説明

カードコネクタ

【課題】2つの異なる形状をしたICカードを選択的に装着可能とする仕切り板を有するタイプのカードコネクタを提供する。
【解決手段】カード収容空間内に大小の2つのカードを選択的に1つ装着し得るカードコネクタのカード挿入口は、カードの大小に対応して第1の案内路と第2の案内路を有する。カードコネクタは、第1及び第2のコンタクト、大きいカードの幅を検出して第1の位置から第2の位置へ移動するロック金具、ロック金具に係合し、第1の位置から第2の位置へ回転可能なアクチュエータ、第1の位置から第2の位置へ移動可能な仕切り板を少なくとも有する仕切り部材を備え、大きいカードが挿入されたとき、ロック金具を第1の位置から第2の位置へ移動させ、大きいカードのさらなる挿入がアクチュエータを第1の位置から第2の位置へ回転させ、仕切り板を第1の位置から第2の位置へ移動させ、大きいカードをカード収容空間の上部に案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのカード挿入口から異なるサイズのカードを装着できるカードコネクタに関し、より詳細には、カードのサイズに応じてカードの振り分けをするアクチュエータにより、カードを上下に案内する可動板を移動させることができるようにしたカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器や情報端末機器などにおいては、該電子機器の機能拡張のために、通常、CPUあるいはメモリ用の集積回路内蔵カード(以下、単に、「ICカード」という。)を装着して用いるカードコネクタが従来から知られている。他方、装着されるICカードについても、そのサイズや形状あるいは外部接点の配置位置などが異なるいろいろな種類のものが出現してきている。このような多種多様のICカードの出現に伴って、1つのカードコネクタに多種類のICカードが装着可能であるカードコネクタが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1に示されるカードコネクタは、厚さは異なるが長さがほぼ同じであるICカードであって、外部接点であるパッドの位置がほぼ同じでコンタクトを共用できるICカードのためのものである。特許文献2に示されるカードコネクタは、厚さ、幅、長さあるいはパッドの位置が異なるICカードのためのものであり、ICカードの長さに応じて、カード挿入方向にコンタクトが配置されている。特許文献3に示されるカードコネクタは、厚さや幅は異なるが長さがほぼ同じであるICカードであって、パッドの位置が異なるICカードのためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−135385号公報
【特許文献2】特開2004−193111号公報
【特許文献3】特開2004−206963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献3に提案されているカードコネクタは、2つの異なる形状をしたICカードを選択的に装着可能とするカードコネクタであって、仕切り板が介在することにより各ICカードに対応するコンタクトに確実に接触するように構成されている。また、このカードコネクタは、挿入されるICカードのサイズ(具体的には、ICカードの幅)の大小の違いを認識し、それにより仕切り板が作動して、各ICカードを所定の位置に案内する構成を備えている。このカードコネクタの仕切り板は、ICカードのサイズの大小の違いを認識する認識手段(具体的には、カードガイド)から、カード挿入口の反対側に位置するコネクタ本体の端壁まで延在するように設けられる。さらに、このカードコネクタは、2つのICカードの挿入姿勢がいずれもノーマルな状態(言い換えれば、パッドが下を向いた状態)でカードコネクタに挿入される。
【0006】
このように2つのICカードの挿入姿勢が同じであると、仕切り板の上に装着されるICカード用のコンタクトは、カードコネクタの高さの中間に配置することになる。したがって、コンタクトとICカードとの所望の電気的接触圧力を得るために、該コンタクトの設置に精度が要求される。また、上下に配置されるコンタクトと仕切り板との関係で、カードコネクタの全体の高さを低くするためには限度がある。
【0007】
本発明の目的は、2つの異なる形状をしたICカードを選択的に装着可能とする仕切り板を有するタイプのカードコネクタであって、各ICカードと対応するコンタクトとの電気的接触圧力が容易に得られるカードコネクタを提供することにある。また、本発明のカードコネクタは、カードコネクタの低背化を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するために、本発明に係るカードコネクタは、ベース部材とカバー部材とによりカード挿入口を有するカード収容空間を形成し、該カード収容空間内に大小の2つのカードを選択的に1つ装着し得るカードコネクタであって、前記カード挿入口は、前記大きいカードを案内する一対の第1の案内路と前記小さいカードを案内する一対の第2の案内路を有するカードコネクタにおいて、その接点が前記カード収容空間内において下向きになるように配置された前記大きいカード用の複数の第1のコンタクトと、その接点が前記カード収容空間内において上向きになるように配置された前記小さいカード用の複数の第2のコンタクトを有する複数のコンタクト、前記第1の案内路に設けられた前記大きいカードの幅を検出して第1の位置から第2の位置へ移動する一対のロック金具、
