説明

ガス処理装置

【課題】安定したガス処理能力と、高いガス処理能力に加え、高速流におけるガス処理能力の低下を防ぐ。コストダウンを図る。
【解決手段】処理対象ガスGSの通過方向(ダクト1の入口から出口への方向)に対し直交する方向に沿ってハニカム構造体4を間隔を設けて配置する。これらハニカム構造体4のうち処理対象ガスGSの通過方向に対して直交する方向の一端に配置されるハニカム構造体4−1の外側に第1の電極8を配置し、他端に配置されるハニカム構造体4−4の外側に第2の電極9を配置し、第1の電極8と第2の電極9との間に高電圧を印加し、ハニカム構造体4の貫通孔(セル)4aとハニカム構造体4間の空間ギャップ12にプラズマを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理対象ガスに含まれる有害ガスを浄化するガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、排気ガス中で高電圧放電を行ってプラズマ状態を作ることで、排気ガスに含まれる有害ガスの浄化を行う技術が知られている。近年、この技術は、脱臭を目的として、工場の排気を浄化する浄化装置や室内の空気を浄化する空気清浄機に応用されつつある。
【0003】
熱的に非平衡な状態、つまり気体の温度やイオン温度に比べ、電子温度が非常に高い状態のプラズマ(非平衡プラズマ(以下、単にプラズマと言う))は、電子衝突でつくられるイオンやラジカルが常温では起こらない化学反応を促進させるので、有害ガスを効率的に除去あるいは分解することが可能な媒体として有害ガス処理において有用であると考えられている。実用化で肝心なことは、処理時のエネルギーの効率の向上と、プラズマで処理した後に完全に安全な生成物質へと変換されることである。
【0004】
一般に、大気圧でのプラズマは気体放電や電子ビームなどによって生成される。現在において、適用が考えられているものに、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、フロン、CO2 ,揮発性有機溶剤(VOC)などがある。中でもNOxは車の排ガスなどに含まれているので早急な実用化が必要となっている。
【0005】
NOx除去における放電プラズマ(気体放電によって生成されたプラズマ)内の現象は、電子衝突によって1次的に生成されたイオンやラジカルが最初の反応を起こし、その後の反応を通してN2 ,H2 O,NH4 NO3 などの各粒子に変換されて行くものと考えられている。
【0006】
また、有害ガスを例えばアセトアルデヒドやホルムアルデヒドとした場合、この有害ガスをプラズマを通すことによって、CO2 とH2 Oに変換される。この場合、副生成物として、オゾン(O3 )が発生する。
【0007】
図7に放電プラズマを利用した従来のガス処理装置の要部を例示する(例えば、特許文献1参照)。同図において、1は処理対象ガス(有害ガスを含む空気)GSが流れるダクト(通風路)であり、ダクト1内には、処理対象ガスGSの通過方向に沿って放電電極2とアース電極3とが交互に配置され、これら電極2,3間にセルと呼ばれる多数の貫通孔4aを有するハニカム構造体4が配設されている。5は高電圧電源である。なお、ハニカム構造体4はセラミックス等の絶縁体で形成されており、特許文献2にもその使用例がある。
【0008】
放電電極2は、金属製メッシュ、極細ワイヤ、または針状体等で形成されている。各放電電極2は、導線6によって高電圧電源5の+極に接続されている。アース電極3は、金属性メッシュ等で形成されている。各アース電極3は、導線7によって高電圧電源5の−極に接続されている。
【0009】
このガス処理装置では、処理対象ガスGSをダクト1に流し、放電電極2とアース電極3との間に高電圧電源5からの高電圧(数kV〜数10kV)を印加する。これにより、各ハニカム構造体4の貫通孔4a内にプラズマが発生し、このプラズマ中に生成されるイオンやラジカルによって、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスが無害な物質に分解される。
【0010】
【特許文献1】特開2000−140562号公報
【特許文献2】特開2001−276561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来のガス処理装置では、次の(1)〜(3)のような問題があった。
