説明

コネクタケースの半田固定構造

【課題】リフロータイプのクリーム半田の半田盛りによってコネクタケースの板片状の取付脚と基板のパッドとを半田固定する。半田付け強度を高める対策として、手盛り半田を行う工程を省略して、多くのクリーム半田による半田盛りによって取付脚とパッドとを半田固定する。
【解決手段】コネクタケース10の板片状の取付脚12を基板30のパッド31に、クリーム半田の半田盛り40によって半田固定する。取付脚12が挿通された基板の貫通孔32をスルーホール化しておく。パッド31を内側領域Z1とそれよりも面積の広い外側領域Z2とに区画し、内側半田盛り41の盛り量よりも外側半田盛り42の盛り量を多くする。クリーム半田を取付脚12と孔壁面との隙間を埋めて取付脚12の先端にまで回り込ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタケースの半田固定構造、特に、基板の貫通孔に挿入されたコネクタケースの板片状の取付脚が基板のパッドにリフロータイプのクリーム半田を使用して半田付けされているコネクタケースの半田固定構造において、半田付け強度を高めるための対策が講じられたコネクタケースの半田固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
USBジャックやHDMIジャックなどのコネクタは、電磁波遮蔽作用を発揮する金属製のコネクタケースに収納された状態で基板の板面に実装されていることがある。そして、基板の板面に実装されてるコネクタには、その相手方コネクタであるプラグを抜き差しするときなどに、こじりや押し引きに伴う比較的大きな機械的ストレスが加わり、そのストレスがコネクタケースにも伝わる。一方、基板の板面に実装されるコネクタケースは、それ自体に一体に形成されている板片状の取付脚を基板側のパッドに半田付けすることによって半田固定されることがある。この場合に、取付脚とパッドとの半田付け強度が不足していると、上記ストレスの影響を受けてコネクタケースが基板に対してぐらついたり基板から離脱してしまったりするおそれがある。そこで、コネクタケースの板片状の取付脚を基板のパッドに固定するために用いられているクリーム半田による接合強度、すなわち半田付け強度を高めて上記のおそれを解消しておくことが望まれる。
【0003】
一方、リフロータイプのクリーム半田を用いて電気部品を基板に実装する場合に、その半田付け強度を高めるための対策が先行例によって種々開示されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1には、水晶振動子の端子をプリント基板の孔に挿通し、プリント基板の孔から突出している端子の端部にクリーム半田を付着させた後、リフロー炉で加熱することによりクリーム半田を溶融させて端子とプリント基板側のパターンとを接合させ、クリーム半田の放熱冷却後に、端子の端部に手による半田付け(手盛り半田)を行って半田付け部を強化する、という対策が開示されている。また、特許文献2には、コネクタなどのピン付き裏面実装部品のピンをプリント基板のパッドにリフロータイプのクリーム半田を用いて半田付けする場合に、パッドに十分な量のクリーム半田を乗せてリフローすることが記載されている。
【0004】
また、他の先行例では、クリーム半田のリフロー時の拡がりをよくするために、基板のパッドに溝加工を施しておくことが提案されている(たとえば、特許文献3参照)。さらに他の先行例には、端子形状に工夫を講じることによって、半田による端子の接合信頼性を高めるための対策についての記述があり(たとえば、特許文献4参照)、さらに他の先行例には、シールドケースのベースと回路基板の接地用導電部との電気的接続を容易にすることが可能な高周波リレーについの記述がある(たとえば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−312449号公報(0003、図6)
【特許文献2】特開2000−151091号公報(0005、図1)
【特許文献3】特開平9−321419号公報
【特許文献4】特開2006−210517号公報
