説明

キャリヤーとしての非晶質金属塩を有する有効成分送達系

有効成分送達系であって、該系が、(i)有効成分、及び(ii)キャリヤー構成成分を含み、その際、該キャリヤー構成成分が、非晶質の金属塩を含有し、かつ有効成分が、該キャリヤー構成成分に少なくとも部分的に固定され、及び該キャリヤー構成成分によって部分的に封入される送達系。該有効成分は、苦い味がするフェノール、例えばフラボノイドであってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、有効成分のための送達系、該送達系の製造方法、及び苦味を隠すための該送達系の使用に関する。
【0002】
背景技術及び先行技術
食物、飲料及び薬物産業におけるある消耗生成物は、消費される製品の全ての風味効果に有害である苦味物質を含むことがよく知られている。これを扱うために、製造者は、不快な製品を隠す又はさらに除去するために、徹底的に行っている。
【0003】
その問題は、ポリフェノール、例えばクロロゲン酸ラクトン又はフラボノイドの存在が、消費者によって苦味の知覚を著しく与えることが信じられている、飲料、例えばビール、コーヒー、及び清涼飲料において特に深刻である。
【0004】
それにもかかわらず、食料品において見出されている多くのポリフェノール又はフラボノイドは、消費される場合に、いわゆる"遊離基"を除去する、又はヒト又は動物の遺伝子発現を調整する、かつ消費者に栄養又は健康の利益を提供する、有益な抗酸化剤である。フラボノイドの有益な効果のより詳細な理解のために、例えば、"Flavonoids:A review of probable mechanisms of action and potential applications"、Nijveldt et al、Am J Clin Nutr 2001;74:418−25を参照する。
【0005】
従って、それらの有益な効果に有害に作用することなく、かかる成分によって付与された望ましくない風味を隠す又はさもなければ抑制することが所望されうる。
【0006】
直接利益を受け取るために消費されうる、分離形、例えば栄養サプリメントでそれらを提供するように、それらの有益な成分を食料から抽出することも公知である。しかしながら、濃縮型において、製品の苦味による消費者拒否の危険が、さらにより深刻である。
【0007】
かかる製品のために、著しく低減された又はさらに完全に除去された不快な苦味の知覚を有するより美味しい形でそれらを提供することも所望されうる。
【0008】
かかる有効成分に関する他の問題は、それらが酸化に対して高い感受性があることである。従って、かかる劣化から有効成分を保護することができる系を提供することも所望されうる。
【0009】
JP 2003−128664号は、苦味の低減のために、相応するナトリウム、カルシウム、マグネシウム又はカリウム塩にポリフェノールを中和することを記載している。この方法は、飲み物(例えば茶)の外観を劇的に変化する大きい粒子を形成し、かつ望ましくない沈降物でさえもたらす。
【0010】
JP 2003−366456号(Taiyo Kagaku KK)において、飲料及び食品における苦味並びに渋味は、カゼインの付加によって減少されるべきであると述べている。
【0011】
JP 04−103771号(Unitika KK)において、茶抽出物は、苦味及び渋味を除去するために茶とキチンとの配合によって製造される。
【0012】
US−A1−2002/0188019号(Bayer Corporation)は、苦味又は金属味の感覚を隠すために述べられている一定のヒドロキシフラバノンを含有する配合物を記載している。
【0013】
US−A−5741505号(Mars)は、酸素障壁を提供して、食品及び医薬品の貯蔵寿命を増大する無機被覆を使用することを記載している。該被覆は、封入された製品と相互作用しない。
【0014】
