説明

ガス化溶融炉の燃焼制御装置、及びガス化溶融炉の燃焼制御方法

【課題】一次空気の調節のみによって、著しいコストアップを伴うことなく、NOxの発生の抑制と溶融炉でのスラグ詰まりの防止の双方を図ることができるガス化溶融炉の燃焼制御装置及び燃焼制御方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ガス化炉102へのガス化用空気の供給量、溶融炉106への一次空気の供給量、及び二次燃焼室110への二次燃焼空気の供給量、並びに二次燃焼室110からの排ガスの酸素濃度から、溶融炉106における一次空気の供給後の空気比である溶融炉空気比を求め、NOxの発生を抑えるのに適した第1の値から溶融炉106内の温度を上昇させるのに適し第1の値よりも大きな第2の値までの間の範囲で溶融炉106内の温度が低いほど高い値を溶融炉空気比の目標値として設定し、この目標値に溶融炉空気比の値を近づけるように一次空気の供給量を調節することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を熱分解してガス化し、このガス化した熱分解ガスを高温燃焼させて前記廃棄物から生じた灰を溶融させるガス化溶融炉の燃焼制御装置、及びガス化溶融炉の燃焼制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガス化溶融炉として特許文献1に記載のものが知られている。このガス化溶融炉は、廃棄物を加熱することにより熱分解ガス等を生成するガス化炉と、前記ガス化炉から排出される熱分解ガス等を燃焼させて前記廃棄物の加熱により生じた灰を溶融させる溶融炉と、前記溶融炉から排出される排ガス(一酸化炭素(CO)等)を燃焼させる二次燃焼室と、を備える。
【0003】
このガス化溶融炉における燃焼制御では、二次燃焼室から排出される排ガスの窒素酸化物(NOx)濃度を抑えるために、溶融炉内の空気比が調節される。この燃焼制御における溶融炉の目標とする空気比は、以下のようにして設定される。
【0004】
溶融炉の空気比の値が高くなると、即ち、溶融炉内の酸素濃度が高くなると、溶融炉内での熱分解ガスの燃焼効率が向上して溶融炉内の温度が高くなる。ここで、窒素酸化物は、窒素、酸素、温度のいずれも高い方が生じ易い。このため、図6に示されるように、溶融炉内の空気比が高くなるほど溶融炉内での窒素酸化物の発生量が多くなる(図6のα参照)。一方、溶融炉内の空気比が低くなるほど、即ち、溶融炉内の酸素濃度が低くなるほど、溶融炉内での熱分解ガスの燃焼の際に発生するCOが増える。このように溶融炉でのCOの発生量が増えると、このCOを燃焼させるために二次燃焼室内に多量の空気を供給することによって二次燃焼室内の空気比が高くなると共に、この空気の供給によるCOの急激な燃焼によって二次燃焼室内の温度が高くなるため、二次燃焼室での窒素酸化物の発生量が多くなる(図6のβ参照)。これらから、ガス化溶融炉における窒素酸化物の発生を抑えるのに最適な溶融炉の空気比が目標とする空気比(第1の空気比:約1.0)として設定される(図6のγ参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3825351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のガス化溶融炉のガス化炉において水分を多く含んだ廃棄物が投入されると、溶融炉内の温度が下がり、これにより、スラグ(溶融された灰等)が固まって溶融炉のスラグ排出口を塞ぐいわゆるスラグ詰まりが溶融炉において生じる場合がある。このような場合、溶融炉に設けられた助燃バーナによって燃料(補助燃料)を燃焼させて溶融炉内の温度を上昇させることが考えられるが、新たな燃料の消費は、ガス化溶融炉の運転コストの上昇につながり、好ましくない。
【0007】
そこで、著しいコストアップを伴うことなく、窒素酸化物の発生の抑制と溶融炉におけるスラグ詰まりの防止の双方を図ることができるガス化溶融炉の燃焼制御装置、及びガス化溶融炉の燃焼制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意研究を行った結果、溶融炉内の温度と溶融炉において空気が供給された後の空気比である溶融炉空気比との関係に着目し、溶融炉空気比を適切な範囲内で調節することによって、燃焼効率を上げ、これにより、助燃バーナを用いなくても低下した溶融炉の温度を上昇させることが可能なことを見出した。但し、図7に示されるように、このような燃焼効率を上げるのに適した溶融炉空気比(第2の空気比)は、窒素酸化物抑制に最適な溶融炉空気比(約1.0)よりも高いので、燃焼効率を優先した空気比の設定は窒素酸化物の抑制効果を下げることになる。
【0009】
そこで、本発明は、廃棄物を加熱することにより熱分解ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉から排出される熱分解ガスを燃焼させて前記廃棄物の加熱により生じた灰を溶融させる溶融炉と、前記溶融炉から排出される排ガスを燃焼させる二次燃焼室と、を備えるガス化溶融炉の燃焼制御装置であって、前記溶融炉内の温度を測定する温度センサと、前記二次燃焼室から排出される燃焼後の排ガスの酸素濃度を測定する濃度センサと、前記廃棄物の加熱のために前記ガス化炉内に供給されるガス化用空気の供給量を検出する第1の空気量検出部と、前記熱分解ガスの燃焼のために前記溶融炉内に供給される一次空気の供給量を検出する第2の空気量検出部と、前記排ガスの燃焼のために前記二次燃焼室内に供給される二次燃焼空気の供給量を検出する第3の空気量検出部と、各空気量検出部によって検出される前記ガス化用空気の供給量、前記一次空気の供給量、及び前記二次燃焼空気の供給量、並びに、前記濃度センサによって測定される酸素濃度から前記溶融炉における一次空気の供給後の空気比である溶融炉空気比を求める演算部と、前記溶融炉への一次空気の供給量を調節することにより前記溶融炉空気比を制御する溶融炉制御部と、を備える。そして、前記溶融炉制御部は、前記ガス化溶融炉における窒素酸化物の発生を抑えるのに適した溶融炉空気比の値である第1の値から前記熱分解ガスを燃焼させて溶融炉内の温度を上昇させるのに適した溶融炉空気比の値であって前記第1の値よりも大きな第2の値までの間の範囲で前記溶融炉内の温度が低いほど高い値を溶融炉空気比の目標値として設定する目標値設定部と、この目標値に前記溶融炉空気比の値を近づけるように前記一次空気の供給量を調節する空気比制御部と、を有する。
