説明

クリアハードコートフィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた反射防止フィルム

【課題】 本発明の目的は1.2m以上の塗布幅でハードコート層を設けても、優れた帯電防止機能、膜物性、平面性を有し、干渉ムラやヘイズ上昇のないクリアハードコートフィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた反射防止性に優れた反射防止フィルムを提供することにある。
【解決手段】 透明プラスチック基材上に塗布幅1.2m以上で少なくとも2層以上のクリアハードコート層を設け、その少なくともいずれかの層に活性エネルギー線硬化樹脂を含むクリアハードコートフィルムの製造方法であって、少なくとも基材側の層の塗布液と表面側の層の塗布液とを2層以上同時重層塗布し、次いで乾燥・硬化させることを特徴とするクリアハードコートフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリアハードコートフィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた反射防止フィルムに関し、より詳しくは優れた帯電防止機能、膜物性、平面性を有し、干渉ムラやヘイズ上昇のないクリアハードコートフィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた反射防止性に優れた反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)のような画像表示装置は、ますます大型化される傾向にあり、その表示面はその視認性を高めるために、蛍光灯等の外部光源から照射された光線の反射が少ないことのみならず、最表面に位置することにより傷の付きにくい特性(耐傷性ともいう)が求められている。
【0003】
上記外部光源から照射された光線の反射は、画像表示装置の表面に反射防止膜を設けることで軽減することが出来る。反射防止膜は、表示面の上に屈折率の小さい低屈折率層を設けた単層構成、または、金属酸化物の透明薄膜を積層させた多層膜が従来から用いられてきた。
【0004】
反射防止積層体に用いられる反射防止膜は、金属酸化物の透明薄膜を積層させた多層膜が一般的に用いられ、広い波長域で反射率を下げるために複数の透明薄膜を用いている。金属酸化物の透明薄膜は、物理蒸着(PVD)法、化学蒸着(CVD)法により形成することが知られている。金属酸化物の透明薄膜は反射防止膜として優れた光学的性質を有しているが、蒸着による形成方法は生産性が低く大量生産に適していない。蒸着法に代えて、透明支持体上に光学的機能層を塗布により形成して反射防止膜を製造する方法も提案されている。この場合、ゾルゲル法により金属酸化物薄膜を形成することが一般的であるが、屈折率の調整のし易さ、安定性等から金属酸化物微粒子をバインダー溶液に分散し薄膜を形成する方法もとられている。その際、光学的機能層を塗布により形成する場合、特に広幅である場合には光学的機能層が薄膜である為、透明支持体の平面性が重要である。
【0005】
一方、反射防止積層体はフィルム製造時や偏光板、表示装置への貼り合わせ工程、パネル作製時に、静電気等によるゴミの付着も起き易く故障発生が多い。その為、導電性を改善する目的で、イオン性高分子化合物や導電性微粒子を含有する導電性層(帯電防止層ともいう)を支持体の一方の面に設けることがある。導電性層を設ける位置としては、ハードコート層よりも基材に近い側に0.2μm程度の膜厚で設ける方法、ハードコート層に導電性を付与する方法、反射防止積層体の中屈折率層または高屈折率層に導電性を持たせる方法等が知られている。
【0006】
上記方法の中で、ハードコート層よりも基材に近い側に帯電防止層を設ける方法の場合、帯電防止層と表面までに距離があるため帯電防止性や表面比抵抗低減効果が小さく、また十分な帯電防止機能を持たせるために帯電防止剤を多量に帯電防止層に添加すると、膜が脆くなりクラック、傷等が入りやすい等の欠点があった。
【0007】
その為、帯電防止性を保ちつつ、上記耐傷性を維持するためには、ハードコート性を持つ帯電防止層を設ければ良いが、活性エネルギー線硬化樹脂に帯電防止性能を有する材料を混合するとハードコート性が劣化したり、高価な帯電防止材料を使用するためコストアップになることがある。
【0008】
また微粒子等を分散したタイプの帯電防止材料で帯電防止性を付与する硬化樹脂層は、ハードコート性が十分に得られて表面比抵抗が下がるほどの膜厚で設けると、ヘイズが上昇し透過率も低下する。特に無機の帯電防止材料は帯電防止性は非常に優れているが、一方でコストが高く膜厚アップ等によりコストアップにつながる。
【0009】
上記透過率の低下やヘイズを上昇させずに帯電防止性能を得た上で、尚かつコスト削減をするためには、一般的な帯電性の硬化樹脂層を基材側に設けてハードコート性を確保し、この上に更に帯電防止性の硬化樹脂層を表面側に積層して設ければ良い。
【0010】
しかしながら、基材側の硬化樹脂層を塗布した後に乾燥・硬化を行い、更に表面側の帯電防止性能を有する樹脂層を塗布した後に乾燥・硬化を行うと、乾燥工程を2回通過する為に平面性が劣化する問題があり、上記反射防止積層体を塗布する際に支障が生ずる。特に塗布幅が1.2m以上の広幅ではより顕著な問題となった。
【0011】
この問題を解決する手段として、分子内に帯電防止性能を有する基含む帯電防止性を有する紫外線硬化樹脂を、帯電防止性の紫外線硬化樹脂層が未硬化の状態で積層し、2層同時に硬化して硬化樹脂層を設けることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
しかしながら、帯電防止機能を有する基を含んでいるとはいえ、樹脂であるためその帯電防止性は不十分である。そこで、上記のように無機の帯電防止剤を使用することで帯電防止性能をより向上させることは出来るが、無機の帯電防止剤を用いて硬化樹脂層とした場合に着色やヘイズがあるものが多い。
【0013】
また、基材側樹脂層を硬化後、表面側樹脂層を積層すると表面側樹脂層/基材側樹脂層の界面が発生し、この界面で反射が生じ、この反射光が基材側樹脂層の界面の反射光や最表面の反射光と干渉して干渉ムラが発生して反射防止積層体として好ましくない場合がある。更に硬化樹脂に無機の微粒子が分散されたものの場合、膜厚を薄くして塗布を行うと基材側樹脂層の表面で塗布性や分散が乱れてムラになり、透過率の低下やヘイズの上昇を招き易いという問題があった。
【特許文献1】特許2877854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記課題に鑑み成されたものであり、その目的は1.2m以上の塗布幅でハードコート層を設けても、優れた帯電防止機能、膜物性、平面性を有し、干渉ムラやヘイズ上昇のないクリアハードコートフィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた反射防止性に優れた反射防止フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0016】
(請求項1)
透明プラスチック基材上に塗布幅1.2m以上で少なくとも2層以上のクリアハードコート層を設け、その少なくともいずれかの層に活性エネルギー線硬化樹脂を含むクリアハードコートフィルムの製造方法であって、少なくとも基材側の層の塗布液と表面側の層の塗布液とを2層以上同時重層塗布し、次いで乾燥・硬化させることを特徴とするクリアハードコートフィルムの製造方法。
【0017】
(請求項2)
前記同時重層塗布した直後に、塗膜が半硬化状態になるように活性エネルギー線照射を行い、次いで乾燥・硬化を行うことを特徴とする請求項1に記載のクリアハードコートフィルムの製造方法。
【0018】
(請求項3)
前記活性エネルギー線硬化樹脂を含むクリアハードコート層の少なくとも1層が、導電性金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のクリアハードコートフィルムの製造方法。
【0019】
(請求項4)
前記導電性金属酸化物微粒子がSn、Ti、In、Al、Zn、Si、Mg、Ba、Mo、W、及びVからなる群から選択される少なくとも1つの元素を主成分とする導電性金属酸化物微粒子若しくは複合酸化物微粒子であることを特徴とする請求項3に記載のクリアハードコートフィルムの製造方法。
【0020】
(請求項5)
前記活性エネルギー線硬化樹脂が多官能のアクリレート樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のクリアハードコートフィルムの製造方法。
【0021】
(請求項6)
請求項1〜5のいずれか1項に記載のクリアハードコートフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とするクリアハードコートフィルム。
【0022】
(請求項7)
請求項6に記載のクリアハードコートフィルム表面上に反射防止層を設けたことを特徴とする反射防止フィルム。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、1.2m以上の塗布幅でハードコート層を設けても、優れた帯電防止機能、膜物性、平面性を有し、干渉ムラやヘイズ上昇のないクリアハードコートフィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた反射防止性に優れた反射防止フィルムを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
本発明者は鋭意検討を行った結果、透明プラスチック基材上に塗布幅1.2m以上で少なくとも2層以上のクリアハードコート層を設け、その少なくともいずれかの層に活性エネルギー線硬化樹脂を含むクリアハードコートフィルムの製造方法であって、少なくとも基材側の層の塗布液と表面側の層の塗布液とを2層以上同時重層塗布し、次いで乾燥・硬化させることを特徴とするクリアハードコートフィルムの製造方法により、本発明の目的が達成されることを見出したものである。特に、前記同時重層塗布した直後に、塗膜が半硬化状態になるように活性エネルギー線照射を行い、次いで乾燥・硬化を行うことが好ましい。
【0026】
即ち、基材側の樹脂層が未硬化の状態で表面側の樹脂層を設けること、特に基材側の樹脂層の上に乾燥工程を経ずに表面側の樹脂層をwet on wetで積層することが本発明の効果を得る上で必要な条件である。
【0027】
これは、基材側樹脂層を塗布後、乾燥・硬化を行ったり表面側樹脂層の塗布位置まで搬送したりして基材側樹脂層が空気に触れることで、基材側樹脂層表面に酸素が取り込まれ硬化阻害が起こる場合がある。特に表面側樹脂層を薄くした場合、基材側樹脂層の表面に取り込まれた酸素の影響を顕著に受けるので好ましくない。
【0028】
この問題に対し本発明者は、上記したように乾燥工程を経ずに基材側の樹脂層の上に表面側の樹脂層をwet on wetで同時重層することで、界面の混合を最も良好な状態に調整出来る為、微粒子の分散を維持しつつ、基材側樹脂層と表面側樹脂層の造膜をうまく制御出来、優れた帯電防止効果、透過率の低下やヘイズの上昇を抑えることが出来ることを見出したものである。特に、基材側の樹脂層と表面側の樹脂層を同時重層塗布直後に活性エネルギー線を照射して塗膜を半硬化した状態で、乾燥・硬化することにより、基材側樹脂層からのラジカルの供給により酸素による硬化阻害を防止出来、また、同時重層する膜厚、および各層の厚みの割合、乾燥条件などにもよるが塗布直後に乾燥すると混合しやすいことがありこの場合に導電性微粒子などを含んだ層と含まない層が完全に混合してしまうと粒子の濃度が相対的に下がるので導電性が低下して好ましくない。そこで同時重層塗布直後に活性エネルギー線を照射して塗膜を半硬化すると塗膜の流動性が小さくなり、重層した層同士が必要以上に混合しないように出来ることを見出したものである。
【0029】
特開2000−71392号公報には第1のハードコート層と第2のハードコート層を積層しそのいずれかのハードコート層に平均粒径0.01〜10μmの範囲を満たす無機或いは有機の微粒子を含有するハードコートフィルムまたはシートが記載されている。この場合にハードコート層に配合可能な無機若しくは有機の微粒子としては活性エネルギー線硬化樹脂中で良好な透明性を保持する微粒子である必要があると記載されているが、本発明に係る方法によれば帯電防止性を有する樹脂層を薄くすることが出来るので配合する微粒子はそれほど良好な透明性を保持していなくても使用することが出来る。特に前述のように帯電防止性を有する微粒子の場合は着色している場合が多いので、本発明の方法は特に有用である。その結果、本発明の方法によれば非常に良好な帯電防止性、高い透過率及び透明性、低いヘイズを全て高いレベルで兼ね備えたハードコート層を得ることが出来る。更に帯電防止剤は高価な場合が多いが、この方法によれば帯電防止剤を含んだ層を薄くすることが出来るのでコストダウンも出来る。
【0030】
また従来のように第1のハードコート層を設けた後乾燥・硬化し、次いで第2のハードコート層を積層した後更に乾燥・硬化する方法では、乾燥・硬化による平面性の劣化が見られたが、本発明の方法によれば乾燥が一回で済む為に、塗布幅1.2m以上の塗布の場合でも平面性の劣化が見られず、精密な反射防止層の塗布が可能なハードコートフィルムを提供することが出来る。
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0032】
最初に、本発明に係るクリアハードコート層について述べる。
【0033】
本発明に係るクリアハードコート層は、後述する透明プラスチック基材上に少なくとも活性エネルギー線硬化樹脂を含む層を少なくとも2層以上設けたことを特徴とする。
【0034】
(活性エネルギー線硬化樹脂)
本発明のクリアハードコート層に用いられる活性エネルギー線硬化樹脂としては、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射により直接、または光重合開始剤の作用を受けて間接的に重合反応を生じる官能基を2個以上有するモノマーまたはオリゴマーを用いることが出来る。
【0035】
本発明では、特に紫外線により硬化する紫外線硬化樹脂を含有する層であることが好ましく、耐擦り傷性に優れたクリアハードコートフィルムを得ることが出来る。
【0036】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0037】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、若しくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートと記載した場合、メタクリレートを包含するものとする)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151110号等を参照)。
【0038】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号を参照)。
【0039】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種若しくは2種以上を選択して使用することが出来る。
【0040】
また、本発明では特に、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂を用いることが好ましく、この様な化合物としては、例えば多官能アクリレート樹脂等が挙げられる。ここで、多官能アクリレート樹脂とは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
【0041】
多官能アクリレート樹脂のモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートが挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。また、活性エネルギー線硬化樹脂は、分子中に水酸基を有することが好ましい。
【0042】
上記紫外線硬化樹脂としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化工業株式会社製)、或いはコーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業株式会社製)、或いはセイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業株式会社製)、或いはKRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー株式会社)、或いはRC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、或いはオーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製)、或いはサンラッドH−601(三洋化成工業株式会社製)、或いはSP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製)、或いはRCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成株式会社製)或いはこの他の市販のものから適宜選択して利用出来る。
【0043】
また、活性エネルギー線硬化樹脂の硬化促進のために、光重合開始剤を活性エネルギー線硬化樹脂に対して2〜30質量%含有することが好ましい。光重合開始剤としては、光照射によりカチオン重合を開始させるルイス酸を放出するオニウム塩の複塩の一群が特に好ましい。
【0044】
かかる代表的なものは下記一般式(a)で表される化合物である。
【0045】
一般式(a)
〔(R1a(R2b(R3c(R4dZ〕+w〔MeXv-w
式中、カチオンはオニウムであり、ZはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、ハロゲン(例えばI、Br、Cl)、又はN=N(ジアゾ)であり、R1、R2、R3、R4は同一であっても異なっていてもよい有機の基である。a、b、c、dはそれぞれ0〜3の整数であって、a+b+c+dはZの価数に等しい。Meはハロゲン化物錯体の中心原子である金属又は半金属(metalloid)であり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xはハロゲンであり、wはハロゲン化錯体イオンの正味の電荷であり、vはハロゲン化錯体イオン中のハロゲン原子の数である。vから中心原子Meの価数を減じたものがwとなる。
