シリンダヘッド28およびシリンダ27ならびにピストン25で混合気を燃焼させる燃焼室20aが形成されている。
【0034】
シリンダヘッド28には、燃焼室20aへの混合気の吸気または排気を制御するバルブ(不図示)と、点火プラグ29とが配設されている。バルブの開閉は、シリンダヘッド28に軸支されたカム軸30の回転により制御される。カム軸30は一端側に従動スプロケット31を備え、従動スプロケット31とクランク軸22の一端に設けた駆動スプロケット32との間には無端状のカムチェーン33が掛け渡されている。カム軸30の一端には、エンジン20を冷却するウォータポンプ34が設けられている。ウォータポンプ34は、その回転軸35がカム軸30と一体に回転するように取り付けられている。したがって、カム軸30が回転するとウォータポンプ34を稼動させることができる。
【0035】
クランク軸22を軸支するクランクケース48の車幅方向右側にはステータケース49が連結されており、その内部にACGスタータモータ21aが収納されている。このACGスタータモータ21aは、いわゆるアウターロータ形式のモータであり、そのステータは、ステータケース49に固定されたティース50に導線を巻き掛けたコイル51からなる。一方、アウターロータ52はクランク軸22に固定されており、ステータの外周を覆う略円筒形状を有している。また、アウターロータ52の内周面には、マグネット53が配設されている。
【0036】
アウターロータ52には、ACGスタータモータ21aを冷却するためのファン54aが取り付けられており、このファン54aがクランク軸22に同期して回転すると、ステータケース49のカバー55の側面55aに形成された冷却風取入口から、冷却用の空気が取り入れられる。
【0037】
クランクケース48の車幅方向左側には伝動ケース59が連結されており、その内部にはクランク軸22の左端部に固定されたファン54b、発進クラッチ40を介してクランク軸22に駆動側が連結された無段変速機23、無段変速機23の従動側に連結された駆動モータ21bが収納されている。ファン54bは、伝動ケース59内に収容された無段変速機23および駆動モータ21bを冷却するものであり、無段変速機23に対して駆動モータ21bと同側、すなわち、本実施例では共に車幅方向左側に配置されている。
【0038】
伝動ケース59の車体前側かつ左側には冷却風取入口59aが形成されており、クランク軸22に同期してファン54bが回転すると、該ファン54bの近傍に位置する冷却風取入口59aから伝動ケース59内に外気が取り入れられ、駆動モータ21bおよび無段変速機23が強制的に冷却される。
【0039】
無段変速機23は、クランクケース48から車幅方向に突出したクランク軸22の左端部に発進クラッチ40を介して装着された駆動側伝動プーリ58と、クランク軸22と平行な軸線を持って伝動ケース59に軸支された駆動軸60に一方向クラッチ44を介して装着された従動側伝動プーリ62との間に、無端状のVベルト(無端ベルト)63を巻き掛けて光栄されるベルトコンバータである。
【0040】
駆動側伝動プーリ58は、図4の要部拡大図に示すように、スリーブ58dを介してクランク軸22に対して周方向回転自在に装着されており、スリーブ58d上に固着された駆動側固定プーリ半体58aと、スリーブ58dに対しその軸方向へは摺動可能であるが周方向には回転不能に取り付けられた駆動側可動プーリ半体58cとを備える。
【0041】
他方、従動側伝動プーリ62は、駆動軸60に対しその軸方向の摺動は規制されているが周方向には回転自在に取り付けられた従動側固定プーリ半体62aと、従動側固定プーリ半体62aのボス部62c上にその軸方向への摺動可能に取り付けられた従動側可動プーリ半体(従動側可動プーリ)62bとを備える。
【0042】
そして、これら駆動側固定プーリ半体58aと駆動側可動プーリ半体58cとの間、および従動側固定プーリ半体62aと従動側可動プーリ半体62bとの間にそれぞれ形成された断面略V字状のベルト溝に、無端状の5ベルト63が巻き掛けられている。
【0043】
従動側可動プーリ半休62bの背面側(車幅方向左側)には、従動側可動プーリ半体62bを従動側固定プーリ半体62a側に向けて常時付勢するスプリング(弾性部材)64が配設されている。
【0044】
このような構成において、クランク軸22の回転数が上昇すると、駆動側伝動プーリ58においては、ウェイトローラ58bに遠心力が作用して駆動側可動プーリ半体58cが駆動側固定プーリ半休58a側に摺動する。この摺動した分だけ駆動側可動プーリ半体58cが駆動側固定プーリ半体58aに近接し、駆動側伝動プーリ58の溝幅が減少するので、駆動側伝動プーリ58と5ベルト63との接触位置が駆動側伝動プーリ58の半径方向外側にずれ、5ベルト63の巻き掛け径が増大する。これに伴い、従動側伝動プーリ62においては、従動側固定プーリ半体62aと従動側可動プーリ半体62bとにより形成される溝幅が増加する。つまり、クランク軸22の回転数に応じて、Vベルト63の巻き掛け径(伝達ピッチ径)が連続的に変化し、変速比が自動的かつ無段階に変化する。
【0045】
