説明

カバー部材およびカートリッジ

【課題】 カートリッジの把手部に現像剤が付着することを抑制する。
【解決手段】 現像剤担持体2aの露出部を覆うカバー部材30aが、カートリッジ5aに取り外し可能に設けられる。このカバー部材30aには、カートリッジ5aに近づく方向に突出し、把手部31aと現像剤担持体2aの露出部の間を遮る突出部30a7が設けられる。また、カバー部材30aには突出部30a7よりも現像剤担持体2aの露出部に近い位置に、カバー部材30aを貫通する通気孔30a6が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の装置本体に着脱可能なカートリッジ、およびカートリッジに装着するカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなど、電子写真画像形成プロセスを用いた画像形成装置においては、感光体ドラムなどの像担持体上に形成した静電潜像を、現像手段により現像することでトナー像として可視化している。このような画像形成装置において、現像手段を、カートリッジ(現像カートリッジ)として画像形成装置本体に着脱可能にしたものが知られている。現像手段をカートリッジ化することで、ユーザー自身が現像手段の交換を行うことができる。
【0003】
現像カートリッジにおいて、像担持体上の静電潜像を現像するための現像剤を担持する現像ローラの一部が、現像カートリッジの枠体から露出するものがある。このような現像カートリッジにおいては、運搬時に現像ローラを保護するため、現像ローラの露出部を覆うカバー部材が設けられることがある(特許文献1参照)。
【0004】
なお現像ローラを覆うカバー部材に関して、関連する構成が特許文献2に記載されている。特許文献2に記載された構成では、カバー部材が発泡ウレタンからなる封止部材を有する。この封止部材は、カバー部材が現像ローラの露出部を覆う際に、現像ローラ露出部の周囲と、カバー部材との間に生じる空間を埋めることで、現像ローラの露出部から現像剤が周囲に漏れ出ないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−264757号公報
【特許文献2】特開2000−019839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現像カートリッジを運搬する際に、現像カートリッジに衝撃が加わると、現像剤が現像カートリッジの内部から漏れ出る場合がある。また、現像カートリッジの使用初期において、現像ローラに現像剤を供給する現像剤供給ローラと、現像ローラとの間に生じる摩擦を低減するため、あらかじめ現像ローラや現像剤供給ローラに現像剤を塗布することがある。このとき、現像カートリッジの運搬時に、現像ローラの露出部から現像剤が零れ落ちる場合がある。このようにして零れ落ちた現像剤が、現像カートリッジと現像カートリッジに装着されたカバー部材の間を移動し、現像カートリッジの把手部に移動してしまう可能性がある。把手部に現像剤が付着してしまうとユーザーが手を汚してしまう可能性がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載されるように、現像ローラ周囲を囲むシール部材をカバー部材に設けると、部品点数が増えてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、現像剤担持体を覆うカバー部材を備えたカートリッジを運搬する際に、把手部に現像剤が付着することを、簡単な構成で抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の代表的な構成は、静電潜像を現像するための現像剤を担持する現像剤担持体と、把持される把手部と、を有するカートリッジに装着されて、前記カートリッジの枠体から露出する前記現像剤担持体の露出部を覆うカバー部材において、前記カバー部材が前記カートリッジに装着された際に、前記カートリッジに近づく方向に突出し、前記把手部と前記露出部の間を遮る突出部と、前記カバー部材が前記カートリッジに装着された際に、前記突出部よりも前記露出部に近い位置に設けられた、前記カバー部材を貫通する通気孔と、を有するカバー部材である。
【発明の効果】
【0010】
現像剤担持体を覆うカバー部材を備えたカートリッジにおいて、運搬時に、把手部に現像剤が付着することを簡単な構成で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】カバー部材が取り付けられた状態の現像カートリッジの概略断面図
【図2】画像形成装置の一例を示す概略断面図