【0010】
本発明によれば、一次空気の供給量の調節のみによって溶融炉空気比が適切な範囲内で(第1の値から第2の値までの間となるように)調節され、これにより、ガス化溶融炉における著しいコストアップを伴うことなく、窒素酸化物の発生の抑制と溶融炉におけるスラグ詰まりの防止の双方を図ることができる。
【0011】
即ち、溶融炉内の温度が低くなると、目標値設定部が前記範囲内で高い値、即ち、第2の値に近い値に目標値を設定することにより、熱分解ガスの燃効効率を向上させて溶融炉内の温度の上昇を図り、これにより、溶融炉内でのスラグの固化によるスラグ詰まりを防止する。一方、溶融炉内の温度が高くなると、目標値設定部が第1の値から第2の値までの範囲内で低い値、即ち、第1の値に近い値に目標値を設定して溶融炉空気比を抑えることにより、窒素酸化物の発生の抑制が図られる。
【0012】
本発明にかかるガス化溶融炉の燃焼制御装置では、前記ガス化炉内の圧力を測定する圧力センサを備え、前記空気比制御部は、前記圧力センサによって測定される圧力が負圧から正圧となったときに、前記演算部により求められる溶融炉空気比の値にかかわらず所定の時間だけ前記一次空気の供給量を増加させることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、ガス化炉に投入される廃棄物が一時的に増加したときのガス化溶融炉における窒素酸化物の増加を効果的に抑えることができる。即ち、ガス化溶融炉では熱分解ガスの外部への漏れを防ぐために炉内圧力が負圧となるように制御されているため、廃棄物の一時的な増加によって熱分解ガスの発生量が一時的に増加したのを炉内圧力が正圧になったことによって検出し、このとき一次空気の供給量を一時的に増加させることによって溶融炉において熱分解ガスが燃焼する際の酸素不足による一酸化炭素の発生量の増加を抑えることができる。これにより、二次燃焼室における一酸化炭素の急激な燃焼を抑え、その結果、ガス化炉に投入される廃棄物が一次的に増加したときの二次燃焼室内における窒素酸化物の発生量の増加を効果的に抑制することができる。さらに、二次燃焼室の負荷が低減され、且つ、二次燃焼室での不完全燃焼による一酸化炭素の発生も抑えられる。
【0014】
しかも、溶融炉空気比を求めるためには溶融炉よりも下流側において排ガス(二次燃焼室から排出される排ガス)の酸素濃度を検出する必要があるため、この溶融炉空気比に基づく偏差制御では、溶融炉空気比の変化を検出して一次空気の供給量を増やしても、溶融炉における一時的な酸素不足の発生を抑えるのに間に合わないが、上記の構成のように、溶融炉よりも上流に位置するガス化炉内の圧力の変化を検出して一次空気の供給量を増やすことにより、溶融炉における一時的な酸素不足の発生を効果的に抑えることができる。
【0015】
また、上記のガス化溶融炉の燃焼制御装置では、前記溶融炉内を加熱するための助燃バーナを制御するバーナ制御部を備え、前記バーナ制御部は、前記温度センサ部により測定される溶融炉内の温度が所定の温度よりも低くなったときに、前記助燃バーナを作動させて当該溶融炉内を加熱することが好ましい。
【0016】
このように、所定の温度よりも溶融炉内の温度が下がったときにだけ、助燃バーナを作動させて溶融炉内の温度を上昇させることにより、助燃バーナを用いることによる著しいコストアップを抑えることができる。
【0017】
具体的には、所定の温度よりも溶融炉内の温度が下がると、溶融炉空気比の制御だけで溶融炉内の温度を上げることができない若しくは温度が上がるまでに時間を要するため、前記所定の温度よりも溶融炉内の温度が下がったときに助燃バーナを作動させることにより、スラグ詰まりが生じないように溶融炉内の温度を前記所定の温度以上に確実且つ迅速に上昇させることができる。しかも、溶融炉内の温度が所定の温度よりも下がったときにだけ、助燃バーナを作動させて溶融炉内の温度を上昇させるため、溶融炉内の温度を上昇させるときに常に助燃バーナを作動させる燃焼制御に比べ、助燃バーナでの燃料の消費による運転コストの著しい増加を抑制することができる。
【0018】
また、本発明は、廃棄物を加熱することにより熱分解ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉から排出される熱分解ガスを燃焼させて前記廃棄物の加熱により生じた灰を溶融させる溶融炉と、前記溶融炉から排出される排ガスを燃焼させる二次燃焼室と、を備えるガス化溶融炉の燃焼制御方法であって、前記溶融炉内の温度を測定する温度測定工程と、前記二次燃焼室から排出される燃焼後の排ガスの酸素濃度を測定する濃度測定工程と、前記廃棄物の加熱のために前記ガス化炉内に供給されるガス化用空気の供給量を検出する第1の空気量検出工程と、前記熱分解ガスの燃焼のために前記溶融炉内に供給される一次空気の供給量を検出する第2の空気量検出工程と、前記排ガスの燃焼のために前記二次燃焼室内に供給される二次燃焼空気の供給量を検出する第3の空気量検出工程と、各空気量検出工程によって検出される前記ガス化用空気の供給量、前記一次空気の供給量、及び前記二次燃焼空気の供給量、並びに、前記濃度測定工程によって測定される酸素濃度から前記溶融炉における一次空気の供給後の空気比である溶融炉空気比を求める演算工程と、前記ガス化溶融炉における窒素酸化物の発生を抑えるのに適した溶融炉空気比の値である第1の値から前記熱分解ガスを燃焼させて溶融炉内の温度を上昇させるのに適した溶融炉空気比の値であって前記第1の値よりも大きな第2の値までの間の範囲で前記温度測定工程によって測定される溶融炉内の温度が低いほど高い値を溶融炉空気比の目標値として設定し、この前記目標値に前記溶融炉空気比の値を近づけるように前記一次空気の供給量を調節する空気比制御工程と、を備える。
