説明

コネクタ付き光電変換装置及びコネクタ付き光電変換装置の製造方法

【課題】電磁波のシールド性能及び信頼性において優れた安価なコネクタ付き光電変換装置、及び、該コネクタ付き光電変換装置の製造方法を提供することにある。
【解決手段】コネクタ付き光電変換装置(14)は、回路基板と、回路基板に実装された光電変換素子と、光電変換素子と光学的に結合された光ファイバーと、回路基板と電気的に接続され、外部機器との接続に供されるコネクタユニット(22,24)と、回路基板、光電変換素子、光ファイバーの端部、及び、コネクタユニット(22,24)の一部を覆う、樹脂製の1次モールド部材(96)と、1次モールド部材(96)を覆い、導電性を有するシールド部材(98)と、シールド部材(98)を覆う2次モールド部材(100)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコネクタ付き光電変換装置及びコネクタ付き光電変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばデータセンターにおけるサーバとスイッチ間の接続や、デジタルAV(オーディオ・ビジュアル)機器間の接続では、伝送媒体として、メタル線の外に、光ファイバーも用いられている。また、近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の情報処理機器においても、伝送媒体として光ファイバーを用いること(光インターコネクト)が検討されている。
【0003】
光ファイバーを用いる場合、電気信号を光信号に、或いは、光信号を電気信号に変換する光電変換モジュールが必要になる。光電変換モジュールとして、例えば、特許文献1が開示する光モジュールでは、予め成形された第1のパッケージと第2のパッケージの間に、光素子が実装された基板が配置されている。また、第1のパッケージと第2のパッケージとの間には、電磁波シールド性能を確保するため、基板を覆うように導電性部材が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−56190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する光モジュールのように、予め成形された第1のパッケージと第2のパッケージを用いる場合、部品点数が多くなる。このため、光モジュールの製造コストが高くなる。
【0006】
また、特許文献1が開示する光モジュールのように、導電性部材が、成形された導電性金属から構成されている場合、隙間なく基板を覆うように導電性金属を成形することは困難である。同様に、導電性部材が、第2のパッケージの内面にインサート成形された導電性金属や、第2のパッケージにのみ施されためっきによって構成されている場合も、隙間なく基板を覆うことは困難である。
あるいは、第2のパッケージの外面に施された金属めっきによって導電性部材が構成されている場合、引っ掻き等によって金属めっきが剥がれ、電磁波シールド性能が低下する虞がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、電磁波のシールド性能及び信頼性において優れた安価なコネクタ付き光電変換装置、及び、該コネクタ付き光電変換装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、回路基板と、前記回路基板に実装された光電変換素子と、前記光電変換素子と光学的に結合された光ファイバーと、前記回路基板と電気的に接続され、外部機器との接続に供されるコネクタユニットと、前記回路基板、前記光電変換素子、前記光ファイバーの端部、及び、前記コネクタユニットの一部を覆う、樹脂製の1次モールド部材と、前記1次モールド部材を覆い、導電性を有するシールド部材と、前記シールド部材を覆う、樹脂製の2次モールド部材とを備えるコネクタ付き光電変換装置が提供される。