【0046】
上記一般式(a)で表される化合物の陰イオン〔MeXv-wの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4-)、テトラフルオロホスフェート(PF4-)、テトラフルオロアンチモネート(SbF4-)、テトラフルオロアルセネート(AsF4-)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl4-)等を挙げることが出来る。更に陰イオン〔MeXv-wには(OH-)の陰イオンも用いることが出来る。また、その他の陰イオンとしては過塩素酸イオン(ClO4-)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3-)、フルオロスルホン酸イオン(FSO3-)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼン酸陰イオン等を挙げることが出来る。
【0047】
この様なオニウム塩の中でも特に芳香族オニウム塩をカチオン重合開始剤として使用するのが特に有効であり、中でも特開昭50−151996号、同50−158680号等に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号、同52−30899号、同59−55420号、同55−125105号等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号、同56−149402号、同57−192429号等に記載のオキソスルホニウム塩、特公昭49−17040号等に記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4,139,655号等に記載のチオピリリウム塩等が好ましい。また、アルミニウム錯体や光分解性ケイ素化合物系重合開始剤等を挙げることが出来る。上記カチオン重合開始剤と、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントンなどの光増感剤を併用することが出来る。
【0048】
活性エネルギー線硬化樹脂層には、更にアクリルまたはメタクリル樹脂としては分子量10〜50万のアルコール溶解性アクリル樹脂を好ましく用いることが出来る。具体的には、アルキル(メタ)アクリレート重合体またはアルキル(メタ)アクリレート共重合体、例えばn−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート等の共重合体が好ましく用いられるが、共重合成分としてはこれらに限定されるものではない。市販品としては、ダイヤナールBR−50、BR−51、BR−52、BR−60、BR−64、BR−65、BR−70、BR−73、BR−75、BR−76、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−89、BR−90、BR−93、BR−95、BR−96、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118(以上、三菱レーヨン(株)製)等が使用出来る。
【0049】
アクリル樹脂またはメタクリル樹脂のTg(ガラス転移点)は30℃以下であることが好ましい。Tgは、Rheometrics社製のSOLIDS ANALYZER−RSAIIを用いて、周波数(Freqency)を100rad/sec、歪み(strain)を8.0×10-4として測定し、tanδのピーク値になる温度をガラス転移点(Tg)として得ることが出来る。
【0050】
本発明に係るクリアハードコート層は、基材側のハードコート層用の塗布液または表面側のハードコート層用の塗布液に導電性金属酸化物微粒子が分散されていることが、本発明の目的である帯電防止機能を付与する上で好ましい。より好ましくは、基材側に帯電防止機能のない樹脂層を塗設し、表面側に帯電防止機能を有する樹脂層を塗設することである。この構成により、帯電防止層を表面付近に位置させることが出来るため、帯電防止性や表面比抵抗低減効果を十分に得ることが出来、更に基材側に帯電防止機能のない樹脂層を塗設することにより十分なハードコート性を付与出来るため、従来の帯電防止剤を多量に帯電防止層に添加する際に発生する膜の脆さやクラック、傷等が入りやすい等の欠点を改善出来る。
【0051】
該層の膜厚は基材側の樹脂層>表面側の樹脂層であることが好ましく、基材側の樹脂層の膜厚が1μm〜20μmの範囲であり、かつ表面側の樹脂層の膜厚が0.2〜5μmの範囲であることが好ましい。更に好ましくは、基材側の樹脂層の膜厚が2〜7μmで、表面側の樹脂層の膜厚が0.5〜3μmである。この構成の場合、帯電防止性を有する樹脂層が薄いため、配合する微粒子はそれほど良好な透明性を保持していなくても使用することが出来る。特に帯電防止性を有する微粒子の場合は着色している場合が多いので、上記構成は特に有用である。
【0052】
表面側の樹脂層の帯電防止剤がSn、Ti、In、Al、Zn、Si、Mg、Ba、Mo、W、及びVからなる群から選択される少なくとも1つの元素を主成分とする微粒子であることが好ましく、その含有量は該樹脂層の固形分の10〜90質量%であり、好ましくは20〜70質量%である。
【0053】
本発明の帯電防止機能を有する層の表面比抵抗は1011Ω/□(25℃、55%RH)以下に調整されることが好ましく、更に好ましくは、1010Ω/□(25℃、55%RH)以下であり、特に好ましくは、109Ω/□(25℃、55%RH)以下である。
【0054】
ここで、表面比抵抗値の測定の詳細は実施例に記載するが、試料を25℃、55%RHの条件にて24時間調湿し、川口電機株式会社製テラオームメーターモデルVE−30を用いて測定する。
【0055】
本発明に係る帯電防止剤は、前記Sn、Ti、In、Al、Zn、Si、Mg、Ba、Mo、W及びVからなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分として含有し、かつ、体積抵抗率が107Ω・cm以下であるような導電性材料が好ましく用いられる。
【0056】
前記帯電防止剤としては、上記の元素を有する金属酸化物、複合酸化物等が挙げられる。
【0057】
金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、In23、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、またSnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
【0058】
また、これらの導電性を有するこれら金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ω・cm以下、特に105Ω・cm以下である。
【0059】
また、他の帯電防止剤としては、イオン性高分子化合物を併用することも出来る。
【0060】
イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号にみられるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号などにみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー;特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853、同62−9346にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー;等を挙げることが出来る。
【0061】
特に好ましいイオン性高分子化合物としては、下記一般式〔1〕及び〔1a〕、〔1b〕の構造のユニットを有するポリマーが挙げられる。
【0062】
【化1】

【0063】
【化2】

【0064】
式中R3、R4、R5、R6は炭素数1〜4の置換或いは未置換のアルキル基を表し、R3とR4及び/またはR5とR6が結合してピペラジンなどの含窒素複素環を形成してもよい。A、B及びDはそれぞれ炭素数2〜10の置換或いは未置換のアルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基、−R7COR8−、−R9COOR10OCOR11−、−R12OCR13COOR14−、−R15−(OR16m−、−R17CONHR18NHCOR19−、−R20OCONHR21NHCOR22−または−R25NHCONHR24NHCONHR25−を表す。R7、R8、R9、R11、R12、R14、R15、R16、R17、R19、R20、R22、R23及びR25はアルキレン基、R10、R13、R18、R21及びR24はそれぞれ置換または未置換のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基、アルキレンアリーレン基から選ばれる連結基、mは1〜4の正の整数を表し、X-はアニオンを表す。
【0065】
但し、Aがアルキレン基、ヒドロキシアルキレン基或いは、アリーレンアルキレン基である時には、Bがアルキレン基、ヒドロキシルアルキレン基或いはアリーレンアルキレン基ではないことが好ましい。
【0066】
Eは単なる結合手、−NHCOR26CONH−またはDから選ばれる基を表す。R26は置換或いは未置換のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基、またはアルキレンアリーレン基を表す。
【0067】
1、Z2は−N=C−基は共に5員または6員環を形成するのに必要な非金属原子群(≡N+[X-]−なる4級塩の形でEに連結してもよい)を表す。
【0068】
nは5〜300の整数を表す。
【0069】
中でも、分子架橋を有する4級アンモニウムカチオンポリマーが特に好ましく、ダイオキシンの発生防止等環境安全性の観点から、塩素イオンを含まず、かつ、分子架橋を有する4級アンモニウムカチオンポリマーが特に好ましく用いられる。
【0070】
以下に、本発明に係るイオン性高分子化合物の具体例を挙げるが本発明はこれらに限定されない。
【0071】
【化3】

【0072】
【化4】

【0073】
【化5】

【0074】
【化6】

【0075】
【化7】

【0076】
【化8】

【0077】
【化9】

【0078】
本発明に用いられるイオン性高分子化合物は、これを単独で用いてもよいし、或いは数種類のイオン性高分子化合物を組み合わせて使用してもよい。本発明に係るクリアハードコート層の表面側の樹脂層におけるイオン性高分子化合物の含有量は、該樹脂層の固形分の2〜50質量%であり、好ましくは5〜30質量%である。
【0079】
更に、本発明においては、屈折率を調整したり、滑り性、耐傷性或いは防眩性を付与するため、帯電防止機能のない樹脂層及び帯電防止機能を有する樹脂層中に微粒子を添加をすることが好ましい。特に、表面側の活性エネルギー硬化樹脂層中に微粒子を屈折率上昇剤として添加することが好ましい。添加する微粒子として、無機金属微粒子が好ましく、例えば、無機金属微粒子としては酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどが好ましく用いられる。
【0080】
また、本発明に用いられる金属酸化物微粒子はコア/シェル構造を有していてもよく、コア/シェル構造では、シェルをコアの周りに1層形成させてもよいし、更に複数層のシェルを形成させてもよい。また、コア領域は、シェルにより完全に被覆されていることが好ましいが、部分的に被覆された状態でもよい。コアは酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型等)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ等を用いることが出来るが、ルチル型の酸化チタンを主成分とすることが好ましい。
【0081】
シェルは金属の酸化物から形成することが好ましく、具体的には、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化珪素からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、特に酸化珪素が好ましい。
【0082】
また有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
【0083】
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜5μmが好ましく0.01〜4μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有することが好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
【0084】
本発明に係るハードコート層の屈折率は、低反射性フィルムを得るための光学設計上から屈折率が1.55以上であることが好ましく、1.55〜2.0、特に1.6〜1.7であることが好ましい。ハードコート層の屈折率は添加する微粒子或いは無機バインダーの屈折率や含有量によって調整することが出来る。
【0085】
この様にして形成されたハードコート層は、JIS B 0601に規定される中心線平均粗さRaが1〜50nmのハードコート層であっても、Raが0.1〜1μm程度の防眩層であってもよい。
【0086】
ハードコート層の塗設方法について説明する。
【0087】
基材側の帯電防止機能のない樹脂層を第1ハードコート層、表面側の帯電防止機能を有する樹脂層を第2ハードコート層とした時に、第1及び第2ハードコート層の塗設方法は任意であるが、生産段階ではグラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押し出しコーター、エアードクターコーター、スリットコーター等公知の方法を用いることが出来る。
【0088】
第1ハードコート層を塗設した後に、該層を乾燥した後、第2ハードコート層を塗設し紫外線硬化/乾燥させる従来の方法では、平面性の劣化や層間での干渉縞の発生が見られるが、本発明は、第1ハードコート層の上に乾燥工程を経ずに、第2ハードコート層をwet on wetで積層し、2層を同時に紫外線を使用して硬化/乾燥する方法である。
【0089】
この塗設方法によれば、第1ハードコート層からのラジカルの供給により酸素による硬化阻害を防止出来、第1ハードコート層を塗設後乾燥を行ったり第2ハードコート層の塗設位置まで搬送したりして第1ハードコート層が空気に触れることで、第1ハードコート層表面に酸素が取り込まれることによる硬化阻害を回避することが出来る。
【0090】
特に本発明の帯電防止層を第2ハードコート層に適用し、層厚を薄くした場合、第1ハードコート層の表面に取り込まれた酸素の影響を顕著に受けるので、本発明の同時重層塗布方式は本発明の目的を達成する上で優れた方式である。
【0091】
更に、上記したように乾燥工程を経ずに第1ハードコート層の上に第2ハードコート層をwet on wetで積層することにより、界面の混合を最も良好な状態に調整することが出来、微粒子の分散を維持しながら酸素による影響のない造膜を行うことが出来、より強固な膜形成が可能になる。更に第1ハードコート層と第2ハードコート層の界面をなくし界面起因による干渉ムラも防止出来る。
【0092】
前記第1ハードコート層の上に乾燥工程を経ずに、第2ハードコート層をwet on wetで積層するには、押し出しコーターにより逐次重層するか、若しくは複数のスリットを有するスロットダイにて同時重層を行えばよい。本発明では、複数のスリットを有するスロットダイによる同時重層が好ましい。
【0093】
また、基材側の第1ハードコート層の塗布液及び表面側の第2ハードコート層の塗布液を同時重層塗布した直後に、塗膜が半硬化状態になるように活性エネルギー線照射を行うことが好ましい。塗膜を半硬化状態にすることにより、塗膜粘度を上昇させることが出来、比較的粘度の低い塗布液の場合、層境界での上記金属酸化物粒子の拡散を抑制出来る為、添加した機能性粒子の性能を損なわずに層を形成することが出来る。
【0094】
塗布直後の活性エネルギー線の照射は、後述する光源を塗布機と塗布方向に直列に配置すればよく、例えば塗布幅方向にグラスファイバーを介して活性エネルギー線を導き照射する方法等もとることが出来る。塗布から活性エネルギー線を照射するまでの時間は、3分以内が好ましく、1分以内が更に好ましく、30秒以内が特に好ましい。
【0095】
活性エネルギー線源としては紫外線を使用することが好ましく、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。照射時間は0.5秒〜5分がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率、作業効率から3秒〜2分がより好ましい。フィラーを含まないクリア塗膜の硬化には高圧水銀灯、フィラーを含む場合や厚膜の硬化にはメタルハライドランプが一般的に使用される。また第2ハードコート層の硬化には電子線を利用することも可能で、具体的にはコックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000KeV、好ましくは100〜300KeVのエネルギーを有する電子線が利用出来る。
【0096】
活性エネルギー線硬化樹脂層を塗設する際の溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒の中から適宜選択し、或いはこれらを混合し利用出来る。好ましくは、プロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルまたはプロピレングリコールモノ(炭素数1〜4のアルキル基)アルキルエーテルエステルを5質量%以上、更に好ましくは5〜80質量%以上含有する溶媒が用いられる。
【0097】
次いで、本発明のハードコートフィルム上に反射防止層が設けられた反射防止フィルムの構成について説明する。
【0098】
