説明

カーテンエアバッグ装置を備えた車両の後部構造

【課題】車両の後部構造を提供することである。
【解決手段】本発明による、車両の後部構造は、ルーフトリムの側縁部から後部ピラーの所定高さ部位まで、サイドウインドガラスを覆うように膨張展開されるカーテンエアバッグを備えるカーテンエアバッグ装置と、前記サイドウインドガラスの上縁部及びこれに連続する後縁部の車幅方向内方において、前記ルーフトリムの側縁部及び後部ピラートリムの前縁部に延びる、前記ルーフトリムよりも硬質な合成樹脂で作られた単一のルーフサイドトリムとを有し、該ルーフサイドトリムが、膨張展開する前記カーテンエアバッグにより車室に向って下方、車両前方に移動される、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側突時、ロールオーバー(横転)時、或いは、これらが予測されたときに、車内側面を覆うようにエアバッグを展開させて乗員を保護するカーテンエアバッグ装置を備えた車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエアバッグ装置の1つとしてカーテンエアバッグ装置が知られており、このカーテンエアバッグ装置は、下から上にロール状に折り畳んだエアバッグの上縁部を車両のピラー上縁部及びルーフの側縁部に沿って設け、車両の衝突時等にインフレータが発生するガス圧によってエアバッグを膨張させ、この膨張させたエアバッグを、車内側面、具体的にはルーフトリムの車幅方向側縁部から後部ピラーの前部における所定の下方位置にかけた範囲を覆うように、カーテン状に展開させ、これにより、車両の側突時に生ずる衝撃から乗員を保護するというものである。
【0003】
カーテンエアバッグ装置は、当初、車両の側突時の衝撃から乗員を保護するものとして開発されたが、近年、車両がロールオーバー(横転)した際にも乗員を適切に保護することができるように構成されたもの、すなわち、ロールオーバー対応カーテンエアバッグ装置が開発されている。
例えば、特許文献1は、カーテンエアバッグの前端下方部を前部ピラーに係止するとともに、後端下方部を後部ピラーに係止するように構成されたカーテンエアバッグ装置を開示する。この構造によれば、カーテンエアバッグ展開後にもカーテンエアバッグを適所に保持することができ、カーテンエアバッグ展開後のカーテンエアバッグの捲りあがりを阻止することができ、よって、乗員の上部、例えば頭部が、窓やピラー(トリム)などの車両側部に、或いは、割れた窓から車外の物(例えば道路)に、直接、打ちつけられてしまうのを阻止することができる。
【0004】
上記カーテンエアバッグ装置では、カーテンエアバッグは、前部ピラーとこれを覆う前部ピラートリムとの間、ルーフとこれを覆うルーフトリムとの間、及び、後部ピラーとこれを覆う後部ピラートリムとの間に延びるように配置される。
【0005】
ところで、一般的には、ルーフトリムは、カーテンエアバッグの膨張展開時、カーテンエアバッグの車内への展開を容易に許容する柔らかさの素材で作られるのに対して、前部ピラートリム、後部ピラートリムは、例えばこれらの表面の清掃を可能にする等の要請から、ルーフトリムよりも硬質な合成樹脂材、例えば、ポリブロピレンで作られるのが一般的であり、各ピラートリムが硬質樹脂で作られるのは、上述したロールオーバー対応カーテンエアバッグ装置を備える車両においても同様である。
【0006】
また、前部ピラーと後部ピラーとの間に配置される中間ピラーと、後部ピラーとの間、例えば、所謂CピラーのトリムとDピラーのトリムとの間に、サイドウインドガラスを設ける車両が知られており、このサイドウインドガラスの上縁部の車幅方向内方においてルーフトリムの側縁部に、上述したピラートリムと同様な硬質な合成樹脂材で作られたルーフサイドトリムが設けられることがある。ルーフサイドトリムは、ルーフトリムの一部を切欠き、この切欠部分に設けられるが、このようにルーフトリムの一部を切欠くことにより、ルーフトリムの車内への取付性を向上させることができる。また、車内からの見映えを向上させる目的でルーフサイドトリムが設けられることもある。
【0007】
更には、上述したルーフサイドトリムの後端部は、後部ピラートリム(Dピラーのトリム)の前部に沿って上縁部から、サイドウインドガラスの高さ方向中央付近に対応する高さ位置まで、下方に延ばされることがある(後部ピラートリムは、延長されたルーフサイドトリムの後端部に対応して切欠かれる)。
【0008】
【特許文献1】特開2004−189099号公報
