説明

キャパシタ回路、キャリブレーション回路、コンパレータ及び電圧比較器

【課題】短時間で高精度のオフセット・キャリブレーションを行うことができるコンパレータを提供する。
【解決手段】オフセット・キャリブレーションを行う場合は、アナログ入力電圧Vip>アナログ入力電圧Vimとし、キャリブレーション指示信号φRESをHレベルとする。キャリブレーション回路49、50は、逆相比較判定信号ComがLレベルの間は、粗調によるオフセット・キャリブレーションを実行し、逆相比較判定信号Comの論理がHレベルに反転するまでを高速に行い、逆相比較判定信号ComがHレベルに反転すると、その後は、逆相比較判定信号Comの論理の反転に関係なく、微調によるオフセット・キャリブレーションを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A/D変換器や電圧比較器などを構成する場合に使用するコンパレータ(比較器)のオフセットをキャンセルするキャリブレーション回路を構成する場合に使用して好適なキャパシタ回路、該キャパシタ回路を使用したキャリブレーション回路、該キャリブレーション回路を使用したコンパレータ、及び、該コンパレータを使用した電圧比較器に関する。
【背景技術】
【0002】
A/D変換器や電圧比較器にはコンパレータが使用される。コンパレータは、2つのアナログ入力電圧の大小を比較判定し、比較判定結果をデジタル値として出力する機能を有しているが、通常、コンパレータを構成する素子の特性ばらつきに起因するオフセットを持っており、それが比較判定精度を限定している。このオフセットをキャンセルするために、従来、一般にオートゼロと呼ばれるスタティック・オフセット・キャリブレーションを行うのが一般的であった(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
これに対して、コンパレータを実際の動作モードと同じ条件で動作させ、D/A変換器を使用してオフセットをキャンセルするダイナミック・オフセット・キャリブレーション手法(例えば、非特許文献2参照)や、D/A変換器を使用せずに、スイッチトキャパシタ回路により負帰還をかけることによりオフセットをキャンセルするダイナミック・オフセット・キャリブレーション手法(非特許文献3参照)も報告されている。これらのダイナミック・オフセット・キャリブレーション手法においては、実動作環境と同じ条件でオフセット・キャリブレーションを実行するため、より高精度な比較判定動作を実現することができる。
【非特許文献1】Sanroku Tsukamoto,Ian Dedic,Toshiaki Endo,Kazu-yoshi Kikuta,Kunihiko Goto,Osamu Kobayashi;A CMOS 6-b,200 Msample/s,3 V-supply A/D converter for a PRML read channel LSI,IEEE Journal of Solid-State Circuits,vol.31,pp.1831 - 1836,November 1996.
【非特許文献2】Yuko Tamba,Kazuo Yamakido;A CMOS 6b 500MSample/s ADC for a hard disk drive read channel,IEEE International Solid-State Circuits Conference,vol.XLII,pp.324 - 325,February 1999.
【非特許文献3】Pedro M.Figueiredo,“A 90nm CMOS 1.2V 6b 1GS/s Two-Step Subranging ADC” IEEE International Solid-State Circuits Conference,vol.49,pp.568 - 569,February 2006.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献2、3に記載のダイナミック・オフセット・キャリブレーション手法においては、補正をかけるD/A変換器やスイッチトキャパシタ回路の分解能が有限であり、また、コンパレータの比較判定結果を基にオフセット・キャリブレーションのための帰還をかけるため、一階調/判定ステップで制御されていた。このため、オフセット・キャリブレーションの高精度化と補正サイクル数の間にはトレードオフの関係があった。
【0005】
即ち、オフセット・キャリブレーションの高精度化を図るために、補正の最小ステップ幅を小さくすると、オフセットがキャンセルされるバランス点に到達するまでの比較判定サイクル数(=補正期間)は、最小ステップ幅に反比例して増加し、実動作が可能となるまでの立ち上がり時間が長くなり、一回の補正期間中に補正しきれなくなる等の問題点があった。逆に、補正期間を短縮するために最小ステップ幅を大きくすると、補正分解能以下のオフセットがキャンセル不能になるという問題点があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑み、A/D変換器や電圧比較器などを構成する場合に使用するコンパレータのオフセットをキャリブレーションするキャリブレーション回路に使用する場合には、短時間で高精度のオフセット・キャリブレーションを行うことができるキャパシタ回路、該キャパシタ回路を使用したキャリブレーション回路、該キャリブレーション回路を使用したコンパレータ、及び、該コンパレータを使用した電圧比較器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のキャパシタ回路は、第1の接続点と第2の接続点との間に直列接続された複数のスイッチと、該複数のスイッチの各々の前記第2の接続点側のノードと電源との間に接続された複数のキャパシタを有するスイッチトキャパシタ回路と、前記複数のスイッチを制御するスイッチ制御回路とを有し、前記スイッチ制御回路は、第1のモード時は、前記複数のスイッチ中の所定のスイッチをオンとし、前記所定のスイッチをのぞく残りのスイッチ中の隣り合うスイッチが同時にオンとならないように前記残りのスイッチにオン、オフ動作を繰り返し、第2のモード時は、前記複数のスイッチ中の隣り合うスイッチが同時にオンとならないように前記複数のスイッチにオン、オフ動作を繰り返し、第3のモード時は、前記複数のスイッチをオフとするスイッチ制御回路であることを特徴とする。
【0008】
本発明のキャリブレーション回路は、ソースを第3の接続点に接続し、ドレインを第4の接続点に接続したキャリブレーショントランジスタと、前記第1の接続点を第5の接続点に接続し、前記第2の接続点を前記キャリブレーショントランジスタのゲートに接続した本発明のキャパシタ回路を備えるものである。
【0009】