【図3】画像形成時の画像形成装置の一例を示す概略断面図
【図4】現像カートリッジの外観斜視図
【図5】現像カートリッジの概略断面図
【図6】現像ローラとトナー供給ローラの概略図
【図7】現像カートリッジとカバー部材を示す概略図
【図8】カバー部材を示す概略斜視図
【図9】現像カートリッジの把手部の拡大図を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に複数の現像カートリッジを搭載可能なロータリーを備えた、所謂、ロータリー方式のカラー画像形成装置を用いて、本発明の実施形態について図面を用いて詳しく説明する。
【0013】
(画像形成装置の全体構成)
最初に、この画像形成装置の画像形成動作について図2を用いて説明する。本発明の実施の形態に係る画像形成装置11は、4色フルカラーのレーザービームプリンタであり、図2は、その概略構成を示す断面図である。
【0014】
図2に示すように、画像形成装置11は、像担持体としての感光体ドラム3aを有する。感光体ドラム3aの周囲には、帯電手段3bと、露光手段12と、現像手段と、クリーニング手段3cとが配置される。帯電手段3bは感光体ドラム3aを一様に帯電し、露光手段12は感光体ドラム3a上にレーザー光を照射して静電潜像を形成する。現像手段は感光体ドラム3a上に形成された静電潜像を現像し、クリーニング手段3cは感光体ドラム3a上の残留トナーを除去する。ここで本実施形態における現像手段は、感光体ドラム3a上の静電潜像を、対応する色の現像剤(トナー)で現像して顕像化するイエロー現像カートリッジ5a、マゼンタ現像カートリッジ5b、シアン現像カートリッジ5c、ブラック現像カートリッジ5dからなる。これら現像カートリッジ5a、5b、5c、5dは、画像形成装置11の装置本体(画像形成装置本体)に対して着脱可能なカートリッジであって、それぞれ現像剤を担持する現像剤担持体として現像ローラ2a、2b、2c、2dを有している。各現像カートリッジ5a、5b、5c、5dは画像形成装置11の装置本体に回転自在に設けられたロータリー101に保持される。また本実施例では、感光体ドラム3aと帯電手段3bとクリーニング手段3cが一体となってドラムカートリッジ3を形成し、このドラムカートリッジ3は画像形成装置11の装置本体に対して着脱可能となっている。
【0015】
次にロータリー101が各現像カートリッジを保持する構成について説明する。図4に示すようにイエロー現像カートリッジ5aには被係止部6aが設けられ、図2に示すように、ロータリー101には現像カートリッジ係止部材103aが設けられる。イエロー現像カートリッジ5aの被係止部6aが、現像カートリッジ係止部材103aと係合することにより、イエロー現像カートリッジ5aは図2中に示す矢印D方向に移動することが規制され、ロータリー101に支持されることになる。マゼンタ現像カートリッジ5b、シアン現像カートリッジ5c、ブラック現像カートリッジ5dの構成もイエロー現像カートリッジ5aと同様であり、イエロー現像カートリッジ5a同様にロータリー101に支持されている。
【0016】
画像形成の動作を以下に示す。まず、感光体ドラム3aを図2中矢印A方向に回転させる。感光体ドラム3aの回転と同期して、中間転写ベルト13を図2中矢印C方向に回転させる。そして、この感光体ドラム3aの表面を帯電手段3bによって均一に帯電するとともに、露光手段12によって光照射を行い、感光体ドラム3a上に静電潜像を形成する。
【0017】
この静電潜像が形成されると、ロータリー101は、ロータリー回転軸101aを中心にして画像形成装置11に設けられた駆動伝達機構22により図2中の矢印B方向に回転する。これによって、イエロー現像カートリッジ5aを、図3に示すように、感光体ドラム3aと対向する現像位置に配置する。
【0018】
そして、感光体ドラム3aに形成された静電潜像にイエロートナーが付着するように、画像形成装置11は、感光体ドラム3aと現像ローラ2aに電位差を設ける。これによって、感光体ドラム3aに形成された静電潜像にイエロートナーが付着して、静電潜像が現像される。即ち、感光体ドラム3aにイエロートナー像が形成される。
【0019】
その後、画像形成装置11は中間転写ベルト13の内側に配置された1次転写ローラ14にトナーと逆極性の電圧を印加して、感光体ドラム3a上のイエローのトナー像を中間転写ベルト13上に1次転写する。
【0020】
上述のようにしてイエロートナー像の1次転写が終了すると、ロータリー101が駆動伝達機構22から駆動を受けさらに矢印B方向へ回転移動する。そして、マゼンタ現像カートリッジ5b、シアン現像カートリッジ5c、ブラック現像カートリッジ5dが順次、感光体ドラム3aに対向する現像位置に位置決めされる。イエローの場合と同様にして、マゼンダ、シアン、そしてブラックの各色について、静電潜像の形成、現像、1次転写が順次行われ、中間転写ベルト13上に4色のトナー像を重ね合わされる。
