説明

クラッチ制御装置

【課題】 急激なアクセル操作に起因する駆動系振動発生時におけるクラッチ断による車両のショックや異音を防止することが可能なクラッチ制御手段を提供する。
【解決手段】 アクセルペダル13の踏込み量によるアクセル開度信号131を計測し、その変化量が例えば−300%/秒以下または300%/秒以上の場合にアクセル開度の急変があったと判断し、このような場合にギヤシフトに伴うクラッチ断が必要な場合には、クラッチ制御手段421が、半クラッチが例えば約0.2秒継続するような緩やかなクラッチ断制御を行うように指示し、半クラッチの間にエンジン出力トルクの急変による駆動系のねじれを開放し、車両のショックや異音を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用クラッチ制御装置に関し、さらに詳しくは、急激なアクセル操作で生じる駆動系振動によるショックや異音を防止するクラッチ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の変速機として、マニュアル車と同様の変速ギヤ機構およびクラッチ機構にそれぞれアクチュエータを付設して自動変速を行えるようにした機械式自動変速機が開発、実用化され、主に、トラックやバス等の大型車を中心に実用化されている。
このような車両では、トランスミッションのギヤと、エンジン−変速機間に設けられた磨耗クラッチ(単に、クラッチという)は、付設されたアクチュエータによって自動的に制御される。すなわち、エンジン回転数やエンジン負荷、運転者のアクセル操作等の情報により最適なギヤを選択し、ギヤの変速動作に応じてクラッチが断接される。
図5は、機械式自動変速装置5を搭載した車両の構成図である。
エンジン1の出力軸にはフライホイール31が接続されている。このフライホイール31にクラッチディスク33を接触させることにより、エンジン1の回転が機械式自動変速装置5に伝わり、クラッチディスク33をフライホイール31から離間させることによりエンジン1と機械式自動変速装置5が切り離され、変速が可能になる。
機械式自動変速装置5は、プロペラシャフト6、ファイナルリダクション10を介してタイヤ12を回転させる主軸8に繋がっている。
このような機械式自動変速機を搭載した車両において、機械式自動変速装置5がギヤ入りされ、クラッチが繋がっている通常の走行状態において、急速なアクセル操作(急速な踏込みによる加速操作や、急激な戻しによる減速操作)があると、エンジン出力トルクが急変し、これに伴って、駆動系部品であるアクスルシャフト8、プロペラシャフト6、機械式自動変速装置5等に瞬間的に大きなねじれが生じる。この駆動系のねじれは、駆動系のねじれ振動を引き起こし、2秒以内に収束するが、その際、車両のショック等が生じ、ドライバビリティーの低下を引き起こす。
このようなドライバビリティーの低下を改善する方法として、アクセルを戻すことによる減速時に、エンジンの急激なトルク変化を防止してドライバビリティーを改善する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−81697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の手法は、アクセルペダルが急激に戻された状態において、スロットル弁の制御を遅らせることにより、クラッチが繋がった状態においてトルクの急変を防止し、車両の振動を押さえるものである。
しかしながら、上記手法は、アクセルを戻す操作において起こる振動を抑えるためのものであり、アクセルを急激に踏込むことによる振動は考慮されておらず、アクセル踏込み時に発生する振動による車両のショックは改善されないという問題がある。
さらに、急速なアクセル操作による駆動系振動発生時に、繋がっていたクラッチが切断されると、振動を減衰させる要素をもつ回転慣性物のエンジン1が、クラッチディスク33より右側の駆動系から切り離され、クラッチ位置での振動振幅と振動振幅が大きくなり、駆動系の振動が増大するとともに、振動の収束にかかる時間も長くなり、車両にショックが発生するとともに駆動系に異音が生じるという問題が生じる。車両重量が大きいトラック等の大型車では、駆動系振動が増大すると、それによる車両ショックは非常に大きい。
【0004】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたもので、その目的は、急激なアクセル操作に起因する駆動系振動発生時におけるクラッチ断による車両のショックや異音を防止することが可能なクラッチ制御手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述する課題を解決するための本発明は、エンジンと、変速機と、エンジンと変速機との間に介装されたクラッチと、クラッチを駆動するクラッチアクチュエータと、クラッチアクチュエータの作動を制御するクラッチ制御手段と、クラッチ接時におけるアクセル開度の急変を検出するアクセル開度急変検出手段と、アクセル開度急変検出手段が、アクセル開度の急変を検出した場合には、クラッチ制御手段に、クラッチの断動作を緩やかに行うよう指示するクラッチ制御指示手段と、を有することを特徴とするクラッチ制御装置である。