本発明のコンパレータは、ゲートを第1のアナログ電圧入力端子に接続し、ソースを第1の電源に接続した第1導電型の第1のトランジスタと、ゲートを第2のアナログ電圧入力端子に接続し、ソースを前記第1の電源に接続した第1導電型の第2のトランジスタと、ドレインを前記第1のトランジスタのドレインに接続し、ゲートを前記第2のトランジスタのドレインに接続し、ソースを第2の電源に接続した第2導電型の第3のトランジスタと、ドレインを前記第2のトランジスタのドレインに接続し、ゲートを前記第1のトランジスタのドレインに接続し、ソースを前記第2の電源に接続した第2導電型の第4のトランジスタを少なくとも有し、入力端子を前記第1のトランジスタのドレイン又は前記第3のトランジスタのドレインのいずれかに接続し、出力端子を第1の比較判定信号出力端子に接続した第1のインバータと、入力端子を前記第2のトランジスタのドレイン又は前記第4のトランジスタのドレインのいずれかに接続し、出力端子を第2の比較判定信号出力端子に接続した第2のインバータと、前記第3の接続点を前記第1のトランジスタのソースに接続し、前記第4の接続点を前記第1のトランジスタのドレインに接続し、前記第5の接続点を前記第2の比較判定信号出力端子に接続した第1の本発明のキャリブレーション回路と、前記第3の接続点を前記第2のトランジスタのソースに接続し、前記第4の接続点を前記第2のトランジスタのドレインに接続し、前記第5の接続点を前記第1の比較判定信号出力端子に接続した第2の本発明のキャリブレーション回路を備えるものである。
【0010】
本発明の電圧比較器は、本発明のコンパレータと、本発明のコンパレータが前記第2の比較判定信号出力端子に出力する比較判定信号の論理を監視し、キャリブレーション開始時には、本発明のコンパレータを前記第1のモードに設定し、その後、前記比較判定信号の論理が反転した場合には、本発明のコンパレータを前記第2のモードに設定する制御回路を備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のキャパシタ回路は、A/D変換器や電圧比較器などを構成する場合に使用するコンパレータのオフセットをキャリブレーションするキャリブレーション回路に使用するものであり、前記スイッチトキャパシタ回路は、キャリブレーション回路内の負帰還パスの一部として使用されるものである。
【0012】
本発明のキャパシタ回路においては、第1のモード時は、前記複数のスイッチ中の所定の複数のスイッチはオンとなり、残りのスイッチは、前記残りのスイッチ中の隣り合うスイッチが同時にオンとならないようにオン、オフ動作を繰り返す。この結果、第1のモード時は、前記スイッチトキャパシタ回路を、相対的にキャリブレーション精度は高くないが、相対的にキャリブレーション動作が速い、いわゆる粗調によるオフセット・キャリブレーションを行うための負帰還パスの一部として機能させることができる。
【0013】
また、第2のモード時は、前記複数のスイッチは、前記複数のスイッチ中の隣り合うスイッチが同時にオンとならないようにオン、オフ動作を繰り返す。この結果、第2のモード時は、前記スイッチトキャパシタ回路を、相対的にキャリブレーション動作は速くないが、相対的にキャリブレーション精度が高い、いわゆる微調によるオフセット・キャリブレーションを行うための負帰還パスの一部として機能させることができる。
【0014】
したがって、本発明のキャパシタ回路をコンパレータのキャリブレーション回路に使用して、順に第1のモード、第2のモードとする場合には、コンパレータについて、粗調によるオフセット・キャリブレーションと、微調によるオフセット・キャリブレーションとを順に行うことができる。したがって、本発明のキャパシタ回路によれば、短時間で高精度のオフセット・キャリブレーションを行うことができる。
【0015】
本発明のキャリブレーション回路は、キャリブレーショントランジスタに流れる電流を調整することにより、コンパレータについてオフセット・キャリブレーションを行うものであり、本発明のキャパシタ回路を備えているので、短時間で高精度のオフセット・キャリブレーションを行うことができる。
【0016】
本発明のコンパレータは、2つのアナログ入力電圧の大小を比較判定するものであり、本発明のキャリブレーション回路を備えているので、短時間で高精度のオフセット・キャリブレーションを行うことができる。
【0017】
本発明の電圧比較器によれば、先ず、本発明のコンパレータを第の1モードに設定し、本発明のコンパレータについて粗調によるオフセット・キャリブレーションを行い、その後、比較判定信号が反転すると、本発明のコンパレータを第2のモードに設定し、本発明のコンパレータについて微調によるオフセット・キャリブレーションを行うことができるので、本発明のコンパレータについて短時間で高精度のオフセット・キャリブレーションを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の電圧比較器の一実施形態の要部を示す回路図である。本発明の電圧比較器の一実施形態は、本発明のコンパレータの一実施形態であるコンパレータ1と、粗調/微調制御回路2と、フリップフロップ3、4とを備えている。
【0019】
コンパレータ1は、第1のアナログ入力端子1Aに印加されるアナログ入力電圧Vipと第2のアナログ入力端子1Bに印加されるアナログ入力電圧Vimとの大小を比較判定し、第1の比較判定信号出力端子である正相比較判定信号出力端子1Cに正相比較判定信号Copを出力し、第2の比較判定信号出力端子である逆相比較判定信号出力端子1Dに正相比較判定信号Copと相補関係にある逆相比較判定信号Comを出力するものである。
【0020】
コンパレータ1は、アナログ入力電圧Vip>アナログ入力電圧Vimの場合には、正相比較判定信号CopがHレベル(正の電源電圧VDD)、逆相比較判定信号ComがLレベル(0V)となり、アナログ入力電圧Vip<アナログ入力電圧Vimの場合には、正相比較判定信号CopがLレベル、逆相比較判定信号ComがHレベルとなるように構成される。
【0021】
コンパレータ1には、制御信号として、クロック信号φCと、キャリブレーション指示信号φRESと、粗調/微調制御信号φSとが与えられる。キャリブレーション指示信号φRESは、コンパレータ1に対してオフセット・キャリブレーションの実行を指示する信号である。粗調/微調制御信号φSは、コンパレータ1におけるオフセット・キャリブレーションの精度、即ち、オフセット・キャリブレーションを粗調で実行するか、微調で実行するかを制御するものである。
【0022】
粗調/微調制御回路2は、キャリブレーション指示信号φRESと、クロック信号φCと、コンパレータ1が出力する逆相比較判定信号Comとを入力して粗調/微調制御信号φSを生成し、この粗調/微調制御信号φSをコンパレータ1に与え、コンパレータ1におけるオフセット・キャリブレーションを粗調で実行するか、微調で実行するかを制御するものである。
【0023】
フリップフロップ3は、データ入力端子Dにコンパレータ1が出力する正相比較判定信号Copが印加され、クロック入力端子CLKにクロック信号φCが印加されるものである。フリップフロップ4は、データ入力端子Dにコンパレータ1が出力する逆相比較判定信号Comが印加され、クロック入力端子CLKにクロック信号φCが印加されるものである。