【0012】
(1)多数のハニカム構造体4を有するが、ばらつきなく均一なプラズマを発生させる技術が確立されておらず、ハニカム構造体4の性能にばらつきが出てしまう。例えば、同じハニカム構造体4同士でもインピータンス値が異なることがあり、また1つのハニカム構造体4内でも例えばその上下でインピーダンス値が異なるというようなこともあり、全体として均一なプラズマが発生せず、ガス処理能力が不安定となる。また、貫通孔4aだけでのプラズマ発生なので、プラズマの発生量が少なく、ガス処理能力が低い。
【0013】
(2)ハニカム構造体4は吸湿すると低インピーダンスに、乾燥すると高インピーダンスになる特性を持っており、ハニカム構造体4が低インピーダンスになると、流れる電流が増大し放電電極2とアース電極3との間に印加される高電圧値が低下し、ハニカム構造体4が高インピーダンスになると、流れる電流が減少し放電電極2とアース電極3との間に印加される高電圧値が上昇する。このような高電圧値の変化に対し、所望のプラズマの発生量を確保し得る高電圧値を得ることのできる高電圧電源5は、その設計に要する工数も含めて非常に高価となる。
【0014】
(3)ハニカム構造体4のぞれぞれに対して放電電極2とアース電極3を設けているため、部品点数が多く、構造も複雑となり、高価となる。
(4)処理対象ガスGSの通過方向(ダクト1の入口から出口への方向)に沿ってハニカム構造体4がダクト1内に配置されているため、ハニカム構造体4のガス流と直交する方向の寸法が長く、これに対してガス流と平行な方向の寸法が短くなっている。このため、ガス流の流速が速いと、処理対象ガスGSがハニカム構造体4の内部でプラズマに晒される時間が短く、ガス処理能力が落ちる。
【0015】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、安定したガス処理能力と、高いガス処理能力に加え、高速流におけるガス処理能力の低下を防ぐことが可能なガス処理装置を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的を達成するために本発明は、通風路の入口から出口への処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向に沿って間隔を設けて配置され処理対象ガスが通過する多数の貫通孔を有する複数のハニカム構造体と、複数のハニカム構造体のうち処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向の一端に配置されるハニカム構造体の外側に配置される第1の電極と、複数のハニカム構造体のうち処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向の他端に配置されるハニカム構造体の外側に配置される第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に高電圧を印加しハニカム構造体の貫通孔およびハニカム構造体間の空間にプラズマを発生させる高電圧源とを設けたものである。
【0017】
この発明によれば、処理対象ガスの通過方向(通風路の入口から出口への方向)に対し直交する方向に沿って複数のハニカム構造体が間隔を設けて配置され、この複数のハニカム構造体のうち処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向の一端に配置されるハニカム構造体の外側に第1の電極が配置され、処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向の他端に配置されるハニカム構造体の外側に第2の電極が配置され、第1の電極と第2の電極との間に高電圧が印加される。この高電圧の印加により、ハニカム構造体の貫通孔およびハニカム構造体間の空間にプラズマが発生し、このプラズマを通過する際に処理対象ガスに含まれる有害ガスが無害な物質に分解される。
【0018】
この発明において、プラズマはハニカム構造体の貫通孔だけではなく、ハニカム構造体間の空間(空気層)にも発生する。このため、貫通孔内での有害ガスの分子分解効果に加え、ハニカム構造体間の空間での有害ガスの分子分解効果が加わり、さらにこの貫通孔内での分子分解効果とハニカム構造体間の空間での分子分解効果との相乗効果により、有害ガスの無害な物質への分解が促進される。また、ハニカム構造体間の空間には、均一なプラズマが大量に発生する。