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、回路基板に、光電変換素子を実装する工程と、前記光電変換素子と光ファイバーとを光学的に結合する工程と、外部機器との電気的な接続に供されるコネクタユニットを、前記回路基板と電気的に接続する工程と、前記回路基板、前記光電変換素子、前記光ファイバーの端部、及び、前記コネクタユニットの一部を覆う、樹脂製の1次モールド部材を形成する工程と、前記1次モールド部材を覆う、導電性を有するシールド部材を形成する工程と、前記シールド部材を覆う2次モールド部材を形成する工程とを備えるコネクタ付き光電変換装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電磁波のシールド性能及び信頼性において優れた安価なコネクタ付き光電変換装置、及び、該コネクタ付き光電変換装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態のコネクタ付き光電変換装置を備える光アクティブケーブルの概略的な構成を示す斜視図である。
【図2】図1中のコネクタ付き光電変換装置周辺を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2のコネクタ付き光電変換装置の概略的な断面図である。
【図4】図2のコネクタ付き光電変換装置の基本構成部品を分解して概略的に示す斜視図である。
【図5】図4中の光電変換モジュールの一方の側を概略的に示す斜視図である。
【図6】図4中の光電変換モジュールの他方の側を概略的に示す斜視図である。
【図7】図5及び図6の光電変換モジュールの概略的な部分断面図である。
【図8】図4の基本構成部品及び光電気複合ケーブルを、カバーを除いて、組み立てられた状態で示す概略的な斜視図である。
【図9】図4の基本構成部品及び光電気複合ケーブルを、カバーを含め、組み立てられた状態で示す概略的な斜視図である。
【図10】図9の組み立てられた基本構成部品が1次モールドパッケージで覆われた状態を示す概略的な斜視図である。
【図11】図9の組み立てられた基本構成部品が、1次モールドパッケージ及びシールド部材で覆われた状態を示す概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、光アクティブケーブル10の外観を概略的に示す斜視図である。光アクティブケーブル10は、例えば、HDMI(登録商標:High Definition Multimedia Interface)ケーブルである。
【0013】
光アクティブケーブル10は、光電気複合ケーブル12と、光電気複合ケーブルの両端にそれぞれ設けられた、コネクタ付き光電変換装置14,16とからなる。光アクティブケーブル10は、例えば、デジタルAV機器同士の接続に使用される。なお以下では、コネクタ付き光電変換装置14,16を単に光電変換装置14,16ともいう。
【0014】
図2は、光電変換装置14,16を拡大して概略的に示す斜視図である。図2に示したように、光電変換装置14,16は、略直方体形状の外形形状を有する本体18を有し、本体18の一端から金属製のプラグ20が突出している。プラグ20は、図示しないデジタルAV機器のソケットに着脱自在に接続される。
【0015】
また、本体18の他端からは、略円筒形状のブーツ21が突出している。ブーツ21は、光電気複合ケーブル12の端部を覆っており、光電気複合ケーブル12の端部を保護している。
【0016】
図3は、光電変換装置14,16の概略的な縦断面図であり、図4は、光電変換装置14,16の構成部品の一部(基本構成部品)を分解して示す斜視図である。
図3及び図4に示したように、プラグ20は、本体18から突出している筒部20aと、本体18の内部に位置する、トレー部20bとからなる。トレー部20bは、U字形状の横断面形状を有し、筒部20aに一体に連なっている。
【0017】
トレー部20bには、U字形状の横断面形状を有する金属製のカバー22が嵌合され、プラグ20及びカバー22は、自身の内側に、プラグ20の長手方向両端にて開口した空間を規定している。
プラグ20の筒部20aの内側には、コネクタ部材24が配置されている。コネクタ部材24は、樹脂製のモールドパッケージと、モールドパッケージに一部が埋設された複数の金属製の接続端子24aとからなる。コネクタ部材24のモールドパッケージは、筒部20aを閉塞している。
【0018】
コネクタ部材24のモールドパッケージは、筒部20aの先端側に、外部を臨む凹部を有し、凹部の内側にて、ピン形状の接続端子24aの先端側が表出している。一方、接続端子24aの他端側は、モールドパッケージからトレー部20b及びカバー22の内側に突出している。