ここで、アクセル開度急変検出手段は、アクセル開度の変化が−300%/秒以下または300%/秒以上の場合にアクセル開度の急変とすることが望ましい。また、クラッチ制御指示手段は、クラッチ制御手段に、クラッチ断動作において、半クラッチ状態を所定の時間継続するよう指示する。このとき、所定の時間は約0.2秒であることが望ましい。
【0006】
以上のように、アクセル開度急変検出手段は、運転者が操作するアクセル開度を参照し、アクセル開度が例えば−300%/秒以下に変化した場合と、300%/秒以上に変化した場合に、クラッチ制御指示手段がクラッチ制御手段に指示を与え、クラッチを切断する場合に、断動作を緩やかにするように、半クラッチの継続時間が所定の時間、例えば約0.2秒になるようにする。
これにより、振動を減衰させる要素をもつ回転慣性物のエンジン1が駆動系と離間されるのを遅らせ、徐々に駆動系のねじれを開放することにより、車両のショックや異音を防止することが可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のクラッチ制御装置により、急激なアクセル操作で生じる駆動系振動による車両のショックや異音を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる機械式自動変速機の構成を示す構成図、図2は、機械式自動変速機の機能構成図、図3は、アクセル開度急変検出手段の処理の流れを示すフローチャート、図4は、クラッチ動作の説明図である。
【0009】
図1に示すように、エンジン1から突出したエンジン出力軸7は、自動クラッチ装置3を介して機械式自動変速装置5に接続されている。これにより、エンジン1の出力が機械式自動変速装置5に伝達され、変速が実施される。機械式自動変速装置5は、後退段(R)と複数の前進段(例えば6段)の変速段を有した自動変速式の変速機構であり、これに加えて、手動変速も可能である。
自動クラッチ装置3は、機械式自動変速装置5が変速される際、自動的に断接制御される。
一方、エンジン1には、エンジン1のエンジン出力軸7の回転数、すなわち、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ11が付設されている。
【0010】
自動クラッチ装置3は、フライホイール31にクラッチディスク(摩擦クラッチ、単に、クラッチともいう)33を圧接させることで接続状態とする一方、フライホイール31からクラッチディスク33を離間させることで切断状態とする通常の機械摩擦式クラッチの操作を自動で行うものである。
クラッチディスク33にはクラッチ断接用アクチュエータ35が接続されており、このアクチュエータ35が作動することで、クラッチディスク33が移動し、クラッチの断接が自動的に実施される。つまり、アクチュエータ35に電圧を印加し非作動状態から作動状態に移行すると、クラッチディスク33が離間方向に移動し、これにより、自動クラッチ装置3は接続状態から切断状態に変化する。一方、アクチュエータ35に電圧が印加されていない非作動状態では、クラッチディスク33はフライホイール31に圧接状態であり、この場合、自動クラッチ3は接続状態に保持される。
【0011】
尚、クラッチ断接用アクチュエータ35としては、電動モータを利用した電動アクチュエータや、エアシリンダーを利用した空気圧アクチュエータ、油圧シリンダーを利用した油圧アクチュエータ等の流体圧アクチュエータを用いることができる。
このような自動クラッチ装置3には、クラッチディスク33の移動量、すなわちクラッチストロークを検出するクラッチストロークセンサ39が取り付けられている。また、クラッチディスク33の近傍には、クラッチディスク33の回転数を検出するクラッチ回転センサ37が設けられている。
【0012】
また、機械式自動変速機構5は、ギヤシフト用アクチュエータ51によって駆動され、変速操作が行われる。このギヤシフト用アクチュエータ51は、機械式変速機構5内にあるセレクト方向およびシフト方向の各ギヤシフト部材を駆動するためのもので、例えば、2組の電動モータからなる。変速時には、ギヤシフト用アクチュエータ51によってギヤシフト部材を駆動して、機械式自動変速機構5の噛合状態を切り替えることにより、変速段を所望の状態にシフトする。
【0013】
エンジン1は電子コントロールユニット(ECU)40が出力するエンジン制御信号113により制御される。また、クラッチ用断接用アクチュエータ35およびギヤシフト用アクチュエータ51も、ECU40の制御信号を介して駆動される。