【特許文献2】特表2002−519591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、硬質なルーフサイドトリムが、Cピラートリム(中間ピラートリム)から、Dピラートリム(後部ピラートリム)の前部を、上縁部から、サイドウインドガラスの高さ方向中央付近に対応する高さ位置まで、下方に延びる場合、硬質なルーフサイドトリムの車両前後方向前端部、後端部は、これもまた硬質なCピラートリム(中間ピラートリム)、Dピラートリム(後部ピラートリム)に夫々当接されて保持されるため、ルーフサイドトリムがカーテンエアバッグの車内への展開を阻害してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するために発明されたものであって、ルーフサイドトリムから車内へのカーテンエアバッグの展開性を向上させることができる、車両の後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明による、車両の後部構造は、車両の天井を構成するルーフトリムよりも硬質な合成樹脂で作られた、前記車両の後部に位置する後部ピラーを覆う後部ピラートリムと、該後部ピラートリムの車両前後方向前方に位置するサイドウインドガラスとを有し、該サイドウインドガラスの上縁部が前記ルーフトリムの側縁部の外方に位置し、前記ルーフトリムの側縁部から前記後部ピラーの所定高さ部位まで、前記サイドウインドガラスを覆うように膨張展開されるカーテンエアバッグを備えるカーテンエアバッグ装置と、前記サイドウインドガラスの上縁部及びこれに連続する後縁部の車幅方向内方において、前記ルーフトリムの側縁部及び後部ピラートリムの前縁部に延びる、前記ルーフトリムよりも硬質な合成樹脂で作られた単一のルーフサイドトリムとを有し、該ルーフサイドトリムが、膨張展開する前記カーテンエアバッグにより車室に向って下方、車両前方に移動される、ことを特徴とする。
【0012】
本発明では、ルーフサイドトリムが、膨張展開方向が異なるカーテンエアバッグの部分、すなわち、ルーフトリムの側縁部に沿って設置され、下方に向って膨張展開するカーテンエアバッグの部分と、後部ピラートリムの前縁部に沿って設置され、車両前方に向って膨張展開するカーテンエアバッグの部分とに対応して、連続的に又は一体に延びるので、ルーフサイドトリムをルーフトリムの側縁部にのみ沿って延ばした場合に比して、カーテンエアバッグの膨張展開時に、ルーフサイドトリムが破損するのを抑制することができる。
【0013】
本発明では、前記カーテンエアバッグは、該前記カーテンエアバッグの膨張時に、前記ルーフトリムの側縁部と前記ルーフサイドトリムとの間、及び、後部ピラートリムと前記ルーフサイドトリムとの間に向って展開するように、設置されるのが好ましい。
この構成によれば、カーテンエアバッグの膨張によって移動されたルーフサイドトリムが、乗員とカーテンエアバッグとの間に位置するのを抑制することができる。
【0014】
また、前記ルーフサイドトリムの車両前後方向後端部は、その車内側側縁部及び底縁部が前記後部ピラートリムの前縁部に対して車室内方に位置するように、設けられるのが好ましい。
この構成によれば、後部ピラートリムに対するルーフサイドトリムの取り付けを容易にすることができ、また、カーテンエアバッグの膨張展開時におけるルーフサイドトリムの移動を容易とし、ひいては、カーテンエアバッグの室内への展開性を向上させることができる。
【0015】
更に、前記カーテンエアバッグの膨張展開時に前記ルーフサイドトリムが所定距離だけ車内に向って移動するように、前記ルーフサイドトリムを車両の車体に保持するためのルーフサイドトリム保持手段を有するのが好ましい。
この構成によれば、カーテンエアバッグの膨張展開時に移動されるルーフサイドトリムによって乗員が損傷してしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ルーフサイドトリムから車内へのカーテンエアバッグの展開性を向上させることができる、車両の後部構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明を、3列のシートを装備し、Aピラー、Bピラー、Cピラー及びDピラーを有する車両に適用したものである。
【0018】
図1を参照すると、全体的に参照番号1で示される車両の室内の右半部が車両の長手方向中央平面から概略的に示されている。
【0019】
車両1は、前部ピラーと、前部ピラーの車両前後方向後方に配置された中間ピラーと、中間ピラーの車両前後方向後方に配置された後部ピラーとを有し、前部ピラーはAピラーによって、中間ピラーはBピラー及び(Bピラーの車両前後方向後方に配置された)Cピラーによって、また、後部ピラーはDピラーによって、夫々、構成され、Aピラー乃至Dピラーは、室内側から、夫々、Aピラートリム2乃至Dピラートリム5によってカバーされている。