コネクタ部材24及びプラグ20は、外部機器との接続に供されるコネクタユニットを構成している。
【0019】
プラグ20のトレー部20bとカバー22の内側には、リジッドな略長方形の回路基板26が配置されている。回路基板26は、例えば、ガラスエポキシ樹脂製の基板本体と、基板本体に設けられた導体パターンとからなる。導体パターンは、例えば、基板本体に設けられた銅等の薄膜をエッチングすることによって形成される。
【0020】
回路基板26の導体パターンは、コネクタ部材24側にランド状の接続端子26aを含み、コネクタ部材24の接続端子24aが回路基板26の接続端子26aに接続される。
回路基板26の一方の面には、信号処理用のLSI(大規模集積回路)チップ28がポッティングされた状態で実装されている。
【0021】
また、回路基板26には、光電気複合ケーブル12に含まれる複数の導線30の先端が例えば半田によって固定されている。導線30は、電源の供給や低速信号の伝送に用いられる。
更に、回路基板26には、必要に応じて、外部電源供給用の電源ユニット32が実装されるとともに、光電変換装置14,16の動作状態を示すインジケータランプとして、LED(発光ダイオード)ユニット34が実装されている。
【0022】
回路基板26の他方の面には、コネクタ36が実装され、コネクタ36に光電変換モジュール38の一端が接続される。また、光電変換モジュール38の他端には、光電気複合ケーブル12に含まれるリボンファイバー40の先端が接続されている。
なお、光電変換モジュール38と回路基板26との間には、例えばガラス板からなる支持部材42が配置されている。
【0023】
導線30及びリボンファイバー40は、例えば金属製のストップリング44を通じて、本体18の内部まで延びている。なお、リボンファイバー40については、図3において、先端側の一部とストップリング44よりも外側の部分のみが示され、途中の部分が省略されており、図4においては、先端側の一部のみが示されている。
【0024】
ストップリング44は、筒部44aと、筒部44aの一端に一体に設けられたフランジ部(外向き鍔部)44bとからなる。
ストップリング44の筒部44aには、補強線係止リング46及びシース係止リング48が嵌合されている。補強線係止リング46は、光電気複合ケーブル12に含まれる補強線50の先端を、ストップリング44の筒部44aと協働して挟持する。補強線50は、例えばポリアミド系樹脂等からなり、より具体的には、ケブラー(登録商標)からなる。シース係止リング48は、光電気複合ケーブル12の金属製のシールド編組52及びシース54の先端を、ストップリング44の筒部44aと協働して挟持する。
【0025】
〔光電変換モジュール〕
図5は、図4中の光電変換モジュール38の一方の側を概略的に示す斜視図である。
光電変換モジュール38は、FPC基板(フレキシブルプリント回路基板)60を含み、FPC基板60は、例えば、ポリイミド製の可撓性及び透光性を有するフィルム62と、フィルム62に設けられた例えば銅等の金属からなる導体パターン64とからなる。
【0026】
FPC基板60の導体パターン64は、フィルム62の一端部に形成された複数の電極端子66を含み、電極端子66がコネクタ36に接続される。
なお導体パターン64は、例えば、フィルム62に成膜された金属膜をエッチングすることにより作製することができる。
【0027】
FPC基板60の一方の面には、所定の位置にIC(集積回路)チップ68及び光電変換素子70が例えばフリップチップ実装され、ICチップ68及び光電変換素子70は導体パターン64に電気的に接続されている。従って、ICチップ68は、導体パターン64及びコネクタ36を通じて、回路基板26に電気的に接続される。
【0028】
光電変換素子70は、ICチップ68の一辺の近傍に沿うように並べられ、ICチップ68及び光電変換素子70は、樹脂製のポッティング部材72によって覆われている。
2つの光電変換装置14,16のうち一方の光電変換装置14の光電変換モジュール38では、光電変換素子70は、LD(レーザダイオード)等の発光素子であって、ICチップ68は、発光素子のための駆動回路を構成している。つまり、一方の光電変換装置14は発信器である。
【0029】