発進クラッチ40は、無段変速機23よりも車体外側(本実施例では車幅方向左側)、すなわち、駆動側固定プーリ半体58aとファン54bとの間、かつ、伝動ケース59に形成された冷却風取入口59aの近傍に設けられている。
【0046】
この発進クラッチ40は、上記スリーブ58dに固着されたカップ状のアウタケース40aと、クランク軸22の左端部に固着されたアウタプレート40bと、アウタプレート40bの外周部にウェイト40cを介して半径方向外側を向くように取り付けられたシュー40dと、シュー40dを半径方向内側に付勢するためのスプリング40eとを備えて構成されている。
【0047】
このような構成において、エンジン回転数、すなわちクランク軸22の回転数が所定値(例えば、3000rpm)以下の場合には、クランク軸22と無段変速機23との間の動力伝達は遮断されている。エンジン回転数が上昇し、クランク軸22の回転数が上記所定値を越えると、ウェイト40cに働く遠心力がスプリング40eにより半径方向内側に働く弾性力に抗し、ウェイト40cが半径方向外側に移動することによって、シュー40dがアウタケース40aの内周面を所定値以上の力で押圧される。これにより、クランク軸22の回転がアウタケース40aを介してスリーブ58dに伝達され、該スリーブ58dに固定された駆動側伝動プーリ58が駆動される。
【0048】
一方向クラッチ44は、カップ状のアウタクラッチ44aと、このアウタクラッチ44aに同軸に内挿されたインナクラッチ44bと、このインナクラッチ44bからアウタクラッチ44aに対して一方向のみ動力を伝達可能にするローラ44cとを備えている。アウタクラッチ44aは、駆動モータ21bのインナーロータ本体を兼ね、インナーロータ本体と同一部材で構成されている。
【0049】
無段変速機23の従動側伝動プーリ62に伝達されたエンジン20側からの動力は、従動側固定プーリ半体62a、インナクラッチ44b、アウタクラッチ44aすなわちインナーロータ本体、駆動軸60および減速機構69を介して後輪WRに伝達されるのに対して、車両押し歩きの際や回生動作時等における後輪WR側からの動力は、減速機構69、駆動軸60、インナーロータ本体すなわちアウタクラッチ44aまでは伝達されるが、このアウタクラッチ44aがインナクラッチ44bに対して空転するので、無段変速機23およびエンジン20に伝達されることはない。
【0050】
伝動ケース59の車体後方側には、駆動軸60をモータ出力軸とするインナーロータ形式の駆動モータ21bが設けられている。
【0051】
インナーロータ80は、無段変速機23の出力軸でもある駆動軸60と、カップ状をなしその中央部に形成されたボス部80bにて駆動軸60とスプライン結合されたインナーロータ本体すなわち上記インナクラッチ44bと、このインナクラッチ44bの開口側外周面に配設されたマグネット80cとを備えている。インナクラッチ44bの底部側外周面には、伝動ケース59の内壁59Aに取り付けられたロータセンサ81により検知される複数の被検知体82が装着されている。他方、ステータ83は、伝動ケース59内のステータケース83aに固定されたティース83bに導線を巻き掛けたコイル83cにより構成されている。
【0052】
駆動モータ21bは、エンジン20の出力をアシストする際に発動機として機能する他に、駆動軸60の回転を電気エネルギに変換し、図2には不図示のバッテリ74に回生充電する発電機(ジェネレータ)としても機能する。駆動モータ21bは、金属製の伝動ケース59の内壁59Aにステータケース83aを介して直付けされており、この直付け箇所に対応する伝動ケース59の外壁59Bには、車体前後方向に延びる冷却用のフイン59bが相互に間隔をおいて複数設けられている。
【0053】
図3へ戻り、減速機構69は、伝動ケース59の後端部右側に連なる伝達室70内に設けられており、駆動軸60および後輪WRの車軸68と平行に軸支された中間軸73を備えると共に、駆動軸60の右端部および中間軸73の中央部にそれぞれ形成された第1の減速ギヤ対71、71と、中間軸73の右端部および車軸68の左端部にそれぞれ形成された第2の減速ギヤ対72、72とを備えて構成されている。このような構成により、駆動軸60の回転は所定の減速比にて減速され、これと平行に軸支された後輪WRの車軸68に伝達される。
【0054】
以上の構成からなるハイブリッド車両において、エンジン始動時は、クランク軸22上のACGスタータモータ21aを用いてクランク軸22を回転させる。このとき、発進クラッチ40は接続されておらず、クランク軸22から無段変速機23への動力伝達は遮断されている。
【0055】
スロットルグリップの操作量に対応して、クランク軸22の回転数が所定値(例えば、3000rpm)を越えると、クランク軸22の回転動力が発進クラッチ40を介して無段変速機23、一方向クラッチ44および減速機構69に伝達され、後輪WRが駆動される。この発進時に、バッテリ74からの給電により駆動モータ21bを稼動させ、エンジン動力による駆動軸60の回転をアシストすることも可能である。
【0056】
