説明

キャビティ付き超小型パッケージ基板の製造方法

【課題】グリーンシート等の基板にキャビティパンチを行わずにキャビティを形成する超小型パッケージ基板の製造方法の提供。
【解決手段】(a)焼成済みLTCC基板またはLTCC基板用グリーンシートもしくはその積層体にキャビティ部に相当する厚みにレジストパターン膜を形成する工程、(b)前記レジスト膜上に、LTCC基板材料からなるペーストを塗布し、乾燥・硬化する工程、(c)研磨処理を行いレジストを表面に露出させる工程、(d)剥離剤でレジストを除去する工程、(e)焼成工程、(f)基板表面を研磨して、土手の平坦性及びキャビティの高さを調整する工程を含む超小型パッケージ基板の製造方法、超小型パッケージ基板、シリコンウエハ実装基板、その製造方法、MEMS素子、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハレベル実装用の半導体やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)用途等のキャビテイ付き超小型パッケージ基板の製造方法に関する。さらに詳しく言えば、振動子やセンサー用のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子が形成されたシリコンウエハと陽極接合可能な超小型パッケージ基板の製造方法、その方法で製造される陽極接合可能な超小型パッケージ基板、その基板とMEMS素子が形成されたシリコンウエハとを陽極接合してなるシリコンウエハ実装基板とその製造方法、及び前記シリコンウエハ実装基板をダイシングして得られるMEMS素子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの小型化が進み、従来の個片パッケージを用いた製造方法は、パッケージの製造だけでなく実装および検査でも非常に困難となってきている。これを打開する方法としてウエハレベル実装が考えられている。ウエハレベル実装することにより、ウエハ単位での実装と検査そしてダイシングによる個片化に至る工程が大幅に簡略化され、容易になる。
【0003】
ウエハレベル実装用の基板材料としては、HTCC(High Temperature Co-fired Ceramics)基板、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板、プリント配線基板、シリコン貫通配線基板、ガラス貫通配線基板が考えられる。ウエハレベルのような6インチφ程度の大きな基板とシリコンで製造されたデバイスウエハとを接合する場合、熱膨張係数の整合がまず重要である。シリコンの熱膨張係数は3.3ppm/℃程度であるが、HTCCC基板及びプリント配線基板の熱膨張係数は約7.2ppm/℃及び16ppm/℃で、大きな差がある。LTCCも一般的な材料の熱膨張係数は5ppm/℃以上のものが殆どである。このように熱膨張係数に差があると、接合時の電極の位置の不整合や反りが発生してしまう。このため、ウエハレベル実装パッケージでは、熱膨張係数がシリコンと整合したシリコン貫通配線基板やガラス貫通配線基板が使われている。しかし、これらの材料は表から裏にかけての垂直な貫通配線構造しかとれないために設計自由度にかけるだけでなく、貫通配線を形成する工程が複雑でコストも高くなる。
【0004】
こうした事情から、容易に多層配線やキャビティが形成できるLTCC基板で、シリコンと熱膨張係数が整合した材料の開発が求められている。
【0005】
シリコンとの接合技術は基板開発には欠かせない重要事項である。LTCCへの封止技術として従来の半導体や圧電体用途では、Au/Sn共晶半田、低融点ガラス、樹脂など介在物を介した方法がとられてきた。これらの方法は、表面平滑性をそれほど必要とせず低コストで実装できる。欠点は封止用シールリングと回路電極との間にある程度のスペースが必要であることや、アウトガスなどの悪影響がないように配慮する必要があることなどである。
【0006】
陽極接合と呼ばれるシリコンとガラス基板とを接着層を介さず接合する方法がある。この方法は簡便な装置で接合でき、信頼性も高いことから、MEMSの圧力センサ、真空センサ、角速度センサ、高周波スィッチなどで実用化されている。例えば、400℃程度に加熱した状態で600V(DC)程度の電圧をかけると、ガラス成分中のアルカリ金属が電離し陰極側に移動する。非架橋酸素イオンが発生し、これがシリコン原子と静電的に引き合い共有結合することで、強固な接合が得られると考えられている。熱源と電源からなる簡易な構造の装置で、介在物を必要せずに0.1mm程度の狭い幅のキャビティ土手でも、歩留まりと信頼性が高い接合ができるのでウエハレベル実装の接合技術として好ましい。本発明者らは、先にシリコンと熱膨張係数が整合し、陽極接合できる多層貫通配線LTCC基板を開発し、特許出願している(特許文献1:特開2009−280417号公報、特許文献2:特開2010−37165号公報等)。