他方の光電変換装置16の光電変換モジュール38では、光電変換素子70は、PD(フォトダイオード)等の受光素子であって、ICチップ68は、受光素子が出力した電気信号を増幅する増幅回路を構成している。つまり、他方の光電変換装置14は受信器である。
光電変換素子70は、面発光型若しくは面受光型であり、自身の光の出射面若しくは入射面がFPC基板60の面と対向するように配置されている。
【0030】
図6は、光電変換モジュール38の図5とは反対側を分解して概略的に示す斜視図である。
FPC基板60の他方の面には、全域に渡って、シート状のポリマー光導波路部材74が一体に積層されている。ポリマー光導波路部材74の端部には、リボンファイバー40に含まれる光ファイバー76の数に対応して、4本の保持溝が形成され、保持溝内に光ファイバー76の先端部が配置されている。
【0031】
ポリマー光導波路部材74には、FPC基板60とは反対側の面にて開口するV溝が形成され、V溝の壁面には例えば金属膜が蒸着によって形成されている。金属膜はミラー78を構成し、ポリマー光導波路部材74及びミラー78を介して、光電変換素子70と光ファイバー76が光学的に結合される。
【0032】
そして、FPC基板60とは反対側のポリマー光導波路部材74の面には、補強部材80及び固定部材82が例えば接着剤を用いて固定されている。
補強部材80は、例えば銅などの金属板からなり、FPC基板60を挟んで、ICチップ68及び光電変換素子70と対向している。また、固定部材82は、例えばガラス板からなり、光ファイバー76の先端部を覆っている。
【0033】
図7は、光電変換モジュール38の概略的な部分断面図である。
ポリマー光導波路部材74は、アンダークラッド層84、コア86、及び、オーバークラッド層88を含む。アンダークラッド層84は、FPC基板60のフィルム62に積層され、四角形の横断面形状を有するコア86がアンダークラッド層84上を延びている。
【0034】
なお、図5及び図6を併せて参照すると、光電変換素子70の位置に対し、光ファイバー76の位置が、FPC基板60の幅方向でずれているが、この「ずれ」に対応して、コア86は、アンダークラッド層84上を曲がって延びている。このような「ずれ」は必須ではなく、「ずれ」がなければ、コア86は直線状に延びていてもよい。
【0035】
コア86の数は、光ファイバー76の数に対応して4本であり、光ファイバー76の先端部と同軸上に位置している。オーバークラッド層88は、アンダークラッド層84と協働してコア86を囲むように、アンダークラッド層84及びコア86の上に積層されている。
【0036】
アンダークラッド層84、コア86、及び、オーバークラッド層88の材料としては、特に限定されることはないが、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂及びポリイミド系樹脂等を用いることができる。
なお、光ファイバー76は、コア90とコア90を囲むクラッド92とからなり、ポリマー光導波路部材74のコア86と光ファイバー76のコア90とが同軸上に配置され、相互に光学的に結合される。
【0037】
ICチップ68及び光電変換素子70は、FPC基板60の導体パターン64に対し、例えば、図示しないAuからなるバンプによって接続されている。
光電変換素子70は、ポッティング部材72の内部に埋設されているが、光電変換素子70とFPC基板60との隙間には、透光性を有する充填材94が充填されている。充填材94は、ポッティング部材72の材料が光電変換素子70とFPC基板60との間に流入することを阻止し、光電変換素子70のための光路を確保する。
【0038】
図8は、図4に示された光電変換装置14,16の基本構成部品及び光電気複合ケーブル12が、カバー22を除き、組み立てられた状態を示す概略的な斜視図であり、図9は、カバー22も含め、組み立てられた基本構成部品及び光電変換ケーブル12を示す概略的な斜視図である。
【0039】
再び図3を参照すると、光電変換装置14,16は、1次モールドパッケージ(1次モールド部材)96、シールド部材98及び2次モールドパッケージ(2次モールド部材)100を備える。
1次モールドパッケージ96は、電気絶縁性を有する樹脂からなる。1次モールドパッケージ96は、プラグ20のトレー部20bとカバー22との間に充填されており、光電変換モジュール38の周囲にも充填されている。また、1次モールドパッケージ96は、プラグ20のトレー部20bとカバー22の外側を完全に覆っており、プラグ20の筒部20a及びストップリング44のフランジ部44bも部分的に覆っている。
