説明

キャパシタおよびその製造方法

【課題】誘電体としてガラスを有する改良されたキャパシタ、および、その製造方法を提供する。
【解決手段】アルカリ金属酸化物含有量が2重量%以下であり、かつ、50μm以下の厚みを有するガラス層(16、18)からなる誘電体を有するキャパシタを提供する。このキャパシタは、ガラス層により分離された少なくとも2つの金属層を備えている。ガラス層は、下方延伸法により、または、オーバーフロー下方延伸溶融法により製造されているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス誘電体を有するキャパシタ、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ秒から日に及ぶ時間について、多量の電気エネルギーを貯蔵する必要が常に増大しているため、特別な誘電特性を有する材料が必要となっている。
ポリプロピレンフィルムキャパシタが一般に、先行技術において、高出力のキャパシタとして使用されている。これらは丸めることができ、誘電体(ポリプロピレン)は、非常に薄いフィルムの形状で製造することができる。しかし、約1MV/cmの絶縁破壊電圧により、エネルギーを貯蔵することのできる密度が制限される。
【0003】
電解キャパシタも、非常に高い貯蔵密度にすることができる。例えば、下記特許文献1(Jeol)は、20Wh/lのオーダの貯蔵密度を有する2層の電解キャパシタについて報告している。
しかし、このような電解液は一般に、化学的に反応し、環境に有害であり、ある場合には爆発性を有する可能性さえある。
【0004】
さらに、セラミックを誘電体として使用するセラミックのキャパシタ(例えば、強誘電相を備えたキャパシタ)が公知である。しかし、セラミックに残留する多孔性のために、その絶縁破壊電界強度が制限される。
リチウムイオンバッテリーなどのバッテリーは現在、最大で800Wh/lという最も大きな貯蔵密度を有している。しかし、バッテリーには限られた寿命があり、キャパシタと違って、最大で数時間の充電時間がかかる。
【0005】
キャパシタ用の誘電体としてのガラスは、先行技術において、さらに公知である。ガラスキャパシタは、1940年代から取り上げられてきた。これらは、人工衛星および宇宙船用の電子工学用途で広く使用されており、非常に攻撃的な環境条件で機能することができる。ガラスの絶縁破壊電界強度が一般に、対応する結晶系の絶縁破壊電界強度よりも大きいことも公知である。下記非特許文献1は、石英ガラスの破壊電界強度を石英結晶と比べることにより、この現象を説明している。著者は、石英ガラスについて、7MV/cmのオーダの破壊電界強度を示唆している。
【0006】
しかし、石英ガラスのキャパシタの製造は、非常に高額で時間のかかる処理である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第11288852号明細書
【特許文献2】国際公開第02/051757号
【特許文献3】国際公開第03/051783号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A. Hippel, R.J. Maurer, Phys. Rev., 59, 820(1941)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ゆえに、本発明の目的は、誘電体としてガラスを有する改良されたキャパシタ、および、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、火仕上げされた表面を有するガラス層の形態である誘電体により分離された少なくとも2つの金属層を備え,ガラス層は、2重量%以下のアルカリ金属酸化物含有量を有し、かつ、50μm以下、好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下の厚みを有している、キャパシタにより達成される。
本発明の目的はさらに、
2重量%以下のアルカリ金属酸化物含有量を有するガラスを用意する工程と、
厚みが50μm以下の火仕上げされた表面を有するガラス細片へと、前記ガラスを延伸する工程と、
前記ガラス細片を、第1の金属層および少なくとも1つの第2の金属層と組み合わせて、ユニットを形成する工程と、
前記2つの金属層に電気的に接触させる工程と
を含む、キャパシタを製造する方法により達成される。
【0011】
このようにして、本発明の目的は十分に達成される。
特に、本発明によれば、低アルカリ金属の、または、アルカリ金属フリーのガラスを誘電体として使用した場合、石英ガラスの絶縁破壊強度を達成することができ、石英ガラスの絶縁破壊強度をいっそう著しく上回ることさえできることが明らかとなってきた。
さらに、破壊強度は、火仕上げした表面により、かなり改良される。
