説明

カム位相可変装置のリードバルブ

【課題】CTAのリードバルブにおいて、材料の圧延方向に対する強度の方向
依存性を考慮することで、強度ばらつきを低減すると共に、材料強度を最大限利用する。
【解決手段】CTA63における油路57に複数設けられ、当該油路の開閉に供される複数のリードバルブ91,92が、所定の圧延方向に沿って圧延加工が施された1つのバルブプレート26に形成され、それぞれの基端91c,92cと自由端91a,92aとを結ぶ長手方向が平行である、または当該長手方向が30°以下の交差角度をもって交差するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のエンジンに設けられるカム位相可変装置の油路の開閉に供されるリードバルブに関する。
【0002】
ガソリンエンジンを始め、ディーゼルエンジンやHCCI(Homogeneous Charge Compression Ignition:予混合圧縮着火)エンジンにおいては、出力および燃費の向上や有害排出ガス成分の低減等を実現すべく、運転状態に応じて吸排気バルブのリフト量や開弁タイミングを変化させる可変動弁装置を搭載したものが普及している。可変動弁装置としては、バルブリフトを段階的あるいは無段階に可変制御する可変バルブリフト装置(Variable valve Lift Control device:以下、VLCと記す)が従来より存在する他、カム位相(開弁タイミング)を連続的に可変制御するバルブタイミングコントロール装置(Variable Timing Control device:以下、VTCと記す)も知られている。
【0003】
VTCとしては、高速運転に向いた油圧アクチュエータ(油圧駆動型位相可変機構(Oil Pressure Actuated phaser):以下、OPAと記す)と、低速運転に向いたカムトルクアクチュエータ(カムトルク駆動型位相可変機構(Cam Torque Actuated phaser):以下、CTAと記す)とを内装し、カムシャフトの端部に設置されるベーン式のものが存在し、CTAには、その進角室または遅角室とスプールバルブとを連通する油路の開閉に供される一対のチェックバルブ(リードバルブ)がバルブプレートに設けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許平2005−147153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなCTAのリードバルブは、一般にステンレス鋼の板材等(圧延材料)で形成され、この種の板材の強度は圧延方向に対する方向依存性を有する。しかしながら、上記従来技術では、リードバルブの製造に際し、板材の圧延方向は全く考慮されていなかった。つまり、上記従来技術では、バルブプレートに設けられた2つのリードバルブは、互いの長手方向が大きく異なっている(すなわち、互いの長手方向の交わり角が約60°と大きく設定されている)ため、それらの間で強度のバラツキが大きいという問題があった。特に、CTAで使用されるリードバルブは開閉動作の頻度も多く高い信頼性が要求されるため、そのような強度のバラツキは極力小さくすることが望ましい。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、カム位相可変装置における油路に複数設けられるリードバルブであって、板材の圧延方向に依存する強度変化の影響を抑制することにより、相互の強度のバラツキを効果的に低減することを可能としたリードバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、カム位相可変装置(63)における油路(57)に複数設けられ、当該油路の開閉に供されるリードバルブ(91,92)であって、前記複数のリードバルブは、所定の圧延方向に沿って圧延加工が施された1つの板材(26)に形成され、それぞれの基端(91c,92c)と自由端(91a,92a)とを結ぶ長手方向が平行である、または当該長手方向が30°以下の交差角度をもって交差する構成とする。
【0008】
また、第2の発明として、前記複数のリードバルブは、前記長手方向が前記圧延方向と平行である、または前記長手方向の交差角の二等分線が前記圧延方向と略一致する2つのリードバルブである構成とすることができる。
【0009】
また、第3の発明として、カム位相可変装置における油路に複数設けられ、当該油路の開閉に供されるリードバルブであって、前記複数のリードバルブは、所定の圧延方向に沿って圧延加工が施された板材からそれぞれ形成され、それぞれの基端と自由端とを結ぶ長手方向と前記圧延方向との交差角が略等しい構成とすることができる。
【0010】
