説明

コネクタユニット

【課題】
小型化と電気的及び熱的な接続信頼性の向上とをともに実現することができる、コネクタユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】
回転電機に接続可能なコネクタユニットであって、コネクタユニットには、外方に延びる直流電源用端子と、回転電機のハウジングの内部空間側に延びる三相交流電源用端子と、直流−三相交流の変換を行う電力変換部が設けられている。このコネクタユニット内に設けられた電力変換部は半導体チップと配線部材との間に半導体チップの熱膨張率と配線部材の熱膨張率の中間の値である熱膨張係数を有する熱応力緩和導電部材を備えている。また、このコネクタユニット内に設けられた電力変換部は配線部材とヒートシンクとの間に配線部材の熱膨張係数とヒートシンク熱膨張係数の中間の値である熱膨張係数を有する熱応力緩和伝熱部材とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用回転電機と電力を供給するケーブルとを接続するコネクタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の高騰や、地球温暖化防止のためのCO排出量の規制などを背景に、電気自動車やハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)が注目を集めている。まず、HEV駆動に用いられるモータおよび電力変換部について説明する。図20は、従来のHEVの電気系統の例を示すブロック回路図である。同図に示すように、従来のHEVの車体500内には、エンジン501と、エンジン用ラジエータ502と、車両駆動用のモータ503と、モータ503を駆動するための三相交流電源を生成する電源生成部510とが設けられている。電源生成部510には、モータ503の駆動用三相交流電源を供給するインバータ505と、インバータ505に直流電源を供給するバッテリ506と、直流電源の電圧を変換するためのコンバータ507とがまとめられて配置されている。
【0003】
図20に示す電源生成部510において、バッテリ506に蓄えられた電力がコンバータ507で所望の電圧に変換され、インバータ505に直流電源が供給される。インバータ505は、IGBTなどのパワーデバイスを内蔵した電力変換部の一部によって構成され、このインバータ505において直流電源から三相交流電源が生成される。このように、電源生成部510で生成された三相交流電源は、三相交流電源線508を経てコネクタ511によってモータ508に接続され送られる。そして、三相交流電源によってモータ503が回転され、エンジン501を駆動することになる。コンバータ507,インバータ505,バッテリ506は、個別のケースに収納されて、外部配線によって電気的に接続されている。たとえば、特許文献1には、パワー制御ユニットと、モータとが隔離して配置された構造が開示されている。この文献の構造では、バッテリ506が、電源生成部510とは独立して配置されている。
上記のように、モータを搭載する自動車では、電気配線が多く用いられる。電気配線は、通常、組み配線と呼ばれるワイヤーハーネスによってなされるが、原料に用いられる銅の比重が高く、この製造コストが増大する傾向にあり、これを低減することが求められている。
【0004】
他の電力変換部の配置構造例として、装置の小型化を目指してモータと一体化した車両用エアコンの冷凍サイクル装置のインバータ一体型電動コンプレッサが開示されている(特許文献2)。制御回路、インバータ回路を含む電力変換部が、収納箱に収納され、収納箱ごとモータハウジングに外付けされる。樹脂モールドされたパワー半導体デバイスは、絶縁シートを介してモータハウジング外周の台座面に直に固定される。この収納箱内には、エバポレータから排出される低圧冷媒ガスが導入され、電力変換部を含めた収納箱内が冷却される。また、バッテリから直流電源が直流電源線により送付され、コネクタによって電力変換部の端子に接続されている。これによって、小型化が可能な車両用インバータ一体型モータを得ることができる。
【特許文献1】特開2006−74931号公報
【特許文献2】特開2003−324903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、制御部を含めて電機モータと一体化する方式(特許文献2)では、制御部及び電力変換部と一体化された電機モータの全体が所定サイズを超え、車両等への搭載に支障をきたし、空間利用効率がかえって低下する場合を多く生じる。
さらに、電力変換部の大容量化、小型化、処理の高速化などに伴い、半導体デバイスから発生する熱量も大きくなり、放熱経路の各部材の熱膨張係数の相違に起因して、放熱経路内に大きな熱応力が生じる問題が深刻化している。熱応力は、放熱経路内に反りや剥離を生じ、放熱経路を遮断することになる。
このように、電力変換部を電機モータに一体化し小型化が実現できても、熱応力の低減が実現できなければ電力変換部内の電気的及び熱的接続信頼性が低下し、電気容量の小さいシステムでしか利用できないことになる。
従って上述の配線コストを含めて、モータ搭載の自動車の製造コストを抑えつつ、車両等への搭載性と熱応力の低減は重要である。
【0006】
本発明は、製造コストを抑えつつ、小型化と、電気的及び熱的な接続信頼性の向上とを実現することができる、電力変換部を備えたコネクタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタユニットは、直流電源用端子と、三相交流電源用端子と、直流電力と交流電力との電力変換を行うための電力変換部とを備え、回転電機のハウジングに連結可能なコネクタユニットであって、前記電力変換部は、半導体チップと、前記半導体チップに熱応力緩和導電部材を介して接続された配線部材とを備え、前記熱応力緩和導電部材の熱膨張係数は、前記半導体チップの熱膨張係数と前記配線部材の熱膨張係数の中間の値にある熱応力緩和導電部材を設けたものである。
【0008】
電力変換部内に、半導体チップの熱膨張係数と配線部材の熱膨張係数の中間の値にある熱膨張係数を有する熱応力緩和導電部材が介在しているので、半導体チップと配線部材の熱膨張差が小さくなり、この熱膨張差に起因する熱応力が緩和され、反りや剥離を防止することができる。特に、電力変換部がコネクタユニット内に組み込まれるため、モータやエンジンの熱的影響を受けてより高温になりやすいが、このような状況下であっても、熱応力の緩和により、接合部の信頼性の高いコネクタユニットを提供することができる。なお、ここでいう回転電機とはモータ及び発電機の両方を意味する。
【0009】
前記半導体チップを主に構成する材料(構成する材料のうち熱膨張係数に支配的な材料をいう)を第1の材料、前記配線部材を主に構成する材料(構成する材料のうち熱膨張係数に支配的な材料をいう)を第2の材料、とした場合に、前記熱応力緩和導電部材を主に構成する材料は、第1の材料又は第2の材料であることが好ましい。これにより、熱応力緩和導電部材の熱膨張係数を半導体チップの熱膨張係数と配線部材の熱膨張係数の中間の値に近づけることが容易となる。なお、半導体チップ及び配線部材は、主に構成する材料(熱膨張係数に支配的な材料をいう)以外にも、他の材料が含まれていてもよい。また、ここでいう支配的な材料とは、材料そのものの熱膨張係数を決定する上で最も影響度の大きい材料をいう。
【0010】
この場合、前記熱応力緩和導電部材を主に構成する材料の含有量は、前記熱応力緩和導電部材全体の30〜80体積%であることが好ましい。これにより、熱応力緩和導電部材の導電性を損なわない範囲で、熱膨張係数を調整することができる。
【0011】
前記熱応力緩和導電部材は、前記半導体チップに面する側である第1領域と前記配線部材に面する側である第2領域で異なる熱膨張係数を有し、第1領域の熱膨張係数は前記半導体チップの熱膨張係数と第2領域の熱膨張係数の中間の値であることにより、熱膨張による伸縮が緩和されるので、半導体チップと配線部材との間の熱膨張差に起因する熱応力を緩和させることができる。すなわち、熱応力緩和導電部材内で厚み方向に熱膨張係数差を傾斜させることで(段階的、直線的、曲線的、その他いずれであってもよい)、さらに熱応力を緩和できることになる。
【0012】
前記熱応力緩和導電部材を主に構成する材料以外の材料は、Si、Al、SiC、Si、SiO、AlN、W、Mo又はFe32NiCo(インバー合金)からなる群より選ばれた少なくとも1種の材料によって構成されていることが好ましい。導電性を有しつつ、熱膨張係数を半導体チップと配線部材の熱膨張係数の間の値となるように調整することができるからである。これにより、半導体チップと配線部材の熱膨張係数差に起因する熱応力をより緩和することができ、接合信頼性を高めることができる。