本発明の反射防止フィルムの基本的な構成を説明する。例えば、反射防止フィルムは、透明プラスチック基材/ハードコート層/低屈折率層、透明プラスチック基材/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、透明プラスチック基材/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順序の層構成を有する。上記ハードコート層は、前記したように少なくとも2層構成のハードコート層であり、ハードコート層の屈折率が、中屈折率層若しくは高屈折率層の屈折率を有していてもよい。透明支持体、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0099】
低屈折率層の屈折率<透明プラスチック基材の屈折率<中屈折率層の屈折率<高屈折率層の屈折率。
【0100】
中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層を有する反射防止フィルムでは、特開昭59−50401号に記載されているように、中屈折率層が下記数式(1)を、高屈折率層が下記数式(2)を、低屈折率層が下記数式(3)をそれぞれ満足することにより、反射防止フィルムとしての平均反射率を更に下げる設計が可能となり好ましい。
【0101】
(hλ/4)×0.7<n33<(hλ/4)×1.3・・・数式(1)
数式(1)中でも、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、n3は中屈折率層の屈折率であり、そして、d3は中屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、350〜800(nm)の範囲の値である。
【0102】
(jλ/4)×0.7<n44<(jλ/4)×1.3・・・数式(2)
数式(2)中でも、jは正の整数(一般に1、2または3)であり、n4は高屈折率層の屈折率であり、そして、d4は高屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、350〜800(nm)の範囲の値である。
【0103】
(kλ/4)×0.7<n55<(kλ/4)×1.3・・・数式(3)
数式(3)中でも、kは正の奇数(一般に1)であり、n5は低屈折率層の屈折率であり、そして、d5は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、350〜800(nm)の範囲の値である。
【0104】
また、本発明においては、ハードコート層或いは高屈折率層に凹凸を付与して防眩性反射防止フィルムとすることも好ましい。
【0105】
この他、透明プラスチック基材/ハードコート層(防眩層)/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順の層構成も好ましい構成である。表面の低屈折率層に防眩性を付与することも出来、表面に防眩層を設けてもよい。
【0106】
〈高屈折率層及び中屈折率〉
本発明においては、反射率の低減のために、透明プラスチック基材若しくはハードコート層を付与した透明プラスチック基材と低屈折率層との間に、高屈折率層を設けることが好ましい。また、透明プラスチック基材と高屈折率層との間に中屈折率層を設けることは、反射率の低減のために更に好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることが更に好ましい。中屈折率層の屈折率は、透明支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0107】
本発明における中、高屈折率層は下記一般式(1)で表される有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物を含有する塗布液を塗布し乾燥させて形成させた屈折率1.55〜2.5の層であることが好ましい。
【0108】
一般式(1)
Ti(OR14
式中、R1としては炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基がよいが、好ましくは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。また、有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物は、アルコキシド基が加水分解を受けて−Ti−O−Ti−のように反応して架橋構造を作り、硬化した層を形成する。
【0109】
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーとしては、Ti(OCH34、Ti(OC254、Ti(O−n−C374、Ti(O−i−C374、Ti(O−n−C494、Ti(O−n−C374の2〜10量体、Ti(O−i−C374の2〜10量体、Ti(O−n−C494の2〜10量体等が好ましい例として挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることが出来る。中でもTi(O−n−C374、Ti(O−i−C374、Ti(O−n−C494、Ti(O−n−C374の2〜10量体、Ti(O−n−C494の2〜10量体が特に好ましい。
【0110】
本発明における中、高屈折率層用塗布液は、水と後述する有機溶媒が順次添加された溶液中に上記有機チタン化合物を添加することが好ましい。水を後から添加した場合は、加水分解/重合が均一に進行せず、白濁が発生したり、膜強度が低下する。水と有機溶媒は添加された後、良く混合させるために攪拌し混合溶解されていることが好ましい。
【0111】
また、別法として有機チタン化合物と有機溶媒を混合させておき、この混合溶液を、上記水と有機溶媒の混合攪拌された溶液中に添加することも好ましい態様である。
【0112】
また、水の量は有機チタン化合物1モルに対して、0.25〜3モルの範囲であることが好ましい。0.25モル未満であると、加水分解、重合の進行が不十分で膜強度が低下する。3モルを超えると加水分解、重合が進行し過ぎて、TiO2の粗大粒子が発生し白濁するため好ましくない。従って水の量は上記範囲で調整する必要がある。
【0113】
また、水の含有率は塗布液総量に対して10質量%未満であることが好ましい。水の含有率を塗布液総量に対して10質量%以上にすると、塗布液の経時安定が劣り白濁を生じたりするため好ましくない。
【0114】
本発明に用いられる有機溶媒としては、水混和性の有機溶媒であることが好ましい。水混和性の有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられるが、特に、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類が好ましい。これらの有機溶媒の使用量は、前述したように、水の含有率が塗布液総量に対して10質量%未満であるように、水と有機溶媒のトータルの使用量を調整すればよい。
【0115】
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物は、単独で用いる場合は、塗布液に含まれる固形分に対し50.0質量%〜98.0質量%を占めていることが望ましい。固形分比率は50質量%〜90質量%がより好ましく、55質量%〜90質量%が更に好ましい。この他、塗布組成物には有機チタン化合物のポリマー(予め有機チタン化合物の加水分解を行って架橋したもの)或いは酸化チタン微粒子を添加することも好ましい。
【0116】
本発明における高屈折率層及び中屈折率層は、微粒子として金属酸化物粒子を含んでもよく、更にバインダーポリマーを含んでもよい。
【0117】
上記塗布液調製法で加水分解/重合した有機チタン化合物と金属酸化物粒子を組み合わせると、金属酸化物粒子と加水分解/重合した有機チタン化合物とが強固に接着し、粒子のもつ硬さと均一膜の柔軟性を兼ね備えた強い塗膜を得ることが出来る。
【0118】
高屈折率層及び中屈折率層に用いる金属酸化物粒子は、屈折率が1.80〜2.80であることが好ましく、1.90〜2.80であることが更に好ましい。金属酸化物粒子の1次粒子の重量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることが更に好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。層中での金属酸化物粒子の重量平均径は、1〜200nmであることが好ましく、5〜150nmであることがより好ましく、10〜100nmであることが更に好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。金属酸化物粒子の平均粒径は、20〜30nm以上であれば光散乱法により、20〜30nm以下であれば電子顕微鏡写真により測定される。金属酸化物粒子の比表面積は、BET法で測定された値として、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることが更に好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
【0119】
金属酸化物粒子の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物であり、具体的には二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化ジルコニウムが挙げられる。中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。金属酸化物粒子は、これらの金属の酸化物を主成分とし、更に他の元素を含むことが出来る。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びS等が挙げられる。
【0120】
金属酸化物粒子は表面処理されていることが好ましい。表面処理は、無機化合物または有機化合物を用いて実施することが出来る。表面処理に用いる無機化合物の例としては、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム及び酸化鉄が挙げられる。中でもアルミナ及びシリカが好ましい。表面処理に用いる有機化合物の例としては、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が挙げられる。中でも、シランカップリング剤が最も好ましい。
【0121】
具体的なシランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びβ−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0122】
また、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが挙げられる。
【0123】
これらのうち、分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、珪素に対して2置換のアルキル基を持つものとしてγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが好ましく、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
【0124】
2種類以上のカップリング剤を併用してもよい。上記に示されるシランカップリング剤に加えて、他のシランカップリング剤を用いてもよい。他のシランカップリング剤には、オルトケイ酸のアルキルエステル(例えば、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸n−プロピル、オルトケイ酸i−プロピル、オルトケイ酸n−ブチル、オルトケイ酸sec−ブチル、オルトケイ酸t−ブチル)及びその加水分解物が挙げられる。
【0125】
カップリング剤による表面処理は、微粒子の分散物に、カップリング剤を加え、室温から60℃までの温度で、数時間から10日間分散物を放置することにより実施出来る。表面処理反応を促進するため、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、オルトケイ酸、リン酸、炭酸)、有機酸(例えば、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、フェノール、ポリグルタミン酸)、またはこれらの塩(例えば、金属塩、アンモニウム塩)を、分散物に添加してもよい。
【0126】
これらシランカップリング剤は予め必要量の水で加水分解されていることが好ましい。シランカップリング剤が加水分解されていると、前述の有機チタン化合物及び金属酸化物粒子の表面が反応し易く、より強固な膜が形成される。また、加水分解されたシランカップリング剤を予め塗布液中に加えることも好ましい。この加水分解に用いた水も有機チタン化合物の加水分解/重合に用いることが出来る。
【0127】
本発明では2種類以上の表面処理を組み合わせて処理されていても構わない。金属酸化物粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状或いは不定形状であることが好ましい。2種類以上の金属酸化物粒子を高屈折率層及び中屈折率層に併用してもよい。
【0128】
高屈折率層及び中屈折率層中の金属酸化物粒子の割合は、5〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜85質量%であり、更に好ましくは20〜80質量%である。微粒子を含有する場合に、前述の有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーまたはそれらの加水分解物の割合は、塗布液に含まれる固形分に対し1〜50質量%であり、好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは1〜30質量%である。
【0129】
上記金属酸化物粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層及び中屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
【0130】
また金属酸化物粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することが出来る。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
【0131】
本発明における高屈折率層及び中屈折率層は、架橋構造を有するポリマー(以下、架橋ポリマーともいう)をバインダーポリマーとして用いることが好ましい。架橋ポリマーの例として、ポリオレフィン等の飽和炭化水素鎖を有するポリマー(以下、ポリオレフィンと総称する)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂等の架橋物が挙げられる。中でも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレタンの架橋物が好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルの架橋物が更に好ましく、ポリオレフィンの架橋物が最も好ましい。また、架橋ポリマーがアニオン性基を有することは更に好ましい。アニオン性基は無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋構造はポリマーに皮膜形成能を付与して皮膜を強化する機能を有する。上記アニオン性基は、ポリマー鎖に直接結合していてもよいし、連結基を介してポリマー鎖に結合していてもよいが、連結基を介して側鎖として主鎖に結合していることが好ましい。
【0132】
アニオン性基の例としては、カルボン酸基(カルボキシル)、スルホン酸基(スルホ)及びリン酸基(ホスホノ)が挙げられる。中でも、スルホン酸基及びリン酸基が好ましい。ここで、アニオン性基は、塩の状態であってもよい。アニオン性基と塩を形成するカチオンは、アルカリ金属イオンであることが好ましい。また、アニオン性基のプロトンは、解離していてもよい。アニオン性基とポリマー鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。好ましいバインダーポリマーである架橋ポリマーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と、架橋構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。この場合、コポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96質量%であることが好ましく、4〜94質量%であることが更に好ましく、6〜92質量%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、2以上のアニオン性基を有していてもよい。
【0133】
アニオン性基を有する架橋ポリマーには、その他の繰り返し単位(アニオン性基も架橋構造も有しない繰り返し単位)が含まれていてもよい。その他の繰り返し単位としては、アミノ基または4級アンモニウム基を有する繰り返し単位及びベンゼン環を有する繰り返し単位が好ましい。アミノ基または4級アンモニウム基は、アニオン性基と同様に、無機微粒子の分散状態を維持する機能を有する。ベンゼン環は、高屈折率層の屈折率を高くする機能を有する。尚、アミノ基、4級アンモニウム基及びベンゼン環は、アニオン性基を有する繰り返し単位或いは架橋構造を有する繰り返し単位に含まれていても、同様の効果が得られる。
【0134】
