説明

カード用コネクタ装置

【課題】カード挿入方向における長さが異なる2種類以上のカードを選択的に挿入可能な構造においてカードの引き抜きを簡単且つ効果的に規制できるカード用コネクタ装置を提供すること。
【解決手段】本発明のカード用コネクタ装置1では、第1または第2のカードC1,C2の挿入に対応するカード挿入切換部材としての第2の押圧作用部12cに凸部として係合突起99を設け、この係合突起99を第1のカードC1の凹部105に係合させるようにしている。そのため、長さが異なる2種類以上のカードを選択的に挿入可能に構成されたカード用コネクタ装置において第1のカードC1の引き抜きを簡単且つ効果的に規制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカード用コネクタ装置に関し、特に、長さが異なる2種類以上のカードを選択的に挿入可能に構成されたカード用コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話などの電子装置に対して着脱自在に装着される可搬型の媒体として、PCカード、メモリカードなどのカード状の記憶媒体や通信用カード(以下、単に、カードという)などが知られている。このようなカードは、電子装置に搭載されたカード用コネクタ装置を介して、電子装置に対して挿入・排出されるとともに、その外部接続端子が電子装置の回路基板に形成された電子回路と電気的に接続される。
【0003】
カード用コネクタ装置としては、例えば、電子装置に取り付け固定されるハウジングと、このハウジング内でカードと係合したままカードの挿入排出方向に沿って往復移動可能なスライダとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、スライダは、カードの外部接続端子を電子装置の電子回路に電気的に接続する接続位置(カード挿着位置)と、カードをハウジングから取り出すことができるようにカードをハウジングの外部に押し出す排出位置との間で移動することができるとともに、バネなどの付勢手段により前記排出位置へ向けて付勢されており、また、ロック機構により接続位置に保持されるようになっている。
【特許文献1】特開2004−39437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された構成では、スライダとカードとを一体的に移動させるべく、スライダに設けられた凸部をカードの側面の凹部に係合させ、また、この係合状態を所定の位置で保持することにより、スライダ(したがって、ハウジング)からカードが引き抜かれることを少なくとも接続位置で防止するようにしている。
【0005】
しかしながら、このようなカードの引き抜きを規制する簡易な構造は、長さなどが異なる2種類以上のカードを選択的に挿入可能に構成された、いわゆるコンバインコネクタ装置に対応できるものではなく、コンバインコネクタ装置においてカードの引き抜きを規制できる簡単で有効な構造形態が求められている。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、カード挿入方向における長さが異なる2種類以上のカードを選択的に挿入可能な構造においてカードの引き抜きを簡単かつ効果的に規制できるカード用コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカード用コネクタ装置は、第1のカードと、この第1のカードよりもカード挿入方向における長さが短い第2のカードとを選択的に挿入可能に構成されたカード用コネクタ装置であって、前記カードが挿入されるカード挿入口並びに、前記第1のカード及び前記第2のカードを選択的に収納可能な収納部を有するハウジングと、前記ハウジング内で前記カードと電気的な接続を行うための接続位置と前記カードを前記ハウジングから取り出すための排出位置との間で、前記ハウジングに対して移動可能なスライド部材と、を備え、前記スライド部材は、前記第1のカードが前記収納部内に挿入されるときに当該第1のカードの挿入経路から退避し、前記第2のカードが前記収納部内に挿入されるときに当該第2のカードと当接する移動可能なカード挿入切換部材を有し、前記カード挿入切換部材は、前記収納部内へ突出する方向に常時付勢されるとともに、前記収納部内に挿入される前記第1のカードの側面の凹部と係合する凸部を有していることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1及び第2のカードの挿入に対応するカード挿入切換部材に凸部を設け、この凸部を第1のカードの凹部に係合させるようにしているため、長さが異なる2種類以上のカードを選択的に挿入可能に構成されたカード用コネクタ装置において第1のカードの引き抜きを簡単かつ効果的に規制することができる。