【0019】
かかる構成によれば、一次空気の供給量の調節のみによって溶融炉空気比が適切な範囲内で(第1の値から第2の値までの間となるように)調節され、これにより、ガス化溶融炉における著しいコストアップを伴うことなく、窒素酸化物の発生の抑制と溶融炉におけるスラグ詰まりの防止の双方を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上より、本発明によれば、著しいコストアップを伴うことなく、窒素酸化物の発生の抑制と溶融炉におけるスラグ詰まりの防止の双方を図ることができるガス化溶融炉の燃焼制御装置、及びガス化溶融炉の燃焼制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る燃焼制御装置が接続された状態のガス化溶融炉の概略構成図である。
【図2】前記燃焼制御装置のコントローラの制御ブロック図である。
【図3】前記燃焼制御装置の記憶部に格納されるグラフを説明するための図である。
【図4】図4(A)は、ドカ落ちの際のガス化炉の炉内圧力を示す図であり、図4(B)は、ドカ落ちの前後において圧力による補正を行わない場合の溶融炉空気比を示す図であり、図4(C)は、ドカ落ちの際に一次空気の供給量を所定の時間だけ増加させた場合の溶融炉空気比を示す図である。
【図5】他実施形態に係る燃焼制御装置の記憶部に格納されるグラフを説明するための図である。
【図6】溶融炉空気比と、溶融炉及び二次燃焼室でのNOxの発生量と、の関係を示す図である。
【図7】溶融炉空気比と、溶融炉での熱分解ガスの燃焼効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0023】
本実施形態に係る燃焼制御装置は、図1に示されるガス化溶融炉100の燃焼制御を行う。このガス化溶融炉100は、ガス化炉102と、ガス化炉102に空気を供給するガス化用空気供給部104と、溶融炉106と、溶融炉106に空気を供給する一次空気供給部108と、二次燃焼室110と、二次燃焼室110に空気を供給する二次燃焼空気供給部112と、を備え、都市ごみ等の廃棄物をガス化・溶融してスラグ(溶融スラグ)を回収する。
【0024】
ガス化炉102は、空気(ガス化用空気)が供給されることによって内部に投入された廃棄物を加熱して熱分解ガスを生成する。本実施形態のガス化炉102は、いわゆる流動層(流動床)式ガス化炉であり、多数の流動粒子(砂)によって構成される流動層102aを有する。そして、ガス化炉102は、ガス化用空気(押込空気)が供給されることによって流動化した流動層102a内に廃棄物を取り込み、当該流動層102aの熱によって廃棄物を熱分解する。廃棄物は、流動層102aの熱によって、熱分解ガス、未燃分、及び灰等に熱分解される。
【0025】
尚、ガス化炉102は、流動層(流動床)式のガス化炉に限定されない。ガス化炉102は、例えば、ストーカ炉やキルン炉等であってもよく、供給されたガス化用空気を利用して廃棄物を熱分解し、これにより、熱分解ガスや灰等を生成する炉であれば、他の方式の炉であってもよい。
【0026】
ガス化用空気供給部104は、燃焼制御装置10のガス化炉制御部22に接続され、このガス化炉制御部22からの制御信号によって廃棄物の熱分解に必要な空気(ガス化用空気)をガス化炉102に供給する。具体的に、ガス化用空気供給部104は、ガス化炉102の炉底から流動層102aに向けてガス化用空気を供給する。
【0027】
溶融炉106は、ガス化炉102から排出される熱分解ガス等を燃焼させ、この燃焼による熱によって廃棄物の熱分解(加熱)により生じた灰を溶融させてスラグ(溶融スラグ)を生成する。この溶融炉106は、助燃バーナ107を備える。
【0028】
本実施形態の溶融炉106は、ガス化炉102からの排ガスに含まれる熱分解ガス及び未燃分と灰との旋回流において熱分解ガス及び未燃分を燃焼させることにより灰を溶融させる、いわゆる旋回流溶融炉であるが、これに限定されない。即ち、溶融炉106は、ガス化炉102からの熱分解ガス等を燃焼させ、これにより、ガス化炉102での熱分解により生じた灰を溶融できれば、他の方式の炉であってもよい。
【0029】
助燃バーナ107は、燃焼制御装置10のバーナ制御部28によって制御され、溶融炉106内を加熱する。本実施形態の助燃バーナ107は、溶融炉106内において燃料(補助燃料)を燃焼させることにより、溶融炉106内を加熱する。本実施形態の助燃バーナ107は、溶融炉(旋回流溶融炉)106における前記熱分解ガス等の旋回流が形成される部位の頂部に設けられる。
【0030】
一次空気供給部108は、燃焼制御装置10の溶融炉制御部24に接続され、この溶融炉制御部24からの制御信号によって熱分解ガスを燃焼させるのに必要な空気(一次空気)を溶融炉106に供給する。具体的に、一次空気供給部108は、溶融炉106の上流側端部(ガス化炉102からの熱分解ガス等が供給される部位)近傍から溶融炉106内に一次空気を供給する。
【0031】
二次燃焼室110は、溶融炉106から排出される排ガスを燃焼(二次燃焼)させる。具体的に、二次燃焼室110は、溶融炉106における熱分解ガスの燃焼の際に生じた一酸化炭素(CO)を燃焼(酸化)させることにより、COを二酸化炭素(CO2)にして排出する。
【0032】
二次燃焼空気供給部112は、燃焼制御装置10の二次燃焼室制御部26に接続され、この二次燃焼室制御部26からの制御信号によって二次燃焼室110においてCOを燃焼させるのに必要な空気(二次燃焼空気)を供給する。具体的に、二次燃焼空気供給部112は、溶融炉106のスラグ排出口106aの下流側であって、且つ、ボイラ114の上流側に二次燃焼空気を供給する。
【0033】
次に、燃焼制御装置10について、図2も参照しつつ説明する。
【0034】