また、エンジン20による発進に代えて、駆動モータ21bのみによる発進も可能である。この場合は、駆動モータ21bによる駆動軸60の回転は、一方向クラッチ44により従動側伝動プーリ62に伝達されないので、無段変速機23を駆動させることはない。これにより、駆動モータ21bのみで後輪WRを駆動して走行する場合には、エネルギー伝達効率が向上する。
【0057】
エンジン20のみで走行している場合において、加速時や高速時など負荷が大きいときは、駆動モータ21bでエンジン走行をアシストすることもできる。このとき、駆動軸60には、ピストン25の往復運動によるクランク軸22の回転動力が発進クラッチ40、無段変速機23および一方向クラッチ44を介して伝達されると共に、駆動モータ21bからの動力も伝達され、これらの合成動力が減速機構69を介して後輪WRを駆動する。これとは逆に、駆動モータ21bのみで走行している場合に、エンジン20でモータ走行をアシストすることもできる。
【0058】
一定速度での走行(クルーズ走行)時において、駆動モータ21bのみを動力源として走行している場合、エンジン20を駆動させても発進クラッチ40の接続回転数(上記所定値)以下であれば、無段変速機23を駆動させずに、ACGスタータモータ21aによる発電を行うことができる。
【0059】
この一定速度走行時に駆動モータ21bのみを動力源として走行している場合は、駆動モータ21bから後輪WRへの動力伝達が無段変速機23を駆動させることなく行われるので、エネルギー伝達効率に優れる。
【0060】
減速時において、一方向クラッチ44は、駆動軸60の回転を無段変速機23の従動側伝動プーリ62に伝達しないので、無段変速機23を駆動させずに、車軸68の回転を減速機構69を介して直接、駆動モータ21bへ回生することができる。
【0061】
つまり、後輪WRから駆動モータ21bへの回生動作時に、後輪WRから駆動モータ21bに伝達される動力が無断変速機23の駆動に消費されることがないので、回生時の充電効率が向上する。
【0062】
図5は、前記エンジン停止制御部7aで実行されるエンジン停止制御の手順を示したフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行される。
【0063】
ステップS1では、前記スロットルセンサ39の出力信号に基づいてスロットル開度θthが検知され、さらに車速センサ37の出力信号に基づいて車速Vが検知される。ステップS2では、エンジン停止条件が成立しているか否かが判定される。本実施形態では、前記θth/Vテーブル42aに、図6に一例を示したようにスロットル開度θthと車速Vとをパラメータとしてエンジン停止条件が予め設定されており、スロットル開度θthと車速Vとの関係がエンジン停止条件を満足していればステップS4へ進む。
【0064】
ステップS4では、エンジン停止条件が成立している継続時間を計時する停車時間タイマTstopが計時中(スタート済み)であるか否かが判定され、最初は計時中ではないのでステップS5へ進み、前記停車時間タイマTstopが計時を開始する。ステップS6では、前記RAM43の走行履歴記憶部43aに走行履歴が十分に収集されているか否かが判定される。
【0065】
本実施形態では、イグニッションスイッチがオンされてからオフされるまでの間の車両走行状態が前記走行状態監視部7bにより監視され、走行履歴記憶部43aに走行履歴として登録されている。走行開始からの経過時間が短くなく、走行履歴が十分に収集されていればステップS7へ進み、走行履歴に基づいて停車頻度Mstopが検出される。本実施形態では、所定の単位時間内に停車した回数の移動平均が停車頻度Mstopとして求められる。
【0066】
ステップS8では、前記停車頻度Mstopに基づいて、前記エンジン停止条件が成立してから実際にエンジンを停止させるまでの待機時間Tkが求められる。本実施形態では、前記Tk/Mstopテーブル42bに、図7に一例を示したように、停車頻度Mstopと待機時間Tkとの対応関係が、停車頻度Mstopが高いほど待機時間Tkが長くなるように予め登録されており、前記停車頻度Mstopに対応した待機時間Tkが求められる。
【0067】
なお、走行開始直後であって走行履歴が十分に収集されてい無ければ、前記ステップS6からステップS9へ進み、待機時間Tkに所定の初期値Tintが登録される。ステップS10では、前記停車時間タイマTstopが待機時間Tkと比較される。停車時間タイマTstopが待機時間Tkを越えていれば、ステップS14へ進んでエンジンが自動停止される。これに対して、停車時間タイマTstopが待機時間Tkを越えていなければステップS11へ進み、電圧センサ47により定期的に検知されているバッテリ電圧に基づいてバッテリ74の充電残量が検知される。
【0068】
バッテリの充電残量が十分であればステップS12へ進み、停車中のエンジン回転数Neがアイドル回転数Nidleに維持される。バッテリの充電残量が不十分であればステップS13へ進む。ステップS13では、前記充電制御部7cにより、停車中のエンジン回転数Neが前記アイドル回転数Nidleよりも高く、かつ前記発進クラッチのクラッチ・イン回転数よりも若干低い充電回転数Nchargeに維持される。
【0069】
