説明

オリゴマーポリアセンおよび半導体調製物

本発明は、新規のオリゴマーポリアセン化合物、有機半導体調製物およびそれを含む層、調製物および層の製造方法、ならびにこれを含む、有機電界効果トランジスタ(OFET)を含む電子デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規のオリゴマーポリアセン化合物、これらの合成方法、これらを含む有機半導体調製物および層、該調製物および層の製造方法、ならびにこれを含む、有機電界効果トランジスタ(OFET)を含む電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景および先行技術
近年、より用途が広く、低コストな電子デバイスを製造するために、有機半導体材料の開発がなされている。かかる材料は幅広いデバイスまたは装置に応用され、これは、少し例を挙げると、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、光検知器、光起電力(PV)電池、センサ、記憶素子および論理回路を含む。有機半導体材料は、典型的に、薄膜の形状、例えば厚さ1ミクロンで、電子デバイスに存在する。
【0003】
ペンタセンは、有機半導体材料として有望である。ペンタセンは、優れた電荷移動度をもたらす分子配向を提供するために、高い結晶構造が必要であると評されている。したがって、先行技術において、ペンタセンは一般的な溶媒にかなり不溶性であるという事実のせいで、ペンタセンの薄膜は蒸着されてきた。しかしながら、蒸着は、高価で精巧な機器を必要とする。後者の問題の観点において、前駆体ペンタセンを含む溶液を適用し、そして、前駆体化合物をペンタセンに、例えば熱よって、化学的に変更する1つの取り組みがなされた。しかしながら、後者の方法は複雑でもあり、優れた電荷移動度のための必要な秩序構造を得るためにコントロールすることが困難であった。
【0004】
溶解性ペンタセン化合物が、有機半導体化合物として、先行技術において最近説明された。例えば、US 2003/0116755 AおよびUS 6,690,029参照。WO 03/016599において、FETにおけるペンタセンの使用が提案され、ここで、溶解性ペンタセンの溶液を基板に蒸着し、溶媒を蒸発させ、ペンタセンの薄膜を形成する。しかしながら、US 6,690,029およびWO 03/016599において、溶解性ペンタセンは、薄膜においてもなお、特にFETにおいて用いる場合、許容できる電荷移動度のための高い結晶構造が必要であると評され、これはペンタセンはなお注意をはらって蒸着しなければならないことを意味する。したがって、先行技術は、ペンタセンを全く希釈しないように配慮し、さもなければ、ペンタセンの結晶構造を乱し、故に電荷移動度を減らすことが見込まれる。
【0005】
改良した電荷移動度は、新しい電子デバイスの1つの目標である。別の目標は、改良した安定性、膜均一性および有機半導体層の完全性である。デバイスにおける有機半導体層安定性および完全性を改良する潜在的な1つの方法は、有機半導体部品を有機結合剤に含むことである。しかしながら、有機半導体部品を結合剤と混ぜ合わせる場合はいつでも、結合剤によって、効果的に「希釈」され、電荷移動度の減少が予測される。とりわけ、有機半導体を結合剤と混合することにより希釈することは、半導体層における分子秩序を乱す。ゲート絶縁体(最初の数分子層)のすぐ近くの分子間の軌道の重なりのあらゆる乱れが移動度を低下させると予測されるとおり、例えばOFETのチャネルにおいて、有機半導体部品を希釈することは、特に問題がある。
【0006】
電子または正孔は有機半導体のバルクへそれらの進路を拡張せざる得なくなり、これは好ましくない。特定の有機半導体材料は、他よりもより結合剤における使用の影響に感受性が高いと予想される。ペンタセン類は、有益な電荷移動度のために、高い秩序構造が必要であると考えられてきたので、以前はペンタセン類を結合剤に含むことが望ましいと考慮されてこなかった。WO 03/030278において、結合剤を使用することが試されたが、(前駆体)ペンタセンが増加する量の結合剤と混合される場合、5%以下の量の結合剤とでさえも、FET移動度の段階的な減少が起こることが示された
【0007】
特定の低極性結合剤樹脂が、WO 02/45184において、有機半導体とともに、FETにおいて使用するために記載されている。しかしながら、半導体が結合剤において希釈される場合、電荷移動度の低下はなお予測される
本発明の1つの目的は、上記のような有機半導体層における不利点を減少または克服することである。本発明の他の目的は、専門家へ下記の詳細名説明からすぐに明らかになる。
【0008】
これらの目的が、本発明において請求された半導体材料、調製物および方法を提供することにより達成することができることが見出された。さらに、オリゴマーポリアセン類を有機結合剤とともに調製物に提供する場合、優れた加工性を有する、改良した半導体材料が得られ、これはそれでもなお驚くほど高い電荷担体移動度を示す。
WO 2005/055248 A2は、有機結合剤およびポリアセンを含む半導体調製物に関するが、本発明において請求された材料を開示していない。
【発明の開示】
【0009】
発明の要旨
本発明は、
式Iの化合物(オリゴマーポリアセン)に関し、
【化1】

式中、
aは、複数存在する場合は互いに独立して、0、1、2または3であり、
bは、複数存在する場合は互いに独立して、0、1、2または3であり、
nは?2の整数、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、
【0010】
1〜14は、複数存在する場合は互いに独立して、H、ハロゲン、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NH、−NR00、−SH、−SR、−SOH、−SO、−OH、−NO、−CF、−SF、任意に置換されたシリル、または任意に置換され、任意に1または2以上のヘテロ原子を含む、1〜40個のC原子を有するカルビルもしくはヒドロカルビル、から選択される同一または異なる基を示し、
1〜4およびR8〜11は隣接するポリアセンユニットとの結合を示すこともでき、ここで前記結合は、単結合または任意にスペーサー基を含み、
【0011】
Xは、ハロゲンであり、
およびR00は、互いに独立して、H、または、任意に1または2以上のヘテロ原子を含む、任意に置換されたカルビルもしくはヒドロカルビル基であり、
ポリアセンの隣接する環の位置に存在するか、隣接するポリアセンユニットに存在する、2または3以上の置換基R〜R14は、4〜40個のC原子を有する、さらなる飽和、不飽和または芳香族環系を任意に構成し、これは単環または多環であり、ポリアセンに縮合し、−O−、−S−、=N−および−N(R)−から選択される1または2以上の基によって任意に介入され、1または2以上の同一または異なる基Rで置換され、
【0012】
ポリアセン骨格またはR1〜14によって形成された環における、1または2以上の炭素原子は、任意にN、P、As、O、S、SeおよびTeから選択されるヘテロ原子に任意に置換され、
ここで、nポリアセンユニットは互いに同一または異なり、
ポリアセンユニットは、R1〜4の1つおよび/またはR8〜11の1つを介してその隣接するポリアセンユニット(単数または複数)と結合され、および/または
ポリアセンユニットは任意に、R1〜4の2つおよび/またはR8〜11の2つを介してその隣接するポリアセンユニット(単数または複数)に縮合する。
【0013】
本発明はさらに、電荷担体材料および/または有機半導体としての式Iの化合物の使用に関する。
本発明はさらに、1または2以上の式Iの化合物、1または2以上の有機ポリマーまたは有機ポリマー結合剤、もしくはそれらの前駆体、および任意に1または2以上の溶媒を含む有機半導体調製物に関する。
【0014】
本発明はさらに、1または2以上の式Iの化合物、1または2以上の1,000Hzで3.3以下の誘電率εを有する有機結合剤またはその前駆体、および任意に1または2以上の溶媒を含む有機半導体調製物に関する。
本発明はさらに、式Iの化合物、または上記および下記のような有機半導体調製物を含む、有機半導体層に関する。
【0015】
本発明はさらに、上記および下記のような有機半導体層の製造方法であって、以下の工程
(i)1または2以上の式Iの化合物、1または2以上の有機結合剤またはそれらの前駆体、および任意に1または2以上の溶媒を含む調製物の液体層を基板に蒸着する、
(ii)有機半導体層である固体層を、該液体層から形成する
(iii)任意に、該基板から該層を取り除く
を含む、前記方法に関する。
【0016】
本発明はさらに、電子、光学もしくは電子光学部品またはデバイスにおける、上記および下記のような化合物、調製物または層の使用に関する。
本発明はさらに、上記および下記のような1または2以上の化合物、調製物または層を含む電子、光学もしくは電子光学部品またはデバイスに関する。
【0017】
前記電子、光学もしくは電子光学部品またはデバイスは、有機電界効果トランジスタ(OFET)、薄膜トランジスタ(TFT)、集積回路(IC)の素子、無線認識(RFID)タグ、有機発光ダイオード(OLED)、電子発光ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、バックライト、光検知器、センサ、論理回路、記憶素子、コンデンサ、光起電力(PV)電池、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、伝導性基板またはパターン、光伝導体および電子写真用素子を含むが、これらに限定されない。
【0018】
本発明の詳細な説明
式Iは「混合」オリゴマー例えば、タイプA−B−A、A−B−B−A、ここでAはポリアセンであり、Bは共役または非共役環状スペーサー基Zである、も含む。
【0019】
特に明記しない限り、上記および下記のペンタセン、ならびに式Iのポリアセン類における置換基および置換位置(R、R等のように)は、以下に示すペンタセンの慣習の命名を参照する:
【化2】