燃焼制御装置10は、圧力センサ(圧力センサ)11と、流動層温度センサ12と、溶融炉内温度センサ(温度センサ)13と、酸素濃度計(濃度センサ)14と、第1空気量検出部15と、第2空気量検出部16と、第3空気量検出部17と、コントローラ20と、を備え、ガス化溶融炉100の燃焼制御を行う。
【0035】
圧力センサ11は、ガス化炉102内の圧力(炉内圧力)を測定する。この圧力センサ11は、溶融炉制御部24に接続され、ガス化炉102内の圧力を測定して測定結果に応じた圧力信号を溶融炉制御部24へ出力する。本実施形態の圧力センサ11は、ガス化炉102の上端部(熱分解ガスや灰等を溶融炉106に向けて排出する部位)において炉内圧力を測定する。
【0036】
流動層温度センサ12は、流動層102a内に配置され、流動層102aの温度(詳しくは、流動層102aを構成する砂の温度)を測定する。そして、流動層温度センサ12は、ガス化炉制御部22に接続され、流動層102aの温度を測定して測定結果に応じた温度信号をガス化炉制御部22へ出力する。
【0037】
溶融炉内温度センサ13は、溶融炉106内の温度を測定する。この溶融炉内温度センサ13は、溶融炉106内において形成される前記旋回流の下流端付近に配置される。そして、溶融炉内温度センサ13は、溶融炉制御部24及びバーナ制御部28に接続され、溶融炉106内の温度を測定して測定結果に応じた温度信号を溶融炉制御部24及びバーナ制御部28へそれぞれ出力する。
【0038】
酸素濃度計14は、溶融炉制御部24及び二次燃焼室制御部26に接続され、二次燃焼室110においてCOの燃焼が行われた後の排ガスの酸素濃度を測定して測定結果に応じた酸素濃度信号を溶融炉制御部24及び二次燃焼室制御部26へそれぞれ出力する。本実施形態の酸素濃度計14は、レーザ式の酸素濃度計である。
【0039】
第1空気量検出部15は、ガス化用空気供給部104からガス化炉102に供給される空気(ガス化用空気)の供給量を検出する。この第1空気量検出部15は、溶融炉制御部24に接続され、検出したガス化用空気の供給量に応じた第1供給量信号を溶融炉制御部24へ出力する。
【0040】
第2空気量検出部16は、一次空気供給部108から溶融炉106に供給される空気(一次空気)の供給量を検出する。この第2空気量検出部16は、溶融炉制御部24に接続され、検出した一次空気の供給量に応じた第2供給量信号を溶融炉制御部24へ出力する。
【0041】
第3空気量検出部17は、二次燃焼空気供給部112から二次燃焼室110に供給される空気(二次燃焼空気)の供給量を検出する。この第3空気量検出部17は、溶融炉制御部24に接続され、検出した二次燃焼空気の供給量に応じた第3供給量信号を溶融炉制御部24へ出力する。
【0042】
コントローラ20は、ガス化炉制御部22と、溶融炉制御部24と、二次燃焼室制御部26と、バーナ制御部28と、を備える。
【0043】
ガス化炉制御部22は、流動層102aの温度に基づいてガス化用空気の供給量を調節することにより、ガス化炉102内における廃棄物の熱分解を制御する。具体的に、ガス化炉制御部22は、流動層温度センサ12からの温度信号を受信することによって流動層102aの温度を取得する。そして、ガス化炉制御部22は、この温度に基づいてガス化用空気供給部104に制御信号を出力することによってガス化炉102にガス化用空気を供給する。例えば、ガス化炉制御部22は、流動層102aの温度が450℃〜550℃となるように、ガス化炉102にガス化用空気を供給する。また、ガス化炉制御部22は、熱分解ガス等がガス化炉102の外部に漏れないよう、ガス化炉102の炉内圧力が負圧となるように、ボイラ114の後段に設置された誘引送風機(図示省略)の回転数や誘引送風機の前段に設けられたダンパ(図示省略)の開度を調整して、ガス化炉102内の空気の吸引量を調整する。
【0044】
溶融炉制御部24は、演算部242と、記憶部244と、目標値設定部246と、空気比制御部248と、を備え、溶融炉106における熱分解ガスや未燃分の燃焼を制御して灰等を溶融させる。
【0045】
演算部242には、各種センサ等(具体的には、圧力センサ11、溶融炉内温度センサ13、酸素濃度計14、第1空気量検出部15、第2空気量検出部16、及び、第3空気量検出部17)が接続され、目標値設定部246には、溶融炉内温度センサ13、及び演算部242が接続され、空気比制御部248には、一次空気供給部108が接続されている。また、演算部242及び目標値設定部246には、記憶部244が接続されている。また、演算部242と目標値設定部246とが接続され、目標値設定部246と空気比制御部248とが接続されている。
【0046】
演算部242は、各種センサ等15、16、17、13から受信した第1供給量信号(ガス化用空気の供給量)と、第2供給量信号(一次空気の供給量)と、第3供給量信号(二次燃焼空気の供給量)と、酸素濃度信号(酸素濃度)と、から溶融炉106内の空気比である溶融炉空気比を求める。この溶融炉空気比とは、(ガス化炉102へのガス化用空気の供給量+溶融炉106への一次空気の供給量)÷(ガス化溶融炉100に供給される廃棄物が完全燃焼するために必要な理論空気量)により定義される値である。
【0047】
本実施形態の燃焼制御装置10(演算部242)は、記憶部244に格納されている以下の式(1)、式(2)から溶融炉空気比を求める。
【数1】

ここで、上記式(1)の総空気比は、
【数2】

で表される。尚、式(2)における「21」は、空気中の酸素の割合である。
【0048】
記憶部244は、ハードディスクや不揮発性の記憶素子であるROM、書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEPROM等により構成され、各種情報を格納する。
【0049】
具体的に、記憶部244は、上記の式(1)及び式(2)、目標値設定部246が用いる溶融炉106内の温度と溶融炉空気比との関係を示すグラフ(図3参照)等を格納する。
【0050】
