説明

キャパシタ、キャパシタ内蔵配線基板、及びその製造方法

【課題】キャパシタ面積が増大することを効果的に抑制するとともに、キャパシタ容量値を調整することのできるキャパシタ、キャパシタ内蔵配線基板、及びその製造方法を提供すること
【解決手段】本発明の第1の態様にかかるキャパシタ1は、基板101上に形成された下部電極102と、下部電極102上に形成された第1絶縁膜103と、第1絶縁膜103を介して下部電極102と対向配置され、下部電極102上に電極開口部106を有する上部電極104と、電極開口部106内に設けられた第2絶縁膜105と、を備え、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104は、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きいものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ、キャパシタ内蔵配線基板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化や高機能化を図るため、受動部品の高密度実装に対する市場の要求が高まっている。このような要求に応えるために様々な技術開発が進められている。
【0003】
高周波回路やアナログ回路に利用される多層配線基板では、数pF程度の小容量で高精度なキャパシタが用いられている。従来、MMIC(マイクロ波モノリシックIC)などの回路では、回路と接続される複数のキャパシタを回路外部に設けることで、キャパシタの容量値、ならびに回路の調整が行われてきた。この従来の回路は、キャパシタが回路外部に形成されるので、回路の占有面積が大きくなるという問題があった。
【0004】
そこで、近年では、回路を構成する他の薄膜キャパシタや薄膜抵抗の層間絶縁膜、あるいは多層配線基板を構成する層間絶縁膜を、容量絶縁体(誘電体)としてキャパシタを形成することが行われている。この方法によれば、多層配線基板における多層配線化と同じ製造工程でキャパシタを設けることができ、また、回路の小型化が可能である。
【0005】
このようなキャパシタでは、電極の面積ばらつき及び容量絶縁体の膜厚ばらつきが、キャパシタの容量値ばらつきの支配的な要因となる。高精度のキャパシタを得るために、例えば特許文献1〜4にはキャパシタの容量値を調整することを可能にした技術が開示されている。
【0006】
特許文献1には、基板上に設けた第1のキャパシタと、第1のキャパシタより容量が小さく、基板の一部を容量絶縁体とした第2のキャパシタとを形成し、これらの組み合わせによりキャパシタ全体の容量値を調整する方法が開示されている。特許文献1では、第2のキャパシタの表面電極の縁部をレーザービームでトリミングすることにより、キャパシタ全体の容量値をさらに微調整することができる。
【0007】
特許文献2には、レーザートリミングによりキャパシタ上部電極の面積を減少させて、キャパシタ容量値を調整する方法が開示されている。特許文献2では、必要とされる容量値よりも大きな容量となるように予めキャパシタ全体を大きく形成しておき、その後、容量値をモニターしながらキャパシタ上部電極にレーザーを照射、走査する。これにより、上部電極が加工除去され、キャパシタ容量値を調整できる。
【0008】
特許文献3には、キャパシタ上部電極を予め面積が決定された所定の形状に1回または複数回トリミング加工することにより、下部電極との間の対向面積を減少させて容量値を調整する方法が開示されている。トリミング加工の回数に応じて上部電極の面積を減少することができ、加工中に容量値の測定を行うことなくキャパシタの容量値を調整できる。
【0009】
特許文献4には、キャパシタ製造工程中に下部電極と抵抗体層との間の容量値を測定し、その測定結果に応じて上部電極の位置をずらして形成し、キャパシタ容量値を調整する方法が開示されている。上部電極の位置を調整して形成することで、下部電極と対向する対向面積を増減させることができる。
【特許文献1】特開平10−098245号公報
【特許文献2】特開平08−162369号公報
【特許文献3】特開2000−340454号公報
【特許文献4】特開2004−303745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜3では、上部電極をレーザー照射によりトリミング加工することで、下部電極との対向面積を減少させて容量の調整を行っているため、容量値を減少させる方向にしか調整することができない。また、あらかじめ容量を所望とする値よりも大きく形成しておく必要があるため、キャパシタ面積が増大してしまう。さらに、レーザー照射では微細なトリミング加工ができないので、上部電極の膜厚がばらついて薄くなっている箇所では容量絶縁体にダメージを与えてしまうことがある。
【0011】
一方、特許文献4は、キャパシタ容量値を増加、減少の両方向に調整できる。しかしながら、特許文献4では、上部電極の位置をずらして配置して下部電極との対向面積を増減させている。そのため、下部電極と対向しない不要な上部電極を形成することとなり、キャパシタ面積が増大してしまうという問題がある。また、キャパシタを製造した後、仮に検査工程において容量値が所望とする値となっていなかったことが判明したとしても、この時点では調整することができない。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、キャパシタ面積が増大することを効果的に抑制するとともに、キャパシタ容量値を調整することのできるキャパシタ、キャパシタ内蔵配線基板、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様にかかるキャパシタは、基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極上に形成された第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜を介して前記第1の電極と対向配置され、前記第1の電極上に電極開口部を有する第2の電極と、前記電極開口部内に設けられた第2の絶縁膜と、を備え、前記電極開口部の側面となる部分の前記第2の電極は、前記電極開口部の底面と重複する部分の前記第1の電極よりも面積が大きいものである。
【0014】
本発明の第2の態様にかかるキャパシタの製造方法は、基板上に第1の電極を形成し、前記第1の電極上に第1の絶縁膜を形成し、前記第1の絶縁膜を介して前記第1の電極と対向配置され、前記第1の電極上に電極開口部を有する第2の電極を、前記電極開口部の側面となる部分の前記第2の電極が、前記電極開口部の底面と重複する部分の前記第1の電極より面積が大きくなるように形成し、前記電極開口部内に第2の絶縁膜を形成してキャパシタ容量値を調整するものである。
【0015】
本発明の第3の態様にかかるキャパシタの製造方法は、基板上に第1の電極を形成し、前記第1の電極上に、表面に島状の凸部を有する絶縁膜を形成し、前記凸部の外側の領域に、前記凸部の高さより薄い第2の電極を形成して、前記絶縁膜を介して前記第1の電極と対向配置され、電極開口部を有する第2の電極を形成し、前記第2の電極の膜厚を増加又は減少させてキャパシタ容量値を調整するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キャパシタ面積が増大することを効果的に抑制するとともに、キャパシタ容量値を調整することのできるキャパシタ、キャパシタ内蔵配線基板、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を説明する。以下の説明は、本発明の実施の形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。尚、各図において同一の符号を付されたものは同様の要素を示しており、適宜、説明が省略されている。
【0018】
実施の形態1.