【0020】
特に明記しない限り、R、R等のような基、またはk等のような添え字は、複数存在する場合、互いに独立して選択され、互いに同一または異なっていてもよい。したがって、さまざまな異なる基は、例えば「R」のような単一のラベルによって表されてもよい。
【0021】
用語「アルキル」、「アリール」等は、多価の種も含み、例えばアルキレン、アリーレンなどの、多価の種も含む。用語「アリール」または「アリーレン」は、芳香族炭化水素基または芳香族炭化水素基から誘導される基を意味する。用語「ヘテロアリール」または「ヘテロアリーレン」は、1または2以上のヘテロ原子を含む「アリール」または「アリーレン」基を意味する。
【0022】
上記または下記で使用される、用語「カルビル基」は、あらゆる一価または多価有機ラジカル部分を意味し、これは、少なくとも1つの炭素原子を含むかまたはいかなる非炭素原子を有さない(例えば、−C≡C−など)、または任意に少なくとも1つのN、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどの非炭素原子と組合わさる(例えばカルボニル等)。「炭化水素基」および「ヒドロカルビル基」の用語は、追加の1または2以上のH原子を含み、任意に1または2以上のヘテロ原子、例えばN、O、S、P、Si、Se、As、TeまたはGeなどを含むカルビル基を意味する。
【0023】
3または4以上のC原子の鎖を含む、カルビルまたはヒドロカルビル基は直鎖、分枝鎖および/または環状であってもよく、これはスピロおよび/または縮合環を含む。
【0024】
好ましいカルビルおよびヒドロカルビル基は、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシおよびアルコキシカルボニルオキシ、これらはそれぞれ、任意に置換され、1〜40、好ましくは1〜25、特に好ましくは1〜18個のC原子を有する、さらに5〜40、好ましくは6〜25個のC原子を有する、任意に置換されたアリールまたはアリールオキシ、さらに、アルキルアリールオキシ、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニルオキシおよびアリールオキシカルボニルオキシ。これらはそれぞれ、任意に置換され、6〜40、好ましくは7〜40、特に好ましくは7〜25個のC原子を有する、を含む。
【0025】
カルビルまたはヒドロカルビル基は、飽和または不飽和非環式基、または飽和または不飽和環状基であってもよい。不飽和非環式または環状基は好ましく、特にアルケニルおよびアルキニル基(特にエチニル)が好ましい。C〜C40カルビルまたはヒドロカルビル基が非環式である場合、この基は直鎖または分枝鎖であってもよい。C〜C40カルビルまたはヒドロカルビル基は、例えば:C〜C40アルキル基、C〜C40アルケニル基、C〜C40アルキニル基、C〜C40アリル基、C〜C40アルキルジエニル基、C〜C40ポリエニル基、C〜C18アリール基、C〜C40アルキルアリール基、C〜C40アリールアルキル基、C〜C40シクロアルキル基、C〜C40シクロアルケニル基などを含む。
【0026】
前述の基のうち好ましいものは、それぞれC〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜C20アルキニル基、C〜C20アリル基、C〜C20アルキルジエニル基、C〜C12アリール基およびC〜C20ポリエニル基であり;さらに好ましいものはそれぞれ、C〜C10アルキル基、C〜C10アルケニル基、C〜C10アルキニル基(特にエチニル)、C〜C10アリル基、C〜C10アルキルジエニル基、C〜C12アリール基およびC〜C10ポリエニル基であり;最も好ましいものは、C2〜10アルキニルである。
【0027】
さらに好ましいカルビルおよびヒドロカルビル基は、1〜40、好ましくは1〜25個のC原子を持つ直鎖、分枝鎖または環状アルキルであって、非置換、F、Cl、Br、IまたはCNで単置換または多置換され、ここで1または2以上の隣接しないCH基は、いずれの場合も互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−CX=CX−または−C≡C−によって、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように、任意に置き換えられ、ここでRおよびR00上記または下記で与えられた1つの意味の有し、XおよびXは互いに独立して、H、F、ClまたはCNである。
【0028】
およびR00は好ましくは、H、1〜12個のC原子を持つ直鎖または分枝鎖アルキル、または6〜12個のC原子を持つアリールである。
ハロゲンはF、Cl、BrまたはIである。
好ましいアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ドデカニル、トリフルオロメチル、ペルフルオロ−n−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ベンジル、2−フェノキシエチルなどを含むが、これらに限られない。
【0029】
好ましいアルキニル基はエチニルおよびプロピニルを含むが、これらに限られない。
好ましいアリール基は、フェニル、2−トリル、3−トリル、4−トリル、ナフチル、ビフェニル、4−フェノキシフェニル、4−フルオロフェニル、3−カルボメトキシフェニル、4−カルボメトキシフェニルなどを含むが、これらに限られない。
【0030】
好ましいアルコキシ基はメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、t−ブトキシなどを含むが、これらに限られない。
好ましいアリールオキシ基はフェノキシ、ナフトキシ、フェニルフェノキシ、4−メチルフェノキシなどを含むが、これらに限られない。
好ましいアミノ基は、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノなどを含むが、これらに限られない。
【0031】
置換基R−R12の2以上がポリアセンと共に環系を形成する場合、これは好ましくは5−、6−または7−員芳香環または芳香族複素環であり、好ましくはピリジン、ピリミジン、チオフェン、セレノフェン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾールおよびオキサジアゾール、特に好ましくはチオフェンまたはピリジンから選択される。
【0032】
などに関する、環基およびカルビルおよびヒドロカルビル基における任意の置換基は、シリル、スルホ、スルホニル、ホルミル、アミノ、イミノ、ニトリロ、メルカプト、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1〜12アルキル、C6〜12アリール、C1〜12アルコキシ、ヒドロキシおよび/またはこれらの組合せを含むが、これらに限られない。これらの任意の基は、同じ基および/または複数(好ましくは2つ)の前述の基における全ての化学的に可能な組合せを含んでもよい(例えばアミノおよびスルホニルが互いに直接接合した場合に、スルファモイルラジカルを表す)。
【0033】
好ましい置換基は、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NR00、−OH、−SF、ここでR、R00およびXは上記に定義されたとおりであり、任意に置換されたシリル、1〜12、好ましくは1〜6個のC原子を持つアリール、ならびに1〜12、好ましくは1〜6個のC原子を持つ、直鎖または分枝鎖アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、ここで1または2以上のH原子は任意にFまたはClにより置き換えられる、を含むが、これらに限定されない。
【0034】
例えばこれらの好ましい置換基はF、Cl、CH、C、C(CH、CH(CH、CHCH(CH)COCH、OC、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、OCF、OCHFおよびOCである。
とても好ましい任意の置換基は、任意に置換されたシリル、アミノ、F、Cl、CH、C、C(CH、CH(CHおよびCHCH(CH)Cを含む。
【0035】
シリル基は任意に置換され、好ましくは式−SiR’R”R’”から選択される。その中で、R’、R”およびR’”はそれぞれ、H、C〜C40−アルキル基、好ましくはC〜C−アルキル、最も好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、またはイソプロピル、C〜C40−アリール基、好ましくはフェニル、C〜C40−アリールアルキル基、C〜C40−アルコキシ基、またはC〜C40−アリールアルキルオキシ基から選択される同一または異なる基であり、ここで全てのこれらの基は、例えば1または2以上のハロゲン原子で任意に置換される。好ましくは、R’、R”およびR’”は互いに独立して、任意に置換されたC1〜10−アルキル、より好ましくはC1〜4−アルキル、最も好ましくはC1〜3−アルキル、例えばイソプロピル、および任意に置換されたC6〜10−アリール、好ましくはフェニルから選択される。さらに好ましいものは、式−SiR’R””のシリル基であって、ここでR””は非環式シリルアルキル基をSi原子とともに形成し、好ましくは1〜8個のC原子を有する。
【0036】
シリル基の好ましい態様の1つにおいて、R’、R”およびR’”は同一の基であり、例えばトリイソプロピルシリルにおける、同一の、任意に置換された、アルキル基である。とても好ましくは基R’、R”およびR’”は同一の、任意に置換されたC1〜10、より好ましくはC1〜4、最も好ましくはC1〜3アルキル基である。この場合に好ましいアルキル基はイソプロピルである。
【0037】
上記に定義された、式−SiR’R”R’”または−SiR’R””のシリル基は、C〜C40−カルビルまたはヒドロカルビル基の好ましい任意の置換基である。
【0038】
好ましい基−SiR’R”R’”は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、ジメチルエチルシリル、ジエチルメチルシリル、ジメチルプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジプロピルメチルシリル、ジイソプロピルメチルシリル、ジプロピルエチルシリル、ジイソプロピルエチルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルイソプロピルシリル、ジイソプロピルフェニルシリル、ジフェニルエチルシリル、ジエチルフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニルシリルなどを含むが、これらに限定されない、ここでアルキル、アリールまたはアルコキシ基は任意に置換される。
【0039】
ある場合は、デバイスを加工しやすくするために、一般的な有機溶媒における、半導体の式Iの化合物の溶解度を調節することが望ましい。これは、例えばFETの製造において、利点を有し、ここで塗料溶液、例えば、半導体上の誘電体は、半導体を溶解する傾向がある。また、デバイスが一旦形成されると、より低い溶解度の半導体は、有機層に「流れ出る」傾向が低い可能性がある。上記の半導体の式Iの化合物の溶解度を調節する方法の一態様において、化合物は、シリル基−SiR’R”R’”ここで少なくとも1つのR’、R”およびR’”が任意に置換されたアリール、好ましくはフェニル基を含む。
【0040】
したがって、少なくとも1つのR’、R”およびR’”は任意に置換されたC6−18アリール、好ましくはフェニル基、任意に置換されたC6〜18アリールオキシ、好ましくはフェノキシ基、任意に置換されたC6〜20アリールアルキル、例えばベンジル基、または任意に置換されたC6〜20アリールアルキルオキシ、例えばベンジルオキシ基であってもよい。そのような場合、R’、R”およびR’”に残りの基がある場合、好ましくはC1〜10、より好ましくはC1〜4アルキル基であり、これは任意に置換される。
【0041】
式Iは、あらゆるタイプの1,1’−、1,2’−および2,2’−結合、ならびにあらゆるタイプの1,2−1’,2’−、1,2−2’,3’−および2,3−2’,3’−縮合オリゴマーポリアセン類に及ぶ。いくつかの好ましい二量体および三量体を、以下の下位式IA1、IB1(1,1’−結合)、IA2、IB2(2,2’−結合)、IA3、IB3(1,2’−結合)、IA4、IB4(2,3−2’,3’−縮合)、IA5、IB5(1,2−2’,3’−縮合)、IA6、IB6(1,2−1’,2’−縮合)に示す。
【0042】
さらに「混合タイプ」結合を有するオリゴマーポリアセンにも及び、すなわち、2以上の1,1’−結合、1,2’−結合および2,2’−結合ポリアセンユニットを含むか、2以上の1,2−1’,2’−縮合、2,3−2’,3’−縮合および1,2−2’,3’−縮合ポリアセンユニットを含む、例えば好ましい下位式I7(2,3−2’,3’−縮合および1,2−2’,3’−縮合)の三量体である。これらのユニットは、交互またはランダム配列に現れる。
【0043】
さらに、1または2以上の1,1’−結合、1,2’−結合および2,2’−結合ポリアセンユニットおよびさらに1または2以上の1,2−1’,2’−縮合、2,3−2’,3’−縮合および1,2−2’,3’−縮合ポリアセンユニットを、交互またはランダム配列で含む、「混合タイプ」結合を有するオリゴマーポリアセンにさらに及ぶ。
【0044】
【化3】

【0045】
【化4】

【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
式中、
a、b、R1〜14は式Iにおいて定義した通りであり、
1’〜14’およびR1”〜14”は互いに独立して、Rの意味の1つを有し、
Z、Z’は互いに独立して、単結合またはスペーサー基であり、
Y、Y’は互いに独立して(CH−、−CR15=CR16−、−O−、−S−、−CR16=N−または−N(R)−,
15、R16は互いに独立して、Rの意味の1つを有し、
は式Iにおいて定義した通りであり,
kは1、2または3である。
【0049】
特に好ましいものは、式IおよびI1〜I8の化合物である:
− nは2または3であり、
− aは0であり、bは0である、
− aは0であり、bは1である
− aは1であり、bは1である
【0050】
− RとR13の両方および/またはR6’とR13’の両方および/またはR6”とR13”の両方が、−C≡C−MR’R”R’”または−C≡C−MR’R””を意味し、ここでMはSiまたはGeであり、R’、R”、R’”およびR””は上記において定義した通りである、
− 基−C≡C−MR’R”R’”は−C≡C−SiRであり、ここでRは直鎖、分枝鎖または環状C1〜12−アルキルもしくはC1〜12−アルコキシ、または任意に置換された5〜12個のC原子を有する、単環、多環もしくは縮合アリール、
【0051】
− RとR10の両方および/またはRとRの両方および/またはR2’とRの両方および/またはR2”とR3”の両方は、対応するポリアセンユニットと共に、5−、6−または7−員芳香環または芳香族複素環を形成し、好ましくはピリジン、ピリミジン、チオフェン、セレノフェン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾールおよびオキサジアゾールから選択され、特に好ましくは以下の基またはそれらの鏡像(ここでアスタリスクは対応する基がポリアセンに縮合する位置を意味する)からえらばれる、
【0052】
【化7】

【0053】
− 全ての置換基、R6,6’,6”,13,13’,13”および結合基は除く、がHであり、
− ZおよびZ’は、単結合、−O−、任意に置換された単環あるいは多環アリールもしくはヘテロアリール、任意にフッ素化された直鎖もしくは分枝鎖アルキレン、オキシ、アルキレンオキシまたはアルキレンジオキシ、または前述の基の組合せから選択され、
−YおよびY’は互いに独立してO−、−S−または−NR−である。
【0054】
スペーサー基または基ZもしくはZ’は、好ましくは下記から選択される
a)F、Cl、Br、IまたはCNによって、任意に単置換または多置換された、1〜20個のC原子を持つ、直鎖、分枝鎖または環状アルキレン、ここで1または2以上の隣接しないCH基は、いずれの場合も互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−または−C≡C−によって、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように、任意に置き換えられ、
b)式Iに定義された、1または2以上の基Rによって、任意に単置換または多置換された、単環式または多環式アリールまたはヘテロアリール、
【0055】
c)−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CX=CX−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、ここでRおよびR00は、式Iで与えられた意味を有し、XおよびXは、H、F、ClおよびCNから選択され、
d)a)、b)およびc)から選択される1または2以上の基の組合せ。
【0056】
Zがアリールまたはヘテロアリールを含む場合、好ましくは5−、6−もしくは7−員芳香環もしくは芳香族複素環または互いに直接結合するか、互いに縮合したかかる2つの環を含み、好ましくはフェニレン、ピリジン、ピリミジン、チオフェン、セレノフェン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾールおよびオキサジアゾールから選択され、これらは全て任意に置換される。
【0057】
特に好ましいものは、以下の化合物である。
【化8】