該一対のロック金具に係合し、第1の位置から第2の位置へ回転可能なアクチュエータであって、係合部、及び前記小さいカードが通過し得る通過開口を少なくとも含むアクチュエータ、第1の位置から第2の位置へ移動可能な仕切り板、及び前記係合部に係合する駆動片を有し、前記大小の2つのカードの挿入を前記カード収容空間の上下に振り分ける仕切り部材を備え、前記大きいカードがその外部接点を上にして挿入されたとき、前記ロック金具を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させ、前記アクチュエータを回転可能とし、前記大きいカードのさらなる挿入が前記アクチュエータを前記第1の位置から前記第2の位置へ回転させ、前記仕切り板を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させ、前記大きいカードを前記カード収容空間の上部に案内し得ることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る係合部は、前記アクチュエータに一対形成され、前記仕切り板には、前記一対の係合部に係合する一対の駆動片が形成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る係合部は、前記駆動片が係合する凹部が形成されていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係るカードコネクタの仕切り部材は、第3の位置へ移動可能であるとともに、前記仕切り板の両側に一対の細長いバネ受け部を含み、該一対の細長いバネ受け部に対応して前記ベース部材に設けられた一対の押上バネにより前記仕切り板が前記第1の位置にあるように付勢されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るカードコネクタの仕切り部材は、垂直案内片、及び少なくとも一対の規制片さらに含み、前記仕切り板の上下動を案内するとともに、該仕切り板の上昇を規制し得ることが好ましい。
【0013】
本発明に係るカードコネクタの第2のコンタクト及び一対の押上バネは、前記ベース部材に埋め込まれるインサートとして形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ロック金具及びアクチュエータを備えることで、大小2つのカードの誤挿入を防止できる。また、仕切り部材が上下動することで、大小2つのカードを確実に振り分けることができるとともに、カードコネクタの低背化を図ることができる。さらに、カードをノーマル状態とリバース状態に挿入可能とすることで、コンタクトの変位を大きく取ることが可能とあり、電気的接触を確実にし得るとともに、カードコネクタの低背化を図ることができる。また、アクチュエータの回転を利用して仕切り部材を移動させることで、部品点数を少なくし得るとともに、カードの振り分け機構の構成を簡単化できる。さらに、仕切り部材を押上バネで上方に付勢するとともに、垂直案内片や規制片を設けることで、仕切り部材の上下の移動を確実にするとともに、大小のカードとそれに対応するコンタクトとの電気的接触を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るカードコネクタの斜視図である。
【図2】図1のカードコネクタにおいて、カバー部材が取り除かれた状態の斜視図である。
【図3】図1に示されるカードコネクタの図であり、(a)は、上面図、(b)は、(a)のIIIB−IIIB線に沿う断面図である。
【図4】図2のカードコネクタの上面図である。
【図5】図1のカードコネクタに用いられる仕切り板を示す図であり、(a)は、斜視図、(b)は、上面図である。
【図6】ロック金具にICカードが接触し、ロックが解除された状態を示す図であり、(a)は、図4と同様のカバー部材が取り除かれたカードコネクタの上面図であり、(b)は、(a)のVIB−VIB線に沿う断面図である。
【図7】アクチュエータが回転している状態を示す図であり、(a)は、図6(a)と同様の上面図であり、(b)は、(a)のVIIB−VIIB線に沿う断面図であり、(c)は、図7(a)のVIIC−VIIC線に沿う断面図である。
【図8】アクチュエータの回転が終了し、ICカードの先端部分が仕切り板の上に入り始めた状態を示す図であり、図6(a)と同様の上面図であり、(b)は、(a)のVIIIB−VIIIB線に沿う断面図である。
【図9】ICカードの先端が前壁に当接した状態を示す図であり、図8(b)と同様の断面図である。
【図10】ICカードがカードコネクタに完全に装着された状態を示す図であり、図8(b)と同様の断面図である。
【図11】ICカードが仕切り板の下に入り込んでいる状態を示す図であり、(a)は、図3(a)と同様のカードコネクタの上面図であり、(b)は、(a)のXIB−XIB線に沿う断面図である。
【図12】ICカードの先端が前壁に当接した状態を示す図であり、図11(b)と同様の断面図である。
【図13】ICカードがカードコネクタに完全に装着された状態を示す図であり、図11(b)と同様の断面図である。
【図14】ベース部材に埋め込まれるインサートを示し、(a)は、上面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1ないし14を用いて本発明の好ましい実施態様について説明する。
【0017】
最初に、カードコネクタの構成について説明する。図1は、本発明に係るカードコネクタの斜視図であり、図2は、図2のカードコネクタにおいて、カバー部材が取り除かれた状態の斜視図である。図3は、図1に示されるカードコネクタの図であり、(a)は、上面図、図3(b)は、図3(a)のIII−III線に沿う断面図である。図4は、図2のカードコネクタの上面図である。図5は、図1のカードコネクタに用いられる仕切り板を示す図であり、(a)は、斜視図、(b)は、上面図である。図14は、ベース部材に埋め込まれるインサートを示し、(a)は、上面図、(b)は側面図である。
【0018】
なお、本明細書の説明において、用語「左」及び「右」は、図1、2に示される座標において、それぞれ、+x方向及び−x方向を指し、用語「前」及び「後」は、それぞれ、図1に示される+y方向及び−y方向を指し、用語「上」及び「下」は、それぞれ、+z方向及び−z方向を指すものとする。
【0019】
本発明に係るカードコネクタ1は、上述したように、2つのサイズ(例えば、厚さや幅)の異なるICカード200及び300(図6及び11など参照)を選択的に装着可能なカードコネクタである。本実施態様で使用されるICカードは、1つは、幅及び厚さが大きい、例えば、SD(secure digital)カードのようなICカード(以下、単に、「大きいカード」という。)200である。もう1つは、大きいカードに比べて幅及び厚さが小さい、例えば、メモリスティックデュオ(登録商標)やメモリースティックPRO−HGデュオのようなICカード(以下、単に、「小さいカード」という。)300である。しかしながら、使用されるICカードはこれらに限定されるものではない。少なくともそれぞれの幅及びパッドの配置が異なる2つのICカード200、300であればよい。
