説明

ガスバリア性フィルム、基材フィルムおよび有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】 連続成膜に適した高生産性を有する高ガスバリア性フィルムを提供すること。
【解決手段】 基材フィルム上にガスバリア性積層体を有してなるガスバリア性フィルムにおいて、該ガスバリア性積層体が、珪素酸窒化物層、珪素酸化物層、珪素酸窒化物層の順に互いに隣接して配置された3層からなるユニットを少なくとも1つ有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性フィルムに関するものであり、特に各種デバイスの基板やデバイスの被覆フィルムに好適な積層型のガスバリア性フィルムに関し、また前記ガスバリア性フィルムを用いることで得られる耐久性およびフレキシブル性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素など各種ガスの遮断を必要とする物品の包装や、食品、工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、前記ガスバリア性フィルムは、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池またはEL素子の基板等にも使用されはじめている。特に、液晶表示素子、EL素子などへの応用が進んでいる透明基材は、軽量化や大型化という要求に加えて、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、および曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わっている。
【0003】
近年、液晶表示素子やEL素子等の分野においては、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって、透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。また、透明プラスチック等のフィルム基材は上記要求に応えるだけでなく、ロール トゥ ロール(Roll to Roll)方式に適用することも可能であることから、ガラスよりも生産性がよくコストダウンの点でも有利である。しかし、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスと比較してガスバリア性に劣るという問題がある。ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透するため、例えば液晶表示素子に用いた場合には、液晶セル内の液晶を劣化させ、劣化部位が表示欠陥となって表示品位を劣化させてしまう。
【0004】
このような問題を解決するために、上述のようなフィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリア性フィルムを透明基材として用いることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしては、プラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献1参照)や、酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献2参照)が知られており、これらはいずれも1g/m2/day程度の水蒸気バリア性を有する。しかし、近年では液晶ディスプレイの大型化や高精細ディスプレイ等の開発により、フィルム基板の水蒸気バリア性は0.1g/m2/day程度まで要求されるようになってきている。
【0005】
さらに、ごく近年においてはさらなるバリア性が要求される有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイなどの開発が進んでおり、これらに使用可能な透明性を維持しつつもさらなる高バリア性、特に水蒸気バリア性で0.1g/m2/dayを下回る性能をもつ基材が要求されるようになってきた。
かかる要求に応えるために、より高いバリア性能が期待できる手段として、低圧条件下におけるグロー放電で生じるプラズマを用いて薄膜を形成するスパッタリング法やCVD法による成膜検討が行われており、さらに積層構成により所望の性能を得る試みもなされている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、フィルム基材を用いる場合、成膜時の基板温度に制約がかかるため、十分に緻密な構造のバリア層を形成することができず、要求に応える十分なバリア性を有するフィルムの作製に至っていなかった。
【0006】
バリア性に優れた薄膜材料として、珪素窒化物や珪素酸窒化物も利用されてきており、これらを積層する試みもなされている(例えば、特許文献4参照)。
しかしその構成は十分なガスバリア性と、フィルム基材を用いる際に要求される耐屈曲性を両立する構成に至っておらず、更なる技術改良が望まれていた。
【0007】
一方、有機層/無機層の交互積層構造を有するバリア膜を真空蒸着法により作製する技術が提案されており(例えば、特許文献5および非特許文献1参照)、有機EL素子用フィルム基材に必要なバリア性を有するフィルムが得られている。
しかし、有機層と無機層を連続成膜する際に両プロセスの間にコンタミ等の問題があり、また、有機EL素子用の信頼性の高いバリアフィルムを提供するためには少なくとも6層以上の多層構造を形成することが必要であった。このように性能とハイスループットを両立することが困難であったため、新たな連続成膜プロセスに適する成膜方式の開発が望まれていた。
【特許文献1】特公昭53−12953号公報(第1頁〜第3頁)
【特許文献2】特開昭58−217344号公報(第1頁〜第4頁)
【特許文献3】特開2003−206361号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献4】特開2003−206361号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献5】米国特許第6,413,645B1号公報(第4頁[2−54]〜第8頁[8−22])
【非特許文献1】Affinitoら著「Thin Solid Films」(1996)、P.290〜291(第63頁〜第67頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の諸問題を解決すべく、本発明は連続成膜に適した高生産性を有する高ガスバリア性フィルムを提供することを目的とし、さらに、長期間使用しても画質が劣化することのない高耐久性かつフレキシブル性に優れた有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、下記の構成によって上記課題を解決できることを見いだした。
【0010】
[1] 基材フィルム上にガスバリア性積層体を有してなるガスバリア性フィルムにおいて、該ガスバリア性積層体が、珪素酸窒化物層、珪素酸化物層、珪素酸窒化物層の順に互いに隣接して配置された3層からなるユニットを少なくとも1つ有することを特徴とするガスバリア性フィルム。
[2] 40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.01g/m2・day以下である[1]に記載のガスバリア性フィルム。
[3] 前記基材フィルムが、ガラス転移温度が120℃以上の高分子材料で形成される[1]または[2]に記載のガスバリア性フィルム。
[4] 前記珪素酸窒化物層の少なくとも一層が、誘導結合プラズマCVDを用いて形成される[1]〜[3]のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
[5] 前記珪素酸窒化物層の少なくとも一層の酸素と窒素の構成比率(酸素/窒素)が0.2〜5である[1]〜[4]のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
[6] 前記珪素酸窒化物層の少なくとも一層の屈折率が1.7〜2.1である[5]に記載のガスバリア性フィルム。
[7] 前記基材フィルムが、下記一般式(1)で表される構造を有するポリマーまたは下記一般式(2)で表される構造を有するポリマーからなるフィルムである[1]〜[6]のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【化1】

[一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環はそれぞれ同じであっても異なっていても良く、スピロ結合によって結合する。]
【化2】