【0058】
【化9】

【0059】
【化10】

【0060】
【化11】

【0061】
【化12】

【0062】
式中、Z、Y、R’、R”はR’”上記に定義されたとおりであり、
2a,3a,9a,10aは、上記および下記の、Rの意味の1つを有し、
AおよびBは互いに独立して、4〜40個のC原子を有する、不飽和または芳香族環系であって、これは単環または多環であり、ポリアセンに縮合し、−O−、−S−、=N−および−N(R)−から選択される1または2以上の基によって任意に介入され、1または2以上の同一または異なる基Rで置換され、
【0063】
は式Iにおいて定義した通りであり、
は、式Iにおいて定義した通りであり、
そして該フェニレン環は任意に、式Iにおいて定義した通りである1または2以上の基Rで置換される。
【0064】
とても好ましいものは、以下の下位式eの化合物である。
【化13】

【0065】
【化14】

【0066】
【化15】

【0067】
【化16】

【0068】
式中
X’はハロゲン、好ましくはFであり、
は、上記で与えられたZの意味の1つを有し、好ましくは−C(CF−または
【化17】

であり、
【0069】
、RおよびRは、同一または異なる、1〜12個のC原子を有し、任意にフッ素化される直鎖もしくは分枝鎖アルキルもしくはアルコキシ、または6〜18個のC原子を有し、任意に置換されたアリール、アリールオキシもしくはアリールアルキル
alkylおよびalkyl’は、1〜12個のC原子を有し、任意にフッ素化される直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルコキシである。
【0070】
本発明の化合物は、周知の方法もしくは以下に説明する方法に従ってもしくは類似して、合成することができる。さらなる方法が例から取られる。
【0071】
特定のポリアセン化合物は、US 2003/0116755 AおよびUS 6,690,029に記載され、文献中に記載された、ポリアセンの合成方法を、本明細書中に記載されたポリアセン化合物を生産するために用いることができる。ポリアセン類を生産する方法は、US 3,557,233にも記載されている。あるいは、本発明に記載のポリアセン化合物の合成に使用されうる、当業者の技術および知識の範囲の方法が、Organic Letters 2004, Volume 6, number 10, pages 1609-1612に記載されている。
【0072】
式Iの化合物は、例えば以下に示される、ペンタセン二量体2−(6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセニル)−6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン6(ここでRはアルキル、例えばイソプロピルである)の作成方法に従って、もしくは類似して合成することができる:
【0073】
【化18】

【0074】
シリルエチニル化ペンタセン二量体誘導体6は、その対応するアセンキノン5から、公開された手順(C.D. Sheraw, T.N.Jackson, D.L.Eaton, J.E. Anthony, Adv. Mater, 2003, 23, 2009-2011参照)にしたがって、スキーム1に示すように得られる。
【0075】
【化19】

【0076】
アセンキノン5は、1,4−ジヒドロキシアントラセン2の1,1’−ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボキサルデヒド4とアルドール縮合から、スキーム2に示すように合成される。
【0077】
【化20】

【0078】
化合物2は市販のキニザリンから、文献方法(D.H. Hua, M. Tamura, X. Huang, H.A. Stephany, B.A.Helfrich, E.M. Perchellet, B.J. Sperfslage, J.-P. Perchellet, S. Jiang, D.E.Kyle, P.K. Chiang, J. Org. Chem, 2002, 2907-2912参照)にしたがって、スキーム3に示すように作成される。
【0079】
【化21】

【0080】
化合物4は、市販の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から二段階で、スキーム4に示されるように作成される。二無水物は、ジオキサンにおける水素化アルミニウムリチウムによって還元され、3,3’,4,4’−テトラ(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビフェニル3を得、これは次に標準のスワーン酸化手順に沿って酸化され、テトラカルバルデヒド4を得る。
【0081】
【化22】

【0082】
驚くべきことに有利に、本発明によると、Iの特定の溶解性ポリアセン化合物(以下「当該ポリアセン」とも称する)、特に上記および下記の好ましい式の化合物を、有機結合剤樹脂(以下「当該結合剤」とも称する)と混ぜ合わせることにより、当該ポリアセンの電荷移動度をほとんどあるいは全く減少させず、ある場合には増加すら起こすことが見出された。例えば、溶解性ポリアセンを結合剤樹脂(例えばポリ(α−メチルスチレン)に溶解し、(例えばスピンコーティングによって)被着し、例えば0.1〜1.5cm−1−1の高い電荷移動度をもたら有機半導体層を形成することが可能である。
【0083】
先行技術は、このような高い移動度を達成するために、ポリアセン化合物は強い分子秩序が要求されるしており、この結果は特に予期されないものであった。結合剤におけるFETの希釈は、移動度に少なくとも一桁分の減少をもたらすと予測される。驚くべき事に、結合剤:ポリアセンの比率が1:1においてでさえも、移動度は単独で使用される純ポリアセン化合物のそれと同程度であることも見出された。本発明によって生じた結果はしたがって、a)起こり得る分子秩序の乱れにもかかわらず移動度を維持すること、およびb)起こり得る分子間距離の増加にもかかわらず移動度を維持することの両方に関して意外である。同時に、これから形成される半導体層は、卓越したフィルム形成特性を示し、特に適している。
【0084】
いったん高移動度の有機半導体層調製物を、ポリアセンと結合剤を混ぜ合わせることにより得ると、生じた調製物は他のいくつかの利点をもたらす。例えば、当該ポリアセン類は溶解性であるので、これらは例えば溶液からの液体形状で被着されてもよい。当該結合剤のさらなる使用関して、当該調製物を極めて均一な方法で広い範囲へ被覆できることが見出された。結合剤を使用しない場合、当該ポリアセンを広い範囲へスピンコートすることが出来ず、均一なフィルムを生じない。先行技術において、場合によっては、純ポリアセン層のスピンおよびドロップコーティングは、比較的高い移動度をもたらす可能性があるが、電子デバイスの特別な要件である、一定の移動度を有する広い範囲のフィルムを基板全体に提供することは困難である。
【0085】
さらに、結合剤を調製物において使用した場合、印刷工程に適応するために、当該調製物の特性、例えば粘度、固形分、表面張力を調節することが可能である。いかなる特定の理論に束縛されることは望んでいないが、調製物における結合剤の使用は、そうでなければ空洞になる結晶粒子間の容積を満たし、有機半導体層を空気および水分に対する感受性をより低くすることも予測される。例えば、本発明の方法にしたがって形成した層は、空気中のOFETデバイスにおいて、とても優れた安定性を示す。
本発明は、有機半導体層調製物を含む有機半導体層も提供する。
【0086】
本発明はさらに、有機半導体層の製造方法を提供し、前記方法は以下の工程を含む:
(i)1または2以上の上記または下記の式Iの化合物、1または2以上の有機結合剤樹脂またはその前駆体、および任意に1または2以上の溶媒を含む調製物の液体層を基板に被着すること、
(ii)有機半導体層である固体層を、該液体層から形成すること、
(iii)任意に、該基板から該層を取り除くこと。
当該方法を以下により詳細に説明する。
【0087】
本発明はさらに、前記有機半導体層を含む電子デバイスを提供する。電子デバイスは、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、光検知器、センサ、論理回路、記憶素子、コンデンサまたは光起電力 (PV)電池を含んでもよいが、これらに限定されない。例えば、OFETのドレインとソースの間の活性半導体チャネルは、本発明の層を含んでもよい。他の例として、OLEDデバイスにおける、電荷(正孔もしくは電子)注入またはトランスポート層は、本発明の層を含んでもよい。本発明に記載の調製物およびそれから形成される層は、特に本明細書中に記載された好ましい態様に関して、OFETにおける特別な有用性を有する。
【0088】
本発明の好ましい態様において、式Iの半導体化合物は、10−5cm−1−1以上、好ましくは10−4cm−1−1以上、より好ましくは10−3cm−1−1以上、さらにより好ましくは10−2cm−1−1以上、そして最も好ましくは10−1cm−1−1以上の電荷担体移動度、μ、を有する。
【0089】
本発明に記載の調製物は、1または2以上の式Iのオリゴマーポリアセン(類)を含み、1または2以上のポリマー類またはポリマー結合剤、好ましくは、例えば熱可塑性ポリマー類、熱硬化性ポリマー類、熱硬化性樹脂類、エラストマー類、伝導性ポリマー類、産業用プラスチックなどのような、合成有機ポリマー(類)をさらに含む、混合物であってもよい。ポリマーはコポリマーであってもよい。
【0090】
熱可塑性ポリマーの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−プロピレンコポリマーなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートなどを含む。
熱硬化性ポリマーの例は、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラニン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂などを含む。
【0091】
産業用プラスチックの例は、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホンなどを含む。合成有機ポリマーは、スチレンブタジエンなどの合成ゴム、またはポリテトラフルオロエチレなどのフルオロ樹脂などであってもよい。伝導性ポリマーは、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアリレンビニレン、ポリチエニレンビニレンなどの共役ポリマー類、および電子供与分子または電子求引分子がドープされたそれらを含む。
【0092】
当該結合剤は典型的にはポリマーであり、絶縁結合剤もしくは半導体結合剤のいずれか、またはそれらの混合物を含んでもよい。本明細書中、これらは「当該有機結合剤」、「当該ポリマー結合剤」、または単純に「当該結合剤」と表す。
【0093】
本発明の好ましい結合剤は低誘電率の材料であり、すなわち1,000Hzにおいて3.3またはそれ以下の誘電率εを有するものである。当該有機結合剤は、好ましくは1,000Hzにおいて3.3以下、より好ましくは2.9以下の誘電率εを有する。好ましくは当該有機結合剤は、1,000Hzにおいて1.7以上の誘電率εを有する。当該結合剤の誘電率が、2.0〜2.9の範囲であることが特に好ましい。いかなる特定の理論に束縛されることは望んでいないが1,000Hzにおいて3.3以上の誘電率εを有する結合剤の使用は、電子デバイス、例えばOFETにおけるOSC層移動度の減少をもたらす可能性があると考えられる。さらに、高誘電率結合剤は、デバイスの電流ヒステリシスを増加することもあり得、これは望ましくない。
【0094】
適した有機結合剤の例は、ポリスチレンである。さらなる例を以下に示す。
好ましい態様の1つのタイプにおいて、当該有機結合剤は、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、特に全ての原子が、水素、フッ素および炭素原子からなるものである。
【0095】
当該結合剤は通常、共役結合、特に共役二重結合および/または芳香環を含むことが好ましい。
当該結合剤は、好ましくはフィルム、より好ましくは軟質フィルムを形成することができるべきである。スチレンおよびα−メチルスチレンのポリマー類、例えばスチレン、α−メチルスチレンおよびブタジエンを含むコポリマー類が適切に使用される。
【0096】
本発明で使用される、低誘電率の結合剤は、小数の永久双極子を有し、さもなければ分子部位エネルギーにおける不規則変動を引き起こし得る。誘電率(permittivity)ε(誘電率:dielectric constant)は、ASTM D150テスト法によって測定できる。
【0097】
本発明において、低永久双極子を有するこのタイプの材料として、低極性および水素結合寄与(contribution)の溶解度パラメーターを有する結合剤を使用することも好ましい。本発明における使用に関する結合剤の溶解度パラメーター(「ハンセンパラメーター」)に対する好ましい範囲を下記表1に提供する。
【0098】
【表1】

【0099】
上記の三次元の溶解度パラメーターは:分散(δ)、極性(δ)および水素結合(δ)要素(C.M. Hansen, Ind. Eng. and Chem., Prod. Res. and Devl., 9, No3, p282., 1970)を含む。これらのパラメーターは、実験的にまたはHandbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parameters ed. A.F.M. Barton, CRC Press, 1991に記載された周知の分子グループ貢献からの計算により判断される。多くの周知のポリマーの溶解度パラメーターはこの文献に記載されている。
【0100】
当該結合剤の誘電率が、多少周波数に依存することが望ましい。これは非分極性材料の典型である。ポリマー類および/またはコポリマー類は、それらの置換基の誘電率によって、当該接合剤として選択することができる。適した好ましい低分極性結合剤のリストを(これらの例に限定することなく)表2に示す。
【0101】
【表2】

