グリル付き加熱調理器
【課題】焼き網を用いた熱容量の小さい「グリルモード」を選択するべきところを加熱容器を用いた熱容量の大きい「オーブンモード」を選択した場合でも、的確に焼き網を用いた調理であると自動的に判定して「グリルモード」に移行させることができるグリル付き加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱開始時に「オーブンモード」を選択した時、加熱手段を最大火力とし、加熱開始から所定時間(t1)後の上計測温度(TU1)と下計測温度(TL1)との差(ΔT1)が第一の閾値(T1)未満であるか、又は、加熱開始から所定時間(t2)後の下計測温度(TL2)と加熱開始時の下計測温度(TL0)との差(ΔT2)が第二の閾値(T2)以上であるか、又は、下計測温度が設定温度(TS)に達した時に上計測温度(TU3)と下計測温度(TL3)との差(ΔT3)が第三の閾値(T3)未満である場合に「グリルモード」に移行する。
【解決手段】加熱開始時に「オーブンモード」を選択した時、加熱手段を最大火力とし、加熱開始から所定時間(t1)後の上計測温度(TU1)と下計測温度(TL1)との差(ΔT1)が第一の閾値(T1)未満であるか、又は、加熱開始から所定時間(t2)後の下計測温度(TL2)と加熱開始時の下計測温度(TL0)との差(ΔT2)が第二の閾値(T2)以上であるか、又は、下計測温度が設定温度(TS)に達した時に上計測温度(TU3)と下計測温度(TL3)との差(ΔT3)が第三の閾値(T3)未満である場合に「グリルモード」に移行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル付き加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、グリル付き加熱調理器が普及しており(例えば特許文献1参照)、このグリル付き加熱調理器にあっては、グリル庫内に焼き網を配置すると共に焼き網の下方に煮汁等を受けるグリル皿を配置し、グリル庫内に設けたガスバーナ等の加熱手段によって焼き網上に載置された魚等の調理物の焼き調理を行うことができるようになっている。また、調理物を入れた加熱容器をグリル庫内に入れてオーブン調理を行う加熱調理器も知られている(特願2006−288363)。この加熱調理器にあっては、グリル庫内に煮汁等を受けると共に加熱容器を載置するグリル皿を配置し、調理物を入れた加熱容器を前記グリル皿に載置して、グリル庫内に設けたガスバーナ等の加熱手段によって加熱容器を加熱してオーブン調理を行うことができ、上記焼き網により加熱調理を行う「グリルモード」と加熱容器により加熱調理を行う「オーブンモード」とを選択的に実行することができるものである。
【特許文献1】特開2005−207667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した特願2006−288363明細書に記載のグリル付き加熱調理器にあっては、例えば焼き網を用いて焼き調理を行う際に「グリルモード」を選択すべきであるにもかかわらず「オーブンモード」を選択した場合でも、焼き網使用と加熱容器使用とでは被加熱物の熱容量の差に起因して所定位置での温度上昇の仕方が異なるという現象を利用して、焼き網使用である自動で判定して「グリルモード」に移行することにより、加熱し過ぎによる調理の失敗を防止するものである。特に上述した特願2006−288363明細書に記載のものにあっては、グリル庫内における加熱容器の位置決めを行う「位置固定手段」を採用した上で前記制御を行うことで、加熱容器の位置のばらつきによる影響を受け難くなって、判定精度が向上して誤判定のない良好な動作が得られるものである。
【0004】
ところが近年、グリルで同時に焼き調理ができる量を増やして欲しいとの要望が高まってグリルが大型化し、焼き網使用の「グリルモード」を行う場合の被加熱物の熱容量が大きくなって、焼き網使用の場合と加熱容器使用の場合の被加熱物の熱容量の比(差)が小さくなってしまい、上述した特願2006−288363記載のものにおける判定だけでは、焼き網使用であるにもかかわらず使用者が「オーブンモード」を誤って選択した場合に加熱容器使用であると誤判定されて「オーブンモード」を維持してしまい、加熱し過ぎて調理を失敗してしまう惧れがあった。そこで、判定精度を向上させて誤判定のないグリル付き加熱調理器が望まれるようになった。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、焼き網使用の熱容量の小さい被加熱物を対象とする「グリルモード」を選択するべきところを加熱容器使用の熱容量の大きい被加熱物を対象とする「オーブンモード」を選択した場合でも、焼き網使用であるか加熱容器使用であるかを的確に判定して「グリルモード」に移行させることができるグリル付き加熱調理器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、グリル庫内に加熱手段を備えると共に、グリル庫内の第一の位置における温度を計測する上温度センサ及び第一の位置より下方の第二の位置における温度を計測する下温度センサを設け、グリル庫内に被調理物を載置する焼き網と被調理物を収容する加熱容器とを選択的に収容可能とし、グリル庫内に焼き網を収容して加熱調理を行う「グリルモード」と加熱容器を収容して加熱調理を行う「オーブンモード」とを選択的に実行する制御部を備え、制御部は「グリルモード」と「オーブンモード」とで少なくとも上温度センサ又は/及び下温度センサの温度に基づいてそれぞれ異なる制御を行うものであって、加熱手段による加熱を開始する際に制御部に指令を与える入力部から「オーブンモード」を選択入力した時に、全ての加熱手段を最大能力に維持すると共に、
加熱開始から所定時間(t1)後の上温度センサによる計測温度(TU1)と下温度センサによる計測温度(TL1)との差(ΔT1=TU1−TL1)と第一の閾値(T1)とが第一の判定条件(ΔT1<T1)を満たすか、あるいは、
加熱開始から所定時間(t2)後の下温度センサによる計測温度(TL2)と加熱開始時の下温度センサによる計測温度(TL0)との差(ΔT2=TL2−TL0)と第二の閾値(T2)とが第二の判定条件(ΔT2≧T2)を満たすか、あるいは、
下温度センサによる計測温度(TL)が設定温度(TS)に達した時の上温度センサによる計測温度(TU3)と下温度センサによる計測温度(TL3)との差(ΔT3=TU3−TL3)と第三の閾値(T3)とが第三の判定条件(ΔT3≦T3)を満たす場合に、焼き網使用であると判定して「グリルモード」に移行し、第一の判定条件乃至第三の判定条件のいずれも満たさない場合には加熱容器使用であると判定して「オーブンモード」を維持することを特徴とするものである。
【0007】
このような構成とすることで、焼き網使用であるか加熱容器使用であるかを的確に判定することが可能となって、焼き網使用の加熱調理であって「グリルモード」で制御すべきところを加熱容器使用であると誤判定されて「オーブンモード」で制御されてしまうのを防止することができる。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記所定時間t1及び第一の閾値T1を、加熱開始時の上温度センサによる計測温度TU0又は/及び下温度センサによる計測温度TL0に応じて設定することを特徴とするものである。
【0009】
このような構成とすることで、加熱開始時の温度に応じて、所定時間t1及び第一の閾値T1の値を適正に定めることができて、判定精度を向上させると共に加熱調理に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、加熱開始時の上温度センサによる計測温度TU0又は下温度センサによる計測温度TL0をT0とし、T0が低い時に比べT0が高い時ほど前記所定時間t1が短くなるように設定することを特徴とするものである。
【0011】