【0021】
この間、図2に示すように、2次転写ローラ15は、中間転写ベルト13とは非接触状態にある。また、中間転写ベルト13のクリーニングユニット16も中間転写ベルト13とは接触しない場所に位置する。
【0022】
一方、記録媒体であるシート紙110は、画像形成装置11の下部に設けられた給紙カセット17に積載収納されており、給紙ローラ18によって給紙カセット17から一枚ずつ分離給送され、搬送ローラ19に送られる。搬送ローラ19は、シート紙110を中間転写ベルト13と2次転写ローラ15の間に送り出す。ここで、図3に示すように、2次転写ローラ15が中間転写ベルト13に圧接された状態になる。
【0023】
更に、2次転写ローラ15にはトナーと逆極性の電圧が印加されており、前述の中間転写ベルト13上に重ね合わせた4色のトナー像は、搬送されてきたシート紙110の表面に2次転写されていく。
【0024】
トナー像が転写されたシート紙110は、定着器20に送られる。定着器20においては、シート紙110に熱と圧力を加え、トナー像がシート紙110上に定着される。その後、シート紙110は、定着器20から画像形成装置11の外部の排紙部21へ排出される。これによりシート紙110に画像が形成される。
【0025】
(現像カートリッジの説明)
イエロー現像カートリッジ5a、マゼンタ現像カートリッジ5b、シアン現像カートリッジ5c、ブラック現像カートリッジ5dの構成は全て同様である。よって、イエロー現像カートリッジ5aを例にとり図5、図6を用いて、本実施形態における現像カートリッジの構成を説明する。なお、これ以降、イエロー現像カートリッジ5aを単にカートリッジ5aと呼ぶ。
【0026】
図5(a)、図5(b)は、カートリッジ5aの断面図である。現像ローラ2aの回転軸と直交し、かつ現像ローラ2aの長手方向(回転軸方向)において、カートリッジ5aのほぼ中央部を通る断面を示してある。図6(a)は、本実施例の現像ローラ2aの概略図、図6(b)は、本実施例のトナー供給ローラ8aの概略図、図6(c)は、カートリッジ5aが現像ローラ2aを支持する概略図である。
なおこれ以降の説明において、現像ローラ2aの長手方向を単に長手方向と呼ぶ場合がある。
【0027】
現像剤担持体である現像ローラ2aは、図6(a)に示すようにゴムローラ部2a1と剛体軸2a2とから構成される。剛体軸2a2は、現像ローラ2aの回転軸方向にゴムローラ部2a1を貫通し、両端はゴムロール部2a1から突出した突出部2a2L、2a2Rを形成する。
【0028】
トナー供給ローラ8aは、現像ローラ2aに現像剤(トナー)を供給する現像剤供給部材であり、図6(b)に示すようにスポンジローラ8a1と剛体軸8a2とから構成される。剛体軸8a2は、トナー供給ローラ8aの回転軸方向にスポンジローラ部8a1を貫通し、両端はスポンジローラ8a1から突出した突出部8a2L、8a2Rを形成する。
【0029】
現像カートリッジ5aは、図6(c)に示すように、現像ローラ2aの突出部2a2L、2a2Rをそれぞれサイド部材6L、6サイド部材Rにより、現像ローラ2aとトナー供給ローラ8aを回転自在に保持している。
【0030】
カートリッジ5aの枠体である現像容器7aは、トナーを収容するトナー収容室7a1と、現像ローラ2aやトナー供給ローラ8aを支持する現像室7a2に分離され、両者はトナー供給開口7a3により繋がっている。
【0031】
ここで現像容器7aに対して現像ローラ2aのゴムローラ外周2a3は一部露出しており、ユーザーが手で触れてしまう恐れがある。そのため、カートリッジ5aには、ユーザーの手元に届くまでの未使用状態において、現像ローラ2aの露出部全域を覆うカバー部材30aが設けられている(図5(a)参照)。このカバー部材30aは、カートリッジ5aを画像形成装置11の装置本体に装着する際にはカートリッジ5aから取り外される。現像カートリッジ5aが装着されることで、図3に示すように、現像ローラ2aのゴムローラ外周2a3は感光体ドラム3aと当接する。
【0032】
また本実施例では、カートリッジ5aが未使用状態においては、図5(a)に示すように、トナー供給開口7a3には、トナー収容室7a1と現像室7a2を分離するための、フィルム状のトナーシール9aが熱溶着などの方法により現像容器7aに固定されている。使用前にこのトナーシール9aを取り除くことで、トナー収容室7a1内のトナー10aは、図5(b)に示すように、現像室7a2内に供給できる。