【0019】
また、この発明において、ハニカム構造体間には空気層が設けられるので、第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスが安定し、ハニカム構造体の吸湿・乾燥によるインピーダンス変化に対して流れる電流の変化が小さくなり、専用に設計された特殊な高電圧電源を使用する必要がなくなる。
また、この発明において、電極は第1の電極と第2の電極の2個の電極のみでよく、ハニカム構造体毎に電極を配置する必要がなくなり、部品点数が削減され、構造が簡単となり、組立工数も少なくて済む。
【0020】
また、この発明では、各ハニカム構造体が処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向に沿って間隔を設けて配置されるので、処理対象ガスの通過方向に沿って配置される場合よりも、処理対象ガスが各ハニカム構造体の貫通孔やハニカム構造体間の空間でプラズマに晒される時間が長くなり、ガス分解が行われる機会が多くなり、ガス処理能力が向上する。
【0021】
本発明では、各ハニカム構造体の単位面積当たりの貫通孔の数を異なるようにしてもよく、ハニカム構造体間の間隔を異なるようにしてもよく、ハニカム構造体間の間隔を調整可能としてもよい。各ハニカム構造体の単位面積当たりの貫通孔の数を異ならせることにより、各ハニカム構造体で分解可能な有害ガスの種類を異ならせたり、副生成物として発生するオゾン量を異ならせたり、処理対象ガスに含まれる有害ガスが複数種類であっても対応することが可能となる。また、ハニカム構造体間の間隔を異ならせることにより、各ハニカム構造体の単位面積当たりの貫通孔の数を異ならせた場合と同様の作用・効果を得ることができる。この場合、単位面積当たりの貫通孔の数が等しい同一種類のハニカム構造体で構成することができるので、部品の種類を増やさずに済む。また、ハニカム構造体間の間隔を調整可能とすることにより、処理対象ガスに含まれる有害ガスの種類が運用途中で変わるような場合にも柔軟に対処することが可能となる。
【0022】
また、本発明において、ハニカム構造体の下流位置で特定ガスのガス濃度を検出するようにし、この検出された特定ガスのガス濃度が予め定められた閾値を超えた場合に、その特定ガスのガス濃度が閾値内に収まるように、ハニカム構造体間の間隔を調整するようにしてもよい。このようにすると、例えば、副生成物として発生するオゾンを特定ガスとした場合、有害ガスの分解処理後の処理対象ガスに含まれるオゾンの濃度を閾値内に収めるようにすることが可能となる。
【0023】
また、本発明において、ハニカム構造体間の空間やハニカム構造体の貫通孔内に、処理対象ガスの流れを妨害して乱流を生じさせる乱流壁を設ける等としてもよい。このような乱流壁を設けることにより、処理対象ガスのプラズマ内での滞留時間を稼ぐことができ、ガス処理をさらに高効率で行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、処理対象ガスの通過方向(通風路の入口から出口への方向)に対し直交する方向に沿って複数のハニカム構造体を間隔を設けて配置し、この複数のハニカム構造体のうち処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向の一端に配置されるハニカム構造体の外側に第1の電極を配置し、処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向の他端に配置されるハニカム構造体の外側に第2の電極を配置し、第1の電極と第2の電極との間に高電圧を印加するようにしたので、ハニカム構造体の貫通孔だけではなく、ハニカム構造体間の空間にもプラズマが発生するものとなり、貫通孔内での有害ガスの分子分解効果に加え、ハニカム構造体間の空間での有害ガスの分子分解効果が加わり、さらにこの貫通孔内での分子分解効果とハニカム構造体間の空間での分子分解効果との相乗効果により、有害ガスの無害な物質への分解が促進され、ガス処理能力が高まる。また、ハニカム構造体間の空間には、均一なプラズマが大量に発生するので、ガス処理能力が安定する。
【0025】
また、本発明によれば、ハニカム構造体間に空気層が設けられるので、第1の電極と第2の電極との間のインピーダンスが安定し、ハニカム構造体の吸湿・乾燥によるインピーダンス変化に対して流れる電流の変化が小さくなり、専用に設計された特殊な高電圧電源を使用する必要がなくなり、市販されている安価な高電圧電源を用いることができるようになる。