【0102】
結合剤として適した他のポリマー類は、ポリ(1,3−ブタジエン)またはポリフェニレンを含む。
特に好ましいものは、当該結合剤がポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレンおよびポリトリアリールアミンまたはこれらのあらゆるコポリマーから選択され、溶媒が、キシレン(類)、トルエン、およびシクロヘキサノンから選択される当該結合材の調製物でる。
【0103】
上記ポリマー類の繰り返しユニットを含むコポリマー類も結合剤として適している。コポリマー類は、式Iの当該ポリアセンとの適合性の向上、形態および/または最終層組成のガラス転移温度の修正の可能性を提供する。当然のことながら、上記表において、特定の材料は、層の製造において通常使用される溶媒においては不溶性である。これらの場合、類似体をコポリマーとして使用することができる。コポリマー類にいくらかの例を、表3に(これらの例に限定することなく)示す。ランダムまたはブロックコポリマー類の両方を使用することができる。全体の組成が、低い極性を保つ限り、より極性のある単量体成分を添加することも可能である。
【0104】
【表3】

【0105】
他のコポリマー類は:分枝鎖または非分枝鎖ポリスチレン−ブロック−ポリブタジエン、ポリスチレン−ブロック(ポリエチレン−ran−ブチレン)−ブロック−ポリスチレン、ポリスチレン−ブロック−ポリブタジエン−ブロック−ポリスチレン、ポリスチレン−(エチレン−プロピレン)−ジブロック−コポリマー類(例えば、KRATON(登録商標)-G1701E,Shell)、ポリ(プロピレン−co−エチレン)およびポリ(スチレン−co−メチルメタクリラート)を含んでもよい。
【0106】
本発明の有機半導体層調製物において使用される好ましい絶縁結合剤はポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルシンナマート、ポリ(4−ビニルビフェニル)、ポリ(4−メチルスチレン)、TopasTM 8007(直鎖オレフィン、シクロ−オレフィン(ノルボルネン)コポリマー、Ticona、Germanyから入手可能)である。最も好ましい絶縁結合剤類は、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルシンナマートおよびポリ(4−メチルスチレン)である。
【0107】
当該結合剤は、アクリラテス、エポキシエス、ビニルエテルス、チオレネスなどの、十分に低い誘電率、とても好ましくは3.3以下の誘電率を有する架橋性結合剤から選択することもできる。当該結合剤は、メソゲンまたは液晶であることもできる。
【0108】
上記のように、当該有機結合剤自身が半導体であってもよく、この場合本明細書中において、半導体結合剤と示す。半導体結合剤は、さらに好ましくは本明細書に定義されるような低誘電率の結合剤である。本発明において使用される半導体結合剤は、好ましくは少なくとも1500〜2000、より好ましくは少なくとも3000、さらにより好ましくは少なくとも4000、そして最も好ましくは少なくとも5000の平均分子量数(M)を有する。半導体結合剤は、好ましくは少なくとも10−5cm−1−1、より好ましくは少なくとも10−4cm−1−1の電荷担体移動度、μ、を有する。
【0109】
半導体結合剤の好ましいクラスは、US 6,630,566に記載されたポリマー、好ましくは式1の繰り返しユニットを有するオリゴマーまたはポリマーである:
【化23】

【0110】
式中
同一または異なってもよいAr、ArおよびArは、異なる繰り返しユニットにおいての場合は独立して、任意に置換された、単環または多環である芳香族基を意味し、
mは、≧1、好ましくは≧6、好ましくは≧10、より好ましくは≧15そして最も好ましくは≧20の整数である。
【0111】
Ar、ArおよびArの文脈において、単環芳香族基は唯一の芳香環、例えばフェニルまたはフェニレンを有している。多環芳香族基は、2以上の、縮合していてもよい芳香環(例えばナフチルまたはナフチレン)、個々に共有結合している芳香環(例えばビフェニル)および/または縮合もしくはここに結合した芳香環の組合せを有している。好ましくはそれぞれのAr、ArおよびArは、実質的に全体の基を、実質的に共役する芳香族基である。
【0112】
半導体結合剤のさらに好ましいクラスは、実質的に共役した繰り返しユニットを含むものである。半導体結合剤ポリマーは、一般式2のホモポリマーまたはコポリマー(ブロック−コポリマーを含む)であってもよい:
(c)(d)…Z(z)
【0113】
式中、A,B,…,Zはそれぞれ単量体ユニットを表し、(c),(d),…(z)はそれぞれポリマーにおける対応する単量体ユニットのモル分率を表し、つまりそれぞれの(c),(d),…(z)は0〜1の値であって、(c)+(d)+…+(z)=1である。
【0114】
適した好ましい単量体ユニットA,B,…Zの例は、上記式1および以下の式3〜8のユニットを含む(ここでmは式1の定義通りである):
【化24】

【0115】
式中、
およびRは、互いに独立して、H、F、CN、NO、−N(R)(R)または任意に置換されたアルキル、アルコキシ、チオアルキル、アシル、アリールから選択され、
およびRは互いに独立して、H、任意に置換されたアルキル、アリール、アルコキシもしくはポリアルコキシ、または他の置換基から選択され、
ここで、アスタリスク()は、Hを含むあらゆる端末または末端キャッピング基であり、アルキルならびにアリール基はは任意にフッ素化される;
【0116】
【化25】

式中、
YはmSe、Te、O、Sまたは-N(R)、好ましくはO、Sまたは−N(R)−であり、
は、H、任意に置換されたアルキルまたはアリールであり,
およびRは、式3で定義した通りである;
【0117】
【化26】

式中R、RおよびYは式3および4において定義した通りである;
【0118】
【化27】

式中R、RおよびYは式3および4において定義した通りであり、
Zは、−C(T)=C(T)−、−C≡C−、−N(R)−、−N=N−、(R)=N−、−N=C(R)−であり、
およびTは、互いに独立して、H、Cl、F、−CNまたは1〜8個のC原子を有する低級アルキルを意味し、
は、Hまたは任意に置換されたアルキルもしくはアリールである;
【0119】
【化28】

式中、RおよびRは式3において定義した通りである;
【0120】
【化29】

式中R、R、RおよびRは互いに独立して、式3における、RおよびRの意味の1つを有する。
【0121】
本明細書中に記載される式1〜8などの、ポリマーの式の場合、ポリマー類は、これはHを含む、あらゆる末端キャッピングまたは離脱基である、あらゆる末端基によって終了されてもよい、
【0122】
ブロック−コポリマーの場合、それぞれの単量体A,B,…Zは、例えば2〜50の式3〜8のユニットを含む、共役オリゴマーまたはポリマーであってもよい。半導体結合剤は、好ましくはアリールアミン、フルオレン、チオフェン、スピロビフルオレンおよび/または任意に置換されたアリール(例えばフェニレン)基、より好ましくはアリールアミン、最も好ましくはトリアリールアミン基を含む。上述の基は、さらなる共役基、例えばバニリンによって、結合されていてもよい。
【0123】
さらに、半導体結合剤が、1または2以上の上述のアリールアミン、フルオレン、チオフェンおよび/または任意に置換されたアリール基を含む、ポリマー(ホモ−ポリマーまたはブロック−コポリマーを含むコポリマーのいずれか)を含むことが望ましい。好ましい半導体結合剤は、アリールアミン(好ましくはトリアリールアミン)および/またはフルオレンユニットを含むホモ−ポリマーまたはコポリマー(ブロック−コポリマーを含む)を含む。他の好ましい半導体結合剤は、フルオレンおよび/またはチオフェンユニットを含むホモ−ポリマーまたはコポリマー(ブロック−コポリマーを含む)を含む。
【0124】
半導体結合剤は、カルバゾールまたはスチルベン繰り返しユニットも含んでもよい。例えばポリビニルカルバゾールまたはポリスチルベンポリマー類またはコポリマー類を使用してもよい。半導体結合剤は任意に、ポリアセンセグメント(例えば、上記式Iに関して説明したような繰り返しユニットを溶解性ポリアセン分子との適合性を向上するために、含んでもよい。
【0125】
本発明の有機半導体層調製物における使用に、最も好ましい半導体結合剤は、ポリ(9−ビニルカルバゾール)およびPTAA1、下記式のポリトリアリールアミンである。
【化30】

式中mは式1において定義した通りである。
【0126】
p−チャネルFETにおける半導体層の適用には、半導体結合剤が式Iの半導体化合物よりも高いイオン化ポテンシャルを有することが望ましく、そうでなければ、当該結合剤は正孔トラップを形成する可能性がある。n−チャネル材料において、半導体結合剤は、電子捕獲を防ぐために、n−タイプ半導体よりも低い電子親和力を有するべきである。
【0127】
本発明の調製物は、下記を含む方法によって製造されてもよい:
(i)第1に、式Iの化合物と有機結合剤またはその前駆体とを混合する。好ましくは、混合は、溶媒または溶媒混合物の中で、2つの成分を一緒に混合することを含み、
(ii)式Iの化合物を含む溶媒(類)および当該有機結合剤を基板に適用し;任意に、本発明の固体有機半導体層を形成するために、溶媒(類)を蒸発させる、
(iii)そして任意に、基板から固体層を取り除くか、固体層から基板を取り除く。
【0128】
工程(i)において、溶媒は単一の溶媒または式Iの化合物であってもよく、当該有機結合剤はそれぞれ別々の溶媒に溶解し、化合物を混合するために、2つの得られた溶媒を混合してもよい。
【0129】
当該結合剤を、式Iの化合物を結合剤の前駆体、例えば液体単量体、オリゴマーまたは架橋性ポリマーに、任意に溶媒の存在下で、混合または溶解すること、ならびに、例えばそれを基板に浸漬、噴霧、塗装または印刷し液体層を形成し、そして液体単量体、オリゴマーまたは架橋性ポリマーを、例えば放射線、熱または電子ビームにさらすことにより、硬化して固体層を形成することにより混合物または溶液を被着することによって、in situで形成してもよい。
【0130】
前もって形成された結合材を使用する場合、適した溶媒中で式Iの化合物とともに溶解してもよく、例えば溶液を基板に浸漬、噴霧、塗装または印刷し、液体層を形成し、そして固体層を残すために溶媒を取り除くことによって、溶液を被着する。当然のことながら、当該結合剤および式Iの化合物の両方を溶解することのでき、溶液ブレンドからの蒸発の際に、密着した欠陥のない層を生じる溶媒が選択される。
【0131】
当該結合剤または式Iの化合物に適した溶媒は、ASTM Method D 3132に記載されるように、用いられる混合物における濃度における、その材料の輪郭ダイアグラムを制作することによって、判断することができる。ASTM法に記載されるように、幅広い種類の溶液に材料を添加することができる。
【0132】
当然のことながら、本発明にしたがって、調製物は2以上の式Iの化合物および/または2以上の結合材または結合剤前駆体を含んでもよく、そして調製物の製造方法をかかる調製物に適用してもよい。
【0133】
適した好ましい有機溶媒の例は、ジクロロメタン、トリクロロメタン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、アニソール、モルホリン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、酢酸エチル、n-酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラリン、デカリン、インダンおよび/またはこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0134】
適切な混合およびエージングの後、溶液を以下のカテゴリーの1つとして評価した:完全な溶液、境界の溶液または非溶解性。輪郭線を、溶解性および非溶解性に分類する、溶解性パラメータ−水素結合リミットを示すために描く。溶解性の範囲内に収まる「完全な」溶液は、「Crowley, J.D., Teague, G.S. Jr and Lowe, J.W. Jr., Journal of Paint Technology, 38, No 496, 296 (1966)」に載っているような文献の値から選択することができる。
【0135】
溶媒ブレンドも使用することができ、また「Solvents, W.H.Ellis, Federation of Societies for Coatings Technology, p9-10, 1986」に記載されるように、特定することができる。少なくとも1つの真の溶媒をブレンド中に有することが望ましいが、かかる手順は、当該結合剤および式Iの化合物の両方を溶解するような「非」溶媒のブレンドをもたらす可能性がある。
【0136】
絶縁または半導体結合剤ならびにそれらの混合物を有する本発明の調製物における使用に特に好ましい溶媒は、キシレン(類)トルエン、テトラリンおよびo−ジクロロベンゼンである。
【0137】
本発明の調製物または層における、結合剤の式Iの化合物に対する割合は、典型的に重量で、20:1〜1:20、好ましくは10:1〜1:10、より好ましくは5:1〜1:5、さらにより好ましくは3:1〜1:3、さらに好ましくは2:1〜1:2そして特に1:1である。驚くべきことに有利に、先行技術から予測されたこととは対照的に、式Iの化合物の当該結合剤における希釈は、電荷移動度に、ほとんどあるいは全く有害な影響を有さないことが見出された。
【0138】
発明にしたがって、有機半導体層調製物における固形分のレベルも、OFETなどの電子デバイスへの向上した移動度値を達せいするための要因となることが更に見出された。調製物の固形分は、一般的に以下のように表される:
【数I】

