説明

コイル基板構造及びスイッチング電源装置

【課題】放熱性を高めることができ且つ実装領域を充分に確保できるコイル基板構造及びスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】コイル基板構造100は、1次側トランスコイル部41を有する第1コイル基板110と、この第1コイル基板110に重ねられ2次側トランスコイル部42を有する第2コイル基板120と、トランスコイル部41,42を磁気的に接続するためのトランスコア130と、を備えている。ここで、コイル基板110,120は、トランスコイル部41,42が基板厚さ方向に重なるようにして互いにずれて重ねられている。よって、コイル基板110,120の放熱面面積を増大させることができる。また、トランスコイル部41,42においては、基板厚さ方向から見たとき、伝送方向Aの幅が該伝送方向Aの交差方向Bの幅よりも狭くなっている。よって、コイル基板110,120の積層領域を伝送方向Aに縮小することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル基板構造、及びこのコイル基板構造を具備するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコイル基板構造としては、1次側トランスコイル部を有する第1コイル基板と、2次側トランスコイル部を有する第2コイル基板と、1次側及び2次側トランスコイル部を磁気的に接続するためのトランスコアと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなコイル基板構造における第1及び第2コイル基板は、1次側及び2次側トランスコイル部が基板厚さ方向に重なるようにして互いに重ねられている。
【特許文献1】特開2005−38872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年のコイル基板構造では、放熱性を高めることが要求されており、第1及び第2コイル基板から熱を一層放熱できるものが望まれている。また、上述したようなコイル基板構造においては、さらなる小型化が要求されており、かかる要求に伴って、小型化されても実装領域(すなわち、第1及び第2コイル基板において実装部品を搭載可能な領域)を充分に確保できるものも求められている。
【0004】
そこで、本発明は、放熱性を高めることができ、且つ実装領域を充分に確保することが可能なコイル基板構造、及びスイッチング電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るコイル基板構造は、1次側トランスコイル部を有する第1コイル基板と、第1コイル基板に重ねられ、2次側トランスコイル部を有する第2コイル基板と、を備えたコイル基板構造であって、1次側及び2次側トランスコイル部は、基板厚さ方向から見たときに渦巻状に延びる導体パターンを含んで構成され、第1及び第2コイル基板は、1次側及び2次側トランスコイル部が基板厚さ方向に重なるようにして互いにずれて重ねられており、1次側及び2次側トランスコイル部においては、基板厚さ方向から見たとき、所定方向の幅が該所定方向の交差方向の幅よりも狭いことを特徴とする。
【0006】
本発明のコイル基板構造では、第1及び第2コイル基板が互いにずれて重ねられているため、第1及び第2コイル基板が互いに一致するように重ねられたものに比べ、これらの外表面、すなわち放熱面の面積を増大させることができる。ここで、第1及び第2コイル基板が互いに重なる領域は、1次側及び2次側トランスコイル部が基板厚さ方向に重なる領域となり、実装部品の放熱経路が長くなるため、かかる領域に発熱量の大きい実装部品を搭載することは困難とされている。この点、本発明では、基板厚さ方向から見たとき、1次側及び2次側トランスコイル部における所定方向の幅が狭くされているため、第1及び第2コイル基板が互いに重なる領域が所定方向に縮小されることとなる。従って、例えばコイル基板構造が小型化された場合でも、実装領域を充分に確保することが可能となる。すなわち、本発明によれば、放熱性を高めることができ、且つ実装領域を充分に確保することが可能となる。
【0007】
また、第1コイル基板側から第2コイル基板側へと電力を伝送するコイル基板構造であって、所定方向は、電力の伝送方向に沿った方向であることが好ましい。この場合、コイル基板構造においての電力伝送長さも縮小されるため、コイル基板構造の電力損失を低減することが可能となる。
【0008】
また、導体パターンにおいては、所定方向の導体幅が交差方向の導体幅よりも狭い場合がある。
【0009】