【特許文献5】特開2006−179503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上掲の特許文献1によって提案されている手法、すなわち、プリント基板の孔に挿通されてその孔から突出している端子プリント基板側のパターンとをリフロータイプのクリーム半田で接合させた後の工程で、手盛り半田を行って半田付け部を強化するという手法を採用すると、手盛り半田を行うための工程が余分に必要になり、それだけ組立工数が増えてコスト高になってしまう。
【0007】
本発明は以上の状況を改善するためになされたものであり、リフロータイプのクリーム半田の半田盛りによってコネクタケースの板片状の取付脚と基板のパッドとが半田固定されているコネクタケースの半田固定構造において、手盛り半田を行う工程を省略することが可能でありながら、基板のパッドに許容されているクリーム半田の塗布可能な最大量よりも多くのクリーム半田による半田盛りによって取付脚とパッドとを半田固定するという構成を採用して、強固な半田付け強度を得ることを可能にしたコネクタケースの半田固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコネクタケースの半田固定構造は、コネクタケースの板片状の取付脚と基板のパッドとの相互間に亘るリフロータイプのクリーム半田の半田盛りによって上記取付脚が上記パッドに半田固定されている。そして、上記基板に形成された貫通孔の孔壁面が半田付着可能な金属薄層の表面によって形成されていると共に、上記コネクタケースが実装された上記基板の板面上で上記貫通孔の開口の周囲に形成された上記パッドに上記金属薄層が連続して形成されている。また、上記パッドは、上記コネクタケースに対する内側領域の面積よりも外側領域の面積が広く形成されていて、上記半田盛りに使われているクリーム半田の盛り量につき、上記取付脚の内面と上記パッドの内側領域とに亘る内側半田盛りの盛り量よりも上記取付脚の外面と上記パッドの外側領域とに亘る外側半田盛りの盛り量が多く、かつ、そのクリーム半田が上記取付脚と孔壁面との隙間を埋めて上記取付脚の先端にまで回り込んでいる。
【0009】
この構成であると、クリーム半田をコネクタケースの外側からの作業でパッドに塗布するときの作業性(又は、印刷するときの作業性)に関して、コネクタケースが塗布作業のじゃまになる可能性のあるパッドの内側領域に対する作業性よりも、コネクタケースが塗布作業のじゃまになる可能性の少ない外側領域に対する作業性の方が優れている。このことを勘案すると、外側領域の面積が内側領域の面積よりも広いために外側領域に内側領域よりも多くのクリーム半田を塗布することができるようになっている上記構成は、パッドに塗布するクリーム半田の全体量を多くして半田付け強度を高める上で極めて有益であると云える。この構成を採用したことにより、クリーム半田をリフローすることによって形成される半田盛りにあっては、内側半田盛りの盛り量よりも外側半田盛りの盛り量が必ず多くなって、それだけ半田付け強度が高まることになる。
【0010】
その上、この発明では、半田盛りに使われているクリーム半田が、取付脚と基板の貫通孔の孔壁面との隙間を埋めて取付脚の先端にまで回り込んでいることにより、取付脚が基板の貫通孔の内部でその貫通孔の孔壁面を形成している金属薄層に接合され、併せて、取付脚の先端もその金属薄層に接合されているので、全体的な半田付け強度が顕著に高められたものになる。
【0011】
本発明では、上記外側半田盛りの盛り量が、上記パッドの外側領域にリフロー前に塗布されるクリーム半田の塗布可能な最大量よりも多いことが望ましい。この構成であると、外側半田盛りを形成しているクリーム半田の盛り量が、パッドに最大量塗布されて形成されるクリーム半田の盛り量よりも多いために、それだけ半田付け強度が高まる。ここで、外側半田盛りの盛り量を、パッドの外側領域にリフロー前に塗布されるクリーム半田の塗布可能な最大量よりも多くするためには、手盛り半田によって外側半田盛りに含まれるクリーム半田の量を補充するという手法を採用することが有効であることは勿論、パッドの外側領域を越える広い領域にクリーム半田をリフロー前に塗布しておくという手法を採用することも可能であり、この手法を採用することによって手盛り半田を行う工程を省略することが可能になる。
【0012】