初めに、実施の形態1に係るキャパシタ1について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係るキャパシタ1の上面図である。図2は、図1のII−II断面図である。図2では、実施の形態1に係るキャパシタ1の断面構造を部分的に示している。
【0019】
図1及び図2において、基板101上に下部電極102が形成されている。基板101は、ガラス、セラミックス、プリント基板等の絶縁性基板からなる。また、基板101は、無機絶縁体や樹脂絶縁体等の絶縁膜が基板101と下部電極102との間に形成されていれば、シリコン基板、Cu基板、ステンレス基板(SUS基板)等の導電性基板であってもよい。ここでは、例えば、0.5mm厚のシリコン基板からなる基板101の上に、図示しない膜厚0.2μmのシリコン酸化膜を介して、下部電極102が形成されている。
【0020】
下部電極102は、導電性膜からなり、例えばCu、Agなどを含む導電性膜によって形成されている。下部電極102の膜厚は、後述する第1絶縁膜103と同程度の膜厚とし、具体的には数μmから20μm程度の厚膜とすることが好ましい。このように下部電極102を厚膜とすることで、下部電極102を多層配線基板の配線層として利用することができ、このときの配線抵抗値を低減することができる。図示していないが、ここでは、下部電極102として、例えば膜厚50nmのTi膜、膜厚300nmのCu膜、及び膜厚10μmのCuめっき層がこの順で積層された積層膜が形成されている。このTi膜は、電解めっきでの給電層となるCu膜と基板101との密着性を高めるために設けられた密着層である。そのため、Ti膜の代わりに、例えばTa、Cr、Mo、Al、Ni、Wやこれらを含む化合物の膜が形成されていてもよい。
【0021】
下部電極102の上には、第1絶縁膜103が形成されている。第1絶縁膜103は、数μmから20μm程度の膜厚を有し、図2では下部電極102を覆うように設けられている。第1絶縁膜103は、無機絶縁体、及び樹脂絶縁体のいずれであってもよいが、キャパシタ1の容量絶縁体とするには、膜厚を厚く形成できる樹脂絶縁体であるが好ましい。ここでは、第1絶縁膜103として、例えば膜厚約10μmのポリイミド樹脂が形成されている。
【0022】
第1絶縁膜103の上には、上部電極104が形成されている。上部電極104は、第1絶縁膜103を介して下部電極102と対向配置されている。そして、下部電極102と重複する領域の上部電極104には、上部電極104を貫通する電極開口部106が設けられている。電極開口部106には、上部電極104が形成されていない。すなわち、上部電極104は、下部電極102上に電極開口部106を有している。
【0023】
上部電極104は、導電性膜からなり、例えばCu、Agなどを含む導電性膜によって形成されている。上部電極104の膜厚は、第1絶縁膜103と同程度の膜厚とし、具体的には数μmから20μm程度の厚膜とすることが好ましい。このように上部電極104を厚膜とすることで、上部電極104を多層配線基板の配線層として利用することができ、このときの配線抵抗値を低減することができる。図示していないが、ここでは、上部電極104として、例えば膜厚50nmのTi膜、膜厚300nmのCu膜、及び膜厚10μmのCuめっき層がこの順で積層された積層膜が形成されている。このTi膜は、電解めっきでの給電層となるCu膜と基板101との密着性を高めるために設けられた密着層である。そのため、Ti膜の代わりに、例えばTa、Cr、Mo、Al、Ni、Wやこれらを含む化合物の膜が形成されていてもよい。
【0024】
さらに、第2絶縁膜105がこの電極開口部106内に設けられている。第2絶縁膜105は、無機絶縁体、及び樹脂絶縁体のいずれの絶縁膜であってもよい。また、第2絶縁膜105は、高誘電率材料の無機酸化物を含有する樹脂であってもよい。第2絶縁膜は、第1絶縁膜103より大きい比誘電率を有する絶縁膜であることが好ましいが、同等以下の比誘電率を有する絶縁膜でもよい。すなわち、第1絶縁膜103と同じ絶縁膜であってもよく、また、第1絶縁膜103と異なる比誘電率を有する別の絶縁膜でもよい。ここでは、例えば、第2絶縁膜105として、第1絶縁膜103で用いたポリイミド樹脂より比誘電率の高いエポキシ樹脂が、電極開口部106を覆うように形成されている。この第2絶縁膜105の詳細については、後述する。
【0025】
なお、上部電極104に形成される電極開口部106の個数は、1つであってもよいが、図1及び図2に示すように複数であってもよい。この場合、第2絶縁膜105は、複数の電極開口部106のうち、少なくとも1つ以上の電極開口部106に設けられている。
【0026】
ここで、本実施の形態に係るキャパシタ1の容量について以下に説明する。このような構成のキャパシタ1に電圧が印加されると、上部電極104と下部電極102との間で、電荷が発生する。
【0027】
具体的には、例えば上部電極104がキャパシタの+側、下部電極102が−側の場合、電極開口部106を除く領域では、図2の電気力線111に示すように、上部電極104の下面から下部電極102の上面へと向かう電場が作られる。よって、電極開口部106を除く領域では、上部電極104の下側の面(下面)と、下部電極102の上側の面(上面)との間で、電荷が発生する。ここでは、上部電極104の下面と下部電極102の上面との間に設けられている第1絶縁膜103が容量絶縁体となる。
【0028】
一方、電極開口部106の設けられた領域では、図2の電気力線112に示すように、上部電極104の側面から電極開口部106の底面と重複する下部電極102の上面へと向かう電場が作られる。よって、電極開口部106設けられた領域では、上部電極104の側面と、電極開口部106の底面と重複する下部電極102の上面との間で、電荷が発生する。ここでは、上部電極104の側面と、電極開口部106の底面と重複する下部電極102の上面との間に設けられている絶縁体が容量絶縁体となる。
【0029】
すなわち、第2絶縁膜105が設けられていない電極開口部106では、上部電極104の側面と、電極開口部106の底面と重複する下部電極102の上面との間に設けられている、空気(大気)113及び第1絶縁膜103が容量絶縁体となる。一方、第2絶縁膜105が設けられている電極開口部106では、上部電極104の側面と、電極開口部106の底面と重複する下部電極102の上面との間に設けられている、第2絶縁膜105及び第1絶縁膜103が容量絶縁体となる。このとき、単位面積当たりの容量は、第2絶縁膜105が空気より比誘電率が高い場合、第2絶縁膜105が設けられていない電極開口部106より大きい値となる。なお、空気113の比誘電率は、約1.0である。
【0030】
このように、キャパシタ1には、電極開口部106を除く領域により発生する電荷と、電極開口部106の設けられた領域により発生する電荷とを合計した電荷が蓄積されることとなる。また、キャパシタ1全体の容量は、電極開口部106を除く領域における容量絶縁体の容量と、電極開口部106の設けられた領域における容量絶縁体の容量とを合計した値となる。
【0031】
ここで、本実施の形態では、電極開口部106は、側面積が底面積よりも大きくなるように形成されている。換言すると、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104が、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きくなるように形成されている。すなわち、電極開口部106の設けられた領域において、電極開口部106の底面と重複する下部電極102の上面は、それ以上の面積を有する上部電極104の側面との間で、電荷を蓄積することとなる。従って、電極開口部106の底面と重複する下部電極102を効果的に用いて、電荷を発生させることができる。すなわち、キャパシタ面積を増大させることを効果的に抑止できる。
【0032】