また、第1及び第2コイル基板において実装部品が搭載される一主面の反対側の他主面に当接された放熱部材を備えたことが好ましい。この場合、一主面に搭載される実装部品の熱が、第1及び第2コイル基板を介して放熱部材へ熱伝導され、放熱部材にて放熱されることになる。よって、実装部品の熱を一層放熱させることができ、放熱性を一層高めることが可能となる。
【0010】
このとき、第1及び第2コイル基板は、これらのうちの発熱量が高い一方が放熱部材側に位置するように重ねられていることが好ましい。この場合、例えば図6(a)に示すように、放熱板140側に位置する一方のコイル基板120では、他方のコイル基板110に比べて放熱板140との接触面積を大きくすることができる。よって、発熱量が高いコイル基板120を放熱板140側に位置させて重ねることで、コイル基板構造100の熱を効果的に放熱することができる。
【0011】
また、上記作用効果を好適に発揮する構成として、具体的には、第1及び第2コイル基板は、長板状を呈すると共に、長手方向に互いにずれて重ねられ、1次側及び2次側トランスコイル部においては、基板厚さ方向から見たとき、所定方向としての長手方向の幅が、交差方向としての短手方向の幅よりも狭い構成が挙げられる。
【0012】
また、1次側及び2次側トランスコイル部を磁気的に接続するためのトランスコアをさらに備え、1次側及び2次側トランスコイル部のそれぞれには、トランスコアが挿通される貫通孔が形成されており、導体パターンは、貫通孔を中心として渦巻状に延びる場合がある。
【0013】
また、本発明に係るスイッチング電源装置は、上記コイル基板構造を具備することを特徴とする。このスイッチング電源装置においても、放熱性を高めると共に実装領域を充分に確保するという上記効果を奏する。なお、スイッチング電源装置としては、例えば、DC−DCコンバータやAC−DCコンバータが挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放熱性を高めることができ、且つ実装領域を充分に確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。図1に示すように、本実施形態のスイッチング電源装置1は、DC−DCコンバータとして機能するものであり、高圧バッテリ等から供給される高圧の直流入力電圧Vinを低圧の直流出力電圧Voutに変換し、低圧バッテリ等へ供給する。
【0017】
このスイッチング電源装置1は、1次側高圧ライン21と1次側低圧ライン22との間に設けられたスイッチング回路2及び入力平滑コンデンサ3と、1次側及び2次側トランスコイル部41,42を有するトランス4と、2次側トランスコイル部42に接続された整流回路5と、整流回路5に接続された平滑回路6と、を備えている。
【0018】
スイッチング回路2は、スイッチング素子S1〜S4で構成されたフルブリッジ型の回路構成とされている。スイッチング回路2は、例えば駆動回路(不図示)から供給される駆動信号に応じて、入力端子T1,T2間に印加される直流入力電圧Vinを入力交流電圧に変換する。
【0019】
入力平滑コンデンサ3は、入力端子T1、T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化する。トランス4は、スイッチング回路2で生成された入力交流電圧を変圧し、出力交流電圧を出力する。1次側及び2次側トランスコイル部41,42の巻数比は、変圧比によって適宜設定されている。ここでは、3:1の巻数比とされており、よって、例えば[3V,1A]の電力が[1V,3A]の電力へと変換される。2次側トランスコイル部42は、センタータップ型のものであり、接続部C及び出力ラインLOを介して出力端子T3に導かれている。
【0020】
整流回路5は、整流ダイオード5A,5Bからなる単層全波整流型のものである。各整流ダイオード5A,5Bのカソードは、2次側トランスコイル部42に接続されている一方、アノードは、接地ラインLGに接続され、出力端子T4に導かれている。これにより、整流回路5は、トランス4からの出力交流電圧の各半短波期間を、個別に整流して直流電圧を生成する。
【0021】
平滑回路6は、チョークコイル61と出力平滑コンデンサ62とを含んで構成されている。チョークコイル61は、出力ラインLOに挿入配置されている。出力平滑コンデンサ62は、出力ラインLOにおいてチョークコイル61と接地ラインLGとの間に接続されている。これにより、平滑回路6は、整流回路5で整流された直流電圧を平滑化して直流出力電圧Voutを生成し、この直流出力電圧Voutを出力端子T3,T4から低圧バッテリ等へ供給する。