【0007】
このLTCC基板で1mm角程度のキャビティ付きパッケージが多数個形成された基板の開発が求められている。従来のキャビティ付きパッケージの製造工程は図1に示すように、金型等でキャビティ部5をパンチした所定の大きさのグリーンシートを表層(キャビティー層)6とし(図1(A))、表層のキャビティ部に対応する箇所に上下の導通を確保するビア7をパンチし((図1(B))、ビアの穴への導体充填と、所定パターンの配線を印刷した配線層8を形成し((図1(C))、配線層を数層積層して圧力を加え((図1(D))、所定の形状に加工し、焼成工程を経て製造される(最終製品の平面図(E)、側断面図(F))。
【0008】
1mm角程度のパッケージがグリーンシート中に多数個とりこまれた製品の場合、各パッケージのキャビティ間の土手幅は0.4mm程度と非常に狭い。また、数多くのキャビティがグリーンシートにパンチされるため、穴だらけで変形しやすく、キャビティパンチの際キャビティ土手の切れが発生しやすくなり、パンチした後のシートのハンドリングも非常に困難となる。このため、製造が容易で歩留まりのよいキャビティ付超小型パッケージ基板の新しい製造方法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−280417号公報
【特許文献2】特開2010−37165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、狭いキャビティ土手で超小型パッケージが多数個取りされたキャビティ付超小型パッケージ基板のキャビティを安定した状態で形成することができ、かつMEMS素子が形成されたシリコンウエハとLTCC基板を歩留まり良く製造することができる方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題に鑑み、グリーンシートにキャビテイパンチを行なわずにキャビティを形成する方法について鋭意検討した。その結果、本発明者らが開発した、耐水性のあるLTCC基板用グリーンシートもしくは焼成済のLTCC基板に感光性レジストでキャビティパターンを形成し、その上にLTCC基板用ペースト(セラミックペースト)をかぶせ、レジスト間のキャビティ土手にあたる部分にペーストを流し込み、セラミックペーストを乾燥・硬化した後、研磨によりレジストを露出させて、これを除去すれば、容易に歩留まりよくキャビティ付き超小型パッケージ基板が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のキャビティ付き超小型パッケージ基板の製造方法、超小型パッケージ基板、シリコンウエハ実装用基板、その製造方法、MEMS素子、及びその製造方法に関する。
1.(a)LTCC基板にキャビティ部に相当する厚みにレジストパターン膜を形成する工程、(b)前記レジスト膜上に、LTCC基板材料からなるペースト(セラミックペースト)を塗布し、乾燥・硬化する工程、(c)研磨処理を行いレジストを表面に露出する工程、(d)剥離剤でレジストを除去する工程、(e)焼成工程、及び(f)基板表面を研磨して、土手の平坦性及びキャビティの高さを調整する工程を含むことを特徴とする超小型パッケージ基板の製造方法。
2.(a)LTCC基板にキャビティ部に相当する厚みにレジストパターン膜を形成する工程、(b)前記レジスト膜上に、LTCC基板材料からなるペースト(セラミックペースト)をレジスト開口部の露出が確保される状態に塗布し、乾燥・硬化する工程、(d)剥離剤でレジストを除去する工程、(e)焼成工程、及び(f)基板表面を研磨して、土手の平坦性及びキャビティの高さを調整する工程を含むことを特徴とする超小型パッケージ基板の製造方法。
3.(a)LTCC基板用グリーンシートまたはその積層体にキャビティ部に相当する厚みにレジストパターン膜を形成する工程、(b)前記レジスト膜上に、LTCC基板材料からなるペースト(セラミックペースト)を塗布し、乾燥・硬化する工程、(c)研磨処理を行いレジストを表面に露出させる工程、(d)剥離剤でレジストを除去する工程、(e)積層プレス工程、(f)焼成工程、及び(g)基板表面を研磨して、土手の平坦性及びキャビティの高さを調整する工程を含むことを特徴とする超小型パッケージ基板の製造方法。