【0014】
ECU40は、制御プログラムに従って演算処理を実行する中央処理装置CPU401、後述するクラッチ切れ代確保手段を実現するプログラムを含む、エンジン1、自動クラッチ装置3、機械式自動変速装置5の制御プログラムや、制御に必要なデータを格納するリードオンリーメモリ(ROM)403、演算結果等を格納するランダムアクセスメモリ(RAM)405、入出力インタフェース407、タイマ409等を有する。
【0015】
ECU40には、入出力インタフェース407を介して、チェンジレバーユニット15の操作信号であるチェンジレバー操作信号151、アクセルペダル13に取り付けられたアクセル踏込み量センサによるアクセル開度信号131、クラッチ断接用アクチュエータ35に取り付けられたクラッチストロークセンサ39によるクラッチストローク信号391、ギヤシフト用アクチュエータ51に取り付けられたギヤ位置スイッチ53が出力するギヤ位置信号531、自動クラッチ装置3に取り付けられているクラッチ回転センサ37により得られるクラッチ回転数信号371、機械式自動変速機構5の出力側に備えられた車速センサ55により得られる車速信号551、エンジン1に備えられたエンジン回転センサ11により得られるエンジン回転数信号111等が入力される。
【0016】
ECU40は、これらの入力信号を処理することにより、エンジン1、クラッチ断接用アクチュエータ35、ギヤシフト用アクチュエータ51を駆動するための信号であるエンジン制御信号113、クラッチアクチュエータ駆動信号351、ギヤシフト用アクチュエータ駆動信号511を入出力インタフェース407を介して出力する。
【0017】
ECU40から出力されたクラッチアクチュエータ駆動信号351およびギヤシフト用アクチュエータ駆動信号511により、適切な電圧が、それぞれ、クラッチ断接用アクチュエータ35およびギヤシフト用アクチュエータ51に印加され、駆動する。これにより、自動クラッチ装置3のクラッチ断接、機械式自動変速装置5のギヤシフトが実現される。
【0018】
運転者は、チェンジレバーユニット15により、自動シフトモードと手動シフトモードを切り替えて運転することができる。すなわち、運転者がチェンジレバーユニット13のレバーをドライブ“D”に入れている状態では、運転者がアクセルペダル13を操作することにより得られるアクセル開度信号131や、種々のセンサ出力である走行状態の信号(車速信号551やエンジン回転数信号111、エンジン負荷等)を元に、最適変速段へギヤシフトを行うよう、ECU40がクラッチ断接用アクチュエータ35、ギヤシフト用アクチュエータ51、およびエンジン1を制御する(自動シフトモード)。
【0019】
一方、運転者が手動操作で変速段のシフト指令を行うことも可能で、運転者がチェンジレバーユニット15のレバーを“+”あるいは“−”に入れると、現在の変速段を1段上げる、あるいは1段下げるためのチェンジレバー操作信号151がECU40に入力される。この信号に基づいてECU40がクラッチ断接用アクチュエータ35およびギヤシフト用アクチュエータ51、エンジン1を制御する(手動シフトモード)。
【0020】
すなわち、ECU40は、自動シフトモードの場合、アクセル開度信号131や、車速、エンジン負荷などの走行状態の情報を元に変速段の切り替えの必要性を判断し、また、手動シフトモードの場合、運転者のシフト指令に基づき、シフト信号を出力し、クラッチ切断−ギヤシフト−クラッチ接続の制御を行うとともに、エンジン1の出力を適切に制御する。
【0021】
図2は、機械式自動変速機の機能構成図である。
同図に示すように、ECU40は、シフト信号生成手段415、ギヤシフト制御手段419、クラッチ制御手段421、エンジン出力制御手段423、および、アクセル開度急変検出手段425を備え、これらの手段は、プログラムとして、ECU40のROM403等の記憶装置に格納されている。これらのプログラムをCPU401が実行することにより、ECU40は自動変速を制御し、車両を走行させる。
【0022】
すなわち、車両の走行時に、運転者がチェンジレバーユニット15の操作により手動あるいは自動変速を選択することにより、手動/自動変速指令411がシフト信号生成手段415に入力される。手動シフトモードの場合には、運転者のチェンジレバーユニット15の操作により生成されるシフトアップあるいはシフトダウン要求により、シフト段が決定される。
【0023】
一方、手動/自動変速指令411で自動シフトモードが選択されている場合、シフト信号生成手段415は、通常、ECU40の入出力インタフェース407を介して入力される車速信号551、アクセル開度信号131、エンジン回転数111等の信号を走行状態情報413として受け取り、これらの情報を元に変速ギヤ段を決定する。