上記のような条件を満たすために、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104の高さを十分高くしておく必要がある。すなわち、本実施の形態では、電極開口部106の側面となる部分が上部電極104の端面によって構成されているので、上部電極104を十分厚い膜厚にしておく必要がある。具体的には、上部電極104の膜厚は、前述したように、第1絶縁膜と同程度の膜厚である数μmから20μm程度の厚膜とすることが好ましい。あるいは、換言するならば、上部電極104の膜厚に対して、上記条件を満たすために十分小さい電極開口部106を設ける必要がある。
【0033】
なお、図1では、円形の形状を有する電極開口部106と、直線と曲線を組み合わせたトラック形状の電極開口部106とが上部電極104に形成されているが、これに限定されるものではない。電極開口部106の形状及び寸法は、電極開口部106の側面積が底面積よりも大きくなるように形成される範囲内であれば、適宜設定することができる。例えば、矩形、スリット状、楕円形、その他様々な形状でもよい。また、上部電極104に電極開口部106を複数設ける場合、電極開口部106の寸法や形状は1つの種類に限らず、2つ以上の種類であってもよい。
【0034】
次に、本実施の形態におけるキャパシタ1の製造方法について、図3を用いて説明する。図3は、実施の形態1に係るキャパシタ1の製造工程を示した断面図である。図3は、図2と同様、図1のII−II断面に相当する断面図を示している。
【0035】
まず初めに、図3(a)に示す基板101の上に、下部電極102を形成する。基板101として、ガラス、セラミックス、プリント基板等の絶縁性基板を用いることができる。また、基板101の上面に無機絶縁体や樹脂絶縁体等の図示しない絶縁膜を形成して、下部電極102との絶縁を確保すれば、基板101にシリコン基板、Cu基板、ステンレス基板(SUS基板)等の導電性基板を用いることが可能である。ここでは、例えば、表面に図示しない膜厚0.2μmのシリコン酸化膜が形成された、0.5mm厚のシリコン基板を基板101として用いる。下部電極102は、めっき法、印刷法などを用いて形成することができるが、以下ではめっき法を用いる場合について例示的に説明をする。
【0036】
この基板101をDCスパッタ装置内に導入し、所望の真空度に達した後、基板101全面にTi及びCuを順次成膜する。例えば、膜厚50nmのTi膜、膜厚300nmのCu膜を積層して成膜する。これにより、Cu/Ti積層膜からなる図示しないめっきシード層が基板101全面に形成される。なお、Ti膜は、電解めっきでの給電層となるCu膜と基板101との密着性を高めるために形成している。そのため、Ti膜に代えて、例えばTa、Cr、Mo、Al、Ni、Wやこれらを含む化合物の膜を形成してもよい。
【0037】
次に、このめっきシード層の上に、レジストパターンをフォトリソグラフィー法により形成する。具体的には、めっきシード層上にフォトレジストを略全面に塗布した後、露光、現像を行って、所望の形状のレジストパターンを形成する。これにより、下部電極102を形成しない領域を覆うレジストパターンが形成される。下部電極102を形成する領域のめっきシード層は、このレジストパターンに覆われず露出する。
【0038】
続いて、めっきシード層を給電層として電解めっきを行う。レジストパターンから露出しためっきシード層の上にCuめっきを析出させて、膜厚数μmから20μm程度のCuめっき層を形成する。ここでは、例えば膜厚約10μmのCuめっき層を形成する。これにより、下部電極102を形成する領域のめっきシード層の上に、図示しないCuめっき層が積層される。その後、有機溶剤及び酸素プラズマ処理を行ってレジストパターンを除去する。そして、Cuめっき層から露出しためっきシード層を化学エッチング法等により除去すると、図3(b)に示すような下部電極102が形成される。
【0039】
この下部電極102上に、第1絶縁膜103を形成する。第1絶縁膜103として、無機絶縁体、及び樹脂絶縁体のいずれを用いてもよいが、キャパシタ1の容量絶縁体とするには、膜厚数μmから20μm程度の厚膜に形成できる樹脂絶縁体を用いる方が好ましい。例えば、第1絶縁膜103として、ポリイミド樹脂を基板101上の略全面に塗布して、乾燥させる。その後、露光、現像を行って、第1絶縁膜103をパターニングし、窒素雰囲気中での加熱により硬化させる。これにより、図3(c)に示すように、所望のパターンの第1絶縁膜103を、例えば約10μmの膜厚で形成する。なお、図3(c)では、第1絶縁膜103を基板101上全面に形成する場合について例示的に記載している。
【0040】
次に、第1絶縁膜103の上に上部電極104を形成する。以下にめっき法を用いて上部電極104を形成する場合について例示的に説明する。酸素プラズマ処理により基板101の最表層を洗浄した後、下部電極102の形成と同様にDCスパッタ装置内に導入する。そして、所望の真空度に達した後、基板101全面にTi及びCuを順次成膜する。例えば、膜厚50nmのTi膜、膜厚300nmのCu膜を積層して成膜する。これにより、Cu/Ti積層膜からなる図示しないめっきシード層が基板101全面に形成される。なお、Ti膜は、電解めっきでの給電層となるCu膜と基板101との密着性を高めるために形成している。そのため、Ti膜に限ることなく、例えばTa、Cr、Mo、Al、Ni、Wやこれらを含む化合物の膜を形成して密着性を高めてもよい。
【0041】
次に、このめっきシード層の上に、レジストパターンをフォトリソグラフィー法により形成する。ここでは、上部電極104を形成しない領域を覆うレジストパターンを形成する。すなわち、上部電極104となる領域の外側、及び電極開口部106となる領域にレジストパターンを形成する。このとき、電極開口部106となる領域に形成するレジストパターンの大きさは、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104の面積より小さくなるような、寸法及び形状にしておく。上部電極104を形成する領域のめっきシード層は、このレジストパターンに覆われず露出する。
【0042】
続いて、めっきシード層を給電層として電解めっきを行う。レジストパターンから露出しためっきシード層の上にCuめっきを析出させて、膜厚数μmから20μm程度のCuめっき層を形成する。ここでは、例えば膜厚約10μmのCuめっき層を形成する。これにより、上部電極104を形成する領域のめっきシード層の上に、図示しないCuめっき層が積層される。その後、有機溶剤及び酸素プラズマ処理を行ってレジストパターンを除去する。そして、Cuめっき層から露出しためっきシード層を化学エッチング法等により除去すると、図3(d)のように、少なくとも1つ以上の電極開口部106を有する上部電極104が形成される。このとき、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104が、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きくなる条件を満たすような上部電極104が形成される。
【0043】
このようにして、下部電極102と、電極開口部106を有する上部電極104とが、第1絶縁膜103を介して対向配置されたキャパシタが形成される。なお、図3(d)に示すように、この時点では、電極開口部106内に第2絶縁膜105は形成されていない。
【0044】
次に、検査工程において、図3(d)に示すこのキャパシタの容量を測定する。そして、その測定結果に基づいて電極開口部106内に第2絶縁膜105を形成する。例えば、第2絶縁膜105としてエポキシ樹脂を電極開口部106内に形成した後、窒素雰囲気中で加熱保持して、第2絶縁膜105を硬化させる。空気より比誘電率の大きい第2絶縁膜105を形成すると、電極開口部106の設けられた領域では、前述したように、第2絶縁膜105を形成する前よりも容量値が増加する。従って、キャパシタ1全体の容量値が増加する。すなわち、本実施の形態は、製造したキャパシタが所望する値より小さい容量値を有している場合にキャパシタ容量値を調整する方法として好適である。
【0045】