[一般式(2)中、環βおよび環γは単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同じであっても異なっていても良く、環β上の1つの4級炭素に連結する。]
[8] 前記ガスバリア性積層体上に透明導電層を設けた[1]〜[7]のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
[9] 前記基材フィルムをロール トゥ ロール(roll to roll)方式で供給し、前記ガスバリア性積層体を連続的に成膜する方法で製造した[1]〜[8]のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
[10] [1]〜[9]のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムを用いた画像表示素子用基材フィルム。
[11] [10]に記載の画像表示素子用基材フィルムを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子。
[12] [11]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を成膜後、大気に曝すことなく真空中で珪素酸窒化物層、珪素酸化物層、珪素酸窒化物層の順に互いに隣接して配置された3層からなるユニットを少なくとも1つ設置してから封止して製造した有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、連続成膜に適した高生産性を有する製法により高いガスバリア性フィルムを提供することができる。また本発明によれば、長期間使用しても画質が劣化することのない高耐久性かつフレキシブル性に優れた有機EL素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下において、本発明のガスバリア性フィルムについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
《ガスバリア性フィルム》
本発明のガスバリア性フィルムは、基材フィルム上に形成されたガスバリア性積層体が、珪素酸窒化物層、珪素酸化物層、珪素酸窒化物層の順に互いに隣接して配置された3層からなるユニットを少なくとも1つ有することを特徴とする。ここでいう珪素酸窒化物層は珪素、酸素、窒素を主成分とする層をいい、珪素酸化物層は珪素、酸素を主成分とする層を指す。また、ここでいう主成分とは、珪素酸窒化物層については珪素、酸素、窒素の元素の合計が、珪素酸化物層については珪素と酸素の元素の合計が、層全体を構成する全元素の好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上を占める成分を意味する。本発明のガスバリア性フィルムには、必要に応じてさらに有機層や保護層、吸湿層、帯電防止層等の機能化層を設けることができる。
【0014】
(ガスバリア層)
珪素酸窒化物層に含まれる珪素酸窒化物は、主たる構成元素が珪素、酸素、窒素からなる組成物を指す。成膜の原料や基材・雰囲気等から取り込まれる少量の水素・炭素等の上記以外の構成元素は各々5%未満であることが望ましい。本発明の珪素酸窒化物を構成する珪素、酸素、窒素の構成比は、組成式をSiOxyと表した場合にx/y=0.2〜5.0であるものが好ましい。x/yが5以下であれば十分なガスバリア能がより得られやすくなる。またx/yが0.2以上であれば隣接する珪素酸化物層との間で剥離が生じにくいため、ロール搬送や屈曲した使用にも好ましく適用できるフィルムとなる。x/yの値としては0.33〜2.0がより好ましく、0.5〜1の間が最も好ましい。また、x,yの値は(2x+3y)/4=0.8〜1.1となる組み合わせが好ましい。0.8以上であれば着色が抑えられているためフィルムを広範な用途に用いやすい。1.1以下であれば、珪素・窒素・酸素の構成元素比率が高くて欠陥比率を抑えやすく、十分なガスバリア能が期待できる。(2x+3y)/4は、0.9〜1.1となる組み合わせがさらに好ましい。特に0.95〜1.0の場合には可視光線透過率が高く、かつ安定したガスバリア能が得られるため最も好ましい。
【0015】
本発明の珪素酸化物層を挟む2つ以上の珪素酸窒化物層は、少なくとも一方が上記の条件を満たしていれば、各々の組成が同じであっても、異なっていてもよい。
【0016】
本発明の珪素酸化物層は主たる構成元素が珪素・酸素からなる組成物を指す。珪素・酸素以外の構成元素は各々10%未満であることが望ましい。珪素・酸素以外の構成元素とは、成膜原料や基材・雰囲気等から取り込まれる少量の水素・窒素・炭素等の元素を指す。
【0017】
本発明の珪素酸化物層を構成する珪素・酸素の構成比は、1:1.8〜1:2.0であることが好ましいが、1:1.9〜2.0がより好ましい。特に1:1.95〜1:2.0の場合には可視光線透過率が高く、かつ安定した組成が得やすいため、最も望ましい。
【0018】
本発明の積層試料の元素構成比は、エッチングしながらX線光電子分光法(XPS)により公知の標準的な方法により測定することができる。
【0019】
珪素酸窒化物層の屈折率は1.7〜2.1であることが好ましく、1.8〜2.0がより好ましい。特に1.9〜2.0の場合には可視光線透過率が高く、かつ高いガスバリア能が安定して得られるため、最も好ましい。
【0020】
本発明のガスバリア層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などが適しており、具体的には特許登録第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号各公報記載の形成方法を採用することができる。
【0021】
本発明のガスバリア性フィルムの40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率は、使用する用途によるが、0.1g/m2・day以下であることが好ましく、0.05g/m2・day以下であることがより好ましく、0.01g/m2・day以下であることが特に好ましい。
【0022】
40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.01g/m2・day以下であるハイバリア性のガスバリア性フィルムを作製するには、誘導結合プラズマCVD、電子サイクロトロン共鳴条件に設定したマイクロ波と磁場を印加したプラズマを用いたPVDまたはCVDのいずれかの形成方法を採用するのが好ましく、誘導結合プラズマCVDによる形成方法を採用するのが最も好ましい。誘導結合プラズマCVDや電子サイクロトロン共鳴条件に設定したマイクロ波と磁場を印加したプラズマを用いたCVD(ECR-CVD)は、例えば化学工学会、CVDハンドブック、p.284(1991)に記載の方法にて実施することができる。また、電子サイクロトロン共鳴条件に設定したマイクロ波と磁場を印加したプラズマを用いたPVD(ECR-PVD)は、例えば小野他、Jpn.J.Appl.Phys.23、No.8、L534(1984)に記載の方法にて実施することができる。
【0023】
上記CVDを用いる場合の珪素酸窒化物を形成するための原料としては、珪素供給源としてのシラン、ジクロロシランに代表されるハロゲン化珪素等のガスソースや、ヘキサメチルジシラザン等の液体ソースを用いることができる。窒素供給源しては窒素やアンモニア等のガスソースやヘキサメチルジシラザンなどの液体ソースを使用することができる。
高いバリア能を付与するためには反応性の高いシランガスと窒素の組合せが最も好ましい。
【0024】
同様に珪素酸化物を形成するための原料としては上記の珪素供給源と、酸素供給源としての酸素や一酸化ニ窒素等のガスソースの組み合わせて使用することができる。