式中
a=式Iの化合物の質量、b=結合剤の質量、およびc=溶媒の質量。
【0139】
調製物の固形分は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
驚くべきことに有利に、先行技術から予測されたこととは対照的に、当該結合剤における式Iの化合物の希釈は、電荷移動度に、ほとんどあるいは全く影響を有さないことが見出された。
【0140】
コスト(より多くのデバイス/単位面積)、および消費電力を減少するために、近代のマイクロエレクトロニクスにおいて、小さな構造物を生み出すことが望ましい。本発明の層のパターニングは、フォトリソグラフィーまたは電子ビームリソグラフィーによって行ってもよい。
【0141】
電界効果トランジスタなどの有機電子デバイスの液体コーティングは、真空蒸着技術よりも望ましい。本発明の調製物は、いくつもの液体コーティング技術の使用を可能にする。有機半導体層は、最終デバイス構造に組み込まれてもよく、例えば限定無しに、浸漬コーティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、ドクターブレードコーティング、ローラー印刷、逆ローラー印刷、オフセットリトグラフィー印刷、フレキソ印刷、ウェブ印刷、スプレーコーティング、ブラシコーティングまたはパッド印刷などによるる。本発明は、有機半導体層を最終デバイス構造にスピンコーティングする使用に特に適している。
【0142】
選択された本発明の調製物は、制作済みのデバイス基板に、インクジェット印刷またはミクロディスペンシングによって適用してもよい。好ましくは、限定されないが、Aprion、Hitachi-Koki、インクジェット Technology、On Target Technology、Picojet、Spectra、Trident、Xaarなどから供給される産業用圧電印刷ヘッドを有機半導体層を基板へ適用するために使用してもよい。さらに、Brother、Epson、Konica、Seiko Instruments Toshiba TECによって生産されるような半産業用のヘッド、またはMicrodropおよびMicrofabから製造されるような単一ノズルミクロディスペンサを使用してもよい。
【0143】
インクジェット印刷またはミクロディスペンシングによって適用するために、Iの化合物および当該結合剤の混合物は、まず始めに適した溶媒に溶解するべきである。溶媒は上記の要件を満たす必要があり、いかなる有害な影響を選択した印刷ヘッドに有してはならない。さらに、印刷ヘッド内で乾燥する溶液により生じる操作性の問題を防ぐために、溶媒は、>100℃、好ましくは>140℃およびより好ましくは>150℃の沸点を有するべきである。
【0144】
適した溶媒は、置換および非置換キシレン誘導体、ジ−C1〜2−アルキルホルムアミド、置換および非置換アニソール類およびその他のフェノール−エーテル誘導体、置換ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、ピロリジノン類などの置換複素環、置換および非置換N,N−ジ−C1〜2−アルキルアニリン類ならびに他のフッ素かまたは塩化芳香族化合物を含む。
【0145】
インクジェット印刷による本発明の調製物の被着に好ましい溶媒は、1または2以上の置換基によって置換されたベンゼン環を有するベンゼン誘導体を含み、ここで、1または2以上の置換基の炭素原子の合計数が少なくとも3である。例えば、ベンゼン誘導体は、プロピル基または3つのメチル基で置換されても良く、どちらの場合も少なくとも3つの炭素原子が合計で存在する。かかる溶媒は、ジェットの目詰まりおよび噴霧中の化合物の分離を減少または予防する、当該結合剤および式Iの化合物を有する溶媒を含むインクジェット流体の形成を可能にする。
【0146】
溶媒(類)は、以下の例のリストから選択されるものを含んでもよい:ドデシルベンゼン、1−メチル−4−tert−ブチルベンゼン、テルピネオールリモネン、イソジュレン、テルピノレン、シメン、ジエチルベンゼン。溶媒は溶媒混合物であってもよく、これは1以上の溶媒の組合せであって、それぞれの溶媒は、好ましくは>100℃、より好ましくは>140℃の沸点を有する。かかる溶媒(類)はさらに、被着した層におけるフィルム形成を強化し、層における欠陥を減少する。
【0147】
インクジェット流体(すなわち溶媒、結合剤および半導体化合物の混合物)は、好ましくは20℃において、1〜100mPas、より好ましくは1〜50mPas、そして最も好ましくは1〜30mPasの粘度を有する。
本発明における当該結合剤の使用は、コーティング溶液の粘度を、特定の印刷ヘッドの要件に見合うように変えることができる。
【0148】
本発明の半導体層は、典型的に厚くても厚さ1ミクロン(=1μm)であり、必要であればより厚くてもよい。層の正確な厚さは、例えば、層が使用される電子デバイスの要件に依存する。OFETまたはOLEDにおける使用では、層の厚さは、典型的に500nmまたはそれ以下である。
本発明の半導体層において、2以上の式Iの化合物が使用されてもよい。さらに、またはあるいは、半導体層において、2以上の本発明の有機結合剤が使用されてもよい。
【0149】
上述の通り、本発明はさらに有機半導体層の製造方法を提供し、これは(i)1または2以上の式Iの化合物、1または2以上の有機結合剤またはそれらの前駆体および任意に1または2以上の溶媒を含む調製物の液体層を基板に被着すること、ならびに(ii)有機半導体層である固体層を液体層から形成することを含む。
【0150】
当該方法において、固体層を、溶媒を蒸発させる、および/または(存在する場合)当該結合剤樹脂前駆体を当該結合剤樹脂をin situで形成するために反応させることにより形成する。基板は、あらゆる基礎デバイス層、電極または例えばシリコン・ウエハー、ポリマー基板などの個々の基板を含んでもよい。
【0151】
本発明の特定の態様において、当該結合剤は配向可能であってもよく、例えば液晶相を形成することができる。この場合、例えば当該ポリアセン骨格が選択的に電荷輸送の方向にそって配列するように、当該結合剤式Iの化合物の配列を支援する可能性もある。当該結合剤の配列のために適した方法は、ポリマー有機半導体の配列に使用される方法および先行技術、例えばWO 03/007397(Plastic Logic)に記載された方法を含む。
【0152】
本発明の調製物はさらに、1または2以上のさらなる添加物または成分を含むことができ、例えば可塑剤、帯電防止剤、伝導性ドーパント、強化材、界面活性化合物、平滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、固着剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性または非反応性希釈剤、補助剤、着色剤、占領または色素、さらに特に架橋性結合剤が使用される場合、触媒、増感剤、安定剤、阻害剤、連鎖移動剤または共反応単量体類などをである。
適した強化材は、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、カーボンナノチューブなどの繊維である。
【0153】
本発明は、半導体化合物、調製物または層の電子デバイスにおける使用も提供する。調製物は、デバイスおよび装置において、高移動度半導体材料として使用してもよい。調製物を、例えば、半導体層またはフィルムの形状で使用してもよい。したがって、他の観点において、本発明は、電子デバイスにおいて使用するための半導体層を提供し、この層は本発明の調製物を含む。層またはフィルムは、約30ミクロン以下であってもよい。さまざまな電子デバイス適用のために、厚さは約1ミクロン以下であってもよい。層は、例えば電子デバイスの一部において、あらゆる先述の塗料溶液または印刷技術によって被着されてもよい。
【0154】
使用される化合物または調製物は、たとえば層またはフィルムとして、電界効果トランジスタ(FET)において半導体チャネルとして、有機発光ダイオード(OLED)において例えば正孔もしくは電子入射またはトランスポート層もしくはエレクトロルミネセント層として、光検知器、化学物質検出器、光起電力電池(PV)、コンデンサセンサ、論理回路、ディスプレイ、メモリデバイスなどにおいて、使用されてもよい。化合物または調製物は、電子写真(EP)装置において使用されてもよい。化合物または調製物は、好ましくは、コストおよび製造の多用途性における利点を提供するために、前述のデバイスまたは装置において層またはフィルムを形成するためにコートする溶液である。
【0155】
本発明の化合物または調製物の向上した電荷担体移動度は、かかるデバイスまたは装置をより早くおよび/またはより効率よく操作することを可能にする。本発明の化合物、調製物および層は、有機電界効果トランジスタOFETにおける半導体チャネルとしての使用に特に適している。したがって、本発明は、ゲート電極、絶縁(ゲート絶縁体)層、ソース電極、ドレイン電極、およびソース電極とドレイン電極を接続する有機半導体チャネルを含む有機電界効果トランジスタ(OFET)も提供し、ここで、有機半導体チャネルは本発明の有機半導体層を含む。OFETの他の特徴は、当業者によく知られている。
【0156】
OFET デバイスにおける、ゲート、ソースおよびドレイン電極、並びに絶縁および半導体層は、いかなる順序で配列されてもよく、ただし、ソース電極およびドレイン電極は、ゲート電極から、絶縁層によって分離され、ゲート電極 および半導体層は両方とも絶縁層に接続し、ソース電極およびドレイン電極は両方とも半導体層に結合する。
【0157】
本発明のOFETデバイスは、好ましくは以下を含む:
− ソース電極
− ドレイン電極
− ゲート電極
− 半導体層
− 1または2以上のゲート絶縁体層
− 任意に基板
【0158】
ここで、半導体層は好ましくは、ポリアセン化合物、好ましくは式Iの化合物、とても好ましくは式Iのポリアセン化合物を含む調製物、および上記および下記の有機結合剤を含む。
OFETデバイスは、トップゲートデバイスまたはボトムゲートデバイスであり得る。OFETデバイスの適した構造および製造方法は、当業者に知られ、文献、例えばWO 03/052841に記載されている。
【0159】
ゲート絶縁体層は、好ましくはフッ素重合体、例えば、市販のCytop 809M(登録商標)またはCytop 107M(登録商標)(Asahi Glassより)などを含む。好ましくはゲート絶縁体層を、例えばスピンコーティング、ドクターブレード、ワイヤーバーコーティング、スプレーまたは浸漬コーティングもしくは他の周知方法によって、絶縁体材料および1または2以上のフルオロ原子を有する1または2以上の溶媒(フルオロ溶媒)、好ましくはペルフルオロ溶媒を含む調製物から沈殿させる。適したペルフルオロ溶媒は、例えばFC75(登録商標)(Acrosより入手可能、カタログナンバー12380)である。他の適したフッ素重合体およびフルオロ溶媒は、先行技術で知られており、例えばペルフッ素重合体Teflon AF(登録商標)1600または2400(DuPontより)もしくはFluoropel(登録商標)(Cytonixより)またはperfluorosolvent FC 43(登録商標)(Acros、No. 12377)などである。
【0160】
文中明確に記述していないかぎり、本明細書中で使用される複数形の用語は、単数形をふくむものと解され、またその逆も同じである。
この明細書の明細書および請求の範囲を通して、用語「含む(comprise)」および「含む(contain)」ならびにこの用語の変形型、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むが、これらに限定されない」を意味し、他の成分を除外する意図(そして除外する)ものではない。
【0161】
当然の事ながら、本発明の範囲内に含まれる、上記の本発明の態様の変形型は可能である。本明細書に開示されたそれぞれの特徴は、特に明記しない限り、同じまたは似た役割をはたす代替えの特徴に置き換えられてもよい。したがって、特に明記しない限り、開示されたそれぞれの特徴は、同等または似た特性の一般的なシリーズだけの一例である。
【0162】
本明細書に開示される全ての特徴は、少なくともいくつか係る特徴および/または工程が相互排他的であるの組合せを除いて、あらゆる組合せで組み合わされてもよい。特に、本発明の好ましい特徴、本発明の全ての側面に適用可能であり、あらゆる組合せで使用されてもよい。同様に、非本質的な組合せにおいて記載された特徴は、区別して(組み合わせずに)使用されもよい。
【0163】
当然の事ながら、上記のたくさんの特徴、特に好ましい態様は、本発明の態様の一部としてだけでなく、それら自身の権利において発明性がある。現段階で請求されたあらゆる発明に加えて、または代替的に、これらの特徴は、独立した保護が求められてもよい。
【0164】
FET測定
特に明記しない限り、本発明の有機半導体材料の電界効果移動度は、Holland et al, J. Appl. Phys. Vol.75, p.7954 (1994)によって記載された技術を使用してテストされる。
【0165】
テスト電界効果トランジスタを、Pt/Pdソースおよびドレイン電極が、標準技術、例えばシャドウマスクによって、パターン化されたPEN基板を使用して製造する。半導体調製物を不活性ポリマー結合剤樹脂(ここではポリ(アルファ−メチルスチレン、Aldrichカタログナンバー19,184-1))とブレンドされた、有機半導体化合物(ここではそれぞれ、例1の化合物(1)および例2の化合物(2))を用いて製造する。そして、半導体調製物を1部、99部の溶媒(ここではp−キシレン)に溶解し、基板に500rpmで18秒間スピンコートする。完全な乾燥を保証するために、サンプルは20分間、100℃でオーブンに入れられる。
【0166】
絶縁体材料(Cytop 809M(登録商標)、Asahi Glassより入手可能)を半導体にスピンコートし、概しておよそ1μmの厚みを得る。サンプルを、もう一度100℃のオーブンに20分間入れ、絶縁体から溶媒を蒸発させる。ゴールドゲート接触を、シャドウマスクを介する蒸発により、デバイスチャネル領域にわたって確定した。絶縁層のキャパシタンスを測定するために、いくつかのデバイスを製造し、これは非パターン化Pt/Pd基層、FETデバイスにおけるそれと同じ方法で製造された絶縁層、および既知の配置のトップ電極からなる。キャパシタンスを、絶縁体のどちらかの側面の金属に接続した、携帯マルチメーターを使用して測定する。トランジスタの他の定義パラメーターは、互いに向かいあうドレインおよびソース電極の長さ(W=30mm)、およびそれらの互いからの距離(L=130μm)である。
【0167】
トランジスタにかけられる電圧は、ソース電極の電位に関連する。p−タイプゲート材料の場合、負電位がゲートにかけられると、正電荷担体(正孔)が、ゲート誘電体の反対側の半導体に蓄積する(n−チャネルFETに関しては、正電位がかけられる)。これは蓄積モードと呼ばれる。ゲート誘電体の単位面積当たりのキャパシタンスCは、誘発された電荷の量を測定する。負電位VDSがドレインにかけられると、蓄積された担体が、ソース−ドレイン電流IDSをもたらし、これは蓄積された担体の密度、および重要なことにそれらのソース−ドレインチャネルにおける移動度に主に依存する。ドレインおよびソース電極形状、サイズ、距離などの幾何学的要因も、電流に影響する。典型的に、ゲートおよびドレイン電圧の幅は、デバイスの研究の間に読みとられる。ソース−ドレイン電流は方程式(1)に定義される。
【0168】
【数2】