また、本発明によれば、第1の電極と第2の電極の2個の電極のみでよく、ハニカム構造体毎に電極を配置する必要がない。これにより、部品点数が削減され、構造が簡単となり、組立個数も少なくて済み、コストダウンが図られる。
【0026】
また、本発明によれば、各ハニカム構造体が処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向に沿って間隔を設けて配置されるので、処理対象ガスの通過方向に沿って配置される場合よりも、処理対象ガスが各ハニカム構造体の貫通孔やハニカム構造体間の空間でプラズマに晒される時間が長くなる。これにより、ガス分解が行われる機会が多くなり、ガス処理能力が向上し、高速流におけるガス処理能力の低下を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係るガス処理装置の一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。同図において、図7と同一符号は図7を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0028】
この実施の形態では、ダクト1内に処理対象ガスGSの通過方向(ダクト1の入口から出口への方向)に対し直交する方向に沿って所定の間隔G(G1,G2,G3)を設けてハニカム構造体4(4−1〜4−4)を配置し、このハニカム構造体4のうち処理対象ガスGSの通過方向に対して直交する方向の一端に配置されるハニカム構造体4−1の外側に第1の電極8を、処理対象ガスGSの通過方向に対して直交する方向の他端に配置されるハニカム構造体4−4の外側に第2の電極9を配置し、第1の電極8を導線10によって高電圧電源(高電圧源)5の+極に接続し、第2の電極9を導線11によって高電圧電源5の−極に接続している。
【0029】
ハニカム構造体4は、セラミックス等の絶縁体で形成されており、処理対象ガスGSが通過する多数の貫通孔(セル)4aを有している。各ハニカム構造体4の単位面積当たりの貫通孔4aの数は等しくされている。すなわち、本実施の形態では、単位面積当たりの貫通孔4aの数が等しい同一種類のハニカム構造体4−1〜4−4を使用している。第1の電極8および第2の電極9は、処理対象ガスGSが通過するように、金属製メッシュとされている。
【0030】
また、この実施の形態において、ハニカム構造体4−1と4−2との間の間隔G1と、ハニカム構造体4−2と4−3との間の間隔G2と、ハニカム構造体4−3と4−4との間の間隔G3とは等しく、例えば0.5mm〜数mmとされている。これにより、ハニカム構造体4−1と4−2との間に空気層12−1が形成され、ハニカム構造体4−2と4−3との間に空気層12−2が形成され、ハニカム構造体4−3と4−4との間に空気層12−3が形成されている。以下、空気層12(12−1〜12−3)を空間ギャップと呼ぶ。
【0031】
このガス処理装置では、処理対象ガスGSをダクト1内に流し、第1の電極8と第2の電極9との間に高電圧電源5からの高電圧(数kV〜数10kV)を印加する。これにより、ハニカム構造体4の貫通孔4aおよびハニカム構造体4間の空間ギャップ12にプラズマが発生し、このプラズマ中に生成されるイオンやラジカルによって、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスが無害な物質に分解される。
【0032】
本実施の形態において、プラズマはハニカム構造体4の貫通孔4aだけではなく、ハニカム構造体4間の空間ギャップ12にも発生する。このため、貫通孔4a内での有害ガスの分子分解効果に加え、ハニカム構造体4間の空間ギャップ12での有害ガスの分子分解効果が加わり、さらにこの貫通孔4a内での分子分解効果とハニカム構造体4間の空間ギャップ12での分子分解効果との相乗効果により、有害ガスの無害な物質への分解が促進され、ガス処理能力が高まる。また、ハニカム構造体4間の空間ギャップ12には、対向する貫通孔4aの縁面から電界が広がって、均一なプラズマが大量に発生する。これにより、貫通孔4a内に発生するプラズマのばらつきによる影響が小さくなり、ガス処理能力が安定する。
【0033】