この発明では、上記取付脚の先端にまで回り込んで当該取付脚の先端に付着している上記クリーム半田が、上記取付脚と孔壁面との隙間を埋めている孔内半田盛りに連続する半田盛りを形成していることが望ましい。この構成であると、取付脚の先端にまで回り込んでいるクリーム半田が、上記した内側半田盛りや外側半田盛り、孔内半田盛りに一体化されて全体的な半田付け強度が顕著に高まる。
【0013】
本発明では、上記取付脚の上記貫通孔からの突出長さが0.5mm以内であることが望ましい。この構成であれば、クリーム半田をリフローしたときに、取付脚の先端にまで回り込んだクリーム半田がその表面張力によって孔内半田盛りに引き寄せられる。このため、取付脚の先端にまで回り込んだクリーム半田が孔内半田盛りからちぎれて取付脚の先端で半田溜まりを形成するという事態が防止される。その結果、取付脚の先端に付着しているクリーム半田の全部を、半田付け強度を高めることに確実に寄与させることが可能になる。
【0014】
本発明では、上記基板の板面上に、上記パッドの形成箇所を取り囲み、かつ、その形成箇所よりも広い面積を備えたクリーム半田の塗布領域を区画形成してあることが望ましい。この構成であれば、パッドの外側領域を越える広い領域にクリーム半田をリフロー前に塗布しておくという手法を採用するときに、基板の板面上に区画形成されたクリーム半田の塗布領域を目安として、その塗布領域内に収まるようにクリーム半田を塗布するだけで、クリーム半田の外側盛り量がいたずらに多くなりすぎるという事態を生じることを未然に防止することが可能になる。
【0015】
本発明において、クリーム半田の上記塗布領域は、上記コネクタケースに対する内側部分の面積よりも外側部分の面積が広く形成されていることが望ましい。この構成であれば、コネクタケースが塗布作業のじゃまになる可能性の少ない外側部分に対するクリーム半田の塗布作業が容易になって、上記塗布領域内に収まるようにクリーム半田を塗布するときの作業性が改善される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、リフロータイプのクリーム半田の半田盛りによってコネクタケースの板片状の取付脚と基板のパッドとが半田固定されているコネクタケースの半田固定構造において、手盛り半田を行う工程を省略することが可能でありながら、基板のパッドに許容されているクリーム半田の塗布可能な最大量よりも多くのクリーム半田による半田盛りによって取付脚とパッドとが半田固定されて強固な半田付け強度が得られる。したがって、基板の板面に実装されているコネクタに、その相手方コネクタであるプラグを抜き差しするときなどに、こじりや押し引きに伴う比較的大きな機械的ストレスが加わったとしても、コネクタケースが基板に対してぐらついたり基板から離脱してしまったりすることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る半田固定構造に採用されているコネクタケースの取付脚と基板のパッドなどとの位置関係を示した説明図である。
【図2】図1の要部の拡大図である。
【図3】取付脚の形状を例示した概略斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る半田固定構造を断面で示した説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る半田固定構造を断面で示した説明図である。
【図6】リフロー前のクリーム半田の塗布状態を断面で表した説明図である。
【図7】比較例としての半田固定構造を断面で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の実施形態に係る半田固定構造に採用されているコネクタケース10の取付脚12と基板30のパッド31などとの位置関係を示した説明図、図2は図1の要部の拡大図、図3は取付脚12の形状を例示した概略斜視図である。さらに、図4は本発明の実施形態に係る半田固定構造を断面で示した説明図、図5は他の実施形態に係る半田固定構造を断面で示した説明図、図6はリフロー前のクリーム半田の塗布状態を断面で表した説明図である。図7は比較例としての半田固定構造を断面で示した説明図である。
【0019】