例えば、検査工程においてキャパシタ容量を測定したところ、設計容量値の4.7pFに対して小さい容量の4.0pFが得られたとする。そこで、実施の形態1の方法を採用し、第2絶縁膜105として第1絶縁膜103に用いたポリイミド樹脂の比誘電率3.2より大きい比誘電率3.7を有するエポキシ樹脂を選択する。そして、図1及び図2のように複数の電極開口部106のうちの1つに第2絶縁膜105を充填するように形成する。再度容量値を測定したところ、設計容量値通りの容量が得られたことが確認された。
【0046】
第2絶縁膜105には、無機絶縁体や樹脂絶縁体の絶縁膜を用いることができる。あるいは高誘電率材料の無機酸化物を含有する樹脂などを第2絶縁膜105として用いてもよい。特に、第2絶縁膜105として、第1絶縁膜103より比誘電率の大きい絶縁膜を用いると、容量値の増加量が大きくなるので、より効果的にキャパシタ容量値の調整が可能となる。但し、第2絶縁膜105の比誘電率が、第1絶縁膜103の比誘電率と同等以下の場合でも、空気の比誘電率より大きければ、キャパシタ容量値を増加の方向に調整できる。
【0047】
そして、キャパシタ容量値を所望とする値にマッチングさせる方法として様々な方法が考えられるが、例えば、所望する容量値と測定結果との差分に基づいて、異なる値の比誘電率を有する複数種の材料から、第2絶縁膜105に用いる材料を適宜選択してもよい。また、上部電極104に複数の電極開口部106を形成した場合には、例えば、この差分に基づいて、第2絶縁膜105を設ける電極開口部106の個数を決定できる。従って、上部電極104に複数の電極開口部106を形成しておくことが好ましい。このように、本実施の形態では、適宜、調整を可能とする範囲に幅を持たせることができる。以上の工程を経て、本実施の形態のキャパシタ1が完成する。
【0048】
なお、本実施の形態では、電極開口部106の側面となる前記上部電極104の表面と、上部電極104側の下部電極102の表面との成す角が90°以下となるように、電極開口部106を形成する。特に、これらの成す角が90°未満、かつ電極開口部106として機能する角度以上であることが好ましい。従って、図2の断面図において、電極開口部106が、その底面から頂面(上側の面)に向けて徐々に幅が小さくなる台形形状であることが好ましい。すなわち、電極開口部106における上部電極104の端面が逆テーパー形状となるように形成されることが好ましい。この場合、上部電極104の形成工程において、めっきシード層の上に設けるレジストパターンの端面をテーパー形状に形成しておくと、上部電極104の端面を逆テーパー形状にできる。これにより、電極開口部106では、上部電極104の側面と、電極開口部106の底面と重複する下部電極102の上面との間で発生する電荷が増加する。従って、容量値の増加量が大きくなるので、より効果的にキャパシタ容量値の調整できる。
【0049】
また、本実施の形態では、図3(e)及び図2に示すように、電極開口部106内を充填し、さらに電極開口部106を覆い被せるように第2絶縁膜105を形成する場合について例示的に説明をしたが、これに限定されるものではない。但し、電極開口部106内のスペースを効果的に利用する観点から、第2絶縁膜105が電極開口部106の高さのうち3割以上を充填していることが好ましい。これにより、電極開口部106内のスペースを効果的に容量値の増加に利用できるので、より効果的にキャパシタ容量値を調整できる。
【0050】
以上のように、本実施の形態では、下部電極102と、電極開口部106を有する上部電極104とを第1絶縁膜103を介して対向配置させる。このとき、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104が、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きくなるように、上部電極104を形成する。そして、キャパシタ容量値の測定結果が所望とする値より小さい場合には、電極開口部106内に第2絶縁膜105を形成する。これにより、キャパシタ面積が増大することを効果的に抑制するとともに、キャパシタ容量値を増加方向に調整することができる。
【0051】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係るキャパシタ2について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、実施の形態2に係るキャパシタ2の上面図である。図5は、図4のV−V断面図である。図5では、実施の形態2に係るキャパシタ2の断面構造を部分的に示している。実施の形態2では、第2絶縁膜105の形成場所が実施の形態1と異なっていて、それ以外の構成については実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
図4及び図5において、電極開口部106の下の第1絶縁膜103に、第1絶縁膜103を貫通する絶縁膜開口部114が形成されている。絶縁膜開口部104には、第1絶縁膜103が形成されていない。そして、第2絶縁膜105は、上部電極104の電極開口部106内と、第1絶縁膜103の絶縁膜開口部114内とに、設けられている。なお、絶縁膜開口部114は、第2絶縁膜105が設けられる電極開口部106の下のみに形成されている。すなわち、上部電極104に複数の電極開口部106が設けられている場合、第2絶縁膜105が設けられない電極開口部106の下には絶縁膜開口部114は形成されていない。
【0053】
このような構成のキャパシタ2は、実施の形態1の図3(d)に示すキャパシタの容量を測定した後、電極開口部106に露出した第1絶縁膜103を除去して絶縁膜開口部114を形成する。ここでは、例えば、酸素プラズマ等を用いて第1絶縁膜103を除去する。そして、第1絶縁膜103の除去された絶縁膜開口部114と、上部電極104の電極開口部106内とに、第2絶縁膜105を形成すると、図5に示す構成となる。それ以外の工程については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0054】
このとき、第1絶縁膜103より比誘電率の小さい第2絶縁膜105を形成すると、電極開口部106の設けられた領域における容量値が減少する。従って、キャパシタ1全体の容量値を減少方向に調整できる。
【0055】
例えば、検査工程においてキャパシタ容量を測定したところ、設計容量値の4.7pFに対して大きい容量の5.0pFが得られたとする。そこで、実施の形態2の方法を採用し、第2絶縁膜105として第1絶縁膜103に用いたポリイミド樹脂より小さい比誘電率を有するベンゾシクロブテン(BCB)樹脂を選択する。そして、図4及び図5のように複数の電極開口部106のうちの1つに第2絶縁膜105を形成する。再度容量値を測定したところ、設計容量値通りの容量が得られたことが確認された。
【0056】
一方、第1絶縁膜より比誘電率の大きい第2絶縁膜105を形成すると、電極開口部106の設けられた領域における容量値が増加する。従って、キャパシタ1全体の容量値を増加方向に調整できる。すなわち、キャパシタ容量値の測定結果に応じて第2絶縁膜105を選択することにより、キャパシタ容量値を増加、減少の両方向に調整できる。以上の工程を経て、本実施の形態のキャパシタ2が完成する。
【0057】
上記の実施の形態2では、第1絶縁膜103を貫通する絶縁膜開口部114を形成する場合について例示的に説明をしたが、それに限定されるものではない。上部電極104の下に設けられた第1絶縁膜103より薄い膜厚を有する薄膜部を形成してもよい。従って、電極開口部106の下の第1絶縁膜103を除去して薄膜部又は絶縁膜開口部114を形成し、その除去部に第2絶縁膜105を形成すればよい。なお、第2絶縁膜105として、空気113を選択することも可能である。この場合、第1絶縁膜103を除去するのみで第2絶縁膜105が形成されることとなる。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、キャパシタ容量値の測定結果に基づいて調整が必要な際には、電極開口部106の下の第1絶縁膜103を除去する。そして、この除去部と電極開口部106とに測定結果に基づいて選択された第2絶縁膜105を形成する。これにより、キャパシタ面積が増大することを効果的に抑制するとともに、キャパシタ容量値を増加、減少の両方向に調整することができる。
【0059】
実施の形態3.