式中、Vはオフセット電圧であり、IΩはゲート電圧に依存せず材料の有限導電率に起因するオーム電流である。その他のパラメーターは上記の通りである。
【0169】
電気測定のために、トランジスタサンプルをサンプルホルダに備え付ける。マイクロプローブ接続を、Karl Suss PH100小型検出ヘッドを使用してゲート、ドレインおよびソース電極に作る。これらをHewlett-Packard 4155Bパラメーターアナライザにつなげる。ドレイン電圧を−5Vに設定し、ゲート電圧を+20から−60Vへ走査し、1V段階で+20Vへ戻す。蓄積において、
【数3】

である場合、ソース−ドレイン電流はVに対して直線的に変化する。したがって、電界効果移動度は、方程式(2)に与えられる、IDS対Vの勾配(S)から計算することができる。
【数4】

【0170】
以下に引用される全ての電界効果移動度は、(特に明記しない限り)この体制を用いて計算されている。電界効果移動度がゲート電圧に関して変化する場合、この値は、蓄積モードにおいて
【数5】

である体制において、最も高いレベルと考えられる。以下に引用される値は、(同じ基板に組み立てられた)いくつかのデバイスで取られた平均である。
【0171】
本発明を、以下の例を参照して、より詳細に説明する。これはただの具体例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0172】
以下のパラメーターを使用する:
mは、電荷担体移動度であり
Wはドレインおよびソース電極の長さであり、
Lはドレインおよびソース電極の距離であり、
DSはソース−ドレイン電流であり、
はゲート誘電体の単位面積当たりのキャパシタンスであり、
はゲート電圧(単位V)であり
DSはソース−ドレイン電圧であり
はオフセット電圧である。
【0173】
特に明記しない限り、上記および下記の、誘電率(ε)、電荷担体移動度(μ)、溶解パラメーター(δ)および粘度(η)などの物理的パラメーターの全ての特定の値は、20°C(+/−1°C)の温度に関するのもである。
【0174】
例1
上記スキーム1〜4に記載されるように、化合物(1)を製造する。
【化31】

【0175】
1,4−アントラセンジオン (1a)
【化32】

【0176】
−0℃に冷却したメタノール(200mL)中のキニザリン(10.00g、42.0mmol、1モル当量)に、水素化ホウ素ナトリウム(6.38g、169.0mmol、4モル当量)を加える。得られた混合物−0℃で2時間撹拌する。次に、0℃で反応混合物に5M塩酸(150mL)の溶液を液滴で加える。沈殿したオレンジ色の固体を濾過し、水で二度洗浄し、真空下で乾燥する。アルミナカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)による精製で、表題化合物を黄色針状結晶(5.9g、68%)として得る。1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ(ppm) 7.08 (s, 2H) 7.68-7.72 (m, 2H) 8.05-8.10 (m, 2H) 8.63 (s, 2H).
【0177】
1,4−ジヒドロキシアントラセン (1b)
【化33】

【0178】
水/ジオキサン(3/2)(250mL)混合物中のヒドロ亜硫酸ナトリウム(16.70g、42.0mmol、1モル当量)溶液を、窒素下で1,4−アントラセンジオン1a(5.00g、24.0mmol、1モル当量)に加える。得られた混合物を室温で3時間撹拌する。水を加え、得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、真空下で乾燥し、表題化合物を黄色粉末(3.10g、61%)として得た。1H NMR (300.13 MHz, THF-d8) δ(ppm) 6.53 (s, 2H) 7.34-7.40 (m, 2H) 7.96-7.99 (m, 2H) 8.65 (s, 2H) 8.70 (s, 2H).
【0179】
3,3’,4,4’−テトラ(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビフェニル (1c)
【化34】

【0180】
100℃に加熱されたTHF(600mL)中の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(6.0g、20.4mmol、1.0モル当量)に、LiAlH(テトラヒドロフラン中1M)(81mL、81.6mmol、2.0モル当量)の溶液を慎重に加える。反応混合物を一晩100℃で撹拌する。0℃に冷却した得られた溶液に、2M水酸化ナトリウム溶液(50mL)、続けて冷水(25mL)およびTHF(50mL)を加える。次に、反応混合物を濾過し、真空下で濃縮する。
【0181】
次に、粗生成物をTHF(20mL)、水(10mL)で洗浄し、真空で乾燥し、白色粉末(3.1g、55%)を得る。必要な場合は、化合物を水における再結晶化によってさらに精製することができ、期待化合物を白色粉末(3.3g、79%)として得ることができる。1H NMR (300.13 MHz, DMSO) δ(ppm) 4.57 (d, J=4.5 Hz, 4H) 4.61 (d, J=4.5 Hz, 4H) 5.09 (t, J=5.2 Hz, 2H) 5.15 (t, J=5.2 Hz, 2H) 7.46 (d, J=8.1 Hz, 2H) 7.52 (dd, J1=8.1, J2=1.8 Hz, 2H) 7.70 (d, J=1.8 Hz, 2H).
【0182】
1,1’−ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボキサルデヒド (1d)
【化35】

【0183】
−78℃に冷却したジクロロメタン(DCM)(2.8mL、5.6mmol、4.4モル当量)中の塩化オキサリル2M溶液に、DCM(10ml)中のジメチルスルホキシド(DMSO)(0.8mL、11.1mmol、8.8モル当量溶液を液滴で加える。この溶液を−78℃で5分間撹拌し、DCM−DMSO(1ml−2ml)の混合物に溶解した3,3’,4,4’−テトラ(ヒドロキシメチル)−1,1’−ビフェニル1c(0.22g、1.3mmol、1.0モル当量)を液滴で加える。この溶液を1時間−78℃で撹拌し、−78℃でトリエチルアミン(6mL)をゆっくりとで加える。反応混合物を10分間−78℃で撹拌し、ゆっくりと室温に温める。氷水(30ml)を反応混合物に加え、DCM(3x30ml)で水層を抽出する。
【0184】
有機画分を混ぜ合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空で濃縮し、褐色油を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−酢酸エチル6/4)による精製により、表題化合物をオフホワイト粉末(90mg、42%)として得る。1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ(ppm) 8.02 (dd, J1=8.1, J2=1.8 Hz, 2H) 8.14 (d, J=8.1 Hz, 2H) 8.28 (d, J=1.8 Hz, 2H) 10.58 (s, 2H) 10.68 (s, 2H).
【0185】
2−(6,13−ペンタセンキノン)−6,13−ペンタセンキノンまたは2,2’−bi−6,13−ペンタセンキノン (1e)
【化36】

【0186】
エタノール(20ml)中の、50℃に温められた1,1’−ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボキサルデヒド1d(50mg、0.38mmol、1モル当量)および1,4−ジヒドロキシアントラセン1b(79mg、1.9mmol、2モル当量)の溶液に、5%含水NaOH(1ml)の溶液を加える。50℃において1時間経過した後、反応混合物を室温へ冷ます。得られた沈殿物を濾過し、水(15ml)、エタノール/水混合物(20ml)およびエタノール(20ml)で洗浄し、表題化合物を黄色粉末(90mg、78%)として得る。
【0187】
2−(6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセニル)−6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンまたは2,2’−ビ−6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)−ペンタセン (1)
【化37】

【0188】
−78℃に冷却したテトラヒドロフラン(THF)(10ml)中のトリイソプロピルシリルアセチレン(0.4mL、1.8mmol、12モル当量)の溶液に、ヘキサン(0.6mL、1.5mmol、10モル当量)中のn−ブチルリチウムの2.5M溶液を液滴で加える。.この溶液を−78℃で45分間撹拌し、2−(6,13−ペンタセンキノン)−6,13−ペンタセンキノンまたは2,2’−ビ−6,13−ペンタセンキノン1e(90mg、0.15mmol、1モル当量)を加える。反応混合物を温め、室温で一晩撹拌する。
【0189】
SnCl(1ml)で飽和した10%含水HClを室温で加え、反応混合物を50℃で45分間撹拌する。冷却の後、NaCOの2M水溶液の溶液(1ml)を反応混合物に加え、得られた溶液をセリットと共に5分間撹拌する。この溶液をセライトで濾過し、真空下で濃縮し、濃色固形物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−DCM80/20)による精製、それに続くアセトン洗浄により、表題化合物を灰青色粉末(3mg、2%)として得る。1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ(ppm) 1.32-1.43 (m, 42H) 7.41-7.44 (m, 4H) 7.92-8.01 (m, 6H) 8.15 (d, J=9.0 Hz, 2H) 9.32-9.35 (m, 6H) 9.41 (s, 2H).
【0190】
例2
化合物(2)を下記の通り製造する。
【化38】