このような構成とすることで、加熱開始時の温度T0が低い時は、所定時間t1を長くして第一の判定条件における差ΔT1=TU1−TL1の検出が容易となり、加熱開始時の温度T0が高い時は、所定時間t1を短くして、焼き網を用いた調理の場合に大きな火力で長い時間加熱継続して加熱し過ぎてしまうのが防止される。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、焼き網使用であるか加熱容器使用であるかを的確に判定することが可能となって、焼き網使用の加熱調理であるにもかかわらず加熱容器使用の加熱調理であると誤判定して「オーブンモード」を行うのを防止して、グリル庫内が必要以上に加熱されてしまうのを防止すると共に、「グリルモード」と判定し易くなってフェールセーフとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明の加熱調理器1は本体内部にグリル庫10を備えている。グリル庫10は、内部の天井近傍に上火バーナ21と、左右側面に下火バーナ22とを加熱手段2として備えると共に、グリル皿4と、グリル皿4上に載置される加熱容器3と、を備えている。加熱容器3としては、本実施形態では、厚手の鋳鉄や陶器のような熱容量の大きな材質のものを用いて、加熱容器本体31及び該加熱容器本体31の上開口を閉塞する容器蓋32とを備えた所謂ダッチオーブンとするが、他の容器であってもよい。
【0015】
グリル庫10の前面にはグリル開閉を行うグリル扉11が設けられている。グリル扉11にはグリル皿4を載せるためのグリル皿受け12が一体に取付けられており、グリル扉11を把手13により前方に引出すことにより、グリル皿4上に置かれている加熱容器3を取り出すことができる。グリル扉11中央には、庫内確認用覗き窓14が取り付けられている。
【0016】
下火バーナ22の直上には、下火カバー15が取り付けられている。
【0017】
加熱容器3を使用しないときは、図9に示すようにグリル焼網を導入できるように構成されている。図9中の符号18はグリル皿4上に載置される脚部18aを備えた焼き網、符号19は魚等の調理物である。
【0018】
グリル庫10の後方には排気通路16が設けられており、上下バーナからの燃焼ガスが排気通路16を経由して上方に導かれ、排気口カバー17を通過して外部に排出されるように構成されている。排気通路16の上部、下部には、それぞれサーミスタからなる温度センサS1、S2が配設されており、各部の排気温度上昇速度を検知して加熱制御を可能とするように構成されている。
【0019】
グリル皿4は、本実施形態では平面視略矩形状をして上方に開口する上下高さの低い箱状をした箱状本体41と、箱状本体41の上端開口縁から外側方へと連設されて外郭が平面視略矩形状となるフランジ部42と、フランジ部42の周縁から下方に垂下される垂下部43とからなり、箱状本体41の底面が煮汁が溜まる煮汁受け部となる。また上述したグリル皿受け12は、線材を平面視において前記グリル皿4の垂下部43よりも若干小さい略矩形の枠状に形成したもので、グリル皿4の箱状本体41を前記枠状のグリル皿受け12内に上方から挿入して、グリル皿4のフランジ部42をグリル皿受け12に載置し、グリル皿4の垂下部43をグリル皿受け12の外周に沿って位置させることで、グリル皿4のグリル皿受け12に対する位置固定が行われる。
【0020】
そして本発明においては、加熱容器3が載置されて該加熱容器3の位置固定を行う位置固定部材5が設けられる。
【0021】
位置固定部材5は、グリル皿4のフランジ部42に載置されると共に加熱容器3が載置される平面視略矩形状をした枠部51で主体が構成されるもので、本実施形態では断面が上下に長い偏平した形状の線材からなり、加熱容器3の側面を外側から囲むことができる寸法形状の略矩形状の枠部51とし、グリル皿4の短辺側のフランジ部42に前記枠部51の短辺側の枠部51aが載置される。また、一方の短辺側の枠部51a(本実施形態では手前すなわちグリル扉11側の枠部51)の内側近傍には、両側の長辺側の枠部51b間に短辺側の枠部51aと平行に該枠部51と同様の線材からなる架設片52が架設してある。そして、もう一方の短辺側の枠部51a(本実施形態では奥側の枠部51)と、架設片52と、両側の長辺側の枠部51bとに、加熱容器3に形成してある載置部6が載置される被載置部53が設けてある。
【0022】
また位置固定部材5には、グリル皿4に対して位置決めを行なう位置決め部55が設けてある。位置決め部55は、枠部51の複数箇所から下方に向けてそれぞれ突出するピン状のもので、グリル皿4のフランジ部42の対応する位置、即ち、グリル皿4の短辺側のフランジ部42に前記位置固定部材5の枠部51の短辺側の枠部51aを載置した時に前記位置決め部55が位置する部分にそれぞれ形成してある位置決め孔44に挿入されて位置決めが行われる。本実施形態では、手前側の短辺側の枠部51aに、該枠部51と同様の線材を側面視において略半円弧状となるように形成した弧状部材54の両端部が枠部51から若干下方に突出するように枠部51の内側に溶接により固定してあり、前記弧状部材54の両端部の枠部51から若干下方に突出する部分が位置決め部55となっていると共に、前記弧状部材54の枠部51よりも上側の部分を把持部56として利用することができ、一つの弧状部材54にて位置決め部55と把持部56とを兼用するものである。
【0023】
なお、位置決め部55は、枠部51から下に突出する部分の長さをそれぞれ異ならせてあり、これにより、位置決め部55が位置決め孔44に正しく挿入されず、位置決め部55の先端がグリル皿4のフランジ部42上に載置された時に、位置固定部材5が傾いて、使用者が誤セットに気付き易いようにしてある。
【0024】
加熱容器3は、本実施形態では平面視略楕円形状をしていて、その長軸が位置固定部材5及びグリル皿4の長辺側に沿うようにして、側面に形成してある載置部6が、位置固定部材5の奥側の短辺側の枠部51a及び架設片52の中央部と、両側の長辺側の枠部51bの前記奥側の短辺側の枠部51aと架設片52との間の中央部とに設けてある被載置部53に載置され、位置決めされた状態で係止される。加熱容器3の載置部6は、加熱容器3の側面から側方に向けて突出していて、その略下方向きの面が位置固定部材5の枠部51に載置される載置面61となるもので、略楕円状をした加熱容器3の長軸及び短軸と交わる部分にそれぞれ形成してある。図中の符号33はそれぞれ加熱容器本体31及び容器蓋32に設けた把手である。
【0025】
この加熱容器3にて調理を行うには、まず、グリル扉11を開いてグリル皿受け12に載せているグリル皿4を引き出し、グリル皿4の位置決め孔44に位置決め部55を挿入してグリル皿4のフランジ部42に載置されている位置固定部材5の枠部51内に、上方より加熱容器本体31を挿入して、加熱容器3の側面に突出する載置部6の載置面61を位置固定部材5の枠部51の被載置部53に載置し、位置固定部材5により加熱容器3を支持して、グリル扉11を閉じてオーブン調理を行うものである。
【0026】
上記のような構成においては、加熱容器3とグリル皿4との間に位置固定部材5が介在することとなって、グリル皿4と加熱容器3とが直接接触することがなくて、グリル皿4の被膜が剥がれたりグリル皿4が損傷するのを防止すると共に、位置固定部材5に煮汁等が付着しても拭き掃除による手入れがし易いものである。
【0027】
また、従来例のようにグリル皿4の煮汁受け部上に加熱容器受けを位置させて該加熱容器受け上に加熱容器3の底面を載置するのではなく、加熱容器3の側面に設けた載置部6を位置固定部材5の被載置部53に載置するものであるため、加熱容器3の底面のグリル皿4の煮汁受け部からの高さ位置は、加熱容器3の側面に設ける載置部6の高さ位置を調節することで任意に設定することができ、加熱容器3の底面の煮汁受け部からの高さを僅かな距離(少なくとも従来の加熱容器受けの線材の厚みより小さい距離)とすることで、加熱容器使用時のグリル庫10内の有効高さが低くなるのを防止することができるものである。
【0028】
なお、グリル庫10内を加熱する熱源は、ガス、電気等特に限定されないものである。
【0029】
グリル庫10内で加熱調理を行うにあたっては、加熱開始時に、「オーブンモード」と「グリルモード」のいずれかを図示しない操作部の切替スイッチにより切り替えて選択入力し、図示しない点火操作部を操作することで上火バーナ21及び下火バーナ22を点火して、グリル庫10内の加熱を開始するのであるが、この時、グリル庫10内に収容されているのが焼き網18か加熱容器3かが判定されるもので、本体内に格納されているマイクロコンピュータからなる図示しない制御部により加熱容器判定制御がなされる。
【0030】
使用者は、加熱容器使用の加熱調理を行うための「オーブンモード」と、焼き網使用の加熱調理を行うための「グリルモード」のいずれかを選択入力し、点火操作部を操作することで上火バーナ21及び下火バーナ22を点火して、グリル庫10内の加熱が開始される。
【0031】