また、この実施の形態において、ハニカム構造体4間には空気層である空間ギャップ12が設けられるので、この空間ギャップ12により第1の電極8と第2の電極9との間のインピーダンスが安定し、ハニカム構造体の吸湿・乾燥によるインピーダンス変化に対して流れる電流の変化が小さくなる。これにより、第1の電極8と第2の電極9との間に加わる高電圧値の変化が小さくなり、高電圧電源5として、専用に設計された特殊な高電圧電源ではなく、市販されている安価な高電圧電源を使用することができるようになる。
【0034】
また、この実施の形態において、電極は第1の電極8と第2の電極9の2個の電極のみでよく、ハニカム構造体4毎に電極を配置する必要がない。これにより、部品点数が削減され、構造が簡単となり、組立工数も少なくて済み、コストダウンが図られる。
【0035】
また、この実施の形態では、各ハニカム構造体4が処理対象ガスGSの通過方向に対し直交する方向に沿って間隔を設けて配置されているので、処理対象ガスGSの通過方向に沿って配置される場合よりも、処理対象ガスGSが各ハニカム構造体4の貫通孔4aやハニカム構造体4間の空間ギャップ12でプラズマに晒される時間が長くなる。これにより、ガス分解が行われる機会が多くなり、ガス処理能力が向上し、高速流におけるガス処理能力の低下を防ぐことが可能となる。
【0036】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、ダクト1の入口から出口への処理対象ガスGSの通過方向に対し直交する方向(厚さ方向)に貫通孔4aを有するハニカム構造体4を用いたが、図2に示すように、ダクト1の入口から出口への処理対象ガスGSの通過方向(長さ方向)に貫通孔4a’を有するハニカム構造体4’を用いるようにしてもよい。このようなハニカム構造体4’を用いると、処理対象ガスGSが貫通孔4a’内でプラズマに晒される時間がさらに長くなり、ガス処理能力のさらなる向上が図られる。
【0037】
〔実施の形態3〕
実施の形態1では、ハニカム構造体4−1〜4−4の単位面積当たりの貫通孔4aの数を等しくしたが、ハニカム構造体4−1〜4−4の単位面積当たりの貫通孔4aの数を選択的に異ならせるようにしてもよい。例えば、ハニカム構造体4−1,4−2については単位面積当たりの貫通孔4aの数を少なし、ハニカム構造体4−3,4−4については単位面積当たりの貫通孔4aの数を多くするようにしたり、ハニカム構造体4−1,4−2,4−3,4−4の順で単位面積当たりの貫通孔4aの数を多くするなどとしてもよい。
【0038】
ハニカム構造体4−1,4−2,4−3,4−4の順で単位面積当たりの貫通孔4aの数を多くすると、ハニカム構造体4−1,4−2,4−3,4−4の順でプラズマの発生量が大きくなり、各ハニカム構造体4で分解可能な有害ガスの種類を異ならせることが可能となる。
【0039】
例えば、その分子が持つエネルギー準位が順に高い有害ガスA,B,C,Dが処理対象ガスGSに含まれていたものとした場合、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスAをハニカム構造体4−1で分解し、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスBをハニカム構造体4−2で分解し、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスCをハニカム構造体4−3で分解し、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスDをハニカム構造体4−4で分解するなど、各ハニカム構造体4で分解可能な有害ガスの種類を異ならせることができる。
【0040】
この場合、ハニカム構造体4−2での有害ガスBの分解に際し、ハニカム構造体4−1によって分解しきれなかった有害ガスAの分解が行われ、ハニカム構造体4−3での有害ガスCの分解に際し、ハニカム構造体4−1,4−2で分解しきれなかった有害ガスA,Bの分解が行われ、ハニカム構造体4−4での有害ガスDの分解に際し、ハニカム構造体4−1,4−2,4−3で分解しきれなかった有害ガスA,B,Cの分解が行われる。
【0041】
このような方法とすると、1つのハニカム構造体4で全ての有害ガスA,B,C,Dの分解を行うようにした場合よりも、有害ガスの分解に際して発生する副生成物(例えば、オゾン)の発生量を少なくすることができる。
【0042】
〔実施の形態4〕