上記アミノ基または4級アンモニウム基を有する繰り返し単位を構成単位として含有する架橋ポリマーにおいて、アミノ基または4級アンモニウム基は、ポリマー鎖に直接結合していてもよいし、或いは連結基を介し側鎖としてポリマー鎖に結合していてもよいが、後者がより好ましい。アミノ基または4級アンモニウム基は、2級アミノ基、3級アミノ基または4級アンモニウム基であることが好ましく、3級アミノ基または4級アンモニウム基であることが更に好ましい。2級アミノ基、3級アミノ基または4級アンモニウム基の窒素原子に結合している基としては、アルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。4級アンモニウム基の対イオンは、ハライドイオンであることが好ましい。アミノ基または4級アンモニウム基とポリマー鎖とを結合する連結基は、−CO−、−NH−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせから選ばれる2価の基であることが好ましい。架橋ポリマーが、アミノ基または4級アンモニウム基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、0.06〜32質量%であることが好ましく、0.08〜30質量%であることが更に好ましく、0.1〜28質量%であることが最も好ましい。
【0135】
架橋ポリマーは、架橋ポリマーを生成するためのモノマーを配合して高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布液を調製し、塗布液の塗布と同時または塗布後に、重合反応によって生成させることが好ましい。架橋ポリマーの生成と共に、各層が形成される。アニオン性基を有するモノマーは、塗布液中で無機微粒子の分散剤として機能する。アニオン性基を有するモノマーは、無機微粒子に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%使用される。また、アミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは、塗布液中で分散助剤として機能する。アミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは、アニオン性基を有するモノマーに対して、好ましくは3〜33質量%使用される。塗布液の塗布と同時または塗布後に、重合反応によって架橋ポリマーを生成する方法により、塗布液の塗布前にこれらのモノマーを有効に機能させることが出来る。
【0136】
本発明に用いられるモノマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーが最も好ましいが、その例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミド等が挙げられる。アニオン性基を有するモノマー、及びアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは市販のモノマーを用いてもよい。好ましく用いられる市販のアニオン性基を有するモノマーとしては、KAYAMARPM−21、PM−2(日本化薬(株)製)、AntoxMS−60、MS−2N、MS−NH4(日本乳化剤(株)製)、アロニックスM−5000、M−6000、M−8000シリーズ(東亞合成化学工業(株)製)、ビスコート#2000シリーズ(大阪有機化学工業(株)製)、ニューフロンティアGX−8289(第一工業製薬(株)製)、NKエステルCB−1、A−SA(新中村化学工業(株)製)、AR−100、MR−100、MR−200(第八化学工業(株)製)等が挙げられる。また、好ましく用いられる市販のアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーとしてはDMAA(大阪有機化学工業(株)製)、DMAEA,DMAPAA(興人(株)製)、ブレンマーQA(日本油脂(株)製)、ニューフロンティアC−1615(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0137】
ポリマーの重合反応は、光重合反応または熱重合反応を用いることが出来る。特に光重合反応が好ましい。重合反応のため、重合開始剤を使用することが好ましい。例えば、ハードコート層のバインダーポリマーを形成するために用いられる後述する熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
【0138】
重合開始剤として市販の重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に加えて、重合促進剤を使用してもよい。重合開始剤と重合促進剤の添加量は、モノマーの全量の0.2〜10質量%の範囲であることが好ましい。塗布液(モノマーを含む無機微粒子の分散液)を加熱して、モノマー(またはオリゴマー)の重合を促進してもよい。また、塗布後の光重合反応の後に加熱して、形成されたポリマーの熱硬化反応を追加処理してもよい。
【0139】
中屈折率層及び高屈折率層には、比較的屈折率が高いポリマーを用いることが好ましい。屈折率が高いポリマーの例としては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及び環状(脂環式または芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタンが挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高く用いることが出来る。
【0140】
(低屈折率層)
低屈折率層としては、熱または電離放射線により架橋する含フッ素樹脂(以下、「架橋前の含フッ素樹脂」ともいう)の架橋からなる低屈折率層、ゾルゲル法による低屈折率層、または微粒子とバインダーポリマーを用い、微粒子間または微粒子内部に空隙を有する低屈折率層等が用いられるが、本発明に係る低屈折率層は、主として微粒子とバインダーポリマーを用いる低屈折率層であることが好ましい。特に粒子内部に空隙を有する(中空微粒子ともいう)低屈折率層である場合、より屈折率を低下することが出来好ましい。但し、低屈折率層の屈折率は、低ければ反射防止性能が良化するため好ましいが、低屈折率層の強度付与の観点では困難となる。このバランスから、低屈折率層の屈折率は1.45以下であることが好ましく、更に1.30〜1.50であることが好ましく、1.35〜1.49であることがより好ましく、1.35〜1.45であることが特に好ましい。
【0141】
また、上記低屈折率層の調製方法は適宜組み合わせて用いても構わない。
【0142】
架橋前の含フッ素樹脂としては、含フッ素ビニルモノマーと架橋性基付与のためのモノマーから形成される含フッ素共重合体を好ましく挙げることが出来る。上記含フッ素ビニルモノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えば、ビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。架橋性基付与のためのモノマーとしては、グリシジルメタクリレートや、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルグリシジルエーテル等のように分子内に予め架橋性官能基を有するビニルモノマーの他、カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホン酸基等を有するビニルモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル等)が挙げられる。後者は共重合の後、ポリマー中の官能基と反応する基ともう1つ以上の反応性基を持つ化合物を加えることにより、架橋構造を導入出来ることが特開平10−25388号、同10−147739号に記載されている。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロール及び活性メチレン基等が挙げられる。含フッ素共重合体が、加熱により反応する架橋基、若しくは、エチレン性不飽和基と熱ラジカル発生剤若しくはエポキシ基と熱酸発生剤等の組み合わせにより、加熱により架橋する場合、熱硬化型であり、エチレン性不飽和基と光ラジカル発生剤若しくは、エポキシ基と光酸発生剤等の組み合わせにより、光(好ましくは紫外線、電子ビーム等)の照射により架橋する場合、電離放射線硬化型である。
【0143】
また上記モノマー加えて、含フッ素ビニルモノマー及び架橋性基付与のためのモノマー以外のモノマーを併用して形成された含フッ素共重合体を架橋前の含フッ素樹脂として用いてもよい。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロニトリル誘導体等を挙げることが出来る。また、含フッ素共重合体中に、滑り性、防汚性付与のため、ポリオルガノシロキサン骨格や、パーフルオロポリエーテル骨格を導入することも好ましい。これは、例えば末端にアクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基、スチリル基等を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと上記のモノマーとの重合、末端にラジカル発生基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルによる上記モノマーの重合、官能基を持つポリオルガノシロキサンやパーフルオロポリエーテルと、含フッ素共重合体との反応等によって得られる。
【0144】
架橋前の含フッ素共重合体を形成するために用いられる上記各モノマーの使用割合は、含フッ素ビニルモノマーが好ましくは20〜70モル%、より好ましくは40〜70モル%、架橋性基付与のためのモノマーが好ましくは1〜20モル%、より好ましくは5〜20モル%、併用されるその他のモノマーが好ましくは10〜70モル%、より好ましくは10〜50モル%の割合である。
【0145】
含フッ素共重合体は、これらモノマーをラジカル重合開始剤の存在下で、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合法等の手段により重合することにより得ることが出来る。
【0146】
架橋前の含フッ素樹脂は、市販されており使用することが出来る。市販されている架橋前の含フッ素樹脂の例としては、サイトップ(旭硝子製)、テフロン(登録商標)AF(デュポン製)、ポリフッ化ビニリデン、ルミフロン(旭硝子製)、オプスター(JSR製)等が挙げられる。
【0147】
架橋した含フッ素樹脂を構成成分とする低屈折率層は、動摩擦係数が0.03〜0.15の範囲、水に対する接触角が90〜120度の範囲にあることが好ましい。
【0148】
架橋した含フッ素樹脂を構成成分とする低屈折率層が後述する無機粒子を含有することは、屈折率調整の点から好ましい。また無機微粒子は、表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としてはプラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とカップリング剤を使用する化学的表面処理があるが、カップリング剤の使用が好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシ金属化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤等)が好ましく用いられる。無機微粒子がシリカの場合はシランカップリング剤による処理が特に有効である。
【0149】
また、低屈折率層用の素材として、各種ゾルゲル素材を用いることも出来る。この様なゾルゲル素材としては、金属アルコレート(シラン、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等のアルコレート)、オルガノアルコキシ金属化合物及びその加水分解物を用いることが出来る。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。また、各種の官能基を有するオルガノアルコキシシラン(ビニルトリアルコキシシラン、メチルビニルジアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジアルコキシシラン、β−(3,4−エポキジシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン等)、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等)を用いることも好ましい。特にフッ素含有のシラン化合物を用いることは、層の低屈折率化及び撥水・撥油性付与の点で好ましい。
【0150】
低屈折率層として、無機若しくは有機の微粒子を用い、微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして形成した層を用いることも好ましい。微粒子の平均粒径は、0.5〜200nmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、3〜70nmであることが更に好ましく、5〜40nmの範囲であることが最も好ましい。微粒子の粒径は、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。
【0151】
無機微粒子としては、非晶質であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることが更に好ましく、金属酸化物または金属フッ化物からなることが最も好ましい。金属原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、Pb及びNiが好ましく、Mg、Ca、B及びSiが更に好ましい。二種類の金属を含む無機化合物を用いてもよい。好ましい無機化合物の具体例としては、SiO2、またはMgF2であり、特に好ましくはSiO2である。
【0152】
無機微粒子内にミクロボイドを有する粒子は、例えば、粒子を形成するシリカの分子を架橋させることにより形成することが出来る。シリカの分子を架橋させると体積が縮小し、粒子が多孔質になる。ミクロボイドを有する(多孔質)無機微粒子は、ゾル−ゲル法(特開昭53−112732号、特公昭57−9051号に記載)または析出法(APPLIED OPTICS,27巻,3356頁(1988)記載)により、分散物として直接合成することが出来る。また、乾燥・沈澱法で得られた粉体を、機械的に粉砕して分散物を得ることも出来る。市販の多孔質無機微粒子(例えば、SiO2ゾル)を用いてもよい。
【0153】
これらの無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)が好ましい。
【0154】
有機微粒子も非晶質であることが好ましい。有機微粒子は、モノマーの重合反応(例えば乳化重合法)により合成されるポリマー微粒子であることが好ましい。有機微粒子のポリマーはフッ素原子を含むことが好ましい。ポリマー中のフッ素原子の割合は、35〜80質量%であることが好ましく、45〜75質量%であることが更に好ましい。また、有機微粒子内に、例えば、粒子を形成するポリマーを架橋させ、体積を縮小させることによりミクロボイドを形成させることも好ましい。粒子を形成するポリマーを架橋させるためには、ポリマーを合成するためのモノマーの20モル%以上を多官能モノマーとすることが好ましい。多官能モノマーの割合は、30〜80モル%であることが更に好ましく、35〜50モル%であることが最も好ましい。上記有機微粒子の合成に用いられるモノマーとしては、含フッ素ポリマーを合成するために用いるフッ素原子を含むモノマーの例として、フルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、アクリル酸またはメタクリル酸のフッ素化アルキルエステル類及びフッ素化ビニルエーテル類が挙げられる。フッ素原子を含むモノマーとフッ素原子を含まないモノマーとのコポリマーを用いてもよい。フッ素原子を含まないモノマーの例としては、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル)、スチレン類(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル)、アクリルアミド類(例えば、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミド類及びアクリルニトリル類が挙げられる。多官能モノマーの例としては、ジエン類(例えば、ブタジエン、ペンタジエン)、多価アルコールとアクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、多価アルコールとメタクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート)、ジビニル化合物(例えば、ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルベンゼン)、ジビニルスルホン、ビスアクリルアミド類(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びビスメタクリルアミド類が挙げられる。
【0155】
粒子間のミクロボイドは、微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより形成することが出来る。尚、粒径が等しい(完全な単分散の)球状微粒子を最密充填すると、26体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。粒径が等しい球状微粒子を単純立方充填すると、48体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。実際の低屈折率層では、微粒子の粒径の分布や粒子内ミクロボイドが存在するため、空隙率は上記の理論値からかなり変動する。空隙率を増加させると、低屈折率層の屈折率が低下する。微粒子を積み重ねてミクロボイドを形成すると、微粒子の粒径を調整することで、粒子間ミクロボイドの大きさも適度の(光を散乱せず、低屈折率層の強度に問題が生じない)値に容易に調節出来る。更に、微粒子の粒径を均一にすることで、粒子間ミクロボイドの大きさも均一である光学的に均一な低屈折率層を得ることが出来る。これにより、低屈折率層は微視的にはミクロボイド含有多孔質膜であるが、光学的或いは巨視的には均一な膜にすることが出来る。粒子間ミクロボイドは、微粒子及びポリマーによって低屈折率層内で閉じていることが好ましい。閉じている空隙には、低屈折率層表面に開かれた開口と比較して、低屈折率層表面での光の散乱が少ないとの利点もある。
【0156】