「オーブンモード」は、鍋等の加熱容器使用の場合のように、熱容量の大きい被加熱物を加熱対象とする制御で、タイマ機能により最大30分間までの任意の時間加熱継続を行うように設定することができ、前記加熱継続を行った後、自動的に上火バーナ21及び下火バーナ22を消火させて調理を終了する。また「オーブンモード」では、上温度センサS1が320℃以上の温度、下温度センサS2が220℃以上の温度を検出すると、自動的に上火バーナ21及び下火バーナ22を消火させるものである。
【0032】
「グリルモード」は、焼き網使用の場合のように、熱容量の小さい被加熱物を加熱対象とする制御で、タイマ機能により最大18分間までの任意の時間加熱継続を行うように設定することができ、前記加熱継続を行った後、自動的に上火バーナ21及び下火バーナ22を消火させて調理を終了する。また「グリルモード」では、上温度センサS1が255℃以上の温度、下温度センサS2が180℃以上の温度を検出すると、自動的に上火バーナ21及び下火バーナ22を消火させるものである。
【0033】
すなわち「オーブンモード」による調理においては、被調理物が加熱容器3に覆われているため、加熱手段2により加熱継続する最長許容時間を長くすると共に、上温度センサS1及び下温度センサS2による検出温度の最高許容温度を高く設定し、「グリルモード」による調理においては、被調理物が直接加熱手段2により加熱されるため、加熱手段2により加熱継続する最長許容時間が短くて済むと共に長くなると焦げ付く惧れがあり、また上温度センサS1及び下温度センサS2による検出温度の最高許容温度を高く設定すると、被調理物から飛び散った油へ引火する惧れがあるため、前記最高許容温度を低く設定するものである。
【0034】
また、加熱調理器の電源をONにした直後のデフォルト状態では、「グリルモード」の状態として処理される。すなわち、切替スイッチを入力しなければ「グリルモード」を選択入力したことになる。
【0035】
上火バーナ21及び下火バーナ22には、熱電対等からなり点火を検出する点火検出装置(図示せず)が設けられており、点火検出装置における検出情報を基に制御部において点火しているか否かが検出される。そして、使用者が点火前に「オーブンモード」を選択し、且つ、点火検出装置において点火が検出されたか否かが判定される(S1)。ステップ(S1)において点火検出と判定されると、所定時間t1の間(例えば点火検出から150秒)上火バーナ21及び下火バーナ22を最大火力で加熱継続する(S2)。前記のように所定時間t1の間に最大火力で加熱継続することで、後述するステップ(S3)、(S5)、(S8)において加熱容器3か焼き網18を判定するための温度偏差(後述する差ΔT1、ΔT2、ΔT3)が顕著に得られるものである。ステップ(S1)において点火検出と判定されない場合、はじめのステップ(S0)に戻る。
【0036】
次に、点火判定から所定時間t1加熱継続された時点での上温度センサS1の温度TU1と下温度センサS2の温度TL1との差ΔT1=TU1−TL1と第一の閾値T1(例えば50K)とを比較して、ΔT1<T1であるか否か(第一の判定条件)を判定する(S3)。ステップ(S3)においてΔT1<T1であると判定されると、焼き網使用の加熱調理であると判定して「グリルモード」へと移行する(S12)。ステップ(S3)においてΔT1<T1でないと判定されると、所定の監視時間t2の間(例えば点火検出から250秒)加熱継続される(S4)。
【0037】
次に、点火判定時の下温度センサS2の温度TL0と、点火判定から所定の監視時間t2加熱継続された時点での下温度センサS2の温度TL2との差ΔT2=TL2−TL0と第二の閾値T2(例えば33K)とを比較して、ΔT2≧T2であるか否か(第二の判定条件)を判定する(S5)。ステップ(S5)においてΔT2≧T2であると判定されると、焼き網使用の加熱調理であると判定して「グリルモード」へと移行する(S12)。ステップ(S5)においてΔT2≧T2でないと判定されると、加熱継続される(S6)。
【0038】
次に、加熱継続している状態で、下温度センサS2の検出した温度TLが所定の監視温度TS(例えば80℃)と比較してTL≧TSであるか否かが判定され(S7)、TL≧TSでなければステップ(S6)の加熱継続へと戻り、TL≧TSであればステップ(S8)へ移行する。
【0039】
ステップ(S8)では、ステップ(S7)においてTL≧TSであると判定した時点での上温度センサS1の温度TU3と下温度センサS2の温度TL3(すなわちTL≧80℃となったはじめての温度)との差ΔT3=TU3−TL3と第三の閾値T3(例えば77K)とを比較して、ΔT3≦T3であるか否か(第三の判定条件)を判定する。ステップ(S8)においてΔT3≦T3であると判定されると、焼き網使用の加熱調理であると判定して「グリルモード」へと移行する(S12)。ステップ(S8)においてΔT3≦T3でないと判定されると、加熱容器使用の加熱調理であると判定して「オーブンモード」が確定して移行される(S9)。
【0040】
ステップ(S9)において「オーブンモード」へと移行した後は、上火バーナ21及び下火バーナ22の自動消火温度(最高許容温度)である上温度センサS1の320℃、下温度センサS2の220℃を維持すると共に(S10)、連続で加熱する最大燃焼時間(最長許容時間)30分間までの任意の時間加熱継続を設定されている通り維持するものである(S11)。
【0041】
また、ステップ(S12)において「グリルモード」へと移行した後は、上火バーナ21及び下火バーナ22の自動消火温度は、上温度センサS1を255℃、下温度センサS2を180℃に設定するものである(S13)。また連続で加熱する最大燃焼時間18分間までの任意の時間加熱継続を設定するため、タイマ機能で設定されている時間が18分以上である場合には18分間に設定し、18分未満である場合には設定されている通り維持するものである(S14)。
【0042】
上述した加熱容器判定制御では、第一の判定条件〜第三の判定条件のいずれか一つでも満たす場合には「グリルモード」へと移行し、第一の判定条件〜第三の判定条件のいずれも満たさない場合には「オーブンモード」を維持しており、これに対して特願2006−288363記載の従来例における制御では、第二の判定条件、第三の判定条件のみを用いて判定している。
【0043】
上述した制御においては、誤判定として、加熱容器使用の加熱調理であって「オーブンモード」で制御すべきであるところを「グリルモード」で制御する場合と、焼き網使用の加熱調理であって「グリルモード」で制御すべきであるところを「オーブンモード」で制御する場合の二通りが考えられる。前者のように加熱容器使用であるのに「グリルモード」で加熱調理の制御を行う場合には本来行うべき「オーブンモード」よりも最長許容時間が短く且つ最高許容温度が低く抑えられるため、グリル庫10内が必要以上に加熱されることはないが熱量が不足する場合があり、後者のように焼き網使用であるのに「オーブンモード」で加熱調理の制御を行う場合には、本来行うべき「グリルモード」よりも最長許容時間が長く且つ最高許容温度が高いため、グリル庫10内が必要以上に加熱されてしまう惧れがある。この点に鑑みて従来例では第二の判定条件、第三の判定条件を用いて判定していたが、この判定方法では近年の焼き網調理における被加熱物の大型化により加熱容器3による調理と誤判定されて「オーブンモード」が行われてしまう。そこで本発明では第一の判定条件を追加して、従来例では焼き網18を用いているにもかかわらず判定条件の閾値の近傍で「オーブンモード」と判定されていたところを「グリルモード」と判定されるようにして、グリル庫10内が必要以上に加熱されてしまうのを防止することができ、また、「グリルモード」と判定し易くなってフェールセーフとすることができる。
【0044】
ところで、第一の判定条件については、上述した説明においては所定時間t1(例えば150秒)及び第一の閾値T1(例えば50K)は固定値であったが、更に判定精度を向上させるべく、加熱開始時の上温度センサS1による計測温度TU0又は下温度センサS2による計測温度TL0に応じて設定するようにしてもよい。例えば、所定時間t1、第一の閾値T1をそれぞれTU0又は/及びTL0を変数とする一次式や二次式あるいは高次の整式としたり、TU0又は/及びTL0の値毎に対応する所定時間t1、第一の閾値T1の値を定めたテーブルを用意したりすることが挙げられる。
【0045】