【0024】
図2はフリップフロップ3の構成を示す回路図であり、フリップフロップ4も同様に構成される。フリップフロップ3は、取り込み部7と、取り込み部7を制御する取り込み制御部8を備えている。
【0025】
取り込み部7は、インバータ9〜14と、スイッチ15〜18を備えている。スイッチ15、16は、スイッチ制御信号CK1によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号CK1がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号CK1がLレベルの場合にはOFFとなるものである。スイッチ17、18は、スイッチ制御信号CK2によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号CK2がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号CK2がLレベルの場合にはOFFとなるものである。
【0026】
取り込み制御部8は、インバータ19、20を備えている。インバータ19は、クロック入力端子CLKに印加されるクロック信号φCを反転してスイッチ制御信号CK1を出力するものである。インバータ20は、インバータ19が出力するスイッチ制御信号CK1を反転してスイッチ制御信号CK2を出力するものである。
【0027】
図3はコンパレータ1の比較動作タイミング及びリセット動作タイミングと、フリップフロップ3、4の取り込み動作タイミングを示すタイミングチャートであり、(A)はクロック信号φC、(B)はコンパレータ1が出力する正相比較判定信号Cop及び逆相比較判定信号Com、(C)はフリップフロップ3が正相出力端子Qに出力する信号Dop及びフリップフロップ4が正相出力端子Qに出力する信号Domを示しており、アドレス入力電圧Vip>アナログ入力電圧Vimの場合を例にしている。
【0028】
即ち、本発明の電圧比較器の一実施形態においては、コンパレータ1は、クロック信号φCの立ち下がりに同期して比較動作を開始して有効データを出力し、クロック信号φCの立ち上がりに同期してリセット動作を開始して無効データを出力する。また、フリップフロップ3は、クロック信号φCの立ち上がりに同期して正相比較判定信号Copを取り込み、フリップフロップ4は、クロック信号φCの立ち上がりに同期して逆相比較判定信号Comを取り込む。
【0029】
図4は粗調/微調制御回路2の構成を示す回路図である。粗調/微調制御回路2は、フリップフロップ22、23と、EOR(排他的論理和)回路24と、フリップフロップ25を備えている。
【0030】
フリップフロップ22は、データ入力端子Dに逆相比較判定信号Comが印加され、クロック入力端子CLKにクロック信号φCが印加され、クロック信号φCの立ち上がりに同期して逆相比較判定信号Comを取り込むものであり、図2に示すフリップフロップ3と同様に構成される。
【0031】
フリップフロップ23は、データ入力端子Dにフリップフロップ22の出力信号S22が印加され、クロック入力端子CLKにクロック信号φCが印加され、クロック信号φCの立ち上がりに同期してフリップフロップ22の出力信号S22を取り込むものであり、図2に示すフリップフロップ3と同様に構成される。
【0032】
EOR回路24は、フリップフロップ22の出力信号S22とフリップフロップ23の出力信号S23とをEOR処理するものであり、フリップフロップ22の出力信号S22とフリップフロップ23の出力信号S23の論理値が同一の場合にはLレベルを出力し、フリップフロップ22の出力信号S22とフリップフロップ23の出力信号S23の論理値が同一でない場合には、Hレベルを出力する。
【0033】
フリップフロップ25は、データ入力端子Dに電源電圧VDDが印加され、クロック入力端子CLKにEOR回路24の出力信号S24が印加され、リセット入力端子RESにキャリブレーション指示信号φRESが印加され、正相出力端子Qに粗調/微調制御信号φSを出力するものである。
【0034】
図5はフリップフロップ25の構成を示す回路図である。フリップフロップ25は、取り込み部27と、取り込み部27を制御する取り込み制御部28を備えている。
【0035】
取り込み部27は、インバータ29〜33と、NAND回路34と、スイッチ35〜38を備えている。スイッチ35、36は、スイッチ制御信号CK3によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号CK3がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号CK3がLレベルの場合にはOFFとなるものである。スイッチ37、38は、スイッチ制御信号CK4によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号CK4がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号CK4がLレベルの場合にはOFFとなるものである。
【0036】
取り込み制御部28は、インバータ39、40を備えている。インバータ39は、クロック入力端子CLKに印加されるクロック信号φCを反転してスイッチ制御信号CK3を出力するものである。インバータ40は、インバータ39が出力するスイッチ制御信号CK3を反転してスイッチ制御信号CK4を出力するものである。
【0037】
図6は粗調/微調制御回路2の動作を示すタイミングチャートであり、(A)はキャリブレーション指示信号φRES、(B)はクロック信号φC、(C)はコンパレータ1が出力する正相比較判定信号Cop及び逆相比較判定信号Com、(D)はフリップフロップ22の出力信号S22、(E)はフリップフロップ23の出力信号S23、(F)はEOR回路24の出力信号S24、(G)は電源電圧VDD、(H)はフリップフロップ25が出力する粗調/微調制御信号φSを示しており、アナログ入力電圧Vip>アナログ入力電圧Vimの場合を例にしている。
【0038】
即ち、粗調/微調制御回路2においては、キャリブレーション指示信号φRESがLレベルの場合には、フリップフロップ25内のNAND回路34の出力はHレベルに固定され、粗調/微調制御信号φSはLレベルに固定される。
【0039】
これに対して、キャリブレーション指示信号φRESがHレベルの場合には、フリップフロップ25内のNAND回路34はスイッチ36又はスイッチ38の出力信号に対してインバータとして機能するので、フリップフロップ25はDフリップフロップとして機能する。
【0040】
この結果、フリップフロップ25においては、EOR回路24の出力信号S24がLレベルの場合には、スイッチ制御信号CK3がHレベル、スイッチ制御信号CK4がLレベルとなり、スイッチ35、36はON、スイッチ37、38はOFFとなる。
【0041】