4.(a)LTCC基板用グリーンシートまたはその積層体にキャビティ部に相当する厚みにレジストパターン膜を形成する工程、(b)前記レジスト膜上に、LTCC基板材料からなるペースト(セラミックペースト)をレジストに開口部の露出が確保される状態に塗布し、乾燥・硬化する工程、(d)剥離剤でレジストを除去する工程、(e)積層プレス工程、(f)焼成工程、及び(g)基板表面を研磨して、土手の平坦性及びキャビティの高さを調整する工程を含むことを特徴とする超小型パッケージ基板の製造方法。
【0013】
5.前記(b)工程と(c)工程の間に、(h)脱気及び/または加圧処理工程を含む前項1〜4のいずれかに記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
6.前記(d)工程後に(i)加圧処理工程を含む前項1〜4のいずれかに記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
7.(a)工程のレジストとして、感光性で、露光・現像後に重合反応が進行しないものを使用し、かつ(b)工程で熱硬化タイプのセラミックペーストを使用する前項1〜4のいずれかに記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
8.(a)工程のレジストとして、感光性で、露光・現像後に重合反応が進行するものを使用し、かつ(b)工程で常温硬化型または2液硬化型であって70℃以下で硬化するセラミックペーストを使用する前項1〜4のいずれかに記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
9.感光性で、露光・現像後に重合反応が進行しないレジストとして、ポリビニルアルコールと酢酸ビニル樹脂もしくは重合性のないアクリル樹脂からなるエマルジョンを用いる前項7に記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
10.陽極接合可能なLTCC基板またはLTCC基板用グリーンシート、及び陽極接合可能なLTCC基板材料からなるペーストを使用し、陽極接合可能な超小型パッケージ基板を製造する、前項1〜4のいずれかに記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
11.前項1〜9のいずれかに記載の方法で製造された超小型パッケージ基板。
12.前項10に記載の方法で製造された陽極接合可能な超小型パッケージ基板。
13.前項12に記載のLTCC基板とMEMS素子が形成されたシリコンウエハとを陽極接合してなるシリコンウエハ実装基板。
14.鏡面研磨した前項12に記載のLTCC基板をMEMS素子が形成されたシリコンウエハと陽極接合することを特徴とするシリコンウエハ実装基板の製造方法。
15.前項13に記載のシリコンウエハ実装基板をダイシングして得られるMEMS素子。
16.鏡面研磨した前項12に記載のLTCC基板をMEMS素子が形成されたシリコンウエハと陽極接合した後ダイシングすることを特徴とするMEMS素子の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、LTCC用グリーンシートにキャビティパンチを行わずにキャビティを形成することにより、1mm角程度のキャビティ付きパッケージが多数個形成された超小型パッケージ基板を容易に歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)〜(F)は従来のキャビティ付きパッケージの製造工程を示す。
【図2】(A)〜(F)は本発明の実施態様の1例の製造工程を示す。
【図3】(A)〜(G)は本発明の他の実施態様の製造工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の超小型パッケージ基板の製造方法を説明する。
図2(A)〜(F)は、焼成済LTCC基板に対してキャビティ土手を形成する本発明の超小型パッケージ基板の製造方法の工程を示す。
【0017】
