説明

ガス検知装置

【課題】 部品点数を増加させることなく簡単な構成で、環境変化による影響を低減できるガス検知装置を提供する。
【解決手段】 半導体式ガスセンサ20を間歇駆動させてガスを検知するガス検知装置10において、半導体式ガスセンサ20の駆動開始直後のセンサ出力Vと、駆動開始後の安定した状態のセンサ出力Vとに基づき、V=V+C(V)(但し、V:センサ出力補正値、V:安定した状態のセンサ出力、V:駆動開始直後のセンサ出力、C:補正関数)として、半導体式ガスセンサ20のセンサ出力補正値Vを算出し、このセンサ出力補正値Vに基づいて、ベース出力の変動の有無を判定するガス検出判定手段30を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体式ガスセンサを間歇駆動させてガスを検知するガス検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス検知機器に搭載される半導体式ガスセンサには、温湿度等の環境変化に敏感に反応するものがある。環境によるガスセンサのセンサ出力の変化は検知対象ガスに対するセンサ出力の変化に比べて小さいが、雰囲気中に検知対象ガスが存在しないときのベース出力によってゼロ点補正を行うガス検知機器や、警報を行う検知対象ガスの濃度を低い値に設定してあるガス検知機器では、環境変化によるセンサ出力の変動により、誤報等の誤作動につながる虞がある。
このような温湿度の変化によるベース変動を補正するために、従来は、例えば、サーミスタ等の温湿度検知素子を用い、センサ出力の補正を行っていた。しかし、温湿度検知素子等を別途利用する場合には、半導体式ガスセンサのセンサ素子や温湿度検知素子の初期特性のばらつきに拠るずれや経時変化等によるずれを生じたり、部品点数の増加によるコストアップにつながるという問題があった。
これに対し、半導体式ガスセンサを温度変化させて複数のセンサ出力を得、これらを組み合せて検出対象ガスを検出するガス検知装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−83776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のガス検知装置は、複数のセンサ出力を計測する構成であることから演算が複雑なものとなり、装置の作製に手間がかかる。また、温度変化させるための装置等が別途必要となり、コストアップにつながるという問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数を増加させることなく簡単な構成で、環境変化による影響を低減できるガス検知装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するための本発明に係るガス検知装置の特徴構成は、半導体式ガスセンサを間歇駆動させてガスを検知するガス検知装置であって、前記半導体式ガスセンサの駆動開始直後のセンサ出力Vと、駆動開始後の安定した状態のセンサ出力Vとに基づき、V=V+C(V)(但し、V:センサ出力補正値、V:安定した状態のセンサ出力、V:駆動開始直後のセンサ出力、C:補正関数)として、前記半導体式ガスセンサのセンサ出力補正値Vを算出し、このセンサ出力補正値Vに基づいて、ベース出力の変動の有無を判定するガス検出判定手段を有する点にある。
上記特徴構成によれば、予め取得した雰囲気中の温湿度等の環境変化と駆動開始直後のセンサ出力Vとの関係に基づいて、安定した状態のセンサ出力Vを補正したセンサ出力補正値Vを算出する。出願人は、センサ出力Vをセンサ出力Vに基づいて補正した値が環境変化によって変動しないことを見出した。このため、センサ出力補正値Vの変動は、環境変化による変化が低減され、雰囲気中の検知対象ガスの濃度に依るものとなる。従って、温湿度検知素子等を別途必要とせず、費用をかけることなく、環境変化による誤報等の誤動作を効果的に防止することができる。
また、別部品を利用しないので、温湿度検知素子等を別途取付けた場合のように、温湿度検知素子の初期特性のばらつきや経時変化等によるセンサ出力のずれが生じるのを防止することができる。
【0007】
この目的を達成するための本発明に係るガス検知装置の他の特徴構成は、前記ガス検出判定手段は、前記センサ出力補正値Vの変動幅が、所定の範囲内にあるときはベース出力の変動が無いと判定するよう構成してある点にある。
センサ出力補正値Vは、環境変化によるセンサ出力の変化を低減する。従って、上記特徴構成の如く、環境変化によるセンサ出力の変動幅を考慮して、ベース出力の変動が無いと判定する範囲を設定することで、環境変化による誤報等の誤動作を防止することができる。この範囲は、センサ出力補正値Vを求める補正関数Cの精度に応じて適宜設定することができる。
【0008】
更に、他の特徴構成は、前記補正関数は、C(V)=Vである点にある。
安定した状態のセンサ出力Vに対し駆動開始直後のセンサ出力Vを加算することで、温湿度変化によるセンサ出力への影響を低減させることができることが出願人の実験により分かった。従って、上記特徴構成の如く、安定した状態のセンサ出力Vに駆動開始直後のセンサ出力Vを加算したセンサ出力補正値Vを用いてガス検知の判定を行うことで、温湿度変化による誤作動を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るガス検知装置(以下、適宜「本発明装置」と略称する)の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明装置10は、熱線型半導体式ガスセンサ20を間歇駆動させてガスを検知するガス検知装置であり、図1に示すように、半導体式ガスセンサ20と、ガス検出判定手段30と、ガス検出判定手段30においてガス検知と判定されたときにアラーム等の手段を用いて利用者に知らせる警報部40とを備えて構成される。
【0010】