実施の形態3に係るキャパシタ3について、図6及び図7を用いて説明する。図6は、実施の形態3に係るキャパシタ3の上面図である。図7は、図6のVII−VII断面図である。図7では、実施の形態3に係るキャパシタ3の断面構造を部分的に示している。実施の形態3では、実施の形態1における第2絶縁膜105が設けられていない電極開口部106に、第1絶縁膜103が設けられている点で異なっていて、それ以外の構成については実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
図6及び図7に示すように、本実施の形態では、第1絶縁膜103が、第2絶縁膜105の設けられていない電極開口部106にも設けられている。具体的には、第1絶縁膜103は、下層第1絶縁膜103aの上に、上層第1絶縁膜103bが積層された積層構造となっている。下層第1絶縁膜103aは、下部電極102の上全面に形成されている。この下層第1絶縁膜103aの上に、電極開口部106を有する上部電極104が、下部電極102と対向配置されるように形成される。そして、上層第1絶縁膜103bは、第2絶縁膜105の設けられていない電極開口部106内に形成されている。すなわち、本実施の形態では、表面に島状の凸部(上層第1絶縁膜103b)を有する第1絶縁膜103が形成されている。そして、上部電極104の電極開口部106内にこの凸部が設けられている。
【0061】
第1絶縁膜103が設けられている電極開口部106では、上部電極104の側面と電極開口部106の底面と重複する下部電極102の上面との間に設けられている、第1絶縁膜103が容量絶縁体となる。このとき、第1絶縁膜103の設けられた領域における容量は、電極開口部106を除く領域と単位面積当たりでほぼ同程度となる。すなわち、単位面積当たりの容量は、電極開口部106と、電極開口部106の設けられていない部分とで略同じになる。一方、第2絶縁膜105が設けられている電極開口部106では、上部電極104の側面と電極開口部106の底面と重複する下部電極102の上面との間に設けられている、第2絶縁膜105及び第1絶縁膜103が容量絶縁体となる。このとき、単位面積当たりの容量は、第2絶縁膜105が第1絶縁膜103より比誘電率が高い場合、第1絶縁膜103が設けられている電極開口部106より大きい値となる。逆に、第2絶縁膜105が第1絶縁膜103より比誘電率が低い場合は、小さい値となる。
【0062】
次に、本実施の形態におけるキャパシタ3の製造方法について、図8を用いて説明する。図8は、実施の形態3に係るキャパシタ3の製造工程を示した断面図である。図8は、図7と同様、図6のVII−VII断面に相当する断面図を示している。実施の形態3では、第1絶縁膜103の形成以降の工程が実施の形態1と異なっており、それより前の工程については実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
図8(a)及び図8(b)において、実施の形態1と同様、基板101上に下部電極102を形成する。次に、本実施の形態では、表面に島状の凸部を有する第1絶縁膜103を、この下部電極102上に形成する。ここでは、第1絶縁膜103を下層第1絶縁膜103aと上層第1絶縁膜103bとの2回に分けて形成する場合について例示的に説明する。
【0064】
まず、下部電極102の上に、下層第1絶縁膜103aを形成する。下層第1絶縁膜103aとして、例えば、ポリイミド樹脂を基板101上の略全面に塗布して、乾燥させる。その後、露光、現像を行って、下層第1絶縁膜103aをパターニングし、窒素雰囲気中での加熱により硬化させる。これにより、図8(c)に示すように、所望のパターンの下層第1絶縁膜103aを、例えば約10μmの膜厚で形成する。なお、図8(c)では、下層第1絶縁膜103aを基板101上全面に形成する場合について例示的に記載している。
【0065】
続いて、下層第1絶縁膜103aの上に、上層第1絶縁膜103bを形成する。例えば、下層第1絶縁膜103aと同様、ポリイミド樹脂を基板101上の略全面に塗布して、乾燥させる。その後、露光、現像を行って、上層第1絶縁膜103bをパターニングし、窒素雰囲気中での加熱により硬化させる。これにより、図8(d)に示すように、島状パターンの上層第1絶縁膜103bを、例えば約10μmの膜厚で形成する。このとき、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104が、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きくなる条件を満たすような、上層第1絶縁膜103bのパターンが形成される。
【0066】
次に、電極開口部106を有する上部電極104を形成する。すなわち、上層第1絶縁膜103bによる凸部の外側の領域に上部電極104を設けることにより、電極開口部106を形成する。ここでは、めっき法を用いて形成する場合について説明する。まず、実施の形態1と同様、酸素プラズマ処理により基板101の最表層を洗浄した後、DCスパッタ装置内に導入する。そして、所望の真空度に達した後、基板101全面にTi及びCuを順次成膜する。例えば、膜厚50nmのTi膜、膜厚300nmのCu膜を積層して成膜する。これにより、図8(e)に示すように、Cu/Ti積層膜からなるめっきシード層104aが第1絶縁膜103を覆うよう基板101全面に形成される。
【0067】
続いて、このめっきシード層104aの上に、レジストパターンをフォトリソグラフィー法により形成する。本実施の形態では、第1絶縁膜103の凸部上、すなわち、上層第1絶縁膜103bの上にレジストパターンを形成する。よって、凸部を除く領域のめっきシード層104aは、レジストパターンに覆われず露出する。
【0068】
そして、実施の形態1と同様に、めっきシード層104aを給電層として電解めっきを行う。レジストパターンから露出しためっきシード層104aの上にCuめっきを析出させて、膜厚数μmから20μm程度のCuめっき層104bを形成する。ここでは、例えば膜厚約10μmのCuめっき層104bを形成する。これにより、第1絶縁膜103の凸部を除く領域のめっきシード層104aの上に、Cuめっき層104bが積層される。その後、有機溶剤及び酸素プラズマ処理を行ってレジストパターンを除去する。そして、Cuめっき層104bから露出しためっきシード層104aを化学エッチング法等により除去すると、図8(f)のように、少なくとも1つ以上の電極開口部106を有する上部電極104が形成される。このとき、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104が、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きくなる条件を満たすような上部電極104が形成される。
【0069】
このようにして、下部電極102と、電極開口部106を有する上部電極104とが、第1絶縁膜103を介して対向配置されたキャパシタが形成される。なお、図8(f)に示すように、この時点では、電極開口部106内には第1絶縁膜103が形成されており、第2絶縁膜105は形成されていない。
【0070】
次に、検査工程において、図8(f)に示すこのキャパシタの容量を測定する。そして、その測定結果に基づいて電極開口部106内に第2絶縁膜105を形成する。このとき、本実施の形態では、電極開口部106内の第1絶縁膜103を除去してから、第2絶縁膜105を形成する。ここでは、例えば、酸素プラズマ、化学エッチング等を用いて、図8(g)のように第1絶縁膜103を除去する。そして、第1絶縁膜103の除去された電極開口部106に、第2絶縁膜105を実施の形態1と同様の方法を用いて形成すると、図8(h)の構成となる。
【0071】
このとき、第1絶縁膜103より比誘電率の小さい第2絶縁膜105を形成すると、電極開口部106の設けられた領域における容量値が減少する。従って、キャパシタ3全体の容量値を減少方向に調整できる。
【0072】
一方、第1絶縁膜より比誘電率の大きい第2絶縁膜105を形成すると、電極開口部106の設けられた領域における容量値が増加する。従って、キャパシタ3全体の容量値を増加方向に調整できる。すなわち、キャパシタ容量値の測定結果に応じて第2絶縁膜105を選択することにより、キャパシタ容量値を増加、減少の両方向に調整できる。以上の工程を経て、本実施の形態のキャパシタ3が完成する。
【0073】
なお、本実施の形態では、前述したように、第1絶縁膜103の設けられた電極開口部106と、電極開口部106の設けられていない部分とでは、単位面積当たりの容量が略同程度の値である。そのため、上部電極104の形成工程において、電極開口部106の開口面積が設計値よりばらついたとしても、キャパシタ全体の容量値が大きく変動することがない。例えば、電極開口部106の開口面積が設計値より大きく形成された場合、電極開口部106の設けられていない部分の面積、すなわち下部電極102の下面面積が小さくなる。よって、キャパシタ全体における電極開口部106の容量は増加し、電極開口部106を除く部分の容量は減少する。同様に、電極開口部106の開口面積が設計値より小さく形成された場合は、電極開口部106の容量が減少し、電極開口部106を除く部分の容量が増加する。電極開口部106と、電極開口部106を除く部分とでは、単位面積当たりの容量が略同程度であることから、互いに容量値を補償し合うこととなる。従って、電極開口部106の開口ばらつきに起因したキャパシタ容量値のばらつきを抑制することができる。すなわち、第2絶縁膜105を形成してキャパシタ容量値を調整する前の段階において、キャパシタ容量値が設計値からばらつく範囲が小さくなり、より高精度なキャパシタを提供することができる。
【0074】
以上のように、本実施の形態では、上部電極104の電極開口部106内にあらかじめ第1絶縁膜103が設けられた構成のキャパシタを形成し、キャパシタ容量値の測定をする。容量値の調整が必要な場合には、電極開口部106内の第1絶縁膜103を除去する。そして、第1絶縁膜103を除去した電極開口部106内に、測定結果に基づいて選択された第2絶縁膜105を形成する。これにより、キャパシタ面積が増大することを効果的に抑制するとともに、キャパシタ容量値を増加、減少の両方向に調整することができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、第1絶縁膜103を下層第1絶縁膜103aと上層第1絶縁膜103bとの2回に分けて形成する場合について例示的に説明したが、ハーフトーン露光技術等を用いて1回で形成してもよい。これにより、フォトリソグラフィープロセスが削減できる。
【0076】
また、図9は、本実施の形態に係るキャパシタ3の別の製造工程を示した断面図である。図9では、上部電極104の形成の方法が図8と異なっており、それ以外の工程については図8と同様であるため説明を省略する。すなわち、図8では、第1絶縁膜の凸部を除く領域に上部電極104を形成したが、図9では全面に形成した後に第1絶縁膜103の凸部が露出するまで上部電極104を除去する点に特徴がある。以下ではめっき法を用いる場合について例示的に説明をする。
【0077】
図9(a)〜(e)において、前述した図8(a)〜(e)と同様の方法を用いて、基板101上に下部電極102、表面に凸部を有する第1絶縁膜103、めっきシード層104aを形成する。その後、本実施の形態では、例えばビアフィリングめっき用のCuめっき液を用いて、めっきシード層104a上全面にCuめっき層104bを形成する。これにより、図9(f)のように、第1絶縁膜103の凸部上にもCuめっき層104bが形成される。
【0078】
次に、化学機械研磨(CMP)等を用いて、第1絶縁膜103の凸部が露出するまで研磨して、Cuめっき層104b及びめっきシード層104aを除去する。なお、第1絶縁膜103の凸部が露出する手前において、Cuめっき層104bの表面が平坦になった時点でCMPを終了させてもよい。この場合は、CMPの後、別途、化学的エッチング等によって、第1絶縁膜103の凸部上のCuめっき層104b及びめっきシード層104aを除去する。これにより、図9(g)に示すように、少なくとも1つ以上の電極開口部106を有する上部電極104が形成される。
【0079】
以降の工程については図8と同様である。すなわち、図9(h)では、図8(g)と同様に電極開口部106内の第1絶縁膜103を除去する。図9(i)では、図8(h)と同様にして、電極開口部106内に第2絶縁膜105を形成する。このように、図9に示す方法により図8に示す方法と同様の上部電極104を形成することができる。
【0080】
実施の形態4.