また、第4の発明として、前記長手方向と前記圧延方向とが略一致する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記第1の発明によれば、カム位相可変装置において複数のリードバルブを1つの板材に設ける場合に、それぞれのリードバルブの長手方向を平行とするか、または当該長手方向を30°以下の交差角度をもって交差させて、板材の圧延方向に依存する強度変化の影響を抑制することにより、リードバルブ間の強度のバラツキを効果的に低減することができるという優れた効果を奏する。
また、上記第2の発明によれば、2つのリードバルブの長手方向を圧延方向と平行とするか、または長手方向の交差角の二等分線を圧延方向と略一致させることにより、圧延方向に対する方向依存性を有する板材の強度を最大限に利用する(すなわち、各リードバルブの強度を増大させる)ことが可能となる。
また、上記第3の発明によれば、カム位相可変装置において複数のリードバルブを設ける場合に、リードバルブの長手方向と圧延方向との交差角を略等しくして、板材の圧延方向に依存する強度変化の影響を抑制することにより、リードバルブ間の強度のバラツキを効果的に低減することができる。
また、上記第4の発明によれば、リードバルブの長手方向と板材の圧延方向とを略一致させることにより、圧延方向に対する方向依存性を有する板材の強度を最大限に利用する(すなわち、各リードバルブの強度を増大させる)ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係るエンジンの要部透視斜視図
【図2】第1実施形態に係るVTCアクチュエータの分解斜視図
【図3】第1実施形態に係るVTCアクチュエータの概略構成図
【図4】第1実施形態に係るバルブプレート(リードバルブ)の平面図
【図5】第1実施形態に係るVTCアクチュエータの進角作動を示す模式図
【図6】第1実施形態に係るリードバルブの長手方向の圧延方向に対する角度と強度との関係を示す図
【図7】第1実施形態に係る2つのリードバルブの交差角θにおける二等分線の圧延方向に対する交差角度と、最大強度差に対する相互の強度差の割合との関係を示す図
【図8】第2実施形態に係るリードバルブの平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪第1実施形態の構成≫
<全体構成>
図1に示すエンジンEは、自動車に搭載されるDOHC4バルブ型の4サイクル直列4気筒ガソリンエンジンであり、そのシリンダヘッド1に、各気筒2本ずつの吸気バルブ2および排気バルブ3、これら吸排気バルブ2,3を駆動する吸気カムシャフト4および排気カムシャフト5を備えている。両カムシャフト4,5は、クランクスプロケット6、カムチェーン7、吸気カムスプロケット8、排気カムスプロケット9を介し、クランクシャフト10の1/2の回転速度をもって回転駆動される。また、クランクシャフト10は、コネクティングロッド11を介してピストン12に連結されるとともに、チェーン13を介して斜め下方に設置されたオイルポンプ14を駆動する。
【0014】
シリンダヘッド1およびシリンダブロック15には、後述するVTCアクチュエータ20,21にオイルポンプ14からの作動油(エンジンオイル)を供給するための作動油供給油路16が形成されている。また、シリンダヘッド1にはノーマルオープン型の電磁シャットバルブ17が装着されており、この電磁シャットバルブ17が作動することによってVTCアクチュエータ20,21に対する作動油の供給形態が切り換えられる。
【0015】
吸気カムシャフト4の前端には吸気側VTCアクチュエータ20が取り付けられ、排気カムシャフト5の前端には排気側VTCアクチュエータ21が取り付けられている。吸気カムシャフト4の後端には吸気側カム角センサ18が設置され、排気カムシャフト5の後端には排気側カム角センサ19が設置されている。吸気カムシャフト4と吸気バルブ2との間には吸気側VLC機構75が介装され、排気カムシャフト5と排気バルブ3との間には排気側VLC機構76が介装されている。
【0016】
また、自動車には、各種センサ(両カム角センサ18,19、図示しないアクセルセンサ、吸気量センサ、クランク角センサ等)の出力情報に基づき、エンジンEに付設された各種被制御装置(電磁シャットバルブ17、両VTCアクチュエータ20,21、両VLC機構75,76、図示しない燃料噴射弁や点火コイル等)の制御量を決定して駆動電流を出力するエンジンECU70が設置されている。
【0017】
<VTCアクチュエータ>