加熱開始時の計測温度によって、ステップ(S3)で第一の判定条件による判定を行うまでの所定時間t1及び、この時に用いる第一の閾値T1の適正値が異なる可能性があるため、上記のように加熱開始時の計測温度に応じて、所定時間t1及び第一の閾値T1の適正値を定めて、判定精度を向上させて且つ加熱調理に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0046】
一番簡単な方法として所定時間t1及び第一の閾値T1を一次式により求める場合について説明する。この場合、以下に示すように、
t1=a×T0+b・・・(式1)
(但し、a:負の定数、b:定数、T0:変数)
T1=c×T0+d・・・(式2)
(但し、c:定数、d:定数)
として設定することとなる。T0は上温度センサS1による計測温度TU0又は/及び下温度センサS2による計測温度TL0により定まる変数で、TU0又はTL0のいずれか一方をT0としたり、低い方や高い方、あるいは平均値をとったりすることも可能である。ここではT0=TL0とする。この時、定数aを負の値とすると、T0が大きくなる程、t1の値が小さくなる。すなわち、加熱開始時の温度T0が低い時は、ステップ(S3)で第一の判定条件の判定を行うまでの所定時間t1が長くなるが、この所定時間t1が長い程、所定時間t1経過時点での上温度センサS1の温度TU1と下温度センサS2の温度TL1との差ΔT1=TU1−TL1が大きくなる傾向にあるため、前記差ΔT1の検出が容易となる。
【0047】
また、加熱開始時の温度T0が高い時は、ステップ(S3)で第一の判定条件の判定を行うまでの所定時間t1が短くなり、焼き網18を用いた調理の場合に大きな火力で長い時間加熱継続して加熱し過ぎるのが防止される。また所定時間t1が短くなると、所定時間t1経過時点での上温度センサS1の温度TU1と下温度センサS2の温度TL1との差ΔT1=TU1−TL1が小さくなる傾向にあるため、第一の閾値T1を小さくすべくcを負の値とするのが好ましい。
【0048】
以下、実際の使用に基づく実施例について説明する。
<実施例1>
加熱容器3を用いた調理の例である。
(1)加熱手段2の点火検出時(加熱開始時t=t0)における下温度センサS2による計測温度TL0は37℃であった。
(2)所定時間t1(=150秒)経過時における上温度センサS1の温度TU1は107℃、下温度センサS2の温度TL1は44℃、その差ΔT1=TU1−TL1は63Kであり、第一の閾値T1(=50K)より大きく、第一の判定条件を満たさないため「オーブンモード」を維持する。
(3)監視時間t2(=250秒)経過時における下温度センサS2の温度TL2は54℃であり、加熱開始時の下温度センサS2による計測温度TL0(=37℃)との差ΔT2=TL2−TL0は17Kであり、第二の閾値T2(=33K)より小さく、第二の判定条件を満たさないため「オーブンモード」を維持する。
(4)下温度センサS2の計測温度が監視温度T0(=80℃)に達した時の上温度センサS1の温度TU3は166℃、下温度センサS2の温度TL3は80℃、その差ΔT3=TU3−TL3は86Kであり、第三の閾値T3(=77K)より大きく、第三の判定条件を満たさないため「オーブンモード」を維持する。
【0049】
以上のように、第一の判定条件〜第三の判定条件のいずれも満たさず、「グリルモード」に移行せず「オーブンモード」が維持された。
<実施例2>
焼き網18に鯵を五匹載置して加熱調理を行った例である。
(1)加熱手段2の点火検出時(加熱開始時t=t0)における下温度センサS2による計測温度TL0は33℃であった。
(2)所定時間t1(=150秒)経過時における上温度センサS1の温度TU1は78℃、下温度センサS2の温度TL1は45℃、その差ΔT1=TU1−TL1は33Kであり、第一の閾値T1(=50K)より小さく、第一の判定条件を満たすため「グリルモード」に移行した。これで「グリルモード」が確定するが、第一の判定条件で「オーブンモード」が維持されたと仮定して、次のステップ(S4)に進む。
(3)監視時間t2(=250秒)経過時における下温度センサS2の温度TL2は56℃であり、加熱開始時の下温度センサS2による計測温度TL0(=33℃)との差ΔT2=TL2−TL0は23Kであり、第二の閾値T2(=33K)より小さく、第二の判定条件を満たさないため「オーブンモード」を維持する。
(4)下温度センサS2の計測温度が監視温度T0(=80℃)に達した時の上温度センサS1の温度TU3は163℃、下温度センサS2の温度TL3は80℃、その差ΔT3=TU3−TL3は83Kであり、第三の閾値T3(=77K)より大きく、第三の判定条件を満たさないため「オーブンモード」を維持する。
【0050】
以上のように、本発明において追加した第一の判定条件によって「グリルモード」への移行が行われたが、第一の判定条件がない従来例の場合には、第二の判定条件及び第三の判定条件はいずれも満たさず、「オーブンモード」が維持されてしまった。
【0051】
上述した実施例1、実施例2より本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態のグリル付き加熱調理器の側断面図である。
【図2】同上の正面断面図である。
【図3】同上においてグリル皿上に位置固定部材を介して加熱容器を載置した状態の平面図である。
【図4】同上のグリル皿を示し、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【図5】同上の位置固定部材を示し、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【図6】同上の加熱容器の斜視図である。
【図7】同上の加熱容器本体を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【図8】同上の容器蓋を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【図9】グリル皿にグリル焼き網を載置する場合の正面断面図である。
【図10】加熱容器判定制御のフローチャートである。
【図11】実施例1における温度のタイムチャートである。
【図12】実施例2における温度のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 加熱調理器
10 グリル庫
11 グリル扉
12 グリル皿受け
16 排気通路
2 加熱手段
3 加熱容器
31 加熱容器本体
32 容器蓋
4 グリル皿
44 位置決め孔
5 位置固定部材
51 枠部
6 載置部
61 載置面
S1 上温度センサ
S2 下温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル付き加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、グリル付き加熱調理器が普及しており(例えば特許文献1参照)、このグリル付き加熱調理器にあっては、グリル庫内に焼き網を配置すると共に焼き網の下方に煮汁等を受けるグリル皿を配置し、グリル庫内に設けたガスバーナ等の加熱手段によって焼き網上に載置された魚等の調理物の焼き調理を行うことができるようになっている。また、調理物を入れた加熱容器をグリル庫内に入れてオーブン調理を行う加熱調理器も知られている(特願2006−288363)。この加熱調理器にあっては、グリル庫内に煮汁等を受けると共に加熱容器を載置するグリル皿を配置し、調理物を入れた加熱容器を前記グリル皿に載置して、グリル庫内に設けたガスバーナ等の加熱手段によって加熱容器を加熱してオーブン調理を行うことができ、上記焼き網により加熱調理を行う「グリルモード」と加熱容器により加熱調理を行う「オーブンモード」とを選択的に実行することができるものである。
【特許文献1】特開2005−207667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した特願2006−288363明細書に記載のグリル付き加熱調理器にあっては、例えば焼き網を用いて焼き調理を行う際に「グリルモード」を選択すべきであるにもかかわらず「オーブンモード」を選択した場合でも、焼き網使用と加熱容器使用とでは被加熱物の熱容量の差に起因して所定位置での温度上昇の仕方が異なるという現象を利用して、焼き網使用である自動で判定して「グリルモード」に移行することにより、加熱し過ぎによる調理の失敗を防止するものである。特に上述した特願2006−288363明細書に記載のものにあっては、グリル庫内における加熱容器の位置決めを行う「位置固定手段」を採用した上で前記制御を行うことで、加熱容器の位置のばらつきによる影響を受け難くなって、判定精度が向上して誤判定のない良好な動作が得られるものである。