隣接する酸窒化珪素層へのコンタミネーションによる影響を防ぐ意味で、シランガスと酸素またはニ窒化酸素の組合せで使用することが最も好ましい。
また、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,3,3―テトラメチルジシロキサン(TDMSO)、テトラメチルシラン(TMS)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、ジエチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシロキサン、メチルジエトキシシロキサン、ノルマルメチルトリメトキシシラン等の公知の有機珪素化合物を一種、または二種以上組み合わせて用いることが可能である。これらに酸素や一酸化ニ窒素等の酸素供給源となるガスソースを組み合わせてもよい。中でもTEOS、TMOSの使用が好ましく、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)がさらに好ましい。
【0025】
一般に基材フィルムを真空槽に入れると、フィルム表面より水・残留溶剤・表面吸着成分・微量の低分子残量成分が放出する。緻密な構造のガスバリア層を形成させるためには放出成分を低減することが好ましい。具体的には成膜前に真空槽に導入したり、プレヒートしたりして放出成分を除去する前処理が有効である。この点で高耐熱性の基材を用いることは有効である。
【0026】
また、高耐熱基材を用いた場合、ガスバリア層や透明導電層設置の際に基板加熱を行うことができるようになり成膜時の分子または原子の再配列を促すため、より高品質なガスバリア性フィルム、ガスバリア性透明導電フィルムが得られるようになる。
【0027】
前記ガスバリア層の厚みに関しては特に限定されないが、各層ともに厚すぎると曲げ応力によるクラック発生や内部応力増加に伴う基材の反り・変形等の恐れがあり、薄すぎると膜が島状に分布するため、いずれも水蒸気バリア性が悪くなる傾向がある。特に本傾向は珪素酸窒化物層において顕著に現れる。
【0028】
このため、珪素酸窒化物層の厚みは、それぞれ20〜500nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、50nm〜200nmであり、最も好ましくは80〜150nmである。2層以上の珪素酸窒化物層は、各々が同じ膜厚であってもよいし、異なる組成であっても良く、上記の範囲であれば特に制限はない。
【0029】
珪素酸化物層の厚みは隣接する2つの珪素酸窒化物層よりも厚いことが好ましく、かつ100〜1000nmの範囲であることが望ましい。100nm以上であればより十分なバリア性が期待でき、1000nm以下であれば外界側に隣接する珪素酸窒化物層を破壊しにくくすることができる。
【0030】
本発明の連続する珪素酸窒化物層・珪素酸化物層・珪素酸窒化物層に信頼性を高める目的でさらに珪素酸化物層・珪素酸窒化物層等を積層してもよい。ただし、その場合も層厚の合計は1500nmを越えないことが望ましい。
【0031】
各層の屈折率を求め、積層膜の層間反射光の光学的干渉による影響を各層厚の調節により所望の光学特性に調整することは当業界では良く知られた技術である。バリア性能を劣化させることなくこれらを調整できることはいうまでもない。
【0032】
必要に応じてガスバリア性積層体と基材フィルムの間および/またはガスバリア性積層体の外側、基材フィルムのバック面に所望の機能層を設置することができる。ガスバリア性積層体と基材フィルムの間に設置する機能層の例としては、平滑化層・密着改良層・ブラックマトリクスを含む遮光層・反射防止層等が挙げられる。CVDやPVD法で設置する無機薄膜層としてもよいし、紫外線もしくは電子線硬化性モノマー、オリゴマーまたは樹脂を、塗布または蒸着で成膜したのち、紫外線または電子線で硬化させた層としてもよい。
【0033】
同様に基材から見てガスバリア性積層体の外側および/または公知の機能層を設置しても良い。機能層の例としては、耐擦傷性等を付与する保護層・防汚層・帯電防止層・反射防止層・防眩層・接着防止層・吸湿性層・耐溶剤層・カラーフィルター層など公知の機能層を用いることができる。
【0034】
特に本発明のガスバリア性フィルムの最外層にITO、IZO等の透明導電層を設置することは、電子デバイスの基材として活用するために有効である。これらの透明導電層は公知のスパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜法、ゾルゲル法を利用したコーティング法等が利用できるが、ガスバリア性積層体成膜時に大気圧に戻さずに連続的に成膜する真空成膜法が製造コストや信頼性・相間密着性の確保の点で有利である。
【0035】
また、本ガスバリア性フィルムは屈曲耐性に優れるため、ロール トゥ ロール法により連続的に成膜することが可能である。さらに、各層の組成が類似しているため、各層成膜エリアを厳密に仕切る必要がなくコンタミによる性能劣化を受けにくいことから、製造コストや信頼性、メンテナンスなどを簡素化することができるため、特にロール トゥ ロールのメリットを享受しやすいメリットがある。
【0036】
さらに本発明のガスバリア性基材上に保護の目的でヒートシール材を介する等の方法で同じまたは異なる基材フィルムを重ねて用いてもよい。
【0037】
(基材フィルム)
本発明のガスバリア性フィルムに用いられる基材フィルムは、上記各層を保持できるフィルムであれば特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記基材フィルムとしては、具体的に、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性カーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂のうち、Tgが120℃以上の樹脂が好ましく、具体的な例としては(括弧内の数字は「ガラス転移温度(Tg)」を示す)、ポリエステル樹脂で特にポリエチルナフタレート樹脂(PEN:121℃)、ポリアリレート樹脂(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES:220℃)、フルオレン環変性カーボネート樹脂(BCF−PC:特開2000−227603号公報の実施例4の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート樹脂(IP−PC:特開2000−227603号公報の実施例5の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の実施例−1の化合物:300℃以上)等の化合物からなるフィルムが挙げられる。
【0038】
本発明者は基材フィルムのTgが120℃以上である場合に本構成が特に有効であることを見出した。特に誘導結合型プラズマCVDに珪素窒化物を成膜する際、基材表面にサーモテープを貼ることでプロセスの最高温度をモニターしたときに50℃以下であることが観測されるが、Tgの異なる樹脂基板に全く同じ条件で成膜するとTg100℃付近を境にバリア能が著しく高くなり、120℃以上で顕著に良化することを見出した。この理由については十分に解析できていないが、サーモテープでは検知されない極表面の状態に対して何らかの影響を及ぼしているものと推定される。
Tgは120℃以上でバリア性が良好であるが、より好ましくは200℃、さらに好ましくは250℃以上であることが好ましい。
【0039】
さらに前記基材フィルムを構成する化合物としては、下記一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂または下記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂が好ましい。
【0040】
【化3】