US 2004/0180097号(Lin et al)は、多孔質アパタイト粒を含有する安定な及び/又は味を隠した医薬品投与形、並びにその孔中で閉じこめられた薬剤に関する。その製品は、典型的にスラリーの形で、空の多孔質アパタイト粒とその薬剤の溶液とを接触し、及び該多孔質アパタイト粒中で薬剤を閉じこめるための溶液の溶剤を蒸発することによって形成される。従って、それらは、その顆粒の表面で、又はその表面の近くで、高濃度の薬剤であってよく、その際その顆粒と封入された薬剤とは、殆ど又は全く錯化していない。
【0015】
最終的に、液体有効成分、例えばガーリックオイルが、透明な殻中で封入される、公衆に対して利用可能な非常に多くの製品がある。それらのカプセルは、非常に大きく、典型的に5〜10mmまでの直径を有する。
【0016】
せいぜい、裸眼で辛うじて目視できる直径を有する粒子を提供することも所望されうる。さらに、かかる粒子は、知覚できる粒子の存在が所望されない場合に、製品、例えば飲料中に取り込むために好適である。例えば、茶は、たいてい透明な飲み物(場合によりミルクを添加する前)として存在し、かつそれらの中で認識できる粒子の存在は、消費者アピールに有害でありうる。
【0017】
種々の研究は、例えばポリフェノールによる健康に対する有益な効果が、消化系への無傷の活性の送達によって増加されうることも示している。
【0018】
従って、放出が、胃もしくは消化系において存在する身体的な条件によって誘発され、しかし従来の貯蔵中に、又は口腔において存在しない方法で、有効成分を保護することが所望される。
【0019】
本発明は、1つ以上の前述の問題に取り組むこと、及び/又は1つ以上の前述の利益を提供することに努める。
【0020】
本発明の概要
従って、本発明は、有効成分送達系を提供し、該系は、
(i)有効成分、及び
(ii)キャリヤー構成成分
を含み、その際、該キャリヤー構成成分は、非晶質の金属塩を含有し、かつ有効成分は、少なくとも部分的に該キャリヤー構成成分に固定され、及び該キャリヤー構成成分によって部分的に封入される。
【0021】
本発明は、
(i)金属イオンの第一の源を提供する工程、
(ii)アニオン対イオンの第二の異なる源を提供する工程、(iii)有効成分の第三の異なる源を提供する工程、
(iv)混合域中で前記の3つの源を合する工程、及び
(v)該混合域中で混合工程を実施する工程
を含む有効成分送達系を製造する方法も提供し、こうしてキャリヤー構成成分における有効成分を部分的に固定、及び部分的に封入する。
【0022】
他の観点において、本発明は、前記で定義されているようなキャリヤー材料の使用を提供して、前記で定義された有効成分によって消費者の苦味の知覚を隠す、阻害する、又はそうでなければ低減する。
【0023】
さらに他の観点において、本発明は、前記で定義された送達系を含有する食物又は飲料製品を提供する。
【0024】
さらに他の観点において、本発明は、前記で定義された送達系を含有する栄養製品、機能性食品、又は医薬品を提供する。
【0025】
本発明の詳細な説明
本発明は、非晶質の金属塩を含有するキャリヤー構成成分を含む送達系製品に関する。理論により束縛されることを望むことなしに、前記金属塩は、ハイブリッド固定封入剤として作用し、その結果有効成分は、部分的に反応し、かつ部分的にそれらの中で包埋される。
【0026】
封入の当業者によって既に理解されうるように、ハイブリッドキャリヤー構成成分は、従来の封入製品とは全体的に異なる。それというのも、それは、たいてい、有効成分を完全に取り囲む封入殻(いわゆる"コア−シェル"配置)、又は封入された製品が分類されているマトリックス(例えばUS 3704137号を参照)を含むからである。
【0027】
前記のハイブリッドキャリヤー構成成分が、消化管における機械的デフラグメンテーションによって、及び/又は胃におけるpH変化によって、有効成分の放出も可能にし、そして、そのままで、それらが最も効果的である場合に、有効成分、例えば栄養又は健康製品を送達するための有用な機構を提供することが見出されている。
【0028】
前記の有効成分送達系は、コロイド状のハイブリッドの形であってよい。
【0029】