【0004】
ところが近年、グリルで同時に焼き調理ができる量を増やして欲しいとの要望が高まってグリルが大型化し、焼き網使用の「グリルモード」を行う場合の被加熱物の熱容量が大きくなって、焼き網使用の場合と加熱容器使用の場合の被加熱物の熱容量の比(差)が小さくなってしまい、上述した特願2006−288363記載のものにおける判定だけでは、焼き網使用であるにもかかわらず使用者が「オーブンモード」を誤って選択した場合に加熱容器使用であると誤判定されて「オーブンモード」を維持してしまい、加熱し過ぎて調理を失敗してしまう惧れがあった。そこで、判定精度を向上させて誤判定のないグリル付き加熱調理器が望まれるようになった。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、焼き網使用の熱容量の小さい被加熱物を対象とする「グリルモード」を選択するべきところを加熱容器使用の熱容量の大きい被加熱物を対象とする「オーブンモード」を選択した場合でも、焼き網使用であるか加熱容器使用であるかを的確に判定して「グリルモード」に移行させることができるグリル付き加熱調理器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、グリル庫内に加熱手段を備えると共に、グリル庫内の第一の位置における温度を計測する上温度センサ及び第一の位置より下方の第二の位置における温度を計測する下温度センサを設け、グリル庫内に被調理物を載置する焼き網と被調理物を収容する加熱容器とを選択的に収容可能とし、グリル庫内に焼き網を収容して加熱調理を行う「グリルモード」と加熱容器を収容して加熱調理を行う「オーブンモード」とを選択的に実行する制御部を備え、制御部は「グリルモード」と「オーブンモード」とで少なくとも上温度センサ又は/及び下温度センサの温度に基づいてそれぞれ異なる制御を行うものであって、加熱手段による加熱を開始する際に制御部に指令を与える入力部から「オーブンモード」を選択入力した時に、全ての加熱手段を最大能力に維持すると共に、
加熱開始から所定時間(t1)後の上温度センサによる計測温度(TU1)と下温度センサによる計測温度(TL1)との差(ΔT1=TU1−TL1)と第一の閾値(T1)とが第一の判定条件(ΔT1<T1)を満たすか、あるいは、
加熱開始から所定時間(t2)後の下温度センサによる計測温度(TL2)と加熱開始時の下温度センサによる計測温度(TL0)との差(ΔT2=TL2−TL0)と第二の閾値(T2)とが第二の判定条件(ΔT2≧T2)を満たすか、あるいは、
下温度センサによる計測温度(TL)が設定温度(TS)に達した時の上温度センサによる計測温度(TU3)と下温度センサによる計測温度(TL3)との差(ΔT3=TU3−TL3)と第三の閾値(T3)とが第三の判定条件(ΔT3≦T3)を満たす場合に、焼き網使用であると判定して「グリルモード」に移行し、第一の判定条件乃至第三の判定条件のいずれも満たさない場合には加熱容器使用であると判定して「オーブンモード」を維持することを特徴とするものである。
【0007】
このような構成とすることで、焼き網使用であるか加熱容器使用であるかを的確に判定することが可能となって、焼き網使用の加熱調理であって「グリルモード」で制御すべきところを加熱容器使用であると誤判定されて「オーブンモード」で制御されてしまうのを防止することができる。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記所定時間t1及び第一の閾値T1を、加熱開始時の上温度センサによる計測温度TU0又は/及び下温度センサによる計測温度TL0に応じて設定することを特徴とするものである。
【0009】
このような構成とすることで、加熱開始時の温度に応じて、所定時間t1及び第一の閾値T1の値を適正に定めることができて、判定精度を向上させると共に加熱調理に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、加熱開始時の上温度センサによる計測温度TU0又は下温度センサによる計測温度TL0をT0とし、T0が低い時に比べT0が高い時ほど前記所定時間t1が短くなるように設定することを特徴とするものである。
【0011】
このような構成とすることで、加熱開始時の温度T0が低い時は、所定時間t1を長くして第一の判定条件における差ΔT1=TU1−TL1の検出が容易となり、加熱開始時の温度T0が高い時は、所定時間t1を短くして、焼き網を用いた調理の場合に大きな火力で長い時間加熱継続して加熱し過ぎてしまうのが防止される。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、焼き網使用であるか加熱容器使用であるかを的確に判定することが可能となって、焼き網使用の加熱調理であるにもかかわらず加熱容器使用の加熱調理であると誤判定して「オーブンモード」を行うのを防止して、グリル庫内が必要以上に加熱されてしまうのを防止すると共に、「グリルモード」と判定し易くなってフェールセーフとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明の加熱調理器1は本体内部にグリル庫10を備えている。グリル庫10は、内部の天井近傍に上火バーナ21と、左右側面に下火バーナ22とを加熱手段2として備えると共に、グリル皿4と、グリル皿4上に載置される加熱容器3と、を備えている。加熱容器3としては、本実施形態では、厚手の鋳鉄や陶器のような熱容量の大きな材質のものを用いて、加熱容器本体31及び該加熱容器本体31の上開口を閉塞する容器蓋32とを備えた所謂ダッチオーブンとするが、他の容器であってもよい。
【0015】
グリル庫10の前面にはグリル開閉を行うグリル扉11が設けられている。グリル扉11にはグリル皿4を載せるためのグリル皿受け12が一体に取付けられており、グリル扉11を把手13により前方に引出すことにより、グリル皿4上に置かれている加熱容器3を取り出すことができる。グリル扉11中央には、庫内確認用覗き窓14が取り付けられている。
【0016】
下火バーナ22の直上には、下火カバー15が取り付けられている。
【0017】
加熱容器3を使用しないときは、図9に示すようにグリル焼網を導入できるように構成されている。図9中の符号18はグリル皿4上に載置される脚部18aを備えた焼き網、符号19は魚等の調理物である。
【0018】
グリル庫10の後方には排気通路16が設けられており、上下バーナからの燃焼ガスが排気通路16を経由して上方に導かれ、排気口カバー17を通過して外部に排出されるように構成されている。排気通路16の上部、下部には、それぞれサーミスタからなる温度センサS1、S2が配設されており、各部の排気温度上昇速度を検知して加熱制御を可能とするように構成されている。
【0019】
グリル皿4は、本実施形態では平面視略矩形状をして上方に開口する上下高さの低い箱状をした箱状本体41と、箱状本体41の上端開口縁から外側方へと連設されて外郭が平面視略矩形状となるフランジ部42と、フランジ部42の周縁から下方に垂下される垂下部43とからなり、箱状本体41の底面が煮汁が溜まる煮汁受け部となる。また上述したグリル皿受け12は、線材を平面視において前記グリル皿4の垂下部43よりも若干小さい略矩形の枠状に形成したもので、グリル皿4の箱状本体41を前記枠状のグリル皿受け12内に上方から挿入して、グリル皿4のフランジ部42をグリル皿受け12に載置し、グリル皿4の垂下部43をグリル皿受け12の外周に沿って位置させることで、グリル皿4のグリル皿受け12に対する位置固定が行われる。
【0020】
そして本発明においては、加熱容器3が載置されて該加熱容器3の位置固定を行う位置固定部材5が設けられる。
【0021】
位置固定部材5は、グリル皿4のフランジ部42に載置されると共に加熱容器3が載置される平面視略矩形状をした枠部51で主体が構成されるもので、本実施形態では断面が上下に長い偏平した形状の線材からなり、加熱容器3の側面を外側から囲むことができる寸法形状の略矩形状の枠部51とし、グリル皿4の短辺側のフランジ部42に前記枠部51の短辺側の枠部51aが載置される。また、一方の短辺側の枠部51a(本実施形態では手前すなわちグリル扉11側の枠部51)の内側近傍には、両側の長辺側の枠部51b間に短辺側の枠部51aと平行に該枠部51と同様の線材からなる架設片52が架設してある。そして、もう一方の短辺側の枠部51a(本実施形態では奥側の枠部51)と、架設片52と、両側の長辺側の枠部51bとに、加熱容器3に形成してある載置部6が載置される被載置部53が設けてある。