【0009】
本発明のカード用コネクタ装置においては、前記凸部が前記凹部と係合した状態で前記カード挿入切換部材の移動を規制することにより前記凸部と前記凹部との係合状態を保持する移動規制手段を備えていることが好ましい。この構成によれば、前記凸部と前記凹部との自在な係脱を許容するカード挿入切換部材の移動が移動規制手段により規制されるため、第1のカードの引き抜きを確実に規制することができる。
【0010】
本発明のカード用コネクタ装置においては、前記移動規制手段は、前記接続位置で前記カード挿入切換部材の移動を規制することが好ましい。この構成によれば、電気的な接続が果たされる接続位置において第1のカードの引き抜きが防止されるため、第1のカードの電気的な接続状態を確実に維持でき、電気的安全性を確保できる。
【0011】
本発明のカード用コネクタ装置においては、前記スライド部材は、前記第2のカードが前記収納部内に挿入されるときに当該第2のカードと係合する係合手段を備えていることが好ましい。この構成によれば、第1のカードの引き抜き防止に加えて、第2のカードの引き抜きも規制できる。
【0012】
本発明のカード用コネクタ装置においては、前記係合手段と前記第2のカードとの係合状態を保持する係合保持手段をさらに備えていることが好ましい。この構成によれば、第2のカードの引き抜きを確実に規制することができる。
【0013】
本発明のカード用コネクタ装置においては、前記係合保持手段は、前記接続位置で前記係合手段と前記第2のカードとの係合状態を保持することが好ましい。この構成によれば、電気的な接続が果たされる接続位置において第2のカードの引き抜きが防止されるため、第2のカードの電気的な接続状態を確実に維持でき、電気的安全性を確保できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1及び第2のカードの挿入に対応するカード挿入切換部材に凸部を設け、この凸部を第1のカードの凹部に係合させるようにしているため、カード挿入方向における長さが異なる2種類以上のカードを選択的に挿入可能に構成されたカード用コネクタ装置において第1のカードの引き抜きを簡単かつ効果的に規制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
まず、主に図1を参照しながら、本発明の実施の形態に係るカード用コネクタ装置1の構成について説明する。図1に示すように、本実施の形態のカード用コネクタ装置1は、長さが異なる2種類のカードを選択的に挿入可能に構成された、いわゆるコンバインコネクタ装置であり、例えばパソコン、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話などの電子装置に対して取り付け固定されるハウジング2を有している。このハウジング2は、例えば合成樹脂などの絶縁材料で構成され、前方及び上方が開口された箱型のハウジング本体2aと、ハウジング本体2aに結合され、ハウジング本体2aの上部開口を覆う、例えば金属製のカバー部材2b(図17参照)とを含む。ハウジング本体2aは、メモリカードなどのカード状の媒体(以下、単にカードCと称し、特にカード挿入方向における長さが長いカードを第1のカードC1、カード挿入方向における長さが短いカードを第2のカードC2という)が挿入されて収納される収納部3を有しており、又はハウジング2の前面には、収納部3に連通するカード挿入口4が形成されている。なお、本明細書では、便宜上、カード挿入口4が位置する側を「前」、これと反対側を「後」、カバー部材2bが位置する側を「上」、これと反対側を「下」として、方向を規定するものとする。
【0016】
カード挿入口4に対向する収納部3の奥側には、収納部3内に収納される第1のカードC1の外部接続端子と接触する弾性片から成る複数のコネクタ端子5aが並設されるとともに、収納部3の長手方向の略中間部には、収納部3内に収納される第2のカードC2の外部接続端子と接触する弾性片で構成された複数のコネクタ端子5bが並設されている。この場合、コネクタ端子5a,5bは、電子装置などの外部の回路基板上の対応する回路パターンと電気的に接続されるようになっている。なお、カードCが所定の収納位置に位置されたこと(したがって、第1または第2のカードC1,C2の外部接続端子とコネクタ端子5a,5bとが接触したこと)を電気的に検知するためのカード検出手段が設けられていることが好ましい。