【0040】
図10は、1次モールドパッケージ96で覆われた基本構成部品及び光電気複合ケーブル12を概略的に示す斜視図である。1次モールドパッケージ96の外形は、略直方体形状である。なお、1次モールドパッケージ96からは、プラグ20の筒部20a、ストップリング44のフランジ部44b及び筒部44a、電源ユニット32、並びに、LEDユニット34のLEDランプが突出している。
【0041】
図11は、シールド部材98及び1次モールドパッケージ96で覆われた基本構成部品及び光電気複合ケーブル12を概略的に示す斜視図である。
シールド部材98は導電性を有し、1次モールドパッケージ96の表面の略全域を覆っている。
【0042】
シールド部材98は金属からなり、好ましくは、1次モールドパッケージ96の外表面に密着する膜形状を有する。金属からなるシールド部材98は、めっき、塗装、又は蒸着によって形成される。シールド部材98は、プラグ20に接触しており、プラグ20を介して接地される。
【0043】
例えば、シールド部材98は、Ni、Cu、及び、Agからなる群から選択される単一若しくは合金の膜、又は、これらの膜の積層体からなる。
なお、プラグ20の筒部20aの先端側及びLEDユニット34のLEDランプは、シールド部材98によって覆われていない。
【0044】
2次モールドパッケージ100は、シールド部材98を覆っている。2次モールドパッケージ100は、図2に示したように、本体18の外側部分を構成しており、略直方体形状の外形を有する。そして、2次モールドパッケージ100の内面は、シールド部材98の外面に密着している。
【0045】
なお、本実施形態では、好ましい態様として、ブーツ21も、2次モールドパッケージ100と同時に一体に成形される。また、本実施形態では、好ましい態様として、2次モールドパッケージ100は、透光性を有する。
【0046】
ここで1次モールドパッケージ96に用いられる樹脂(1次モールド樹脂)は、2次モールドパッケージ100に用いられる樹脂(2次モールド樹脂)よりも、低温でモールド成形可能である。つまり1次モールド樹脂は、2次モールド樹脂よりも、低い融点又はガラス転移温度を有する。例えば、1次モールド樹脂は、150℃以下の融点又はガラス転移温度を有し、2次モールド樹脂は、350℃以下の融点又はガラス転移温度を有する。
【0047】
このような樹脂として、1次モールド樹脂としては、PVC(ポリ塩化ビニル)等のビニル系樹脂、ABS(アクリロニトリルスチレン)等のポリスチレン系樹脂、又は、PE(ポリエチレン)等のポリエチレン系樹脂等を用いることができる。そして、2次モールド樹脂としてはPC(ポリカーボネート)等のポリカーボネート系樹脂、PA(ポリアミド)等のポリアミド系樹脂、PPS(ポリフェニレンスルファイド)等のポリフェニレンスルファイド系樹脂、又は、PI(ポリイミド)等のポリイミド系樹脂等を用いることができる。
【0048】
また、好ましくは、1次モールド樹脂は、線膨張係数が小さいことが望ましく、例えば、25℃の室温近傍にて、5ppm/K以上50ppm/K以下の線膨張係数を有し、目安としては、5ppm/K以上30ppm/K以下の線膨張係数を有する。
なお、硬い樹脂の場合、ガラスに近い線膨張係数を有するのが好ましい。一方、軟らかい樹脂の場合、特に限定はされないが、ガラスに近い線膨張係数を有するのが好ましい。
【0049】
一方、1次モールド樹脂が軟らかい樹脂の場合、2次モールド樹脂としては、1次モールド樹脂よりも硬い樹脂が用いられる。1次モールド樹脂が硬い樹脂の場合、2次モールド樹脂は、硬い樹脂及び軟らかい樹脂のいずれであってもよい。
【0050】
以下、上述した一実施形態の光電変換装置14,16の好ましい製造方法について説明する。
まず、図4に示された基本構成部品及び光電気複合ケーブル12を用意し、図9に示すように組み立てる。そして、組み立てられた基本構成部品及び光電気複合ケーブル12をモールド型内に配置し、モールド型内に樹脂を充填するインサートモールド成形によって、図10に示すように、1次モールドパッケージ96を形成する。
【0051】