このグラフにおいては、3つの温度(第1〜第3の温度T1〜T3)が閾温度として設定されており、各温度の大小関係は、「第1の温度T1<第3の温度T3<第2の温度T2」となっている。具体的には、以下の通りである。
【0051】
第1の温度T1は、スラグの溶融温度に基づくものであり、溶融炉106内の温度がこの温度以上であれば溶融炉106内のスラグが溶融状態である。また、溶融炉内の温度が第1の温度T1よりも小さくなると、溶融炉空気比の制御のみでは溶融炉106内の温度を上昇させることができない、若しくは、溶融炉106内の温度を上昇させるのに時間を要する。
【0052】
第2の温度T2は、溶融炉106におけるNOx(窒素酸化物)の発生量に基づくものであり、溶融炉106内の温度がこの温度以下であれば溶融炉106内におけるNOxの発生量が許容範囲内である。
【0053】
第3の温度T3は、第1の温度T1と第2の温度T2との中間温度である。
【0054】
また、上記グラフにおける溶融炉空気比の上限値v1は、溶融炉106における熱分解ガスの熱効率(燃焼効率)が最もよくなる(即ち、熱分解ガスの燃焼による発熱量が最も大きくなる)溶融炉空気比の値であり(図7参照)、下限値v2は、ガス化溶融炉100におけるNOxの発生量が最も少なくなる(即ち、二次燃焼室110から排出される排ガス中のNOxの量が最も小さくなる)溶融炉空気比の値である(図6のγ参照)。また、基準値v3は、上限値v1と下限値v2との略中間値である。
【0055】
本実施形態では、上限値v1が1.1であり、下限値v2が0.95であり、基準値v3が1.05である。
【0056】
尚、上記の燃焼制御装置10では、溶融炉空気比の値を目標値(本実施形態では、上限値v1、基準値v3、及び下限値v2のいずれか)に近づけるように一次空気の供給量が調節されるが、燃焼炉の制御上、一次空気の供給量は細かく上下する(振れ幅がある)。このため、下限値v2は、NOxの発生量に基づいて理論的に求められた値(1.0)よりもよりも少し低い値(例えば、0.95)に設定されている。この点、図6に示されるように、溶融炉空気比の変動に対するガス化溶融炉100(詳しくは、溶融炉106及び二次燃焼室110)でのNOxの発生量は、溶融炉空気比が第1の空気比(約1.0)を挟んで小さいときの方が大きいときよりも少ない。即ち、ガス化溶融炉100でのNOxの発生量は、溶融炉空気比の値が第1の空気比から大きくなっていくときの前記発生量の増加率よりも、第1の空気比から小さくなっていくときの前記発生量の増加率が小さい。そこで、本実施形態では、ガス化溶融炉100でのNOxの発生量を低減するために、前記振れ幅に対してNOxの発生量についてより許容される方向、即ち、理論値(1.0)よりも少し低めに溶融炉空気比の値が設定される。
【0057】
目標値設定部246は、演算部242と記憶部244と溶融炉内温度センサ13と空気比制御部248とに接続され、目標とする溶融炉空気比の値(目標値)を設定する。本実施形態の目標値設定部246は、溶融炉内温度センサ13によって測定された溶融炉106内の温度と、演算部242により求められる溶融炉空気比と、記憶部244に格納された前記グラフ(図3参照)と、に基づいて目標値を設定し、この目標値に応じた目標値信号を空気比制御部248に出力する。
【0058】
詳しくは、目標値設定部246は、溶融炉106内の温度が第3の温度T3以上、且つ、第2の温度T2よりも小さいときは、基準値v3を目標値とし、この目標値(基準値)に応じた目標値信号を空気比制御部248へ出力する。
【0059】
また、目標値設定部246は、溶融炉106内の温度が第2の温度T2以上のときは、下限値v2を目標値とし、この目標値(下限値)に応じた目標値信号を空気比制御部248へ出力する。
【0060】
また、目標値設定部246は、溶融炉106内の温度が第1の温度T1以上、且つ、第3の温度T3よりも小さいときは、上限値v1を目標値とし、この目標値(上限値)に応じた目標値信号を空気比制御部248へ出力する。
【0061】
また、目標値設定部246は、溶融炉106内の温度が第1の温度T1より小さいときは、上限値v1を目標値とし、この目標値(上限値)に応じた目標値信号を空気比制御部248へ出力する。尚、溶融炉106内の温度が第1の温度T1より小さいときは、バーナ制御部28が助燃バーナ107を作動させる。
【0062】
空気比制御部248は、目標値設定部246において設定された目標値に溶融炉空気比の値を近づけるように一次空気の供給量を調節する。この空気比制御部248は、圧力センサ11と、目標値設定部246と、一次空気供給部108と、に接続され、目標値に溶融炉空気比の値を近づけるように一次空気の供給量を調節するよう一次空気供給部108に制御信号を出力する。
【0063】
具体的に、目標値設定部246が目標値を基準値v3に設定したときは、空気比制御部248は、一次空気供給部108によって溶融炉106に供給される一次空気の供給量を調節することにより、溶融炉空気比の値を目標値(基準値)に近づける。
【0064】
また、目標値設定部246が目標値を基準値v3から上限値v1に変更したときは、空気比制御部248は、目標値(上限値)に溶融炉空気比の値を近づけるように、一次空気供給部108によって溶融炉106に供給される一次空気の供給量を調節する。これにより、溶融炉106内での熱分解ガスの燃焼効率が向上して溶融炉106内の温度が上昇し、溶融炉106内でのスラグの固化が防止される。そして、溶融炉106内の温度が第3の温度T3以上になると、目標値設定部246が目標値を上限値v1から基準値v3に戻すため、空気比制御部248は、この目標値(基準値)に、溶融炉空気比の値を近づけるように、一次空気供給部108によって溶融炉106に供給される一次空気の供給量を調節する。
【0065】