【0017】
また、ハウジング本体2aは両側に側壁22a,22bを有している。このうち、一方側の側壁22aの内面は、収納部3内に挿入されるカードCの側縁部を案内するガイド面6aとして形成されている。
【0018】
また、ハウジング本体2aには、ハウジング2に対するカードCの挿入/排出方向(カード挿入口4を横切る図中の矢印S方向)に移動可能なスライド部材12が取り付けられている。この場合、スライド部材12は、ハウジング本体2aの他方側の側壁22bに沿って摺動可能に配置されている。
【0019】
スライド部材12は、合成樹脂などの絶縁材料により構成されるとともに、例えばカードCの挿入/排出方向に沿って延びるガイドレールに係合しており、このガイドレールに沿って移動するようになっている。具体的には、スライド部材12は、後述するハート型のカム溝80とロックピン82との係合による移動規制により、収納部3内に導入された第1または第2のカードC1,C2の外部接続端子がコネクタ端子5a又は5bに電気的に接続される接続位置(後述する図7及び図14に示される位置)と、ハウジング2に対するカードCの挿脱が可能となるようにカードCがハウンジング2の外部に押し出される排出位置(図1,10及び図11,16に示される位置)との間で移動できるようになっている。
【0020】
また、スライド部材12は、ハウジング本体2aの側方に位置して前後(カードCの挿入/排出方向)に延びる本体部12aと、収納部3内に突出するように本体部12aの後端部に一体に形成され、相対的に長い第1のカードC1の後端と当接可能な略三角形状の第1の押圧作用部12bと、収納部3内に突出するように本体部12aの略中間部に移動可能に設けられ、相対的に短い第2のカードC2の後端と当接可能な略長方形状の第2の押圧作用部12cとを有している。
【0021】
本体部12aの前端側の内側面は、前述したハウジング本体2aの第1のガイド面6aとともに、収納部3内に挿入されるカードCの側縁部を案内する第2のガイド面6bとして形成されている。また、第1及び第2の押圧作用部12b,12cは、対応する第1または第2のカードC1,C2と当接することにより、カードCとスライド部材12との間の移動に伴う力の伝達を行うようになっている。また、第2の押圧作用部12cは、図示しない付勢バネにより収納部3内へと突出する方向へ常時付勢されており、第1のカードC1の側面と当接して第1のカードC1のハウジング2に対する挿脱を第1及び第2のガイド面6a,6bと共に案内する第3のガイド面103を有している。
【0022】
なお、スライド部材12は、付勢手段としての圧縮バネ45により、前記排出位置に向けて常時付勢されている。この場合、圧縮バネ45の後端は、ハウジング本体2aの後端壁21の内面に突設されたバネ支持部20に支持されるとともに、圧縮バネ45の前端側は、スライド部材12の本体部12aの後端面に突設されたバネ支持部25に支持されている。
【0023】
また、スライド部材12は、挿入されるカードCに応じて第2の押圧作用部12cを収納部3に対して突没させるためのレバー10を有している。具体的に、このレバー10は、その一端に形成された長溝10aが第2の押圧作用部12cに突設された突起92に係合するとともに、その他端がハウジング本体2aの他方側の側壁22bの内面に形成された段部と係合しており、この係合部位を支点Pとして傾斜位置(カードCの挿脱方向に対して所定の角度を成す図1に示される位置)と垂直位置(カードCの挿脱方向と略平行となる図4などに示される位置)との間で回動できるようになっている。そして、このようなレバー10の回動により、第2の押圧作用部12cは、収納部3内に突出して第2のカードC2の後端と当接可能な突出位置(図1及び図12などに示される位置)と、収納部3内から退避する退避位置(図4などに示される位置)との間を、カードCの挿脱方向と略直交する方向に延びる摺動溝76に沿って移動するようになっている。
【0024】
また、レバー10は、前記傾斜位置で収納部3内に突出することにより第1のカードC1と当接可能な当接面10bを有しており、この当接面10bと当接する第1のカードC1のハウジング2内への挿入により、前記傾斜位置から前記垂直位置へと回動されるようになっている。特に、本実施の形態において、当接面10bは、レバー10が前記傾斜位置に保持されている状態で、収納部3内に挿入される第1のカードC1の後端角部に形成されたテーパ面101(図1参照)と当接し、収納部3内に挿入される第2のカードC2の後端部側面に形成された切り欠き112(図11参照)と接触しないような長さ及び角度で収納部3内に突出する。