【0020】
Aピラートリム2とBピラートリム3との間には1列目のシート6が、Bピラートリム3とCピラートリム4との間には2列目のシート7が、また、Cピラートリム4とDピラートリム5との間には3列目のシート8が、夫々、配置されている。また、Aピラー乃至Dピラーによってルーフが支持され、このルーフは、ウレタンフォーム材、或いは、発泡ポリエチレンなどの比較的柔軟な素材で作られたルーフトリム9によって室内側からカバーされている。
【0021】
更に、車両1の側部には、Aピラートリム2とBピラートリム3との間に1列目シート用サイドガラスウインド10が、Bピラートリム3とCピラートリム4との間に2列目シート用サイドガラスウインド11が、そして、Cピラートリム4とDピラートリム5との間に3列目シート用サイドガラスウインド(クォータウインドガラス)12が、夫々、配置されている。
【0022】
車両1は更にまたカーテンエアバッグ装置を備える。このカーテンエアバッグ装置の構造それ自体は既知のものである。
これを簡単に説明すると、カーテンエアバッグ装置は、カーテンエアバッグ20と、これを膨張させるためのインフレータ21と、カーテンエアバッグ20とインフレータ21とを連結するガス供給パイプ22と、車両1に対する側面衝突又は車両1の横転(ロールオーバー)に関する情報を検出するためのセンサ(図示せず)と、このセンサ(図示せず)とインフレータ21とに電気的に接続された制御装置(図示せず)とを有する。
【0023】
カーテンエアバッグ20は、AピラーとAピラートリム2との間、ルーフとルーフトリム9との間、及び、DピラーとDピラートリム5との間に延びるように配置される。詳細には、カーテンエアバッグ20の前端部の上縁部、すなわち、前端部上縁部20Aは、ブラケット23を介してAピラーの上端部に取り付けられ、カーテンエアバッグ20の上縁部は、前端部(上縁部)20Aから、ルーフトリム9の側縁部9A(図3参照)に沿って延びるようにブラケット24、25を介してルーフに取り付けられ、後端部(上縁部)20Bは、ブラケット26を介してDピラーの上端部に取り付けられる。上述したように上縁部が支持されたカーテンエアバッグ20は、図3で分かるように、上下方向に折り重なるように蛇腹状に折り畳まれる。
【0024】
このカーテンエアバッグ装置では、制御装置(図示せず)は、センサ(図示せず)からの情報に基づいて、車両1に対する側面衝突があった、又は、車両1に対する側面衝突が予測される、或いは、車両1が横転した、又は、車両1の横転が予測されると判断したときに、インフレータ21を作動させる。すると、インフレータ21によって作られたガス(圧)がガス供給パイプ22を介してカーテンエアバッグ20に供給され、カーテンエアバッグ20は、図2に示すように、膨張展開して、各サイドウインドガラス10〜12を覆う。カーテンエアバッグ20の前端部の下縁部、すなわち、前端部下縁部20Cにはバンド27の後端部が取り付けられ、バンド27の前端部はAピラーの下端部に取り付けられているので、膨張展開したカーテンエアバッグ20は、少なくとも、カーテンエアバッグ20の前端部下縁部20Cと、後端部上縁部20Bとを結ぶラインよりも上方に位置する部分が、上方に捲りあがるのが阻止される。従って、カーテンエアバッグ膨張展開後にカーテンエアバッグが捲りあがってしまうことによって乗員の上部、例えば頭部が、窓やピラー(トリム)などの車両側部に、或いは、割れた窓から車外の物(例えば道路)に、直接、打ちつけられてしまうのを阻止することができる。
【0025】
ところで、Aピラートリム2乃至Dピラートリム5は、ルーフトリム9よりも硬質な材料、この実施形態では、ポリプロピレンで作られ、同じく、ルーフトリム9よりも硬質な材料、この実施形態では、ポリプロピレンで作られたルーフサイドトリム30が、図3乃至図5から良く分かるように、Cピラートリム4の上部の車両前後方向後端部4Aから、ルーフトリム9の側縁部9Aに沿って、Dピラートリム5の上部の車両前後方向前端部5Aまで、そこから更に、Dピラートリム5の前部に沿って、3列目シート用サイドガラスウインド12の高さ方向中央部よりも下方まで、連続的に延びる。
【0026】
換言すると、ルーフトリム9の側縁部9AがCピラートリム4からDピラートリム5まで切り欠かれると共に、Dピラートリム5の前部が上部から3列目シート用サイドガラスウインド12の高さ方向中央部よりも下方まで切り欠かれ、このようにして形成された、連続する切欠部に、一体のルーフサイドトリム30が設置される。