かかるコロイド状ハイブリッドが、大きな比表面積を有することが見出されている。これは、その条件が封入された成分を放出するために好適である場合に(例えば胃における酸性のpHによって)、キャリヤー構成成分の破裂/溶解を加速し、そしてより急速に所望の位置で生じるための有効成分の放出を容易にする、利用可能な反応表面積があるために、利点である。
【0030】
キャリヤー構成成分
キャリヤー構成成分は、非晶質の金属塩を含む。
【0031】
非晶質の金属塩に関する場合に、"キャリヤー構成成分"と言う句は、本明細書において、簡潔のために使用され、有効成分の固定と封入の双方を可能にする材料を意味する。
【0032】
"固定"によって、該キャリヤーは、有利には、有効成分で、結合、例えば錯体を形成することを意味する。もちろん、他のタイプの結合は、当業者によって認識されてよいが、錯化が好ましい。
【0033】
"封入"によって、該キャリヤー構成成分は、少なくとも部分的に、有効成分の周りに、保護層又は殻を形成することを意味する。
【0034】
有効成分を固定及び封入することによって、キャリヤーが多孔質であり、かつ該有効成分が孔中で簡単に閉じこめられる場合に予想されうる不均一分布とは異なり、該成分は、キャリヤー中に均一に分布されることが考えられる。後者の場合、該有効成分は、該キャリヤーの表面で、又は該キャリヤーの表面の近くで連結されることを予想される。
【0035】
前記の金属塩は、非晶質構造を有する。本明細書において定義される"非晶質"は、少なくとも部分的に非結晶(すなわち、大部分の化合物が、明確な結晶構造を欠く)を意味するために使用される。
【0036】
従って、ハイブリッドキャリヤー構成成分として使用される非晶質の金属塩は、それら材料の全体の物理学的特徴に対して、又はそれらが提供する高められた錯化−封入の利益に対して、有意義な効果なしに許容されうる大量の微晶質物質を含んでよいことが理解されるべきである。
【0037】
本発明の記載内容において、金属塩は、金属塩が、無機塩の全質量に対して、約50質量%未満、有利には約40質量%未満、より有利には約30質量%未満、さらにより有利には10質量%未満、最も有利には5%未満、例えば2質量%未満の結晶材料を含有する場合に、非晶質である。
【0038】
該金属塩は、有利には、実質的に水不溶性である。"実質的に水不溶性"は、20℃で及びpH3〜7で測定される場合に、10-3g/cc未満、より有利には10-4g/cc未満、及び最も有利には10-5g/cc未満の溶解性を意味するとして本明細書において定義される。
【0039】
従って、該金属塩は、有利には、典型的に貯蔵中に生じるpHで固体の形である。
【0040】
有利には、該金属塩は、酸性pHで可溶性である。より有利には、前記の無機塩は、37℃で及びpH2以下で測定される場合に、10-3g/ccより高い、より有利には10-2g/ccより高い、及び最も有利には10-1g/ccより高い溶解性を有する。
【0041】
言い換えれば、典型的に消費者の内部の胃で見出されるpHは、キャリヤー構成成分の破裂/溶解、及びそれらに封入された有効成分の偶発の放出を生じる。
【0042】
ハイブリッドキャリヤー構成成分における使用のために好適な金属カチオンの例は、カルシウム、マグネシウム、鉄(II)、鉄(III)、亜鉛又はそれらの混合物を含む。
【0043】
より有利には、該金属カチオンは、カルシウム(II)、マグネシウム(II)、又はそれらの混合物のいずれかである。最も有利には、該金属カチオンは、カルシウム(II)である。
【0044】
ハイブリッドキャリヤー構成成分における使用のために好適なアニオン対イオンの例は、リン酸塩及びカルボン酸塩を含む。
【0045】
好ましい対イオンは、リン酸塩であり、それというのも、リン酸塩は、該塩と封入される材料との結合を容易にする疎水性分裂面を有する非晶質の金属塩を生じることが見出されているからである。
【0046】
非晶質のリン酸カルシウム(本明細書において"ACAP"と言う)は、最も好ましい金属塩である。それは、高いコロイド安定性を有する中性pHで製造されうる粒子の水不溶性及び酸可溶性の塩である。これは、前記で挙げられる、コロイドハイブリッドの利益を提供する。