【0012】
ゆえに、低アルカリ金属の薄い火仕上げしたガラス層により、高エネルギー貯蔵密度を有するキャパシタを製造する、驚くほど簡単で経済的なやり方が提供される。
本発明の好ましい改良形態では、ガラス層が、5μm以上、特に10μm以上、特に15μm以上の厚みを有している。
この厚み範囲(好ましくは15〜30μm)では特に、低アルカリ金属を、より強く延伸することにより、特に滑らかな表面が得られる。これには、特に高い絶縁破壊強度という利点がある。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、キャパシタは、第1の金属層が設けられた少なくとも第1のガラス層を有する層ユニットであって、少なくとも1つの第2のガラス層および少なくとも1つの第2の金属層が設けられた層ユニットを備え、当該層ユニットは巻かれており、2つの金属層はそれぞれ、ターミナルに電気的に接続されている。
このような薄いガラス層はまた、容易に巻くことができ、それゆえに、特に大きな量のエネルギーを非常に小さな空間に貯蔵することができることが明らかとなってきた。
【0014】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、各ガラス層は、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.05重量%以下のアルカリ金属酸化物含有量を有するガラスからなっている。
特に低いアルカリ金属ガラスを使用することで、破壊強度を本発明によってさらにいっそう向上することができる。
【0015】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、各ガラス層は、20×1012V/mm3以上、好ましくは50×1012V/mm3以上の品質(ζ)を有し、この品質は、ガラス層の厚みとガラス層の表面の粗さとの積に対する絶縁破壊電界強度の比率として定義される。
ガラス層の厚みが小さくなれば、ガラス表面の粗さも少なくなり、このパラメータが示すように、破壊強度は向上する。
【0016】
高品質のガラス層を使用することにより、特に高いエネルギー密度または特に小さな全体寸法を達成することが可能である。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、各ガラス層は、10-15S/cm以下の電気伝導率を有するガラスからなっている。
非常に低い電気伝導率を有するこのようなガラスを使用した場合、分から日のオーダの放電の時定数が得られる。これは、キャパシタの放電が、誘電体の残留導電率によってではなく、キャパシタのパッケージおよびさらなる要因によって決定されることを意味する。
【0017】
本発明の別の構成によれば、使用されるガラスは、1kHzで0.001以下の誘電損失角(タンジェントδ)を有している。
誘電体を製造するのに特に適したガラスは、下記の組成(酸化物ベースの重量%):
SiO2 40〜75
Al2O3 1〜25
B2O3 0〜16
アルカリ土類金属酸化物 0〜30
アルカリ金属酸化物 0〜2
を有している。
【0018】
特に、下記の組成(酸化物ベースで重量%):
SiO2 40〜75
Al2O3 5〜25
B2O3 1〜16
アルカリ土類金属酸化物 1〜30
アルカリ金属酸化物 0〜1
を含有するガラスが好ましい。
【0019】
最大平均粗さ深さ(RMS)は、1ナノメートル以下、好ましくは0.8ナノメートル以下、特に好ましくは0.5ナノメートル以下であるのが好ましい。
このような滑らかな表面により、特に高い絶縁破壊電圧が達成される。通常、最大平均粗さ深さは、火仕上げされたガラス層について、約0.4ナノメートルである。
本発明に係る方法の好ましい改良形態によれば、第1および第2のガラス細片が延伸され、第1のガラス細片が第1の金属層とともに、第2のガラス細片および第2の金属層と組み合わされ、巻かれてユニットを形成している。
【0020】
これにより、特に経済的な製造が可能になることが明らかとなってきた。この場合、接着剤層(例えば、エポキシ接着剤)が、永久的な結合を達成するために、隣接する層の間に、例えば噴霧された層として、塗布されてもよい。その代わりに、巻かれた金属層(金属箔)上に、接着剤層が被覆(コーティング)としてすでに存在していてもよい。この場合、1枚の紙なども、分離層として巻かれることが必要であろう。これは次いで、ガラス層を結合する前に外される。
【0021】
さらにその代わりに、各ガラス細片は、溶融物からまず延伸され紙で巻かれてロールを形成してもよい。次いで、この方法の中のあとの時点で、紙の層を外したのちに、金属層を付加してもよく、または、ガラス細片を金属箔とともに巻いてもよい。