実施の形態4に係るキャパシタ4について、図10及び図11を用いて説明する。図10は、実施の形態4に係るキャパシタ4の上面図である。図11は、図10のXI−XI断面図である。図11では、実施の形態4に係るキャパシタ4の断面構造を部分的に示している。実施の形態4では、上部電極104の形状が実施の形態3と異なっていて、それ以外の構成については実施の形態3と同様であるため、説明を省略する。
【0081】
図10及び図11において、実施の形態4の上部電極104は、電極開口部106の高さより薄い膜厚を有している。そして、上部電極104は、下層第1絶縁膜103aを介して下部電極102と対向するように配置された部分から、電極開口部106の側面となる部分へと延在して形成されている。すなわち、第1絶縁膜103の凸部の外側の表面と、この凸部の側面とを連続して覆うように形成されている。従って、この第1絶縁膜103の凸部の側面を覆う部分の上部電極104が、電極開口部106を構成する。実施の形態1〜3では、上部電極104のパターン端面が電極開口部106の側面となっていたが、本実施の形態では、第1絶縁膜103の凸部の側面を覆う部分の上部電極104が、電極開口部106の側面となる。
【0082】
このとき、本実施の形態においても、実施の形態1〜3と同様に、電極開口部106は、側面積が底面積よりも大きくなるように形成されている。従って、第1絶縁膜103の凸部の側面を覆う部分の上部電極104が、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きくなるように、上部電極104は形成されている。
【0083】
このような構成のキャパシタ4は、上部電極104の膜厚を実施の形態3より薄くして形成すればよい。図12は、実施の形態4に係るキャパシタ4の製造工程を示した断面図である。図12(a)〜(d)において、実施の形態3の図8(a)〜(d)と同様の方法を用いて、基板101上に下部電極102、表面に凸部を有する第1絶縁膜103を形成する。その後、本実施の形態では、実施の形態3より薄膜の上部電極104を形成する。例えば、酸素プラズマ処理により基板101の最表層を洗浄した後、DCスパッタ装置内に導入する。そして、所望の真空度に達した後、所望の真空度に達した後、基板101全面にTi及びCuを順次成膜する。例えば、膜厚50nmのTi膜、膜厚300nmのCu膜を積層して成膜する。これにより、図12(e)に示すように、Cu/Ti積層膜からなる上部電極104が第1絶縁膜103を覆うよう基板101全面に形成される。
【0084】
続いて、この上部電極104上に、レジストパターンをフォトリソグラフィー法により形成する。本実施の形態では、第1絶縁膜103の凸部(上層第1絶縁膜103b)と重複する領域の上部電極104が露出するように、レジストパターンを形成する。すなわち、第1絶縁膜103の凸部の外側の表面と、凸部の側面とに設けられた部分の上部電極104をレジストパターンによって保護する。
【0085】
次に、このレジストパターンから露出した上部電極104を化学エッチング法等により除去する。その後、有機溶剤及び酸素プラズマ処理等を行ってレジストパターンを除去すると、図12(f)のように、少なくとも1つ以上の電極開口部106を有する上部電極104が形成される。このとき、本実施の形態においても、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104が、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きくなる条件を満たすような上部電極104が形成される。
【0086】
以降の工程については実施の形態3と同様である。すなわち、図12(g)では、図8(g)と同様に電極開口部106内の第1絶縁膜103を除去する。図12(i)では、図8(h)と同様、電極開口部106内に第2絶縁膜105を形成することにより、キャパシタ容量値を調整する。従って、本実施の形態においても、実施の形態3と同様の効果を奏し、キャパシタ面積が増大することを効果的に抑制するとともに、キャパシタ容量値を増加、減少の両方向に調整することができる。以上の工程を経て、本実施の形態のキャパシタ4が完成する。
【0087】
このように、本実施の形態では、表面に凸部を有する第1絶縁膜103を形成して、第1絶縁膜103の凸部の外側の表面と、この凸部の側面とを連続して覆う上部電極104を薄い膜厚で形成する。これにより、上部電極104の膜厚が電極開口部106の高さより薄い膜厚でも、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104が、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きくなる条件を満たす電極開口部106を形成できる。すなわち、上記条件を満たすために必ずしも上部電極104を十分厚い膜厚にする必要がなく、上部電極104として幅広い膜厚設定が可能である。そして、キャパシタ面積が増大することを効果的に抑制するとともに、キャパシタ容量値を増加、減少の両方向に調整することができる。
【0088】
実施の形態5.