【0033】
ここで、トナー供給ローラ8aのスポンジローラ部8a1は、現像ローラ2aに対して押しつぶされた状態で配置されている。つまり、トナー供給ローラ8aは、トナー供給ローラ8aのスポンジローラ部8a1が、現像ローラ2aのゴムローラ部2a1に接触し、トナー供給ローラ外周8a3に対しある一定の変形量を持ったまま現像ローラ2aに当接している。そして、トナー供給ローラ8aと、現像ローラ2aは、ある一定の当接圧を持ったまま、トナー供給ローラ8aは、図5(b)中矢印E方向に回転し、現像ローラ2aは、図5(b)中矢印F方向に回転する。
【0034】
ここで、カートリッジ5aを使用する際に、トナーシール9aを取り除いても、トナー収容室7aに収容されたトナー10aは、すぐには現像ローラ2aと、トナー供給ローラ8aの間に移動しない。この状態で、現像カートリッジ5aを使用すると、現像ローラ2aとトナー供給ローラ8aは、互いの面が逆方向に移動するカウンター方向に回転し摺擦するため、摩擦負荷が大きくなりトナー供給ローラ8aのスポンジローラ部8a1が破断する可能性がある。そのため、現像ローラ2aとトナー供給ローラ8aには、互いの摩擦負荷を低減するためにあらかじめトナーが塗布されている。なお、現像ローラ2aとトナー供給ローラ8aの両方にトナーを塗布することが望ましいが、どちらか一方にトナーを塗布してもよい。
【0035】
現像室7a2内のトナー10aがトナー供給ローラ8aに供給されると、トナー供給ローラ8aが回転することにより、現像ローラ2aにトナー10aが供給される。その後、現像ローラ2aに当接する現像ブレード1aにより、現像ローラ2aにトナー10aの薄層が形成される。本実施例において現像ブレード1aは現像ローラ2aに担持されるトナーの層厚を規制する現像剤規制部材であって、本実施例では、現像ローラ2aに当接する金属製の薄板部材と、薄板部材を支持し、現像容器7aに固定する板金(固定部材)からなる。そして、現像ローラ2aと感光体ドラム3aとが対向する位置でトナーは現像される。その後に、トナー供給ローラ8aによって、現像ローラ2a上に残されたトナー10aが除去されるとともに、新しいトナーが供給される。現像ローラ2aには、感光体ドラム3aと電位差を設けるために、画像形成装置11の装置本体側から電圧が供給されている。トナー供給ローラ8aにも、画像形成装置11の装置本体側から電圧が供給されている。
【0036】
(カバー部材の構成)
カバー部材30aとカートリッジ5aの係合の構成を図1、図7、図8、図9を用いて説明する。
図1は、長手方向(図7(a)の矢印Rで示される方向)において、カートリッジ5aのほぼ中央部を通り、長手方向と直交する方向の断面図である。なお長手方向において、現像容器7aの中央部には把手部31aが設けられている。把手部31aは長手方向に延びる壁面状の突起であり、ユーザーが現像カートリッジ5aを把持するために用いられる。図7(a)は、カートリッジ5aにカバー部材30aが取り付けられた状態を示す斜視図である。図7(b)は、カバー部材30aが現像カートリッジ5aから外れた状態を示す斜視図である。図8は、カバー部材30aの概略斜視図である。図9は、カートリッジ5aの把手部31a付近の拡大図である。
【0037】
カバー部材30aは、図7(b)に示すように、長手方向中央付近に設けた係合部30a1、30a2、30a3、30a4の4つの係合部でカートリッジ5aと係合する。この時、カバー部材30aの係合部30a1、30a2は把手部31aに設けられた被係合部31a1と係合し、係合部30a3、30a4は現像容器7aに設けられた被係合部7a4と係合する。これによりカバー部材30aがカートリッジ5aに取り付けられ、現像ローラ2aの露出部を覆って保護する(図7(a))。またこの時、カバー部材30aは把手部31aを覆った状態となる。
【0038】
次にカバー部材30aについて説明する。カバー部材30aの構成は図1、図7(a)を用いて説明する。カバー部材30aには、図1、図7(a)、図8に示すように、カバー部材30aを貫通するように通気孔30a6が設けられている。通気孔30a6は、カバー部材30aが現像カートリッジ5aに装着されたとき、カバー部材30aの内面30a5と現像ブレード1aとの距離が最も狭くなる位置に配置してある。すなわち本実施例では通気孔30a6は、現像ブレード1aと距離Lを空けて向き合った位置に配置されている。また、通気孔30a6は、長手方向に、把手部31aの長手幅と略同一の範囲に複数配置されている。
【0039】