〔一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環はそれぞれ同一若しくは異なっていてもよく、スピロ結合によって結合している。〕
【0041】
【化4】

〔一般式(2)中、環βおよび環γは単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同一若しくは異なっていてもよい。また、環βおよび環γは、環β上の1つの4級炭素原子によって連結される。〕
【0042】
前記一般式(1)および(2)で表される樹脂は、高耐熱性、高弾性率かつ高い引張り破壊応力を有する化合物であるため、製造プロセスにおいて種々の加熱操作が要求され、かつ屈曲させても破壊しにくい性能が要求される有機EL素子等の基板材料として好適に用いることができる。
【0043】
前記一般式(1)における環αの例としては、インダン環、クロマン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環、インドリン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロフラン環、ジオキサン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。前記一般式(2)における環βの例としては、フルオレン環、インダンジオン環、インダノン環、インデン環、インダン環、テトラロン環、アントロン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。前記一般式(2)における環γとしては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ピリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾチアゾール環、インダン環、クロマン環、インドール環、α-ピロン環等が挙げられる。
【0044】
前記一般式(1)で表されるスピロ構造を有する樹脂の好ましい例としては、下記一般式(3)で表されるスピロビインダン構造を繰り返し単位中に含むポリマー、下記一般式(4)で表されるスピロビクロマン構造を繰り返し単位中に含むポリマー、下記一般式(5)で表されるスピロビベンゾフラン構造を繰り返し単位中に含むポリマーを挙げることができる。
【0045】
【化5】

【0046】
一般式(3)中、R31およびR32はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。R33は置換基を表す。また、R31、R32、R33のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R31およびR32はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基またはフェニル基であることがさらに好ましい。また、R33としては、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基であることがさらに好ましい。
【0047】
【化6】

【0048】
一般式(4)中、R41は水素原子または置換基を表す。R42は置換基を表す。また、R41およびR42のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R41としては、水素原子、メチル基またはフェニル基がさらに好ましく、R42としては、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基がさらに好ましい。
【0049】
【化7】

【0050】
一般式(5)中、R51は水素原子または置換基を表す。R52は置換基を表す。また、R51、R52のそれぞれが連結して環を形成してもよい。mおよびnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R51としては、水素原子、メチル基またはフェニル基が好ましい。また、R52としては、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基が好ましい。
【0051】
また、前記一般式(2)における環βとしては、例えばフルオレン、1,4−ビベンゾシクロヘキサンが挙げられ、環γとしては、例えばフェニレン、ナフタレンが挙げられる。前記一般式(2)で表されるカルド構造を有する樹脂の好ましい例として、下記一般式(6)で表されるフルオレン構造を繰り返し単位中に含むポリマーを挙げることができる。
【0052】
【化8】

【0053】
一般式(6)中、R61およびR62はそれぞれ独立に置換基を表す。また、R51、R52のそれぞれが連結して環を形成してもよい。jおよびkはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。前記置換基の好ましい例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。R51およびR52としては、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、メチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基またはフェニル基であることがさらに好ましい。
【0054】
前記一般式(3)〜(6)で表される構造を繰り返し単位中に含む樹脂は、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドまたはポリウレタンなど種々の結合方式で連結されたポリマーであってもよいが、一般式(3)〜(6)で表される構造を有するビスフェノール化合物から誘導されるポリカーボネート、ポリエステルまたはポリウレタンであることが好ましい。
【0055】
以下に一般式(1)または一般式(2)で表される構造を有する樹脂の好ましい具体例(樹脂化合物(I−1)〜(FL−11))を挙げる。但し、本発明で用いることができる樹脂はこれらに限定されるものではない。
【0056】
【化9】