適切であると考えられるすべての金属を考えることもできる。例えばアルミニウムは、特に安価であるという利点を有している。ニッケル層は、拡散しないという利点を有しているが、より高価である。銀層はよりいっそう高価であるが、電気伝導率が特に良好であるという利点を有している。しかし、拡散はより大きくなる。適切な合金を使用することも当然できることを理解されたい。
【0022】
本発明によれば、下方延伸(ダウンドロー)法により、または、オーバーフロー下方延伸溶融法により、各ガラス細片を製造することが特に好ましい。
先行技術(例えば、下方延伸法に関する上記特許文献2、および、オーバーフロー下方延伸溶融法に関する上記特許文献3)で広く公知の両方の方法は、50μm以下の薄いガラス細片を延伸するのに特に適していることが明らかとなってきた。両方の方法は基本的に公知であるため、本明細書ではこれらについてさらに詳細な説明は行わない。詳細については、上記特許文献2および上記特許文献3が参照される。これらの開示内容は、引用により本明細書に十分に組み込まれる。
【0023】
本発明の好ましい改良形態では、各ガラス細片は、延伸されたのち、レーザ切断装置により、複数の個々の細片に分離されている。
これにより、比較的幅広のガラス細片から作られる小さなキャパシタの製造に関する方法手順が簡略化される。レーザ切断方法の使用により、ガラス細片を、より小さなガラス細片へと、極めて非破壊的に分離することが保証される。これはまた、縁部を、火仕上げされた表面のような表面にすることが好ましい。このようにして、特に高い絶縁破壊電圧を保証することができる。
【0024】
本発明の別の構成によれば、各ガラス細片は、延伸されたのち、下方延伸法により、よりいっそう小さな厚みへと延伸されている。
小さな厚みを有するガラス細片は特に好ましいため、このようにして、本発明により、よりいっそう改良された表面を有する、よりいっそう薄いガラス細片を製造することができ、それゆえに、製造されるキャパシタのエネルギー密度をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】下方延伸(ダウンドロー)法によりガラス細片を延伸するためのノズル装置を示す。
【図2】2つのガラス層および2つの金属層を備えたユニットを作製し巻くための機器の非常に簡略化された図であり、2つのガラス層および2つの金属層は、互いに交代に組み合わされており、2つのガラス層はそれぞれ、下方延伸法により製造されている。
【図3】作製されたガラス細片を複数の個々のガラス細片へと分離するための、続くレーザ切断装置を有する、下方延伸法によりガラス細片を延伸するための機器の略図である。
【図4】本発明に係るキャパシタの模式図である。
【図5】破壊磁場強度(kv/mm)と厚み(mm)との間の関係を示す。
【図6】厚み(mm)の関数としての、ガラス層の品質(ζ)(V/mm3)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上述した特徴および以下に説明する特徴すべては、本発明の範囲を逸脱することなしに、それぞれ示唆した組み合わせだけでなく、他の組み合わせまたは単独でも使用することができることを理解されたい。
本発明の他の特徴および利点は、図面を参照することにより、以下の好ましい例示的な実施形態の説明から理解されるであろう。
【0027】
図1は、基本的に公知の設計のノズル装置10を示している。ノズル装置10は、極めて高い精度でシートガラスを非常に薄く延伸するために、下方延伸(ダウンドロー)法において使用される。上記特許文献2に一般的に説明されている下方延伸法では、気泡がなく高度に均質化されたガラスが、ガラス貯蔵容器(いわゆる、延伸タンク)へと流れ込む。延伸タンクは、貴金属(例えば白金または白金合金)からなっている。スリットノズル14を有するノズル装置10は、延伸タンクの下方に配置されている。このスリットノズル14の寸法および形状により、延伸されているガラス細片16の貫流(スルーフロー)、および、ガラス細片の幅にわたるその厚み分布が規定される。ガラス細片は、延伸ローラ26、28(図2)を使用することにより下方に延伸され、延伸ローラに続く焼きなまし炉(図示せず)を最後に通過する。焼きなまし炉は、ガラス内の応力を回避するために、ガラスを室温まで緩やかに冷却する。延伸ローラの速さにより、ガラス細片の厚みが規定される。延伸工程ののち、さらなる処理のために、ガラスは垂直な姿勢から水平な姿勢へと屈曲される。
【0028】
作製されたガラス細片16は、先行技術で公知のように、紙とともに巻いてロール(円筒体)を形成してもよい。キャパシタのさらなる製造のために、紙をその後、再び外さなければならず、その場所で金属箔(例えば、薄いアルミニウム箔)をガラスと接触させなければならない。例えば図4に従ってキャパシタを製造するために、金属箔とともに第1のガラス細片を、次に第2のガラス細片を、その次に第2の金属箔を巻いてユニットを形成し、最終製品の寸法にする。次いで、ガラス層により互いに電気的に絶縁された2枚の金属箔に、ターミナル72、74が設けられ、キャパシタ70が得られる。図4に係る巻きユニット48は、パッケージ76によっても封入されているのが好ましい。パッケージ76は、例えば、融点が比較的低いガラスをその周りで溶融することにより作製されてもよい。