【0013】
前記熱応力緩和導電部材は前記第1の材料と前記第2の材料とから構成されていることにより、熱膨張係数をコントロールしやすくなり、半導体チップと配線部材の熱膨張係数差に起因する熱応力をさらに緩和することができ、接合信頼性を高めることができる。
【0014】
前記熱応力緩和導電部材は、前記第1領域と前記第2領域で異なる熱膨張係数を有し、前記第1領域の熱膨張係数は前記半導体チップの熱膨張係数と前記第2領域の熱膨張係数の中間の値であることにより、半導体チップと配線部材との熱膨張係数差に起因する熱応力をさらに緩和することが可能になるので、接合部の信頼性がより高くなる。
【0015】
前記熱応力緩和導電部材は溶射法によって形成されていることにより、複合材料の形成が困難な材料同士であっても、比較的低温の処理によって、容易に複合化された熱応力緩和導電部材が実現する。また、低温で形成されるので、形成される電力変換部の部材間の熱応力が低減される。従って、熱応力の低減による接合信頼性の高い電力変換部を備えたコネクタユニットが得られる。
【0016】
さらにヒートシンクが絶縁樹脂層を介して前記配線部材に接続されていることにより、電力変換部の構造が簡素化され、部品コストが大きく低減された電力変換部を備えたコネクタユニットを提供することができる。また、前記ヒートシンクは前記コネクタユニットのケースの全部又は一部を兼ねていてもよい。
【0017】
また、本発明のコネクタユニットは、直流電源用端子と、三相交流電源用端子と、直流電力と交流電力との電力変換を行うための電力変換部とを備え、回転電機のハウジングに連結可能なコネクタユニットであって、前記電力変換部は、半導体チップと、前記半導体チップに接続された配線部材と、前記配線部材に熱応力緩和伝熱部材を介して接続されたヒートシンクとを備え、前記熱応力緩和伝熱部材の熱膨張係数は、前記配線部材の熱膨張係数と前記ヒートシンクの熱膨張係数の中間の値である熱応力緩和伝熱部材を設けたものである。
【0018】
電力変換部内に、配線部材の熱膨張係数とヒートシンクの熱膨張係数の中間の値にある熱膨張係数を有する熱応力緩和導電部材が介在しているので、配線部材とヒートシンクの熱膨張差が小さくなり、この熱膨張差に起因する熱応力が緩和され、反りや剥離を防止することができる。特に、電力変換部がコネクタユニット内に組み込まれるため、モータやエンジンの熱的影響を受けてより高温になりやすいが、このような状況下であっても、熱応力の緩和により、接合部の信頼性の高いコネクタユニットを提供することができる。
【0019】
前記配線部材を主に構成する材料(構成する材料のうち熱膨張係数に支配的な材料をいう)を第3の材料、前記ヒートシンクを主に構成する材料(構成する材料のうち熱膨張係数に支配的な材料をいう)を第4の材料、とした場合に、前記熱応力緩和伝熱部材を主に構成する材料は、第3の材料又は第4の材料であることが好ましい。これにより、熱応力緩和伝熱部材の熱膨張係数を配線部材の熱膨張係数とヒートシンクの熱膨張係数の中間の値に制御することが容易となる。なお、配線部材及びヒートシンクは、主に構成する材料(熱膨張係数に支配的な材料をいう)以外にも、他の材料が含まれていてもよい。また、ここでいう支配的な材料とは、材料そのものの熱膨張係数を決定する上で最も影響度の大きい材料をいう。
【0020】
前記熱応力緩和伝熱部材内では、前記配線部材に面する側である第1領域と前記ヒートシンクに面する側である第2領域で異なる熱膨張係数を有し、第1領域の熱膨張係数は前記配線部材の熱膨張係数と第2領域の熱膨張係数の中間の値であることにより、熱膨張による伸縮が緩和されるので、配線部材とヒートシンクとの間の熱膨張差に起因する熱応力を緩和させることができる。すなわち、熱応力緩和導電部材内で厚み方向に熱膨張係数差を傾斜させることで(段階的、直線的、曲線的いずれであってもよい)、さらに熱応力を緩和できることになる。
【0021】
前記熱応力緩和伝熱部材は、前記第3の材料と前記第4の材料とから構成されていることにより、熱膨張係数をコントロールしやすくなり、配線部材とヒートシンクの熱膨張係数差に起因する熱応力をさらに低減することができ、接合信頼性を高めることができる。
【0022】
前記熱応力緩和伝熱部材では、前記第1領域と前記第2領域で異なる熱膨張係数を有し、前記第1領域の熱膨張係数は前記配線部材の熱膨張係数と前記第2領域の熱膨張係数の中間の値であることにより、配線部材とヒートシンクとの熱膨張係数差に起因する熱応力をより緩和することが可能になるので、接合部の信頼性がより高くなる。
【0023】
前記配線部材はCu又はCu合金で構成されており、前記ヒートシンクはAl又はAl合金で構成されていることが好ましい。これにより、配線部材とヒートシンクの熱膨張係数差に起因する熱応力をより低減することができ、接合信頼性を高めることができる。
【0024】
前記熱応力緩和伝熱部材は溶射法によって形成されていることにより、複合材料の形成が困難な材料同士であっても、比較的低温の処理によって、容易に複合化された熱応力緩和伝熱部材が実現する。また、低温で形成されるので、形成される電力変換部の部材間の熱応力が低減される。従って、熱応力の低減による接合信頼性の高い電力変換部を備えたコネクタユニットが得られる。
【0025】
さらに前記配線部材と前記熱応力緩和伝熱部材の間にさらに絶縁樹脂層を備えていることにより、電力変換部の構造が簡素化され、部品コストが大きく低減された電力変換部を備えたコネクタユニットを提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電力変換部とコネクタを一体化することで、小型化と電気的及び熱的な接続信頼性の向上とをともに実現することができる、コネクタユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施の形態1)
−電気系統の構成−
図1は、実施の形態1に係るハイブリッド車の車体内部の電気系統の構成を概略的に示すブロック図である。同図においては、主として本発明に関係のある部材が表示されている。同図に示すように、ハイブリッド車の車体9内には、エンジン1と、エンジン用ラジエータ2と、エンジンに併設されたモータ3と、モータ3を駆動するための三相交流電源を生成するインバータを内蔵するコネクタユニット5と、コネクタユニット5内のインバータに直流電源を供給するバッテリ6と、直流電源の電圧を変換するためのコンバータ7とが配置されている。ここで、本実施の形態では、インバータを内蔵したコネクタユニット5が、モータ3のモータハウジングに連結されており、コネクタユニット5と、コンバータ7との間は、直流電源用配線8によって接続されている。
【0028】
本実施の形態では、バッテリ6に蓄えられた電力がコンバータ7で所望の電圧に変換され、コネクタユニット5内のインバータに直流電源が供給される。インバータ内には、後述するように、IGBTなどのパワーデバイスを内蔵した電力変換部が配置されていて、電力変換部で直流電源から三相交流電源が生成される。そして、三相交流電源によってモータ3が回転され、車両を駆動することになる。
【0029】
本実施の形態では、バッテリ6及びコンバータ7は、トランクに配置され、コネクタユニット5は、エンジンルームに配置されているので、1対の直流電源用配線8を介して、コンバータ7からコネクタユニット5内のインバータに直流電源が供給される。従って電力変換部をコネクタユニットと一体化することで長い三相交流電源配線は不要となり、大電力を供給するための太い配線の使用量を低減することができ、部品コストの削減を図ることができる。
【0030】
図2は、バッテリ6からモータ3までの回路構成を示す電気回路図である。同図において、コンバータ、コンデンサ等の部材の図示は省略されている。後述するように、コネクタユニット5には、直流電源用配線8が接続されるソケット28が設けられており、コネクタユニット5内には、ソケット28から延びる直流電源用配線部材23a、23bを介して直流電源が供給される。
【0031】
また、図1においては、図示を省略したが、ハイブリッド車の車体9内には、図2に示すモータ制御ユニット80が配置されており、モータ制御ユニット80から制御信号用配線81が延びている。一方、コネクタユニット5には、制御信号用配線81が接続されるソケット29が設けられており、コネクタユニット5内には、ソケット29から延びる制御信号用配線83を介して制御信号が供給される。
【0032】