【0057】
【化10】

【0058】
【化11】

【0059】
【化12】

【0060】
【化13】

【0061】
【化14】

【0062】
本発明における基材フィルムに用いることのできる一般式(1)および一般式(2)で表される構造を有する樹脂は、単独で用いてもよく、複数種混合して用いてもよい。また、ホモポリマーであってもよく、複数種構造を組み合わせたコポリマーであってもよい。前記樹脂をコポリマーとする場合、一般式(1)または(2)で表される構造を繰り返し単位中に含まない公知の繰り返し単位を本発明の効果を損ねない範囲で共重合することができる。なお、ホモポリマーとして用いた場合よりも溶解性および透明性の観点で優れている場合が多いことから、上記樹脂はコポリマーであることが好ましい。
【0063】
本発明に用いることのできる一般式(1)および(2)で表される構造を有する樹脂の好ましい分子量は、質量平均分子量で1万〜50万が好ましく、2万〜30万がさらに好ましく、3万〜20万が特に好ましい。前記樹脂の分子量が低すぎる場合、フィルム成形が困難となりやすく、また力学特性が低下してしまう場合がある。また、分子量が高すぎる場合、合成上分子量のコントロールが困難となり、また溶液の粘度が高すぎて取扱いが難しくなる場合がある。なお、前記分子量は、これに対応する粘度を目安にすることもできる。
【0064】
本発明における基材フィルムは、その性質上、水を取り込まないことが望ましい。すなわち水素結合性官能基を持たない樹脂から形成されていることが望ましい。前記基材フィルムの平衡含水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。
【0065】
前記平衡含水率の低い基材フィルムを用いると、基材フィルムの帯電が起こりやすくなってしまう傾向がある。基材フィルムの帯電はパーティクルを吸着してバリア層の性能を損ねたり、接着によるハンドリング不良の原因となったりするため好ましくない現象である。このため、係る問題を解決するために、基材フィルムの表面には、これに隣接して帯電防止層が設置されることが好ましい。
【0066】
ここで、帯電防止層とは、50℃、相対湿度30%における表面抵抗値が1Ω/□〜1013 Ω/□である層をいう。前記帯電防止層の50℃、相対湿度30%における表面抵抗値は、1×108Ω/□〜1×1013Ω/□であることが好ましく、1×108/□〜1×1011Ω/□であることが好ましく、1×108Ω/□〜1×109Ω/□であることが特に好ましい。
【0067】
《画像表示素子》
本発明のガスバリア性フィルムの用途は特に限定されないが、光学特性と機械特性と双方に優れるため、画像表示素子の透明電極用基板として好適に用いることができる。ここでいう「画像表示素子」とは、円偏光板・液晶表示素子、タッチパネル、有機EL素子などを意味する。
【0068】
<円偏光板>
前記円偏光板は、本発明のガスバリア性フィルム上に、λ/4板と偏光板とを積層することで作製することができる。この場合、λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
【0069】
<液晶表示素子>
前記液晶表示装置は、反射型液晶表示装置と透過型液晶表示装置とに大別することができる。
前記反射型液晶表示装置は、下方から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明のガスバリア性フィルムは、前記透明電極および上基板として使用することができる。前記反射型液晶表示装置にカラー表示機能をもたせる場合には、さらにカラーフィルター層を前記反射電極と前記下配向膜との間、または、前記上配向膜と前記透明電極との間に設けることが好ましい。
【0070】
また、前記透過型液晶表示装置は、下方から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明のガスバリア性フィルムは、前記上透明電極および上基板として使用することができる。また、前記透過型液晶表示装置にカラー表示機能をもたせる場合には、さらにカラーフィルター層を前記下透明電極と前記下配向膜との間、または、前記上配向膜と前記透明電極との間に設けることが好ましい。
【0071】
前記液晶層の構造は特に限定されないが、例えば、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型またはHAN(Hybrid Aligned Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型、ECB(Electrically Controlled Birefringence)型、OCB(Optically Compensated Bend)型、または、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)型であることが好ましい。
【0072】
<タッチパネル>
前記タッチパネルとしては、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載されたものの基板として本発明のガスバリア性フィルムを適用したものを用いることができる。
【0073】
<有機EL素子>
有機EL素子としては、本発明のガスバリア性フィルム上に陰極と陽極を有し、両電極の間に有機発光層(以下、単に「発光層」と称する場合がある。)を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極および陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
【0074】
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、または、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。また、発光層としては一層だけでも良く、また、第一発光層、第二発光層、第三発光層等に発光層を分割しても良い。さらに、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0075】
次に、本発明の有機EL素子を構成する要素について、詳細に説明する。
【0076】
(陽極)
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0077】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、またはこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0078】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流または高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0079】
本発明の有機EL素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。が、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0080】
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0081】
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
【0082】
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0083】
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0084】
(陰極)
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0085】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、2属金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0086】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属や2属金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属または2属金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0087】
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0088】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種または2種以上を同時または順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0089】
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0090】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属または2属金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0091】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、さらにITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0092】
(有機化合物層)
本発明における有機化合物層について説明する。
本発明の有機EL素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、有機発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0093】
−有機化合物層の形成−
本発明の有機EL素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0094】
−有機発光層−
有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、または正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、または電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていても良く、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でも良い。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であっても良く、ドーパントは1種であっても2種以上であっても良い。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいても良い。
また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0095】
本発明においては、相異なる二種類あるいは三種類以上の発光材料を用いることにより、任意の色の発光素子を得ることができる。中でも、発光材料を適切に選ぶことにより、高発光効率および高発光輝度である白色発光素子を得ることができる。例えば、青色発光/黄色発光や水色発光/橙色発光、緑色発光/紫色発光のように、補色関係にある色を発光する発光材料を用いて白色を発光させることができる。また、青色発光/緑色発光/赤色発光の発光材料を用いて白色発光させることもできる。