図2に示すように、排気側VTCアクチュエータ21は、クランクシャフトに同期して回転するとともに、外周に排気カムスプロケット9が形成されたハウジング22、ハウジング22内に回転自在に保持されるとともに、排気カムシャフト5の前端にその後端面が締結されてこれと一体に回転するロータ23、ハウジング22の前面を覆うフロントプレート24、ハウジング22の後面を覆うバックプレート25、フロントプレート24の内側に配置され、リードバルブ91a,92a(図4参照)が形成されたバルブプレート26、バルブプレート26をロータ23に固定するバルブプレートカバー27、ハウジング22とロータ23とを遅角方向に相対回転させるバイアススプリング28、排気カムシャフト5およびロータ23の軸心に設置されたスプールバルブ29、エンジンECU70によって制御されることによってスプールバルブ29を駆動するリニアソレノイド31、ロータ23に保持されたロックピン33、ロックピン33をバックプレート25側に付勢するロックピンスプリング34、ロータ23に保持されたバイパスバルブ36、バイパスバルブ36をフロントプレート24側に付勢するバイパスバルブスプリング37等を構成要素としている。なお、スプールバルブ29は、排気カムシャフト5やロータ23の軸心に保持されたバルブスリーブ38と、バルブスリーブ38に摺動自在に内嵌したスプール39と、スプール39をリニアソレノイド31側に付勢するリターンスプリング40とから構成されている。
【0018】
図3に示すように、ロータ23の外周には第1ベーン41と第2ベーン42と第3ベーン43とが立設される一方、ハウジング22の内周にはこれらベーン41〜43を、所定角度をもって(すなわち、最進角位置と最遅角位置との間で)相対回転可能に収容する第1〜第3ベーン室45〜47が形成されている。本実施形態の場合、第1ベーン41および第1ベーン室45は第1OPA61の構成要素であり、第2ベーン42および第2ベーン室46は第2OPA62の構成要素であり、第3ベーン43および第3ベーン室47はCTA63の構成要素である。
【0019】
第1,第2ベーン室45,46は、第1,第2ベーン41,42により、OPA側進角室45a,46aとOPA側遅角室45b,46bとにそれぞれ区画されている。スプールバルブ29からの作動油は、OPA側進角油路51,52を介してOPA側進角室45a,46aに供給されるとともに、OPA側遅角油路53,54を介してOPA側遅角室45b,46bに供給される。また、第3ベーン室47は、第3ベーン43により、CTA側進角室47aとCTA側遅角室47bとに区画されている。CTA側進角室47aとCTA側遅角室47bとは、それぞれ第1CTA油路55と第2CTA油路56とを介してスプールバルブ29に連通する。なお、OPA側進角油路51,52は、後述するように、作動油排出路81〜83を介して電磁シャットバルブ17に接続している。
【0020】
第1ベーン41にはロックピン33とロックピンスプリング34(図2参照)とが収容されており、ロックピン解除油路への作動油の供給が行われない場合にのみ、ロックピンスプリング34のばね力によってロックピン33の先端がバックプレート25に形成されたロック孔25aに嵌入する。なお、ロック孔25aは、ロータ23がハウジング22に対して最遅角位相となった際に、ロックピン33が嵌入する位置に穿設されている。
【0021】
<リードバルブ>
図4に示すように、ステンレス薄板鋼板(冷間圧延ステンレス鋼板)からなる略円板状のバルブプレート26には、その中央部を刳り抜くようにして同一形状(左右対称形状)を有する一対のリードバルブ91,92が形成されている。リードバルブ91,92は、自由端に設けられた円形の弁体91a,92aにより油路を閉鎖する。また、油路の開放時には、弁体91a,92aを支持する弁体支持片91b,92bが基端91c,92cを固定支点として弾性変形することにより、弁体91a,92aが開放側に変位(すなわち、図4の紙面に対して略垂直方向に変位)する。
【0022】
リードバルブ91,92は、それぞれの弁体91a,92aと基端91c,92cとを結ぶ長手方向(図4中の一点鎖線X1,X2)が、互いに平行になるように配置されている。後述するように、リードバルブ91,92の長手方向は、必ずしも互いに平行である必要はなく、その場合、30°以下の交差角度をもって交差することが好ましい。また、ここでは、リードバルブ91,92の長手方向がバルブプレート26の圧延方向(図4中の矢印Rを参照)と平行となっているが、リードバルブ91,92の長手方向が互いに交差する場合には、その長手方向の交差角θの二等分線(図4中の一点鎖線X3)がバルブプレート26の圧延方向と略一致するように配置される。なお、本明細書におけるリードバルブの「長手方向」は、その基端と自由端とを結ぶ方向であり、リードバルブの寸法の長い方向を厳密に意味するものではない。
【0023】
≪第1実施形態の作用≫