図2に示すように、コネクタユニット5内には、並列に配置されたIGBT及びダイオードからなる計6個のスイッチング回路を備えた電力変換部10が配置されている。また、コネクタユニット5内には、コネクタユニット内の各スイッチング回路の動作を制御するためのデバイス駆動回路16が配置されている。デバイス駆動回路16は、ソケット29から延びる制御信号用配線83からの入力信号を受け、制御信号用配線17を介して各スイッチング回路に制御信号を出力する。
【0033】
コネクタユニット内において、各スイッチング回路には、直流電源用配線部材23a、23bを介して直流電源が供給され、デバイス駆動回路16の制御信号に応じてスイッチング回路が駆動されて、3相(U相、V相、W相)の電力信号が生成され、この電力信号は三相交流電源用配線部材23u、23v、23wからモータ3に出力される。
【0034】
モータ3は、三相(U相、V相、W相)の交流によって駆動されるものであり、モータ3のステータには、コイル3aに接続されるバスバー63u、63v、63wが設けられている。各バスバー63u、63v、63wは、それぞれコネクタユニット5の三相交流電源用配線23u、23v、23wに接続されており、バスバー63u、63v、63wに入力される三相交流電源に応じてモータ3内のロータが回転し、これにより、モータ3が駆動される。
【0035】
−コネクタユニット及びモータハウジングの接続構造−
図3は、モータ3の一部を破断して示す斜視図である。図4は、モータの一部及びコネクタユニットの断面図である。ただし、図3においては、ロータの図示が省略されている。図3及び図4に示すように、モータハウジング本体60内には、ステータ61と、ステータ61のコイルに流れる電流に応じて回転駆動されるロータ65とが設けられている。ステータ61は、コイルが巻き付けられた分割コアをリング状に組み立ててなるコア部62と、リング状に組み立てられた分割コアを締結・固定するためのリング部64とを備えている。そして、リング部64と、コア部62の内周部とに沿って、各分割コアに巻かれたコイルにつながる3相のバスバー63、66が配置されている。
各バスバー63、66は、各分割コアに巻回された各コイルに接続されているが、図3及び図4においては、各バスバー63、66と各コイルとの接続構造の図示は省略されている。図4においては、外周側のバスバー63が実際よりも拡大して、かつ、絶縁被覆層を削除して表示されている。
【0036】
モータハウジング本体60には、開口部60aが設けられており、開口部60aを囲む側筒60cの縁部60bに、コネクタユニット5が取付ネジ31によって固定されている。外周側のバスバー63(63u、63v、63w)は、各リング部63u1、63v1、63w1と、各リング部63u1、63v1、63w1から開口部60aに近接するように突出するモータ側端子63u2、63v2、63w2とを有している。
【0037】
一方、コネクタユニット5には、後述するように、モータハウジングの外部に向かって突出する直流電源用端子23a2、23b2と、モータハウジングの内部に向かって突出する三相交流電源用端子23u2、23v2、23w2とが設けられている。そして、本実施の形態において、コネクタユニット5がモータハウジング本体60に装着された状態では、コネクタユニット5の三相交流電源用端子23u2、23v2、23w2と、ステータ61のモータ側端子63u2、63v2、63w2とが、直接接触した状態でボルト等により固定される。
【0038】
−コネクタユニットの構造−
次に、コネクタユニット5の構造について説明する。図5は、コネクタユニット5を主面側から見た斜視図であり、図6は、コネクタユニット5を裏面側から見た斜視図であって、図5を図中縦方向の中心線回りに反転させた状態を表示している。
【0039】
図5に示すように、コネクタユニット5の各部材は、ヒートシンク21の上に搭載されている。そして、最上部にデバイス駆動回路等を搭載したプリント配線板33が設けられていて、プリント配線板33上で、外部端子を除く全部材はエポキシ樹脂等(図示せず)によって樹脂封止されている。プリント配線板33には、第1開口部33a、スリット部33b及び第2開口部33cが設けられている。第1開口部33aには、パワーデバイスであるIGBTが形成されたIGBTチップ11aと、パワーデバイスであるダイオードが形成されたダイオードチップ11bとが配置されている。第2開口部33cには制御信号用配線83が配置されている。また、三相交流電源用端子23u2、23v2、23w2が、スリット部33bを貫通して突出している。
【0040】
一方、図6に示すように、ヒートシンク21の裏面側からみると、ヒートシンク21は、平板部21aと、平板部21aから外方に突出する多数のフィン(図示せず)が形成されたフィン部21bと、各々ソケット28、29によって囲まれた第1、第2開口部21c、21dとを有している。そして、第1開口部21cには直流電源用端子23a2、23b2が配置され、第2開口部21dには、制御信号用配線83の端子部が配置されている。
【0041】
次に、コネクタユニット5のヒートシンク上に積層されている各部材の構造について説明する。図7は、ヒートシンク21上の配線部材以外の各層を透視して示す斜視図である。図8は、ヒートシンク21上の各層を分離して表示する斜視図である。
図7及び図8に示すように、ヒートシンク21とプリント配線板33との間には、下方から順に、絶縁樹脂層26と、配線部材23と、絶縁層35とが積層されている。配線部材23は、直流電源を供給する直流電源用配線部材23a、23bと、三相交流電源を供給する三相交流電源用配線部材23u、23v、23wとを有している。
【0042】
直流電源用配線部材23a、23bは、横方向に延びる平板状の平板部23a1、23b1と、平板部23a1、23b1から折り曲げられて図中下方に延びる直流電源用端子23a2、23b2とを有している。つまり、直流電源用金属配線23a,23bがほぼL字状の断面形状を有している。
また、三相交流電源用配線部材23u、23v、23wは、横方向に延びる平板状の平板部23u1、23v1、23w1 と、平板部23u1、23v1、23w1から折り曲げられて図中上方に延びる三相交流電源用端子23u2、23v2、23w2とを有している。つまり、三相交流電源用金属配線23u,23v,23wがほぼL字状の断面形状を有している。
【0043】
以上の各平板部23a2、23b2、23u1、23v1、23w1により、本発明の配線部材が構成されている。
そして、本実施の形態では、配線部材の第1の部分である平板部23a1、23b1は、直流電源用端子23a2、23b2とそれぞれ共通の金属板(本実施の形態では、Cu板又はCu合金板)によって構成されている。また、配線部材の第2の部分である平板部23u1、23v1、23w1は、三相交流電源用端子23u2、23v2、23w2とそれぞれ共通の金属板(本実施の形態では、Cu板又はCu合金板)によって構成されている。
【0044】
そして、直流電源用端子23a2、23b2は、絶縁樹脂層26の第1開口部26a及びヒートシンク21の平板部21aの第1開口部21cを挿通してソケット28内まで延びている(図6参照)。また、三相交流電源用端子23u2、23v2、23w2は、絶縁層35のスリット部35b及びプリント配線板33のスリット部33bを挿通して、プリント配線板33の上方に突出している(図5参照)。さらに、制御信号用配線83の端部は、下方に折り曲げられて、絶縁樹脂層26の第2開口部26b及びヒートシンク21の平板部21aの第2開口部21dを挿通してソケット29内まで延びている。
本実施の形態では、直流電源用端子23a2,23b2は、ヒートシンク21の平板部21aの第1開口部21cを挿通して主面側から裏面側まで延びているが、ヒートシンク21の第1開口部21cに代えて平板部21aの端面を切り欠いた側溝を形成して、直流電源用端子23a2,23b2が、側溝を挿通して裏面側に達する構造としてもよい。
【0045】
−電力変換部の構造−
図9は、実施の形態1に係るコネクタユニットの、図7に示すIV-IV線における断面図である。図10は、実施の形態1に係るコネクタユニットの主要部を拡大して示す断面図である。
以下、図9及び図10を参照しつつ、電力変換部を備えたコネクタユニットの構造を説明する。
【0046】