その後、停車時間タイマTstopが待機時間Tkを越え、これがステップS10で検知されればステップS14へ進んでエンジンが自動停止される。また、停車時間タイマTstopが待機時間Tkを越える前に発進し、前記ステップS2において、エンジン停止条件が成立しなくなったと判定されるとステップS3へ進み、前記停車時間タイマTstopがリセットされる。
【0070】
このように、本実施形態では渋滞路を走行中のように停車頻度が高い場合には、エンジン停止条件が成立してからエンジン停止までの待機時間を長くすることで頻繁なエンジン停止/始動を回避する一方で、空いている道路を走行中のように停車頻度が低い場合には、エンジン停止条件が成立してからエンジン停止までの待機時間を短くすることで無駄なアイドリングを防止できるので、車両の走行状況に応じて最適なエンジン停止制御が可能になる。
【0071】
なお、上記した実施形態では、エンジン停止条件がスロットル開度θthと車速Vとをパラメータとして設定されるものとして説明したが、図8に一例を示したように、車速Vとは無関係にスロットル開度θthのみをパラメータとして設定されるようにしても良い。
【0072】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、適用対象は、二輪車に限定されずに、三輪車や四輪車などの他の移動体であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係るハイブリッド車両の一実施例による二輪車の側面図である。
【図2】図1に示す二輪車のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す二輪車のパワーユニットの断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】エンジン停止制御の手順を示したフローチャートである。
【図6】スロットル開度θthと車速Vとをパラメータとして設定されるエンジン停止条件の一例を示した図である。
【図7】停車頻度Mstopと待機時間Tkとの対応関係の一例を示した図である。
【図8】スロットル開度θthと車速Vとをパラメータとして設定されるエンジン停止条件の他の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0074】
11 パワーユニット
12 変速比センサ
20 エンジン(動力源)
21b 駆動モータ(モータ、動力源)
23 無段変速機
36 エンジン回転数センサ
44 一方向クラッチ(一方向動力伝達手段)
60 駆動軸
62 従動側伝動プーリ(従動側プーリ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを所定の走行または運転条件下で自動停止させるエンジン自動停止装置において、
車速を検知する車速センサと、
スロットル開度を検知するスロットルセンサと、
車両の走行履歴を記憶する走行履歴記憶手段と、
前記車速、スロットル開度および走行履歴に応じてエンジンを自動停止させるエンジン停止制御手段とを含むことを特徴とするエンジン自動停止装置。
【請求項2】
前記エンジン停止制御手段は、所定のエンジン停止条件が成立してから前記走行履歴に応じた待機時間の経過後にエンジンを停止させることを特徴とする請求項1に記載のエンジン自動停止装置。
【請求項3】
前記エンジン停止制御手段は、停車頻度が高いほど前記待機時間を長くすることを特徴とする請求項2に記載のエンジン自動停止装置。
【請求項4】
前記待機時間に関する初期値を記憶する手段をさらに具備し、
前記エンジン停止制御手段は、前記走行履歴に関する情報が少ない場合には、車速およびスロットル開度の検知結果が所定の条件を満足したときから前記初期値の経過後にエンジンを停止させることを特徴とする請求項2に記載のエンジン自動停止装置。
【請求項5】
前記走行履歴が所定時間内の停車回数であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のエンジン自動停止装置。
【請求項6】
エンジンの動力を駆動輪へ伝達する動力伝達手段を有し、前記エンジンを所定の走行または運転条件下で自動停止させるエンジン自動停止装置において、
前記エンジンと動力伝達手段との間に配置され、前記エンジンが所定回転数に達したところで前記エンジンの動力を前記動力伝達手段へ伝達する発進クラッチと、
車速を検知する車速センサと、
スロットル開度を検知するスロットルセンサと、
車両の走行履歴を記憶する走行履歴記憶手段と、
前記車速、スロットル開度および走行履歴に応じてエンジンを自動停止させるエンジン停止制御手段とを含むことを特徴とするエンジン自動停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−46214(P2006−46214A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229417(P2004−229417)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】