それから、塗装又はめっきによって、1次モールドパッケージ96の表面に、図11に示すように、シールド部材98を形成する。なお、シールド部材98の形成時、プラグ20の先端側及びLEDユニット34のLEDランプは、キャップやマスキングテープによってマスクされる。
【0052】
この後、シールド部材98及び1次モールドパッケージ96で覆われた基本構成部品及び光電気複合ケーブル12をモールド型内に配置し、モールド型内に樹脂を充填するインサートモールド成形によって、図2に示すように、2次モールドパッケージ100を形成する。これにより、光電変換モジュール14,16が完成する。
【0053】
上述した一実施形態の光電変換装置14,16においては、シールド部材98が、1次モールドパッケージ96の外面の略全域を覆っており、内部のLSIチップ28、ICチップ68、及び、光電変換素子70を略隙間無く覆っている。このため、光電変換装置14,16は、優れた電磁波シールド性能を有する。
逆に言えば、光電変換装置14,16においては、シールドしたい電子部品を1次モールドパッケージ96で覆った上で、1次モールドパッケージ96をシールド部材98で覆うことで、電磁波シールド性能を高めている。
【0054】
そして、上述した一実施形態の光電変換装置14,16は、好ましい態様としてシールド部材98がめっき又は塗装によって形成されるので、大量生産に適する。
【0055】
また、上述した一実施形態の光電変換装置14,16においては、シールド部材98が、2次モールドパッケージ100によって覆われているので、シールド部材98が引っ掻き等によって傷付けられることがない。このため、この光電変換装置14,16においては、電磁波シールド性能が長期に亘って安定に保たれる。
【0056】
一方、上述した一実施形態の光電変換装置14,16においては、1次モールドパッケージ96及び2次モールドパッケージ100が、インサートモールドによって成形されており、基本構成部品を収容するための別体のケースを用意し、組み立てる必要がない。このため、光電変換装置14,16は、部品点数が少なく、安価である。
【0057】
そして、上述した一実施形態の光電変換装置14,16においては、1次モールドパッケージ96が、2次モールドパッケージ100よりも低温でモールド成形されるので、LSIチップ28、ICチップ68、及び、光電変換素子70が熱によって故障することが防止される。このため、この光電変換装置14,16は信頼性に優れている。
【0058】
また、上述した一実施形態の光電変換装置14,16においては、1次モールドパッケージ96が、小さい線膨張係数を有するので、温度が上昇しても、LSIチップ28、ICチップ68及び光電変換素子70に過大な圧力が作用せず、LSIチップ28、ICチップ68及び光電変換素子70の故障が防止される。この点からも、この光電変換装置14,16は高い信頼性を有する。
【0059】
更に、上述した一実施形態の光電変換装置14,16においては、1次モールドパッケージ96に、モールド温度が低い樹脂を用いているが、この場合、1次モールドパッケージ96の耐湿性が低いことがある。このような場合でも、2次モールドパッケージ100として、耐湿性に優れる樹脂を用いることで、全体として耐湿性が確保される。
【0060】
また、上述した一実施形態の光電変換装置14,16では、ブーツ21が、2次モールドパッケージ100と一体に成形されるので、別体のブーツを用意する必要がない。このため、光電変換装置14,16は、部品点数が少なく、安価である。
【0061】
更に、上述した一実施形態の光電変換装置14,16では、好まし態様として、2次モールドパッケージ100が透光性を有するので、LEDユニット34のLEDランプが2次モールドパッケージ100によって覆われていても、LEDランプの点灯を外部から視認することができる。
【0062】
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、一実施形態に変更を加えた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態の光電変換装置14,16では、光電変換素子70が、回路基板としてのFPC基板60に実装されていたが、回路基板26に実装されていてもよい。
【0063】