また、目標値設定部246が目標値を基準値v3から下限値v2に変更したときは、空気比制御部248は、目標値(下限値)に、溶融炉空気比の値を近づけるように、一次空気供給部108によって溶融炉106に供給される一次空気の供給量を調節する。これにより、溶融炉106内での空気比(溶融炉空気比)が、ガス化溶融炉100でのNOxの発生が抑制される値となるため、溶融炉106におけるNOxの発生が抑えられる。このとき、溶融炉空気比が抑えられて溶融炉106における熱分解ガスの燃焼効率が低下するため、ガス化炉102に供給される廃棄物の状態や種類によって、溶融炉106内の温度が下降する。そして、溶融炉106内の温度が第2の温度T2よりも小さくなると、目標値設定部246が目標値を下限値v2から基準値v3に戻すため、空気比制御部248は、この目標値(基準値)に、溶融炉空気比の値を近づけるように、一次空気供給部108によって溶融炉106に供給される一次空気の供給量を調節する。
【0066】
また、空気比制御部248は、ガス化炉102の炉内圧力の変動に基づく一次空気の供給量の調節も行う。具体的に、空気比制御部248は、圧力センサ11によって測定するガス化炉102内の圧力が一時的に正圧となった場合(図4(A)参照)に、溶融炉空気比の値にかかわらず、所定の時間(例えば、ガス化炉102の炉内圧力が正圧になっていた時間)だけ一次空気の供給量を増加させる。これにより、廃棄物のドカ落ちによるNOxの発生量の増加を抑制することができる。詳しくは、以下に説明する。
【0067】
ガス化溶融炉100の運転中に、廃棄物の固まり等が投入されることによりガス化炉102内に供給される廃棄物が一時的に増加する所謂廃棄物のドカ落ちによって、ガス化炉102内において生成される熱分解ガスの量が一時的に増大するときがある。このとき、溶融炉106への一次空気の供給量が熱分解ガスの増大前と同じであれば、溶融炉106において熱分解ガスの燃焼による酸素の消費量増加に伴う酸素不足が生じて溶融炉空気比が減少し(図4(B)参照)、溶融炉106においてCOの発生量が増加する。溶融炉106においてCOの発生量が増加すると、このCOを燃焼させるために二次燃焼室110へ多量の空気(酸素)が供給され、これにより、COの急激な燃焼によって二次燃焼室110内の温度が上昇する。このようにして二次燃焼室110内において空気比が増加すると共に温度が上昇することによって、二次燃焼室110におけるNOxの発生量が増加する。
【0068】
また、従来のように二次燃焼室110からの排ガス中の酸素濃度に基づき溶融炉空気比が一定となるように一次空気の供給量を増加させても、溶融炉106における一時的な酸素不足の発生を抑えるのに間に合わない。
【0069】
そこで、本実施形態の空気比制御部248は、圧力センサ11によって測定される圧力(ガス化炉102の炉内圧力)が負圧から正圧となったときに、演算部242により求められる溶融炉空気比の値にかかわらず所定の時間だけ一次空気の供給量を増加させることにより、溶融炉空気比の一時的な減少を好適に抑える(図4(C)参照)。その結果、ガス化炉102に投入される廃棄物が一時的に増加したときのガス化溶融炉100におけるNOxの増加を効果的に抑えることができる。即ち、ガス化溶融炉100では熱分解ガスの外部への漏れを防ぐために炉内圧力が負圧となるように制御されているため、廃棄物のドカ落ちによって熱分解ガスの発生量が一時的に増加したのをガス化炉102の炉内圧力が正圧になったことによって検出し、このとき空気比制御部248が一次空気の供給量を一時的に増加させることによって溶融炉106において熱分解ガスが燃焼する際の酸素不足によるCOの発生量の増加が抑えられる。
【0070】
また、溶融炉空気比に基づいて一次空気の供給量を調節するだけでは、溶融炉空気比を求めるために溶融炉よりも下流側において排ガス(二次燃焼室から排出される排ガス)の酸素濃度を検出する必要があるため、この溶融炉空気比に基づく偏差制御では、溶融炉空気比の変化を検出して一次空気の供給量を増やしても、溶融炉における一時的な酸素不足の発生を抑えるのに間に合わないが、本実施形態の空気比制御部248のように、溶融炉よりも上流に位置するガス化炉内の圧力の変化を検出して一次空気の供給量を増やすことにより、溶融炉における一時的な酸素不足の発生を効果的に抑えることができる。
【0071】
以上より、空気比制御部248は、二次燃焼室110におけるCOの燃焼による温度上昇を抑えて二次燃焼室110内におけるNOxの発生量の増加を効果的に抑制することができる。さらに、二次燃焼室110の負荷が低減され、且つ、二次燃焼室110での不完全燃焼によるCOの発生も抑えられる。
【0072】
二次燃焼室制御部26は、酸素濃度計14によって測定された酸素濃度に基づいて二次燃焼用空気の供給量を調節することにより、二次燃焼室110内でのCOの燃焼を制御する。この二次燃焼室制御部26には、酸素濃度計14と二次燃焼空気供給部112とが接続される。具体的に、二次燃焼室制御部26は、酸素濃度計14からの酸素濃度信号を受信することによって二次燃焼室110から排出される排ガスの酸素濃度を取得する。そして、二次燃焼室制御部26は、この酸素濃度に基づいて二次燃焼空気供給部112に制御信号を出力することによって二次燃焼室110に二次燃焼空気を供給する。例えば、二次燃焼室制御部26は、酸素濃度計14によって測定される排ガスの酸素濃度(二次燃焼室110においてCOを燃焼させた後の排ガスの酸素濃度)が6%となるように、二次燃焼空気供給部112を制御して二次燃焼空気の供給量を調節する。
【0073】
バーナ制御部28は、溶融炉内温度センサ13と助燃バーナ107とが接続され、溶融炉内温度センサ13によって測定された温度に基づいて助燃バーナ107を制御する。具体的に、バーナ制御部28は、溶融炉106内の温度が第1の温度T1よりも低くなったときに助燃バーナ107を作動させて溶融炉106内を加熱し、これにより、溶融炉106内の温度を上昇させる。そして、バーナ制御部28は、溶融炉106内の温度が第1の温度T1以上の所定の温度になると、助燃バーナ107を停止させる。
【0074】
以上の燃焼制御装置10が設けられたガス化溶融炉100では、以下のようにして燃焼制御が行われる。
【0075】