図1において、コネクタケース10は矩形箱形に形成されていて、USBジャックやHDMIジャックなどのコネクタ(不図示)に付設されてそのコネクタを包囲している。このコネクタケース10は、電磁波を遮蔽するための電磁シールド作用を発揮するように金属製とされている。コネクタケース10には、その左右の2箇所に取付脚12,12が設けられていて、それらの取付脚12,12は、図3に例示したように板片状に形成されていてコネクタケース10から突出している。
【0020】
基板30の2箇所に細長形状の貫通孔32が形成されていて、それらの貫通孔32に、コネクタケース10の2本の取付脚12が各別に挿通されている。また、基板20の片側の板面上には、それぞれの貫通孔32の片側の開口33の周囲を取り囲む半田付け用のパッド31が形成されている。また、基板20の他側の板面上にも、貫通孔32の他側の開口34の周囲を取り囲む半田付け用のパッド35が形成されている(図4〜図6参照)。そして、これらのパッド31,35の形成箇所の周囲に位置している基板30の板面には、リフローされたクリーム半田を付着させない性質が付与されている。この性質は、基板30の板面にマスキング処理を行うことなどによって付与することが可能である。
【0021】
図4及び図6などに示したように、上記貫通孔32は、その孔壁面が半田付着可能な金属薄層36の表面によって形成されていて、その金属薄層36は、コネクタケース10が実装された基板30に形成されている片側及び他側の上記パッド31,35に連続している。このため、貫通孔32の金属薄層36が片側及び他側のパッド31,35を電気的に接続する機能を有している。言い換えると、貫通孔32はスルーホール化されている。
【0022】
図2に拡大して示したように、基板30の板面上に形成されている片側のパッド31は、コーナ部が湾曲するように形作られた平面視矩形に形成されていて、図1に示したコネクタケース10に対する内側領域Z1の面積よりも外側領域Z2の面積が広く形成されている。図例では外側領域Z2の面積が内側領域Z1の面積の2倍よりも広くなっている。
【0023】
そして、基板30の貫通孔32に挿通された上記取付脚12が、図4のように半田盛り40によってパッド31に半田固定されている。この半田盛り40に使われている半田はリフロータイプのクリーム半田である。また、半田盛り40は、取付脚12の内面13とパッド31の内側領域Z1とに亘る内側半田盛り41と、取付脚12の外面14とパッド31の外側領域Z2とに亘る外側半田盛り42と、取付脚12と貫通孔32の孔壁面とを埋めている孔内半田盛り43と、取付脚12の先端と他側のパッド35とに亘る裏側半田盛り44とに分けることができる。ここで、内側半田盛り41又は外側半田盛り42には、板片状の取付脚12の幅方向端面に付着しているクリーム半田が含まれるものとする。
【0024】
そして、図4によって明らかなように、内側半田盛り41の盛り量(内側盛り量)よりも、外側半田盛り42の盛り量(外側盛り量)が多くなっている。言い換えると、内側半田盛り41は、面積の狭いパッド31の内側領域Z1の全面と取付脚12の内面13とに亘って形成されているのに対し、外側半田盛り42は、面積の広いパッド31の外側領域Z2の全面と取付脚12の外面14とに亘って形成されていて、しかも、取付脚12の外面14に付着している外側半田盛り42の高さが、取付脚12の内面13に付着している内側半田盛り41の高さよりも高くなっている。そして、内側半田盛り41と外側肌盛り42に上記した孔内半田盛り43が連続し、さらに、その孔内半田盛り43に上記した裏側半田盛り44が連続している。
【0025】
この実施形態のようにパッド31を面積の狭い内側領域Z1と面積の広い外側領域Z2とに分けて、それら各領域Z1,Z2と取付脚12との間の内側盛り量及び外側盛り量を、パッドの面積が内側領域と外側領域とで2等分されていて、それらの各領域の面積が上記内側領域Z1と同一である場合の内側盛り量及び外側盛り量と対比すると、実施形態の場合が取付脚12やパッド31に対するクリーム半田の付着量が明らかに多いので、半田付け強度は実施形態の場合が明らかに大きくなる。したがって、図4を参照して説明した半田固定構造を採用することによってコネクタケース10が強固に基板30に固定される。そのため、基板30の板面に実装されているコネクタに、その相手方コネクタであるプラグを抜き差しするときなどに、こじりや押し引きに伴う比較的大きな機械的ストレスが加わったとしても、コネクタケース10が基板に対してぐらついたり基板から離脱してしまったりすることがなくなる。