【0029】
図2は、ユニット48を作製するための機器20を模式的に示している。ユニット48は、第1のガラス層、次いで金属箔、次いで第2のガラス層、次いで第2の金属層からなっており、それをロール50に巻いている。第1のガラス細片16は、第1の延伸装置22から現れ、延伸ローラ26によって延伸される。十分に冷却したのち、ガラス細片16は、ロール30から外された金属箔(例えばアルミニウム箔32)とともに巻かれて、案内ローラ34を介して送られる。第2の延伸装置24から、第2のガラス細片18が、延伸ローラ28を介して延伸され、次いで案内ローラ36、38を介して金属箔32の表面へと送られる。
【0030】
次いで、例えばアルミニウム箔42の形態の第2の金属箔が、ロール40から外され、案内ローラ44を介して送られる。このようにして形成されたユニット48は、さらなる案内ローラ45を介して、ロール50へと任意で巻かれる。この場合、アークまたは短絡を避けるため、第1の金属箔が一方側にのみ突出し、第2の金属箔が他方側にのみ突出するように注意する必要がある。
【0031】
最後に、図3から分かるように、各ガラス細片は、複数の個々の細片に分離されていてもよい。これは、ガラス細片16を延伸した直後に、延伸装置22で行われるのが好ましい。図3は、延伸装置22から延伸されたガラス細片16を模式的に示している。延伸ローラ、冷却区域などの図は、明瞭にするために省かれている。延伸装置22を出たのち、ガラス細片16はまず、検査装置60により、自動で確認される。これは、例えば、カメラに基づくシステムを含んでいてもよい。次いで、ガラス細片16は、複数のレーザ52、54、56、58を備えたレーザ切断装置により、一連の個々の細片16I、16II、16III、16IV、16Vへと分割される。それぞれが例えば10cmの幅を有するこれらの個々の細片16I、16II、16III、16IV、16Vは、図2のやり方に対応するやり方でさらに処理されてもよく、または、それぞれ紙で巻かれてもよい。
実施例
30μmの厚みを有するガラスD263のガラス細片および50μmの厚みを有するガラスAF45のガラス細片を、下方延伸法により作製し、それぞれを紙とともに巻いた。
【0032】
キャパシタの製造用に作製されたガラスシートの適正を以下のように試験した。
2つのガラスAF45およびD263(ともに、ショット アクチエンゲゼルシャフトにより製造および販売されている)の通常の組成を表1に要約して示す。
ガラスAF45はしたがって、アルカリ金属フリーのガラスであり、これは本発明によれば特に好ましい。これに対して、ガラスD263は、16重量%のアルカリ金属酸化物を含んでいるため、比較例とする。
【0033】
両方のガラス細片の、DIN ISO 1302に係る平均粗さ(RMS)(算術平均粗さ値(Ra)とも言う)は、約0.4〜0.5nmである。ゆえに、表面が極めて滑らかである。2つのガラス細片AF45およびD263の絶縁破壊強度を測定した。50μmの厚みを有するAF45で形成されたガラスシートは、約5〜7MV/cmという高い破壊強度を示した。
【0034】
【表1】

【0035】
D263で形成した比較例では、平均の破壊強度は、わずか約4 MV/cmであった。これは、アルカリ金属フリーのガラスAF45の絶縁破壊強度が、アルカリ金属を含有するガラスD263の絶縁破壊強度よりも、はるかに優れていることを意味している。この文脈では、厚みが(特定の限度値に向けて)小さくなるとともに誘電体の破壊強度が上昇することが一般に公知であることを考慮せねばならない。ゆえに、これは、アルカリ金属フリーのガラスAF45の破壊強度が著しく改善されたことを示している。なぜなら、厚みが大きくなっているにもかかわらず、より高い破壊強度が測定されたからである。
【0036】
総エネルギー密度Eは、下記式1のように電界強度U/dと関連している。
【0037】
【数1】

【0038】
式中、ε0=8.854187×10-12As/Vmは誘電場定数であり、εは比誘電率であり、Uは印加された電圧であり、dは誘電体の厚みである。
AF45の比誘電率は、6.2と測定された。絶縁破壊電界強度を7MV/cmと仮定すると、ガラスAF45について20×106Ws/m3というエネルギー密度が得られる。これは3.7Wh/lに相当する。
【0039】
【表2】

【0040】
期待される、より高い絶縁破壊電界強度を12MV/cmと仮定すると、ガラスAF45の、より薄いガラスシートについて約40×106Ws/m3というエネルギー密度が得られる。これは11Wh/lに相当する。