ガス化炉102に廃棄物が投入されると、流動層102aの熱によって廃棄物が熱分解され、これにより、熱分解ガス等が生成される。このガス化炉102の流動層102aの温度は、ガス化炉制御部22によって制御される。具体的には、流動層温度センサ12によって測定される温度が所定の温度(本実施形態では450℃〜550℃)となるように、ガス化炉制御部22によってガス化炉102へのガス化用空気の供給量が調節される。
【0076】
ガス化炉102において生成された熱分解ガスが溶融炉106に供給され、溶融炉106においてこの熱分解ガスが燃焼することにより、ガス化炉102から当該熱分解ガスと共に溶融炉106に供給された灰が溶融されてスラグとなる。
【0077】
このとき、溶融炉制御部24(詳しくは、目標値設定部246)が、溶融炉内温度センサ13によって測定される溶融炉106内の温度と、演算部242によって求められる溶融炉空気比と、記憶部244に格納されている前記グラフと、から、目標値を設定する。そして、空気比制御部248が、溶融炉空気比の値を目標値に近づけるように、溶融炉106に供給する一次空気の量を調節する。具体的に、空気比制御部248は、演算部242により求められる溶融炉空気比の値を、目標値設定部246が設定した目標値に近づけるように一次空気供給部108に制御信号を出力し、一次空気の供給量を調節する。
【0078】
このように、一次空気の供給量が調節されて溶融炉空気比の値が所定の範囲内(上限値から下限値の範囲内)となるように溶融炉106内の熱分解ガスの燃焼が制御されることにより、溶融炉106におけるNOxの発生量が抑えられつつスラグ詰まりが防止される。即ち、溶融炉106への一次空気の供給量が調節されることによって溶融炉106内の温度が所定の範囲内(第1の温度T1から第2の温度T2までの範囲内)で維持されることによりスラグ詰まりが防止されると共に、前記一次空気の供給量が調節されることによって空気比が制御されることにより溶融炉106において発生するNOxの量が抑えられる。
【0079】
例えば、溶融炉内の温度がt1(第3の温度T3<t1<第2の温度T2:図3参照)からt2(第1の温度T1<t2<第3の温度T3:図3参照)まで下がったときに、目標値設定部246は、目標値を基準値v3から上限値v1に変更する。これにより、空気比制御部248が一次空気の供給量を調節して溶融炉空気比の値を基準値v3から上限値v1に上げる。また、溶融炉内の温度が、t1からt3(第2の温度T2<t3:図3参照)まで上がったときに、目標値設定部246は、目標値を基準値v3から下限値v2に変更する。これにより、空気比制御部248が一次空気の供給量を調節して溶融炉空気比の値を基準値v3から下限値v2に下げる。
【0080】
そして、ガス化炉102での熱分解ガスの生成量の減少等によって溶融炉106内の温度が前記所定の範囲を超えて下がった場合、即ち、第1の温度T1よりも低くなった場合に、バーナ制御部28が助燃バーナ107を作動させて溶融炉106内の温度を確実且つ迅速に第1の温度T1以上の所定の温度まで上昇させる。
【0081】
溶融炉106から排出された排ガスは、二次燃焼室110において燃焼させられ、排ガス中のCOがCO2となってガス化溶融炉100からボイラ114に排出される。具体的には、酸素濃度計14によって測定される酸素濃度が所定の濃度(本実施形態では、6%)となるように、二次燃焼室制御部26によって二次燃焼室110への二次燃焼空気の供給量が調節される。
【0082】
以上の燃焼制御装置10によれば、一次空気の供給量の調節のみによって溶融炉空気比が適切な範囲内で(第1の値v1から第2の値v2までの間となるように)調節される。これにより、ガス化溶融炉100における著しいコストアップを伴うことなく、NOxの発生の抑制と溶融炉106におけるスラグ詰まりの防止の双方を図ることができる。
【0083】
即ち、溶融炉106内の温度が低くなると(例えば、t1からt2になると)、目標値設定部246が第1の値v1から第2の値v2までの範囲内で高い値(例えば、上限値v1若しくはこれに近い値)に目標値を設定することにより、熱分解ガスの燃効効率を向上させて溶融炉106内の温度の上昇を図り、これにより、溶融炉106内でのスラグ詰まりを防止する。一方、溶融炉106内の温度が高くなると(例えば、t1からt3になると)、目標値設定部246が前記範囲内で低い値(例えば、下限値v2若しくはこれに近い値)に目標値を設定することにより、溶融炉106内の温度を許容範囲内の温度に維持しつつ、空気比が高いことに起因して発生するNOxの抑制が図られる。
【0084】
また、本実施形態の燃焼制御装置10のように、所定の温度(第1の温度)T1よりも溶融炉106内の温度が下がったときにだけ、助燃バーナ107を作動させて溶融炉106の温度を上昇させることにより、助燃バーナ107を用いることによる著しい運転コストの増加を抑えることができる。
【0085】
具体的には、第1の温度T1よりも溶融炉106内の温度が下がると、溶融炉空気比の制御だけで溶融炉106内の温度を上げることができない若しくは温度が上がるまでに時間を要する。これは、ガス化炉102に投入される廃棄物の量や質によってガス化炉102での熱分解ガスの生成量が減少することにより溶融炉106内の温度が下がった場合、溶融炉106での熱分解ガスの燃料効率を高くしても発熱量が少なく溶融炉106内の温度を上昇させることができない若しくは上昇させ難いからである。
【0086】
このため、第1の温度T1よりも溶融炉106内の温度が下がったときに助燃バーナ107を作動させることにより、スラグ詰まりが生じないように溶融炉106内の温度を第1の温度T1以上に確実且つ迅速に上昇させることができる。しかも、溶融炉106内の温度が第1の温度T1よりも下がったときにだけ、助燃バーナ107を作動させて溶融炉106内の温度を上昇させるため、溶融炉106内の温度を上昇させるときに常に助燃バーナ107を作動させる燃焼制御に比べ、助燃バーナ107での燃料の消費による運転コストの著しい増加を抑制することができる。
【0087】
尚、本発明のガス化溶融炉の燃焼制御装置、及びガス化溶融炉の燃焼制御方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0088】