ミクロボイドを形成することにより、低屈折率層の巨視的屈折率は、低屈折率層を構成する成分の屈折率の和よりも低い値になる。層の屈折率は、層の構成要素の体積当たりの屈折率の和になる。微粒子やポリマーのような低屈折率層の構成成分の屈折率は1よりも大きな値であるのに対して、空気の屈折率は1.00である。その為、ミクロボイドを形成することによって、屈折率が非常に低い低屈折率層を得ることが出来る。
【0157】
また、本発明ではSiO2の中空微粒子を用いることも好ましい態様である。
【0158】
本発明でいう中空微粒子とは、粒子壁を有しその内部が空洞であるような粒子をいい、例えば前述の微粒子内部にミクロボイドを有するSiO2粒子を更に有機珪素化合物(テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン類)で表面を被覆しその細孔入り口を閉塞して形成された粒子である。或いは前記粒子壁内部の空洞が溶媒または気体で満たされていてもよく、例えば空気の場合は中空微粒子の屈折率は、通常のシリカ(屈折率=1.46)と比較して著しく低くすることが出来る(屈折率=1.44〜1.34)。この様な中空SiO2微粒子を添加することにより、低屈折率層の更なる低屈折率化が可能となる。
【0159】
上記無機微粒子内にミクロボイドを有する粒子を中空にする調製方法は、特開2001−167637号公報、2001−233611号公報に記載されている方法に準じればよく、また本発明では市販の中空SiO2微粒子を用いることが出来る。市販の粒子の具体例としては、触媒化成工業社製P−4等が挙げられる。
【0160】
低屈折率層は、5〜50質量%の量のポリマーを含むことが好ましい。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持出来るように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10〜30質量%であることが好ましい。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させるか、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成するか、或いは(3)微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用することが好ましい。(1)の表面処理剤に結合させるポリマーは、(2)のシェルポリマーまたは(3)のバインダーポリマーであることが好ましい。(2)のポリマーは、低屈折率層の塗布液の調製前に、微粒子の周囲に重合反応により形成することが好ましい。(3)のポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に、重合反応により形成することが好ましい。上記(1)〜(3)のうちの二つまたは全てを組み合わせて実施することが好ましく、(1)と(3)の組み合わせ、または(1)〜(3)全ての組み合わせで実施することが特に好ましい。(1)表面処理、(2)シェル及び(3)バインダーについて順次説明する。
【0161】
(1)表面処理
微粒子(特に無機微粒子)には、表面処理を実施して、ポリマーとの親和性を改善することが好ましい。表面処理は、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理と、カップリング剤を使用する化学的表面処理に分類出来る。化学的表面処理のみ、または物理的表面処理と化学的表面処理の組み合わせで実施することが好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。微粒子がSiO2からなる場合は、シランカップリング剤による表面処理が特に有効に実施出来る。具体的なシランカップリング剤の例としては、前記したシランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0162】
カップリング剤による表面処理は、微粒子の分散物に、カップリング剤を加え、室温から60℃までの温度で、数時間から10日間分散物を放置することにより実施出来る。表面処理反応を促進するため、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、オルトケイ酸、リン酸、炭酸)、有機酸(例えば、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、フェノール、ポリグルタミン酸)、またはこれらの塩(例えば、金属塩、アンモニウム塩)を、分散物に添加してもよい。
【0163】
(2)シェル
シェルを形成するポリマーは、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが好ましい。フッ素原子を主鎖または側鎖に含むポリマーが好ましく、フッ素原子を側鎖に含むポリマーが更に好ましい。ポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルが好ましく、フッ素置換アルコールとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸とのエステルが最も好ましい。シェルポリマーの屈折率は、ポリマー中のフッ素原子の含有量の増加に伴い低下する。低屈折率層の屈折率を低下させるため、シェルポリマーは35〜80質量%のフッ素原子を含むことが好ましく、45〜75質量%のフッ素原子を含むことが更に好ましい。フッ素原子を含むポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成することが好ましい。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例としては、フルオロオレフィン(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、フッ素化ビニルエーテル及びフッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが挙げられる。
【0164】
シェルを形成するポリマーは、フッ素原子を含む繰り返し単位とフッ素原子を含まない繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。フッ素原子を含まない繰り返し単位は、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの例としては、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート)、スチレン及びその誘導体(例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル)、アクリルアミド(例えば、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミド及びアクリロニトリルが挙げられる。
【0165】
後述する(3)のバインダーポリマーを併用する場合は、シェルポリマーに架橋性官能基を導入して、シェルポリマーとバインダーポリマーとを架橋により化学的に結合させてもよい。シェルポリマーは、結晶性を有していてもよい。シェルポリマーのガラス転移温度(Tg)が低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、低屈折率層内のミクロボイドの維持が容易である。但し、Tgが低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、微粒子が融着せず、低屈折率層が連続層として形成されない(その結果、強度が低下する)場合がある。その場合は、後述する(3)のバインダーポリマーを併用し、バインダーポリマーにより低屈折率層を連続層として形成することが望ましい。微粒子の周囲にポリマーシェルを形成して、コアシェル微粒子が得られる。コアシェル微粒子中に無機微粒子からなるコアが5〜90体積%含まれていることが好ましく、15〜80体積%含まれていることが更に好ましい。二種類以上のコアシェル微粒子を併用してもよい。また、シェルのない無機微粒子とコアシェル粒子とを併用してもよい。
【0166】
(3)バインダー
バインダーポリマーは、飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりまたはそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。架橋性官能基の例としては、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が挙げられる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用出来る。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、架橋基は、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。バインダーポリマーの重合反応及び架橋反応に使用する重合開始剤は、熱重合開始剤や、光重合開始剤が用いられるが、光重合開始剤の方がより好ましい。光重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例としては、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが挙げられる。ベンゾイン類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが挙げられる。ベンゾフェノン類の例としては、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが挙げられる。ホスフィンオキシド類の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0167】
バインダーポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に重合反応(必要ならば更に架橋反応)により形成することが好ましい。低屈折率層の塗布液に、少量のポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂)を添加してもよい。
【0168】
また、本発明の低屈折率層或いは他の屈折率層には滑り剤を添加することが好ましく、滑り性を付与することによって耐傷性を改善することが出来る。滑り剤としては、シリコーンオイルまたはワックス状物質が好ましく用いられる。例えば、下記一般式で表される化合物が好ましい。
【0169】
一般式 R1COR2
式中、R1は炭素原子数が12以上の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。アルキル基またはアルケニル基が好ましく、更に炭素原子数が16以上のアルキル基またはアルケニル基が好ましい。R2は−OM1基(M1はNa、K等のアルカリ金属を表す)、−OH基、−NH2基、または−OR3基(R3は炭素原子数が12以上の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、好ましくはアルキル基またはアルケニル基を表す)を表し、R2としては−OH基、−NH2基または−OR3基が好ましい。具体的には、ベヘン酸、ステアリン酸アミド、ペンタコ酸等の高級脂肪酸またはその誘導体、天然物としてこれらの成分を多く含んでいるカルナバワックス、蜜蝋、モンタンワックスも好ましく使用出来る。特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサン、米国特許第4,275,146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド、特公昭58−33541号公報、英国特許第927,446号明細書または特開昭55−126238号公報及び同58−90633号公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数が10〜24の脂肪酸と炭素数が10〜24のアルコールのエステル)、そして米国特許第3,933,516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩、特開昭51−37217号公報に開示されているような炭素数10までのジカルボン酸と脂肪族または環式脂肪族ジオールからなるポリエステル化合物、特開平7−13292号公報に開示されているジカルボン酸とジオールからのオリゴポリエステル等を挙げることが出来る。
【0170】
例えば、低屈折率層に使用する滑り剤の添加量は0.01mg/m2〜10mg/m2が好ましい。
【0171】
反射防止フィルムの各層またはその塗布液には、前述した成分(金属酸化物粒子、ポリマー、分散媒体、重合開始剤、重合促進剤)以外に、重合禁止剤、レベリング剤、増粘剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、帯電防止剤や接着付与剤を添加してもよい。
【0172】
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2,681,294号)により、塗布により形成することが出来る。2以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2,761,791号、同2,941,898号、同3,508,947号、同3,526,528号及び原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0173】
本発明では、低反射積層体の製造方法において、前記調製した塗布液を支持体に塗布した後乾燥する際に、好ましくは60℃以上で乾燥することが好ましく、80℃以上で乾燥することが更に好ましい。また、露点20℃以下で乾燥することが好ましく、15℃以下で乾燥することが更に好ましい。更に支持体に塗布した後10秒以内に乾燥が開始されることが好ましく、上記条件と組み合わせることが、本発明の効果を得る上で好ましい製造方法である。
【0174】
(透明プラスチック基材)
次に、本発明で用いることの出来る透明プラスチック基材について説明する。
【0175】
本発明に用いられる透明プラスチック基材としては、製造が容易であること、活性エネルギー線硬化型樹脂層との接着性が良好である、光学的に等方性である、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられ、下記基材フィルムが好ましく用いられる。
【0176】
本発明でいう透明とは、可視光の透過率60%以上であることをさし、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0177】
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオネア(以上、日本ゼオン社製))、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムまたはガラス板等を挙げることが出来る。中でも、セルローストリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)が好ましく、本発明においては、特にセルロースエステルフィルム(例えば、コニカタック 製品名KC8UX2MW、KC4UX2MW、KC8UY、KC4UY、KC5UN、KC12UR(コニカミノルタオプト(株)製))が、製造上、コスト面、透明性、等方性、接着性等の観点から好ましく用いられる。これらのフィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
【0178】
基材フィルムの光学特性としては膜厚方向のリターデーションRtが0nm〜300nm、面内方向のリターデーションR0が0nm〜1000nmのものが好ましく用いられる。
【0179】
本発明においては、基材フィルムとしてはセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。
【0180】
特にアセチル基の置換度をX、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースの混合脂肪酸エステルを有する基材フィルムが好ましく用いられる。
【0181】
2.3≦X+Y≦3.0
0.1≦Y≦1.2
特に、2.5≦X+Y≦2.85
0.3≦Y≦1.2であることが好ましい。
【0182】
本発明に係る基材フィルムとして、セルロースエステルを用いる場合、セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることが出来る。
【0183】
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C25COCl、C37COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することが出来る。また、本発明に用いられるセルロースエステルは各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
【0184】
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが特に好ましく用いられる。尚、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。
【0185】
プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネートは耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
【0186】
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
【0187】
セルロースエステルの数平均分子量は、70000〜250000が、成型した場合の機械的強度が強く、かつ、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80000〜150000である。
【0188】
これらセルロースエステルは、一般的に溶液流延製膜法と呼ばれるセルロースエステル溶解液(ドープ)を、例えば、無限に移送する無端の金属ベルトまたは回転する金属ドラムの流延用支持体上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し製膜する方法で製造されることが好ましい。