上述した一実施形態の光電変換装置14,16は、4本の光ファイバー76を含んでいたが、光ファイバー76の数は、特に限定されることはない。また、光電気複合ケーブル12は導線30を含んでいたが、導線30を含まない光ケーブルを用いてもよい。
【0064】
最後に、本発明の光電変換装置は、光アクティブケーブル以外にも適用可能であり、また、デジタルAV機器間の接続以外に、例えばサーバとスイッチングハブ間の接続等、ネットワーク機器間の接続にも適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
10 光アクティブケーブル
12 光電気複合ケーブル
14,16 光電変換装置
18 本体
20 プラグ(コネクタユニット)
21 ブーツ
22 カバー
24 コネクタ部材(コネクタユニット)
26 回路基板
38 光電変換モジュール
30 FPC基板(回路基板)
68 ICチップ
70 光電変換素子
74 ポリマー光導波路部材
76 光ファイバー
96 1次モールドパッケージ(1次モールド部材)
98 シールド部材
100 2次モールドパッケージ(2次モールド部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板に実装された光電変換素子と、
前記光電変換素子と光学的に結合された光ファイバーと、
前記回路基板と電気的に接続され、外部機器との接続に供されるコネクタユニットと、
前記回路基板、前記光電変換素子、前記光ファイバーの端部、及び、前記コネクタユニットの一部を覆う、樹脂製の1次モールド部材と、
前記1次モールド部材を覆い、導電性を有するシールド部材と、
前記シールド部材を覆う、樹脂製の2次モールド部材と
を備えるコネクタ付き光電変換装置。
【請求項2】
前記1次モールド部材の融点若しくはガラス転移温度は、前記2次モールド部材の融点若しくはガラス転移温度よりも低い、
請求項1に記載のコネクタ付き光電変換装置。
【請求項3】
前記1次モールド部材は、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、及び、ポリエチレン系樹脂からなる群より選択される1種を含み、
前記2次モールド部材は、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、及び、ポリイミド系樹脂からなる群より選択された1種を含む、
請求項2に記載のコネクタ付き光電変換装置。
【請求項4】
前記光ファイバーが挿通される一方、前記光ファイバーを囲むシースの先端が固定されるストップリングと、
前記2次モールド部材と一体に設けられ、前記ストップリングを覆うブーツとを更に備える、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のコネクタ付き光電変換装置。
【請求項5】
前記シールド部材は、金属の膜からなる、
請求項1乃至4の何れか一項に記載のコネクタ付き光電変換装置。
【請求項6】
前記光電変換素子の動作状態に対応して発光するインジケータランプを更に備え、
前記インジケータランプは、前記1次モールド部材及び前記シールド部材から突出し、
前記2次モールド部材は、透光性を有し、前記インジケータランプを覆っている、
請求項1乃至5の何れか一項に記載のコネクタ付き光電変換装置。
【請求項7】
回路基板に、光電変換素子を実装する工程と、
前記光電変換素子と光ファイバーとを光学的に結合する工程と、
外部機器との電気的な接続に供されるコネクタユニットを、前記回路基板と電気的に接続する工程と、
前記回路基板、前記光電変換素子、前記光ファイバーの端部、及び、前記コネクタユニットの一部を覆う、樹脂製の1次モールド部材を形成する工程と、
前記1次モールド部材を覆う、導電性を有するシールド部材を形成する工程と、
前記シールド部材を覆う樹脂製の2次モールド部材を形成する工程と
を備えるコネクタ付き光電変換装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−168443(P2012−168443A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30764(P2011−30764)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】