【0022】
また位置固定部材5には、グリル皿4に対して位置決めを行なう位置決め部55が設けてある。位置決め部55は、枠部51の複数箇所から下方に向けてそれぞれ突出するピン状のもので、グリル皿4のフランジ部42の対応する位置、即ち、グリル皿4の短辺側のフランジ部42に前記位置固定部材5の枠部51の短辺側の枠部51aを載置した時に前記位置決め部55が位置する部分にそれぞれ形成してある位置決め孔44に挿入されて位置決めが行われる。本実施形態では、手前側の短辺側の枠部51aに、該枠部51と同様の線材を側面視において略半円弧状となるように形成した弧状部材54の両端部が枠部51から若干下方に突出するように枠部51の内側に溶接により固定してあり、前記弧状部材54の両端部の枠部51から若干下方に突出する部分が位置決め部55となっていると共に、前記弧状部材54の枠部51よりも上側の部分を把持部56として利用することができ、一つの弧状部材54にて位置決め部55と把持部56とを兼用するものである。
【0023】
なお、位置決め部55は、枠部51から下に突出する部分の長さをそれぞれ異ならせてあり、これにより、位置決め部55が位置決め孔44に正しく挿入されず、位置決め部55の先端がグリル皿4のフランジ部42上に載置された時に、位置固定部材5が傾いて、使用者が誤セットに気付き易いようにしてある。
【0024】
加熱容器3は、本実施形態では平面視略楕円形状をしていて、その長軸が位置固定部材5及びグリル皿4の長辺側に沿うようにして、側面に形成してある載置部6が、位置固定部材5の奥側の短辺側の枠部51a及び架設片52の中央部と、両側の長辺側の枠部51bの前記奥側の短辺側の枠部51aと架設片52との間の中央部とに設けてある被載置部53に載置され、位置決めされた状態で係止される。加熱容器3の載置部6は、加熱容器3の側面から側方に向けて突出していて、その略下方向きの面が位置固定部材5の枠部51に載置される載置面61となるもので、略楕円状をした加熱容器3の長軸及び短軸と交わる部分にそれぞれ形成してある。図中の符号33はそれぞれ加熱容器本体31及び容器蓋32に設けた把手である。
【0025】
この加熱容器3にて調理を行うには、まず、グリル扉11を開いてグリル皿受け12に載せているグリル皿4を引き出し、グリル皿4の位置決め孔44に位置決め部55を挿入してグリル皿4のフランジ部42に載置されている位置固定部材5の枠部51内に、上方より加熱容器本体31を挿入して、加熱容器3の側面に突出する載置部6の載置面61を位置固定部材5の枠部51の被載置部53に載置し、位置固定部材5により加熱容器3を支持して、グリル扉11を閉じてオーブン調理を行うものである。
【0026】
上記のような構成においては、加熱容器3とグリル皿4との間に位置固定部材5が介在することとなって、グリル皿4と加熱容器3とが直接接触することがなくて、グリル皿4の被膜が剥がれたりグリル皿4が損傷するのを防止すると共に、位置固定部材5に煮汁等が付着しても拭き掃除による手入れがし易いものである。
【0027】
また、従来例のようにグリル皿4の煮汁受け部上に加熱容器受けを位置させて該加熱容器受け上に加熱容器3の底面を載置するのではなく、加熱容器3の側面に設けた載置部6を位置固定部材5の被載置部53に載置するものであるため、加熱容器3の底面のグリル皿4の煮汁受け部からの高さ位置は、加熱容器3の側面に設ける載置部6の高さ位置を調節することで任意に設定することができ、加熱容器3の底面の煮汁受け部からの高さを僅かな距離(少なくとも従来の加熱容器受けの線材の厚みより小さい距離)とすることで、加熱容器使用時のグリル庫10内の有効高さが低くなるのを防止することができるものである。
【0028】
なお、グリル庫10内を加熱する熱源は、ガス、電気等特に限定されないものである。
【0029】
グリル庫10内で加熱調理を行うにあたっては、加熱開始時に、「オーブンモード」と「グリルモード」のいずれかを図示しない操作部の切替スイッチにより切り替えて選択入力し、図示しない点火操作部を操作することで上火バーナ21及び下火バーナ22を点火して、グリル庫10内の加熱を開始するのであるが、この時、グリル庫10内に収容されているのが焼き網18か加熱容器3かが判定されるもので、本体内に格納されているマイクロコンピュータからなる図示しない制御部により加熱容器判定制御がなされる。
【0030】
使用者は、加熱容器使用の加熱調理を行うための「オーブンモード」と、焼き網使用の加熱調理を行うための「グリルモード」のいずれかを選択入力し、点火操作部を操作することで上火バーナ21及び下火バーナ22を点火して、グリル庫10内の加熱が開始される。
【0031】
「オーブンモード」は、鍋等の加熱容器使用の場合のように、熱容量の大きい被加熱物を加熱対象とする制御で、タイマ機能により最大30分間までの任意の時間加熱継続を行うように設定することができ、前記加熱継続を行った後、自動的に上火バーナ21及び下火バーナ22を消火させて調理を終了する。また「オーブンモード」では、上温度センサS1が320℃以上の温度、下温度センサS2が220℃以上の温度を検出すると、自動的に上火バーナ21及び下火バーナ22を消火させるものである。
【0032】
「グリルモード」は、焼き網使用の場合のように、熱容量の小さい被加熱物を加熱対象とする制御で、タイマ機能により最大18分間までの任意の時間加熱継続を行うように設定することができ、前記加熱継続を行った後、自動的に上火バーナ21及び下火バーナ22を消火させて調理を終了する。また「グリルモード」では、上温度センサS1が255℃以上の温度、下温度センサS2が180℃以上の温度を検出すると、自動的に上火バーナ21及び下火バーナ22を消火させるものである。
【0033】
すなわち「オーブンモード」による調理においては、被調理物が加熱容器3に覆われているため、加熱手段2により加熱継続する最長許容時間を長くすると共に、上温度センサS1及び下温度センサS2による検出温度の最高許容温度を高く設定し、「グリルモード」による調理においては、被調理物が直接加熱手段2により加熱されるため、加熱手段2により加熱継続する最長許容時間が短くて済むと共に長くなると焦げ付く惧れがあり、また上温度センサS1及び下温度センサS2による検出温度の最高許容温度を高く設定すると、被調理物から飛び散った油へ引火する惧れがあるため、前記最高許容温度を低く設定するものである。
【0034】
また、加熱調理器の電源をONにした直後のデフォルト状態では、「グリルモード」の状態として処理される。すなわち、切替スイッチを入力しなければ「グリルモード」を選択入力したことになる。
【0035】
上火バーナ21及び下火バーナ22には、熱電対等からなり点火を検出する点火検出装置(図示せず)が設けられており、点火検出装置における検出情報を基に制御部において点火しているか否かが検出される。そして、使用者が点火前に「オーブンモード」を選択し、且つ、点火検出装置において点火が検出されたか否かが判定される(S1)。ステップ(S1)において点火検出と判定されると、所定時間t1の間(例えば点火検出から150秒)上火バーナ21及び下火バーナ22を最大火力で加熱継続する(S2)。前記のように所定時間t1の間に最大火力で加熱継続することで、後述するステップ(S3)、(S5)、(S8)において加熱容器3か焼き網18を判定するための温度偏差(後述する差ΔT1、ΔT2、ΔT3)が顕著に得られるものである。ステップ(S1)において点火検出と判定されない場合、はじめのステップ(S0)に戻る。
【0036】
次に、点火判定から所定時間t1加熱継続された時点での上温度センサS1の温度TU1と下温度センサS2の温度TL1との差ΔT1=TU1−TL1と第一の閾値T1(例えば50K)とを比較して、ΔT1<T1であるか否か(第一の判定条件)を判定する(S3)。ステップ(S3)においてΔT1<T1であると判定されると、焼き網使用の加熱調理であると判定して「グリルモード」へと移行する(S12)。ステップ(S3)においてΔT1<T1でないと判定されると、所定の監視時間t2の間(例えば点火検出から250秒)加熱継続される(S4)。
【0037】