実施の形態3では、ハニカム構造体4−1〜4−4の単位面積当たりの貫通孔4aの数を選択的に異ならせるようにしたが、図3に示すように、ハニカム構造体4間の間隔G(G1,G2,G3)を異ならせるようにしてもよい。
【0043】
このようにすると、空間ギャップ12(12−1,12−2,12−3)でのプラズマの発生量が異なるものとなり、ハニカム構造体4−1〜4−4の単位面積当たりの貫通孔4aの数を選択的に異ならせた場合と同様の作用・効果を得ることができる。この場合、ハニカム構造体4−1〜4−4を単位面積当たりの貫通孔4aの数が等しい同一種類のハニカム構造体とすることができるので、部品の種類を増やさずに済む。
【0044】
また、この実施の形態4において、ハニカム構造体4間の間隔Gを調整可能な構造とすれば、手動でハニカム構造体4間の間隔Gを調整したり、自動でハニカム構造体4間の間隔Gを調整したりして、空間ギャップ12でのプラズマの発生量を変え、処理対象ガスGSに含まれる有害ガスの種類が運用途中で変わるような場合にも柔軟に対処することが可能となる。
【0045】
〔実施の形態5〕
図4にハニカム構造体4間の間隔Gを自動で調整するようにした場合の応用例(実施の形態5)を示す。この実施の形態5では、ハニカム構造体4−1〜4−4の下流位置にオゾンの濃度を検出するオゾン検出手段13を設け、このオゾン検出手段13が検出するオゾンの濃度をオゾンレベル判定手段14へ与えるようにしている。
【0046】
オゾンレベル判定手段14は、オゾン検出手段13からのオゾンの濃度Opvと予め設定されている閾値Othとを比較し、オゾン検出手段13からのオゾンの濃度Opvが閾値Othを超えている場合、オゾンの濃度Opvが閾値Oth内に収まるように、ハニカム間ギャップ調整手段15に指令を送り、ハニカム構造体4間の間隔Gを自動調整する。
【0047】
これにより、有害ガスの分解処理後の処理対象ガスGSに含まれるオゾンの濃度を閾値Oth以下とすることが可能となり、有害ガスの分解処理後の処理対象ガスGSが排出される環境へのオゾンの排出量を少なくすることができる。
【0048】
なお、この実施の形態4では、ハニカム構造体4−1〜4−4の下流位置でオゾンの濃度を検出するようにしたが、ハニカム構造体4間の空間ギャップ12においてオゾンの濃度を検出するようにしてもよい。
【0049】
また、この実施の形態5では、有害ガスの分解処理後の処理対象ガスGSに含まれるオゾン、すなわち副生成物として発生するオゾンを特定ガスとし、この特定ガスの濃度が閾値内に収まるようにハニカム構造体4間の間隔Gを調整するようにしたが、特定ガスはオゾンに限られるものではなく、有害ガスA,B,C,Dなどを特定ガスとするようにしてもよい。
【0050】
〔実施の形態6〕
実施の形態1(図1)において、ハニカム構造体4間の空間ギャップ12やハニカム構造体4の貫通孔4a内に、処理対象ガスGSの流れを妨害して乱流を生じさせる乱流壁を設けるようにしてもよい。図5にハニカム構造体4間の空間ギャップ12に乱流壁16を設けた例を、図6にハニカム構造体4の貫通孔4a内に乱流壁17を設けた例を示す。このような乱流壁16,17を設けることにより、処理対象ガスGSのプラズマ内での滞留時間を稼ぐことができ、ガス処理をさらに高効率で行うことができるようになる。
【0051】
また、上述した実施の形態1〜6において、ハニカム構造体4はオゾンを分解する触媒機能を備えたものとしてもよく、ハニカム構造体4−1〜4−4の下流位置にオゾンを分解する触媒を設けるようにしてもよい。
また、上述した実施の形態1〜6では、ハニカム構造体4の数を4つとしたが、ハニカム構造体4の数は2つ以上であれば幾つあってもよいことは言うまでもない。
また、上述した実施の形態1〜6では、高電圧電源5を直流としているが、交流としたり、パルス電源を用いるなどとしてもよい。
また、上述した実施の形態1〜6において、副生成物としてオゾンを大量に発生させ、オゾン発生器として転用するようにしてもよい。
【0052】
なお、本ガス処理装置は、燃料電池等に用いられる水素を効率的に生成する目的で、炭化水素類等から水素含有ガスを生成する、いわゆる改質にも適用することができる。例えばオクタン(ガソリンの平均分子量に比較的近い物質)C818の場合は、本ガス処理装置に供給すると下記(1)式で示される化学反応が促進され、その結果水素ガスを効率よく生成することができる。
818+8H2O+4(O2+4N2)→8CO2+17H2+16N2・・・・(1)