また、コンパレータ1は、後述するように、キャリブレーション指示信号φRESがHレベルの場合には、オフセット・キャリブレーション動作を行うが、クロック信号φCの立ち下がりに同期して比較動作を開始し、クロック信号φCの立ち上がりに同期してリセット動作を開始するので、アナログ入力電圧Vip>アナログ入力電圧Vimの場合には、当初は、正相比較判定信号CopはHレベル、逆相比較判定信号ComはLレベルとなる。
【0042】
ここで、正相比較判定信号CopがHレベル、逆相比較判定信号ComがLレベルの場合には、フリップフロップ22は、Lレベル信号を取り込み、その出力信号S22をLレベルとする。この結果、フリップフロップ23は、Lレベル信号を取り込み、その出力信号S23をLレベルとし、EOR回路24は、その出力信号S24をLレベルとする。
【0043】
また、この結果、フリップフロップ25においては、スイッチ制御信号CK3がHレベル、スイッチ制御信号CK4がLレベルとなり、スイッチ35、36はON、スイッチ37、38はOFF状態が維持される。
【0044】
ここで、アナログ入力電圧Vip>アナログ入力電圧Vimの場合であっても、後述するように、コンパレータ1における粗調によるオフセット・キャリブレーションの結果、正相比較判定信号Cop及び逆相比較判定信号Comが反転し、正相比較判定信号CopがLレベル、逆相比較判定信号ComがHレベルとなる時点がある。
【0045】
この場合、フリップフロップ22は、Hレベル信号を取り込み、その出力信号S22をHレベルとするが、この時点では、フリップフロップ23の出力信号S23はLレベルであるから、EOR回路24は、その出力信号S24をHレベルとする。
【0046】
この結果、フリップフロップ25では、スイッチ制御信号CK3がLレベル、スイッチ制御信号CK4がHレベルとなり、スイッチ35、36がOFF、スイッチ37、38がONとなり、フリップフロップ25は、電源電圧VDDを取り込み、粗調/微調制御信号φSがHレベルとなり、この状態が、キャリブレーション指示信号φRESがLレベルとなるまで維持される。
【0047】
図7はコンパレータ1の構成を示す回路図である。コンパレータ1は、PMOSトランジスタ42、43と、NMOSトランジスタ44、45と、インバータ46、47と、スイッチ48からなるコンパレータに本発明のキャリブレーション回路の一実施形態であるキャリブレーション回路49、50を付加したものである。
【0048】
PMOSトランジスタ42、43は駆動素子をなすものであり、PMOSトランジスタ42は、ソースをVDD電源に接続し、ゲートをアナログ電圧入力端子1Aに接続し、ドレインをノード51に接続している。PMOSトランジスタ43は、ソースをVDD電源に接続し、ゲートをアナログ電圧入力端子1Bに接続し、ドレインをノード52に接続している。
【0049】
NMOSトランジスタ44、45は負荷素子をなすものである。NMOSトランジスタ44は、ドレインをノード51に接続し、ゲートをノード52に接続し、ソースを接地している。NMOSトランジスタ45は、ドレインをノード52に接続し、ゲートをノード51に接続し、ソースを接地している。
【0050】
インバータ46は、その入力端子をノード51に接続し、その出力端子をコンパレータ1の正相比較判定信号出力端子1Cに接続しており、ノード51のレベルに基づいて正相比較判定信号Copを出力するものである。インバータ47は、その入力端子をノード52に接続し、その出力端子をコンパレータ1の逆相比較判定信号出力端子1Dに接続しており、ノード52のレベルに基づいて逆相比較判定信号Comを出力するものである。
【0051】
スイッチ48は、リセット用のスイッチであり、クロック信号φCがHレベルの場合にはON、クロック信号φCがLレベルの場合にはOFFとなるものである。したがって、コンパレータ1は、クロック信号φCがHレベルで、スイッチ48がONとなる場合にはリセットされ、クロック信号φCがLレベルで、スイッチ48がOFFとなる場合には比較動作を行う。
【0052】
図8はキャリブレーション回路49の構成を示す回路図である。キャリブレーション回路49は、キャリブレーション用のPMOSトランジスタ55と、スイッチトキャパシタ回路56と、スイッチ制御回路57を備えている。なお、スイッチトキャパシタ回路56とスイッチ制御回路57とで本発明のキャパシタ回路の一実施形態が構成されている。
【0053】
PMOSトランジスタ55は、そのドレイン側にキャリブレーション用の電流を出力するものであり、ソースを電源電圧入力ノード58に接続し、ドレインをキャリブレーション用電流出力ノード59に接続している。なお、電源電圧入力ノード58はVDD電源に接続され、キャリブレーション用電流出力ノード59はノード52に接続される。
【0054】
スイッチトキャパシタ回路56は、負帰還用ノード60とPMOSトランジスタ55のゲートとの間に、スイッチ61〜64をそれぞれの一方のノードが負帰還用ノード60側、他方のノードがPMOSトランジスタ55のゲート側となるように直列接続すると共に、これらスイッチ61〜64の他方のノードと接地との間にキャパシタ65〜68を接続して構成されている。なお、負帰還用ノード60はインバータ46の出力端子に接続される。
【0055】
スイッチ61は、スイッチ制御信号φ4によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号φ4がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号φ4がLレベルの場合にはOFFとなる。スイッチ62は、スイッチ制御信号φ3によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号φ3がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号φ3がLレベルの場合にはOFFとなる。
【0056】
スイッチ63は、スイッチ制御信号φ2によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号φ2がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号φ2がLレベルの場合にはOFFとなる。スイッチ64は、スイッチ制御信号φ1によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号φ1がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号φ1がLレベルの場合にはOFFとなる。
【0057】
スイッチ制御回路57は、キャリブレーション指示信号入力ノード69、粗調/微調制御信号入力ノード70、クロック信号入力ノード71、電源電圧入力ノード58を介してキャリブレーション指示信号φRES、粗調/微調制御信号φS、クロック信号φC、電源電圧VDDを入力し、スイッチ制御信号φ1〜φ4を生成するものである。
【0058】
図9はスイッチ制御回路57の構成を示す回路図である。スイッチ制御回路57は、フリップフロップ73と、インバータ74〜79と、NAND回路80〜88と、NOR回路89を備えている。