【0047】
ACAPは、pH条件に依存して、水酸化物イオンの包含で、及びその構造におけるプロトンで沈澱し、その際、中性点は、典型的にpH4.5である。従って、約pH7での標準条件下で、典型的にヒドロキシアパタイトである非晶質の金属中間物が、沈澱される。
【0048】
ACAPは、混合域に入る相対的な反応物流に依存して、カルシウムイオンが豊富又はリン酸イオンが豊富であってもよい。
【0049】
大部分の装填ミスマッチは、ヒドロキシル基又はプロトンによってそれぞれ平衡される。化学量論に対するこの不感受性は、粒子サイズ、屈折率、沈殿物における残留水の量、並びに調整されるべき機械可塑性を可能にする、ACAPに対する莫大な構造の自由度を提供する。
【0050】
カルシウムイオンとリン酸イオンとのモル比は、有利には3:1〜1:3、より有利には2:1〜1:3、さらにより有利には1:1〜1:3、最も有利には1:1.5〜1:3である。
【0051】
前記のキャリヤーが、アニオンの過剰量を含有することが好ましい。それというのも、得られた負に電荷されたキャリヤーが、より高いコロイド溶解性を有し、かつ/又はより容易に水溶液調合物、例えば茶、コーヒー、清涼飲料及び興奮性飲料中で分散されるからである。
【0052】
使用のための非晶質の無機塩を含有するキャリヤー構成成分は、当業者に公知のあらゆる好適な方法で製造されうる。典型的に、それは、有効成分の結合及び封入と同時に現場で製造される。例えば、前記の送達系は、有効成分(例えばポリフェノール)を含有する溶液の存在下で、無機塩の沈殿によって製造されうる。
【0053】
水不溶性活性のために、該送達系は、無機塩と有効成分との共沈殿によって製造されうる。その沈殿は、典型的に、混合域中へ封入されるべきである金属カチオン、アニオン対イオン、及び有効材料の異なる源を導入すること、並びにこの領域中で生じる沈澱−封入過程をもたらすことによって実施される。
【0054】
追加の材料は、非晶質の金属塩と共に存在し、錯化キャリヤー材料を形成しうる。有機材料が、特に好ましい。例えば、炭水化物、例えばマルトデキストリン、シクロデキストリン、及び化学的に改質されたデンプンも、存在してよく、錯化キャリヤー材料を形成する。
【0055】
有効成分
前記有効成分は、固定すること及び封入することが所望される、あらゆる化合物又は組成物でありうる。
【0056】
それにもかかわらず、本発明は、望ましくない風味を隠すが、一方で消費者の消化管又は胃における放出のためにそれらが完全な状態で送達されることを可能にする点で、驚くべきことによく作用することが示されている。
【0057】
特に、前記のハイブリッドキャリヤー構成成分は、苦味又は渋味を特に効果的に隠すことを示している。
【0058】
特に酸化分解に影響されやすい有効成分の望ましくない酸化を妨げることも示されている。
【0059】
好ましい有効成分は、ポリフェノール、共役ポリフェノール、ポリフェノールポリマー、クマリン、多糖、脂質、オルガノ硫黄化合物、共役ビタミン、ペプチド、カロテノイド、タンパク質、又はそれらの混合物を含む。
【0060】
1つの観点において、前記有効材料は、有利にはポリフェノールである。
【0061】
特に好ましいポリフェノールは、場合により1つ以上のメチル基で共役されたグリコン、スルフェート、グリコシド、ホスフェート、アセテート、及びエステルである。
【0062】
好適なポリフェノールの例は、フラボノイド類を含む。
【0063】