これに対し、約16重量%のアルカリ金属酸化物を含有するガラスD263については、わずか約4MV/cmという絶縁破壊強度が測定された。これは、対応して低い固有のエネルギー密度につながる。
【0041】
ガラスD263と比較して、ガラスAF45の絶縁破壊強度が著しく高いのは、ガラスAF45がアルカリ金属フリーであることに起因する。
同様にショット アクチエンゲゼルシャフトが製造および販売している例えばAF32、AF37および8252などの他のアルカリ金属フリーのガラスでも、同様の良好な結果が得られると予想される。これらのガラスの組成を表2に示している。
【0042】
表3は、本発明に係るキャパシタ製造に特に適した、さらなるアルカリ金属フリーのガラスを要約して示している。
【0043】
【表3】

【0044】
表1〜表3に係る上記ガラスは、(原料の汚染および耐火物のクラッドからの溶融のために)最大で約0.5重量%のアルカリ金属酸化物を不純物として含有していてもよいことを理解されたい。
図6は、ガラスAF45について、絶縁破壊強度(kV/mm)とガラス層(mm)の厚みとの間の関係を、グラフにより示している。厚みが減少するとともに、破壊電界強度が上昇していることが理解できる。
【0045】
図7は、ガラスAF45について、試料厚み(mm)の関数としてのガラス層(V/mm3)の品質を示しており、RMS粗さについて、0.4ナノメートルの値(火仕上げでは一般的)が予想される。特に有利な値は、2012V/mm3であることが理解できる。これにより最大エネルギー密度が達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火仕上げされた表面を有するガラス層(16、18)の形態である誘電体により分離された少なくとも2つの金属層(32、42)を備え、前記ガラス層(16、18)は、2重量%以下のアルカリ金属酸化物含有量を有し、かつ、50μm以下、好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下の厚みを有している、キャパシタ。
【請求項2】
前記ガラス層(16、18)が、5μm以上、特に10μm以上、特に15μm以上の厚みを有している、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記金属層(32、42)および前記ガラス層(16、18)が、層ユニット(48)を形成するように巻かれ、前記2つの金属層(32、42)がそれぞれ、ターミナル(72、74)に電気的に接続されている、請求項1または2に記載のキャパシタ。
【請求項4】
各ガラス層(16、18)が、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.05重量%以下のアルカリ金属酸化物含有量を有するガラスからなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【請求項5】
各ガラス層(16、18)が、10-15S/cm以下の電気伝導率を有するガラスからなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【請求項6】
各ガラス層(16、18)が、1kHzで0.001以下の誘電損失角(タンジェントδ)を有するガラスからなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【請求項7】
各ガラス層(16、18)が、酸化物ベースの重量%で:
SiO2 40〜75
Al2O3 1〜25
B2O3 0〜16
アルカリ土類金属酸化物 0〜30
アルカリ金属酸化物 0〜2
の組成を有するガラスからなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【請求項8】
各ガラス層(16、18)が、酸化物ベースの重量%で:
SiO2 40〜75
Al2O3 5〜25
B2O3 1〜16
アルカリ土類金属酸化物 1〜30
アルカリ金属酸化物 0〜1
の組成を有するガラスからなる、請求項7に記載のキャパシタ。
【請求項9】
各ガラス層(16、18)が、1ナノメートル以下、好ましくは0.8ナノメートル以下、特に好ましくは0.5ナノメートル以下の最大平均粗さ深さRMSを有している、請求項1〜8のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【請求項10】
前記ガラス層(16、18)が、20×1012V/mm3以上、好ましくは50×1012V/mm3以下の品質(ζ)を有し、前記品質は、前記ガラス層の厚みと前記ガラス層の前記表面の粗さとの積に対する絶縁破壊強度の比率として定義される、請求項1〜9のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【請求項11】