【0025】
すなわち、本実施の形態の構成においては、第2の押圧作用部12cを前記突出位置に向けて常時付勢する前記付勢バネの作用により、第2の押圧作用部12cが前記突出位置に常時保持されるとともに、レバー10が前記傾斜位置に保持されており、それにより、第1のカードC1が第2の押圧作用部12cに達する前にレバー10の当接面10bと当接することを許容する一方、第2のカードC2をレバー10の当接面10bに当接させることなく第2の押圧作用部12cに当接させるようになっている。そして、第1のカードC1がレバー10の当接面10bと当接してハウジング2内に向けて挿入される場合には、レバー10が前記傾斜位置から前記垂直位置へと回動し、それに伴って、第2の押圧作用部12cが前記付勢バネの付勢力に抗して前記突出位置から前記退避位置へと摺動溝76に沿って移動されるようになっている。すなわち、本実施の形態において、第2の押圧作用部12cは、第1のカードC1及び第2のカードC2の挿入に対応するカード挿入切換部材、さらに具体的には、カードCの挿入に応じてその機能が切り換わる(第1のカードC1が挿入される場合には、退避することにより第1のカードC1の挿入経路を確保して後述するように第1のカードC1と係合する機能を有し、第2のカードC2が挿入される場合には、第2のカードC2と当接することにより第2のカードC2のそれ以上の挿入を阻止する機能を有する)カード挿入切換部材として作用する。
【0026】
また、本実施の形態において、第2の押圧作用部12cのガイド面103には、第1のカードC1の側面に設けられた凹部105(図1参照)と係脱可能に係合する係合突起(凸部)99が設けられている。この係合突起99は、摺動溝76に沿う第2の押圧作用部12cの移動が許容されている状態では、収納部3に対する第1のカードC1の挿脱により自在に凹部105に対して係脱できる。なお、そのような係脱に必要な力を軽減するため、係合突起99は略円弧状の係合面あるいは前後で傾斜方向が異なる一対のテーパ状の係合面を有していることが好ましい。
【0027】
また、本実施の形態においては、レバー10が前記垂直位置に位置され、スライド部材12が前記接続位置に位置された状態で摺動溝76に沿う第2の押圧作用部12cの移動を片側から規制する移動規制手段が設けられている。この移動規制手段は、具体的には、当接面10bと逆側に位置するレバー10の側面に設けられた第1の規制突起91と、ハウジング本体2aの他方側の側壁22bの内面に形成され、レバー10が前記垂直位置に配置されスライド部材12が前記接続位置に位置された状態で第1の規制突起91と当接する第2の規制突起97とで構成されている。これらの規制突起91,97は、レバー10が前記垂直位置に位置され、スライド部材12が前記接続位置に位置された状態で互いに当接する(図6参照)ことにより、第2の押圧作用部12cの係合突起99と係合する第1のカードC1との間でレバー10及び第2の押圧作用部12cを挟み込み、それにより、側壁22bに向かうレバー10のそれ以上の移動を阻止する。そのため、係合突起99と凹部105との係合状態が保持され(凹部105から係合突起99が外れることが阻止され)、したがって、スライド部材12に対する第1のカードC1の支持状態が維持されて、収納部3内から第1のカードC1が引き抜かれることが規制される。
【0028】
また、本実施の形態においては、第2のカードC2が収納部3内から引き抜かれることを規制する手段も設けられている。具体的に、この手段は、第2のカードC2の側面に形成された凹部120(図11参照)と、スライド部材12の前端部に支持されて第2のガイド面6bに沿って延びるバネ片で構成された係止部材(係合部材)77と、ハウジング2のカバー部材2bに形成され、スライド部材12の前記接続位置近傍で収納部3内に向けて内側下方に突出する規制片130(係合保持手段;図17参照)とによって構成されている。この場合、係止部材77は、収納部3内に向けて突出し、第2のカードC2の凹部120と係脱可能に係止する係止凸部77aを有している。また、規制片130は、スライド部材12が前記接続位置近傍に位置された状態で、係止部材77の背面に当て付き、係止凸部77aが凹部120から外れる方向に係止部材77がその弾力に抗して変位することを阻止する(図18参照)。
【0029】
また、本実施の形態のカード用コネクタ装置1は、スライド部材12を前記接続位置でロックするロック機構を有している。このロック機構は、スライド部材12の本体部12aの前端側上面に形成されたハート型のカム溝80と、このカム溝80と係合するロックピン82とで構成されている。