以下、図5〜図7を更に参照して、本実施形態の作用を説明する。エンジンEの通常運転時において、エンジンECU70は、両VTCアクチュエータ20,21の通常運転時制御を所定の制御インターバル(例えば、10ms)をもって繰り返し実行する。通常運転時制御を開始すると、エンジンECU70は、上述した各種運転情報に基づき両カムシャフト4,5の目標カム位相を決定した後、目標カム位相を実現するための駆動電流を両VTCアクチュエータ20,21のリニアソレノイド31に対して適宜出力する。また、エンジンECU70は、両カム角センサ18,19の出力信号に基づき、両カムシャフト4,5に対するカム位相のフィードバック制御を実行する。
【0024】
例えば、エンジンEの運転中に排気カムシャフト5を進角させる場合、エンジンECU70は、図5に示すように、リニアソレノイド31によってスプール39を進角ポジション(図中、右方)に移動させる。すると、オイルポンプ14から作動油供給油路16を経由して供給された作動油は、スプール39およびOPA側進角油路51,52を介してOPA側進角室45a,46aに流入し、第1,第2ベーン41,42を進角側に相対回転させる。なお、OPA側遅角室45b,46b内の作動油は、OPA側遅角油路53,54を介してスプール39の左方から外部に排出される。
【0025】
一方、CTA63では、進角ポジションに移動したスプール39を介して、第2CTA油路56と中央油路57とが連通する。そして、排気カムシャフト5に進角側のカムトルクが作用し、ハウジング22に対してロータ23が進角側に相対回転するごとにリードバルブ92の弁体92aが開き、CTA側遅角室47b内の作動油がCTA側進角室47aに流入して第3ベーン43を進角側に相対回転させる。また、遅角側のカムトルクが作用した場合には、リードバルブ91,92の弁体91a,92aは閉じ、作動油の移動は起こらずにカム位相が保持される。
【0026】
これら第1,第2OPA61,62およびCTA63の作動により、ロータ23はハウジング22に対して図中時計回りに相対回転し、排気カムシャフト5が進角する。なお、CTA63への作動油の供給は、エンジンEの運転開始時に、CTA63が満たされるまで行われる。また、エンジンEの通常運転時には電磁シャットバルブ17に駆動電流が供給されず(作動油供給油路16a,16bが連通され)、オイルポンプ14からの作動油によって、保持されるとともに、バイパスバルブ36がフロントプレート24側に移動して連通油路43c,43d間での作動油の流通を遮断する。
【0027】
上記リードバルブ91,92を構成するステンレス薄板鋼板の強度(引張強さ、降伏点等)は、圧延加工時の圧延方向に対する方向依存性が高い。したがって、圧延方向に対するリードバルブ91,92の長手方向の交差角度θ(以下、リードバルブの圧延角度と記す)とリードバルブ91,92の強度との関係は、例えば、図6に示すものとなる。図6では、リードバルブ91,92の強度は、リードバルブの圧延角度=0degの場合(すなわち、弾性変形時の弁体支持片91b,92bの曲げ軸が圧延方向と垂直に交わる場合)に最大値をとり、その圧延角度が大きくなるにつれて減少し、リードバルブの圧延角度=90degの場合に最小値をとる。
【0028】
また、圧延方向に対するリードバルブの交差角θの二等分線の交差角度(以下、リードバルブの交差角二等分線の圧延角度と記す)と図6に示した最大強度差に対するリードバルブ91,92間の強度差の割合(すなわち、図6における最大値からの強度の減少度合)との関係は、例えば、図7に示すものとなる。図7では、リードバルブ91,92の互いの長手方向の複数の交差角度(以下、リードバルブの交差角度と記す)10°〜50°についての関係が示されている。
【0029】
ここで、最大強度差に対するリードバルブ91,92間の強度差の割合は、リードバルブの交差角度が大きくなるについれて増大する傾向にある。また、リードバルブの各交差角度10°〜50に関し、最大強度差に対するリードバルブ91,92間の強度差の割合は、リードバルブの交差角二等分線の圧延角度=0degの場合に最小値をとり、その圧延角度が大きくなるにつれて増大して最大値をとり、その後、減少して最小値に向かう傾向を示す。したがって、最大強度差に対するリードバルブ91,92間の強度差の割合を良好に維持する(強度差の割合を50%以下とする)ためには、リードバルブの交差角度を30°以下とする必要がある。
【0030】
このように、上記CTA63では、複数(ここでは、2つ)のリードバルブ91,92を1つのバルブプレート26に設ける場合に、それぞれのリードバルブ91,92の長手方向を平行とするか、または当該長手方向を30°以下の交差角度をもって交差させる構成としたため、バルブプレート26の圧延方向に依存する強度変化の影響を抑制することが可能となり、リードバルブ91,92間の強度のバラツキを効果的に低減することができる。
【0031】