【0189】
これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解出来、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセト酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
【0190】
また、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において流延用支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させる時に、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
【0191】
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライド或いは酢酸メチルが好ましく用いられる。
【0192】
上記有機溶媒の他に、0.1質量%〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30質量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。これらは上記記載のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
【0193】
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることが出来る。
【0194】
これらの溶媒のうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70質量%〜95質量%に対してエタノール5質量%〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることも出来る。このとき、冷却溶解法によりドープを調製してもよい。
【0195】
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは少なくとも幅手方向に延伸されたものが好ましく、特に溶液流延工程で残留溶媒量が3質量%〜40質量%である時に幅手方向に1.01倍〜1.5倍に延伸されたものであることが好ましい。より好ましくは幅手方向と長手方向に2軸延伸することであり、残留溶媒料が3質量%〜40質量%である時に幅手方向及び長手方向に、各々1.01倍〜1.5倍に延伸されることが望ましい。この様なすることにより、平面性及び光拡散性に優れた光拡散性フィルムを得ることが出来る。
【0196】
尚、残留溶媒量は下記の式により表される。
【0197】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブ(溶媒を含有したセルロースエステルフィルム)の任意時点における質量、NはMのウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0198】
更に、2軸延伸しナーリング加工をすることによって、長尺状光学フィルムのロール状での保管中の巻き形状の劣化を著しく改善することが出来る。
【0199】
本発明においては、二軸延伸されたセルロースエステルフィルムは、光透過率が90%以上、より好ましくは93%以上の透明支持体であることが好ましい。
【0200】
本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は、その厚さが10μm〜100μmのものが好ましく、更に好ましくは40μm〜80μmであり、透湿性は、JIS Z 0208(25℃、90%RH)に準じて測定した値として、200g/m2・24時間以下であることが好ましく、更に好ましくは、10〜180g/m2・24時間以下であり、特に好ましくは、160g/m2・24時間以下である。特には、膜厚10μm〜80μmで透湿性が上記範囲内であることが好ましい。
【0201】
本発明においては、長尺フィルムを用いることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、基材フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましい。
【0202】
本発明の反射防止フィルムにセルロースエステルフィルムを用いる場合、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を好ましく用いることが出来る。
【0203】
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることが出来る。その他のカルボン酸エステルの例には、トリメチロールプロパントリベンゾエート、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
【0204】
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることが出来る。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0205】
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1質量%〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3質量%〜13質量%である。
【0206】
本発明の反射防止フィルム用の長尺フィルムには、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0207】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
【0208】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0209】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば下記の紫外線吸収剤を具体例として挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0210】
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、Ciba製)
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0211】
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0212】
また、特開2001−187825に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、長尺フィルムの面品質を向上させ、塗布性にも優れている。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0213】
また、特開平6−148430号に記載の一般式(1)または一般式(2)、特願2000−156039の一般式(3)、(6)、(7)記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)も好ましく用いられる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等が市販されている。
【0214】
また、本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには滑り性を付与するため、前記活性エネルギー線硬化型樹脂層で記載したものと同様の微粒子を用いることが出来る。中でもSiO2微粒子が好ましい。
【0215】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムに添加される微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成してセルロースエステルフィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、更に好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることが出来る。
【0216】
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とした。
【0217】
微粒子の見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、本発明のように固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
【0218】
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上のSiO2微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることが出来る。また例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することが出来る。
【0219】
上記記載の見掛比重はSiO2微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出したものである。
【0220】
見掛比重(g/リットル)=SiO2質量(g)/SiO2の容積(リットル)
本発明に用いられる微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
【0221】
《調製方法A》
溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて攪拌する。
【0222】
《調製方法B》
溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、攪拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて攪拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0223】
《調製方法C》
溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、攪拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0224】
調製方法AはSiO2微粒子の分散性に優れ、調製方法CはSiO2微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法BはSiO2微粒子の分散性と、SiO2微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0225】
《分散方法》
SiO2微粒子を溶剤などと混合して分散する時のSiO2の濃度は5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0226】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0227】
セルロースエステルに対するSiO2微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、SiO2微粒子は0.01質量部〜5.0質量部が好ましく、0.05質量部〜1.0質量部が更に好ましく、0.1質量部〜0.5質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方が、凝集物が少なくなる。
【0228】
分散機は通常の分散機が使用出来る。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。SiO2微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
【0229】
上記のような高圧分散装置には、Microfluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)或いはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えば、イズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
【0230】
また、微粒子を含むドープを流延支持体に直接接するように流延することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。
【0231】
また、流延後に剥離して乾燥されロール状に巻き取られた後、本発明に係る光学薄膜層が設けられる。加工若しくは出荷されるまでの間、汚れや静電気によるゴミ付着等から製品を保護するために通常、包装加工がなされる。この包装材料については、上記目的が果たせれば特に限定されないが、フィルムからの残留溶媒の揮発を妨げないものが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、紙、各種不織布等が挙げられる。繊維がメッシュクロス状になったものは、より好ましく用いられる。
【0232】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、複数のドープを用いた共流延法等による多層構成を有するものであってもよい。
【0233】
共流延とは、異なったダイを通じて2層または3層構成にする逐次多層流延方法、2つまたは3つのスリットを有するダイ内で合流させ2層または3層構成にする同時多層流延方法、逐次多層流延と同時多層流延を組み合わせた多層流延方法のいずれであっても良い。
【0234】
また、本発明で用いられるセルロースエステルは、フィルムにした時の輝点異物が少ないものが、支持体として好ましく用いられる。本発明において、輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の面から光源の光を当てて、もう一方の面からセルロースエステルフィルムを観察した時に、光源の光がもれて見える点のことである。
【0235】
このとき評価に用いる偏光板は輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物の発生は、セルロースエステルに含まれる未酢化のセルロースがその原因の1つと考えられ、対策としては、未酢化のセルロース量の少ないセルロースエステルを用いることや、また、セルロースエステルを溶解したドープ液の濾過等により、除去、低減が可能である。また、フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロースエステルの含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向がある。
【0236】
輝点異物は、輝点の直径0.01mm以上のものが200個/cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは、100個/cm2以下、50個/cm2以下、30個/cm2以下、10個/cm2以下であることが好ましいが、特に好ましくは、0であることである。
【0237】
また、0.005mm〜0.01mmの輝点についても200個/cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは、100個/cm2以下、50個/cm2以下、30個/cm2以下、10個/cm2以下であることが好ましいが、特に好ましいのは、輝点が0の場合である。0.005mm以下の輝点についても少ないものが好ましい。
【0238】
輝点異物を濾過によって除去する場合、セルロースエステルを単独で溶解させたものを濾過するよりも可塑剤を添加混合した組成物を濾過することが輝点異物の除去効率が高く好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、セラミックス、金属等も好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく、更に好ましくは、30μm以下、10μm以下であるが、特に好ましくは、5μm以下のものである。
【0239】
これらは、適宜組み合わせて使用することも出来る。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることが出来るが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
【0240】
本発明の反射防止フィルムの活性エネルギー線硬化樹脂層を設けた側と反対側の面にはバックコート層を設けることが好ましい。バックコート層は、活性エネルギー線硬化樹脂層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることが出来る。尚、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために微粒子が添加されることが好ましい。
【0241】
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることが出来る。微粒子は珪素を含むものがヘイズが低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
【0242】
これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることが出来る。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することが出来る。
【0243】
これらの中でもでアエロジル200V、アエロジルR972Vがヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明で用いられる反射防止フィルムは、活性エネルギー線硬化樹脂層の裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
【0244】
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく0.5%以下であることが好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