【0027】
上述したように、Dピラートリム5の前部上部には、上下方向に延びる矩形の切欠部が形成されるが、説明の便宜上、この矩形の切欠部の側部に位置するDピラートリム5の縁部を切欠側縁部70と呼び、同矩形の切欠部の底部に位置するDピラートリム5の縁部を切欠底縁部71と呼ぶ。
【0028】
ルーフサイドトリム30は、Cピラートリム4の上部の車両前後方向後端部4A乃至Dピラートリム5の上部の車両前後方向前端部5Aにおいては、図3で良く分かるように、車内方向側縁部30Aがルーフトリム9の側縁部9Aの底面(車室内側面)に当接するように、また、車外方向側縁部30Zが3列目シート用サイドガラスウインド12の上縁部に隣接するように(若干間隔を隔てるように)、位置決めされる。
【0029】
ルーフサイドトリム30は、Dピラートリム5の上部の車両前後方向前端部5A乃至切欠底縁部71においては、図4、6、図7に示すように、車内方向側縁部30AがDピラートリム5の(切欠側縁部70)の外面(車室内側面)に当接するように、また、車外方向側縁部30Zが3列目シート用サイドガラスウインド12の後縁部に隣接するように(若干間隔を隔てるように)、位置決めされる。
【0030】
また、ルーフサイドトリム30の車両前後方向前端部30B、車両前後方向後端(下端部)部30Cは、夫々、図5、図6に示すように、Cピラートリム4の上部の車両前後方向後端部4Aの底面(車室内側面)、Dピラートリム5の切欠底縁部71の外面(車室内側面)に当接するように位置決めされる。
【0031】
図3、図5及び図6に示されるように、ルーフサイドトリム30の頂面(車室外側面)30Dには、ルーフサイドトリム30を車体に取り付けるのに用いられる、コの字状断面の台座40、41、42が設けられている。台座40、41は、ルーフトリム9の側縁部9Aに隣接するルーフサイドトリム30の水平部分60Aに、また、台座42は、Dピラートリム5の切欠側縁部70に隣接するルーフサイドトリム30の傾斜部分60Bに、夫々、配置される。
【0032】
これらの台座40、41、42は、この実施形態では、ルーフサイドトリム30と一体成形されているが、ルーフサイドトリム30と別個に形成した後、ルーフサイドトリム30に既知の任意の仕方で固定しても良い。
【0033】
台座40の頂部には、横方向(内外方向)に撓むクリップ部材40Aが設けられると共に、クリップ部材40Aに対して車両前後方向後方に間隔を隔てて位置決めピン40Bが設けられている。台座40の側面にはクリップ部材40Aに隣接して連結バンド40Cの一方端が固定され、連結バンド40Cの他方端はリング部材40Dに固定されている。
【0034】
車両1のルーフの側部にはルーフインナーパネル50(図3、図5、図8参照)が支持され、ルーフサイドトリム30のクリップ部材40Aに対向するルーフインナーパネル50の部分には取付穴が形成され、この取付穴にリング部材40Dが取り付けられるようになっている。尚、図3から良く分かるように、インフレータ21、ブラケット(24、)25もまたルーフインナーパネル50で適宜支持される。
【0035】
台座40のクリップ部材40Aはその高さ方向中間部付近に最大横方向寸法を有し、リング部材40Dの開口部は、無負荷状態のクリップ部材40Aの最大横方向寸法よりも小さく寸法形状決めされている(図8参照)。従って、台座40のクリップ部材40Aをルーフインナーパネル50の下方(車室内側)から、クリップ部材40Aの最大横方向寸法がリング部材40Dの開口部を上方(車室外側)に越えるまで、押し上げることによって、クリップ部材40Aをルーフインナーパネル50に係止することができる。
【0036】
ルーフインナーパネル50にはまた、台座40の位置決めピン40Bに対向する部分に位置決め穴51が形成され、位置決め穴51は位置決めピン40Bを受け入れるように寸法形状決めされている。
【0037】
図5、図8から良く分かるように、台座40のクリップ部材40A、位置決めピン40B(正確には、これらの長手方向軸線)は、ルーフサイドトリム30の水平部分60A(正確にはこれに沿って延びる仮想線X)と傾斜部分60B(正確にはこれに沿って延びる仮想線Y)との間に構成される角αの中心を延びる方向Dとほぼ平行に延び、台座40の頂面、及び、台座40と対向するルーフインナーパネル50の部分50Aは、方向Dとほぼ直交して延びるように形成されている。
【0038】