次に、点火判定時の下温度センサS2の温度TL0と、点火判定から所定の監視時間t2加熱継続された時点での下温度センサS2の温度TL2との差ΔT2=TL2−TL0と第二の閾値T2(例えば33K)とを比較して、ΔT2≧T2であるか否か(第二の判定条件)を判定する(S5)。ステップ(S5)においてΔT2≧T2であると判定されると、焼き網使用の加熱調理であると判定して「グリルモード」へと移行する(S12)。ステップ(S5)においてΔT2≧T2でないと判定されると、加熱継続される(S6)。
【0038】
次に、加熱継続している状態で、下温度センサS2の検出した温度TLが所定の監視温度TS(例えば80℃)と比較してTL≧TSであるか否かが判定され(S7)、TL≧TSでなければステップ(S6)の加熱継続へと戻り、TL≧TSであればステップ(S8)へ移行する。
【0039】
ステップ(S8)では、ステップ(S7)においてTL≧TSであると判定した時点での上温度センサS1の温度TU3と下温度センサS2の温度TL3(すなわちTL≧80℃となったはじめての温度)との差ΔT3=TU3−TL3と第三の閾値T3(例えば77K)とを比較して、ΔT3≦T3であるか否か(第三の判定条件)を判定する。ステップ(S8)においてΔT3≦T3であると判定されると、焼き網使用の加熱調理であると判定して「グリルモード」へと移行する(S12)。ステップ(S8)においてΔT3≦T3でないと判定されると、加熱容器使用の加熱調理であると判定して「オーブンモード」が確定して移行される(S9)。
【0040】
ステップ(S9)において「オーブンモード」へと移行した後は、上火バーナ21及び下火バーナ22の自動消火温度(最高許容温度)である上温度センサS1の320℃、下温度センサS2の220℃を維持すると共に(S10)、連続で加熱する最大燃焼時間(最長許容時間)30分間までの任意の時間加熱継続を設定されている通り維持するものである(S11)。
【0041】
また、ステップ(S12)において「グリルモード」へと移行した後は、上火バーナ21及び下火バーナ22の自動消火温度は、上温度センサS1を255℃、下温度センサS2を180℃に設定するものである(S13)。また連続で加熱する最大燃焼時間18分間までの任意の時間加熱継続を設定するため、タイマ機能で設定されている時間が18分以上である場合には18分間に設定し、18分未満である場合には設定されている通り維持するものである(S14)。
【0042】
上述した加熱容器判定制御では、第一の判定条件〜第三の判定条件のいずれか一つでも満たす場合には「グリルモード」へと移行し、第一の判定条件〜第三の判定条件のいずれも満たさない場合には「オーブンモード」を維持しており、これに対して特願2006−288363記載の従来例における制御では、第二の判定条件、第三の判定条件のみを用いて判定している。
【0043】
上述した制御においては、誤判定として、加熱容器使用の加熱調理であって「オーブンモード」で制御すべきであるところを「グリルモード」で制御する場合と、焼き網使用の加熱調理であって「グリルモード」で制御すべきであるところを「オーブンモード」で制御する場合の二通りが考えられる。前者のように加熱容器使用であるのに「グリルモード」で加熱調理の制御を行う場合には本来行うべき「オーブンモード」よりも最長許容時間が短く且つ最高許容温度が低く抑えられるため、グリル庫10内が必要以上に加熱されることはないが熱量が不足する場合があり、後者のように焼き網使用であるのに「オーブンモード」で加熱調理の制御を行う場合には、本来行うべき「グリルモード」よりも最長許容時間が長く且つ最高許容温度が高いため、グリル庫10内が必要以上に加熱されてしまう惧れがある。この点に鑑みて従来例では第二の判定条件、第三の判定条件を用いて判定していたが、この判定方法では近年の焼き網調理における被加熱物の大型化により加熱容器3による調理と誤判定されて「オーブンモード」が行われてしまう。そこで本発明では第一の判定条件を追加して、従来例では焼き網18を用いているにもかかわらず判定条件の閾値の近傍で「オーブンモード」と判定されていたところを「グリルモード」と判定されるようにして、グリル庫10内が必要以上に加熱されてしまうのを防止することができ、また、「グリルモード」と判定し易くなってフェールセーフとすることができる。
【0044】
ところで、第一の判定条件については、上述した説明においては所定時間t1(例えば150秒)及び第一の閾値T1(例えば50K)は固定値であったが、更に判定精度を向上させるべく、加熱開始時の上温度センサS1による計測温度TU0又は下温度センサS2による計測温度TL0に応じて設定するようにしてもよい。例えば、所定時間t1、第一の閾値T1をそれぞれTU0又は/及びTL0を変数とする一次式や二次式あるいは高次の整式としたり、TU0又は/及びTL0の値毎に対応する所定時間t1、第一の閾値T1の値を定めたテーブルを用意したりすることが挙げられる。
【0045】
加熱開始時の計測温度によって、ステップ(S3)で第一の判定条件による判定を行うまでの所定時間t1及び、この時に用いる第一の閾値T1の適正値が異なる可能性があるため、上記のように加熱開始時の計測温度に応じて、所定時間t1及び第一の閾値T1の適正値を定めて、判定精度を向上させて且つ加熱調理に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0046】
一番簡単な方法として所定時間t1及び第一の閾値T1を一次式により求める場合について説明する。この場合、以下に示すように、
t1=a×T0+b・・・(式1)
(但し、a:負の定数、b:定数、T0:変数)
T1=c×T0+d・・・(式2)
(但し、c:定数、d:定数)
として設定することとなる。T0は上温度センサS1による計測温度TU0又は/及び下温度センサS2による計測温度TL0により定まる変数で、TU0又はTL0のいずれか一方をT0としたり、低い方や高い方、あるいは平均値をとったりすることも可能である。ここではT0=TL0とする。この時、定数aを負の値とすると、T0が大きくなる程、t1の値が小さくなる。すなわち、加熱開始時の温度T0が低い時は、ステップ(S3)で第一の判定条件の判定を行うまでの所定時間t1が長くなるが、この所定時間t1が長い程、所定時間t1経過時点での上温度センサS1の温度TU1と下温度センサS2の温度TL1との差ΔT1=TU1−TL1が大きくなる傾向にあるため、前記差ΔT1の検出が容易となる。
【0047】
また、加熱開始時の温度T0が高い時は、ステップ(S3)で第一の判定条件の判定を行うまでの所定時間t1が短くなり、焼き網18を用いた調理の場合に大きな火力で長い時間加熱継続して加熱し過ぎるのが防止される。また所定時間t1が短くなると、所定時間t1経過時点での上温度センサS1の温度TU1と下温度センサS2の温度TL1との差ΔT1=TU1−TL1が小さくなる傾向にあるため、第一の閾値T1を小さくすべくcを負の値とするのが好ましい。
【0048】
以下、実際の使用に基づく実施例について説明する。
<実施例1>
加熱容器3を用いた調理の例である。
(1)加熱手段2の点火検出時(加熱開始時t=t0)における下温度センサS2による計測温度TL0は37℃であった。
(2)所定時間t1(=150秒)経過時における上温度センサS1の温度TU1は107℃、下温度センサS2の温度TL1は44℃、その差ΔT1=TU1−TL1は63Kであり、第一の閾値T1(=50K)より大きく、第一の判定条件を満たさないため「オーブンモード」を維持する。
(3)監視時間t2(=250秒)経過時における下温度センサS2の温度TL2は54℃であり、加熱開始時の下温度センサS2による計測温度TL0(=37℃)との差ΔT2=TL2−TL0は17Kであり、第二の閾値T2(=33K)より小さく、第二の判定条件を満たさないため「オーブンモード」を維持する。
(4)下温度センサS2の計測温度が監視温度T0(=80℃)に達した時の上温度センサS1の温度TU3は166℃、下温度センサS2の温度TL3は80℃、その差ΔT3=TU3−TL3は86Kであり、第三の閾値T3(=77K)より大きく、第三の判定条件を満たさないため「オーブンモード」を維持する。
【0049】
以上のように、第一の判定条件〜第三の判定条件のいずれも満たさず、「グリルモード」に移行せず「オーブンモード」が維持された。
<実施例2>
焼き網18に鯵を五匹載置して加熱調理を行った例である。
(1)加熱手段2の点火検出時(加熱開始時t=t0)における下温度センサS2による計測温度TL0は33℃であった。