また、上記CTA63では、2つのリードバルブ91,92の長手方向を圧延方向と平行とする、または長手方向の交差角の二等分線を圧延方向と一致させる構成としたため、圧延方向に対する方向依存性を有する板材の強度を最大限に利用する(すなわち、各リードバルブ91,92の強度を増大させる)ことが可能となる。
【0032】
≪第2実施形態≫
本発明の第2実施形態に係るCTAでは、図8に示すように、リードバルブ91,92は、上述のような1つのバルブプレート26に一体に形成される構成ではなく、別部材として設けられる。なお、図8では、第1実施形態の場合と同様の構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、第2実施形態において、以下で特に言及しない事項については、第1実施形態の場合と同様とする。
【0033】
図8に示すように、リードバルブ91,92は、バルブプレートカバー27(図2参照)によって固定される代わりに、ボルト孔91d,92dを介してロータ23に対してボルト締結される。リードバルブ91,92は、ステンレス薄板鋼板(板材)から互いに別部材ととして形成されるため、第1実施形態の場合のようにリードバルブの交差角度を考慮する必要はない。リードバルブ91,92を製造する際には、各リードバルブ91,92の圧延角度が等しくなるようにする。これにより、ステンレス薄板鋼板の圧延方向に依存するリードバルブ91,92の強度変化の影響を抑制することが可能となり、リードバルブ91,92間の強度のバラツキを効果的に低減することができる。特に、リードバルブ91,92の圧延角度をともにゼロとする(すなわち、長手方向と圧延方向とを一致させる)構成とすれば、圧延方向に対する方向依存性を有するステンレス薄板鋼板の強度を最大限に利用する(すなわち、各リードバルブ91,92の強度を増大させる)ことが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1 シリンダヘッド
4 吸気カムシャフト
5 排気カムシャフト
8 吸気カムスプロケット
9 排気カムスプロケット
10 クランクシャフト
15 シリンダブロック
16 作動油供給油路
17 電磁シャットバルブ
20 VTCアクチュエータ
21 排気側VTCアクチュエータ
22 ハウジング
23 ロータ
25a ロック孔
26 バルブプレート(板材)
29 スプールバルブ
33 ロックピン
36 バイパスバルブ
41 第1ベーン
42 第2ベーン
43 第3ベーン
45 第1ベーン室
45a OPA側進角室
45b OPA側遅角室
46 第2ベーン室
46a OPA側進角室
46b OPA側遅角室
47 第3ベーン室
47a CTA側進角室
47b CTA側遅角室
48 内側開口
49 外側開口
55 第1CTA油路
56 第2CTA油路
57 中央油路
63 CTA(カム位相可変装置)
65 外周面
66 内周面
70 エンジンECU
81 作動油排出路
91 リードバルブ
91a 弁体(自由端)
91c 基端
92 リードバルブ
92a 弁体(自由端)
92c 基端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カム位相可変装置における油路に複数設けられ、当該油路の開閉に供されるリードバルブであって、
前記複数のリードバルブは、所定の圧延方向に沿って圧延加工が施された1つの板材に形成され、それぞれの基端と自由端とを結ぶ長手方向が平行である、または当該長手方向が30°以下の交差角度をもって交差することを特徴とするカム位相可変装置のリードバルブ。
【請求項2】
前記複数のリードバルブは、前記長手方向が前記圧延方向と平行である、または前記長手方向の交差角の二等分線が前記圧延方向と略一致する2つのリードバルブであることを特徴とする、請求項1に記載のカム位相可変装置のリードバルブ。
【請求項3】
カム位相可変装置における油路に複数設けられ、当該油路の開閉に供されるリードバルブであって、
前記複数のリードバルブは、所定の圧延方向に沿って圧延加工が施された板材からそれぞれ形成され、それぞれの基端と自由端とを結ぶ長手方向と前記圧延方向との交差角が略等しいことを特徴とするカム位相可変装置のリードバルブ。
【請求項4】
前記長手方向と前記圧延方向とが略一致することを特徴とする、請求項3に記載のカム位相可変装置のリードバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−255576(P2010−255576A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108236(P2009−108236)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】