上記実施形態の燃焼制御装置10の目標値設定部246は、3つの閾温度(第1〜第3の温度T1〜T3)を境にして溶融炉空気比の目標値を変更するが、これに限定されない。例えば、目標値設定部は、1又は2、並びに、4以上の閾温度を境にして溶融炉空気比の目標値を変更するように構成されてもよい。
【0089】
また、目標値設定部は、図5(A)及び図5(B)に示されるように、溶融炉106内の温度の変化に伴って目標値を変化させてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 燃焼制御装置
11 圧力センサ
12 流動層温度センサ(温度センサ)
14 酸素濃度計(濃度センサ)
15 第1の空気量検出部
16 第2の空気量検出部
17 第3の空気量検出部
24 溶融炉制御部
28 バーナ制御部
100 ガス化溶融炉
102 ガス化炉
106 溶融炉
107 助燃バーナ
110 二次燃焼室
242 演算部
244 記憶部
246 目標値設定部
248 空気比制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を加熱することにより熱分解ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉から排出される熱分解ガスを燃焼させて前記廃棄物の加熱により生じた灰を溶融させる溶融炉と、前記溶融炉から排出される排ガスを燃焼させる二次燃焼室と、を備えるガス化溶融炉の燃焼制御装置であって、
前記溶融炉内の温度を測定する温度センサと、
前記二次燃焼室から排出される燃焼後の排ガスの酸素濃度を測定する濃度センサと、
前記廃棄物の加熱のために前記ガス化炉内に供給されるガス化用空気の供給量を検出する第1の空気量検出部と、
前記熱分解ガスの燃焼のために前記溶融炉内に供給される一次空気の供給量を検出する第2の空気量検出部と、
前記排ガスの燃焼のために前記二次燃焼室内に供給される二次燃焼空気の供給量を検出する第3の空気量検出部と、
各空気量検出部によって検出される前記ガス化用空気の供給量、前記一次空気の供給量、及び前記二次燃焼空気の供給量、並びに、前記濃度センサによって測定される酸素濃度から前記溶融炉における一次空気の供給後の空気比である溶融炉空気比を求める演算部と、
前記溶融炉への一次空気の供給量を調節することにより前記溶融炉空気比を制御する溶融炉制御部と、を備え、
前記溶融炉制御部は、
前記ガス化溶融炉における窒素酸化物の発生を抑えるのに適した溶融炉空気比の値である第1の値から前記熱分解ガスを燃焼させて溶融炉内の温度を上昇させるのに適した溶融炉空気比の値であって前記第1の値よりも大きな第2の値までの間の範囲で前記溶融炉内の温度が低いほど高い値を溶融炉空気比の目標値として設定する目標値設定部と、
この目標値に前記溶融炉空気比の値を近づけるように前記一次空気の供給量を調節する空気比制御部と、を有するガス化溶融炉の燃焼制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化溶融炉の燃焼制御装置であって、
前記ガス化炉内の圧力を測定する圧力センサを備え、
前記空気比制御部は、前記圧力センサによって測定される圧力が負圧から正圧となったときに、前記演算部により求められる溶融炉空気比の値にかかわらず所定の時間だけ前記一次空気の供給量を増加させるガス化溶融炉の燃焼制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス化溶融炉の燃焼制御装置であって、
前記溶融炉内を加熱するための助燃バーナを制御するバーナ制御部を備え、
前記バーナ制御部は、前記温度センサ部により測定される溶融炉内の温度が所定の温度よりも低くなったときに、前記助燃バーナを作動させて当該溶融炉内を加熱するガス化溶融炉の燃焼制御装置。
【請求項4】
廃棄物を加熱することにより熱分解ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉から排出される熱分解ガスを燃焼させて前記廃棄物の加熱により生じた灰を溶融させる溶融炉と、前記溶融炉から排出される排ガスを燃焼させる二次燃焼室と、を備えるガス化溶融炉の燃焼制御方法であって、
前記溶融炉内の温度を測定する温度測定工程と、
前記二次燃焼室から排出される燃焼後の排ガスの酸素濃度を測定する濃度測定工程と、
前記廃棄物の加熱のために前記ガス化炉内に供給されるガス化用空気の供給量を検出する第1の空気量検出工程と、
前記熱分解ガスの燃焼のために前記溶融炉内に供給される一次空気の供給量を検出する第2の空気量検出工程と、
前記排ガスの燃焼のために前記二次燃焼室内に供給される二次燃焼空気の供給量を検出する第3の空気量検出工程と、
各空気量検出工程によって検出される前記ガス化用空気の供給量、前記一次空気の供給量、及び前記二次燃焼空気の供給量、並びに、前記濃度測定工程によって測定される酸素濃度から前記溶融炉における一次空気の供給後の空気比である溶融炉空気比を求める演算工程と、
前記ガス化溶融炉における窒素酸化物の発生を抑えるのに適した溶融炉空気比の値である第1の値から前記熱分解ガスを燃焼させて溶融炉内の温度を上昇させるのに適した溶融炉空気比の値であって前記第1の値よりも大きな第2の値までの間の範囲で前記温度測定工程によって測定される溶融炉内の温度が低いほど高い値を溶融炉空気比の目標値として設定し、この前記目標値に前記溶融炉空気比の値を近づけるように前記一次空気の供給量を調節する空気比制御工程と、を備えるガス化溶融炉の燃焼制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−79788(P2013−79788A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221008(P2011−221008)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】