実施の形態5に係るキャパシタ5について、図13及び図14を用いて説明する。図13は、実施の形態5に係るキャパシタ5の上面図である。図14は、図13のXIV−XIV断面図である。図14では、実施の形態5に係るキャパシタ5の断面構造を部分的に示している。実施の形態5では、上部電極104の全ての電極開口部106に、第2絶縁膜105が設けられる点で実施の形態3と異なっていて、それ以外の構成については実施の形態3と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
図13及び図14に示すように、本実施の形態では、全ての電極開口部106内に第2絶縁膜105が設けられている。なお、本実施の形態では、第2絶縁膜105は、第1絶縁膜103と同じ絶縁膜でもよく、また第1絶縁膜103と異なる別の絶縁膜でもよい。
【0090】
次に、実施の形態5に係るキャパシタ5の製造方法について、図15を用いて説明する。図15は、実施の形態5に係るキャパシタ5の製造工程を示した断面図である。図15は、図14と同様、図13のXIV−XIV断面に相当する断面図を示している。
【0091】
図15(a)及び図15(b)において、実施の形態3と同様、基板101上に下部電極102を形成する。次に、下部電極102の上に、第1絶縁膜103を形成する。第1絶縁膜103として、例えば、ポリイミド樹脂を基板101上の略全面に塗布して、乾燥させる。その後、露光、現像を行って、第1絶縁膜103をパターニングし、窒素雰囲気中での加熱により硬化させる。これにより、図15(c)に示すように、所望のパターンの第1絶縁膜103を、例えば約10μmの膜厚で形成する。なお、図15(c)では、第1絶縁膜103を基板101上全面に形成する場合について例示的に記載している。
【0092】
続いて、第1絶縁膜103の上に、第2絶縁膜105を形成する。例えば、第2絶縁膜105として、エポキシ樹脂を基板101上の略全面に塗布して、乾燥させる。その後、露光、現像を行って、第2絶縁膜105をパターニングし、窒素雰囲気中での加熱により硬化させる。これにより、図15(d)に示すように、島状パターンの第2絶縁膜105を形成する。このとき、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104が、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きくなる条件を満たすような、第2絶縁膜105のパターンが形成される。またこのとき、後に形成する上部電極104より厚い膜厚で第2絶縁膜105を形成しておくことが好ましい。
【0093】
次に、この基板101をDCスパッタ装置内に導入する。そして、所望の真空度に達した後、基板101全面にTi及びCuを順次成膜する。例えば、膜厚50nmのTi膜、膜厚300nmのCu膜を積層して成膜する。これにより、図15(e)に示すように、Cu/Ti積層膜からなるめっきシード層104aが第1絶縁膜103及び第2絶縁膜105を覆うよう基板101全面に形成される。
【0094】
その後、イオンビームエッチング(IBE)、反応性イオンエッチング(RIE)、サンドブラスト等を用いて、第1絶縁膜103表面のめっきシード層104aのみが残存するように、それ以外の領域のめっきシード層104aを除去する。例えば、この基板101をイオンビームエッチング装置内に導入する。所望の真空度に達した後、第1絶縁膜103表面に設けられためっきシード層104aが、第2絶縁膜105によりマスクされるような入射角度でアルゴンイオンビームを照射する。そして、アルゴンイオンビームによって、第2絶縁膜105の表面上のめっきシード層104aだけを除去する。これにより、第1絶縁膜103表面のめっきシード層104aのみが残存する。
【0095】
次に、無電解めっき法等を用いて、残存しためっきシード層104a上のみにCuめっきを析出させて、第2絶縁膜105を除く領域にCuめっき層104bを形成する。ここでは、例えば膜厚約10μmのCuめっき層104bを形成する。これにより、図15(g)のように、少なくとも1つ以上の電極開口部106を有する上部電極104が形成される。このとき、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104が、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きくなる条件を満たすような上部電極104が形成される。
【0096】
このようにして、下部電極102と、電極開口部106を有する上部電極104とが、第1絶縁膜103を介して対向配置され、全ての電極開口部106内に第2絶縁膜が設けられたキャパシタが形成される。なお、図15(g)に示すように、この時点では、第2絶縁膜105より薄い膜厚の上部電極104が形成されていることが好ましい。
【0097】
次に、検査工程において、図15(g)に示すこのキャパシタの容量を測定する。そして、その測定結果に基づいて、上部電極104の膜厚を増加又は減少させる。具体的には、測定結果が設計容量値より大きくなった場合は、上部電極104の一部を除去して、上部電極104の膜厚を薄くする。例えば、イオンビームエッチング、ウェットエッチング等を用いて上部電極104の膜厚を薄くすることができる。これにより、上部電極104の側面の面積を低減できるので、キャパシタ全体の容量値を減少方向に調整することができる。一方、測定結果が設計容量値よりも小さくなった場合、無電解めっき法等を用いて、再度Cuめっきを析出させて、上部電極104の膜厚を厚くする。これにより、上部電極104の側面の面積を増加できるので、キャパシタ全体の容量値を増加方向に調整することができる。以上の工程を経て、本実施の形態のキャパシタ5が完成する。
【0098】
このように、本実施の形態では、上部電極104の電極開口部106内に、上部電極104より膜厚の厚い第2絶縁膜105をあらかじめ設けた構成のキャパシタを形成し、キャパシタ容量値の測定をする。そして、容量値の調整が必要な場合には、測定結果に基づいて、上部電極104の膜厚を増加又は減少させる。これにより、実施の形態3と同様の効果を奏し、キャパシタ面積が増大することを効果的に抑制するとともに、キャパシタ容量値を増加、減少の両方向に調整することができる。
【0099】
なお、第2絶縁膜105は第1絶縁膜103と同じ絶縁膜であっても同様の効果を奏する。その場合、ハーフトーン露光技術等を用いると、第1絶縁膜103と第2絶縁膜105とを1回のフォトリソグラフィーで形成でき、フォトリソグラフィープロセスを削減できる。
【0100】
実施の形態6.
実施の形態6に係るキャパシタ6について、図16用いて説明する。図16は、実施の形態6に係るキャパシタ内蔵配線基板10の断面図である。実施の形態6は、実施の形態1のキャパシタ1をキャパシタ内蔵配線基板10に適用した例を示している。
【0101】
図16において、例えばシリコン基板からなる基板101上に、薄膜キャパシタ201aや薄膜抵抗201b等の薄膜受動素子201が設けられている。これら薄膜受動素子201の上には、受動素子層間絶縁膜202が形成されている。そして、この受動素子層間絶縁膜202上に、実施の形態1のキャパシタ1が形成されている。具体的には、受動素子層間絶縁膜202の上に下部電極102が形成されており、この下部電極102を覆うように第1絶縁膜103が設けられている。そして、第1絶縁膜103を介して下部電極102の対面には、電極開口部106を有する上部電極104が配設される。なお、図16では、3つの電極開口部106が上部電極104に設けられ、そのうちの2つに第2絶縁膜105が形成された例が示されている。
【0102】
また、基板101上には、キャパシタ1の下部電極102や上部電極104と同じ層の導電膜を利用して、例えばインダクタ203等の薄膜受動素子が形成されていてもよい。上部電極104の上には、上部電極104と他の受動素子とを絶縁するため、第3絶縁膜205が設けられている。また、図16には図示していないが、基板101を貫通する電極が設けられていてもよい。このように、キャパシタ内蔵配線基板10には、キャパシタ1を含む複数の受動素子によって構成される回路が形成されている。
【0103】
なお、このキャパシタ内蔵配線基板10の電極開口部106に第2絶縁膜105を形成して、キャパシタ容量値を調整するタイミングは、ウェハプロセスの検査工程で行うことができる。例えば、この検査工程で、設計値からインピーダンスがずれている場合、実施の形態1と同様な調整方法によって図16のように電極開口部106内に第2絶縁膜105を形成する。これにより、回路のインピーダンスを調整し、設計値に合わせてもよい。また、キャパシタ容量値を調整するタイミングは、ウェハプロセスの検査工程に限られるものではない。キャパシタ内蔵配線基板を個片化し、モジュール基板に実装あるいはインターポーザ基板とした後の工程において、キャパシタ容量値を調整してもよい。
【0104】
以上のように、本実施の形態では、下部電極102と、電極開口部106を有する上部電極104とを第1絶縁膜103を介して対向配置させたキャパシタを内蔵する配線基板を形成する。このとき、電極開口部106の側面となる部分の上部電極104が、電極開口部106の底面と重複する部分の下部電極102よりも面積が大きくなるように、上部電極104を形成する。これにより、キャパシタ面積が増大することを効果的に抑制するとともに、キャパシタ容量値を増加方向に調整することができるキャパシタ内蔵配線基板を提供できる。
【0105】