【0059】
図10はフリップフロップ73の構成を示す回路図である。フリップフロップ73は、取り込み部91と、取り込み部91を制御する取り込み制御部92を備えている。
【0060】
取り込み部91は、インバータ93〜98と、スイッチ99〜102を備えている。スイッチ99、100は、スイッチ制御信号CK5によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号CK5がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号CK5がLレベルの場合にはOFFとなるものである。スイッチ101、102は、スイッチ制御信号CK6によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号CK6がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号CK6がLレベルの場合にはOFFとなるものである。
【0061】
取り込み制御部92は、NAND回路103と、インバータ104とを備えている。NAND回路103は、クロック・イネーブル信号入力端子CEに印加されるキャリブレーション指示信号φRESと、クロック信号入力端子CLKに印加される粗調/微調制御信号φSとをNAND処理してスイッチ制御信号CK5を出力するものである。インバータ104は、NAND回路103が出力するスイッチ制御信号CK5を反転してスイッチ制御信号CK6を出力するものである。
【0062】
図11はスイッチ制御回路57の動作を示すタイミングチャートであり、(A)はキャリブレーション指示信号φRES、(B)はクロック信号φC、(C)は粗調/微調制御信号φS、(D)は正相比較判定信号Cop及び逆相比較判定信号Com、(E)はスイッチ制御信号φ4、(F)はスイッチ制御信号φ3、(G)はスイッチ制御信号φ2、(H)はスイッチ制御信号φ1を示している。
【0063】
図12はスイッチ制御回路57の動作を説明するための回路図であり、キャリブレーション指示信号φRESがLレベルの場合を示している。この場合には、NAND回路85〜88の出力はHレベルに固定されるので、スイッチ制御信号φ4〜φ1はLレベルに固定される。この結果、スイッチトキャパシタ回路56においては、スイッチ61〜64はOFFに固定され、オフセット・キャリブレーションは実行されない。
【0064】
図13はスイッチ制御回路57の動作を説明するための回路図であり、キャリブレーション指示信号φRESがHレベル、粗調/微調制御信号φSがLレベルの場合を示している。この場合、NAND回路85〜88は、それぞれNAND回路81〜84の出力信号に対してインバータとして機能する。
【0065】
また、クロック信号CLKがHレベルの場合、インバータ74の出力信号はLレベル、NAND回路80の出力信号はHレベルとなる。これに対して、クロック信号CLKがLレベルの場合、インバータ74の出力信号はHレベル、NOR回路89の出力信号はLレベル、インバータ75の出力信号はHレベル、NAND回路80の出力信号はLレベルとなる。
【0066】
ここで、フリップフロップ73は、NAND回路82の出力信号に同期して粗調/微調制御信号φSを取り込むが、粗調/微調制御信号φSはLレベルであるので、フリップフロップ73の出力信号はLレベルに固定される。この結果、NAND回路81、84の出力信号はHレベルに固定され、スイッチ制御信号φ2、φ3は、図11(G)、(F)に示すように、Hレベルに固定される。
【0067】
また、クロック信号φCがHレベルになると、NAND回路80の出力信号はHレベル、NAND回路82の出力信号はLレベルとなり、クロック信号φCがLレベルになると、NAND回路80の出力信号はLレベル、NAND回路82の出力信号はHレベルとなる。したがって、スイッチ制御信号φ4は、図11(E)に示すようにアクティブ、即ち、HレベルとLレベルを繰り返すことになる。
【0068】
また、クロック信号φCがHレベルになると、インバータ75の出力信号はLレベル、NAND回路83の出力信号はHレベルとなり、クロック信号φCがLレベルになると、インバータ75の出力信号はHレベル、NAND回路83の出力信号はLレベルとなる。したがって、スイッチ制御信号φ1は、図11(H)に示すようにアクティブ、即ち、Hレベルがスイッチ制御信号φ4と重ならないように、HレベルとLレベルを繰り返すことになる。
【0069】
図14はスイッチ制御回路57の動作を説明するための回路図であり、キャリブレーション指示信号φRESがHレベル、粗調/微調制御信号φSがHレベルの場合を示している。この場合、NAND回路85〜88は、それぞれNAND回路81〜84の出力信号に対してインバータとして機能する。
【0070】
また、フリップフロップ73は、NAND回路80の出力信号に同期して粗調/微調制御信号φSを取り込むが、粗調/微調制御信号φSはHレベルであるので、フリップフロップ73の出力信号はHレベルに固定される。この結果、NAND回路81はNAND回路80の出力信号に対してインバータとして機能し、NAND回路84は、インバータ75の出力信号に対してインバータとして機能する。
【0071】
また、クロック信号φCがHレベルになると、NAND回路80の出力信号はHレベル、NAND回路81、82の出力信号はLレベルとなり、クロック信号φCがLレベルになると、NAND回路80の出力信号はLレベル、NAND回路81、82の出力信号はHレベルとなる。したがって、スイッチ制御信号φ2、φ4は、図11(G)、(E)に示すようにアクティブ、即ち、HレベルとLレベルを繰り返す同相の信号となる。
【0072】
また、クロック信号φCがHレベルになると、インバータ75の出力信号はLレベル、NAND回路83、84の出力信号はHレベルとなり、クロック信号φCがLレベルになると、インバータ75の出力信号はHレベル、NAND回路83、84の出力信号はLレベルとなる。したがって、スイッチ制御信号φ1、φ3は、図11(H)、(F)に示すようにアクティブ、即ち、Hレベルがスイッチ制御信号φ2、φ4と重ならないように、HレベルとLレベルを繰り返す同相の信号なる。
【0073】
図15はキャリブレーション回路50の構成を示す回路図である。キャリブレーション回路50は、キャリブレーション用のPMOSトランジスタ105と、スイッチトキャパシタ回路106と、スイッチ制御回路107を備えている。
【0074】
PMOSトランジスタ105は、そのドレイン側にキャリブレーション用の電流を出力するものであり、ソースを電源電圧入力ノード108に接続し、ドレインをキャリブレーション用電流出力ノード109に接続している。なお、電源電圧入力ノード108はVDD電源に接続され、キャリブレーション用電流出力ノード109はノード51に接続される。
【0075】