先ず、焼成済みの厚みが200〜1000μmのLTCC基板1に、フォトリソグラフィー技術やスクリーン印刷等によりキャビティ部に相当する50〜300μm、好ましくは100〜200μmの厚みに感光性レジストパターン膜2を形成する(図2(A))。基板としては、本発明者らが開発した陽極接合可能なLTCC基板、すなわち、特許文献1(特開2009−280417号公報)及び特許文献2(特開2009−280417号公報)に開示したLTCC基板、さらには出願中の特願2010−104290号に記載の陽極接合可能なLTCC基板を使用することができる。感光性レジストとしては、露光・現像後に重合反応が進行するもの(ポリビニルアルコールとアクリル樹脂のエマルジョン等)、及び露光・現像後に重合反応が進行しないもの(ポリビニルアルコールと酢酸ビニル樹脂もしくは重合性のないアクリル樹脂からなるエマルジョン等)を使用することができる。ここで、「露光・現像後に重合反応が進行しない感光性レジスト」には、下記で説明する(d)工程において、剥離が可能な程度に重合する感光性レジストも含まれる。
【0018】
次に、その上にLTCC用セラミック材料からなるペースト(セラミックペースト)3をかぶせ、レジスト間のキャビティ土手にあたる部分にセラミックペーストを流し込み、セラミックペーストを乾燥・硬化させる(図2(B))。乾燥・硬化に先だって、ペーストがレジストパターンに沿って入り込み形状保持が可能になるように、脱気・加圧処理工程を実施してもよい。
【0019】
前記工程(A)で、レジストとして露光・現像後に重合反応が進行しないものを使用した場合は、セラミックペーストには熱硬化型のものが使える。また、レジストとして露光・現像後に重合反応が進行するものを使用した場合は、セラミックペーストは常温硬化型もしくは2液型のもので、感光性レジスト中の硬化性樹脂(ポリビニルアルコールとアクリル樹脂からなるエマルジョン等)が硬化する温度よりも低い温度である70℃、好ましくは50℃以下の温度で硬化するセラミックペーストを用いる。加熱条件は前者では100〜150℃、10〜30分、後者の場合には室温〜40℃、6〜24時間程度である。
【0020】
次にレジストが表面に露出するまで研磨紙等により研磨処理を行い(図2(C))、剥離剤で露出したレジストを溶解して除去する(図2(D))。剥離剤としては、過ヨウ素酸ナトリウムなどが使える。なお、次工程以降で外観上の問題がなければ剥離工程ではレジストは多少残っていても差し支えない。なお、ペースト塗布の際、若干レジストに開口部が形成されるようすればレジストを露出させる工程は必要ない。この後、セラミックペーストと基板との密着性をあげるために、加圧処理工程を実施してもよい。
【0021】
次に800〜900℃の程度の温度に1時間程度キープする焼成プロファイルで基板を焼成してキャビティ付き基板を構築する(図2(E))。この際の焼成によりキャビティの土手は焼成前の約60%程度に薄くなる。
【0022】
次に基板表面を研磨して、土手の平坦性及びキャビティの高さを調整する(図2(F))。陽極接合する場合には表面粗さ50nmRa以下、好ましくは5nmRa以下程度になるまで鏡面研磨加工する。
【0023】
図3(A)〜(G)は陽極接合可能なLTCC基板用グリーンシートまたはその積層体に対してキャビティ土手を形成する本発明の超小型パッケージ基板の製造方法の工程を示す。
【0024】
先ず、陽極接合可能なLTCC基板用グリーンシートまたはその積層体4にキャビティ部に相当する箇所にフォトリソグラフィー技術やスクリーン印刷等により50〜300μm、好ましくは100〜200μmの厚みに感光性レジストパターン膜2を形成する(図3(A))。LTCC基板用グリーンシートまたはその積層体、及び感光性レジストとしては、図2について述べたものが使用できる。
【0025】
次いで、その上にセラミックペースト3をかぶせ、レジスト間のキャビティ土手にあたる部分にセラミックペーストを流し込み、セラミックペーストを乾燥・硬化させる(図3(B))。乾燥・硬化に先だって、ペーストがレジストパターンに沿って入り込み形状保持が可能になるように、脱気・加圧処理工程を実施してもよい。
【0026】
(A)でレジストとして、露光・現像後に重合反応が進行しないものを使用した場合は、熱硬化型のセラミックペーストを使用し、露光・現像後に重合反応が進行するものを使用した場合は、常温硬化型もしくは2液型で、感光性レジスト中の硬化性樹脂(ポリビニルアルコールとアクリル樹脂からなるエマルジョン等)が硬化する温度よりも低い温度である70℃、好ましくは50℃以下の温度で硬化するセラミックペーストを用いる。加熱条件は前者では100〜150℃、10〜30分、後者の場合には室温〜40℃、6〜24時間程度である。
【0027】