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るガス処理装置の一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す図である。
【図2】処理対象ガスの通過方向に貫通孔を有するハニカム構造体を用いた例(実施の形態2)を示す図である。
【図3】ハニカム構造体間の間隔を異ならせるようにした例(実施の形態4)を示す図である。
【図4】ハニカム構造体間の間隔を自動で調整するようにした場合の応用例(実施の形態5)を示す図である。
【図5】ハニカム構造体間の空間ギャップに乱流壁を設けた例を示す図である。
【図6】ハニカム構造体の貫通孔内に乱流壁を設けた例を示す図である。
【図7】放電プラズマを利用した従来のガス処理装置の要部を例示する図である。
【符号の説明】
【0054】
1…ダクト(通風路)、4(4−1〜4−4),4’(4−1’〜4−4’)…ハニカム構造体、4a,4a’…貫通孔(セル)、5…高電圧電源、8…第1の電極、9…第2の電極、12(12−1〜12−4)…空間ギャップ、G(G1〜G4)…間隔、GS…処理対象ガス、13…オゾン検出手段、14…オゾンレベル判定手段、15…ハニカム間ギャップ調整手段、16,17…乱流壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路の入口から出口への処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向に沿って間隔を設けて配置され前記処理対象ガスが通過する多数の貫通孔を有する複数のハニカム構造体と、
前記複数のハニカム構造体のうち前記処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向の一端に配置されるハニカム構造体の外側に配置される第1の電極と、
前記複数のハニカム構造体のうち前記処理対象ガスの通過方向に対し直交する方向の他端に配置されるハニカム構造体の外側に配置される第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に高電圧を印加し前記ハニカム構造体の貫通孔および前記ハニカム構造体間の空間にプラズマを発生させる高電圧源と
を備えることを特徴とするガス処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたガス処理装置において、
前記各ハニカム構造体の単位面積当たりの貫通孔の数が異なることを特徴とするガス処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたガス処理装置において、
前記ハニカム構造体間の間隔が異なることを特徴とするガス処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載されたガス処理装置において、
前記ハニカム構造体間の間隔が調整可能とされていることを特徴とするガス処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載されたガス処理装置において、
前記ハニカム構造体の下流位置で特定ガスのガス濃度を検出する特定ガス濃度検出手段と、
この特定ガス濃度検出手段によって検出された特定ガスのガス濃度が予め定められた閾値を超えたか否かを判定する特定ガス濃度レベル判定手段と、
この特定ガス濃度レベル判定手段によって前記特定ガスのガス濃度が前記閾値を超えたと判定された場合に、その特定ガスのガス濃度が前記閾値内に収まるように、前記ハニカム構造体間の間隔を調整するハニカム間隔調整手段と
を備えることを特徴とするガス処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載されたガス処理装置において、
前記処理対象ガスの流れを妨害して乱流を生じさせる乱流壁を備えることを特徴とするガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−194669(P2008−194669A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104604(P2007−104604)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】