(2)所定時間t1(=150秒)経過時における上温度センサS1の温度TU1は78℃、下温度センサS2の温度TL1は45℃、その差ΔT1=TU1−TL1は33Kであり、第一の閾値T1(=50K)より小さく、第一の判定条件を満たすため「グリルモード」に移行した。これで「グリルモード」が確定するが、第一の判定条件で「オーブンモード」が維持されたと仮定して、次のステップ(S4)に進む。
(3)監視時間t2(=250秒)経過時における下温度センサS2の温度TL2は56℃であり、加熱開始時の下温度センサS2による計測温度TL0(=33℃)との差ΔT2=TL2−TL0は23Kであり、第二の閾値T2(=33K)より小さく、第二の判定条件を満たさないため「オーブンモード」を維持する。
(4)下温度センサS2の計測温度が監視温度T0(=80℃)に達した時の上温度センサS1の温度TU3は163℃、下温度センサS2の温度TL3は80℃、その差ΔT3=TU3−TL3は83Kであり、第三の閾値T3(=77K)より大きく、第三の判定条件を満たさないため「オーブンモード」を維持する。
【0050】
以上のように、本発明において追加した第一の判定条件によって「グリルモード」への移行が行われたが、第一の判定条件がない従来例の場合には、第二の判定条件及び第三の判定条件はいずれも満たさず、「オーブンモード」が維持されてしまった。
【0051】
上述した実施例1、実施例2より本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態のグリル付き加熱調理器の側断面図である。
【図2】同上の正面断面図である。
【図3】同上においてグリル皿上に位置固定部材を介して加熱容器を載置した状態の平面図である。
【図4】同上のグリル皿を示し、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【図5】同上の位置固定部材を示し、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【図6】同上の加熱容器の斜視図である。
【図7】同上の加熱容器本体を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【図8】同上の容器蓋を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【図9】グリル皿にグリル焼き網を載置する場合の正面断面図である。
【図10】加熱容器判定制御のフローチャートである。
【図11】実施例1における温度のタイムチャートである。
【図12】実施例2における温度のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 加熱調理器
10 グリル庫
11 グリル扉
12 グリル皿受け
16 排気通路
2 加熱手段
3 加熱容器
31 加熱容器本体
32 容器蓋
4 グリル皿
44 位置決め孔
5 位置固定部材
51 枠部
6 載置部
61 載置面
S1 上温度センサ
S2 下温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫内に加熱手段を備えると共に、グリル庫内の第一の位置における温度を計測する上温度センサ及び第一の位置より下方の第二の位置における温度を計測する下温度センサを設け、グリル庫内に被調理物を載置する焼き網と被調理物を収容する加熱容器とを選択的に収容可能とし、グリル庫内に焼き網を収容して加熱調理を行う「グリルモード」と加熱容器を収容して加熱調理を行う「オーブンモード」とを選択的に実行する制御部を備え、制御部は「グリルモード」と「オーブンモード」とで少なくとも上温度センサ又は/及び下温度センサの温度に基づいてそれぞれ異なる制御を行うものであって、加熱手段による加熱を開始する際に制御部に指令を与える入力部から「オーブンモード」を選択入力した時に、全ての加熱手段を最大能力に維持すると共に、
加熱開始から所定時間(t1)後の上温度センサによる計測温度(TU1)と下温度センサによる計測温度(TL1)との差(ΔT1=TU1−TL1)と第一の閾値(T1)とが第一の判定条件(ΔT1<T1)を満たすか、あるいは、
加熱開始から所定時間(t2)後の下温度センサによる計測温度(TL2)と加熱開始時の下温度センサによる計測温度(TL0)との差(ΔT2=TL2−TL0)と第二の閾値(T2)とが第二の判定条件(ΔT2≧T2)を満たすか、あるいは、
下温度センサによる計測温度(TL)が設定温度(TS)に達した時の上温度センサによる計測温度(TU3)と下温度センサによる計測温度(TL3)との差(ΔT3=TU3−TL3)と第三の閾値(T3)とが第三の判定条件(ΔT3≦T3)を満たす場合に、焼き網使用であると判定して「グリルモード」に移行し、第一の判定条件乃至第三の判定条件のいずれも満たさない場合には加熱容器使用であると判定して「オーブンモード」を維持することを特徴とするグリル付き加熱調理器。
【請求項2】
前記所定時間(t1)及び第一の閾値(T1)を、加熱開始時の上温度センサによる計測温度(TU0)又は/及び下温度センサによる計測温度(TL0)に応じて設定することを特徴とする請求項1記載のグリル付き加熱調理器。
【請求項3】
加熱開始時の上温度センサによる計測温度(TU0)又は下温度センサによる計測温度(TL0)を(T0)とし、(T0)が低い時に比べ(T0)が高い時ほど前記所定時間(t1)が短くなるように設定することを特徴とする請求項2記載のグリル付き加熱調理器。
【請求項1】
グリル庫内に加熱手段を備えると共に、グリル庫内の第一の位置における温度を計測する上温度センサ及び第一の位置より下方の第二の位置における温度を計測する下温度センサを設け、グリル庫内に被調理物を載置する焼き網と被調理物を収容する加熱容器とを選択的に収容可能とし、グリル庫内に焼き網を収容して加熱調理を行う「グリルモード」と加熱容器を収容して加熱調理を行う「オーブンモード」とを選択的に実行する制御部を備え、制御部は「グリルモード」と「オーブンモード」とで少なくとも上温度センサ又は/及び下温度センサの温度に基づいてそれぞれ異なる制御を行うものであって、加熱手段による加熱を開始する際に制御部に指令を与える入力部から「オーブンモード」を選択入力した時に、全ての加熱手段を最大能力に維持すると共に、
加熱開始から所定時間(t1)後の上温度センサによる計測温度(TU1)と下温度センサによる計測温度(TL1)との差(ΔT1=TU1−TL1)と第一の閾値(T1)とが第一の判定条件(ΔT1<T1)を満たすか、あるいは、
加熱開始から所定時間(t2)後の下温度センサによる計測温度(TL2)と加熱開始時の下温度センサによる計測温度(TL0)との差(ΔT2=TL2−TL0)と第二の閾値(T2)とが第二の判定条件(ΔT2≧T2)を満たすか、あるいは、
下温度センサによる計測温度(TL)が設定温度(TS)に達した時の上温度センサによる計測温度(TU3)と下温度センサによる計測温度(TL3)との差(ΔT3=TU3−TL3)と第三の閾値(T3)とが第三の判定条件(ΔT3≦T3)を満たす場合に、焼き網使用であると判定して「グリルモード」に移行し、第一の判定条件乃至第三の判定条件のいずれも満たさない場合には加熱容器使用であると判定して「オーブンモード」を維持することを特徴とするグリル付き加熱調理器。
【請求項2】
前記所定時間(t1)及び第一の閾値(T1)を、加熱開始時の上温度センサによる計測温度(TU0)又は/及び下温度センサによる計測温度(TL0)に応じて設定することを特徴とする請求項1記載のグリル付き加熱調理器。
【請求項3】
加熱開始時の上温度センサによる計測温度(TU0)又は下温度センサによる計測温度(TL0)を(T0)とし、(T0)が低い時に比べ(T0)が高い時ほど前記所定時間(t1)が短くなるように設定することを特徴とする請求項2記載のグリル付き加熱調理器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−66086(P2009−66086A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235856(P2007−235856)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(301066992)株式会社ハーマンプロ (145)
【Fターム(参考)】
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