【0030】
ロックピン82は、その一端82aがハウジング本体2aの側部前端に支持され、その他端82bがカム溝80と摺動可能に係合するようになっている。また、ハウジング2のカバー部材2bには、ロックピン82を押圧してロックピン82の他端82bとカム溝80との係合状態を保持する図示しない押圧部が設けられている。この場合、押圧部は、ロックピン82と対向するカバー部材2b(金属板)の部位を下側に向けて切り起こすことにより形成される弾性片で構成されることが好ましい。
【0031】
図6などに明確に示されるように、ハート型のカム溝80は、複数の斜面や平面からなる環状溝として形成されている。具体的には、カム溝80は、スライド部材12の前記排出位置を規定する後端係止溝部80aと、カム溝80の前端側の中央に位置するとともにスライド部材12の前記接続位置を規定する窪んだ前端係止溝部80bと、後端係止溝部80aと前端係止溝部80bとを接続するように略ハート型の外形に沿って延びる一対の第1及び第2の摺動溝部80c,80dとを含む。また、カム溝80は、後述するように、その後端係止溝部80aにロックピン82の他端82bが係止することにより、スライド部材12を前記排出位置に保持するとともに、その前端係止溝部80bにロックピン82の他端82bが係止することにより、スライド部材12を前記接続位置に保持(ロック)するようになっている。
【0032】
次に、図1〜図18を参照しながら、上記構成のカード用コネクタ装置1の動作について説明する。まず、図1〜図10を参照しながら、第1のカードC1をハウジング2内に挿入する場合について説明する。図1は、スライド部材12が圧縮バネ45の付勢力により排出位置に位置された状態を示している。この状態では、カム溝80の後端係止溝部80aにロックピン82の他端82bが係止している。この状態から、第1のカードC1を、カード挿入口4を通じてハウジング2内に押し込む(挿入する)と、図3に示されるように、第1のカードC1の後端角部に形成されたテーパ面101が、傾斜位置に保持されたレバー10の当接面10bに当接する。そして、その状態からさらに第1のカードC1をハウジング2内に押し込むと、第1のカードC1の押し込み力により、レバー10が外側に回動して垂直位置に達するとともに、第2の押圧作用部12cが摺動溝76に沿って移動して退避位置に達する(図4参照)。これにより、レバー10及び第2の押圧作用部12cが収納部3内から退避し、第1のカードC1を第2の押圧作用部12cに当接させることなく第1の押圧作用部12bに向けて押し進めることができる。そして、そのまま第1のカードC1をハウジング2内へと押し進めていくと、第1のカードC1の凹部105が第2の押圧作用部12cの係合突起99と対向する位置で、係合突起99が凹部105と係合する。その状態が図5に示されている。
【0033】
また、このような係合状態で第1のカードC1をハウジング2内にさらに挿入していくと、図6に示すように、第1のカードC1の後端が第1の押圧作用部12bに当接するとともに、第1の押圧作用部12bに作用する第1のカードC1の押し込み力により、スライド部材12が圧縮バネ45の付勢力に抗して前記接続位置へと移動する。また、この移動に伴って、ロックピン82の他端82bがカム溝80の第1の摺動溝部80cをトレースする。そして、このような移動によってスライド部材12が接続位置に達すると、ロックピン82の他端82bがカム溝80の中央の窪んだ前端係止溝部80bに係止し、スライド部材12がハウジング2に対して位置決め固定される。すなわち、スライド部材12が接続位置でロックされる。その状態が図7に示されている。
【0034】
この図7に示す状態では、第1のカードC1の外部接続端子が対応するコネクタ端子5aと接触されるとともに、移動規制手段としての規制突起91,97同士が当接する。このように規制突起91,97同士が当接してしまうと、側壁22bへと向かうレバー10のそれ以上の移動が阻止されるため、係合突起99と凹部105との係合状態が保持され、凹部105から係合突起99が外れることがなくなる。すなわち、この状態では、スライド部材12から第1のカードC1を外すことができず、したがって、収納部3内から第1のカードC1を完全に引き抜くことはできない。
【0035】