電力変換部10は、IGBTチップ11a及びダイオードチップ11bを併せて表示する半導体チップ11と、半導体チップ11内の半導体素子と外部部材とを電気的に接続するための配線部材(23a2、23b2、23u1、23v1、23w1)とを備えている。配線部材のうち図9に示す断面には、直流電源用配線部材23a、23bの各平板部23a1、23a2と、三相交流電源用配線部材23wの平板部23w1とが現れている。また、配線部材の各平板部23a1、23a2、23w1と半導体チップ11とを接合する、Pbフリー半田を含む半田層14と、配線部材の各平板部23a1、23w1上に形成された熱応力緩和導電部材41と、半田層と半導体チップ11で発生した熱を外方に放出するためのヒートシンク21と、配線部材の各平板部23a1、23a2、23w1をヒートシンク21に固着する絶縁樹脂層26と、半導体チップ11とを備えている。図10によれば(図9には図示せず)半導体チップ11の上面及び下面には、それぞれ、IGBT、ダイオードの活性領域に接続される上面電極12及び裏面電極13が設けられており、裏面電極13は、半田層14によって、配線部材に導通状態で接合されている。
【0047】
また、半導体チップ11の上面電極(IGBTチップの上面電極又はダイオードチップの上面電極)と、配線部材の各平板部(図9に示す断面においては、23w2及び23b1)とは、大電流用配線18によって電気的に接続されている。さらに、半導体チップ11において、IGBTチップの上面電極−ダイオードチップの上面電極間も大電流配線18によって電気的に接続されている。
【0048】
ヒートシンク21は、平板部21aと、平板部21aの裏面側から突出するフィン部21bとを有している。そして、平板部21aは、モータハウジング本体60の開口部60aの側筒60cの縁部60bに、取付ネジ31によって取り付けられている。ヒートシンク21の平板部21aは、配線部材や半導体チップ11を支持する支持部材として機能する。そして、ヒートシンク21は、放熱構造体として機能するとともに、モータハウジングの一部としても機能している。つまり、モータハウジング本体60a及びヒートシンク21により、モータハウジングが構成されている。
【0049】
本実施の形態では、ヒートシンク21を自然空冷する構成としているが、フィン部21bを囲む容器50(破線参照)を別途設けて、空気又は液体を強制的に循環させて、強制冷却する構成としてもよい。ただし、フィン部21bは必ずしも必要ではなく、また、フィン部21bに代えて、他の放熱用部材を備えていてもよい。
【0050】
また、ヒートシンク21の第1開口部21aには、ソケット28が設けられており、直流電源用配線部材23aの平板部23a1から曲げられた直流電源用端子23a2がソケット28まで延びている。図9に示す断面には現れていないが、一方の直流電源用配線部材23bの平板部23b1からほぼ直角に曲げられた直流電源用端子23b2も、ソケット28まで延びている(図7、図8参照)。つまり、各直流電源用端子23a2、23b2は、モータハウジング本体60の外部空間まで延びている。
【0051】
また、図9に示す断面以外の断面において、三相交流電源用配線部材23wの平板部23w1からほぼ直角に曲げられた三相交流電源用端子23w2は、モータハウジング本体60の内部空間に延びている。そして、三相交流電源用端子23w2は、取付部材37により、モータ側端子63w2に直接接触した状態で固定されている。図9には表示されていないが、他の三相交流電源用配線部材23u、23vの平板部23u1、23v1からほぼ直角に曲げられた三相交流電源用端子23u2、23v2も同様の構成となっている。なお、三相交流電源用端子23u2、23v2、23w2やモータ側端子63u2、63v2、63w2は、取付部材37と共に絶縁樹脂によって被覆されていてもよい。
【0052】
また、配線部材の上方には、絶縁層35を介してプリント配線板33が積層されており、プリント配線板33の上にデバイス駆動回路16が配設されている。そして、プリント配線板33の上に延びる信号用配線(図示せず)と、半導体チップ11の制御電極(図示せず)との間は、制御信号を供給するための信号用配線17によって電気的に接続されている。
【0053】
なお、図9には図示されていないが、ヒートシンク21の上面側で半導体チップ11、制御信号用配線17、大電流用配線18、プリント配線板33、絶縁層35、配線部材、半田層14、絶縁樹脂層26などの部材は、それらの端子を除いて、エポキシ樹脂などの樹脂によって封止されている。
【0054】
本実施の形態では、ヒートシンク21の材料として、焼結アルミニウム(焼結Al)が用いられている。ただし、これに限定されるものではない。たとえば、Al、Al合金、Cu、Cu合金などの他の金属、AlN、SiN、BN、SiC、WCなどのセラミックス、或いは、Al−SiC、Cu−W、Cu−Moなどの複合材料を用いてもよい。
【0055】
本実施の形態では、配線部材23(23a、23b、23u、23v、23w)の材料として、Cu又はCu合金を用いているが、これに限定されるものではない。たとえば、Al、Al合金や、Al−SiC、Cu−W、Cu−Moなどの複合材料を用いてもよい。
【0056】
本実施の形態では、配線部材(各平板部23a1、23b1、23u1、23v1、23w1)と、外部機器への端子(直流電源用端子23a2、23b2及び三相交流電源用端子23u2、23v2、23w2)とを1枚の金属板(本実施の形態では、Cu板又はCu合金板)によって構成しているが、配線部材と端子とを個別に設けて、両者間をAlワイヤー等によって接続してもよい。
【0057】
上述のように、本実施の形態の電力変換部10においては、Pbフリー半田からなる半田層14と、絶縁樹脂層26とを備えている。一般に、Pbフリー半田には、以下のものがある。たとえば、Sn(液相点232℃)、Sn−3.5%Ag(液相点221℃)、Sn−3.0%Ag(液相点222℃)、Sn−3.5%Ag−0.55%Cu(液相点220℃)、Sn−3.0%Ag−0.5%Cu(液相点220℃)、Sn−1.5%Ag−0.85%Cu−2.0Bi(液相点223℃)、Sn−2.5%Ag−0.5%Cu−1.0Bi(液相点219℃)、Sn−5.8Bi(液相点138℃)、Sn−0.55%Cu(液相点226℃)、Sn−0.55%Cu−その他(液相点226℃)、Sn−0.55%Cu−0.3%Ag(液相点226℃)、Sn−5.0%Cu(液相点358℃)、Sn−3.0%Cu−0.3%Ag(液相点312℃)、Sn−3.5%Ag−0.5%Bi−3.0In(液相点216℃)、Sn−3.5%Ag−0.5%Bi−4.0In(液相点211℃)、Sn−3.5%Ag−0.5%Bi−8.0In(液相点208℃)、Sn−8.0%Zn−3.0%Bi(液相点197℃)等がある。本実施の形態では、液相点が250℃以下の低融点のPbフリー半田、たとえば、Sn−3.0%Ag−0.5%Cu(液相点220℃)を用いているが、これに限定されるものではない。ただし、Sn−5.0%Cu(液相点358℃)、Sn−3.0%Cu−0.3%Ag(液相点312℃)等の高融点のPbフリー半田(液相点が250℃を超えるもの)は除くものとする。
【0058】
絶縁樹脂層26には、本実施の形態では、金属やセラミクスの充填剤を含むエポキシ樹脂が用いられている。エポキシ樹脂の使用可能温度は、種類によって異なるが、250℃を超えるものを選択することは容易であり、本実施の形態では、Pbフリー半田の液相点よりも高いものを用いている。従って、電力変換部の組み立て工程において、絶縁樹脂層26を形成した後で、Pbフリー半田のリフロー工程を行うことが可能になる。たとえば、エポキシ樹脂に、アルミナ、シリカ、アルミニウム、窒化アルミニウムなどを充填したものを用いることができ、熱伝導率が3.0(W/m・K)以上であることが好ましく、5.0(W/m・K)以上であることがより好ましい。
【0059】
絶縁樹脂層26の厚みは、0.4mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましい。絶縁樹脂層26の熱抵抗は、熱伝導率と厚みに依存して定まるが、厚みが薄いほど熱抵抗が小さくなる。従って、厚みが0.4mm以下であることにより、放熱性能が高くなることになる。
【0060】
また、電力変換部10に、パワーデバイスの動作を制御するための制御回路であるデバイス駆動回路16を搭載したプリント配線板33を組み込んでいるので、車内部の部材のコンパクト化を図ることができる。
【0061】
また、配線部材のうち直流電源用配線23a、23bの平板部23a1、23b1と、直流電源用端子23a2、23b2とが共通の金属板で構成されていることにより、部品コストの削減とコネクタユニット5のサイズ縮小とを図ることができる。
【0062】