フラボノイドは、(i)フラボン、例えばクリシン、ケンペロール、ルチン、ケルセチン、ルテオリン及びアピゲニン、(ii)フラバノール、例えばケルセチン、ケンペロール、ミリセチン、イソラムネチン、パキポドール、ラムナジン、(iii)フラバノン、例えばフィセチン、ナリンジン、ナリンゲニン、ヘスペリチン、ナリンゲニン、エリオジクチオール、(iv)フラバン−3−オール、例えば(+)−カテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピカテキン、(−)−*エピガロカテキン、(−)−エピカテキン3−ガラート、(−)−エピガロカテキン3−ガラート、テアフラビン、テアフラビン−3−ガラート、テアフラビン−3’−ガラート、テアフラビン3,3’ジガラート、(v)テアルビジン、(vi)イソフラボン、例えばゲニステイン、ダイゼイン、グリシタイン、(vii)アントシアニジン、例えばシアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジン及びペツニジン(petunidin)、(viii)ポリメトキシフラボン、(ix)フラバン、(x)フェノールフラボノイド、(xi)プロアントシアニジン、並びに(xii)イソフラボノイドを含む。
【0064】
ポリフェノール有効成分は、Adam Drewnowski及びCarmen Gomez−Carneros 2000、"The American Journal of Clinical Nutrition"によって記載されている、種々の天然の消費製品、例えばフレープフルーツジュース、緑茶、紅茶、及びコーヒ中で見出される。前記のキャリヤー構成成分は、かかる食料又はそれらの抽出物との組合せで使用される場合に、特に効果的である。例えば、緑茶抽出物又は発酵茶抽出物を含有する有効成分は、特に好適である。
【0065】
他の観点において、該有効成分は、着色剤、より有利にはカロテノイドであってよい。好適なカロテノイドの例は、ベータ−カロテン、レチノール、アスタキサンチン、ルチン、リコペン、クリプトキサンチン及びゼアキサンチンを含む。このような着色剤が、典型的に透明な飲料において使用される。貯蔵に際して、該着色剤は、時々沈降して、飲料中の色合いにおける望ましくない差異を提供しうる。さらに、激しい振盪が、飲料中で均一に着色剤を再分散するために要求される。着色剤を錯化−封入するためのハイブリッド剤を使用して、非常に小さな封入粒子が、貯蔵に際してでさえ、飲料中で均一に懸濁されたままである。
【0066】
他の好適な有効成分は、フェノール酸、リン酸トコフェノール、酢酸トコフェロール、スチルベン、レスベラトロール、クルクミン、ビタミン、6−ジンゲロール、フラノクマリン、ベルガモチン、トリテルペン(リモノイド)、タンニン、プニカラギン、プニコシド、エラグ酸、リグナン、プロシアニジン、ピクノジェノール、フィトステロール、グルコシノレート、水素化グルコシノレート、イソチオシアネート、スルホラファン、グルタチオン、エルゴチオネイン、リポ酸、スフィンゴ脂質及びブチレートを含む。
【0067】
該有効成分は、油であってよい。
【0068】
本発明の有効成分送達系において封入されうる好ましい油は、例えば多不飽和脂肪酸が豊富な油である。かかる油は、典型的に、油の全質量に対して、少なくとも5質量%、有利には少なくとも10質量%、より有利には少なくとも25質量%、及び最も有利には少なくとも35質量%の多不飽和脂肪酸を含有する。
【0069】
前記の多不飽和脂肪酸が豊富な油は、有利には、オメガ−3脂肪酸が豊富な油である。
【0070】
より有利には、前記の多不飽和脂肪酸は、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)、α−リノレン酸、リノール酸、及びそれらの少なくとも2つの混合物から選択される。DHA及びEPAが、最も好ましい。
【0071】
前記の油は、野菜油誘導体、例えばトリグリセリド油と混合されることが好ましい。市販の油の特に好ましい範囲は、Neobee(登録商標)(例えばStepan社製)の名前のもと販売されている。
【0072】
多不飽和脂肪酸が豊富な油と野菜油誘導体との好ましい質量比は、70:30〜99:1、より有利には80:20〜95:5である。
【0073】
より好ましい一実施態様において、前記の油混合物は、あらゆる好適な乳化剤を使用して乳化される。有利には、該乳化剤は、食料等級であり、より有利には、糖エステルである。乳化油は、より容易にキャリヤー系と混合することが見出され、その結果より安定した製品を提供する。
【0074】