【0020】
本実施態様においては、大きいカード200は、上部201の幅が広く、下部202の幅が狭い構造を有するICカードであって、したがって、左右両側部が階段状に形成された形状を有するICカードである。本実施態様における大きいカード200は、図6ないし10に示されるように、リバース状態、すなわち、外部接点としてのパッド203が形成されている面を上向きにした状態(言い換えれば、裏返した状態)でカードコネクタ1に装着される。一方、小さいカード300は、大きいカード200の上部201及び下部202の幅のいずれよりもその幅が小さいICカードである。本実施態様における小さいカードは、外部接点としてのパッド(不図示)が形成されている面を下向きにしたノーマルな状態でカードコネクタ1に装着される。
【0021】
カードコネクタ1は、概略、ベース部材10、カバー部材20、仕切り部材40、ロック金具50、アクチュエータ60、複数のコンタクト80及び90及びイジェクタ機構100を含んでいる。本実施態様におけるカードコネクタ1は、さらに、ライトプロテクトスイッチ70及びカード認識スイッチ120を含み得る。
【0022】
カバー部材20は、概略、天板21、右側壁22及び左側壁23を有し、垂直断面略逆U字形を成している。カバー部材20は、金属薄板をプレス加工により、打ち抜き、曲げ加工されることで形成される。該カバー部材20の左右の側壁22、23には、複数の取り付け孔24が形成され、後述するベース部材10の左右の側壁13、14に形成されている対応する突起19と係合し、カードコネクタ1を形成する。すなわち、カバー部材20は、図1に示されるように、ベース部材10と重ね合わされることにより、後方に向って開放するカード挿入口5を有するICカード収容空間が形成される。
【0023】
ベース部材10は、底壁11、前壁12、右側壁13及び左側壁14を有する概略箱状の形状を成し、電気的に絶縁性のプラスチックから作成される。また、ベース部材10の底壁11には、後述する金属製のインサート30(図14(a)、(b)参照)がインサート成形により埋め込まれている。ベース部材10は、上述したように、カバー部材20と重ね合わされることで、ICカード収容空間を形成する。該ICカード収容空間は、後方に向って開放するICカード挿入口5を有する。
【0024】
ベース部材10の前壁12上方には、該前壁12を前後方向に貫通する複数の貫通孔12aが形成される。該貫通孔12a内に、大きいカード200の複数のパッドに対応する複数の第1のコンタクト80それぞれが圧入される。それにより、複数の第1のコンタクト80は、それぞれの接点81が上下に変位可能となるように、片持ち梁状に前壁12に支持される。なお、各コンタクト80の円弧状に突出して形成される接点81は、該円弧状突出部が下向きに配置されるように支持されている。
【0025】
ベース部材10の左右の側壁13及び14には、2つの幅が異なるICカードをカード収容空間内に案内する案内路が対をなして形成される。本実施態様においては、左右の側壁13及び14それぞれのカード収容空間に面する側に、上段案内路15、中段案内路16及び下段案内路17が対をなして形成されている。上段案内路15、中段案内路16及び下段案内路17は、いずれも底壁11に対して垂直であり、互いに平行に形成され、隣接する2つの案内路間でそれぞれ階段を形成している。
【0026】
左右の側壁13及び14に形成される一対の上段案内路15は、大きいカード200の下部202の幅とほぼ同じかそれより若干大きい幅を有し、同じく一対の中段案内路15は、大きいカード200の上部201の幅とほぼ同じかそれより若干大きい幅を有する。一対の下段案内路17は、小さいカードの幅とほぼ同じかそれより若干大きい幅を有する。すなわち、上段案内路15及び中段案内路16は、裏返しにされたリバース状態の大きいカード200を案内する第1の案内路であり、下段案内路17は、小さいカード300を案内する第2の案内路である。
【0027】
ベース部材10の左右の側壁13及び14それぞれの後方には、一対のロック金具50が設けられている。本実施態様においては、一対のロック金具50は、左右の側壁13及び14それぞれの後方側(すなわち、カード挿入口5側)に形成されている後方収容溝13a及び14a内に、それぞれが相対向するように、左右対称に配置される。
【0028】
一対のロック金具50は、同じ形状であり、ここでは、右側壁13の後方収容溝13a内に配置されている右ロック金具50について説明し、左側壁14の後方収容溝14a内に配置される左ロック金具50についての説明を省略する。
【0029】
ロック金具50は、後方収容溝13aのカード収容空間側(内側)に配置される弾性変形片51とカード収容空間から遠い側(外側)に配置される固定片53とを有する。弾性変形片51と固定片53は、互いに平行であり、水平断面で略U字形となるように後方側で連結されている。弾性変形片51の後方側の固定片53と連結される部分の近傍には、右側壁13の中段案内路16のカード挿入口5近傍に形成される開口部16aからカード収容空間内に突出する接触部52が設けられている。弾性変形片51の前方自由端側には、後述するアクチュエータ60の突出ピン62(63)が係合する開口54が形成されている。具体的には、ロック金具50は、プレス加工により、金属薄板から細長い板状体として打ち抜かれ、折り曲げることで形成される。ロック金具50は、その固定片53が左側壁13の後方収容溝13a内に適宜の手法で固定されること(本実施態様では、所定の凹溝内に圧入すること)で、左側壁13の後方収容溝13a内に支持される。なお、後方収容溝13aは、弾性変形片51の開口54に対応する部分より前方であって、隔壁13bまでの間は、該溝13a全体がカード収容空間に連通するように形成されている。したがって、一対の上段案内路15、一対の中段案内路16及び一対の下段案内路17は、カード挿入口5から弾性変形片51の開口54に対応する部分の直前まで延在していることになる。
【0030】