半導体式ガスセンサ20は、図2に示すような、検知対象ガスを検知可能な熱線型半導体式ガス検知素子21を備えている。熱線型半導体式ガス検知素子21は、白金、パラジウム、白金−パラジウム合金等の貴金属線22に、酸化インジウム、酸化タングステン、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物を主成分とする金属酸化物半導体を塗布、乾燥後焼結成形してあるガス感応部23を備えている。
【0011】
図3は、熱線型半導体式ガス検知素子21をブリッジ回路に組み込みんだ半導体式ガスセンサ20の構成図であり、パルス発生器24、センサ出力計25、及び、固定抵抗RL、R1、R2を備えている。パルス発生器24は、1分周期で、パルス幅0.3秒のパルスを発生するよう設定されている。センサ出力計25のセンサ出力Vは、V=−E{rs/(rs+r)−r1/(r1+r2)}によって得られる。ここで、Eはパルス発生器24のブリッジ電圧値、rsは熱線型半導体式ガス検知素子21の抵抗値、rは固定抵抗RLの抵抗値、r1は固定抵抗R1の抵抗値、r2は固定抵抗R2の抵抗値である。本実施形態では、Eは1.6Vに設定され、r、r1、r2は夫々10Ωに設定されている。
【0012】
ここで、図4は、半導体式ガスセンサ20のセンサ出力[V]の計測タイミングを示している。本実施形態では、Vは駆動開始直後、駆動開始から略0秒後のセンサ出力であり、Vは半導体式ガスセンサ20の駆動開始から略0.3秒後の安定した状態のセンサ出力である。
【0013】
ガス検出判定手段30は、半導体式ガスセンサ20からの出力に基づいてセンサ出力補正値Vを算出する演算部31と、センサ出力補正値Vに基づいてベース出力の変動の有無を判定する判定部32とを備えている。
【0014】
演算部31は、半導体式ガスセンサ20から駆動開始直後のセンサ出力Vと、駆動開始後の安定した状態のセンサ出力Vとを取得し、センサ出力Vとセンサ出力Vとを用いてセンサ出力補正値Vを算出する。センサ出力補正値Vは、V=V+C(V)によって得られる。ここで、Cは補正関数である。ここで、本実施形態ではC(V)=Vとして設定されているので、センサ出力補正値Vは、V=V+Vによって求められる。
【0015】
尚、補正関数Cは、本実施形態に拘わらず、任意に決定することができる。例えば、センサ出力Vに乗算する係数を適宜変更しても良い。更に、センサ出力補正値Vを求める際にはセンサ出力Vとセンサ出力Vとの加算に限らず、乗算を行っても良い。
【0016】
判定部32は、演算部31からセンサ出力補正値Vを取得し、センサ出力補正値Vの変動幅が、所定の範囲内にあるときはベース出力の変動が無い、即ち、雰囲気中に検知対象ガスが存在しないと判定する。ここでは、しきい値thを略10mVに設定し、センサ出力補正値Vの変動幅がしきい値thを超えた場合にガス検知と判定する。
【0017】
ここで、図5は、センサ出力Vの変動幅、及び、演算部31によって算出されたセンサ出力補正値Vの変動幅の時間的推移を示している。ここで、60時間経過後までは、雰囲気中に検知対象ガスは存在しておらず、温湿度のみ変化している。これに対し、60時間経過後は、温湿度は変化せず、雰囲気中の検知対象ガスの濃度が変化している。
【0018】
詳細には、10時間後付近では、温度が20度から0度に、湿度が65%から90%に変化しており、センサ出力Vが略−10mV前後にまで変化しているのに対し、センサ出力補正値Vは略変化していない。また、30時間後付近では、温度が0度から40度に変化しており、このときのセンサ出力Vが略15乃至10mVまで変化しているのに対し、センサ出力補正値Vは10mV以内で推移しており、センサ出力補正値Vは温湿度変化の影響を受け難いことがわかる。
【0019】
更に、温湿度変化の無い60時間付近は、雰囲気中に検知対象ガスが存在する場合を示しており、このときのセンサ出力補正値Vはしきい値thを超えて変化しているため、適切にガス検知を判定することができる。従って、センサ出力補正値Vを判定に用いた場合には、温度変化によるセンサ出力の変化によって、ガス検知と誤判定されるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るガス検知装置の構成図
【図2】半導体式ガスセンサの熱線型半導体式ガス検知素子の概略図
【図3】半導体式ガスセンサの構成図
【図4】センサ出力の計測タイミングを示す図
【図5】センサ出力補正値の変動幅及びセンサ出力の変動幅を示す図
【符号の説明】
【0021】
10 ガス検知装置
20 半導体式ガスセンサ
30 ガス検出判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体式ガスセンサを間歇駆動させてガスを検知するガス検知装置であって、
前記半導体式ガスセンサの駆動開始直後のセンサ出力Vと、駆動開始後の安定した状態のセンサ出力Vとに基づき、
=V+C(V
(但し、V:センサ出力補正値、V:安定した状態のセンサ出力、V:駆動開始直後のセンサ出力、C:補正関数)
として、前記半導体式ガスセンサのセンサ出力補正値Vを算出し、このセンサ出力補正値Vに基づいて、ベース出力の変動の有無を判定するガス検出判定手段を有するガス検知装置。
【請求項2】
前記ガス検出判定手段は、前記センサ出力補正値Vの変動幅が、所定の範囲内にあるときはベース出力の変動が無いと判定するよう構成してある請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項3】
前記補正関数は、C(V)=Vである請求項1または2に記載のガス検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−29856(P2006−29856A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205873(P2004−205873)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【Fターム(参考)】