また、配線部材のうち三相交流電源用配線部材23u、23v、23wの平板部23u1、23v1、23w1と、三相交流電源用端子23u2、23v2、23w2とが共通の金属板で構成されていることによっても、部品コストの削減とコネクタユニット5のサイズ縮小とを図ることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、従来用いられていた2つの半田層に代えて、1つの半田層14と、樹脂接着剤からなる絶縁樹脂層26とを用いているので、工程の先後に応じて低融点のPbフリー半田と高融点のPbフリー半田とを用いる必要はなく、低融点のPbフリー半田だけで済むことになる。現在、Pbフリー半田として、比較的Cu組成比の高いPbフリー半田(たとえば液相点が300℃以上のSn−5.0%Cu、Sn−3.0%Cu−0.3%Ag)も開発されているが、確実な接続信頼性を有する高融点のPbフリー半田を得ることは困難である。一方、低融点のPbフリー半田としては、たとえば液相点が220℃のSn−3.0%Ag−0.5%Cu(JEITA推奨合金)などの接続信頼性の高いものが得られている。また、樹脂接着剤としては、使用可能温度が250℃を超えるエポキシ樹脂など、低融点のPbフリー半田の液相点よりも高温に耐えうるものは容易に得られる。従って、本実施の形態により、半田層14をPbフリー化して、接続信頼性を確保しつつ、Pbフリー化を図ることができるのである。
【0064】
ここで熱応力緩和導電部材について、図10を用いて説明する。配線部材23aは、第1の材料であるCuによって構成されており、熱応力緩和導電部材41の下地となる配線部材である。そして、熱応力緩和導電部材41は、上記第1の材料(Cu)と、第1の材料よりも熱膨張係数の小さい第2の材料(Si、Al、SiC、Si、SiO、AlN、W、Mo、Fe32NiCo(インバー合金)など)を含んでおり、コールドスプレー法を用いて形成されている。後述するように、コールドスプレー法を用いて形成された熱応力緩和導電部材28aは、比較的低温(数百℃)で形成される。また、コールドスプレー法を用いて形成された膜は、緻密であることが確認されている。そして、コールドスプレー法では、膜の堆積能率が大きく、製造コストも安価である。半導体チップ11の厚みは、0.3mm〜0.5mmであり、熱応力緩和導電部材の厚みは、約0.5mmであり、半田層14の厚みは約0.1mmであり、配線部材23a1の厚みは、約0.4mmであり、絶縁樹脂層26の厚みは約0.2mmであり、ヒートシンク21の平板部21aの厚みは約5mmであり、フィン部21bの縦方向の長さは約15mmであり、フィン部21bのピッチは約1.5mmであり、フィン部21bの横方向の厚みは約1.5mmである。
【0065】
図11は、コールドスプレー法の概略を説明する断面図である。コールドスプレー装置100Aは、2つの原料供給管108A、108Bから投入される2種類の材料(粒子)を混合するミキサー(ホッパー)107と、圧縮空気を加熱するヒータ102と、粒子を吹き付けるためのガン103と、圧縮空気を供給する配管104、105とを備えている。そして、ガン103から約5〜30mm程度離れた位置に、基板が設置されている。なお、圧縮空気に代えて、ヘリウム、窒素などの圧縮ガスを用いてもよい。
【0066】
ミキサー107に、2つの原料供給管108A、108Bから、それぞれ第1の材料(Cu)と第2の材料(Si、Al、SiC、Si、SiO、AlN、W、Mo及びFe32NiCo(インバー合金)など)の各粒子群(粒径10〜40μm)が投入されると、ミキサー107内で混合された後、配管104から送り込まれる圧縮空気によってガン103に送られる。一方、配管105から送り込まれた圧縮空気はヒータ102で300〜500℃に熱されて、ガン103に送られる。そして、ガン103で加熱圧縮空気と各粒子群とが混ざり合った状態で、超音速流で噴射される。各粒子は、500m/s以上の高速で、基板に衝突し、粒子の運動エネルギーによって粒子が塑性変形し、からみ合った状態で結合されて、熱応力緩和導電部材41が形成される。ガン103は、基板に沿って、繰り返しスイープされる。各粒子の径は、0.1μm〜50μm、好ましくは10μm〜50μmである。
熱応力緩和導電部材41を堆積するための基板としては、配線部材23aとなるCu板を用い、その後、熱応力緩和導電部材41をCu板と共にパターニングした後、絶縁樹脂層26となる接着剤により、ヒートシンク21に貼り付けて、熱応力緩和導電部材41及び配線部材23aを形成する。なお、図9に示す構造においては、熱応力緩和導電部材41のうち、半田層を形成する必要のない領域は選択的エッチングなどによって削除されているが、この領域の熱応力緩和導電部材41をそのまま残しておいてもよい。また、メタルマスクを用いて熱応力緩和導電部材41をCu板上に形成し、エッチング工程を省略してもよい。
【0067】
なお、ヒートシンク21上に絶縁樹脂層26を介して配線部材23aを予め形成しておいて、配線部材23aの上に、直接溶射によって熱応力緩和導電部材41を形成してもよい。
また、ヒートシンク21上に絶縁樹脂層26を介して配線部材23aを予め形成しておく一方、適当な基板上に溶射法によって熱応力緩和導電部材41を形成し、その後、基板から熱応力緩和導電部材41を剥がして、配線部材23aに半田、ろう材を用いた接合を行なってもよい。
【0068】
本実施の形態によると、熱応力緩和導電部材41の熱膨張係数は、半導体チップ11と配線部材23aとの熱膨張係数の間にある値となる。従って、半導体チップ11と配線部材23との熱膨張係数差に起因する熱応力によって半田層14のクラックの発生を抑制することができる。そして、部材間(配線部材23a−熱応力緩和導電部材41間、及び、熱応力緩和導電部材41−半導体チップ11間)の接合部の信頼性を高く維持することができる。
【0069】
特に、熱応力緩和導電部材41の形成工程で、コールドスプレー法を採用することにより、比較的低温で熱応力緩和導電部材を形成することができる。コールドスプレー法では、ヒータ102で300〜400℃に加熱された圧縮空気を用いるものの、空気の膨張によって急激に冷却されるので、ヒートシンク21に衝突する際には、室温〜100℃の低温になっているからである。従って、加工後に配線部材23aと熱応力緩和導電部材41との熱膨張係数差に起因する反りを小さく抑制することができる。そして、コールドスプレー法などの溶射法を用いて形成された膜は、緻密であることが確認されており、特に、コールドスプレー法では、膜の堆積能率が高く、製造コストも安価である。
また、複数の材料を複合化する場合、比重の差、融点の差、などが障害となって、不可能であったり、複合化できる範囲が限られる場合がほとんどである。それに対し、本実施の形態のごとく、溶射法を利用することにより、第1の材料及び第2の材料を含む熱応力緩和導電部材28を、ほぼ任意の組成範囲で容易に形成することができる。
【0070】
また、本実施の形態では、図11に示すコールドスプレーを行う際に、初回のスイープの際には、原料供給管108Bからの第2の材料の供給は少なく、熱応力緩和導電部材41の下端部における第2の材料の組成率は20体積%程度である。そして、2回目、3回目、…と、スイープ回数が進むにつれて、原料供給管108Bから供給される第2の材料の割合が増加し、最終のスイープ時には、原料供給管108Aからの第2の材料の供給量が増えて、熱応力緩和導電部材41の上端部における第2の材料の組成率を70体積%程度にしている。
【0071】
このような溶射方法により、半導体チップ11に近いほど第1の材料の組成率が大きく、配線部材23aに近いほど第2の材料の組成率が大きい熱応力緩和導電部材41の組成分布が実現する。このように、熱応力緩和導電部材41が、半導体チップ11に近いほど第1の材料の組成率が大きく、配線部材23aに近いほど第2の材料の組成率が大きい組成分布を有していることにより、熱応力緩和導電部材41と半導体チップ11との熱膨張係数差と、熱応力緩和導電部材41と配線部材23aとの界面における熱膨張係数差とを共に小さくできるので、より効果的に半田層14に加わる熱応力を低減することができ、半田層14のクラックの発生を確実に抑制することができる。また、配線部材23aから半導体チップ11に至る部材間の接合の信頼性を高めることができる。
【0072】
本実施の形態では、熱応力緩和導電部材41における第1の材料の平均組成率は、30〜80体積%である。30%体積以下の場合、Cu粉末同士のネットワークが弱くなり、結合力が低下し、熱応力緩和導電部材41の強度が確保できなくなるおそれがある。電気的な導通を確保するためには、第1の材料の局部的な最大組成率が30堆積%以上であることが好ましい。なお、初回のスイープの際には、原料供給管108Bからの第2の材料の供給をせずに、熱応力緩和導電部材41の下端部における第2の材料の組成率が0%であってもよい。ただし、熱応力緩和導電部材41全体における第2の材料の平均組成率を30〜80%の範囲に収めるようにすることが好ましい。