一対のロック金具50は、カードコネクタ1として組み立てられたとき、言い換えれば、大きいカード200が装着されていないときは、図4に示されるように、対をなす弾性接触片51の対をなす接触部52が閉じた第1の位置にある。一対のロック金具50がこのように配置されていることで、大きいカード200の上部201が一対の中段案内路16に沿って案内されてくると、対をなす接触部52が大きいカード200によりカード収容空間から押し出される。すなわち、一対のロック金具50は、その対をなす接触部52が開いた第2の位置に移動する。対をなす接触部52のカード収容空間からの退出(押し出し)は、結果として、一対の弾性変形片51の前方自由端が左右に開くように該一対の弾性変形片51を変位させる。それにより、アクチュエータ60の突出ピン62が一対の弾性変形片51の前方自由端に形成されている開口54から外れ、後述するように、アクチユエータ60の回動を可能とする。
【0031】
ベース部材10の左側壁13の後方収容溝13aの前方には、隔壁13bを介して前方収容溝13cが形成されている。左側壁13の前方収容溝13c内には、それぞれの一部がカード収容空間内に突出するように形成されているライトプロテクトスイッチ70及びカード認識スイッチ120が配置されている。
【0032】
ベース部材10の右側壁14の後方収容溝14aの前方には、隔壁14bを介して前方収容溝14cが形成されている。右側壁14の前方収容溝14c内には、カード収容空間内に装着されているICカード200又は300の該カード収容空間からの排出を助けるイジェクト機構100が配置されている。
【0033】
本実施態様におけるイジェクト機構100は、従来周知のプッシュ・プッシュ式イジェクト機構であり、ここでは簡単に説明する。本実施態様におけるイジェクト機構100は、概略、揺動アーム101、イジェクト部材104、カード当接部材105及び圧縮コイルバネ107を含んでいる。
【0034】
イジェクト機構100を構成する揺動アーム101は、一端が隔壁14bに揺動自在に支持され、他端がイジェクト部材104に形成されているカム溝103に案内されるカムフォロワーとして機能する。イジェクト部材104は、図4に示されるように、その上面にハートカム102、カム溝103が形成される。イジェクト部材104は、右側壁14の隔壁14bより前方に形成される前方収容溝14c内を前後方向に摺動可能であるように該前方収容溝14c内に収容される。したがって、右側壁14の前方収容溝14cは、イジェクト部材104の長さより大きい長さを有する。カード当接部材105は、イジェクト部材104に連結され、カード収容空間内に突出形成されている。カード当接部材105の少なくとも一部は、装着されるICカード200及び300の前端に当接し、イジェクト部材104とともに前後方向に移動可能であるように形成されている。本実施態様では、カード当接部材105は、カードコネクタとして組み立てられたとき、後述する仕切り部材40の仕切り板41に対して一段低く形成されている細長い一対のバネ受け部のうちの左側のバネ受け部43上を前後方向に移動可能に配置される。また、カード当接部材105には、コンタクト80に対応する部分には前後方向に延在する溝が形成され、カード当接部材105の前後方向の移動を妨げないように構成されている。また、イジェクト部材104を収容する右側壁14の前方収容溝14cは、少なくとも連結部材105が前後方向に移動する部分がカード収容空間と連通するように形成されていることが好ましい。圧縮コイルバネ107は、右側壁14の前方収容溝14c内前方に配置され、イジェクト部材104を後方に向って付勢する。イジェクト機構100の機能及び利点は、周知であるのでここでは説明を省略する。
【0035】
ベース部材10の底壁11の前方には、小さいカード300の複数のパッドに対応する複数の第2のコンタクト90それぞれが片持ち梁状に支持されている。本実施態様においては、複数の第2のコンタクト90は、図14に示されるようなインサート30として形成され、底壁11にその所定の部分が底壁11内に埋め込まれるように、ベース部材10の製造時にインサート成形される。本実施態様では、第2のコンタクト90はまた、図14に示されるように、小さいカード300のパッドの配列に対応して前後に列をなして配置される。図14において、90aは、前方に配列されるコンタクトであり、90bは、後方に配列されるコンタクトを示す。前後2列に配列された複数の第2のコンタクト90a、90bは、それぞれの接点91a、91bが上下に変位可能となるように片持ち梁状に支持されている(図3参照)。なお、各コンタクト90a、90bそれぞれの接点91a、91bの変位量を大きくするために、各コンタクト90a、90bの片持ち梁状に支持されている部分に対応する底壁部分には、底壁11を貫通する開口が設けられている。また、各コンタクト90a、90bの円弧状に突出して形成される接点91a、91bは、該円弧状突出部が上向きに配置されるように支持されている。
【0036】
ベース部材10の底壁11に埋め込まれるインサート30には、第2のコンタクト90の左右両側部に、後述する仕切り部材40を上方に向けて支持する押上バネ31、32が対をなして形成されている。押上バネ31、32によって仕切り部材40が上方に向けて支持されているため、小さいカード300が挿入された時に、小さいカード300が仕切り部材40の後端部に干渉することを防ぐことができる。なお、押上バネ31、32の仕切り部材40に当接する接点部は、後述する一対の駆動片44、45より前方、且つ、各コンタクトの接点より後方(挿入口5側)に位置することが好ましい。それにより、例えば、アクチュエータ60による仕切り部材40の下降を確実にし、且つ、小さいカード300の仕切り部材40後端部への干渉を確実に防ぐことが可能となる。さらに、押上バネ31、32がアクチュエータ60に干渉することを防ぐことが可能となる。該インサート30には、さらに、第2のコンタクト90の後方の左右両側部に、小さいカード300をカードコネクタ1から取り出すときに該小さいカード300の飛出しを防止するための押圧バネ33、34が対をなして形成されている。押上バネ31、32及び押圧バネ33、34は、インサート成形により底壁11の所定の位置に固定され、上記第2のコンタクト90と同様に、片持ち梁状に底壁11に支持される。
