説明

ガス遮断装置

【課題】一酸化炭素中毒に至るガス器具を点火時の流量変動または圧力変動の大きさで特定することで、ガス使用上の安全性を向上させる。
【解決手段】起動した際に点火判定部16にて流量が立ち上がった時点から所定時間内に点火による温度変化によって生じる流量変化が所定の閾値以上であれば点火と判断し、所定値以下であれば点火による温度変化が無いため流量変化がないために未点火と判断する。点火判定部16で未点火と判断した場合、制御部17は前記通信部18を介してガス事業者への警報、または、前記遮断弁19を駆動しガス供給管を閉栓する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスメータ以後のガス使用時に、ガス使用上の安全を図る及びガス使用上の利便性を向上させるガス遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス器具の使用の際には、ガスの消し忘れやガス漏れなどによる事故を未然に防止するために、ガスのユーザ宅やガス供給路を管理しているガス事業者において、異常時に通報やガス供給路の遮断を行うシステムが普及しつつある。従来のガス保安装置としては、ガス流量などに基づき、大流量が流れたときにガスの供給を遮断したり、微小流量で長時間ガスが流れたときに遮断したり、流量区分別に所定流量で所定時間ガスが流れたときに遮断するものなどが用いられている。
【0003】
ガスのユーザの家屋等では、ガス供給路の入口部分にガス流量を計測するガスメータが設置されている。この種のガスメータとして、従来は所定の流量ごとに流れたガスの量を積算する膜式のガスメータが一般的であったが、最近では、超音波信号を用いて瞬時流量を求め、この瞬時流量を積算することでガスの流量を計測する超音波式のガスメータも提案されている。
【特許文献1】国際公開第00/016044号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のガス遮断装置では、ガス器具の劣化や故障によりガス器具を点火する際に点火できなくなること、または点火し難くなったことを検出できないため、ガス器具の使用状態にかかわらず流量区分別に所定流量で所定時間ガスが流れたときに遮断していた。
【0005】
また、ガス器具が劣化や故障することで一酸化炭素中毒等の発生し大事故に至ることがあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、一酸化炭素中毒に至るガス器具を点火時の流量変動または圧力変動の大きさで特定することで、ガス使用上の安全性を向上させることが可能なガス遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス遮断装置は、ガス供給管に接続され、ガスの瞬時流量を計測する流量計測部と、ガス供給管に設けられたガス通路を遮断する遮断弁と、前記流量計測部により計測されたガスの瞬時流量に基づき、流量値及び積算流量値及びガスの使用時間を算出する流量演算部と、使用するガス器具を登録するガス器具登録部と、前記ガスの瞬時流量から前記ガス供給管を流れるガスを使用する器具を判別する器具判別部と、前記ガス器具登録部に登録されたガス器具毎に器具点火時の流量変化有無を記憶する器具点火パターン記憶部と、前記器具点火パターン記憶部で点火した際に流量変化有りと記憶されたガス器具において、起動し流量が立ち上がった時点から所定時間内に流量変化が所定の閾値以上であれば点火と判断し、所定値以下であれば未点火と判断する点火判定部と、前記流量演算部で算出された結果や前記点火判定部で判断された結果に基づき、ガス遮断の判断、警報、通報等の判断の制御を行う制御部を有したものである。
【0008】
これにより、一酸化炭素中毒に至るガス器具を点火時の流量変動の大きさで特定するこ
とができ、ガス使用上の安全性を向上させることが可能となる。
【0009】
また、本発明は、ガス供給管に設けられたガス通路の圧力を測定する圧力センサと、前記ガス器具登録部に登録されたガス器具毎に器具点火時の圧力変化有無を記憶する器具点火パターン圧力記憶部と、前記器具点火パターン圧力記憶部で点火した際に圧力変化有りと記憶されたガス器具において、起動し流量が立ち上がった時点から所定時間内に圧力変化が所定の閾値以上であれば点火と判断し、所定値以下であれば未点火と判断する圧力点火判定部と、前記流量演算部で算出された結果や前記圧力点火判定部で判断された結果に基づき、ガス遮断の判断、警報、通報等の判断の制御を行う制御部を有したものである。