すなわち、ECU40のROM403に車速およびアクセル開度から適切なギヤ段を決定するためのシフトマップ417が格納されており、このシフトマップ417を参照することにより、その時点の走行状態に即した変速ギヤ段が選択される。
ここで、アクセル開度信号131の値は、アクセルペダル13の踏込み量に応じて0〜100%の間で変化する。
例えば、運転者がアクセルペダル13を踏込んでアクセル開度信号131が示すアクセル開度が増加すると、その時点の車速とアクセル開度値により適切な変速ギヤ段が決定され、シフト信号生成手段415がクラッチ制御手段421およびギヤシフト制御手段419、およびエンジン出力制御手段423に信号を送り、それぞれ、自動クラッチ装置3、機械式自動変速装置5、エンジン1を制御して、ギヤ段のシフトを実行する。
【0024】
運転者はアクセルペダル13の踏込み量を徐々に変化させるので、エンジン出力トルクの変化も大きくなく、駆動系に大きなねじれが生じることはなく、駆動系振動は起こらない。
しかし、運転者がアクセルペダル13を急激に踏込んだり、踏込んでいたアクセルペダル13を急に戻したりした場合には、前者ではエンジン出力トルクの急激な上昇が、後者では急激なエンジンブレーキがかかり、このエンジン出力トルクの急変により、プロペラシャフト6、ファイナルリダクション10、アクスルシャフト8等の駆動系部品に瞬間的に大きなねじれが発生し、振動を起こす。
【0025】
上記のように、運転者がアクセルペダル13を踏込むか、戻した場合、アクセル開度信号131のアクセル開度値が変化し、シフト信号生成手段415は、シフトマップを参照して、ギヤ段のシフトが必要か否かを判定し、必要な場合には変速段をシフトする旨の信号をクラッチ制御手段421に送る。アクセルペダル13を急激に踏込むか、戻した場合には、アクセル開度値が大きく変化するので、一般的に、ギヤ段のシフトが必要となる。
クラッチ制御手段421は、シフト信号生成手段から変速段をシフトする旨の信号を受け取ると、ギヤシフトに先立ち、クラッチ断接用アクチュエータ35を駆動して、クラッチディスク33をフライホイール31から切り離す動作(クラッチ断)を行い、ギヤシフトが完了したら、クラッチディスク33をフライホイール31に徐々に接合する動作(クラッチ接)を行う。
このとき、駆動系振動が起こっている場合にクラッチ断が行われると、駆動系振動が増大し、車両ショックや駆動系の異音が発生してしまう。
【0026】
以上のような車両ショックや駆動系の異音を回避するため、まず、アクセル開度の急変を検知し、アクセル開度が急変した場合には、クラッチ断を緩やかに行って、この間に駆動系のねじれを開放し、駆動系の振動を収束させる。
ここで、例えば、アクセル開度の変化が300%/秒以上あるいは−300%/秒以下の場合にアクセル開度が急変したと判断すればよい。
【0027】
図3は、このような問題を防止するためのアクセル開度急変検出手段425の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、時間t1を0とする(s4251)。時間t1は、ECU40内のタイマ409によって計測される。そして、アクセル開度信号131のt=t1の値をA1(%)とする(s4252)。次に、時間Δt後のアクセル開度信号131の値をA2(%)とする(s4253)。
これらの値から、アクセル開度値の変化率Cを求める(s4254)。アクセル開度変化率C=(A2−A1)・/Δtとし、1秒間にアクセル開度が何%変化したかを求める。例えば、0.1秒間にアクセル開度が0%から30%に増加した場合、アクセル開度変化率C=300(%)、逆に、0.1秒間にアクセル開度が30%から0%になった場合、C=−300%である。
【0028】
次に、アクセル開度の変化率Cの大きさを判定する(s4255およびs4256)。そして、Cが300%以上の場合(s4255のyes)と−300%以下の場合(s4256のyes)に、クラッチ制御手段421に対し、クラッチ断を緩やかに行うよう指示する(s4257)。クラッチ制御手段421は、ギヤ入り、クラッチ接の状態でこの指示を受けた場合で、しかも、シフト信号生成手段415から変速のためのクラッチ制御を行うよう指示された場合に、クラッチ断を穏やかに行う。ここで、ギヤが入っているか否かはギヤ位置センサ53によるギヤ位置信号531で、クラッチ接か否かはクラッチストローク信号391によって判断することが可能である。
一方、アクセル開度の変化率が−300<C<300(%)の場合(s4256のno)、時間t1+Δtにおけるアクセル開度値A2をA1とし、t1+Δtをt1として、s4253に戻り、アクセル開度の急変を検知する処理(s4253〜s4257の処理を繰り返す)。
【0029】
図4は、緩やかなクラッチ断の説明図である。