ここで輸送の際に、カートリッジ5aに大きい衝撃が与えられると、現像ローラ2aやトナー供給ローラ8aに塗布されたトナーが、現像ローラ2aの露出部や、現像ブレード1aと現像ローラ2aの隙間から、図1に示す空間Nへ飛散する可能性がある。なお空間Nは、カバー部材30aの内面と、カートリッジ5aとに挟まれた空間である。このときカートリッジ5aに取り付けられたカバー部材30aにも衝撃が加わり、カートリッジ5aに対向する内面30a5が、カートリッジ5aに対して矢印Y、矢印W方向(図9参照)に移動する場合がある。内面30a5が矢印W方向に移動すると、空間Nは大きくなる。この状態から内面30a5が矢印Y方向に移動すると、空間Nが大きく縮小されることになるため、空間N内において気圧が高まり、飛散したトナーが空気と共に、空間Nから押し出されようとする。つまり、飛散したトナーは、空気と共に、現像ローラ2aの露出部から把手部31aに近づく方向(図1中矢印U1で示した方向)に移動する。
【0040】
しかし本実施例では、トナー移動方向U1において、現像ローラ2aの露出部と把手部31aの間に位置するように、カバー部材30aを貫通する通気孔30a6を設けてある。これにより、トナーを運ぶ空気を通気孔30a6からカバー部材30aの外側、すなわち図中の矢印U2で示される方向に逃がし、トナーが把手部31aへ移動することを防ぐことができる。
【0041】
特に、本実施例では、カバー部材30aの内面30a5と、現像ブレード1aとの距離が最も短くなる場所に通気孔30a6を配置することで、通気孔30a6の周辺で気圧が高くなるようにしている。そのため通気孔30a6から積極的に空気をカバー部材30aの外に逃がすことができ、空気と共にトナーをカバー部材30aの外に排出しやすくしている。
【0042】
さらに、カバー部材30aには、図1、図7(c)、図9に示すように、カートリッジ5aに近づく方向に突出し、長手方向に延びる壁面状の突出部(以下、リブ壁と呼ぶ)30a7が設けられている。リブ壁30a7は、トナー飛散経路Uの通気孔30a6よりも現像ローラ2aの露出部から遠く、かつ把手部31aに近い位置に設けられ、カバー部材30aがカートリッジ5aに装着されたとき、現像ローラ2aと把手部31aの間を遮るように配置されている。リブ壁30a7は、現像カートリッジ5aに近づく方向に突出し、通気孔30a6から排出できなかったトナーが、把手部31aに近づく方向に移動することを抑制する。つまり把手部31aにトナーが付着することを抑える。
【0043】
本実施例では把手部31aにトナーが付着することをより確実に抑制するため、リブ壁30a7の長手幅を、把手部31aの長手幅と略同一に設定した。現像カートリッジ5aにカバー部材30aを取り付けた際に、現像容器7aと干渉しなければ、リブ壁30a7の長手幅を把手部31aの長手幅よりも長くしてもよい。
【0044】
さらに、カバー部材30aが現像カートリッジ5aに装着されたとき、前述した通気孔30a6と現像ブレード1aとの距離Lよりも、リブ壁30a7の高さHが大きくなるように設定した。通気孔30a6とカートリッジ5aとの距離に対して、リブ壁30a7の高さを大きくすることにより、通気孔30a6から排出しきれなかったトナーを、リブ壁30a7で遮りやすくなり、トナーが把手部31aに移動することを抑制しやすくなる。
【0045】
なお、本実施例においてリブ壁30a7は、現像容器7aに支持された現像ブレード1aに向けて突出する位置に設けられている。しかし、現像カートリッジ5aに近づき、現像ローラ2aの露出部と、現像ブレード1aの間を遮る位置であれば、ほかの位置に設けてもよい。すなわち、リブ壁30a7を現像容器7aまたは、現像容器7aに支持される現像ブレード1a以外の部材に近づけて突出させても良い。このときも、通気孔30aとカートリッジ5aとの距離、すなわち通気孔30aから現像容器7aまたは現像容器7aに支持される部材までの最短距離に対して、リブ壁30a7の高さを大きくするとよい。
【0046】
以上まとめると、本実施例のカートリッジでは、現像剤担持体である現像ローラ2aの露出部を覆うカバー部材30aが、カートリッジ5aに取り外し可能に装着される。このカバー部材30aには、カートリッジ5aに近づく方向に突出し、把手部31aと現像ローラ2aの露出部の間を遮る突出部(リブ壁)30a7が設けられる。また、カバー部材30aにはリブ壁30a7よりも現像ローラ2aの露出部に近い位置に、カバー部材30aを貫通する通気孔30a6が設けられる。カバー30aはリブ壁30a7によって、トナーを運ぶ空気の流れを塞ぎ、さらにこの空気を通気孔30a6から外に逃がすことで、トナーが把手部31aにまで移動することを抑制する。これにより、カートリッジ5aの内部や現像ローラ2aの露出部から飛散したトナーが、カートリッジの輸送時の衝撃で把手部31aに付着することを抑制することができる。