【0037】
インサート30は、複数の第2のコンタクト90(90a、90b)、押上バネ31、32及び押圧バネ33、34が形成されるように、金属薄板からプレス加工で打ち抜かれることで一体に形成される。しかしながら、インサート成形後、例えば、図14に示されるように、所定の部分をカットすることで、コンタクト、押上バネ及び押圧バネとして単独に機能することが可能となる。
【0038】
次に、装着されるICカード(本実施態様においては、大きいカード200と小さいカード300)を振り分ける仕切り部材40について説明する。仕切り部材40は、装着されるICカードを振り分けるとともに、装着されたICカードを確実に保持する機能を有する。すなわち、仕切り部材40の上に装着されるICカードの対しては、カバー部材20と該仕切り部材40との間でしっかりと挟持し、仕切り部材40の下に装着されるICカードに対しては、仕切り部材40とベース部材10との間でしっかりと挟持する。それにより、それぞれのICカードとコンタクトとの電気的接触に対して必要な接触圧が保証され得る。仕切り部材40は、図5(a)、(b)に詳細に示されている。
【0039】
仕切り部材40は、仕切り板41、細長い一対のバネ受け部42、43、一対の駆動片44、45及び一対の規制片46、47を含んでいる。該仕切り部材40は、概略、左右の側壁13及び14それぞれの隔壁13b及び14bを結ぶ線より前方のカード収容空間内で上下動することで、該カード収容空間内において大きさの異なるICカードを上下に振り分け、案内する。
【0040】
仕切り板41は平坦であり、カードコネクタ1として組み立てられたとき、図2、3(b)及び4に示されるように、カード収容空間を横断する第1の位置に配置される。この時、仕切り板41下面の底壁11からの高さが小さいカード300の厚さとほぼ同じくなるように、仕切り板41が配置されることが好ましい。仕切り板41は、本実施例では、その両側に設けられる一対のバネ受け部42、43より一段高い位置に設けられている。このように構成することで、仕切り板41の両側と一対のバネ受け部42、43とをそれぞれ連結する垂直の段差部が小さなカード300を案内する。したがって、仕切り板41の幅は、小さなカード300の幅とほぼ同じである。また、仕切り板41が一対のバネ受け部42、43より一段高く配置されることで、イジェクト機構100のカード当接部材105が小さいカード300にも当接することが可能となり、イジェクト機構100を共有することが可能となる。なお、仕切り板41は、該仕切り板41が上下に移動しても第1及び第2のコンタクト80及び90やイジェクト機構100に対して互いに干渉することがないように、例えば、略矩形状の前方切り欠き41aを形成するなど、適宜の形状に形成される。
【0041】
細長い一対のバネ受け部42、43は、組み立てられたとき、ベース部材10の底壁11に設けられた一対の押上バネ31、32に対応するように、上記仕切り板41の左右両側に設けられる。したがって、一対のバネ受け部42、43は、一対の押上バネ31、32により上方に向って付勢され、結果として、仕切り部材40は、通常、上方に押し上げられた第1の位置にある。本実施態様では、上述したように、一対のバネ受け部42、43は、仕切り板41より一段低い位置に設けられる。仕切り板41及びその左右両側に設けられる一対のバネ受け部42、43を合わせた長さ、すなわち、仕切り部材40の幅は、大きいカード200の幅にほぼ等しくなるように設定される。
【0042】
細長い一対のバネ受け部42及び43それぞれの外側には、細長い一対のバネ受け部42及び43それぞれに対して直交するように、垂直案内片42a、42b及び43aが設けられている。該垂直案内片42a、42b及び43aは、細長い一対のバネ受け部42及び43の前後方向適宜の位置に設けられる。該垂直案内片42a、42b及び43aは、ベース部材10の右側壁13及び左側壁14の内壁面(カード収容空間に向いている面)に沿って移動することにより、仕切り部材40の上下方向の移動を案内する。該垂直案内片42a、42b及び43aは、また、それぞれの高さを適宜設定することにより、後述する一対の規制片46、47とともに、仕切り部材40の、ひいては、仕切り板41の上方への移動を規制することができる。すなわち、垂直案内片42a、42b及び43a及び一対の規制片46、47は、仕切り板41が小さなカードの厚さと同じ高さとなる第1の位置より上に移動しないように規制する。
【0043】
細長い一対のバネ受け部42の後端部には、一対の駆動片44、45が該後端部から後方に向って延在するように設けられている。一対の駆動片44、45は、後述するアクチュエータ60が回動したとき、その両側部に設けられた一対の係合部である係合凹部64a、65aにそれぞれが係合し得るように、細長い一対のバネ受け部42、43の後端部から所定の長さ延在している。アクチュエータ60の回転に伴いアクチュエータ60の一対の係合凹部64a、65aに係合した後、アクチュエータ60のさらなる回転により、一対の駆動片44、45は、押上バネ31、32の付勢力に抗して下方に向って押し下げられる。それにより、仕切り板41が後方に向って下がるように傾斜し(第2の位置)、大きいカード200が仕切り板41の後端に達したとき、該大きいカード200を仕切り板41の上面上に案内することが可能となる。この後、大きいカード200は、また、垂直案内片42a、42b及び43aによりカード収容空間内を案内されるとともに、大きいカード200により仕切り部材40全体が押し下げられ、底壁11に平行な第3の位置に移動する。なお、駆動片は一対に限られるものではなく、例えば仕切板41の中央部分の後端部から後方に向って延在するように設けられていても良い。その場合、アクチュエータに設けられる係合部は、アクチュエータ中央部分に1つ設けるなど、駆動片の位置に対応して設けられれば良い。ただし、駆動片は、両側部に一対設けられることにより、仕切り部材40が左右に傾くことなく均一に押し下げることが可能となるため好ましい。
【0044】