【0010】
これにより、一酸化炭素中毒に至るガス器具を点火時の圧力変動の大きさで特定することができ、ガス使用上の安全性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一酸化炭素中毒に至るガス器具を点火時の流量変動または圧力変動の大きさで特定することで、ガス使用上の安全性を向上させることが可能なガス遮断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明は、ガス供給管に接続され、ガスの瞬時流量を計測する流量計測部と、ガス供給管に設けられたガス通路を遮断する遮断弁と、前記流量計測部により計測されたガスの瞬時流量に基づき、流量値及び積算流量値及びガスの使用時間を算出する流量演算部と、使用するガス器具を登録するガス器具登録部と、前記ガスの瞬時流量から前記ガス供給管を流れるガスを使用する器具を判別する器具判別部と、前記ガス器具登録部に登録されたガス器具毎に器具点火時の流量変化有無を記憶する器具点火パターン記憶部と、前記器具点火パターン記憶部で点火した際に流量変化有りと記憶されたガス器具において、起動し流量が立ち上がった時点から所定時間内に流量変化が所定の閾値以上であれば点火と判断し、所定値以下であれば未点火と判断する点火判定部と、前記流量演算部で算出された結果や前記点火判定部で判断された結果に基づき、ガス遮断の判断、警報、通報等の判断の制御を行う制御部を有したものである。
【0013】
これによって、一酸化炭素中毒に至るガス器具を点火時の流量変動の大きさで特定することができ、ガス使用上の安全性を向上させることが可能となる。
【0014】
第2の発明は、ガス供給管に設けられたガス通路の圧力を測定する圧力センサと、前記ガス器具登録部に登録されたガス器具毎に器具点火時の圧力変化有無を記憶する器具点火パターン圧力記憶部と、前記器具点火パターン圧力記憶部で点火した際に圧力変化有りと記憶されたガス器具において、起動し流量が立ち上がった時点から所定時間内に圧力変化が所定の閾値以上であれば点火と判断し、所定値以下であれば未点火と判断する圧力点火判定部と、前記流量演算部で算出された結果や前記圧力点火判定部で判断された結果に基づき、ガス遮断の判断、警報、通報等の判断の制御を行う制御部を有したものである。
【0015】
これによって、一酸化炭素中毒に至るガス器具を点火時の圧力変動の大きさで特定することができ、ガス使用上の安全性を向上させることが可能となる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は第1の実施形態に係るガス遮断装置の構成を示すブロック図である。本実施形
態では、ガスのユーザの家屋等に設置されるガスメータを利用するガス遮断装置の構成例を示す。
【0018】
本実施形態のガス遮断装置10は、ユーザの家屋等に敷設されたガス供給管20の途中に設けられ、このガス供給管20の下流側の配管には複数のガス器具として器具A21、器具B22、器具C23が接続されている。器具A21及び器具B22は起動し点火した際に流量が立ち上がった時点から所定時間内に流量変化がある器具で、器具C23は起動し点火した際に流量が立ち上がった時点から所定時間内に流量変化がない器具である。
【0019】
このガス遮断装置10は、屋外または屋内の所定位置に設置される。
【0020】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。ガス遮断装置10は、流量計測部11、流量演算部12、器具登録部13、器具判別部14、器具点火パターン記憶部15、点火判定部16、制御部17、通信部18、遮断弁19を有して構成される。超音波流量計11は、ガス供給管20の経路中に接続され、後述するように、超音波信号を用いてガス供給管20内のガス流により生じる伝搬時間差を求め、ガスの瞬時流量を検出するものである。流量演算部12は、検出された瞬時流量を基に、瞬時流量の平均などによって流量値を算出したり、瞬時流量を積算して積算流量値を算出したり、漏れ器具判別のための流量を算出するなど、流量に関する各種演算を行うものである。
【0021】
次に、動作について図2を用いて説明する。流量計測部11にて流量が計測されると、流量演算部12で流量を演算し、器具判別部13で使用器具を判別する。器具点火パターン記憶部15は点火時の流量パターンを記憶している。前記器具判別部14にて器具C23と判定した場合は点火判定部16の処理を実行しない。前記器具判別部14にて器具A21または器具B22と判定した場合は点火判定部16にて実際に使用した際の点火時の瞬時流量と前記器具点火パターン記憶部15の流量パターンを比較する。