同図左図は、通常のクラッチ断制御である。この場合、クラッチ断制御手段421は、クラッチ断接用アクチュエータ35に対して、ステップ状にクラッチを切断するためのクラッチストローク目標値を与える。実際のクラッチの動作は、点線に示すように、少し遅れて立ち上がり、クラッチストロークの目標値に達する。
【0030】
一方、アクセル開度急変検出手段425がアクセルの急変を検出した場合(s4255のyesおよびs4256のyes)は、右図のような穏やかなクラッチ断制御を行う。
すなわち、半クラッチのクラッチストローク目標値までステップ状に立ち上げ、その後時間Tの期間、徐々にクラッチストローク目標値を上昇させ、その後、再び、ステップ状にクラッチ断のクラッチストローク目標値に上げる。このとき、時間Tは約0.2秒にするとよい。
このように緩やかなクラッチ断制御を行った場合、実際のクラッチストロークは点線に示すようになり、半クラッチが約0.2秒以上継続し、ゆっくりしたクラッチ断制御が行える。これにより、半クラッチの期間に、駆動系のねじれが徐々に開放され、駆動系の振動が収束し、車両のショックや駆動系の異音を防止することが可能である。
以上のような図4右図のクラッチストローク目標値パターンをECU40内のEEPROM等のROM403に持たせておくことで、s4257で緩やかなクラッチ断制御の指示があった場合に、クラッチ制御手段421がこのパターンを使用してクラッチ断制御を行うことが可能である。
【0031】
アクセル開度の急変時に、s4257で、クラッチ制御手段421に対して緩やかなクラッチ断制御を指示した後、時間t1+Δtにおけるアクセル開度値A2をA1とし、t1+Δtをt1として、s4253に戻り、アクセル開度の急変を検知する処理(s4253〜s4257の処理を繰り返す)。
【0032】
尚、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能であり、それらも、本発明の技術範囲に含まれる。例えば、本実施の形態では、アクセル開度変化が−300%以下または300%以上の場合にアクセル開度が急変したと判断したが、これらの値は、これに限るものではない。また、緩やかなクラッチ断制御における半クラッチの時間は約0.2秒に限るものではなく、車種等によって異なる値に設定してもよい。また、図4に示した緩やかなクラッチ断制御のパターンは、クラッチ断が緩やかに実施され、駆動系のねじれが解消できれば、他の形のパターンであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態にかかる機械式自動変速機の構成を示す構成図
【図2】機械式自動変速機の機能構成図
【図3】アクセル開度急変検出手段の処理の流れを示すフローチャート
【図4】緩やかなクラッチ断制御を説明する図
【図5】車両のエンジン−クラッチ−駆動系の構成図
【符号の説明】
【0034】
1………エンジン
3………自動クラッチ装置
5………機械式自動変速装置
31………フライホイール
33………クラッチディスク
35………クラッチ断接用アクチュエータ
37………クラッチ回転センサ
39………クラッチストロークセンサ
421………クラッチ制御手段
425………アクセル開度急変検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
変速機と、
前記エンジンと前記変速機との間に介装されたクラッチと、
前記クラッチを駆動するクラッチアクチュエータと、
前記クラッチアクチュエータの作動を制御するクラッチ制御手段と、
クラッチ接時におけるアクセル開度の急変を検出するアクセル開度急変検出手段と、
前記アクセル開度急変検出手段が、アクセル開度の急変を検出した場合には、前記クラッチ制御手段に、クラッチの断動作を通常の断動作よりも緩やかに行うよう指示するクラッチ制御指示手段と、
を有することを特徴とするクラッチ制御装置。
【請求項2】
前記アクセル開度急変検出手段は、アクセル開度の変化が−300%/秒以下または300%/秒以上の場合にアクセル開度の急変とすることを特徴とする請求項1記載のクラッチ制御装置。
【請求項3】
前記クラッチ制御指示手段は、前記クラッチ制御手段に、クラッチ断動作において、半クラッチ状態を所定の時間継続するよう指示することを特徴とする請求項1記載のクラッチ制御装置。
【請求項4】
前記所定の時間は約0.2秒であることを特徴とする請求項3記載のクラッチ制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−283819(P2006−283819A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102051(P2005−102051)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】