【0022】
次に上記回路を構成するコイル基板構造について詳細に説明する。
【0023】
図2は図1のスイッチング電源装置におけるコイル基板構造の要部を示す斜視図、図3は図2のコイル基板構造の分解斜視図である。図2,3に示すように、本実施形態のコイル基板構造100は、互いにずれて積層された(重ねられた)第1及び第2コイル基板110,120と、トランスコア130と、放熱板(放熱部材)140と、を備えている。
【0024】
このコイル基板構造100は、第1コイル基板110側から第2コイル基板120側へ向かう伝送方向Aに沿って電力を伝送(変換)する。つまり、伝送方向(変換方向)Aは、コイル基板構造100において電力が伝送されるベクトル方向である。
【0025】
第1及び第2コイル基板110,120は、伝送方向Aを長手方向とする平板状のプリント基板である。これら第1及び第2コイル基板110,120のそれぞれは、樹脂層(基材)7を含むと共に、銅層等である金属層8を複数層(ここでは、上層と内層との2層)含んでいる多層基板とされている(図6参照)。金属層8は、導体形成層であり、後述する導体パターン44,46を構成すると共に、これらと各実装部品9とを接続する配線導体を構成する。金属層8間には、図示しない層間接続部が設けられている。また、第1及び第2コイル基板110,120の上面(一主面)110a,120aは、必要部分がレジスト(不図示)で覆われている。
【0026】
図4は、図2の第1コイル基板を示す上面図である。図4に示すように、第1コイル基板110には、基板厚さ方向(積層方向)から見たとき(上面110a側から見たとき)、その伝送方向Aの略中央から下流側に亘る領域に、上記1次側トランスコイル部41が設けられている。1次側トランスコイル部41の略中央位置には、トランスコア130が挿通されるものとして、矩形状の貫通孔43が形成されている。そして、この1次側トランスコイル部41には、貫通孔43を中心として矩形渦巻状に延びる導体パターン44が設けられている。
【0027】
導体パターン44は、第1コイル基板110の上面110a側に例えば銅等で形成されたコイルパターンである。導体パターン44は、伝送方向Aに沿って延びる導電パターン44と、交差方向Bに沿って延びる導電パターン44とが連続するように構成されている。
【0028】
この導体パターン44では、伝送方向Aの導体幅h1aが、伝送方向Aと交差(ここでは、直交)する方向B(以下、「交差方向B」という)の導体幅h1bよりも狭くされている。これにより、1次側トランスコイル部41においては、基板厚さ方向から見たとき、伝送方向(所定方向)Aの幅H1Aが交差方向Bの幅H1Bよりも狭くなっている。換言すると、1次側トランスコイル部41では、第1コイル基板110の長手方向の幅H1Aが、短手方向の幅H1Bよりも狭くなっている。
【0029】
また、導体パターン44の始端S及び終端Eは、例えば製造上の点から適宜に構成されている。図示される一例では、基板厚さ方向から見た上面110aにおいて、図示上側に位置する導電パターン44の端部が始端Sとされ、貫通孔43の図示下側に位置する導電パターン44の端部が終端Eとされている。そのため、伝送方向Aの下流側領域にて延在する導電パターン44’’の数は、伝送方向Aの上流側領域にて延在する導電パターン44’の数よりも多くなっており、導電パターン44’’の導体幅h1a’’は、導体パターン44’の導体幅h1a’よりも狭くされている。
【0030】
また、始端Sは、上記スイッチング回路2の上記スイッチング素子S1,S2に、第1コイル基板110における内層の金属層8で形成された導体によって接続されている。また、終端Eは、上記スイッチング回路2の上記スイッチング素子S3,S4に、第1コイル基板110における内層の金属層8で形成された導体によって接続されている。
【0031】
図5は、図2の第2コイル基板を示す上面図である。図5に示すように、第2コイル基板120には、基板厚さ方向から見たとき、その伝送方向Aにおける上流側から略中央に亘る領域に、上記2次側トランスコイル部42が設けられている。2次側トランスコイル部42の略中央位置には、トランスコア130が挿通されるものとして、矩形状の貫通孔45が形成されている。そして、この2次側トランスコイル部42には、貫通孔45を中心として矩形渦巻状に延びる導体パターン46が設けられている。
【0032】
導体パターン46は、第2コイル基板120の上面120a側に銅等で形成されたコイルバターンである。導体パターン46は、伝送方向Aに沿って延びる導電パターン46と、交差方向Bに沿って延びる導電パターン46とが連続するように構成されている。