次にレジストが表面に露出するまで研磨紙等により研磨処理を行う(図3(C))。
次に、焼成後の基板寸法を制御するために温水等方圧プレスなどを用いて均一に圧力をかける積層プレス工程を行い(図3(D))、露出した状態のレジストを剥離剤で溶解して除去する(図3(E))。剥離剤としては、過ヨウ素酸ナトリウムなどが使える。次工程以降で問題がなければ剥離工程ではレジストは多少残っていても差し支えない。なお、ペースト塗布の際、若干レジストに開口部が形成されるようすればレジストを露出させる工程は必要ではない。この後、セラミックペーストとグリーンシートとの密着性をあげるために、加圧処理工程を実施してもよい。
【0028】
次に800〜900℃の温度で1時間程度キープする焼成プロファイルで基板を焼成してキャビティ付き基板を構築する(図3(F))。この際の焼成によりキャビティの土手は焼成前の約30%程度薄くなる。次に基板表面を研磨して、土手の平坦性及びキャビティの高さを調整する(図3(G))。陽極接合する場合には表面粗さ50nmRa以下、好ましくは5nmRa以下程度になるまで鏡面研磨加工する。
【0029】
こうして得られた本発明の超小型パッケージ基板は、樹脂を介在物に用いるなどの方法によりMEMS素子が形成されたシリコンウエハと接合することもできるが、介在物を狭いキャビティ土手に形成することは難しく、介在物による封止空間内の汚染も心配される。陽極接合は介在物なしに、250〜450℃の比較的低い温度でMEMSとパッケージ基板を接合できるので、接合のための難しいプロセスがなく、歩留まりよく、高品質な製品を作ることができる。従って、本発明のキャビティ付き超小型パッケージの実装方式として、陽極接合が最適な実装方式である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は下記の例により限定されるものではない。
100mmφ焼成厚み0.5mmの陽極接合可能な貫通多層配線LTCC基板上に、厚み150μm程度の感光性レジストを形成した。1.3×1.1mm角の製品が多数個取りされたパターンで0.9mm×0.7mm角のキャビティを形成する部位が残るようにレジストの露光・現像を行った。このレジストはポリビニルアルコール(PVA)と酢酸ビニル樹脂のエマルジョンで、熱に対して反応しにくい組成のものを使用した。この基板にLTCC基板材料のセラミック粉末に熱硬化性のビヒクルを添加し混練したペーストを塗布し、100℃程度で乾燥した。ビヒクルはアクリル樹脂35質量%、溶剤(テルピネオール)65質量%からなるものを用いた。ナイロン製の真空包装袋に入れ真空脱気とシールを行い、温水ラミネータ中で90℃、50kg/cm2の条件で30分間加圧した。その後キャビティパターンが露出するまで基板を研磨し、レジストの剥離液でレジストを溶解・純水洗浄・乾燥した。セラミックペーストでキャビティが形成された状態の基板を、ナイロン製の真空包装袋に入れ真空脱気とシールを行い、温水ラミネータ中で90℃、50kg/cm2の条件で30分間加圧した後、基板を焼成した。製作した約0.6mm厚みのキャビティ付き焼成基板を約0.5mm厚みに鏡面研磨した。この基板に100φ厚み0.3mmのシリコン・デバイスウエハを400℃、600V(DC)印加の条件で陽極接合し気密封止した。その後ウエハ状態で各パッケージの検査を行ないダイシングすることで、1.2×1.0mm角と超小型な電子デバイスを製作した。
【符号の説明】
【0031】
1 LTCC基板
2 感光性レジストパターン膜
3 セラミックペースト
3a セラミック
4 LTCC基板用グリーンシート(積層体)
5 キャビティ部
6 キャビティ層
7 ビア
8 配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)LTCC基板にキャビティ部に相当する厚みにレジストパターン膜を形成する工程、(b)前記レジスト膜上に、LTCC基板材料からなるペースト(セラミックペースト)を塗布し、乾燥・硬化する工程、(c)研磨処理を行いレジストを表面に露出する工程、(d)剥離剤でレジストを除去する工程、(e)焼成工程、及び(f)基板表面を研磨して、土手の平坦性及びキャビティの高さを調整する工程を含むことを特徴とする超小型パッケージ基板の製造方法。
【請求項2】
(a)LTCC基板にキャビティ部に相当する厚みにレジストパターン膜を形成する工程、(b)前記レジスト膜上に、LTCC基板材料からなるペースト(セラミックペースト)をレジスト開口部の露出が確保される状態に塗布し、乾燥・硬化する工程、(d)剥離剤でレジストを除去する工程、(e)焼成工程、及び(f)基板表面を研磨して、土手の平坦性及びキャビティの高さを調整する工程を含むことを特徴とする超小型パッケージ基板の製造方法。