そのハイブリッドの性質のために、本発明の送達系は、キャリヤー構成成分上で及びキャリヤー構成成分中での有効成分の非常に重い負荷を可能にする一方で、驚くべきことに、消費者によって知覚される苦味の遮蔽の高い程度を維持する。
【0075】
従って、前記の有効構成成分は、前記送達系の全質量の70質量%まで、より有利には10〜65質量%、最も有利には20〜55質量%を含有してよい。
【0076】
その利点は、従来の封入系と比較した場合に原価効率を増加することによって、より少ないキャリヤー構成成分が、有効成分の要求量を送達するために要求されることである。
【0077】
送達系の構成
該送達系は、固体の、半固体の、又は液体の形であってよい。
【0078】
固体である場合に、該系は、有利には、粒子の形である。
【0079】
該送達系の粒子サイズは、有利には10〜1000μm、より有利には20〜500μm、最も有利には50〜300μmである。
【0080】
本発明の記載内容において、"粒子サイズ"は、従来の光散乱試験によって決定される算術平均直径として定義される。
【0081】
該粒子サイズは、かかる粒子の可視性が望ましくない場合に、その粒子を、食品又は飲料製品において使用することができるかどうかを決定する限り、特に重要である。本発明による送達系が、典型的に従来の封入製品での可能性と比較して、非常に小さい粒子の製造を可能にすることが見出されている。
【0082】
有利には、粒子数によって、少なくとも90%、より有利には少なくとも95%、及び最も有利には97%、例えば99%が、10〜1000μm、より有利には20〜500μm、及び最も有利には50〜300μmの範囲内の粒子サイズを有する。
【0083】
本発明の送達系における粒子は、典型的に、従来の封入系における粒子と比較して、より均一なサイズを有することが判明している。均一にサイズ化された粒子は、美的観点から所望され、かつ有効成分のより規則的な供与量も可能にする。
【0084】
該送達系が、液体形である場合に、該系は、有利には水性分散液として提供される。
【0085】
前記の有効成分送達系は、さらに封入されてよい。該有効成分送達系のさらなる封入が、より高く所望される。それというのも、それは、貯蔵に際して送達系の酸化安定性を増強するからである。
【0086】
第一に好ましい封入系は、該有効成分送達系が保たれているガラス状のマトリックスである。より有利には、該封入系は、ガラス状の炭水化物マトリックスである。前記の炭水化物マトリックス成分は、有利には、糖誘導体、より有利にはマルトデキストリンを含有する。
【0087】
特に好ましいマルトデキストリンは、10〜30、より有利には15〜25、最も有利には17〜19のDEを有するものである。
【0088】
典型的に、該有効成分送達系を、炭水化物マトリックス材料と、適量の可塑剤、例えば水とで混合し、その混合物を、ダイへ押し出されることができる溶融塊を形成するためにスクリュー押出機内で該マトリックス材料のガラス転移温度より高い温度まで加熱し、そしてその溶融塊を、例えば先行技術に記載されている確立された方法を使用して押出す。例えば、2002年5月11日に掲載されたWO 00/25606号、又は2001年3月15日に掲載されたWO 01/17372号の特許出願、及びそれらに挙げられている文献を参照し、参照をもって本明細書に組み込まれたものとする。
【0089】
望ましい場合に、他の炭水化物マトリックス構成成分が存在してよく、さらに抗酸化障壁の特性を改良する。
【0090】
他の好適な封入系は、例えば、US 4,610,890号、又はUS 4,707,367号において記載されており、参照をもって本明細書に組み込まれたものとする。
【0091】
製造
典型的に、有効成分送達系の製造は、(i)金属イオン、(ii)アニオン対イオン、及び(iii)有効成分源の共に別個に提供された源を混合することを含む。
【0092】
それにもかかわらず、源(i)及び(iii)を合することが可能であることが見出されている。例えば、該有効成分が、水溶液、水/有機溶剤溶液、分散液、又は水中油型エマルションの形で存在する場合に、源(i)及び(iii)は、乳化剤、有利には食品等級乳化剤を使用して合されることができる。