【0073】
なお、熱応力緩和導電部材41における組成分布が、必ずしも本実施の形態のようになっている必要はない。たとえば、Cuと第2の材料との組成比が1:1の均一組成であっても、第2の材料の熱膨張係数がCuの熱膨張係数(17ppm/K)よりも小さければ、Cuの熱膨張係数と、Si、SiC等の半導体チップ11を構成する各材料の熱膨張係数(3〜6ppm/K)の間の値になって、半田層14に加わる熱膨張係数差に起因する熱応力を緩和することができる。
【0074】
第1の材料がCu又はCu合金で、第2の材料がSi、Al、SiC、Si、SiO、AlN、W、Mo、Fe32NiCo(インバー合金)などであることにより、以下のような顕著な効果を発揮することができる。
【0075】
図15は、Cuに第2の材料(Al、SiC、SiO、AlN、W、Mo、Fe32NiCo(インバー合金))を添加したときの、添加量(Vol%)に対する熱膨張係数の変化を示すグラフである。図15に示すように、第2の材料の添加量が増すほど、熱応力緩和導電部材41の熱膨張係数は小さくなる。そして、第2の材料の添加量が20%以上である場合には、熱応力緩和導電部材41の熱膨張係数は、15ppm/K以下である。
【0076】
図16は、Cuに第2の材料(Al、SiC、SiO、AlN、W、Mo、Fe32NiCo(インバー合金))を添加したときの、添加量(Vol%)に対する熱伝導率の変化を示すグラフである。図16に示すように、第2の材料の添加量が増すほど、熱伝導率は小さくなるが、第2の材料の添加量が70%以下であれば、熱伝導率は100W/m・K以上と、十分大きな値が得られる。
なお、図17は、第1及び第2の材料の各種特性を表にして示す図である。
【0077】
特に、熱応力緩和導電部材41の熱膨張係数が、10ppm/K以下であることにより、半導体チップ11との熱膨張係数差をより小さくできる点で、好ましい。
【0078】
一方、配線部材23aをCu、Cu合金、Al又はAl合金によって構成することにより、電気抵抗及び熱伝導率を特に小さくできるので、配線部材としての導電機能と放熱機能とが特に高くなる。従って、本実施の形態により、電力変換部10の総合的な性能を特に高めつつ、熱応力の低減により、部材間の接合の信頼性を高く維持することができる。ただし、本発明の配線部材23aの構成材料は、必ずしもCu、Cu合金、Al又はAl合金に限定されるものではない。
【0079】
また、熱応力緩和導電部材41は、半導体チップ11の直下方に位置する領域を含んでいればよく、配線部材23a上に広く形成されている必要はない。
【0080】
さらに配線部材23aを形成する別の溶射法として、HVAF(High Velocity Aero Fuel)法を用いることができる。図12は、HVAF法の概略を説明する断面図である。HVAF装置100Bは、2つの原料供給管108A、108Bから投入される2種類の材料(粒子)を混合するミキサー(ホッパー)107と、圧縮空気及び可燃性ガスを加熱するヒータ102と、粒子を吹き付けるためのガン103と、圧縮空気を供給する配管104、105と、可燃性ガス(プロパンガスなど)を供給するガス管106とを備えている。そして、ガン103から約5〜30mm程度離れた位置に、基板が設置されている。
【0081】
ミキサー107に、2つの原料供給管108A、108Bから、それぞれ第1の材料(Cu)と第2の材料(Al、SiC、SiO、AlN、W、Mo、Fe32NiCo(インバー合金))の各粒子群(粒径10〜40μm)が投入されると、ミキサー107内で混合された後、配管104から送り込まれる圧縮空気によってガン103に送られる。一方、配管105、ガス管106から送り込まれた圧縮空気及び可燃性ガスは、点火プラグ109で燃焼が促進され、ガン103に送られる。そして、ガン103で燃焼ガス、圧縮空気及び各粒子群が混ざり合った状態で、フレームとともに、超音速流で噴射される。各粒子は、コールドスプレー法とほぼ同じ温度(300〜500℃)かつ、より高速(600〜800m/s)で、基板に衝突し、粒子の運動エネルギーによって粒子が塑性変形して、からみ合った状態で結合されて、熱応力緩和導電部材41が形成される。粒子の粒径は、10〜40μmである。
【0082】
また、HVOF(High Velocity Oxigen Fuel)法を用いた場合は、供給管104、105から酸素が供給される点を除いては、図4に示す通りの装置を用いる。その場合、フレーム速度で2000m/s以上、粒子速度で750m/sが達成される。
【0083】
図13は、AD(Aerosol Deposition)法の概略を説明する断面図である。真空ポンプが付設された成膜室111内に、ワークホルダー112と、基板113と、メタルマスク115と、ノズル116とが配置されている。また、エアロゾル化室118には、原料供給管119Aから第1の材料(Cu)の粒子群が供給され、原料供給管119Bから第2の材料(Al、SiC、SiO、AlN、W、Mo、Fe32NiCo(インバー合金))の粒子群が供給され、エアロゾル化室118内で各粒子が混合される。各粒子は、空気、He、Ar、窒素などの圧縮ガスボンベから供給されるガス流に乗って、連絡配管117からノズル116に運ばれ、高速で噴射される。そして、基板113上に、第1の材料と第2の材料とを含む熱応力緩和導電部材41が堆積される。成膜が終了すると、熱応力緩和導電部材41を基板113から剥がして、配線部材23aに接合させることにより、図10に示す構造が形成される。
【0084】
この方法では、コールドスプレー法と同様に、室温程度の低温で成膜が行われる。粒子の速度は200〜400m/s、粒子の粒径は0.03μm〜0.1μmであり、より緻密な粒子を用いることができる。
【0085】
形成される複合材料膜の厚みを比較すると、コールドスプレー法、HVAF法、HVOF法では、数十μm〜数mmであるが、AD法では、数μm〜数十μmである。本発明の電力変換部においては、応力緩和できる数十μm程度かそれ以上の厚みを有することが重要であり、コールドスプレー法、HVAF法、又はHVOF法を用いることが好ましい。
【0086】
(変形例)
図14は、上記実施の形態1の製造方法の変形例を説明する図である。上記実施の形態1では、第1の材料の粒子群と、第2の材料の粒子群とを混合してから、1つのノズルから各粒子を噴射したが、本変形例では、個別に各材料の粒子群を噴射する。すなわち、図14に示すように、ノズルAから第1の材料(Cu)の粒子群を噴射し、ノズルBから第2の材料(Si、Al、SiC、Si、SiO、AlN、W、Mo、Fe32NiCo(インバー合金)など)の粒子群を噴射して、基板上に、第1の材料及び第2の材料を含む熱応力緩和導電部材41を堆積していく。ノズルA、Bは、コールドスプレー法、HVAF法、HVOF法又はAD法で使用されるノズルである。
【0087】
本実施の形態によると、直流電源用端子23a2、23b2と三相交流用電源端子23u2、23v2、23w2との間に、直流電力を三相交流電力に変換するためのインバータとして機能する電力変換部10を一体化したコネクタユニット5を設け、コネクタユニット5の一部(本実施の形態では、放熱構造体であるヒートシンク21)をモータハウジング本体60に連結可能な構成としている。そのため、従来のインバータとコネクタが離れているものに比べて、直流電源を生成するバッテリ6、コンバータ7と、電力変換部10との間は、三相交流電源用配線に代えて直流電源用配線を介設すれば済み、大電力用の配線の使用量の低減により部品コストの削減を図ることができる。
また、コネクタと一体化された電力変換部において、半導体チップと配線部材の間に、熱応力が緩和される熱応力緩和導電部材を溶射法により作製し設けることで、コネクタがモータに連結された実使用環境下でも電気的及び熱的な接続信頼性が高いコネクタユニットを比較的安価に提供することができる。
【0088】
(実施の形態2)
図18は、実施の形態2に係る電力変換部の、図7に示すIV−IV線相当の断面における断面図である。図19は、実施の形態1に係る電力変換部の主要部を拡大して示す断面図である。同図において、実施の形態1と同じ構成を有する部材については、実施の形態1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0089】
本実施の形態では、ヒートシンク21上に形成された熱応力緩和伝熱部材42が形成され、その上に絶縁樹脂層26を介して配線部材23a1、23b1、23w1が設置されている。