【0245】
バックコート層は、具体的にはセルロースエステルフィルムを溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合物の他更に溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを透明樹脂フィルムのカール度合いや樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
【0246】
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。この様な混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムなどがある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノール或いは炭化水素類(トルエン、キシレン)などがある。
【0247】
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、或いはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体或いは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマーなどが市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することも出来る。
【0248】
特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層である。
【0249】
バックコート層を塗設する順番はセルロースエステルフィルムの活性エネルギー線硬化樹脂層を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。或いは2回以上に分けてバックコート層を塗布することも出来る。
【0250】
(偏光板)
本発明に係るハードコートフィルム若しくは反射防止フィルムは偏光板保護フィルムとして極めて優れている。偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明においても同様に、本発明のハードコートフィルム若しくは反射防止フィルムをアルカリ鹸化処理した偏光板用保護フィルムを、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる。本発明のハードコートフィルム若しくは反射防止フィルムとした後に、セルロースエステルフィルムの片面を鹸化処理してもよい。
【0251】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明に係わる多層構造のセルロースエステルフィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせるが、本発明に係る反射防止フィルムは透湿性が低く耐久性に優れている。
【0252】
本発明の偏光板を用いた画像表示装置は耐久性に優れ、長期間にわたってコントラストの高い表示が可能である。
【0253】
(画像表示装置)
本発明のハードコートフィルム若しくは反射防止フィルム或いはそれを用いた偏光板を画像表示装置に組み込むことによって、種々の画像表示装置を作製することが出来る。画像表示装置としては、液晶画像表示装置(反射型、半透過型、透過型)、有機電解発光素子、プラズマディスプレー等がある。例えば、高温高湿条件下での強制劣化処理において、画像表示装置についても本発明の反射防止フィルムまたはそれを用いた偏光板は、視認性に優れかつ反射防止フィルム起因の問題は認められなかった。
【実施例】
【0254】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0255】
帯電性樹脂層(第1クリアハードコート層)塗布液、帯電防止樹脂層(第2クリアハードコート層)塗布液、低屈折率層塗布液を下記組成で作製した。
【0256】
〈帯電性樹脂層1〉
下記材料を攪拌、混合し帯電性樹脂層塗布液1とした。
【0257】
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)(日本化薬製) 323質量部
開始剤;イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ製) 36質量部
レべリング剤;FZ2207(日本ユニカー製)10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 7質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 317質量部
酢酸エチル 317質量部
〈帯電性樹脂層2〉
下記材料を攪拌、混合し帯電性樹脂層塗布液2とした。
【0258】
サンラッドH601R(三洋化成製) 360質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 320質量部
酢酸エチル 320質量部
〈帯電防止樹脂層1〉
下記材料を攪拌、混合し帯電防止樹脂層塗布液1とした。
【0259】
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)(日本化薬製) 226質量部
開始剤;イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ製) 25質量部
導電性微粒子;ELCOM V2504(ITOゾル、固形分20%、触媒化成製)
540質量部
レべリング剤;FZ2207(日本ユニカー製)10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 7質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 101質量部
酢酸エチル 101質量部
〈帯電防止樹脂層2〉
下記材料を攪拌、混合し帯電防止樹脂層塗布液2とした。
【0260】
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)(日本化薬製) 297質量部
開始剤;イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ製) 33質量部
導電性微粒子;ELCOM V2504(ITOゾル、固形分20%、触媒化成製)
144質量部
レべリング剤;FZ2207(日本ユニカー製)10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 7質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 259質量部
酢酸エチル 259質量部
〈帯電防止樹脂層3〉
下記材料を攪拌、混合し帯電防止樹脂層塗布液3とした。
【0261】
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)(日本化薬製) 275質量部
開始剤;イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ製) 30質量部
導電性微粒子;ELCOM V2504(ITOゾル、固形分20%、触媒化成製)
270質量部
レべリング剤;FZ2207(日本ユニカー製)10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 7質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 209質量部
酢酸エチル 209質量部
〈帯電防止樹脂層4〉
下記材料を攪拌、混合し帯電防止樹脂層塗布液4とした。
【0262】
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)(日本化薬製) 67質量部
開始剤;イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ製) 7質量部
導電性微粒子;ELCOM V2504(ITOゾル、固形分20%、触媒化成製)
875質量部
レべリング剤;FZ2207(日本ユニカー製)10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 23質量部
酢酸エチル 23質量部
〈帯電防止樹脂層5〉
下記材料を攪拌、混合し帯電防止樹脂層塗布液5とした。
【0263】
導電性微粒子分散物(例示化合物IP−24の5%メタノール分散液、平均粒径0.2μm) 100質量部
セルロースジアセテート樹脂(商品名:アセテートフレークス L−AC、ダイセル化学工業(株)製) 2質量部
メタノール 200質量部
アセトン 400質量部
酢酸エチル 250質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
〈帯電防止樹脂層6〉
下記材料を攪拌、混合し帯電防止樹脂層塗布液6とした。
【0264】
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)(日本化薬製) 226質量部
開始剤;イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ製) 25質量部
導電性微粒子;SNAP(SbO2分散液、固形分15%、シーアイ化成製)
720質量部
レべリング剤;FZ2207(日本ユニカー製)10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 7質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 11質量部
酢酸エチル 11質量部
〈帯電防止樹脂層7〉
下記材料を攪拌、混合し帯電防止樹脂層塗布液7とした。
【0265】
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)(日本化薬製) 148質量部
開始剤;イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ製) 16質量部
導電性微粒子;ELCOM V2504(ITOゾル、固形分20%、触媒化成製)
450質量部
高屈折化剤;RTSPNB15WT%−G0(酸化チタン微粒子分散物、固形分15%、シーアイ化成工業社製) 300質量部
レべリング剤;FZ2207(日本ユニカー製)10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 6質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 40質量部
酢酸エチル 40質量部
〈低屈折率層〉
(テトラエトキシシラン加水分解物の調製)
テトラエトキシシラン29gとエタノール55gを混合し、これに酢酸の1.6質量%水溶液16gを添加した後に、25℃にて20時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物を調製した。
【0266】
(低屈折率層組成物aの調製:ゾルゲル処方)
まず容器に下記割合で混合溶媒を作製した。
【0267】
プロピレングリコールモノメチルエーテル 382質量部
イソプロピルアルコール 384質量部
この混合溶媒に
テトラエトキシシラン加水分解物 226質量部
をゆっくり添加して混合した。混合攪拌後、
KBM503(シランカップリング剤・信越化学製) 6質量部
をゆっくり添加して混合した。混合攪拌後、
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207:日本ユニカー社製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 2質量部
をゆっくり添加して混合し、低屈折率層組成物aとした。
【0268】
(低屈折率層組成物bの調製:中空微粒子処方)
まず容器に下記割合で混合溶媒を作製した。
【0269】
プロピレングリコールモノメチルエーテル 377質量部
イソプロピルアルコール 379質量部
この混合溶媒に
テトラエトキシシラン加水分解物 226質量部
をゆっくり添加して混合した。混合攪拌後、
KBM503(シランカップリング剤・信越化学製) 3質量部
をゆっくり添加して混合した。混合攪拌後、
二酸化ケイ素微粒子分散物(固形分20質量%)(触媒化成工業社製 P−4)
12質量部
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207:日本ユニカー社製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 2質量部
をゆっくり添加して混合し、低屈折率層組成物bとした。
【0270】
〈比較例1〉
未塗布ベース巻き出し〜塗布1(第1コーター)〜乾燥1(乾燥ゾーン1)〜塗布2(第2コーター)〜乾燥2(乾燥ゾーン2)〜UV照射〜塗布済みベース巻き取りが連続で行えるテストプラントにて、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルム(コニカミノルタオプト(株)製コニカタックKC8UX2MW、屈折率1.49、アセチル基の置換度2.88)の片面に、下記条件で塗布を行いハードコートフィルムを作製した。
【0271】
・ベース幅1.4m、塗布幅1.3m
(1パス目)
・塗布速度10m/min
・第1コーター:1スロット押し出しコーター
・塗布液:帯電性樹脂層塗布液1
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が3.0μmになるように調整した。
【0272】
・乾燥ゾーン1:1m、乾燥温度80℃
・第2コーター:塗布せず
・乾燥ゾーン2−1:1m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−2:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−3:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−4:2m、乾燥温度80℃
・乾燥後UVを照射(120mJ/cm2になるよう、UVランプの出力を調整)
(2パス目)
・塗布速度10m/min
・第1コーター:1スロット押し出しコーター
・塗布液:帯電防止樹脂層塗布液1
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が2.0μmになるように調整した。
【0273】
・乾燥ゾーン1:1m、乾燥温度80℃
・第2コーター:塗布せず
・乾燥ゾーン2−1:1m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−2:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−3:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−4:2m、乾燥温度80℃
・乾燥後UVを照射(120mJ/cm2になるよう、UVランプの出力を調整)
〈比較例2〉
比較例1において1パス目の第1コーター塗布液を塗布直後、塗布機に近接して設けたUV照射ランプによりUV照射(30mJ/cm2になるよう、UVランプの出力を調整)を行い塗膜を半硬化し、乾燥しなかった以外は同様にして2パス目の塗布、乾燥・UV照射を行った。
【0274】
〈比較例3〉
比較例1と同じテストプラントおよびベースフィルムを用いて下記条件にてハードコートフィルムを作製した。
【0275】
・ベース幅1.4m、塗布幅1.3m
(1パス目)
・塗布速度10m/min
・第1コーター:1スロット押し出しコーター
塗布液:帯電性樹脂層塗布液1
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が3.0μmになるように調整した。
【0276】
・乾燥ゾーン1:1m、乾燥温度30℃
・第2コーター:1スロット押し出しコーター
塗布液:帯電防止樹脂層塗布液1
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が2.0μmになるように調整した。
【0277】
・乾燥ゾーン2−1:1m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−2:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−3:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−4:2m、乾燥温度80℃
・乾燥後UVを照射(120mJ/cm2になるよう、UVランプの出力を調整)
〈比較例4〉
比較例3において乾燥ゾーン1の温度を80℃にした以外は比較例3と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0278】
〈比較例5〉
比較例3において第1コーターの塗布液を塗布直後、塗布機に近接して設けたUVランプによりUV照射(30mj/cm2になるよう、UVランプの出力を調整)を行い塗膜を半硬化した後、比較例3と同様にして第2コーターでの塗布、乾燥、UV照射し、ハードコートフィルムを作製した。
【0279】
〈実施例1〉
比較例1と同じテストプラント及びベースフィルムを用いて下記条件にてハードコートフィルムを作製した。
【0280】
・ベース幅1.4m、塗布幅1.3m
(1パス目)
・塗布速度10m/min
・第1コーター:2スロット押し出しコーター
2スロットの押し出しコーターを用いwet on wetにて同時に重層塗布を行った。
【0281】
尚膜厚については単層で塗布した場合の流量に従って設定した。
【0282】
(第1スロット;基材側樹脂層)
・塗布液:帯電性樹脂層塗布液1
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が3.0μmになるように調整した。
【0283】
(第2スロット;表面側樹脂層)
・塗布液:帯電防止樹脂層塗布液1
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が2.0μmになるように調整した。
【0284】