なお、ホスト材料が発光材料の機能を兼ねて発光してもよい。例えば、ホスト材料の発光と発光材料の発光によって、素子を白色発光させてもよい。
【0096】
本発明においては、相異なる二種類以上の発光材料を同一発光層に含んでいても良く、また、例えば、青色発光層/緑色発光層/赤色発光層、あるいは青色発光層/黄色発光層のようにそれぞれの発光材料を含む層を積層した構造であっても良い。
【0097】
発光層の発光色の調整手法には以下のような手法もある。これらの一または複数の手法を用いて発光色を調整することができる。
【0098】
1)発光層よりも光取り出し側にカラーフィルタを設けて調整する手法。
カラーフィルタは、透過する波長を限定することで発光色を調整する。カラーフィルタとしては、例えば青色のフィルターとしては酸化コバルト、緑色のフィルターとしては酸化コバルトと酸化クロムの混合系、赤色のフィルターとしては酸化鉄などの公知の材料を用い、例えば真空蒸着法などの公知の薄膜成膜法を用いて透明基板上に形成してもよい。
【0099】
2)発光を促進したり阻害したりする材料を添加して発光色を調整する手法。
例えば、ホスト材料からエネルギーを受け取り、このエネルギーを発光材料へ移す、いわゆるアシストドーパントを添加し、ホスト材料から発光材料へのエネルギー移動を容易にすることができる。アシストドーパントとしては、公知の材料から適宜選択され、例えば後述する発光材料やホスト材料として利用できる材料から選択されることがある。
【0100】
3)発光層よりも光取り出し側にある層(透明基板を含む)に、波長を変換する材料を添加して発光色を調整する手法。
この材料としては公知の波長変換材料を用いることができ、例えば、発光層から発せられた光を他の低エネルギー波長の光に変換する蛍光変換物質を採用することができる。蛍光変換物質の種類は目的とする有機EL装置から出射させようとする光の波長と発光層から発せられる光の波長とに応じて適宜選択される。また、蛍光変換物質の使用量は濃度消光を起さない範囲内でその種類に応じて適宜選択可能である。蛍光変換物質は1種のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。複数種を併用する場合には、その組合せにより青色光、緑色光および赤色光以外に、白色光や中間色の光を放出することができる。
【0101】
本発明に使用できる蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0102】
また、本発明に使用できる燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子またはランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、および白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、および白金である。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、およびガドリニウムが好ましい。
【0103】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0104】
燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0105】
また、本発明における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するものおよびアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0106】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。
【0107】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極または陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
【0108】
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜100nmであるのがより好ましく、1nm〜100nmであるのがさらに好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0109】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極または陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0110】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのがさらに好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0111】
また、陰極と発光層との間のエネルギー障壁を緩和するために、陰極に隣接する層へアルカリ金属やアルカリ金属化合物をドーピングしてもよい。添加した金属や金属化合物により有機層が還元されてアニオンが生成するため、電子注入性が高まり、印加電圧が低くなる。アルカリ金属化合物としては、例えば酸化物、フッ化物、リチウムキレートなどが挙げられる。
【0112】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。また、電子輸送層・電子注入層が正孔ブロック層の機能を兼ねていてもよい。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのがさらに好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
また、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層を、発光層と陽極側で隣接する位置に設けることもできる。正孔輸送層・正孔注入層がこの機能を兼ねていてもよい。
【0113】
(保護層)
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxy等の金属窒化物、SiCw、SiOzw等の金属炭化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0114】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0115】
(封止)
さらに、本発明の有機ELは、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤または不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0116】
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、または直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機EL素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許登録第2784615号公報、米国特許第5,828,429号、同6,023,308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
本発明のガスバリア性フィルムを有機EL素子に用いる場合には、基材フィルムおよび/または保護フィルムとして用いてもよい。
また、本発明の基材フィルムに設置したガスバリア性積層体を、基材フィルムの代わりに上記素子上に設置して封止しても良い。本発明では、有機EL素子を成膜後、大気に曝すことなく真空中で珪素窒化物層、炭化珪素化合物層、珪素窒化物層の順に互いに隣接して配置された3層からなるユニットを少なくとも1つ設置することが好ましい。
なお、好ましい膜厚・組成・構成は前記ガスバリア層と共通であるが、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【実施例】
【0117】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0118】
[実施例1]
基材フィルム上にガスバリア性積層体とその上に透明導電層を設けたガスバリア性フィルム(試料No.1〜18)を下記の手順にしたがって作製した。各ガスバリア性フィルムの構造の詳細は表1および表2に記載されるとおりである。
【0119】
<本発明のガスバリア性フィルム(試料No.1〜23)の作製>
1.基材フィルムの作製
表1に記載される樹脂からなる厚み100μmの基材フィルムを用意した。表1中、PETとして東レ(株)製のルミラーT60を使用し、PENとして帝人デュポンフィルム(株)製のテオネックスQ65AFを使用した。また、試料No.12〜18で用いた基材フィルムは、原料となる樹脂から以下の方法で作製した。
樹脂を、濃度が15質量%になるようにジクロロメタン溶液に溶解し、該溶液をダイコーティング法によりステンレスバンド上に流延した。次いで、バンド上から第一フィルムを剥ぎ取り、残留溶媒濃度が0.08質量%になるまで乾燥させた。乾燥後、第一フィルムの両端をトリミングし、ナーリング加工した後巻き取り、厚み100μmの基材フィルムを作製した。
【0120】
2.ガスバリア性積層体の形成
図1に示すロール トゥ ロール方式の誘導結合型プラズマCVD装置(1)を用いて、基材フィルム上に無機ガスバリア層を形成した。図1に示すように、誘導結合型プラズマCVD装置(1)は、真空槽(2)を有しており、その中央部にはプラスチックフィルム(6)を表面に接触させて冷却するためのドラム(3)が配置されている。また、上記真空槽(2)にはプラスチックフィルム(6)を巻くための送り出しロール(4)および巻き取りロール(5)が配置されている。送り出しロール(4)に巻かれたプラスチックフィルム(6)はガイドロール(7)を介してドラム(3)に巻かれ、さらにプラスチックフィルム(6)はガイドロール(8)を介して巻き取りロール(5)に巻かれる。真空排気系としては排気口(9)から真空ポンプ(10)によって真空槽(2)内の排気が常に行われている。成膜系としては誘導電界を発生する誘導コイルを備えたRF電源(11)にオートマッチャーが接続されたものと、真空槽にボンベから一定流量のガスを導入するマスフローコントローラーからなるガス導入系からなる。
【0121】
以下、ガスバリア性積層体の形成時における具体的な条件を示す。
プラスチックフィルム(6)として上記基材フィルムを設置し、これを送り出しロール(4)に掛け、巻き取りロール(5)まで通した。誘導結合プラズマCVD装置(1)への基材の準備が終了した後、真空槽(2)の扉を閉めて真空ポンプ(10)を起動し、真空引きを開始した。到達圧力が4×10-4Paとなったところで、プラスチックフィルム(6)の走行を開始した。放電ガスとしてアルゴンを導入して放電電源(11)をONし、13.56MHzの高周波を放電電力500Wで印加、表1と表3に記載される成膜圧力の真空層中にプラズマを発生させて5分間プラズマクリーニング処理を行った。この後、反応ガスとして窒素で5%に希釈したシランガスを導入し成膜圧力での放電の安定を確認してから、窒素で5%に希釈した酸素ガスと上記希釈シランガスを表3に記載される流量で導入した。次にフィルム搬送方向を逆転し、一定時間珪素酸窒化物の成膜を行った。成膜終了後、酸素ガスを希釈シランガスの1/10の流量で導入し、放電の安定を確認した後、先ほどとは逆方向にフィルムを搬送して珪素酸化物を成膜した。次に酸素ガスの導入を中止し、窒素で5%に希釈した酸素ガスを導入して一層目と同条件で再び逆方向にフィルムを搬送して珪素酸窒化物層を成膜した。ここで採用した各サンプルの珪素酸窒化物層成膜条件と、製膜された各珪素酸窒化物層の組成を表1に示す。