台座41にもまた、台座40におけるのと同様に、その頂部に、横方向(内外方向)に撓むクリップ部材41Aが設けられ、側面には連結バンド41Cの一方端が固定され、連結バンド41Cの他方端はリング部材41Dに固定されている。台座41のクリップ部材41Aもまた、その高さ方向中間部付近に最大横方向寸法を有し、リング部材41Dの開口部は、無負荷状態のクリップ部材41Aの最大横方向寸法よりも小さく寸法形状決めされ(図8参照)、台座41のクリップ部材41Aをルーフインナーパネル50の下方から、クリップ部材41Aの最大横方向寸法がリング部材41Dの開口部を上方に越えるまで、押し上げることによって、クリップ部材41Aをルーフインナーパネル50に係止することができる。
【0039】
図5、図8から良く分かるように、台座41のクリップ部材41A(正確には、その長手方向軸線)は、ルーフサイドトリム30の水平部分60A(正確にはこれに沿って延びる仮想線X)と傾斜部分60B(正確にはこれに沿って延びる仮想線Y)との間に構成される角αの中心を延びる方向Dとほぼ平行に延び、台座41の頂面、及び、台座41と対向するルーフインナーパネル50の部分50Bは、方向Dとほぼ直交して延びるように形成されている。
【0040】
台座42にもまた、台座40、41におけるのと同様に、その頂部に、横方向(内外方向)に撓むクリップ部材42Aが設けられ、側面には連結バンド42Cの一方端が固定され、連結バンド42Cの他方端はリング部材42Dに固定されている。
【0041】
車両1のDピラーにはDピラーインナーパネル80(図7参照)が取り付けられ、図5、図8に示すように、ルーフサイドトリム30のクリップ部材42Aに対向するDピラーインナーパネル80の部分には取付穴が形成され、この取付穴にリング部材42Dが取り付けられるようになっている。尚、図7に示されるように、ブラケット26もまたDピラーインナーパネル80で適宜支持される。
【0042】
台座42のクリップ部材42Aもまた、その高さ方向中間部付近に最大横方向寸法を有し、リング部材42Dの開口部は、無負荷状態のクリップ部材42Aの最大横方向寸法よりも小さく寸法形状決めされ(図8参照)、台座42のクリップ部材42AをDピラーインナーパネル50の車両前後方向前方から、クリップ部材42Aの最大横方向寸法がリング部材42Dの開口部を後方に越えるまで、押すことによって、クリップ部材42AをDピラーインナーパネル80に係止することができる。
【0043】
図5、図8から良く分かるように、台座42のクリップ部材42A(正確には、その長手方向軸線)は、ルーフサイドトリム30の水平部分60A(正確にはこれに沿って延びる仮想線X)と傾斜部分60B(正確にはこれに沿って延びる仮想線Y)との間に構成される角αの中心を延びる方向Dとほぼ平行に延び、台座42の頂面、及び、台座42と対向するDピラーインナーパネル80の部分80Aは、方向Dとほぼ直交して延びるように形成されている。
【0044】
上述したように、ルーフサイドトリム30の長手方向に間隔を隔てた台座40、41、42をルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80に係止することによって、ルーフサイドトリム30を車体に取り付けることができる。この取り付けに当たっては、台座40、41、42のクリップ部材40A、41A、42A、位置決めピン40Bが全て同じ方向に延び、これらを受け入れるリング部材40D、41D、42D、位置決め穴51もまた全て同じ方向に延びるので、ルーフサイドトリム30を図5に示す方向Dに沿って車内側からルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80に向けて押し上げるだけで簡単に取り付けることができる。
【0045】
台座40、41、42を介してルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80に取り付けられたルーフサイドトリム30は、カーテンエアバッグ20が膨張展開されると、ルーフサイドトリム30の水平部分60Aが車内に向けて下向きの押圧力を受け、また、ルーフサイドトリム30の傾斜部分60Bが車内に向けて前方やや下向きの押圧力を受けるので、ルーフサイドトリム30は、全体的には、図5に示す方向Dに押圧されることになる。
【0046】
この押圧力が、ルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80に対する台座40、41、42のクリップ部材40A、41A、42Aの保持力に打ち勝つことにより、クリップ部材40A、41A、42Aが、夫々、ルーフインナーパネル50のリング部材40D、41D、Dピラーインナーパネル80のリング部材42Dから外れる。しかし、台座40、41、42は、連結バンド40C、41C、42C、リング部材40D、41D、42Dを介してルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80に連結されているので、連結バンド40C、41C、42Cの長さ分だけルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80から離れるに過ぎず、従って、ルーフサイドトリム30がルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80から完全に脱落することはない。