【0033】
この導体パターン46では、上記1次側トランスコイル部41と同様に、伝送方向Aの導体幅h2aが交差方向Bの導体幅h2bよりも狭くされている。これにより、2次側トランスコイル部42においても、基板厚さ方向から見たとき、伝送方向Aの幅H2Aが交差方向Bの幅H2Bよりも狭くなっている。換言すると、2次側トランスコイル部42でも、第2コイル基板130の長手方向の幅H2Aが短手方向の幅H2Bよりも狭くなっている。
【0034】
図2,3に戻り、上述した第1及び第2コイル基板110,120は、1次側及び2次側トランスコイル部41,42のみが基板厚さ方向に重なるようにして(すなわち、1次側及び2次側トランスコイル部41,42のみを積層領域として)互いに重ねられると共に、貫通孔43,45が互いに連通するように伝送方向Aに互いにずれて重ねられている。ここでは、第2コイル基板120が放熱板140側(下側)に位置するように積層されている。
【0035】
そして、第1及び第2コイル基板110,120のそれぞれでは、各上面110a,120aにおいて積層領域以外の領域を実装領域Rとして、半導体部品等の実装部品9がそれぞれ実装されている。具体的には、図2に示すように、第1コイル基板110の実装領域Rに上記スイッチング素子S1〜S4が載置されて搭載されると共に、第2コイル基板120の実装領域Rに上記整流ダイオード5A,5Bが載置されて搭載されている。
【0036】
なお、スイッチング素子としては、例えば電界効果型トランジスタ(MOS−FET:Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)やIGBT(InsulatedGate Bipolar Transistor)等が挙げられる。
【0037】
また、第2コイル基板120は、上記チョークコイル61に対応するものとして、例えばフェライト等の磁性材料で形成されたコア122を少なくとも有している。このコア122は、第2コイル基板120において伝送方向Aの下流側端部に形成された矩形状の貫通孔123(図5参照)に内挿されている。
【0038】
トランスコア130は、1次側及び2次側トランスコイル部41,42を磁気的に互いに接続するためものであり、上記トランス4を構成する。トランスコア130は、例えばフェライト等の磁性材料で形成されている。また、トランスコア130は、図3に示すように、いわゆるU型コアである上部コア131と、いわゆるI型コアである下部コア132と、を含んでおり、これらが図示しない固定部材によって互いに連結され固定されている。
【0039】
このトランスコア130は、その上部コア131が貫通孔43,45に内挿されている。そして、トランスコア130は、そのコア131,132が1次側及び2次側トランスコイル部41,42の一部を覆うようにして、第1及び第2コイル基板110,120に取り付けられている。
【0040】
放熱板140は、第1及び第2コイル基板110,120の熱を放熱すると共に、実装された実装部品9の熱を第1及び第2コイル基板110,120を介して放熱するためのものである。この放熱板140は、例えばアルミニウムで形成されており、第1及び第2コイル基板110,120の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有している。
【0041】
また、放熱板140は、第1コイル基板110の下面(他主面)110bを当接させる放熱面141と、第2コイル基板120の下面(他主面)120bを当接させる放熱面142と、を有している。これら放熱面141,142は、第2コイル基板120の厚さと等しい高さの段差部143で連続するように構成されている。また、放熱面142には、下部コア132を係止するためのものとして、下部コア132の形状に沿って窪むような凹部144が形成されている。
【0042】
そして、放熱板140においては、その凹部144に下部コア132が配置されるようにして、各放熱面141,142に第1及び第2コイル基板110,120がそれぞれ載置されている。これにより、図6(a)に示すように、第1及び第2コイル基板110,120の下面110b,120bは、放熱板140に当接されることとなる。
【0043】
具体的には、第1及び第2コイル基板110,120の下面110b,120bにおいて実装領域Rに対応する領域が、放熱面141,142に当接されるのに加え、第2コイル基板120の下面120bの積層領域においてトランスコア130に覆われていない領域が、放熱面142に当接されている。これにより、2次側トランスコイル部42の一部をも放熱板140に熱的に当接されることになり、放熱面面積(放熱板140との接触面積)を一層増大させることができる。なお、ここでは、第2コイル基板120において伝送方向A上流側の側面120cが、段差部143に近接若しくは接触されている。