2重量%以下のアルカリ金属酸化物含有量を有するガラスを用意する工程と、
厚みが50μm以下の火仕上げされた表面を有するガラス細片(16、18)へと、前記ガラスを延伸する工程と、
前記ガラス細片(16、18)を、第1の金属層(32)および少なくとも1つの第2の金属層(42)と組み合わせて、ユニット(48)を形成する工程と、
前記2つの金属層(32、42)に電気的に接触させる工程とを含む、キャパシタを製造する方法。
【請求項12】
第1(16)および第2(18)のガラス細片が延伸され、前記第1(16)のガラス細片が、前記第1の金属層(32)とともに、前記第2(18)のガラス細片および第2の金属層(42)と組み合わされ、巻かれてユニット(48)を形成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
接着剤層がそれぞれ、隣接する前記層(16、18、32、42)の間に配置される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各ガラス細片(16、18)が、下方延伸法により、または、オーバーフロー下方延伸溶融法により製造される、請求項11、12または13に記載の方法。
【請求項15】
各ガラス細片(16、18)が、延伸されたのち、レーザ切断装置により、複数の個々の細片(16I、16II、16III、16IV)に分離される、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
各ガラス細片(16、18)が、延伸されたのち、下方延伸法により、よりいっそう小さな厚みへと延伸される、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
各ガラス細片(16、18)が、40μm以下、特に好ましくは30μm以下の厚みに延伸される、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
各ガラス細片(16、18)が、5μm以上、特に10μm以上、特に15μm以上の厚みに延伸される、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
各ガラス細片(16、18)が、1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.05重量%以下のアルカリ金属酸化物含有量を有するガラスにより製造される、請求項11〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
各ガラス細片(16、18)が、10-15S/cm以下の電気伝導率を有するガラスからなる、請求項11〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
各ガラス細片(16、18)が、1kHzで0.001以下の誘電損失角(タンジェントδ)を有するガラスからなる、請求項11〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
各ガラス細片(16、18)が、酸化物ベースの重量%で:
SiO2 40〜75
Al2O3 1〜25
B2O3 0〜16
アルカリ土類金属酸化物 0〜30
アルカリ金属酸化物 0〜2
の組成を有するガラスで作製される、請求項11〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
各ガラス細片(16、18)が、酸化物ベースの重量%で:
SiO2 40〜75
Al2O3 5〜25
B2O3 1〜16
アルカリ土類金属酸化物 1〜30
アルカリ金属酸化物 0〜1
の組成を有するガラスで作製された、請求項11〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
各ガラス細片(16、18)が、その両面で、1ナノメートル以下、好ましくは0.8ナノメートル以下、特に好ましくは0.5ナノメートル以下の算術平均粗さ値(RMS)を有するように延伸される、請求項11〜23のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−517692(P2012−517692A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548621(P2011−548621)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000826
【国際公開番号】WO2010/091847
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】