スイッチトキャパシタ回路106は、負帰還用ノード110とPMOSトランジスタ105のゲートとの間に、スイッチ111〜114をそれぞれの一方のノードが負帰還用ノード110側、他方のノードがPMOSトランジスタ105のゲート側となるように直列接続すると共に、これらスイッチ111〜114の他方のノードと接地との間にキャパシタ115〜118を接続して構成されている。
【0076】
キャパシタ115の容量値はキャパシタ65と同一、キャパシタ116の容量値はキャパシタ66と同一、キャパシタ117の容量値はキャパシタ67と同一、キャパシタ118の容量値はキャパシタ68と同一とされる。なお、負帰還用ノード110はインバータ47の出力端子に接続される。
【0077】
スイッチ111は、スイッチ制御信号φ8によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号φ8がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号φ8がLレベルの場合にはOFFとなる。スイッチ112は、スイッチ制御信号φ7によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号φ7がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号φ7がLレベルの場合にはOFFとなる。
【0078】
スイッチ113は、スイッチ制御信号φ6によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号φ6がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号φ6がLレベルの場合にはOFFとなる。スイッチ114は、スイッチ制御信号φ5によりON、OFFが制御され、スイッチ制御信号φ5がHレベルの場合にはON、スイッチ制御信号φ5がLレベルの場合にはOFFとなる。
【0079】
スイッチ制御回路107は、キャリブレーション指示信号入力ノード119、粗調/微調制御信号入力ノード120、クロック信号入力ノード121、電源電圧入力ノード108を介してキャリブレーション指示信号φRES、粗調/微調制御信号φS、クロック信号φC、電源電圧VDDを入力し、スイッチ制御信号φ5〜φ8を生成するものである。
【0080】
図16はスイッチ制御回路107の構成を示す回路図である。スイッチ制御回路107は、フリップフロップ123と、インバータ124〜129と、NAND回路130〜138と、NOR回路139を備えており、フリップフロップ123は、フリップフロップ73と同様に構成されている。
【0081】
図17はスイッチ制御回路107の動作を示すタイミングチャートであり、(A)はキャリブレーション指示信号φRES、(B)はクロック信号φC、(C)は粗調/微調制御信号φS、(D)は正相比較判定信号Cop及び逆相比較判定信号Com、(E)はスイッチ制御信号φ8、(F)はスイッチ制御信号φ7、(G)はスイッチ制御信号φ6、(H)はスイッチ制御信号φ5を示している。
【0082】
スイッチ制御回路107は、スイッチ制御回路57と同様に構成されているので、スイッチ制御信号φ1と同相のスイッチ制御信号φ5を生成し、スイッチ制御信号φ2と同相のスイッチ制御信号φ6を生成し、スイッチ制御信号φ3と同相のスイッチ制御信号φ7を生成し、スイッチ制御信号φ4と同相のスイッチ制御信号φ8を生成する。
【0083】
図18は本発明の電圧比較器の一実施形態の動作を示す図である。本発明の電圧比較器の一実施形態においては、アナログ入力電圧Vip>アナログ入力電圧Vimとし、キャリブレーション指示信号φRESをHレベルとすると、コンパレータ1では、PMOSトランジスタ43に流れる電流>PMOSトランジスタ42に流れる電流となる。
【0084】
この結果、クロック信号φCがLレベルとなり、スイッチ48がOFFになると、NMOSトランジスタ44、45による正帰還が働き、ノード51の電位は下降すると共に、ノード52の電位は上昇し、インバータ46が出力する正相比較判定信号CopはHレベル、インバータ47が出力する逆相比較判定信号ComはLレベルとなる。
【0085】
このように、逆相比較判定信号ComがLレベルになると、粗調/微調制御回路2では、フリップフロップ22の出力S22はLレベル、フリップフロップ23の出力S23はLレベル、EOR回路24の出力S24はLレベルとなり、粗調/微調制御信号φSはLレベルとなる。
【0086】
この結果、キャリブレーション回路49のスイッチ制御回路57は、スイッチ制御信号φ1、φ4をアクティブとし、スイッチ制御信号φ2、φ3をHレベルに固定すると共に、キャリブレーション回路50のスイッチ制御回路107は、スイッチ制御信号φ5、φ8をアクティブとし、スイッチ制御信号φ6、φ7をHレベルに固定する。
【0087】
この結果、キャリブレーション回路49では、スイッチ62、63はON固定となり、スイッチ61、64は、交互にON、OFF動作を繰り返すことになる。また、キャリブレーション回路50では、スイッチ112、113はON固定となり、スイッチ111、114は、交互にON、OFF動作を繰り返すことになる。
【0088】
したがって、この場合には、キャリブレーション回路49はキャパシタ65〜67を並列接続して使用すると共に、キャリブレーション回路50はキャパシタ115〜117を並列接続して使用することになるので、キャリブレーション回路49、50における負帰還は精度の低いものとなる。即ち、この場合には、キャリブレーション回路49、50はアナログ入力電圧Vip、Vimに対して粗調によるオフセット・キャリブレーションを実行することになる。
【0089】
そして、キャリブレーション回路49、50は、粗調/微調制御回路2内のフリップフロップ22の出力信号S22のレベル及びフリップフロップ23の出力信号S23のレベルがLレベルである間、アナログ入力電圧Vip、Vimに対して粗調によるオフセット・キャリブレーションを続行する。
【0090】
ここで、キャパシタ65、115の容量値をC4、キャパシタ66、116の容量値をC3、キャパシタ67、117の容量値をC2、キャパシタ68、118の容量値をC1、正相比較判定信号Copの電圧をVop、逆相比較判定信号Comの電圧をVom、PMOSトランジスタ55のゲート電圧をVg55、PMOSトランジスタ105のゲート電圧をVg105とする。
【0091】
すると、粗調によるオフセット・キャリブレーション時には、正相比較判定信号Copの電圧VopのPMOSトランジスタ55のゲートへの帰還量ΔV55は、ΔV55=(C4+C3+C2)(Vop−Vg55)/(C4+C3+C2+C1)となり、逆相比較判定信号Comの電圧VomのPMOSトランジスタ105のゲートへの帰還量ΔV105は、ΔV105=(C4+C3+C2)(Vom−Vg105)/(C4+C3+C2+C1)となる。
【0092】
その後、粗調によるオフセット・キャリブレーションの結果、コンパレータ1内では、PMOSトランジスタ55に流れる電流が減少し、PMOSトランジスタ105に流れる電流が増加するので、ノード51の電位が上昇し、ノード52の電位が下降する。この結果、正相比較判定信号CopはHレベルからLレベルに反転し、逆相比較判定信号ComはLレベルからHレベルに反転する。