【0044】
以上のように構成されたスイッチング電源装置1では、入力端子T1,T2から供給される直流入力電圧Vinがスイッチングされて入力交流電圧が生成され、トランス4の1次側トランスコイル部41へと供給される。そして、生成された入力交流電圧が変圧され、2次側トランスコイル部42から出力交流電圧として出力される。そして、この出力交流電圧が、整流回路5によって整流されると共に平滑回路6によって平滑化され、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutとして出力されることとなる。
【0045】
以上、本実施形態によれば、第1及び第2コイル基板110,120が互いにずれて重ねられている。そのため、第1及び第2コイル基板110,120が互いに一致するように重ねられた従来のコイル基板構造(図6(b)参照:以下、「従来基板構造」という)200に比べ、第1及び第2コイル基板110,120の放熱面(外表面)の面積を増大させることができる。その結果、コイル基板構造100の放熱性を高めることが可能となる。
【0046】
また、実装領域Rにおいては、第1及び第2コイル基板110,120が重なっていないことから、従来基板構造200に比べて次の効果を奏する。すなわち、実装部品9の熱を第1及び第2コイル基板110,120を介して放熱板140へ熱伝播させる際、実装部品9の放熱経路が短くなるため、第1及び第2コイル基板110,120による熱抵抗を低減させることができ、放熱性を一層高めることができる。また、第1及び第2コイル基板110,120を薄く形成できるため、低コスト化が可能となる。
【0047】
ここで、積層領域は1次側及び2次側トランスコイル部41,42が基板厚さ方向に重なる領域となり、実装部品9の放熱経路が長くなるため、発熱量の大きな実装部品9を積層領域に搭載することは通常困難とされている。この点、本実施形態の1次側及び2次側トランスコイル部41,42では、上述したように、基板厚さ方向から見たときに伝送方向Aの幅H1A,H2Aが狭くされている。よって、本実施形態では、積層領域が伝送方向Aに縮小されることとなる。その結果、コイル基板構造100を伝送方向Aに小型化しつつ、実装領域Rを充分に確保することが可能となる。換言すると、第1及び第2コイル基板110,120外形の大型化を要せずに、実装領域Rを充分に確保することができる。
【0048】
従って、本実施形態は、放熱領域と実装領域Rとの双方を充分に確保できることから、小型で放熱性に優れたものであり、且つ低コスト化が図れるものといえる。なお、第1及び第2コイル基板110,120に含まれる金属層8の層数が増える程、金属層8相互間の樹脂層7の層数も増えることから、実装部品9から放熱板140までの熱抵抗であるところの第1及び第2コイル基板110,120の熱抵抗が大きくなるため、熱抵抗を低減させるという上記効果は、多くの金属層を含むコイル基板では顕著となる。
【0049】
さらに、本実施形態のコイル基板構造100では、上述したように、伝送方向Aに小型化されることから、コイル基板構造100の電力伝送長さも縮小されるため、コイル基板構造100の電力損失を低減することも可能となる。
【0050】
また、本実施形態は、上述したように、第1及び第2コイル基板110,120の下面110b,120bの双方に放熱板140を直接当接させている。よって、実装部品9の熱を、第1及び第2コイル基板110,120を介して放熱板140へ熱伝導させて放熱することができ、かかる実装部品9の熱を一層放熱させることが可能となる。
【0051】
ところで、本実施形態では、1次側トランスコイル部41に流れる電流値に比べ、2次側トランスコイル部42に流れる電流値が大きくされているため、1次側トランスコイル部41を有する第1コイル基板110に比べ、2次側トランスコイル部42を有する第2コイル基板120の発熱量が高くなっている。
【0052】
この点、本実施形態では、第2コイル基板120が放熱板140側に位置するように第1及び第2コイル基板110,120を互いに積層し、第2コイル基板120の下面120bの積層領域の一部も放熱板140に当接させている。よって、放熱板140と第2コイル基板120との接触面積を、放熱板140と第1コイル基板110との接触面積に比して大きくでき、第2コイル基板120を一層放熱させてコイル基板構造100の熱を効果的に放熱することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、上述したように、第2コイル基板120の側面120cが段差部143に近接若しくは接触されるため、側面120cからの放熱経路も確保でき、放熱性のさらなる向上が可能となる。ちなみに、本実施形態では、1次側及び2次側トランスコイル部41,42を上下に重ねてトランス4を構成するため、本実施形態は、リーケージインダクタンスが小さい。