次に、この図7の状態で、第1のカードC1をハウジング2から引き出す場合には、第1のカードC1を一旦ハウジング2内に押し込んで、スライド部材12を圧縮バネ45の付勢力に抗してハウジング2の奥へとさらにスライドさせる。これにより、ロックピン82の他端82bとカム溝80の前端係止溝部80bとの係止状態が解除される(図8参照)。そのため、この状態で第1のカードC1及びスライド部材12に対する押圧力を解除すると、圧縮バネ45による付勢力により第1のカードC1及びスライド部材12が排出位置へと移動される。この移動により、ロックピン82の他端82bがカム溝80の第2の摺動溝部80dをトレースし(図9参照)、それに伴って第1のカードC1もカード挿入口4を通じてハウジング2の外部へと押し出される。その後、ロックピン82の他端82bがカム溝80の後端係合溝部80aに係止して、スライド部材12が排出位置に位置されると、図10に示される状態となり、ハウジング2から第1のカードC1を取り出すことが可能になる。このまま第1のカードC1を引き抜けば、前記付勢バネの付勢力によってレバー10及び第2の押圧作用部12cが傾斜位置及び突出位置へと戻り、図1に示される最初の状態を再現することができる。
【0036】
次に、図11〜図18を参照しながら、第2のカードC2をハウジング2内に挿入する場合について説明する。図11は、スライド部材12が圧縮バネ45の付勢力により排出位置に位置された状態を示している。この状態では、前述したように、カム溝80の後端係止溝部80aにロックピン82の他端82bが係止している。この状態から、第2のカードC2を、カード挿入口4を通じてハウジング2内に押し込む(挿入する)と、第2のカードC2は、その後端部側面に形成された切り欠き112の存在によりレバー10の当接面10bと当接することなく(したがって、第2の押圧作用部12cを退避位置へと移動させることなく)、その後端が第2の押圧作用部12cに当接するとともに、その側面に形成された凹部120が係止部材77の係止凸部77aと係合する。その状態が図12及び図17に示されている。
【0037】
また、このような係合状態で第2のカードC2をハウジング2内にさらに挿入していくと、図13に示されるように、第2の押圧作用部12cに作用する第2のカードC2の押し込み力により、スライド部材12が圧縮バネ45の付勢力に抗して前記接続位置へと移動する。また、この移動に伴って、ロックピン82の他端82bがカム溝80の第1の摺動溝部80cをトレースする。そして、このような移動によってスライド部材12が接続位置に達すると、ロックピン82の他端82bがカム溝80の中央の窪んだ前端係止溝部80bに係止し、スライド部材12がハウジング2に対して位置決め固定される。すなわち、スライド部材12が接続位置でロックされる。その状態が図14に示されている。
【0038】
この図14に示す状態では、第2のカードC2の外部接続端子が対応するコネクタ端子5bと接触されるとともに、図18に示されるように、ハウジング2のカバー部材2bに形成された規制片130が係止部材77の背面に当て付き、係止凸部77aが凹部120から外れる方向への係止部材77の変位が阻止される。すなわち、この状態では、凹部120から係止凸部77aが外れることはなく、したがって、スライド部材12から第2のカードC2を外すことができず、結果的に、収納部3内から第2のカードC2を完全に引き抜くことができない。
【0039】
次に、この図14の状態で、第2のカードC2をハウジング2から引き出す場合には、第2のカードC2を一旦ハウジング2内に押し込んで、スライド部材12を圧縮バネ45の付勢力に抗してハウジング2の奥へとさらにスライドさせる。これにより、ロックピン82の他端82bとカム溝80の前端係止溝部80bとの係止状態が解除される(図15参照)。そのため、この状態で第2のカードC2及びスライド部材12に対する押圧力を解除すると、圧縮バネ45による付勢力により第2のカードC2及びスライド部材12が排出位置へと移動される。この移動により、ロックピン82の他端82bがカム溝80の第2の摺動溝部80dをトレースし(図16参照)、それに伴って第2のカードC2もカード挿入口4を通じてハウジング2の外部へと押し出される。その後、ロックピン82の他端82bがカム溝80の後端係合溝部80aに係止して、スライド部材12が排出位置に位置されると、図12に示される状態に戻る。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態のカード用コネクタ装置1では、第1及び第2のカードC1,C2の挿入に対応するカード挿入切換部材としての第2の押圧作用部12cに凸部として係合突起99を設け、この係合突起99を第1のカードC1の凹部105に係合させるようにしているため、カード挿入方向における長さが異なる2種類以上のカードを選択的に挿入可能に構成されたカード用コネクタ装置において第1のカードC1の引き抜きを簡単かつ効果的に規制することができる。