【0090】
ここで熱応力緩和伝熱部材について、図19を用いて説明する。本実施の形態では、熱応力緩和伝熱部材42は、上記第1の材料(Cu又はCu合金)と、第2の材料(Al又はAl合金)とを含んでおり、前述したコールドスプレー法を用いて形成されている。
【0091】
そして、本実施の形態では、熱応力緩和伝熱部材42は、下端部では第1の材料(Cu又はCu合金A)の組成率がほぼ100%であり、下端部から上端部に向かって、徐々に第2の材料(l又はAl合金)の組成率が大きくなって、上端部では、第2の材料の組成率ほぼ100%である。
【0092】
熱応力緩和伝熱部材42における組成分布が、必ずしも本実施の形態のようになっている必要はない。たとえば、Cu、Alの組成比が1:1の均一組成であっても、熱膨張係数がCuの熱膨張係数(17ppm/K)とAlの膨張率(23ppm/K)との中間の値になるので、配線部材23a1とヒートシンク21との熱膨張係数差に起因する熱応力を緩和することができる。
【0093】
すなわち、本実施の形態では、第1の材料(Cu又はCu合金)及び第2の材料(Al又はAl合金)を含む熱応力緩和伝熱部材28の熱膨張係数は、第1の材料からなる配線部材23a1と、第2の材料からなるヒートシンク21との熱膨張係数の中間的な値になる。従って、配線部材23a1とヒートシンク21との熱膨張係数差に起因する熱応力を緩和することができ、部材間(ヒートシンク21−溶射熱応力緩和伝熱部材28間、及び、熱応力緩和伝熱部材42−絶縁樹脂層26−配線部材23間)の接合部の信頼性を高く維持することができる。
【0094】
ただし、熱応力緩和伝熱部材42は、必ずしも2つの材料によって形成されている必要はなく、複数の材料の溶射によって形成されていればよい。複数の材料を含めることにより、熱膨張係数の調整が容易となる。
また、熱応力緩和伝熱部材42は、必ずしも、ヒートシンク21の主成分や、配線部材23a1の主成分を含んでいる必要はなく、複数の材料を混合することによって、平均的な熱膨張係数がヒートシンク21と配線部材23a1との各熱膨張係数の間の値であればよい。これにより、熱膨張係数差に起因する熱応力を低減することができるからである。
【0095】
第1の材料は、配線部材23a1の主成分(本実施の形態ではCu)、及び、ヒートシンク21の主成分(本実施の形態ではAl)から選ばれた1の材料であることが好ましい。その場合には、比較的容易に熱膨張係数を焼成することが容易となる。たとえば、第1の材料がCu(配線部材23a1の主成分)である場合、Cuの粒子群と、熱膨張係数がCuよりも大きい他の材料の粒子群とを溶射することで、熱応力緩和伝熱部材42の熱膨張係数をヒートシンク21と配線部材23a1との中間の値に調整することが容易である。また、第1の材料がAl(ヒートシンク21の主成分)である場合には、Alの粒子群と、SiO、Alなど、Alよりも熱膨張係数が小さい材料の粒子群とを溶射することで、熱応力緩和伝熱部材42の熱膨張係数をヒートシンク21と配線部材23a1との中間の値に調整することが容易である。
【0096】
そして、第1の材料がCu(配線部材23a1の主成分)である場合には、配線部材23a1に近いほど熱応力緩和伝熱部材42のCuの組成率を大きくすることで、熱応力緩和伝熱部材42−配線部材23a1間の熱膨張係数差を小さくでき、熱応力を低減させることができる。また、第1の材料がAl(ヒートシンク21の主成分)である場合には、ヒートシンク21に近いほど熱応力緩和伝熱部材42のAlの組成率を大きくすることにより、熱応力緩和伝熱部材42−ヒートシンク21間の熱膨張係数差を小さくでき、熱応力を低減させることができる。
【0097】
特に、熱応力緩和伝熱部材42が、配線部材23a1に近いほど第1の材料の組成率が大きく、ヒートシンク21であるに近いほど第2の材料の組成率が大きい組成分布を有していることにより、配線部材23a1とヒートシンク21との熱膨張係数差をほとんど吸収できるので、接合部の信頼性がとくに向上する。
【0098】
第1の材料がCu又はCu合金で、第2の材料がAl又はAl合金の組み合わせに本発明を適用することにより、以下のような顕著な効果を発揮することができる。
【0099】
一般の融解金属を混合して合金化する場合、AlのCuへの最大固溶度は10%前後であり(アルミニウム青銅)、それ以上Alを添加しても、実用合金を得ることは困難であるが、溶射法を利用することにより、溶射熱応力緩和伝熱部材28を、ほぼ任意の組成範囲で容易に形成することができる。
そして、ヒートシンク21がAl又はAl合金によって構成されていることにより、ダイカスト成形や押し出し成形によって微細ピッチのフィンを容易に形成しうるので、ヒートシンクの放熱機能が特に高くなる。一方、配線部材23a1をCu又はCu合金によって構成することにより、電気抵抗を特に小さくできるので、配線部材としての導電機能が特に高くなる。従って、本実施の形態により、ヒートシンク21と配線部材23a1との総合的な機能を特に高めつつ、熱応力の低減により、部材間の接合の信頼性を高く維持することができる。
ただし、本発明の熱応力緩和伝熱部材は、必ずしもAl又はAl合金と、Cu又はCu合金との複合材料によって構成されている必要はない。
【0100】
また、熱応力緩和伝熱部材42は上述した通り、HVAF法、HVOF法、AD法によっても同様に形成でき、熱応力の低減により、部材間の接合の信頼性の高い電力変換部が一体化されたコネクタユニットを提供することができる。
【0101】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、コネクタユニットの一部をモータハウジングに連結させた構造について開示したが、本発明は、モータだけでなく、コネクタユニットの一部を発電機のハウジングに連結させた構造にも適用することができる。つまり、回転電機や回転電機のハウジングにも適用することができる。
【0102】
本発明の電力変換部に配置される半導体素子は、ワイドバンドギャップ半導体(SiC、GaNなど)を用いたパワーデバイスでもよいし、Siを用いたパワーデバイスでもよい。
【0103】
上記実施の形態では、電力変換部がIGBT及びダイオードを組み合わせたインバータであったが、本発明の電力変換部は、MOSFET用いたインバータであってもよい。
【0104】
上記実施の形態では、放熱構造体はヒートシンク21だけによって構成されていたが、放熱構造体は、ヒートシンクと他の部材とを有するものであってもよい。そして、ヒートシンク以外の他の部材、あるいは、放熱構造体以外の他の部材が回転電機のハウジングに連結されていてもよい。
【0105】
上記開示された本発明の実施の形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のコネクタユニット、回転電機のハウジング、及び回転電機は、ハイブリッド車、電気自動車、冷凍装置のコンプレッサなどのモータや、発電機に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】実施の形態1に係るハイブリッド車の車体内部の電気系統の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】実施の形態1におけるバッテリからモータまでの回路構成を示す電気回路図である。
【図3】モータの一部を破断して示す斜視図である。
【図4】モータの一部及びコネクタユニットの断面図である。
【図5】コネクタユニットを主面側から見た斜視図である。
【図6】コネクタユニットを裏面側から見た斜視図である。
【図7】ヒートシンク上の配線部材以外の各層を透視して示す斜視図である。
【図8】ヒートシンク上の各層を分離して表示する斜視図である。
【図9】実施の形態1に係るコネクタユニットの、図7に示すIV−IV線における断面図である。
【図10】実施の形態1に係るコネクタユニットの主要部の拡大断面図である。
【図11】コールドスプレー法の概略を説明する図である。
【図12】HVAF法(HVOF法)の概略を説明する図である。
【図13】AD法の概略を説明する図である。
【図14】実施の形態の変形例を示す図である。
【図15】Cuに第2の材料を添加したときの、添加量(体積%)に対する熱膨張係数の変化を示すグラフである。
【図16】Cuに第2の材料を添加したときの、添加量(体積%)に対する熱伝導率の変化を示すグラフである。
【図17】第1及び第2の材料の各種特性を表にして示す図である。
【図18】実施の形態2に係るコネクタユニットの、図7に示すIV−IV線における断面図である。
【図19】実施の形態2に係るコネクタユニットの主要部の拡大断面図である。