【0093】
このように、逆相比較判定信号ComがHレベルとなると、粗調/微調制御回路2においては、フリップフロップ22の出力S22はHレベルになるが、この時点では、フリップフロップ23の出力信号S23はLレベルであるから、EOR回路24の出力信号S24はHレベルとなり、フリップフロップ25はEOR回路24が出力するHレベル信号を取り込み、粗調/微調制御信号φSをHレベルとする。
【0094】
この結果、キャリブレーション回路49においては、スイッチ制御信号φ1〜φ4がアクティブとなり、スイッチ61〜64は、隣り合うスイッチが同時にONとならないようにON、OFF動作を繰り返すと共に、キャリブレーション回路50においては、スイッチ制御信号φ5〜φ8がアクティブとなり、スイッチ111〜114は、隣り合うスイッチが同時にONとならないようにON、OFF動作を繰り返す。
【0095】
したがって、スイッチトキャパシタ回路56、106における電荷転送は細かいものになるので、キャリブレーション回路49、50における負帰還は精度の高いものとなる。即ち、この場合には、キャリブレーション回路49、50は、アナログ入力電圧Vip、Vimに対して微調によるオフセット・キャリブレーションを実行することになる。
【0096】
ここで、微調によるオフセット・キャリブレーション時には、正相比較判定信号Copの電圧VopのPMOSトランジスタ55のゲートへの帰還量ΔV55は、ΔV55=C4×C3×C2(Vop−Vg55)/{(C4+C3)(C3+C2)(C2+C1)}となり、逆相比較判定信号Comの電圧VomのPMOSトランジスタ105のゲートへの帰還量ΔV105は、ΔV105=C4×C3×C2×(Vom−Vg105)/{(C4+C3)(C3+C2)(C2+C1)}となる。
【0097】
そして、オフセット・キャリブレーションを一定時間実行すると、PMOSトランジスタ55のゲート電圧Vg55が略一定値に収束すると共に、PMOSトランジスタ105のゲート電圧Vg105が略一定値に収束するので、キャリブレーション指示信号φRESをLレベルとすると、スイッチ制御回路57は、スイッチ制御信号φ1〜φ4をLレベルに固定し、スイッチ制御回路107は、スイッチ制御信号φ5〜φ8をLレベルに固定する。
【0098】
この結果、オフセット・キャリブレーションは終了し、コンパレータ1は、オフセットをキャンセルし、キャパシタ68、118の蓄積電荷により、コンパレータ1自身の閾値電圧を記憶することになる。したがって、その後、オフセットをキャンセルした状態において、アナログ入力電圧について、比較動作を行うことができる。
【0099】
図19はアナログ入力電圧Vip>アナログ入力電圧Vimとし、キャリブレーション指示信号φRESをHレベルとした場合のキャリブレーション回路50内のPMOSトランジスタ105のゲート電圧Vg105の変化を示す図である。但し、C1:C2:C3:C4=100:5:10:1とした場合である。
【0100】
ここで、PMOSトランジスタ55、105のゲート電圧Vg55、Vg105が変換されるサイクルを変換サイクルとすると、図19に示す例では、7変換サイクルまでは、粗調によるオフセット・キャリブレーションが実行されており、この粗調によるオフセット・キャリブレーションの結果、逆相比較判定信号Comの論理が反転し、キャリブレーション・モードが微調によるオフセット・キャリブレーションに切り替えられている。
【0101】
以上のように、本発明の電圧比較器の一実施形態においては、アナログ入力電圧Vip>アナログ入力電圧Vimとし、キャリブレーション指示信号φRESをHレベルとする場合には、通常の比較動作時と同一タイミングで、コンパレータ1のオフセット・キャリブレーションを実行することができる。
【0102】
しかも、逆相比較判定信号ComがLレベルの間は、相対的にキャリブレーション精度は高くないが、相対的にキャリブレーション動作が速い、いわゆる粗調によるオフセット・キャリブレーションを実行でき、逆相比較判定信号ComがHレベルに反転するまでを高速に行うことができる。
【0103】
そして、逆相比較判定信号ComがHレベルに反転すると、その後は、逆相比較判定信号Comの論理の反転に関係なく、相対的にキャリブレーション動作は速くないが、相対的にキャリブレーション精度が高い、いわゆる微調によるオフセット・キャリブレーションを実行することができる。
【0104】
したがって、本発明の電圧比較器の一実施形態によれば、コンパレータ1のオフセット・キャリブレーションをキャリブレーション期間を犠牲にすることなく、高精度に実現することができる。即ち、粗調によるオフセット・キャリブレーションを高速に行い、その後は、微調によるオフセット・キャリブレーションを行うことにより、短時間で高精度のオフセット・キャリブレーションを行うことができる。更に連続して複数サイクルの帰還を実行する場合には、リーク等による変動に対して、幅広く、かつ、高精度に補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の電圧比較器の一実施形態の要部を示す回路図である。
【図2】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるフリップフロップの構成を示す回路図である。
【図3】本発明の電圧比較器の一実施形態におけるコンパレータの比較動作タイミング及びリセット動作タイミングと、フリップフロップの取り込み動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の電圧比較器の一実施形態が備える粗調/微調制御回路の構成を示す回路図である。
【図5】本発明の電圧比較器の一実施形態が備える粗調/微調制御回路内のフリップフロップの構成を示す回路図である。
【図6】本発明の電圧比較器の一実施形態が備える粗調/微調制御回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータの構成を示す回路図である。
【図8】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータ内の一方のキャリブレーション回路の構成を示す回路図である。
【図9】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータ内の一方のキャリブレーション回路が備えるスイッチ制御回路の構成を示す回路図である。
【図10】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータ内の一方のキャリブレーション回路が備えるスイッチ制御回路内のフリップフロップの構成を示す回路図である。