細長い一対のバネ受け部42の前端部には、一対の規制片46、47が、該前端部から上方に向けて延在するように設けられている。一対の規制片46、47は、細長い一対のバネ受け部42に直交するように、折り曲げられている。該一対の規制片46及び47は、例えば、前壁12の内壁面(カード収容空間に向いている面)に当接することにより、仕切り板41や一対の駆動片44及び45をカード収容空間内の所定の位置に配置する。また、一対の規制片46及び47は、前壁12の内壁面に沿って移動することにより、仕切り部材40の上下方向の移動を案内するとともに、仕切り部材40の上方への移動を規制する。
【0045】
続いて、大きいカード以外のICカードの挿入を阻止するとともに、大きいカードの挿入時、上記仕切り部材40を傾斜させて大きいカードをカード収容空間の所定の位置に案内するアクチュエータ60について説明する。
【0046】
アクチュエータ60は、シャッター部61、一対の突出ピン62、63、一対の脚部64、65及び一対の回転軸67、68を含んでいる。アクチュエータ60は、カード収容空間を横断して配置され、カード収容空間内で回転可能に配置されている。また、アクチュエータ60は、シャッター部61及び一対の脚部64、65により、小さなカード300が通過することができる垂直断面略矩形状の通過開口66を有している。
【0047】
シャッター部61は、図1ないし4に示されるようにICカードが装着されていないときは、カード挿入方向と直交し、カード収容空間を左右に横断し、該カード収容空間の上方部分を塞ぐように配置されている。シャッター部61の左右両側には、該両側からそれぞれ外側(対応する左右の後方収容溝13a、14a内)に向って突出する一対の突出ピン62、63が形成されている。該一対の突出ピン62、63は、図1ないし4に示されるようにICカードが装着されていないときは、上述したように、それぞれ対応する一対のロック金具50の開口54に係合している。該一対の突出ピン62、63が、ロック金具50の開口54に係合していることにより、アクチュエータ60の回動が阻止され、それにより、ICカードの挿入が阻止される。すなわち、一対のロック金具50の対をなす接触部52がカード収容空間から押し出され、一対の弾性変形片51を変位させ、一対の突出ピン62、63が対をなす開口54から同時に外れない限り、アクチュエータ60は、回動することができない。すなわち、ICカードが自身でシャッター部61を押し、アクチュエータ60を回動させ、該アクチュエータ60を倒すことができないので、カード収容空間が開放されることがなく、したがって、シャッター部61より前方へのICカードの挿入が阻止される。
【0048】
シャッター部61の左右両側であって、一対の突出ピン62、63の内側に、一対の脚部64、65が下方に向って設けられ、シャッター部61及び一対の脚部64、65により垂直断面矩形状の通過開口66を形成している(図3(b)参照)。該通過開口66の垂直断面の形状は、小さなカード300の垂直断面の形状とほぼ同じか、それより若干大きくなるように設定される。すなわち、一対の脚部64、65の間隔は、それにより、小さなカード300は、一対の下段案内路17の間隔とほぼ同じである。一対の脚部64、65の前面側には、それぞれ係合凹部64a、65aが形成されている。一対の係合凹部64、65aは、アクチュエータ60の回転時、仕切り部材40の一対の駆動片44、45に係合し、該一対の駆動片44、45を押し下げ、結果として、仕切り板41の後端部を押し下げる。係合凹部64a、65aを設けることにより、仕切り板41の押し下げ量(押し下げる前の位置と押し下げた後の位置の差)を調整することができる。そのため、過剰に仕切り板41を押し下げることを防ぐことができ、コネクタの上下高さを低くすることが可能となる。
【0049】
一対の脚部64、65の下端には、それぞれ、該下端から左右外側に向って一対の回転軸67、68が突出形成される。一対の回転軸67、68は、それぞれ、左右の側壁13、14の後方収容溝13a、14a内に配置され、該後方収容溝13a、14aの底部を横断し、左右の側壁13、14に回転自在に支持される。一対の回転軸67、68の一方または両方(本実施態様では、右回転軸67のみ)に、ネジリコイルバネ69が巻きつけられる。該ネジリコイルバネ69は、アクチュエータ60のシャッター部61が、図1ないし4に示されるように、直立した位置、すなわち、カード収容空間を閉じる第1の位置に付勢する。
【0050】
アクチュエータ60は、通常、図1ないし4に示されるように、そのシャッター部61がカード収容空間を部分的に閉じる第1の位置にある。アクチュエータ60は、後述するように、大きいカード200が挿入されたとき、ロック金具50との係合が外れ、回転軸67、68回りに回転可能状態となる。大きいカード200がさらに挿入されると、そのシャッター部61が該大きいカード200に当接し、アクチュエータ60を回転させながらこれを前方に押し倒し、シャッター部61がカード収容空間を開放する第2の位置に回転移動する。また、小さいカード300が挿入されるときは、アクチュエータ60を回転させることなく、該アクチュエータ60に形成されている通過開口66を通過する。
【0051】
本発明に係るカードコネクタ1は、以上の構成を備える。以下、本発明に係るカードコネクタ1へICカードを択一的に装着する具体的な動作について説明する。先ず、大きいカード200を本発明に係るカードコネクタ1に装着する動作について図3(b)、図4及び図6ないし10を用いて説明する。図6ないし10は、カードコネクタに大きいサイズのICカードが装着される様子を示す図である。図6は、ロック金具にICカードが接触し、ロックが解除された状態を示す図であり、(a)は、図4と同様のカバー部材が取り除かれたカードコネクタの上面図であり、(b)は、図6(a)のVI−VI線に沿う断面図である。図7は、アクチュエータが回転している状態を示す図であり、(a)は、図6(a)と同様の上面図であり、(b)は、図7(a)のVIIB−VIIB線に沿う断面図であり、(c)は、図7(a)のVIIC−VIIC線に沿う断面図である。図8は、アクチュエータの回転が終了し、ICカードの先端部分が仕切り板の上に入り始めた状態を示す図であり、図6(a)と同様の上面図であり、(b)は、図8(a)のVIII−VIII線に沿う断面図である。図9は、ICカードの先端が前壁に当接した状態を示す図であり、図8(b)と同様の断面図である。図10は、ICカードがカードコネクタに完全に装着された状態を示す図であり、図8(b)と同様の断面図である。