【0041】
また、本実施の形態のカード用コネクタ装置1によれば、係合突起99と凹部105との自在な係脱を許容する第2の押圧作用部12cの移動が移動規制手段としての規制突起91,97により規制されるため、第1のカードC1の引き抜きを確実に規制することができる。
【0042】
また、本実施の形態のカード用コネクタ装置1によれば、第2の押圧作用部12cの移動が前記接続位置で規制されるため、電気的な接続が果たされる接続位置において第1のカードC1の引き抜きを防止できる。したがって、第1のカードC1の電気的な接続状態を確実に維持でき、電気的安全性を確保できる。
【0043】
また、本実施の形態のカード用コネクタ装置1において、スライド部材12は、第2のカードC2が収納部3内に挿入されるときに第2のカードC2の凹部120と係合する係合手段として係止部材77を備えている。したがって、第1のカードC1の引き抜き防止に加えて、第2のカードC2の引き抜きも規制できる。
【0044】
また、本実施の形態のカード用コネクタ装置1は、第2のカードC2の凹部120と係止部材77との係合状態を保持する係合保持手段として規制片130をカバー部材2bに備えている。そのため、第2のカードC2の引き抜きを確実に規制することができる。
【0045】
また、本実施の形態のカード用コネクタ装置1において、規制片130は、前記接続位置において第2のカードC2の凹部120と係止部材77との係合状態を保持する。そのため、電気的な接続が果たされる接続位置において第2のカードC2の引き抜きを防止でき、第2のカードC2の電気的な接続状態を確実に維持できる。
【0046】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、構成部材の大きさや数、取り付け態様などについては、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、携帯電話やPCなどの各種の携帯情報端末、デジタルカメラ、あるいは、デジタルAV機器などの電子装置に対して記憶媒体等のカード状の媒体を挿入・排出するとともに、このカード状の媒体に設けられた外部接続端子と電子装置の回路基板に形成された電子回路との電気的な接続を果たすためのカード用コネクタ装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態に係るカード用コネクタ装置のハウジング本体の平面図であり、(b)は(a)のハウジング本体の一方側の側面図であり、(c)は(a)のハウジング本体の他方側の側面図、(d)は第1のカードの平面図であり、(e)は(d)の第1のカードの一方側の側面図であり、(f)は(d)の第1のカードの他方側の側面図である。
【図2】(a)は図1の(a)のA−A線に沿う断面図であり、(b)は図1の(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図3】(a)はハウジング内への第1のカードの第1の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図4】(a)はハウジング内への第1のカードの第2の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図5】(a)はハウジング内への第1のカードの第3の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図6】(a)はハウジング内への第1のカードの第4の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図7】(a)はハウジング内への第1のカードの第5の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図8】(a)はハウジング内への第1のカードの第6の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図9】(a)はハウジング内への第1のカードの第7の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図10】(a)はハウジング内への第1のカードの第8の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図11】(a)は本発明の一実施の形態に係るカード用コネクタ装置のハウジング本体の平面図であり、(b)は(a)のハウジング本体の一方側の側面図であり、(c)は(a)のハウジング本体の他方側の側面図、(d)は第2のカードの平面図であり、(e)は(d)の第2のカードの一方側の側面図であり、(f)は(d)の第2のカードの他方側の側面図である。