【0191】
4,4’−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(ベンゼン−1,2−ジメタノール)
【化39】

【0192】
−78℃に冷却したTHF(60mL)中のLiAlH(THF中1M)(22.5mL、23.0mmol、2.0モル当量)の溶液に、THF(25ml)中の4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(5.0g、11.2mmol、1モル当量)の溶液を液滴で加える。反応混合物を室温まで温め、70℃で2時間撹拌する。0℃に冷却した得られた溶液に、2M水酸化ナトリウム溶液(20mL)、次に冷水(25mL)およびTHF(50mL)を加える。次に反応混合物をTHF(3x50mL)でさらに抽出する。有機画分を混ぜ合わせ、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、濾過し、真空中で濃縮し、白色粉末(4.16g、87%)を得る。1H NMR (300.13 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 4.54 (d, J=5.40Hz, 8H) 5.17-5.23 (m, 4H) 7.15 (d, J=8.10Hz, 4H) 7.46-7.49 (m, 2H) 19F NMR (282.38 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) - 62.34 (s).
【0193】
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフトアルデヒド
【化40】

【0194】
−78℃に冷却したDCM(50mL)中の塩化オキサリル(3.5mL、41mmol、4.4モル当量)の溶液に、DCM(10ml)中のジメチルスルホキシド(DMSO)(5.9mL、83mmol、8.8モル当量)を液滴で加える。この溶液を−78℃で10分間撹拌し、DCM−DMSO(1ml−4ml)の混合物に溶解した4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(ベンゼン−1,2−ジメタノール)(4.00g、9.3mmol、1.0モル当量)を液滴で加える。この溶液を30分間−78℃で撹拌し、トリエチルアミン(30mL)をゆっくりと−78℃で加える。
【0195】
反応混合物を10分間−78℃で撹拌し、ゆっくりと室温へ温める。氷水(50ml)を反応混合物に加え、DCM(3x50ml)で水層を抽出する。有機画分を混ぜ合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮し、自然に結晶化する褐色油を得る。ヘキサン洗浄で精製し、表題化合物を淡褐色固形物(2.8g、71%)として得る。1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ(ppm) 7.80 (d, J=8.0Hz, 2H) 7.96 (s, 2H) 8.05 (d, J=8.0Hz, 2H) 10.51 (s, 2H) 10.57 (s, 2H) 19F NMR (282.38 MHz, DMSO) δ(ppm) - 62.34 (s).
【0196】
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(6,13−ペンタセンキノン)
【化41】

【0197】
無水ピリジン(80mL)を窒素下で4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフトアルデヒド(2.00g、4.8mmol、1モル当量)および1,4−ジヒドロキシアントラセン(2.02g、96.0mmol、2モル当量)に加える。得られた溶液を120℃に加熱する。30分後、黄色沈殿物が形成し始め、反応混合物を16時間120℃で撹拌し完了する。黄色沈殿物を濾過し、メタノール、メタノール/水(1:1)混合物、アセトンで洗浄し、真空オーブンで乾燥し、表題化合物を黄色粉末(2.35g、64%)として得る。
【0198】
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン) (2)
【化42】

【0199】
−78℃に冷却した無水テトラヒドロフラン(THF)(50ml)中のトリイソプロピルシリルアセチレン(1.75mL、7.8mmol、12モル当量)の溶液に、ヘキサン中のn−ブチルリチウム(2.9mL、7.1mmol、11モル当量)の溶液を液滴で加える。
その溶液を−78℃で45分間撹拌し、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(6,13−ペンタセンキノン)(0.5g、0.65mmol、1モル当量)を加える。反応混合物を温め、一晩室温で撹拌する。SnCl(10ml)で飽和した10%含水HClを室温で加え、反応混合物を50℃で45分間撹拌する。
【0200】
冷却の後、NaCOの2M水溶液の溶液(10ml)を加える。セライトで溶液を濾過し、真空下で濃縮し、濃色固形物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−DCM 80/20)による精製、続けてのメタノール洗浄により、表題化合物を青色粉末(0.3g、32%)として得る。1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ(ppm)1.26-1.44 (m, 84H) 7.33 (d, J=9.30 Hz, 2H) 7.44-7.48 (m, 4H) 7.99-8.03 (m, 6H) 8.24 (s, 2H) 9.31 (s, 2H) 9.34 (s, 4H) 9.41 (s, 2H).
【0201】
例3
下記のように、化合物(3)を製造する。
【化43】

【0202】
4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(ベンゼン−1,2−ジメタノール)
【化44】

【0203】
−78℃に冷却した、THF(50mL)中のLiAlH(THF中で1M)(38mL、38.0mmol、4.0モル当量)に、THF(25ml)中の4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)(5.0g、9.6mmol、1モル当量)の溶液を加える。反応混合物を室温に温め、70℃で2時間撹拌する。0℃に冷却したこの得られた溶液に2M水酸化ナトリウム溶液(40mL)、続けて冷水(25mL)およびTHF(50mL)を加える。次に、反応混合物をさらにTHF(3x50mL)で抽出する。有機画分を混ぜ合わせ、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、淡褐色油を得る。
【0204】
粗製油をアセトンに溶解し、オフホワイトの沈殿物が形成し始めるまでEtOを加える。濾過の後、有機層を真空中で濃縮し、自然に結晶化する淡褐色油を得る。DCM洗浄による精製により、表題化合物を白色粉末(3.48g、72%)として得る。1H NMR (300.13 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 1.63 (s, 6H) 4.47 (d, J=5.40Hz, 4H) 4.52 (d, J=5.40Hz, 4H) 5.03 (t, J=5.40Hz, 2H) 5.12 (t, J=5.40 Hz, 2H) 6.83-6.91 (m, 6H) 7.06 (d, J=2.40 Hz, 2H) 7.20-7.25 (m, 4H) 7.34 (d, J=8.40 Hz, 2H).
【0205】
4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フトアルデヒド)
【化45】

【0206】
−78℃に冷却したDCM(50mL)中の塩化オキサリル(2.2mL、26mmol、4.4モル当量)の溶液に、DCM(10ml)中のジメチルスルホキシド(DMSO)(3.7mL、52mmol、8.8モル当量)を液滴で加える。その溶液を−78℃で10分間撹拌し、DCM−DMSO(1ml−4ml)混合物に溶解した4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(ベンゼン−1,2−ジメタノール)(3.00g、6mmol、1.0モル当量)を液滴で加える。この溶液を30分間−78℃で撹拌し、トリエチルアミン(30mL)をゆっくりと−78℃で加える。
【0207】
反応混合物を10分間−78℃で撹拌し、ゆっくりと室温まで温める。氷水(50ml)を反応混合物に加え、DCM(3x50ml)で水層を抽出する。有機画分を混ぜ合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、自然に結晶化する褐色油を得る。ヘキサン洗浄で精製して、表題化合物を淡褐色固形物(2.10g、71%)として得る。1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ(ppm) 1.75 (s, 6H) 7.00-7.05 (m, 4H) 7.29-7.34 (m, 6H) 7.49 (d, J=2.70 Hz, 2H) 7.95 (d, J=8.70 Hz, 2H) 10.37 (s, 2H) 10.58 (s, 2H).
【0208】
4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(6,13−ペンタセンキノン)
【化46】

【0209】
無水ピリジン(25mL)を窒素下で4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フトアルデヒド)(0.50g、1.0mmol、1モル当量)および1,4−ジヒドロキシアントラセン(0.43g、2.0mmol、2モル当量)に加える。得られた溶液を120℃まで加熱する。30分後、黄色沈殿物が形成し始め、反応混合物を16時間120℃で撹拌し完了させる。黄色沈殿物を濾過し、メタノール、メタノール/水(1:1)混合物、アセトンで洗浄し、真空オーブンで乾燥して、表題化合物を黄色粉末(0.49g、57%)として得る。
【0210】
4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン) (3)
【化47】

【0211】
−78℃に冷却した無水ジエチルエテルオキシド(oxyde)(EtO)(50ml)中のトリイソプロピルシリルアセチレン(1.53mL、6.8mmol、12 モル当量)に、ヘキサン中のn−ブチルリチウム(2.5mL、6.2mmol、11モル当量)の2.5M溶液を加える。この溶液を−78℃で45分間撹拌し、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(6,13−ペンタセンキノン)(0.48g、0.6mmol、1モル当量)を加える。反応混合物を温め、一晩室温で撹拌する。SnCl(5ml)で飽和した10%含水HCl溶液を室温で加え、反応混合物を50℃で45分間撹拌する。
【0212】
冷却の後、NaCOの2M水溶液の溶液(5ml)を加える。この溶液をセライトで濾過し、真空下で濃縮して、濃色固形物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−DCM 70/30)による精製、その後のアセトン洗浄により、表題化合物を青色粉末(0.55g、64%)として得る。1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ(ppm) 1.21-1.43 (m, 84H) 1.79 (s, 6H) 7.11-7.14 (m, 4H) 7.28-7.31 (m, 4H) 7.36-7.44 (m, 8H) 7.95-9.03 (m, 6H) 9.09 (s, 2H) 9.25 (s, 2H) 9.29 (s, 4H).
【0213】
例4
下記のように化合物(4)を製造する。
【化48】

【0214】
4,4’−オキシビス(ベンゼン−1,2−ジメタノール)
【化49】

【0215】
−78℃に冷却したTHF(50mL)中のLiAlH(THF中で1M)(64mL、64.0mmol、4.0モル当量)の溶液に、THF(20ml)中の4,4’−オキシジフタル酸無水物(5.0g、9.6mmol、1モル当量)の溶液を液滴で加える。反応混合物を室温まで温め、次に70℃で1時間撹拌する。0℃に冷却した得られた溶液に、2M水酸化ナトリウム溶液(40mL)、続けて冷水(25mL)およびTHF(50mL)を加える。次に反応混合物をTHF(3x50mL)でさらに抽出する。
【0216】
有機画分を混ぜ合わせ、塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、濾過し、真空中で乾燥して、淡褐色油を得る。粗製油をアセトンに溶解し、オフホワイトの沈殿物が形成し始めるまでEtOを加える。濾過の後、有機層を真空中で濃縮して、自然に結晶化する淡褐色油を得る。洗浄による精製により、表題化合物を淡黄色粉末(2.75g、59%)として得る。1H NMR (300.13 MHz, DMSO-d6) δ(ppm) 4.47 (d, J=5.40Hz, 4H) 4.53 (d, J=5.40Hz, 4H) 5.03 (t, J=5.40Hz, 2H) 5.12 (t, J=5.40 Hz, 2H) 6.84 (dd, J1=2.70Hz, J2=8.40Hz, 2H) 7.04 (d, J=2.70Hz, 2H) 7.34 (d, J=8.40Hz, 2H).
【0217】
4,4’−オキシジフトアルデヒド
【化50】

【0218】
−78℃に冷却したDCM(50mL)中の塩化オキサリル(3.4mL、40mmol、4.4モル当量)の溶液に、DCM(10ml)中のジメチルスルホキシド(DMSO)(5.8mL、81mmol、8.8モル当量)の溶液を液滴で加える。この溶液をv−78℃で10分間撹拌し、DCM−DMSO(1ml−4ml)の混合物に溶解した4,4’−オキシビス(ベンゼン−1,2−ジメタノール)(2.68g、9mmol、1.0モル当量)を液滴で加える。この溶液を30分間−78℃で撹拌し、トリエチルアミン(30mL)をゆっくりと−78℃で加える。
【0219】
反応混合物を10分間−78℃で撹拌し、ゆっくりと室温まで温める。氷水(50ml)を反応混合物に加え、DCM(3x50ml)で水層を抽出する。有機画分を混ぜ合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、ガラス質の化合物(1.75g、67%)を得る。1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ(ppm) 7.43 (dd, J1=2.40Hz, J2=8.40Hz, 2H) 8.06 (d, J=2.40Hz, 2H) 8.06 (d, J=8.40Hz, 2H) 10.44 (s, 2H) 10.61 (s, 2H).
【0220】
4,4’−オキシビス(6,13−ペンタセンキノン)
【化51】