【0047】
このようにして、ルーフサイドトリム30がルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80から、所定距離、車内方向に移動することにより、これにより構成された空間からカーテンエアバッグ20が車内に向って膨張展開することができるので、硬質樹脂製のルーフサイドトリム30がカーテンエアバッグ20の膨張展開を阻害することを防止することができ、また、硬質樹脂製のルーフサイドトリム30はルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80から完全に解放されないので、ルーフサイドトリム30が飛散することによって乗員が損傷してしまうことを回避することができる。
【0048】
また、ルーフサイドトリム30がカーテンエアバッグ20によって車内に向けて押圧されることに関連して、ルーフサイドトリム30の車内方向側縁部30A、車両前後方向前端部30B、車両前後方向後端部30Cは、夫々、ルーフトリム9の側縁部9Aの底面(車室内側面)、Cピラートリム4の上部の車両前後方向後端部4Aの底面(車室内側面)、Dピラートリム5の切欠底縁部71の前面(車内側面)に当接するように位置決めされているので、カーテンエアバッグ20の膨張展開時、ルーフサイドトリム30の移動がルーフトリム9、Cピラートリム4、Dピラートリム5によって妨げられることがなく、よって、カーテンエアバッグ20の展開性を向上させることができる。このことはまた、硬質なルーフサイドトリム30の移動によりによって、これまた硬質なCピラートリム4、Dピラートリム5を大きく変形乃至破損させてしまうことを回避することができる。
【0049】
更に、ルーフサイドトリム30を水平部分60Aのみで構成した場合には、カーテンエアバッグ20が膨張展開したとき、水平部分60Aの後端部が、硬質なDピラートリム5と干渉することにより、或いは、Dピラートリム5から膨張展開するカーテンエアバッグ20部分と干渉することにより、破損し、破片が車内に飛散する恐れがあるが、本発明では、ルーフサイドトリム30を水平部分60Aから、Dピラートリム5から膨張展開するカーテンエアバッグ20部分に対応するDピラートリム5の部分又は領域まで(連続的に)延びるように一体成形し、前述したように、カーテンエアバッグ20の膨張展開時にルーフサイドトリム30全体を方向Dに移動させるので、ルーフサイドトリム30の破損を抑制することができる。
【0050】
更にまた、台座40、41、42のクリップ部材40A、41A、42A、位置決めピン40B、並びに、これらを受け入れるリング部材40D、41D、42D、位置決め穴51が全て、カーテンエアバッグ20の膨張展開時にルーフサイドトリム30全体が移動される方向Dと平行に配置されているので、カーテンエアバッグ20の膨張展開時(ルーフサイドトリム30の方向Dへの移動時)、台座40、41、42のクリップ部材40A、41A、42A、位置決めピン40Bがリング部材40D、41D、42D、位置決め穴51からスムースに外れ、これにより、これらの部品同士の干渉による破損、乗員への飛散を防止することができる。
【0051】
尚、ルーフサイドトリム30をルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80に解放可能に取り付け、カーテンエアバッグ20の膨張展開時に、ルーフサイドトリム30をルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80から所定距離のみ移動させるための手段として、上述した構造に代えて、例えば特許文献2に開示されている手段を用いても良い。
【0052】
最後に、硬質のルーフサイドトリム30と対向するカーテンエアバッグ20の部分は、上述したように、ルーフサイドトリム30がルーフインナーパネル50、Dピラーインナーパネル80から離れるように移動されることによって構成された空間を通って、膨張展開することになるが、ルーフトリム9の側縁部9Aに沿って配置されたカーテンエアバッグ20の部分は、ルーフトリム9の側縁部9Aを押しのけて車室内に膨張展開する。また、硬質のAピラートリム2内に配置されたカーテンエアバッグ20の部分は、Aピラートリム2と1列目シート用サイドガラスウインド10との間から車室内に膨張展開することになる。