なお、実施の形態1〜6では、上部電極104及び下部電極102をスパッタ法あるいはめっき法で形成する場合について例示的に説明をしたが、これに限定されるものではない。例えば、スクリーン印刷法で形成してもよい。この場合、上部電極104及び下部電極102は、例えばAg等の金属を含む樹脂からなる導電性ペーストによって形成される。上記の説明では、酸素プラズマ処理によって第1絶縁膜103を除去したが、その他の方法を用いて行ってもよい。例えば、レジストパターンを形成後、化学的エッチング法を用いて露出した第1絶縁膜103を除去してもよい。さらに、電極開口部106の側面となる前記上部電極104の表面と、上部電極104側の下部電極102の表面との成す角が90°の場合について例示的に説明をしたが、これらの成す角が90°未満、かつ電極開口部106として機能する角度以上であることが好ましい。
【0106】
また、実施の形態1〜6は適宜組み合わせて用いることが可能である。例えば、実施の形態5と実施の形態3とを組み合わせると、上部電極104の膜厚を増加又は減少させてキャパシタ容量値を調整した後に、少なくとも1つ以上の電極開口部106内の第2絶縁膜105を除去して別の絶縁膜を形成することでキャパシタ容量値をさらに調整できる。実施の形態3に実施の形態2を組み合わせると、電極開口部106内の上層第1絶縁膜103bを除去する際に、電極開口部106下の下層第1絶縁膜103aを同時に除去し、これら除去部に第2絶縁膜105を形成してキャパシタ容量値を調整できる。
【0107】
以上の説明は、本発明の実施の形態を説明するものであり、本発明が以上の実施の形態に限定されるものではない。また、当業者であれば、以上の実施の形態の各要素を、本発明の範囲において、容易に変更、追加、変換することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】実施の形態1に係るキャパシタ1の上面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】実施の形態1に係るキャパシタ1の製造工程を示した断面図である。
【図4】実施の形態2に係るキャパシタ2の上面図である。
【図5】図4のV−V断面図である。
【図6】実施の形態3に係るキャパシタ3の上面図である。
【図7】図6のVII−VII断面図である。
【図8】実施の形態3に係るキャパシタ3の製造工程を示した断面図である。
【図9】実施の形態3に係るキャパシタ3の別の製造工程を示した断面図である。
【図10】実施の形態4に係るキャパシタ4の上面図である。
【図11】図10のXI−XI断面図である。
【図12】実施の形態4に係るキャパシタ4の製造工程を示した断面図である。
【図13】実施の形態5に係るキャパシタ5の上面図である。
【図14】図13のXIV−XIV断面図である。
【図15】実施の形態5に係るキャパシタ5の製造工程を示した断面図である。
【図16】実施の形態6に係るキャパシタ内蔵配線基板10の断面図である。
【符号の説明】
【0109】
1、2、3、4、5 キャパシタ、10 キャパシタ内蔵配線基板、
101 基板、102 下部電極、
103 第1絶縁膜、103a 下層第1絶縁膜、103b 上層第1絶縁膜、
104 上部電極、104a めっきシード層、104b めっき層
105 第2絶縁膜、106 電極開口部、
111、112 電気力線、113 空気、114 絶縁膜開口部、
201 薄膜受動素子、201a 薄膜キャパシタ、201b 薄膜抵抗、
202 受動素子層間絶縁膜、203 インダクタ、205 第3絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された第1の電極と、
前記第1の電極上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜を介して前記第1の電極と対向配置され、前記第1の電極上に電極開口部を有する第2の電極と、
前記電極開口部内に設けられた第2の絶縁膜と、を備え、
前記電極開口部の側面となる部分の前記第2の電極は、前記電極開口部の底面と重複する部分の前記第1の電極よりも面積が大きいキャパシタ。
【請求項2】
前記第2の電極は、前記電極開口部を複数有し、
前記複数の電極開口部のうち、少なくとも1つ以上の電極開口部内に前記第2の絶縁膜が設けられている請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記複数の電極開口部のうち、前記第2の絶縁膜が設けられた電極開口部を除く電極開口部内には、前記第1の絶縁膜が設けられている請求項2に記載のキャパシタ。
【請求項4】
前記第2の絶縁膜の下の前記第1の絶縁膜に、前記第2の電極の下に設けられた前記第1の絶縁膜より薄い膜厚を有する薄膜部、又は前記第1の絶縁膜を貫通する絶縁膜開口部が形成され、
前記第1の絶縁膜の前記薄膜部又は前記絶縁膜開口部に、前記第2の絶縁膜がさらに設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項5】
第2の絶縁膜は、第1の絶縁膜より高い比誘電率を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項6】
第2の絶縁膜は、第1の絶縁膜より低い比誘電率を有することを特徴とする請求項3又は4に記載のキャパシタ。
【請求項7】
前記第2の絶縁膜は、前記第1の絶縁膜と同じ絶縁膜である請求項1又は2に記載のキャパシタ。
【請求項8】
前記電極開口部の側面となる前記第2の電極の表面と、前記第1の絶縁膜側の前記第1の電極の表面との成す角が90°以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項9】
前記第2の電極は、前記電極開口部の高さより薄い膜厚を有し、前記第1の電極と対向する部分から前記電極開口部の側面となる部分へと延在して形成されている請求項1乃至8のいずれか一項に記載のキャパシタ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のキャパシタを有するキャパシタ内蔵配線基板。
【請求項11】
基板上に第1の電極を形成し、
前記第1の電極上に第1の絶縁膜を形成し、
前記第1の絶縁膜を介して前記第1の電極と対向配置され、前記第1の電極上に電極開口部を有する第2の電極を、前記電極開口部の側面となる部分の前記第2の電極が、前記電極開口部の底面と重複する部分の前記第1の電極より面積が大きくなるように形成し、
前記電極開口部内に第2の絶縁膜を形成してキャパシタ容量値を調整するキャパシタの製造方法。
【請求項12】
前記第1の絶縁膜の形成では、表面に島状の凸部を有する前記第1の絶縁膜を形成し、
前記第2の電極の形成では、前記凸部の外側の領域に前記第2の電極を設けることにより前記電極開口部を形成し、
前記キャパシタ容量値の調整では、前記電極開口部内の前記第1の絶縁膜を除去してから前記第2の絶縁膜を形成する請求項11に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項13】
前記第2の電極の形成では、前記凸部の高さより薄い膜厚の前記第2の電極を形成し、
前記第2の電極の膜厚を増加又は減少させて前記キャパシタ容量値をさらに調整する請求項12に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項14】
前記第2の電極の形成では、前記凸部の高さより薄い膜厚の前記第2の電極を、前記凸部の外側の表面と前記凸部の側面とを連続して覆うように形成する請求項12に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項15】
前記キャパシタ容量値の調整では、前記電極開口部の下の前記第1の絶縁膜を除去して、前記除去部に前記第2絶縁膜をさらに形成する請求項11乃至14のいずれか一項に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項16】
前記キャパシタ容量値の調整では、前記キャパシタ容量値を測定して、前記測定結果が所望とする容量値より小さい場合に、前記第1の絶縁膜より比誘電率の高い前記第2の絶縁膜を用いる請求項11乃至15のいずれか一項に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項17】
前記キャパシタ容量値の調整では、前記キャパシタ容量値を測定して、前記測定結果が所望とする容量値より大きい場合に、前記第1の絶縁膜より比誘電率の低い前記第2の絶縁膜を用いる請求項12乃至15のいずれか一項に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項18】
前記第2の電極の形成では、前記電極開口部を複数形成し、
前記キャパシタ容量値の調整では、前記複数の電極開口部のうち少なくとも1つ以上の電極開口部内に前記第2の絶縁膜を形成する請求項11乃至17のいずれか一項に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項19】
基板上に第1の電極を形成し、
前記第1の電極上に、表面に島状の凸部を有する絶縁膜を形成し、
前記凸部の外側の領域に、前記凸部の高さより薄い第2の電極を形成して、前記絶縁膜を介して前記第1の電極と対向配置され、電極開口部を有する第2の電極を形成し、
前記第2の電極の膜厚を増加又は減少させてキャパシタ容量値を調整するキャパシタの製造方法。
【請求項20】
請求項11乃至19のいずれか一項に記載の製造方法を用いたキャパシタ内蔵配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−170646(P2009−170646A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6858(P2008−6858)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】