【請求項3】
(a)LTCC基板用グリーンシートまたはその積層体にキャビティ部に相当する厚みにレジストパターン膜を形成する工程、(b)前記レジスト膜上に、LTCC基板材料からなるペースト(セラミックペースト)を塗布し、乾燥・硬化する工程、(c)研磨処理を行いレジストを表面に露出させる工程、(d)剥離剤でレジストを除去する工程、(e)積層プレス工程、(f)焼成工程、及び(g)基板表面を研磨して、土手の平坦性及びキャビティの高さを調整する工程を含むことを特徴とする超小型パッケージ基板の製造方法。
【請求項4】
(a)LTCC基板用グリーンシートまたはその積層体にキャビティ部に相当する厚みにレジストパターン膜を形成する工程、(b)前記レジスト膜上に、LTCC基板材料からなるペースト(セラミックペースト)をレジストに開口部の露出が確保される状態に塗布し、乾燥・硬化する工程、(d)剥離剤でレジストを除去する工程、(e)積層プレス工程、(f)焼成工程、及び(g)基板表面を研磨して、土手の平坦性及びキャビティの高さを調整する工程を含むことを特徴とする超小型パッケージ基板の製造方法。
【請求項5】
前記(b)工程と(c)工程の間に、(h)脱気及び/または加圧処理工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
【請求項6】
前記(d)工程後に(i)加圧処理工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
【請求項7】
(a)工程のレジストとして、感光性で、露光・現像後に重合反応が進行しないものを使用し、かつ(b)工程で熱硬化タイプのセラミックペーストを使用する請求項1〜4のいずれかに記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
【請求項8】
(a)工程のレジストとして、感光性で、露光・現像後に重合反応が進行するものを使用し、かつ(b)工程で常温硬化型または2液硬化型であって70℃以下で硬化するセラミックペーストを使用する請求項1〜4のいずれかに記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
【請求項9】
感光性で、露光・現像後に重合反応が進行しないレジストとして、ポリビニルアルコールと酢酸ビニル樹脂もしくは重合性のないアクリル樹脂からなるエマルジョンを用いる請求項7に記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
【請求項10】
陽極接合可能なLTCC基板またはLTCC基板用グリーンシート、及び陽極接合可能なLTCC基板材料からなるペーストを使用し、陽極接合可能な超小型パッケージ基板を製造する、請求項1〜4のいずれかに記載の超小型パッケージ基板の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法で製造された超小型パッケージ基板。
【請求項12】
請求項10に記載の方法で製造された陽極接合可能な超小型パッケージ基板。
【請求項13】
請求項12に記載のLTCC基板とMEMS素子が形成されたシリコンウエハとを陽極接合してなるシリコンウエハ実装基板。
【請求項14】
鏡面研磨した請求項12に記載のLTCC基板をMEMS素子が形成されたシリコンウエハと陽極接合することを特徴とするシリコンウエハ実装基板の製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載のシリコンウエハ実装基板をダイシングして得られるMEMS素子。
【請求項16】
鏡面研磨した請求項12に記載のLTCC基板をMEMS素子が形成されたシリコンウエハと陽極接合した後ダイシングすることを特徴とするMEMS素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−23318(P2012−23318A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162228(P2010−162228)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(390010216)ニッコー株式会社 (49)
【Fターム(参考)】