・乾燥ゾーン1:1m、乾燥温度80℃
・第2コーター:塗布せず
・乾燥ゾーン2−1:1m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−2:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−3:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−4:2m、乾燥温度80℃
・乾燥後UVを照射(120mJ/cm2になるよう、UVランプの出力を調整)
〈実施例2〉
実施例1において第2スロット;表面側樹脂層の乾燥硬化後の膜厚を0.4μmになるように調整した以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0285】
〈実施例3〉
実施例1において第1スロット;基材側樹脂層の乾燥硬化後の膜厚を5.0μmになるよう調整し、第2スロット;表面側樹脂層の乾燥硬化後の膜厚を4.0μmになるように調整した以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0286】
〈実施例4〉
実施例1において第1スロット;基材側樹脂層の乾燥硬化後の膜厚を1.5μmになるよう調整し、第2スロット;表面側樹脂層の乾燥硬化後の膜厚を1.0μmになるように調整した以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0287】
〈実施例5〉
実施例1において第2スロット;表面側樹脂層塗布液を帯電防止樹脂層塗布液2にした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0288】
〈実施例6〉
実施例1において第2スロット;表面側樹脂層塗布液を帯電防止樹脂層塗布液3にした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0289】
〈実施例7〉
実施例1において第2スロット;表面側樹脂層塗布液を帯電防止樹脂層塗布液4にした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0290】
〈実施例8〉
実施例1において第2スロット;表面側樹脂層塗布液を帯電防止樹脂層塗布液6にした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0291】
〈実施例9〉
実施例1において第2スロット;表面側樹脂層塗布液を帯電防止樹脂層塗布液7にした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0292】
〈実施例10〉
実施例1において第1スロット;基材側樹脂層塗布液を帯電性樹脂層塗布液2にして乾燥硬化後の膜厚を4.0μmになるよう調整し、第2スロット;表面側樹脂層塗布液を帯電防止樹脂層塗布液7にして乾燥硬化後の膜厚を1.0μmになるよう調整した以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0293】
〈実施例11〉
実施例1と同じテストプラント及びベースフィルムを用いて下記条件にてハードコートフィルムを作製した。
【0294】
・ベース幅1.4m、塗布幅1.3m
(1パス目)
・塗布速度10m/min
・第1コーター:2スロット押し出しコーター
2スロットの押し出しコーターを用いwet on wetにて同時に重層塗布を行った。
【0295】
尚膜厚については単層で塗布した場合の流量に従って設定した。
【0296】
(第1スロット;基材側樹脂層)
・塗布液:帯電防止性樹脂層塗布液1
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が1.0μmになるように調整した。
【0297】
(第2スロット;表面側樹脂層)
・塗布液:帯電性樹脂層塗布液1
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が3.0μmになるように調整した。
【0298】
・乾燥ゾーン1:1m、乾燥温度80℃
・第2コーター:塗布せず
・乾燥ゾーン2−1:1m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−2:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−3:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−4:2m、乾燥温度80℃
・乾燥後UVを照射(120mJ/cm2になるよう、UVランプの出力を調整)
1パス目樹脂層試料の屈折率を下記測定法により測定した結果、1.52であった。
【0299】
〈実施例12〉
実施例1において、1パス目の第1コーター塗布液を塗布直後、塗布機に近接して設けたUV照射ランプによりUV照射(30mJ/cm2になるよう、UVランプの出力を調整)を行い塗膜を半硬化した後、実施例1と同様にして乾燥・UV照射し、ハードコートフィルムを得た。
【0300】
〈実施例13〉
実施例1と同じテストプラント及びベースフィルムを用いて下記条件にて反射防止フィルムを作製した。
【0301】
・ベース幅1.4m、塗布幅1.3m
(1パス目)
・塗布速度10m/min
・第1コーター:2スロット押し出しコーター
2スロットの押し出しコーターを用いwet on wetにて同時に重層塗布を行った。
【0302】
尚膜厚については単層で塗布した場合の流量に従って設定した。
【0303】
(第1スロット;基材側樹脂層)
・塗布液:帯電性樹脂層塗布液1
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が3.0μmになるように調整した。
【0304】
(第2スロット;表面側樹脂層)
・塗布液:帯電防止性樹脂層塗布液1
塗布液の流量は乾燥硬化後の膜厚が2.0μmになるように調整した。
【0305】
・乾燥ゾーン1:1m、乾燥温度80℃
・第2コーター:塗布せず
・乾燥ゾーン2−1:1m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−2:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−3:2m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−4:2m、乾燥温度80℃
・乾燥後UVを照射(120mJ/cm2になるよう、UVランプの出力を調整)
1パス目樹脂層試料の屈折率を下記測定法により測定した結果、1.52であった。
【0306】
(2パス目)
・塗布速度10m/min
・第1コーター:1スロット押し出しコーター
・塗布液:低屈折率層塗布液a
塗布液の流量は乾燥後の膜厚が90nmになるように調整した。
【0307】
・乾燥ゾーン1:1m、乾燥温度80℃
・第2コーター:塗布せず
・乾燥ゾーン2−1:1m、乾燥温度80℃
・乾燥ゾーン2−2:2m、乾燥温度90℃
・乾燥ゾーン2−3:2m、乾燥温度100℃
・乾燥ゾーン2−4:2m、乾燥温度80℃
・乾燥後UVを照射(120mJ/cm2になるよう、UVランプの出力を調整)
2パス目低屈折率層の屈折率を下記測定法により測定した結果、1.45であった。
【0308】
〈実施例14〉
実施例14において1パス目第1コーターの第2スロット;表面側樹脂層塗布液を帯電防止樹脂層塗布液7にし、2パス目第1コーターの低屈折率層塗布液を低屈折率層塗布液bにした以外は実施例12と同様にして反射防止積層体を作製した。
【0309】
1パス目樹脂試料の屈折率は1.60、2パス目の低屈折率層の屈折率は1.37であった。
【0310】
〈比較例6〉
比較例1で作製したハードコートフィルム上に、実施例14の2パス目塗布液(低屈折率層塗布液a)を実施例14と同様にして塗布、乾燥・UV硬化し反射防止フィルムを作製した。
【0311】
〈比較例7〉
比較例1において1パス目の塗布液を帯電防止樹脂層塗布液5にして膜厚を0.2μmとし、2パス目の塗布液を帯電性樹脂層塗布液1にして膜厚を4.0μmにした以外は比較例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0312】
〈比較例8〉
比較例1において1パス目の塗布液を帯電防止樹脂層塗布液5にし、乾燥ゾーン1および2の温度を30℃にし、2パス目の塗布液を帯電性樹脂層塗布液1にした以外は比較例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0313】
〈比較例9〉
比較例3において第1コーターの塗布液を帯電防止樹脂層塗布液5にして膜厚を0.2μmとし、第2コーターの塗布液を帯電性樹脂層塗布液1にして膜厚を4.0μmにした以外は比較例3と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0314】
〈実施例15〉
実施例1において第1スロット;基材側の樹脂層塗布液を帯電防止樹脂層塗布液5にして膜厚を0.2μmとし、第2スロット;表面側樹脂層塗布液を帯電性樹脂層塗布液1にして膜厚を4.0μmにした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0315】
〈比較例10〉
比較例1においてベース幅1.2m、塗布幅1.1mにした以外は比較例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0316】
〈比較例11〉
比較例2においてベース幅1.2m、塗布幅1.1mにした以外は比較例2と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0317】
〈比較例12〉
比較例3においてベース幅1.2m、塗布幅1.1mにした以外は比較例3と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0318】
〈比較例13〉
比較例4においてベース幅1.2m、塗布幅1.1mにした以外は比較例4と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0319】
〈比較例14〉
比較例5においてベース幅1.2m、塗布幅1.1mにした以外は比較例5と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0320】
〈実施例16〉
実施例1においてベース幅1.2m、塗布幅1.1mにした以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0321】
〈実施例17〉
実施例12においてベース幅1.2m、塗布幅1.1mにした以外は実施例12と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0322】
以上得られた試料について以下の評価を行った。
【0323】
《評価方法》
(屈折率)
樹脂層の屈折率はセルローストリアセテートフィルム上に設けた樹脂層の分光反射率の測定結果から求めた。分光反射率はFE−3000(大塚電子製)を用いて、サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して測定を行った。分光反射率をFE−3000のソフトウエアで解析及びフィッティングを行い屈折率を求めた。
【0324】
低屈折率層の屈折率は既に屈折率、膜厚を測定した樹脂層の上に設けた低屈折率層の分光反射率から、上記の樹脂層と同様の方法で求めた。
【0325】
(表面比抵抗値)
上記試料の各々を25℃、55%RHの条件にて24時間調湿し、川口電機株式会社製テラオームメーターモデルVE−30を用いて測定した。測定に用いた電極は、2本の電極(試料と接触する部分が1cm×5cm)を間隔を1cmで平行に配置し、該電極に試料を接触させて測定し、測定値を5倍にした値を表面比抵抗値Ω/□とした。
【0326】
(耐傷性)
試料を平滑な台の上に置き、#0000のスチールウール上に1cm2当たり200gの荷重をかけて、試料の表面(樹脂層を設けた側)を10往復擦り、擦る方向と垂直方向に1cmの範囲で発生した傷の本数を目視で数えた。
【0327】
(ヘイズ)
濁度計(NDH2000、日本電色製)を用い、上記試料のヘイズを測定した。測定はJIS K 7136(ヘイズ)に基づいた方法でD65光源で行った。
【0328】
(干渉ムラ)
上記試料について、樹脂層を設けた側の裏面を黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止したA4サイズの試料を作成した。
【0329】
この試料について、斜めより三波長蛍光灯(FL20SS・EX−N/18(松下電器産業製)の付いた電気スタンド)で試料面を照射し、その時に見える干渉縞を目視で評価した。
【0330】
○ :干渉ムラが見えない
○△:干渉ムラがわずかに見える
△ :干渉ムラが明らかに見える
△×:干渉ムラが明らかに見えやや目立つ
× :干渉ムラがとても目立つ
(平面性指数;微小な凹凸評価)
レーザー変位計:キーエンス(株)、型式:LT−8100、分解能:0.2μmを用いて、幅手方向にレーザー変位計で走査して、表面の細かい起伏を測定し、ハードコートフィルムの平面性を評価した。
【0331】
測定方法は、フィルムを平坦で水平の台の上に載せ、テープで幅手の両端を台に固定し、測定カメラを該台と平行にセットしたシグマ光機社製の移動レールに、カメラレンズと試料フィルムの間隔が25mmとなるようにセットし、移動速度5cm/分で走査し測定した。測定で得られる値はフィルム表面の微少な凹凸の状態と大きさである。
【0332】
◎:フィルムの変形による凹凸が0.5μm未満
○:フィルムの変形による凹凸が0.5〜1.0μm未満
△:フィルムの変形による凹凸が1.0〜3.0μm未満
×:フィルムの変形による凹凸が3.0μm以上
(平面性;目視評価)
幅90cm、長さ100cmの大きさに各試料を切り出し、50W蛍光灯を5本並べて試料台に45°の角度から照らせるように高さ1.5mの高さに固定し、試料台の上に各フィルム試料を置き、フィルム表面に反射して見える凹凸を目で見て、次のように判定した。この方法によって「つれ」および「しわ」の判定が出来る。
【0333】
◎:蛍光灯が5本とも真っすぐに見えた
○:蛍光灯が少し曲がって見えるところがある
△:蛍光灯が全体的に少し曲がって見える
×:蛍光灯が大きくうねって見える
(反射率)
分光光度計(U−3310型、日立製作所製)を用い、上記実施例13、14及び比較例6の試料から任意の10ケ所をサンプリングし、反射防止層を設けた側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(380nm〜780nm)の反射スペクトルの測定を行い、平均値及びばらつきを求めた。
【0334】
この反射スペクトルの測定結果からJIS−Z−8701、CIE1931に基づいて、C光源、2度視野におけるY値を反射率とした。
【0335】
以上、得られた評価結果を下記表1に示す。
【0336】
【表1】

【0337】
上表から、本発明に係るハードコートフィルム実施例1〜17は良好な導電性を有し、耐傷性、干渉ムラ、ヘイズ、平面性が比較例に対し優れていることが分かる。
【0338】
また、本発明に係るハードコートフィルムに低屈折率層を塗設した実施例13、14は、反射率が低く、ばらつきも少なく良好な反射防止フィルムである。特にハードコート部材の屈折率が1.55以上でかつ中空微粒子を含有する実施例14はより低反射率であり好ましいことが分かる。これに対し、比較例6の反射防止フィルムは、反射率のばらつきが大きく、基材であるハードコートフィルムの平面性が悪い為、精密な反射防止層の塗布に問題があることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチック基材上に塗布幅1.2m以上で少なくとも2層以上のクリアハードコート層を設け、その少なくともいずれかの層に活性エネルギー線硬化樹脂を含むクリアハードコートフィルムの製造方法であって、少なくとも基材側の層の塗布液と表面側の層の塗布液とを2層以上同時重層塗布し、次いで乾燥・硬化させることを特徴とするクリアハードコートフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記同時重層塗布した直後に、塗膜が半硬化状態になるように活性エネルギー線照射を行い、次いで乾燥・硬化を行うことを特徴とする請求項1に記載のクリアハードコートフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化樹脂を含むクリアハードコート層の少なくとも1層が、導電性金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のクリアハードコートフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記導電性金属酸化物微粒子がSn、Ti、In、Al、Zn、Si、Mg、Ba、Mo、W、及びVからなる群から選択される少なくとも1つの元素を主成分とする導電性金属酸化物微粒子若しくは複合酸化物微粒子であることを特徴とする請求項3に記載のクリアハードコートフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化樹脂が多官能のアクリレート樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のクリアハードコートフィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のクリアハードコートフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とするクリアハードコートフィルム。
【請求項7】
請求項6に記載のクリアハードコートフィルム表面上に反射防止層を設けたことを特徴とする反射防止フィルム。

【公開番号】特開2006−10923(P2006−10923A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186190(P2004−186190)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】