【0047】
なお、本実施例では、カバー部材30aは、カートリッジ5aの把手部31aを覆う形状をしている。カートリッジ5aとカバー部材30aの間に、現像ローラ2aの露出部から把手部31aに至るトナーの移動経路が生じるため、上記構成をとることによって、トナーの移動経路を遮ることは特に有効である。しかし、把手部31aがカバー部材30aから露出していた場合でも、カートリッジ5aとカバー部材30aの間にトナーを運ぶ空気の流れが生じた結果、トナーが把手部31aまで運ばれる可能性がある。よって上記構成を取ることで、トナーの移動経路を遮ることは有効になる。
【0048】
さらに本実施例によればトナーの付着を抑制する為に、把手部31aを現像ローラ2aから遠ざける必要がなくなり、把手部31aと現像ローラ2aを近づけることでカートリッジの小型化を図ることができる。
【0049】
尚、前述した実施の形態では、ロータリー式を採用した画像形成装置に用いられるカラー印刷用の現像カートリッジの場合を示した。しかしこれに限定する必要はなくインライン式を採用した画像形成装置に用いられる現像カートリッジや、モノクロ印刷用の現像カートリッジにも本発明は適用できる。また、像担持体および現像剤担持体を備えるプロセスカートリッジにも適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1a 現像ブレード
2a 現像ローラ
5a イエロー現像カートリッジ
8a トナー供給ローラ
30a6 通気孔
30a7 リブ壁
31a 把手部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を現像するための現像剤を担持する現像剤担持体と、把持される把手部と、を有するカートリッジに装着されて、前記カートリッジの枠体から露出する前記現像剤担持体の露出部を覆うカバー部材において、
前記カバー部材が前記カートリッジに装着された際に、前記カートリッジに近づく方向に突出し、前記把手部と前記露出部の間を遮る突出部と、
前記カバー部材が前記カートリッジに装着された際に、前記突出部よりも前記露出部に近い位置に設けられた、前記カバー部材を貫通する通気孔と、
を有するカバー部材。
【請求項2】
前記カバー部材が前記カートリッジに装着された際に、前記通気孔から前記カートリッジまでの距離よりも、前記突出部の高さが大きいことを特徴とする請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
前記突出部は前記現像剤担持体の長手方向に延びることを特徴とする請求項1又は2に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記通気孔として、前記現像剤担持体の長手方向に並んだ複数の通気孔を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカバー部材。
【請求項5】
前記カバー部材は前記カートリッジに装着された際に、前記把手部を覆うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカバー部材。
【請求項6】
前記把手部と係合する係合部を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカバー部材。
【請求項7】
静電潜像を現像するための現像剤を担持する現像剤担持体と、
把持される把手部と、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカバー部材と、
を有することを特徴とするカートリッジ。
【請求項8】
前記現像剤担持体に当接して、現像剤を供給する現像剤供給部材を有し、
前記カートリッジが未使用の状態で、前記現像剤担持体と前記現像剤供給部材の少なくとも一方に現像剤が塗布されることを特徴とする請求項7に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記現像剤担持体に担持される現像剤の層厚を規制する現像剤規制部材を有し、
前記突出部は、前記現像剤規制部材に近づく方向に突出することを特徴とする請求項7又は8に記載のカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−29733(P2013−29733A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166759(P2011−166759)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】