【0052】
図3(b)及び図4に示されるように、大きいカード200を装着していないとき、カードコネクタ1のロック金具50、アクチュエータ60及び仕切り部材40は、いずれも第1の位置にある。具体的には、ロック金具50はその対をなす接触部が閉じた第1の位置にあり、アクチュエータ60はそのシャッター部61がカード収容空間を部分的に閉じた第1の位置にある。このとき、一対のロック金具50の対をなす開口54とアクチュエータ60の一対の突出ピン62、63は係合している。また、仕切り部材40は、その仕切り板41がベース部材10の底壁11とほぼ平行であって、該底壁11からの高さが小さいカード300の厚さとほぼ同じである第1の位置にある。
【0053】
図6(a)、(b)に示されるように、大きいカード200が、今、そのバッド203が形成された面を上にしたリバース状態でカード挿入口5から挿入される。すなわち、大きいカード200の幅の広い上部201が中段案内路16に沿い、幅の狭い下部202が上段案内路15に沿うようにカード挿入口5から挿入される。
【0054】
大きいカード200が前方に向って挿入されると、その幅の広い上部201が、中段案内路16の開口16aを通ってカード収容空間内に突出する一対のロック金具50の対をなす接触部52に接触する。当該接触により、対をなす接触部52をカード収容空間から同時に退避させる。すなわち、対をなす接触部52を第2の位置へ移動させる。それにより、一対のロック金具50の対をなす弾性変形片51が開き(第2の位置への移動)、該対をなす弾性変形片51の対をなす開口54とアクチュエータ60の一対の突出ピン62、63の係合が同時に外れ、したがって、アクチュエータ60は、回転可能状態となる。
【0055】
図6(a)、(b)の状態から大きいカード200がさらに挿入され、前進すると、図7(a)、(b)に示されるように、大きいカード200の先端がアクチュエータ60のシャッター部61に当接する。この時、上述したように、アクチュエータ60は、回転可能状態となっている。したがって、大きいカード200の挿入に伴い、アクチュエータ60は、ネジリコイルバネ69の付勢力に抗して、前方に向って押し倒されるように図7(b)において反時計回りに回転する。アクチュエータ60の回転の途中において、図7(c)に示されるように、該アクチュエータ60の一対の脚部64、65に設けられている係合凹部64a、65aが仕切り部材40の左右一対の駆動片44、45に係合する。
【0056】
図8(a)、(b)に示されるように、さらに大きいカード200が挿入されると、アクチュエータ60は完全に倒れ込んだ第2の位置まで回転し、大きいカード200が通過し得るようにカード収容空間上部が開放される。それにより、大きいカード200は、該アクチュエータ60のシャッター部61を乗り越えて前進する。
【0057】
この時、アクチュエータ60の第2の位置までの回転が、一対の駆動片44、45を十分に押し下げ、仕切り部材40を傾斜させる。それにより、仕切り部材40の仕切り板41後端部も押し下げられている。すなわち、仕切り板41は、第2の位置にまで移動させられている。したがって、大きいカード200の先端は、仕切り板41の後端部上に乗り上がることが可能な状態となっている。
【0058】
図8(a)、(b)の状態から大きいカード200をさらに挿入すると、大きいカード200の先端がイジェクト機構100のカード当接部材106に当接する。大きいカード200は、イジェクト機構100の圧縮コイルバネ107の付勢力に抗して前方に向って押し込まれ、図9に示されるように、大きいカード200の先端がベース部材10の前壁12に到達するまで押し込まれる。
【0059】
図9の状態において、大きいカード200から押し込む力を取り除くと、プッシュ・プッシュ式イジェクト機構100の作用により大きいカード200は若干後方に押し戻された状態でカードコネクタ1のカード収容空間内に保持される。この時、大きいカード200の複数のパッド203は、対応する複数の第1のコンタクト80にそれぞれ接触し得る。また、大きいカード200は、仕切り部材40の仕切り板41を介して底壁11に埋め込まれている一対の押上バネ31、32の付勢力に抗して、カード収容空間内にある仕切り部材40を第3の位置まで押し下げる。言い換えれば、仕切り部材40の仕切り板41は、大きいカード200の上部201の表面に接触し、底壁11に平行な第3の位置あり、大きいカード200を上方に押し上げている。したがって、大きいカード200の複数のパッド203は、対応する複数の第1のコンタクト80に対して、それぞれ適切な接触圧で電気的に接触し得る。なお、大きいカード200がカードコネクタ1のカード収容空間内に装着されたとき、大きいカード200の上部201の表面が小さいカード300用の複数の第2のコンタクト90に接触してもよい。このように構成しても、大きいカード200の上部201の表面にはパッドが形成されていないし、該表面は電気的に導電性を有していないので、大きいカード200に何ら悪い影響を与えることはない。むしろ、複数の第2のコンタクト90に接触することで、大きいカード200と第1のコンタクト80との接触圧を大きくするために、これらのコンタクトの反発力を利用し得る。
【0060】
大きいカード200をカードコネクタ1から取り外すときは、図10の状態にある大きいカード200を図9の状態にまで再度押し込む。続いて、図9の状態で大きいカード200を押し込んでいる力を取り除くことで、大きいカード200は、イジェクト機構100の作用によりカードコネクタ1から排出される。仕切り部材40、ロック金具50及びアクチュエータ60は、いずれも、第1の位置にそれぞれ戻る。
【0061】
次に、小さいカード300を本発明に係るカードコネクタ1に装着する動作について図3(b)、図4及び図11ないし13を用いて説明する。図11ないし図13は、カードコネクタに小さいサイズのICカードが装着される様子を示す図である。図11は、小さいカード300が装着されていないときは、図3(b)及び図4に示されるように、カードコネクタ1は、大きいカード200の場合と全く同じ状態にある。