【0026】
図5に示した他の実施形態では、取付脚12の長さを、図4に示した実施形態の場合よりも短くすることによって、基板30の貫通孔32に挿入した取付脚12の先端がその貫通孔32から突き出さないように構成してある。このため、半田盛り40が、取付脚12の内面13とパッド31の内側領域Z1とに亘る内側半田盛り41と、取付脚12の外面14とパッド31の外側領域Z2とに亘る外側半田盛り42と、取付脚12と貫通孔32の孔壁面とを埋めている孔内半田盛り43と、他側のパッド35に付着している裏側半田盛り44とによって形成されている。そして、孔内半田盛り43が取付脚12の先端15を覆っている。この構成によっても、図4を参照して説明したところと同様の作用によって、基板30の板面に実装されているコネクタに、こじりや押し引きに伴う比較的大きな機械的ストレスが加わったとしても、コネクタケース10が基板に対してぐらついたり基板から離脱してしまったりすることがなくなる。
【0027】
次に、図4の半田固定構造を構成する手順を図2及び図6を主に参照して説明する。最初の段階では、図6のように基板30の片側の板面上のパッド31を含む広い範囲にリフロータイプのクリーム半田を塗布する(印刷する)。このときのクリーム半田の塗布作業は次の手順によって行う。すなわち、基板30の板面上に、パッド31の形成箇所を取り囲み、かつ、その形成箇所よりも広い面積を備えたクリーム半田の塗布領域Yを区画形成する。この塗布領域Yは、基板30の表面にあらかじめ線を表示したり、上記したマスキング処理の境界線を目安にしたりして視覚的に認識できるようにしておくことが望ましい。また、この塗布領域Yの面積は、上記したパッド31の全体面積の2倍よりも大きくなっている。
【0028】
塗布領域Yは、コネクタケース10に対する内側部分Y1の面積よりも外側部分Y2の面積が広く形成されている。そして、最初の段階では、図6のように、貫通孔32に取付脚12を挿通させることと、上記塗布領域Yの全体にリフロータイプのクリーム半田50を塗布(印刷)することとを行う。この後、リフロー炉に投入してクリーム半田50を加熱する。この工程を行うと、溶融したクリーム半田50が取付脚12やパッド31に引き寄せられたり、取付脚12と貫通孔32の孔壁面との隙間に毛細管現象により吸い込まれたり、その隙間に吸い込まれたクリーム半田が他側のパッド35に付着して引き寄せられたりして、図4の半田固定構造が形成される。
【0029】
この手順を経て構成された半田固定構造では、図2又は図4を参照して説明したように、片側のパッド31の外側領域Z2の面積が内側領域Z1の面積よりも広いため、内側半田盛り41の盛り量(内側盛り量)よりも、外側半田盛り42の盛り量(外側盛り量)が必ず多くなり、しかも、外側半田盛り42の高さが内側半田盛り41の高さよりも必ず高くなる。また、貫通孔32からの取付脚12の突出長さL1が適切に定められていると、内側半田盛り41と外側肌盛り42に孔内半田盛り43が連続し、その孔内半田盛り43に上記した裏側半田盛り44が連続する。このように内側半田盛り41、外側肌盛り42、孔内半田盛り43及び裏側半田盛り44の全体が連続していると、塗布領域Yに塗布されたリフロー前のクリーム半田の全量が半田固定に使われるために、クリーム半田の量が不足して半田付け強度が低下するという事態が起こらない。
【0030】
この手順を行う場合、図1又は図2に示したように、クリーム半田の塗布領域Yにおいて、コネクタケース10に対する内側部分Y1の面積よりも外側部分Y2の面積が広く形成されていると、コネクタケース10が塗布作業のじゃまになる可能性の少ない外側部分Y2に多くのクリーム半田50を塗布することになるので、クリーム半田の塗布作業が容易になって、塗布領域Y内に収まるようにクリーム半田50を塗布するときの作業性が改善されるという利点もある。
【0031】