【0093】
実施例
本発明はいまや、以下の実施例を参照して記載されうる。実施例は、本発明の説明であり、本発明の範囲を制限しないと解されるべきである。
【0094】
本発明による試料は、番号及び後半による比較例によって指示される。全ての量は、特に指定されない限り、質量%である。
【0095】
実施例1
ACAPでのナリンジンの封入
回分式及び連続式の双方で操作されうる、従来のダブルジェット沈澱法を使用した。有効成分(ナリンジン)を、エタノール又はエタノール/水媒体中で最初に溶解した。Ca2+イオンを含有する第一流(塩化カルシウム溶液として提供される)とPO43-を含有する第二流(リン酸ナトリウムとして提供される)とを、結果として10g/LでACAP溶液を含有するキャリヤー構成成分を提供するために製造した。そして、30%エタノール溶液中でナリンジン2g/Lの標準溶液を含有する第三流を製造した。
【0096】
前記の第三流を、標準y−混合器を使用して混合チャンバー中へ別々に噴霧し、その際その反応を、同体積(すなわちナリンジン10ml中でCa2+原液10mlとPO43-原液10ml)で停止した。吸光係数(強フェノール帯280nm、わずかに酸性条件)を、エタノール溶液30質量%で標準希釈(1:12)後に決定し、そしてACAPの添加前と添加後とを比較した。
【0097】
その結果は、E−値が、3.75〜1.5低下したことを示し、かつこのことから、少なくとも70%のナリンジンが、ACAPによって包含されたことが算出された。
【0098】
実施例2
天然消費製品の評価
以下の試料を製造した:
【表1】

【0099】
試料A、B及びCを、以下のように製造した。撹拌Y−混合器を使用して、実施例1におけるような、基礎濃度10g/LでACAPを生じた。この現場で生じたコロイドを、3つの異なる天然ポリフェノール含有溶液、すなわち10分煎じすぎた紅茶、10分煎じすぎた緑茶、及びグレープフルーツジュース中へ噴霧した。添加の最終量は、ポリフェノール含有溶液100mlにつき、未処理の開始製品100mg(約ACAP50mgに対応する)であり、すなわち添加は、0.1%の範囲内であった。
【0100】
そして知覚された苦味の評価を、次のように実施した。
【0101】
7人の訓練されたパネルを、試料Aと試料1とを比較することを告げ、そして"一組の試料のどちらがより苦いか?"の質問に答えた。そしてこれを、試料B及び2に関して繰り返した。
【0102】
その結果を、次の表に示す:
【表2】

【0103】
これは、送達系が、著しく苦味の隠蔽利益を提供することを示す。
【0104】
実施例3
魚油の封入
魚油(マグロ油)試料を、窒素流によって、1時間窒素流を通して脱気した。そして脱気された魚油を、中鎖トリグリセリド油(例えばStepan社製のNeobee)と混合し、そしてUltra−Turrax(登録商標)ホモジナイザーを使用して24000rpmで糖エステル(例えばMitsubishi社製のRyoto S−1670)と共に乳化した。カルシウム及びリン酸イオン溶液を、pH7.2を示す3−モルホリノプロパンスルホン酸緩衝液(MOPS)中で製造した。アラビアゴムを、リン酸カルシウム粒子の結晶化を防ぐためにカルシウム溶液に添加した。
【0105】
ダブルジェット沈澱法を使用して、無機ハイブリッドマトリックス中で魚油を閉じこめた。Ca2+イオン2%(塩化カルシウム溶液として提供される)とアラビアゴム0.2%とを含有する第一流、及びPO43-イオン2%(リン酸ナトリウムとして提供される)を含有する第二流を、結果として10g/LでACAP溶液を含有するキャリヤー構成成分を提供するために製造した。そして魚油/Neobee(90:10の質量比で)25%のエマルションを含有する第三流を、上記で示したように製造した。エマルション中のRyoto糖エステルS−1670の濃度は、0.3%であった。前記の第三流を、別々に混合チャンバー中へ標準y−混合器を使用して噴霧し、その際その反応を、同体積で停止した。得られた試料を、水相を除去することによって濃縮した。最終試料は均一であり、かつ魚油含有率26%を有することが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分送達系であって、該系が、