【0053】
本発明は、上述した実施形態に限定されることなく以下のような種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、3列のシート6〜8、Aピラー〜Dピラーからなる4つのピラーを備える車両に本発明を適用したけれども、2列のシートを備え、3つのピラーからなる車両に本発明を適用することもできる。この場合、車両の最後方のCピラーが後部ピラーを構成し、このCピラー(後部ピラー)乃至Bピラー(中間ピラー)に上述した全体的にL字形のルーフサイドトリム30を設けても良い。
【0054】
また、上述した実施形態では、台座40、41が取り付けられるルーフインナーパネル50と、台座42が取り付けられるDピラーインナーパネル80とは、別部材で構成されていたけれども、これらを1つの部材によって構成しても良く、例えば、ルーフインナーパネル50の一部を台座42が取り付けられる位置まで連続的に延ばしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】車両の室内の右半部を車両の長手方向中央平面から概略的に示す図である。
【図2】図1の室内の右半部を、カーテンエアバッグが膨張展開された状態で示す、図である。
【図3】図1のIII−III線における概略断面図である。
【図4】3列目シートの座面前端部あたりから見た3列目シート用サイドガラスウインド付近を示す概略斜視図である。
【図5】図3のV−V線における概略断面図である。
【図6】図3のVI−VI線概略矢視図である。
【図7】図4のVII−VII線における概略断面図である。
【図8】ルーフサイドトリムが移動された状態で示す、図3に対応する概略断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
5 Dピラートリム(後部ピラートリム)
9 ルーフトリム
9A 側縁部
12 3列目シート用サイドガラスウインド(サイドウインドガラス)
20 カーテンエアバッグ
30 ルーフサイドトリム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部構造であって、
車両の天井を構成するルーフトリムよりも硬質な合成樹脂で作られた、前記車両の後部に位置する後部ピラーを覆う後部ピラートリムと、
該後部ピラートリムの車両前後方向前方に位置するサイドウインドガラスとを有し、該サイドウインドガラスの上縁部が前記ルーフトリムの側縁部の外方に位置し、
前記ルーフトリムの側縁部から前記後部ピラーの所定高さ部位まで、前記サイドウインドガラスを覆うように膨張展開されるカーテンエアバッグを備えるカーテンエアバッグ装置と、
前記サイドウインドガラスの上縁部及びこれに連続する後縁部の車幅方向内方において、前記ルーフトリムの側縁部及び後部ピラートリムの前縁部に延びる、前記ルーフトリムよりも硬質な合成樹脂で作られた単一のルーフサイドトリムとを有し、該ルーフサイドトリムが、膨張展開する前記カーテンエアバッグにより車室に向って下方、車両前方に移動される、
車両の後部構造。
【請求項2】
前記カーテンエアバッグは、該前記カーテンエアバッグの膨張時に、前記ルーフトリムの側縁部と前記ルーフサイドトリムとの間、及び、後部ピラートリムと前記ルーフサイドトリムとの間に向って展開するように、設置される、請求項1記載の車両の後部構造。
【請求項3】
前記ルーフサイドトリムの車両前後方向後端部は、その車内側側縁部及び底縁部が前記後部ピラートリムの前縁部に対して車室内方に位置するように、設けられる、請求項1又は請求項2記載の車両の後部構造。
【請求項4】
前記カーテンエアバッグの膨張展開時に前記ルーフサイドトリムが所定距離だけ車内に向って移動するように、前記ルーフサイドトリムを車両の車体に保持するためのルーフサイドトリム保持手段を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の車両の後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−68708(P2008−68708A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248353(P2006−248353)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】