【図11】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータ内の一方のキャリブレーション回路が備えるスイッチ制御回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図12】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータ内の一方のキャリブレーション回路が備えるスイッチ制御回路の動作を説明するための回路図である。
【図13】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータ内の一方のキャリブレーション回路が備えるスイッチ制御回路の動作を説明するための回路図である。
【図14】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータ内の一方のキャリブレーション回路が備えるスイッチ制御回路の動作を説明するための回路図である。
【図15】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータ内の他方のキャリブレーション回路の構成を示す回路図である。
【図16】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータ内の他方のキャリブレーション回路が備えるスイッチ制御回路の構成を示す回路図である。
【図17】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータ内の他方のキャリブレーション回路が備えるスイッチ制御回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図18】本発明の電圧比較器の一実施形態の動作を示す図である。
【図19】本発明の電圧比較器の一実施形態が備えるコンパレータ内の他方のキャリブレーション回路が備えるPMOSトランジスタのゲート電圧の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0106】
1…本発明のコンパレータの一実施形態
2…粗調/微調制御回路
3、4…フリップフロップ
7…取り込み部
8…取り込み制御部
9〜14…インバータ
15〜18…スイッチ
19、20…インバータ
22、23…フリップフロップ
24…EOR(排他的論理和)回路
25…フリップフロップ
27…取り込み部
28…取り込み制御部
29〜33…インバータ
34…NAND回路
35〜38…スイッチ
39、40…インバータ
42、43…PMOSトランジスタ
44、45…NMOSトランジスタ
46、47…インバータ
48…スイッチ
49、50…本発明のキャリブレーション回路の一実施形態
51、52…ノード
55、105…PMOSトランジスタ
56、106…スイッチトキャパシタ回路
57、107…スイッチ制御回路
58、108…電源電圧入力ノード
59、109…キャリブレーション用電流出力ノード
60、110…負帰還用ノード
61〜64、111〜114…スイッチ
65〜68、115〜118…キャパシタ
69、119…キャリブレーション指示信号入力ノード
70、120…粗調/微調制御信号入力ノード
71、121…クロック信号入力ノード
73、123…フリップフロップ
74〜79、124〜129…インバータ
80〜88、130〜138…NAND回路
89、139…NOR回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接続点と第2の接続点との間に直列接続された複数のスイッチと、該複数のスイッチの各々の前記第2の接続点側のノードと電源との間に接続された複数のキャパシタを有するスイッチトキャパシタ回路と、
前記複数のスイッチを制御するスイッチ制御回路と
を有し、
前記スイッチ制御回路は、第1のモード時は、前記複数のスイッチ中の所定のスイッチをオンとし、前記所定のスイッチをのぞく残りのスイッチ中の隣り合うスイッチが同時にオンとならないように前記残りのスイッチにオン、オフ動作を繰り返し、第2のモード時は、前記複数のスイッチ中の隣り合うスイッチが同時にオンとならないように前記複数のスイッチにオン、オフ動作を繰り返し、第3のモード時は、前記複数のスイッチをオフとするスイッチ制御回路である
ことを特徴とするキャパシタ回路。
【請求項2】
ソースを第3の接続点に接続し、ドレインを第4の接続点に接続したキャリブレーショントランジスタと、
前記第1の接続点を第5の接続点に接続し、前記第2の接続点を前記キャリブレーショントランジスタのゲートに接続した請求項1に記載のキャパシタ回路を備える
ことを特徴とするキャリブレーション回路。
【請求項3】
ゲートを第1のアナログ電圧入力端子に接続し、ソースを第1の電源に接続した第1導電型の第1のトランジスタと、
ゲートを第2のアナログ電圧入力端子に接続し、ソースを前記第1の電源に接続した第1導電型の第2のトランジスタと、
ドレインを前記第1のトランジスタのドレインに接続し、ゲートを前記第2のトランジスタのドレインに接続し、ソースを第2の電源に接続した第2導電型の第3のトランジスタと、
ドレインを前記第2のトランジスタのドレインに接続し、ゲートを前記第1のトランジスタのドレインに接続し、ソースを前記第2の電源に接続した第2導電型の第4のトランジスタを少なくとも有し、
入力端子を前記第1のトランジスタのドレイン又は前記第3のトランジスタのドレインのいずれかに接続し、出力端子を第1の比較判定信号出力端子に接続した第1のインバータと、
入力端子を前記第2のトランジスタのドレイン又は前記第4のトランジスタのドレインのいずれかに接続し、出力端子を第2の比較判定信号出力端子に接続した第2のインバータと、
前記第3の接続点を前記第1のトランジスタのソースに接続し、前記第4の接続点を前記第1のトランジスタのドレインに接続し、前記第5の接続点を前記第2の比較判定信号出力端子に接続した第1の請求項2に記載のキャリブレーション回路と、
前記第3の接続点を前記第2のトランジスタのソースに接続し、前記第4の接続点を前記第2のトランジスタのドレインに接続し、前記第5の接続点を前記第1の比較判定信号出力端子に接続した第2の請求項2に記載のキャリブレーション回路を備える
ことを特徴とするコンパレータ。
【請求項4】
請求項3に記載のコンパレータと、
請求項3に記載のコンパレータが前記第2の比較判定信号出力端子に出力する比較判定信号の論理を監視し、キャリブレーション開始時には、請求項3に記載のコンパレータを前記第1のモードに設定し、その後、前記比較判定信号の論理が反転した場合には、請求項3に記載のコンパレータを前記第2のモードに設定する制御回路を備える
ことを特徴とする電圧比較器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−236281(P2008−236281A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71798(P2007−71798)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】