【図12】(a)はハウジング内への第2のカードの第1の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図13】(a)はハウジング内への第2のカードの第2の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図14】(a)はハウジング内への第2のカードの第3の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図15】(a)はハウジング内への第2のカードの第4の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図16】(a)はハウジング内への第2のカードの第5の挿入段階を示す平面図であり、(b)は(a)の一方側側面図であり、(c)は(a)の他方側側面図である。
【図17】スライド部材の排出位置における要部斜視図である。
【図18】スライド部材の接続位置における要部斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 カード用コネクタ装置
2 ハウジング
2a ハウジング本体
2b カバー部材
4 カード挿入口
12 スライド部材
12c 第2の押圧作用部(カード挿入切換部材)
77 係止部材(係合手段)
91,97 規制突起(移動規制手段)
99 係合突起(凸部)
105 凹部
130 規制片(係合保持部材)
C1 第1のカード
C2 第2のカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のカードと、この第1のカードよりもカード挿入方向における長さが短い第2のカードとを選択的に挿入可能に構成されたカード用コネクタ装置であって、
前記カードが挿入されるカード挿入口並びに、前記第1のカード及び前記第2のカードを選択的に収納可能な収納部を有するハウジングと、前記ハウジング内で前記カードと電気的な接続を行うための接続位置と前記カードを前記ハウジングから取り出すための排出位置との間で、前記ハウジングに対して移動可能なスライド部材と、を備え、
前記スライド部材は、前記第1のカードが前記収納部内に挿入されるときに当該第1のカードの挿入経路から退避し、前記第2のカードが前記収納部内に挿入されるときに当該第2のカードと当接する移動可能なカード挿入切換部材を有し、前記カード挿入切換部材は、前記収納部内へ突出する方向に常時付勢されるとともに、前記収納部内に挿入される前記第1のカードの側面の凹部と係合する凸部を有していることを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項2】
前記凸部が前記凹部と係合した状態で前記カード挿入切換部材の移動を規制することにより前記凸部と前記凹部との係合状態を保持する移動規制手段を備えていることを特徴とする請求項1記載のカード用コネクタ装置。
【請求項3】
前記移動規制手段は、前記接続位置で前記カード挿入切換部材の移動を規制することを特徴とする請求項2記載のカード用コネクタ装置。
【請求項4】
前記スライド部材は、前記第2のカードが前記収納部内に挿入されるときに当該第2のカードと係合する係合手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のカード用コネクタ装置。
【請求項5】
前記係合手段と前記第2のカードとの係合状態を保持する係合保持手段をさらに備えていることを特徴とする請求項4記載のカード用コネクタ装置。
【請求項6】
前記係合保持手段は、前記接続位置で前記係合手段と前記第2のカードとの係合状態を保持することを特徴とする請求項5記載のカード用コネクタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2007−242470(P2007−242470A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64504(P2006−64504)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】