【0122】
3.透明導電層の形成
上記で得られた試料を、市販のバッチ式マグネトロンスパッタリング装置(芝浦メカトロニクス社製)の真空チャンバー内に導入し、直流電源を用いてインジウム錫酸化物(ITO、インジウム/錫=95/5モル比)の陽極を形成した(厚み0.2μm)。
以上のようにして本発明のガスバリア性フィルム(試料No.1〜18)を得た。
【0123】
<比較用のガスバリア性フィルム(試料No.19)の作製>
前記試料No.2の作製工程において、珪素酸化物層の形成工程を実施せず、それ以外はNo.2の作製工程と全く同様にして、比較用のガスバリア性フィルム(試料No.19)を作製した。
【0124】
<比較用のガスバリア性フィルム(試料No.20)の作製>
市販のバッチ式マグネトロンスパッタリング装置(芝浦メカトロニクス社製)を用いた。上記試料No.2の作製で用いたのと同じ基材フィルム(PENフィルム)を10-4Pa台まで真空引きし、放電ガスとしてアルゴンを分圧0.5Paとなるよう導入した。雰囲気圧力が安定したところで放電を開始し、Si34ターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを開始した。プロセスが安定したところでシャッターを開きフィルムへの第一窒素酸窒化物層の形成を開始した。5nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて成膜を終了した。この条件で成膜した珪素酸窒化物の元素比をX線光電子分光分析(ESCA)で測定したところ、O/N=30/70であった。続いて放電ガスとしてアルゴンを分圧0.5Pa導入、反応ガスとして酸素を分圧0.005Pa導入した。雰囲気圧力が安定したところで放電を開始しSi34ターゲット上にプラズマを発生させ、スパッタリングプロセスを開始した。プロセスが安定したところでシャッターを開きフィルムへの第二珪素酸窒化物層の形成を開始した。95nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて成膜を終了した。この条件で成膜した第二珪素酸窒化物層の元素比をESCAで測定したところ、O/N=65/35であった。真空槽内に大気を導入し珪素酸窒化物層の形成されたフィルムを取り出した。
次に、上記試料に対し、前述のNo.2の試料において実施した透明導電層の形成工程を施すことにより、比較用のガスバリアフィルム(試料No.20)を得た。
【0125】
<比較用のガスバリア性フィルム(試料No.21)の作製>
前記試料No.2の作製工程において、基材フィルムに近い方の酸窒化珪素層の形成工程を実施せず、それ以外はNo.2の作製工程と全く同様にして、比較用のガスバリア性フィルム(試料No.21)を作製した。
【0126】
<比較用のガスバリア性フィルム(試料No.22、23)の作製>
1.無機層形成
図2に示すような図1と類似のロール トゥ ロール方式のスパッタリング装置(1)を用いた。この装置は真空槽(2)を有しており、その中央部にはプラスチックフィルム(6)を表面に接触させて冷却するためのドラム(3)が配置されている。また、上記真空槽(2)にはプラスチックフィルム(6)を巻くための送り出しロール(4)および巻き取りロール(5)が配置されている。送り出しロール(4)に巻かれたプラスチックフィルム(6)はガイドロール(7)を介してドラム(3)に巻かれ、さらにプラスチックフィルム(6)はガイドロール(8)を介してロール(5)に巻かれる。真空排気系としては排気口(9)から真空ポンプ(10)によって真空槽(2)内の排気が常に行われている。成膜系としてはパルス電力を印加できる直流方式の放電電源(11’)に接続されたカソード(12’)上にターゲット(図示せず)が装着されている。この放電電源(11’)は制御器(13)に接続され、さらにこの制御器(13)は真空槽(2)へ配管(15)を介して反応ガス導入量を調整しつつ供給するガス流量調整ユニット(14)に接続されている。また、真空槽(2)には一定流量の放電ガスが供給されるよう構成されている(図示せず)。以下、具体的な条件を示す。
【0127】
ターゲットとしてSiをセットし、放電電源(11’)としてパルス印加方式の直流電源を用意した。プラスチックフィルム(6)として上記試料No.2の作製で用いたのと同じ基材フィルム(PENフィルム)を用意し、これを送り出しロール(4)に掛け、巻き取りロール(5)まで通した。スパッタリング装置(1)への基材の準備が終了後、真空槽(2)の扉を閉めて真空ポンプ(10)を起動し、真空引きとドラムの冷却を開始した。到達圧力が4×10-4Pa、ドラム温度が5℃になったところで、プラスチックフィルム(6)の走行を開始した。放電ガスとしてアルゴンを導入して放電電源(11’)をONし、放電電力5kW、成膜圧力0.3PaでSiターゲット上にプラズマを発生させ、3分間プレスパッタを行った。この後、反応ガスとして酸素を導入した。放電が安定してからアルゴンおよび酸素ガス量を徐々に減らして成膜圧力を0.1Paまで下げた。0.1Paでの放電の安定を確認してから、一定時間珪素酸化物の成膜を行った。成膜終了後、真空槽(2)を大気圧に戻して珪素酸化物を成膜したフィルムを取り出した。膜厚は約50nmであった。
【0128】
2.有機層形成
次に、50.75mLのテトラエチレングリコール・ジアクリレートと14.5mLのトリプロピレングリコールモノアクリレートと7.25mLのカプロラクトンアクリレートと10.15mLのアクリル酸と10.15mLのSarCure(Sartomer社製ベンゾフェノン混合物光重合開始剤)とのアクリルモノマー混合物を、固体のN、N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン粒子36.25gmと混合し、20kHz超音波ティッシュミンサーで約1時間撹拌した。約45℃に加熱し、沈降を防ぐために撹拌した混合物を内径2.0mm、長さ61mmの毛管を通して1.3mmのスプレーノズルにポンプで送り込み、そこで25kHzの超音波噴霧器にかけて小滴に噴霧し、約340℃に維持された表面に落とした。約13℃の温度の低温ドラムに接触させた上記基板フィルム上に蒸気をクライオ凝結させた後、高圧水銀灯ランプによりUV硬化させ(積算照射量約2000mJ/cm2)、有機層を形成した。膜厚は約500nmであった。
【0129】
3.無機層形成/有機層形成の交互繰返し成膜+透明導電層形成
上記1、2の上に無機層(SiOx層)を1と同様に設置してガスバリア性積層体を作製した(合計3層)。次に前述の実施例1において実施した透明導電層の形成工程を施し、比較用のガスバリア性フィルム(試料No.22)を得た。
【0130】
さらに1、2と無機層の間に1、2を各3回ずつ交互に積層した以外は試料No.22と同様にして比較用のガスバリアフィルム(試料No.23)を得た。
【0131】
<ガスバリア性フィルムの物性評価>
下記装置を用いてバリアフィルムの諸物性を評価した。
・層構成(膜厚):日立社製、走査型電子顕微鏡「S−900型」
・水蒸気透過率(g/m2・day):MOCON社製、「PERMATRAN−W3/31」(条件:40℃・相対湿度90%)
・原子組成比:クレイトスアナリティカル社製「ESCA3400」
【0132】
[実施例2]
<有機EL素子の作製(I)>
25mm×25mmの上記ガスバリア性フィルム(試料No.1〜23)上に直流電源を用い、スパッタ法にてインジウム錫酸化物(ITO、インジウム/錫=95/5モル比)の陽極を形成した(厚み0.2μm)。この陽極上に正孔注入層として銅フタロシアニン(CuPc)を真空蒸着法にて10nm設け、その上に正孔輸送層として、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジンを真空蒸着法にて40nm設けた。この上にホスト材として4,4’−N,N’−ジカルバゾ−ルビフェニル、青発光材としてビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジナート−N,C2'](ピコリネート)イリジウム錯体(Firpic)、緑発光材としてトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体(Ir(ppy)3)、赤発光材としてビス(2 −フェニルキノリン)アセチルアセトナ−トイリジウムをそれぞれ100/2/4/2の質量比になるように共蒸着して40nmの発光層を得た。さらにその上に電子輸送材として2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス[3−(2−メチルフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン]を1nm/秒の速度で蒸着して24nmの電子輸送層を設けた。この有機化合物層の上にパタ−ニングしたマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、蒸着装置内でフッ化リチウムを1nm蒸着し、さらにアルミニウムを100nm蒸着して陰極を設けた。陽極、陰極よりそれぞれアルミニウムのリード線を出して発光素子を作成した。該素子を窒素ガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ガラスキャップと紫外線硬化型接着剤(長瀬チバ製、XNR5493)で封止して発光素子を作製した。
【0133】
<有機EL素子の作製(II)>
ガスバリア性フィルム(試料No.1〜23)を用いて、前記有機EL素子の作製(I)の場合と同様にして発光素子を作製した後、ガラスキャップによる封止の代わりに対応する基材フィルム上のバリア層構成と全く同条件で封止した。
【0134】
<屈曲耐性テスト;有機EL素子の作製(III)>
ガスバリア性フィルムを30mm×200mmに切り出し、コーティングテスター工業製、屈曲試験器「円筒型マンドレル法タイプI型」で16mm径の円筒にバリア面を外側にして屈曲した状態(180度)と非屈曲状態を100回繰り返した基材を用いた以外は上記EL素子(I)と同じ方法で有機EL素子(III)を作製した。
【0135】
<有機EL素子(I)〜(III)の耐久性評価>
以上のようにして得られた有機EL素子(I)〜(III)にソースメジャーユニット2400型(東洋テクニカ(株)製)を用いて、直流電流を印加し発光させたところ、いずれの素子試料も良好に発光した。
次に上記有機EL素子の作製後、60℃・相対湿度90%下に500時間放置して同様にして発光させ、全体における発光部分の面積(非発光部分はダークスポット)を、日本ポラデジタル(株)製マイクロアナライザーを用いて求めた。
【0136】
上記実施例1,2の結果をまとめて下記表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【0139】
【表3】