【0022】
具体的には、起動した際に点火判定部16にて流量が立ち上がった時点から所定時間内に点火による温度変化によって生じる流量変化が所定の閾値以上であれば点火と判断し、所定値以下であれば点火による温度変化が無いため流量変化がないために未点火と判断する。前記点火判定部16で未点火と判断した場合、制御部17は前記通信部18を介してガス事業者への警報、または、前記遮断弁19を駆動しガス供給管を閉栓する。
【0023】
尚、前記点火判定部16の処理を実施した後に、前記器具判別部13で使用器具を判別し、前記制御部17で処理を行うことも可能である。
【0024】
超音波流量計11を図3を用いて説明する。ガス供給管20に連通する矩形断面を持つ計測流路35を有し、この計測流路35の相対向する流路壁の上流側と下流側には、一対の超音波送受信器36、37が配置されている。これらの超音波送受信器36、37は、超音波伝播経路が計測流路35を流動するガス流を斜めに横切るように設定され、交互に超音波を送受信させることによって、ガス流に対して順方向と逆方向に超音波の伝搬を行う。
【0025】
このとき、超音波送受信器36、37間の距離、すなわち測定距離をL、ガス流に対する超音波伝播経路の角度をφ、超音波送受信器36、37の上流から下流への超音波伝播時間をt1、下流から上流への超音波伝播時間をt2、音速をCとすると、流速Vは以下の式により求められる。
【0026】
V=L/2cosφ((1/t1)−(1/t2)) …(1)
この流速Vと計測流路35の断面積とからガス流の瞬時流量を算出する。
【0027】
制御部17は、器具判別に用いる判定値等の器具判別情報、超音波流量計11により計測された瞬時流量値情報、流量演算部12により算出されたガス流量値情報や積算流量値情報などの流量情報、及び、使用器具や使用状況の履歴情報など、ガス遮断装置10にて用いる各種情報を記憶し、保安処理部の機能を有し、ガス遮断装置各部の動作制御、通信、警告やガスの遮断などの保安処理を行うものである。ここで、制御部17、流量演算部12、器具登録部13、器具判別部14、器具点火パターン記憶部15、点火判定部16は、マイクロコンピュータ(マイコン)等を構成するプロセッサ及び動作プログラムにより構成され、プロセッサにおいて所定の動作プログラムを実行して対応する処理を行うことにより、各機能が実現される。また、器具登録部13、器具点火パターン記憶部15、点火判定部16は、フラッシュROM、RAM等のメモリにより構成される。
【0028】
通信部18は、保安制御部がガス遮断の判断又は警報の判断を行った際に、前記記憶部から送られる前記流量値、前記積算流量値、流量の積算時間及び前記器具判定部で判別された器具等のデータをガス事業者に通信するものである。
【0029】
遮断弁19は、ガス供給管20の経路中に接続され、制御部15からの指示に基づいてガス供給管20を閉塞してガスの供給を遮断するものである。
【0030】
次に、器具判別部14について図4を用いて詳しく説明する。24は開始命令、25は流量計測命令、26は流量変化判断命令、27はインターバル設定命令、28は立上り波形作成命令、29は器具パターン比較判断命令、30はインターバル設定命令、31は器具特定命令、32は判別記憶命令、33は保安命令である。
【0031】
開始命令24によりプログラムが開始する。流量計測命令25により前述した通常の流量計測が行われる。ここで器具A21、器具B22、器具C23のいずれかが使用されると、流量変化が生じるが、これは流量変化判断命令26によりYesの側になる。器具A21、器具B22、器具C23の立上りでない場合にはNoの側になり、インターバル設定命令27にて設定された時間ののち、また同様の動作が繰返される。流量変化を検知した場合には、立上り波形作成命令28により流量の立上り波形が形成される。これは予め登録されている立上りパターンと器具パターン比較判断命令29により比較され、合致するものがあった場合には器具特定命令31により使用器具が特定される。もし、合致しない場合には別の要因によるものゆえ、Noの側を取り、インターバル設定命令27により定められた時間の後、再度上記の内容を繰返す。
【0032】
(実施の形態2)