(i)有効成分、及び
(ii)キャリヤー構成成分
を含み、その際、該キャリヤー構成成分が非晶質の金属塩を含有し、かつ有効成分が、該キャリヤー構成成分に少なくとも部分的に固定され、及び該キャリヤー構成成分によって部分的に封入される送達系。
【請求項2】
前記の金属塩の片側の金属イオンが、カルシウム、マグネシウム、鉄(II)、亜鉛、セレニウム、銅もしくはアルミニウム、又はそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の送達系。
【請求項3】
前記のキャリヤー構成成分が、非晶質のカルシウム塩を含有する、請求項1又は2に記載の送達系。
【請求項4】
前記のカルシウム塩が、非晶質のリン酸カルシウムである、請求項3に記載の送達系。
【請求項5】
前記の金属塩中の金属イオンとアニオン対イオンとのモル比が、3:1〜1:3である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の送達系。
【請求項6】
前記の有効成分が、ポリフェノール、共役ポリフェノール、ポリフェノールポリマー、クマリン、多糖、脂質、オルガノ硫黄化合物、共役ビタミン、ペプチド、カロテノイド、又はタンパク質である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の送達系。
【請求項7】
該有効成分がポリフェノールである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の送達系。
【請求項8】
前記ポリフェノールがフラボノイドである、請求項7に記載の送達系。
【請求項9】
前記の有効成分がカロテノイドである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の送達系。
【請求項10】
該有効成分が、多不飽和脂肪酸が豊富な乳化された油である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の送達系。
【請求項11】
前記系が、さらに封入される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の送達系。
【請求項12】
有効成分の送達系を製造する方法であって、
(i)金属イオンの第一の源を提供する工程、
(ii)アニオン対イオンの第二の異なる源を提供する工程、
(iii)有効成分の第三の異なる源を提供する工程、
(iv)混合域中で前記の3つの源を合する工程、及び
(v)該混合域中で混合工程を実施する工程
を含み、こうしてキャリヤー構成成分中の有効成分を部分的に固定、及び部分的に封入する方法。
【請求項13】
請求項6から8までのいずれか1項において定義されている有効成分の消費者によって知覚された苦味を、隠す、阻害する、又はそうでなければ低減するための、非晶質金属塩の使用。
【請求項14】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の送達系を含有する、栄養製品、機能性食品、又は医薬品。
【請求項15】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の送達系を含有する、食品又は飲料製品。

【公表番号】特表2010−512161(P2010−512161A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540924(P2009−540924)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054975
【国際公開番号】WO2008/072155
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】