【図20】従来のハイブリッド車の電気系統図の例を示すブロック回路図である。
【符号の説明】
【0108】
1 エンジン
2 ラジエータ
3 モータ
5 コネクタユニット
6 バッテリ
7 コンバータ
8 直流電源用配線8
10 電力変換部
11a IGBTチップ
11b ダイオードチップ
12 上面電極
13 下面電極
14 半田層
16 デバイス駆動回路
17 制御信号用配線
18 大電流用配線
21 ヒートシンク
21a 平板部
21b フィン部
21c 第1開口部
21d 第2開口部
23 配線部材
23a 直流電源用配線部材
23b 直流電源用配線部材
23a1 平板部
23b1 平板部
23a2 直流電源用端子
23b2 直流電源用端子
23u 三相交流電源用配線部材
23v 三相交流電源用配線部材
23w 三相交流電源用配線部材
23u1 平板部
23v1 平板部
23w1 平板部
23u2 三相交流電源用端子
23v2 三相交流電源用端子
23w2 三相交流電源用端子
26 絶縁樹脂層
26a 第1開口部
26b 第2開口部
28 ソケット
29 ソケット
31 取付ネジ
33 プリント配線板
33a 第1開口部
33b スリット部
33c 第2開口部
35 絶縁層
35a 第1開口部
35b スリット部
35c 第2開口部
37 取付部材
41 熱応力緩和導電部材
42 熱応力緩和伝熱部材
50 容器
60 モータハウジング本体
60a 開口部
60b 側筒
60c 縁部
63u バスバー
63v バスバー
63w バスバー
63u1 リング部
63v1 リング部
63w1 リング部
63u2 モータ側端子
63v2 モータ側端子
63w2 モータ側端子
80 モータ制御ユニット
81 制御信号用配線
83 制御信号用配線
100A コールドスプレー装置
102 ヒータ
103 ガン
104 配管
105 配管
107 ミキサ
108A 原料供給管
108B 原料供給管
109 点火プラグ
110 AD装置
111 成膜室
112 ワークホルダー
113 基板
115 メタルマスク
116 ノズル
117 連絡配管
118 エアロゾル化室
119A 原料供給管
119B 原料供給管
500 車体
501 エンジン
502 エンジン用ラジエータ
503 モータ
505 インバータ
506 バッテリ
507 コンバータ
508 三相交流電源線
510 電源生成部
511 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源用端子と、
三相交流電源用端子と、
直流電力と交流電力との電力変換を行うための電力変換部とを備え、回転電機のハウジングに連結可能なコネクタユニットであって、
前記電力変換部は、
半導体チップと、
前記半導体チップに熱応力緩和導電部材を介して接続された配線部材とを備え、
前記熱応力緩和導電部材の熱膨張係数は、前記半導体チップの熱膨張係数と前記配線部材の熱膨張係数の中間の値にあることを特徴とする、コネクタユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタユニットであって、
前記半導体チップを主に構成する材料(構成する材料のうち熱膨張係数に支配的な材料をいう)を第1の材料、
前記配線部材を主に構成する材料(構成する材料のうち熱膨張係数に支配的な材料をいう)を第2の材料、とした場合に、
前記熱応力緩和導電部材を主に構成する材料は、第1の材料又は第2の材料である、コネクタユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタユニットであって、
前記熱応力緩和導電部材を主に構成する材料の含有量は、前記熱応力緩和導電部材全体の30〜80体積%である、コネクタユニット。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のコネクタユニットであって、
前記熱応力緩和導電部材は、
前記半導体チップに面する側である第1領域と前記配線部材に面する側である第2領域で異なる熱膨張係数を有し、第1領域の熱膨張係数は前記半導体チップの熱膨張係数と第2領域の熱膨張係数の中間の値である、コネクタユニット。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つに記載のコネクタユニットであって、
前記熱応力緩和導電部材を主に構成する材料以外の材料は、Si、Al、SiC、Si、SiO、AlN、W、Mo又はFe32NiCo(インバー合金)からなる群より選ばれた少なくとも1種の材料によって構成されている、コネクタユニット。
【請求項6】
請求項2に記載のコネクタユニットであって、
前記熱応力緩和導電部材は、前記第1の材料と前記第2の材料とから構成されている、コネクタユニット。
【請求項7】
請求項6に記載のコネクタユニットであって、
前記熱応力緩和導電部材は、
前記第1領域と前記第2領域で異なる熱膨張係数を有し、前記第1領域の熱膨張係数は前記半導体チップの熱膨張係数と前記第2領域の熱膨張係数の中間の値である、コネクタユニット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のコネクタユニットであって、
前記熱応力緩和導電部材は溶射法によって形成されている、コネクタユニット。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載のコネクタユニットであって、
さらにヒートシンクが絶縁樹脂層を介して前記配線部材に接続されている、コネクタユニット。
【請求項10】
直流電源用端子と、
三相交流電源用端子と、
直流電力と交流電力との電力変換を行うための電力変換部とを備え、回転電機のハウジングに連結可能なコネクタユニットであって、
前記電力変換部は、
半導体チップと、
前記半導体チップに接続された配線部材と、
前記配線部材に熱応力緩和伝熱部材を介して接続されたヒートシンクとを備え、
前記熱応力緩和伝熱部材の熱膨張係数は、前記配線部材の熱膨張係数と前記ヒートシンクの熱膨張係数の中間の値であることを特徴とする、コネクタユニット。
【請求項11】
請求項10に記載のコネクタユニットであって、
前記配線部材を主に構成する材料(構成する材料のうち熱膨張係数に支配的な材料をいう)を第3の材料、
前記ヒートシンクを主に構成する材料(構成する材料のうち熱膨張係数に支配的な材料をいう)を第4の材料、とした場合に、
前記熱応力緩和伝熱部材を主に構成する材料は、第3の材料又は第4の材料である、コネクタユニット。
【請求項12】
請求項11に記載のコネクタユニットであって、
前記熱応力緩和伝熱部材は、
前記配線部材に面する側である第1領域と前記ヒートシンクに面する側である第2領域で異なる熱膨張係数を有し、第1領域の熱膨張係数は前記配線部材の熱膨張係数と第2領域の熱膨張係数の中間の値である、コネクタユニット。
【請求項13】
請求項11に記載のコネクタユニットであって、
前記熱応力緩和伝熱部材は、前記第3の材料と前記第4の材料とから構成されている、コネクタユニット。
【請求項14】
請求項13に記載のコネクタユニットであって、
前記熱応力緩和伝熱部材は、
前記第1領域と前記第2領域で異なる熱膨張係数を有し、前記第1領域の熱膨張係数は前記配線部材の熱膨張係数と前記第2領域の熱膨張係数の中間の値である、コネクタユニット。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1つに記載のコネクタユニットであって、
前記配線部材はCu又はCu合金で構成されており、
前記ヒートシンクはAl又はAl合金で構成されている、コネクタユニット。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか1つに記載のコネクタユニットであって、
前記熱応力緩和伝熱部材は溶射法によって形成されている、コネクタユニット。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれか1つに記載のコネクタユニットであって、
前記配線部材と前記熱応力緩和伝熱部材の間にさらに絶縁樹脂層を備えている、コネクタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−60746(P2009−60746A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227309(P2007−227309)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】