【0140】
表1の結果から明らかなように、本発明のガスバリア性フィルム(試料No.1〜18)は、比較用のガスバリア性フィルム(試料19〜23)に対して高耐久性の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供可能である。
また、試料No.1に比べてより高いガラス転移温度を有する構成樹脂からなるフィルム基板を用いて、同じプロセス条件で作製した試料No.12〜18は、より高耐久性の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。すなわち、本発明に記載の特定のスピロ構造を有する樹脂または特定のカルド構造を有するポリマーからなる基板フィルムを用いた試料No.12〜18は特に高耐久性の有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
一方で、本発明のガスバリア性フィルム(試料No.1〜18)は、比較用のガスバリア性フィルム(試料No.23)に対して製造の際のロール巻取り回数を著しく減らす(ちなみに同一巻取り回数では明らかに性能の劣るものしか得られない。;試料No.22)ことができる。すなわち、本発明によれば、高生産性を有する製法により高いガスバリア性フィルムを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明のガスバリア性フィルムは、優れた透明性とガスバリア性を有するため、各種デバイスの基板やデバイスの被覆フィルムとして好適に用いられる。また、本発明の画像表示素子用基板および有機EL素子は、フレキシビリティを付与しうるたかい屈曲耐性および耐久性を有する。さらに従来技術に比べて生産性が高い。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】試料No.1〜19、21の作製に用いた誘導結合型プラズマCVD装置を示す説明図である。
【図2】試料No.22、23の作製に用いたスパッタリング装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0143】
1 誘導結合型プラズマCVD装置
2 真空槽
3 ドラム
4 送り出しロール
5 巻き取りロール
6 プラスチックフィルム
7 ガイドロール
8 ガイドロール
9 排気口
10 真空ポンプ
11 RF電源(オートマッチャー付き)
11’放電電源
12 誘導コイル
12’カソード
13 制御器
14 ガス流量調整ユニット
15 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上にガスバリア性積層体を有してなるガスバリア性フィルムにおいて、該ガスバリア性積層体が、珪素酸窒化物層、珪素酸化物層、珪素酸窒化物層の順に互いに隣接して配置された3層からなるユニットを少なくとも1つ有することを特徴とするガスバリア性フィルム。
【請求項2】
40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率が0.01g/m2・day以下である請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムが、ガラス転移温度が120℃以上の高分子材料で形成される請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
前記珪素酸窒化物層または珪素酸化物層の少なくとも一層が、誘導結合プラズマCVDを用いて形成される請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
前記珪素酸窒化物層の少なくとも一層の酸素と窒素の構成比率(酸素/窒素)が0.2〜5である請求項1〜4のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項6】
前記珪素酸窒化物層の少なくとも一層の屈折率が1.7〜2.1である請求項5に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項7】
前記基材フィルムが、下記一般式(1)で表される構造を有するポリマーまたは下記一般式(2)で表される構造を有するポリマーからなるフィルムである請求項1〜6のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【化1】

[一般式(1)中、環αは単環式または多環式の環を表し、2つの環はそれぞれ同じであっても異なっていても良く、スピロ結合によって結合する。]
【化2】

[一般式(2)中、環βおよび環γは単環式または多環式の環を表し、2つの環γはそれぞれ同じであっても異なっていても良く、環β上の1つの4級炭素に連結する。]
【請求項8】
前記ガスバリア性積層体上に透明導電層を設けた請求項1〜7のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項9】
前記基材フィルムをロール トゥ ロール(roll to roll)方式で供給し、前記ガスバリア性積層体を連続的に成膜する方法で製造した請求項1〜8のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムを用いた画像表示素子用基材フィルム。
【請求項11】
請求項10に記載の画像表示素子用基材フィルムを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を成膜後、大気に曝すことなく真空中で珪素酸窒化物層、珪素酸化物層、珪素酸窒化物層の順に互いに隣接して配置された3層からなるユニットを少なくとも1つ設置してから封止して製造した有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−15350(P2007−15350A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202088(P2005−202088)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】