【0062】
小さいカード300が、今、そのバッド203が形成された面を下にしたノーマル状態で下段案内路17に沿うようにカード挿入口5から挿入される。小さいカード300の挿入は、下段案内路17に沿って案内されるので、ロック金具50に接触することがなく、したがって、アクチュエータ60は依然として第1の位置にある。しかしながら、小さいカード300は、アクチュエータ60に設けられた通過開口66を通過可能であるので、そのままカード収容空間内を前進することができる。さらに、仕切り部材40の仕切り板41も、小さいカード300の厚さより高い第1の位置に配置されているので、図11(a)、(b)に示されるように、小さいカード300は、仕切り部材40の仕切り板41の下のカード収容空間内に挿入され得る。
【0063】
図12、13は、小さいカード300がカードコネクタ1に装着される直前の状態を示しており、その動作は、大きいカード200の場合と同様であるので説明は省略する。また、大きいカード200の場合と同様、小さいカード300が装着されたとき、その上面(パッドが形成されていない面)が大きいカード200用の複数の第1のコンタクト80に接触してもよい。
【0064】
小さいカード300が間違って、中段案内路16に沿って挿入されたとしても、小さいカード300はその幅が小さいため、一対のロック金具50の対をなす接触部52を同時に第2の位置へ移動させることが不可能であり、したがって、アクチュエータ60が回転可能状態となることはなく、小さいカード300がアクチュエータ60のシャッター部材61より前方に挿入されることが阻止される。それにより、ICカード300やカードコネクタ1さらにはカードコネクタ1を介して接続されている電子機器を損傷させることはない。
【符号の説明】
【0065】
1 カードコネクタ
5 カード挿入口
10 ベース部材
15、16 一対の第1の案内路
17 一対の第2の案内路
20 カバー部材
30 インサート
31、32 一対の押上バネ
40 仕切り部材
41 仕切り板
42、43 一対のバネ受け部
44、45 一対の駆動部
46、47 一対の規制片
50 一対のロック金具
52 一対の接触部
60 アクチュエータ
61 シャッター部
64、65 一対の脚部
64a、65a 一対の係合凹部
80 第1のコンタクト
90 第2のコンタクト
100 イジェクト機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材とカバー部材とによりカード挿入口を有するカード収容空間を形成し、該カード収容空間内に大小の2つのカードを選択的に1つ装着し得るカードコネクタであって、前記カード挿入口は、前記大きいカードを案内する一対の第1の案内路と前記小さいカードを案内する一対の第2の案内路を有するカードコネクタにおいて、
その接点が前記カード収容空間内において下向きになるように配置された前記大きいカード用の複数の第1のコンタクトと、その接点が前記カード収容空間内において上向きになるように配置された前記小さいカード用の複数の第2のコンタクトを有する複数のコンタクト、
前記第1の案内路に設けられた前記大きいカードの幅を検出して第1の位置から第2の位置へ移動する一対のロック金具、
該一対のロック金具に係合し、第1の位置から第2の位置へ回転可能なアクチュエータであって、係合部、及び前記小さいカードが通過し得る通過開口を少なくとも含むアクチュエータ、
第1の位置から第2の位置へ移動可能な仕切り板、及び前記係合部に係合する駆動片を有し、前記大小の2つのカードの挿入を前記カード収容空間の上下に振り分ける仕切り部材、
を備え、
前記大きいカードがその外部接点を上にして挿入されたとき、前記ロック金具を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させ、前記アクチュエータを回転可能とし、前記大きいカードのさらなる挿入が前記アクチュエータを前記第1の位置から前記第2の位置へ回転させ、前記仕切り板を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させ、前記大きいカードを前記カード収容空間の上部に案内し得ることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記係合部が、前記アクチュエータに一対形成され、
前記仕切り板には、前記一対の係合部に係合する一対の駆動片が形成されることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記係合部には、前記駆動片が係合する凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記仕切り部材の仕切り板は、前記大きいカードのさらなる挿入により、底壁に平行な第3の位置へ移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項5】
前記仕切り部材は、垂直案内片、及び少なくとも一対の規制片さらに有し、前記仕切り板の上下動を案内するとともに、該仕切り板の上昇を規制し得ることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項6】
前記仕切り部材は、前記仕切り板の両側に一対の細長いバネ受け部を含み、該一対の細長いバネ受け部に対応して前記ベース部材に設けられた一対の押上バネにより前記仕切り板が前記第1の位置にあるように付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項7】
前記第2のコンタクト及び前記一対の押上バネは、前記ベース部材に埋め込まれるインサートとして形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−14405(P2011−14405A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158094(P2009−158094)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】