図5は第2の実施形態に係るガス遮断装置の構成を示すブロック図である。圧力センサ40は、ガス供給管に設けられたガス通路の圧力を測定する。流量計測部11にて流量が計測されると、流量演算部12で流量を演算し、器具判別部13で使用器具を判別する。器具点火パターン圧力記憶部41は点火時の圧力パターンを記憶している。前記器具判別部13にて器具C23と判定した場合は圧力点火判定部42の処理を実行しない。前記器具判別部13にて器具A21または器具B22と判定した場合は圧力点火判定部42にて実際に使用した際の点火時の圧力と前記器具点火パターン圧力記憶部41の圧力パターンを比較する。具体的には、器具A21または器具B22が起動した際に圧力点火判定部42にて流量が立ち上がった時点から所定時間内の圧力変化が所定の閾値以上であれば点火と判断し、所定値以下であれば未点火と判断する。前記圧力点火判定部42で未点火と判断した場合、制御部17は前記通信部18を介してガス事業者への警報、または、前記遮断弁19を駆動しガス供給管を閉栓する。
【0033】
また、器具点火パターン圧力記憶部41、圧力点火判定部42は、フラッシュROM、
RAM等のメモリにより構成される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、一酸化炭素中毒に至るガス器具を点火時の流量変動または圧力変動の大きさで特定することで、ガス使用上の安全性を向上させることが可能なガス遮断装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態におけるガス遮断装置の構成を示すブロック図
【図2】本実施形態における点火判定に用いる流量波形を示す図
【図3】本実施形態における超音波流量計の概略構成を示す構成図
【図4】本実施形態における器具判別を示すフロー図
【図5】本実施形態におけるガス遮断装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0036】
10 ガス遮断装置
11 超音波流量計
12 流量演算部
13 器具登録部
14 器具点火パターン記憶部
15 点火判定部
16 制御部
17 通信部
18 感震器
19 遮断弁
20 ガス供給管
21、22、23 器具
24 開始命令
25 流量計測命令
26 流量変化判断命令
27 インターバル設定命令
28 立上り波形作成命令
29 器具パターン比較判断命令
30 インターバル設定命令
31 器具特定命令
32 判別記憶命令
35 計測流路
36、37 超音波送受信器
40 圧力センサ
41 器具点火パターン圧力記憶部
42 圧力点火判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給管に接続され、ガスの瞬時流量を計測する流量計測部と、
ガス供給管に設けられたガス通路を遮断する遮断弁と、
前記流量計測部により計測されたガスの瞬時流量に基づき、流量値及び積算流量値及びガスの使用時間を算出する流量演算部と、
使用するガス器具を登録するガス器具登録部と、
前記ガスの瞬時流量から前記ガス供給管を流れるガスを使用する器具を判別する器具判別部と、
前記ガス器具登録部に登録されたガス器具毎に器具点火時の流量変化有無を記憶する器具点火パターン記憶部と、
前記器具点火パターン記憶部で点火した際に流量変化有りと記憶されたガス器具において、起動し流量が立ち上がった時点から所定時間内に流量変化が所定の閾値以上であれば点火と判断し、所定値以下であれば未点火と判断する点火判定部と、
前記流量演算部で算出された結果や前記点火判定部で判断された結果に基づき、ガス遮断の判断、警報、通報等の判断の制御を行う制御部を有したガス遮断装置。
【請求項2】
ガス供給管に設けられたガス通路の圧力を測定する圧力センサと、
前記ガス器具登録部に登録されたガス器具毎に器具点火時の圧力変化有無を記憶する器具点火パターン圧力記憶部と、
前記器具点火パターン圧力記憶部で点火した際に圧力変化有りと記憶されたガス器具において、起動し流量が立ち上がった時点から所定時間内に圧力変化が所定の閾値以上であれば点火と判断し、所定値以下であれば未点火と判断する圧力点火判定部と、
前記流量演算部で算出された結果や前記圧力点火判定部で判断された結果に基づき、ガス遮断の判断、警報、通報等の判断の制御を行う制御部を有したガス遮断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−159915(P2010−159915A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2295(P2009−2295)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】