【0054】
ちなみに、本実施系形態では、1次側トランスコイル部41の巻数を3とし、2次側トランスコイル部42の巻数を1としているが、これらの巻数は限定されるものではない。また、上層の金属層8だけでなく、内層の金属層8にも導体パターン44,46を設けることで、導体パターン44,46を複数層に形成してもよい。例えば、第1コイル基板110側の内層の金属層8に、巻数が3の導体パターンを形成することにより、第1コイル基板110の巻数を6にすることができる。なお、内層の金属層8においても、トランスコイル部41,42の伝送方向(所定方向)Aの幅を交差方向Bの幅よりも狭くすることで、トランスコイル部41,42の面積を大きくすることなく巻数を増やすことができる。
【0055】
また、本実施形態では、第1コイル基板110において積層領域とは反対側の端部側に位置する端子電極(不図示)から高圧の直流電圧が入力され、第2コイル基板において積層領域と反対側の端部側に位置する端子電極(不図示)から低圧の直流電圧が出力される。よって、ここでは、第1コイル基板110のスイッチング素子S1〜S4が設けられた領域から、1次側及び2次側トランスコイル部41,42を介して、第2コイル基板120の整流ダイオード5A,5Bが設けられた領域に至る方向が伝送方向Aである。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、1次側及び2次側トランスコイル部41,42において略中央位置に貫通孔43,45をそれぞれ形成したが、トランス4の機能を発揮できれば、1次側及び2次側トランスコイル部41,42において種々の位置に貫通孔43,45をそれぞれ形成してもよい。
【0057】
例えば図7に示すように、1次側及び2次側トランスコイル部41,42において伝送方向A上流側に位置する貫通孔43A,45Aを形成してもよい。このコイル基板構造100Aの1次側及び2次側トランスコイル部41,42では、貫通孔43A,45Aの伝送方向A下流側の領域が拡がるため、導電パターン44’’の数が導電パターン44’の数よりも多くなっていても、導体幅h1a’’と導体幅h1a’とを同程度なものにすることが可能となる。よって、導体幅h1a’’が狭いために導電パターン44’’の発熱量が増加してしまうのを抑制できる。
【0058】
また、上記実施形態のトランスコア130では、上部コア131としてU型コアを用い、下部コア132としてI型コアを用いたが、上部コアとしてE型コアを用いてもよく、下部コアとしてI型コア或いはE型コアを用いてもよい。また、上記実施形態では、トランスコイル部41,42における伝送方向Aの幅H1A,H2Aを狭くしたが、かかる幅の方向は伝送方向Aに限定されるものではなく、種々の方向であってもよい。
【0059】
なお、スイッチング電源装置1としては、上記DC−DCコンバータに限定されるものではなく、AC−DCコンバータ等であってもよい。また、上記実施形態では、スイッチング電源装置1の上記回路をセンタータップ型のアノードコモンとしているが、例えばセンタータップ型のカソードコモンとしてもよい。さらにまた、上記実施形態では、段差部143の高さを第2コイル基板120の厚さと等しいものとしたが、第2コイル基板120の厚さよりも厚い(高い)ものでもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、第1及び第2コイル基板110,120として多層基板を用いたが、単層基板を用いてもよい。さらにまた、第1及び第2コイル基板110,120の幅は、互いに異なっていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態において互いに重ねられた(積層された)第1及び第2コイル基板110,120には、これらが互いに接する状態のものや、互いに接しない状態のものを含んでおり、これらがオーバーラップするように配置されたものも含んでいる。
【0062】