上記した貫通孔32からの取付脚12の突出長さL1は0.5mm以内であることが望ましい。突出長さL1が0.5mmよりも長いと、図7に示したように、リフロー炉でクリーム半田50を溶融させたときに、溶融したクリーム半田の一部がその重量の影響によって孔内半田盛り43から分離されて(ちぎれて)、取付脚12の先端15で球状の半田溜まり51を形成する可能性がある。そして、このような球状の半田溜まり51が形成されると、他側のパッド35に健全な半田盛りが形成されにくくなって、取付脚12の全体に対するクリーム半田50の付着量が不足して意図する半田付け強度が得られなくなるおそれがある。
【0032】
上記した手順を実行すると、上記したパッド31の全体面積の2倍よりも大きい面積を有する塗布領域Yに印刷されたクリーム半田によって、取付脚12の内面13とパッド31の内側領域Z1とに亘る内側半田盛り41の盛り量よりも、取付脚12の外面14とパッド31の外側領域Z2とに亘る外側半田盛り42の盛り量が必ず多くなる。これは、塗布領域Yの全体にクリーム半田50を塗布すると、上記外側半田盛り42を形成するのに使われるクリーム半田が、パッド31の外側領域Z2にリフロー前に塗布されるクリーム半田の塗布可能な最大量よりも多くなることによる。
【符号の説明】
【0033】
10 コネクタケース
12 取付脚
15 取付脚の先端
30 基板
31 パッド
32 貫通孔
33 貫通孔の開口
36 金属薄層
40 半田盛り
50 クリーム半田
L1 取付脚の突出長さ
Y クリーム半田の塗布領域
Y1 塗布領域の内側部分
Y2 塗布領域の外側部分
Z1 パッドの内側領域
Z2 パッドの外側領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタケースの板片状の取付脚と基板のパッドとの相互間に亘るリフロータイプのクリーム半田の半田盛りによって上記取付脚が上記パッドに半田固定されているコネクタケースの半田固定構造において、
上記基板に形成された貫通孔の孔壁面が半田付着可能な金属薄層の表面によって形成されていると共に、上記コネクタケースが実装された上記基板の板面上で上記貫通孔の開口の周囲に形成された上記パッドに上記金属薄層が連続して形成され、
上記パッドは、上記コネクタケースに対する内側領域の面積よりも外側領域の面積が広く形成されていて、上記半田盛りに使われているクリーム半田の盛り量につき、上記取付脚の内面と上記パッドの内側領域とに亘る内側半田盛りの盛り量よりも上記取付脚の外面と上記パッドの外側領域とに亘る外側半田盛りの盛り量が多く、かつ、そのクリーム半田が上記取付脚と孔壁面との隙間を埋めて上記取付脚の先端にまで回り込んでいることを特徴とするコネクタケースの半田固定構造。
【請求項2】
上記外側半田盛りの盛り量が、上記パッドの外側領域にリフロー前に塗布されるクリーム半田の塗布可能な最大量よりも多い請求項1に記載したコネクタケースの半田固定構造。
【請求項3】
上記取付脚の先端にまで回り込んで当該取付脚の先端に付着している上記クリーム半田が、上記取付脚と孔壁面との隙間を埋めている孔内半田盛りに連続する半田盛りを形成している請求項1又は請求項2に記載したコネクタケースの半田固定構造。
【請求項4】
上記取付脚の上記貫通孔からの突出長さが0.5mm以内である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載したコネクタケースの半田固定構造。
【請求項5】
上記基板の板面上に、上記パッドの形成箇所を取り囲み、かつ、その形成箇所よりも広い面積を備えたクリーム半田の塗布領域を区画形成してある請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載したコネクタケースの半田固定構造。
【請求項6】
クリーム半田の上記塗布領域は、上記コネクタケースに対する内側部分の面積よりも外側部分の面積が広く形成されている請求項5に記載したコネクタケースの半田固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−79784(P2012−79784A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221234(P2010−221234)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】