【0221】
無水ピリジン(75mL)を窒素下で、4,4’−オキシジフトアルデヒド(1.75g、6.2mmol、1モル当量)および1,4−ジヒドロキシアントラセン(2.60g、12.3mmol、2モル当量)に加える。得られた溶液を120℃まで加熱する。30分後、黄色い沈殿物が形成し始め、反応物を16時間120℃で撹拌し完了する。黄色沈殿物を濾過し、メタノール、メタノール/水(1:1)混合物、アセトンで洗浄し、真空オーブンで乾燥して、表題化合物を黄色粉末(1.49g、38%)として得る。
【0222】
4,4’−オキシビス(6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン) (4)
【化52】

【0223】
−78℃に冷却した、無水ジエチルエーテル(EtO)(50ml)中のトリイソプロピルシリルアセチレン(2.14mL、9.5mmol、12モル当量)に、ヘキサン中のn−ブチルリチウム(3.5mL、8.7mmol、11 モル当量)の2.5M溶液を液滴で加える。この溶液を−78℃で45分間撹拌し、4,4’−オキシビス(6,13−ペンタセンキノン)(0.5g、0.79mmol、1モル当量)を加える。反応混合物を温め、一晩室温で撹拌する。SnCl(5ml)で飽和した10%含水HClの溶液を室温で加え、反応混合物を50℃で45分間撹拌する。
【0224】
冷却の後、NaCOの2M水溶液の溶液(5ml)を反応混合物に加える。この溶液をセライトで濾過し、真空下で濃縮して、濃色固形物を得る。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン−DCM 70/30)による精製、続くメタノール洗浄により、表題化合物を青色粉末(0.52g、51%)として得る。1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ(ppm) 1.24-1.43 (m, 84H) 7.38-7.47 (m, 6H) 7.55 (s, 2H) 7.98-8.02 (m, 4H) 8.10 (d, J=9.6 Hz, 2H) 9.20 (s, 2H) 9.30 (s, 2H) 9.33 (s, 2H) 9.37 (s, 2H).
【0225】
例5−FET測定
化合物(1)〜(4)を含む有機半導体材料の電界効果移動度を上記の通りテストした。例1〜4の電流−電圧および移動度−電圧特性は、図1〜4にそれぞれ示される。正および逆走査は、デバイスの低い電流ヒステリシスを示す。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】例1の材料の電流-電圧特性および移動度-電圧特性を示す。化合物1(純粋なTIPS二量体)+ポリアルファメチルスチレン結合剤(1:1)クロロベンゼン中に1%固形物。平均移動度=2.9x10−2cmVs。
【図2】例2の材料の電流-電圧特性および移動度-電圧特性を示す。化合物2(TIPS非共役ペンタセン二量体)+ポリビニルケイ皮酸結合剤(1:1)o−DCB中に1%の固形物。平均移動度=4.0x10−5cmVs。
【図3】例3の材料の電流-電圧特性および移動度-電圧特性を示す。化合物3(TIPS非共役ペンタセン二量体)+ポリアルファメチルスチレン結合剤(1:1)m−キシレン中に4%固形物。平均移動度=2.5x10−5cmVs。
【図4】例4の材料の電流-電圧特性および移動度-電圧特性を示す。化合物4(TIPSペンタセン二量体エーテル)+ポリアルファメチルスチレン結合剤(1:1)m−キシレン中に4%固形物。平均移動度=5.0x10−5cmVs。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

式中、
aは、複数存在する場合は互いに独立して、0、1、2または3であり、
bは、複数存在する場合は互いに独立して、0、1、2または3であり、
nは、≧2の整数、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、
1〜14は、複数存在する場合は互いに独立して、H、ハロゲン、−CN、−NC、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NH、−NR00、−SH、−SR、−SOH、−SO、−OH、−NO、−CF、−SF、任意に置換されたシリル、または任意に置換され、任意に1または2以上のヘテロ原子を含む、1〜40個のC原子を有するカルビルもしくはヒドロカルビル、から選択される同一または異なる基を示し、
1〜4およびR8〜11は、隣接するポリアセンユニットとの結合を示すこともでき、ここで前記結合は、単結合または任意にスペーサー基を含み、
Xは、ハロゲンであり、
およびR00は、互いに独立して、H、または、任意に1または2以上のヘテロ原子を含む、任意に置換されたカルビルもしくはヒドロカルビル基であり、
ポリアセンの隣接する環の位置に存在するか、隣接するポリアセンユニットに存在する、2または3以上の置換基R〜R14は、4〜40個のC原子を有する、さらなる飽和、不飽和または芳香族環系を任意に構成し、これは単環または多環であり、ポリアセンに縮合し、−O−、−S−、=N−および−N(R)−から選択される1または2以上の基によって任意に介入され、1または2以上の同一または異なる基Rで置換され、
ポリアセン骨格またはR1〜14によって形成された環における、1または2以上の炭素原子は、任意にN、P、As、O、S、SeおよびTeから選択されるヘテロ原子に任意に置換され、
ここで、nポリアセンユニットは互いに同一または異なり、
ポリアセンユニットは、R1〜4の1つおよび/またはR8〜11の1つを介してその隣接するポリアセンユニット(単数または複数)と結合され、および/または
ポリアセンユニットは任意に、R1〜4の2つおよび/またはR8〜11の2つを介してその隣接するポリアセンユニット(単数または複数)に縮合する
で表わされる化合物。
【請求項2】
nが2または3であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
以下の式:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

式中、
a、b、R1〜14は、式Iにおいて定義した通りである、
1’〜14’およびR1”〜14”は、互いに独立して、Rの意味の1つを有し、
Z、Z’は、互いに独立して、単結合またはスペーサー基であり、
Y、Y’は、互いに独立して、−(CH−、−CR15=CR16−、−O−、−S−、−CR16=N−または−N(R)−であり、
15、R16は、互いに独立して、Rの意味の1つを有し、
は、式Iにおいて定義した通りであり、
Kは、1、2または3である
から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
aが0または1であり、bが1であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
とR13の両方および/またはR6’とR13’の両方および/またはR6”とR13”の両方が、−C≡C−MR’R”R’”または−C≡C−MR’R””を示し、ここで
Mは、SiまたはGeであり、
R’、R”およびR’”は、H、C〜C40−アルキル基、C〜C40−アリール基、C〜C40−アリールアルキル基、C〜C40−アルコキシ基、またはC〜C40−アリールアルキルオキシ基から選択される同一または異なる基であり、
R””は、M原子と共に干渉シリルアルキル基を形成し、
ここで全てのこれらの基は任意に置換される
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
とR10の両方および/またはRとRの両方および/またはR2’とR3’の両方および/またはR2”とR3”の両方が、それぞれのポリアセンユニットと共に、5−、6−または7員芳香族環または芳香族複素環、好ましくは、ピリジン、ピリミジン、チオフェン、セレノフェン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾールおよびオキサジアゾールから選択され、特に好ましくは以下の基
【化6】

またはそれらの鏡像(ここで、アスタリスクは、それぞれの基がポリアセンに縮合する位置を示す)から選択される、を形成することを特徴とする、請求項1〜5いずれかに記載の化合物。
【請求項7】
以下の式:
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

式中、Y、R’、R”およびR’”は、請求項2および4において定義した通りであり、
2a,3a,9a,10aは、請求項1で与えられたRの意味の1つを有し、
AおよびBは互いに独立して、4〜40個のC原子を有する、不飽和または芳香族環系であって、これは単環または多環であり、ポリアセンに縮合し、−O−、−S−、=N−および−N(R)−から選択される1または2以上の基によって任意に介入され、1または2以上の同一または異なる基Rで置換され、
は式Iにおいて定義した通りであり、
そして該フェニレン環は任意に、請求項1における定義の、1または2以上の基Rで置換される
から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の化合物であって、
スペーサー基または基ZおよびZ’が、
a) F、Cl、Br、IまたはCNによって、任意に単置換または多置換された、1〜20個のC原子を持つ、直鎖、分枝鎖または環状アルキレン、ここで1または2以上の隣接しないCH基は、いずれの場合も互いに独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−または−C≡C−によって、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないように、任意に置き換えられ、
b) 式Iに定義された、1または2以上の基Rによって、任意に単置換または多置換された、1〜40個のC原子を持つ、単環式または多環式アリールまたはヘテロアリール、
c) −O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CX=CX−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、ここでRおよびR00は、式Iで与えられた意味を有し、XおよびXは、H、F、ClおよびCNから選択される、
d) a)、b)およびc)から選択される1または2以上の基の組合せ、
から選択されることを特徴とする、前記化合物。
【請求項9】
ZおよびZ’が、単結合を示すことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
YおよびY’が、互いに独立して、−O−、−S−または−N(R)−であることを特徴とする、請求項1〜9に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の、1または2以上の化合物、1または2以上のポリマー類またはその重合体もしくは前駆体、および任意で1または2以上の溶媒を含む調製物。
【請求項12】
有機結合剤が、1,000Hzで3.3以下の誘電率εを有することを特徴とする、請求項11に記載の調製物。
【請求項13】
スチレン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンおよびブタジエンの1または2以上を含有するコポリマー、またはそれらの前駆体から選択される、1または2以上の結合剤を含むことを特徴とする、請求項11または12に記載の調製物。
【請求項14】
ジクロロメタン、トリクロロメタン、モノクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、アニソール、モルホリン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、1,4−ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラリン、デカリン、インダンおよび/またはこれらの混合物から選択される1または2以上の有機溶媒を含むことを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の調製物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の、1または2以上の化合物または調製物を含む、有機半導体層。
【請求項16】
請求項15に記載の有機半導体層の製造方法であって、以下の工程
(i)請求項10〜14のいずれかに記載の調製物の液体層を基板に蒸着すること
(ii)該液体層から有機半導体層である固体層を形成すること
(iii)任意に、基板から該層を取り除くこと
を含む、前記方法。
【請求項17】
電子、光学もしくは電子光学部品またはデバイスにおける、請求項1〜16のいずれかに記載の化合物、調製物または層の使用。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれかに記載の、1または2以上の化合物、調製物または層を含む電子、光学もしくは電子光学部品またはデバイス。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれかに記載の、1または2以上の化合物、調製物または層を含む、有機電界効果トランジスタ(OFET)、薄膜トランジスタ(TFT)、集積回路(IC)の素子、無線認識(RFID)タグ、有機発光ダイオード(OLED)、電子発光ディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、バックライト、光検知器、センサ、論理回路、記憶素子、コンデンサ、光起電力(PV)電池、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、伝導性基板またはパターン、光伝導体、電子写真用素子。
【請求項20】
有機半導体層を含み、さらにゲート絶縁体層を含むOFETデバイスであって、該ゲート絶縁体層がフッ素重合体を含むおよび/または該ゲート絶縁体層が1または2以上のフルオロ溶媒を含む調製物から蒸着する、前記OFETデバイス。
【請求項21】
有機半導体層が、半導体化合物および有機結合剤を含む調製物を含む、請求項20に記載のOFETデバイス。
【請求項22】
有機半導体層が、ポリアセン化合物を半導体化合物として含む、請求項20または21に記載のOFETデバイス。
【請求項23】
有機半導体層が、請求項15に定義されたものである、請求項20〜22のいずれかに記載のOFETデバイス。
【請求項24】
トップゲートOFETデバイスである、請求項18〜23のいずれかに記載の電子デバイスまたはOFETデバイス。
【請求項25】
ボトムゲートOFETデバイスである、請求項18〜23に記載の電子デバイスまたはOFETデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−545631(P2008−545631A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511583(P2008−511583)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003889
【国際公開番号】WO2006/125504
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】