また、上記実施形態では、実装部品9としてスイッチング素子S1〜S4や整流ダイオード5A,5B等のパワー半導体素子を、第1及び第2コイル基板110,120の上面110a,120aに表面実装したが、このパワー半導体素子と共に、例えばコイルやコンデンサ等の表面実装型の受動素子を表面実装してもよい。この場合、第1及び第2コイル基板110,120においてパワー半導体素子の搭載されている部分に対応する下面120a,120bが、放熱板140に少なくとも当接すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図2】図1のスイッチング電源装置におけるコイル基板構造の要部を示す斜視図である。
【図3】図2のコイル基板構造の分解斜視図である。
【図4】図2の第1コイル基板を示す上面図である。
【図5】図2の第2コイル基板を示す上面図である。
【図6】(a)は図2のVI−VI線に沿った断面の模式図であり、(b)は従来のコイル基板構造における図6(a)に対応する模式図である。
【図7】本発明の変形例に係るスイッチング電源装置におけるコイル基板構造の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1…スイッチング電源装置、9…実装部品、41…1次側トランスコイル部、42…2次側トランスコイル部、44,46…導体パターン、100,100A…コイル基板構造、110…第1コイル基板、110a…上面(一主面)、110b…下面(他主面)、120…第2コイル基板、120a…上面(一主面)、120b…下面(他主面)、130…トランスコア、140…放熱板(放熱部材)、A…伝送方向(所定方向)、B…交差方向、H1A,H1B,H2A,H2B…幅、h1a,h1b,h2a,h2b…導体幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側トランスコイル部を有する第1コイル基板と、
前記第1コイル基板に重ねられ、2次側トランスコイル部を有する第2コイル基板と、を備えたコイル基板構造であって、
前記1次側及び2次側トランスコイル部は、基板厚さ方向から見たときに渦巻状に延びる導体パターンを含んで構成され、
前記第1及び第2コイル基板は、前記1次側及び2次側トランスコイル部が基板厚さ方向に重なるようにして互いにずれて重ねられており、
前記1次側及び2次側トランスコイル部においては、基板厚さ方向から見たとき、所定方向の幅が該所定方向の交差方向の幅よりも狭いことを特徴とするコイル基板構造。
【請求項2】
前記第1コイル基板側から前記第2コイル基板側へと電力を伝送するコイル基板構造であって、
前記所定方向は、前記電力の伝送方向に沿った方向であることを特徴とする請求項1記載のコイル基板構造。
【請求項3】
前記導体パターンにおいては、前記所定方向の導体幅が前記交差方向の導体幅よりも狭いことを特徴とする請求項1又は2記載のコイル基板構造。
【請求項4】
前記第1及び第2コイル基板において実装部品が搭載される一主面の反対側の他主面に当接された放熱部材を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載のコイル基板構造。
【請求項5】
前記第1及び第2コイル基板は、これらのうちの発熱量が高い一方が前記放熱部材側に位置するように重ねられていることを特徴とする請求項4記載のコイル基板構造。
【請求項6】
前記第1及び第2コイル基板は、長板状を呈すると共に、長手方向に互いにずれて重ねられ、
前記1次側及び2次側トランスコイル部においては、基板厚さ方向から見たとき、前記所定方向としての長手方向の幅が、前記交差方向としての短手方向の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載のコイル基板構造。
【請求項7】
前記1次側及び2次側トランスコイル部を磁気的に接続するためのトランスコアをさらに備え、
前記1次側及び2次側トランスコイル部のそれぞれには、前記トランスコアが挿通される貫通孔が形成されており、
前記導体パターンは、前記貫通孔を中心として渦巻状に延びることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載のコイル基板構造。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項記載のコイル基板構造を具備することを特徴とするスイッチング電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−153724(P2010−153724A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332611(P2008−332611)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】