説明

コネクタ及び車両用窓ガラス

【課題】小型で、且つ高温時にも動作が保証されたコネクタ及び車両用窓ガラスを提供することを目的とするものである。
【解決手段】車両用窓ガラス板に固定され、前記車両用窓ガラス板に設けられたアンテナと接続されるコネクタであって、前記車両用アンテナが受信した信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段により増幅された信号を出力する出力端子と、前記増幅手段に供給される電流を制限する電流制限回路とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用窓ガラス板に固定されて、前記車両用窓ガラスに形成されたアンテナと接続されるコネクタ及び該コネクタを搭載した車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には、FM放送、AM放送に加え、地上波デジタルテレビ放送を受信する通信装置であるチューナユニット等が搭載されている。このような車両の窓ガラス板には、窓ガラス板に導電ペースト等を印刷することで形成されるガラスアンテナが設けられているのが一般的である。
【0003】
ガラスアンテナは、ガラスアンテナの給電部にアンプ回路等の電気回路を内蔵した専用のコネクタを接続し、このコネクタを介して車両内のチューナユニット等と通信ケーブルで接続されている。コネクタは、車両用窓ガラス板に固定された保持部材等に保持されて、車両用窓ガラス板に取り付けられる。
【0004】
車両用窓ガラス板に固定されるコネクタは、車両の外部環境の種々の変化に耐え得る耐久性が要求される。例えばコネクタは、車両が走行する際の振動等に耐え得る強度で車両用窓ガラス板に固定される必要がある。コネクタのケース等は、水分の浸透等による導通不良等を回避可能に設計される必要がある。コネクタに内蔵される電気回路は、車両外部の温度変化による車両や車両用窓ガラス板の温度変化にも対応可能に設計される必要がある。また車両用窓ガラス板に固定されるコネクタは、車両の外観を考慮すれば小型であることが好ましい。
【0005】
従来のコネクタでは、上述の要求を満たすべく、様々な工夫が成されている。例えば特許文献1には、窓ガラスに形成された導体と接合された電極端子と電極把持金具とを嵌合させることにより、ガラス板に形成された導体と接続される電気接続装置において、電気接続装置をガラス板に装着した際に、筐体とガラス板との間の空隙を設け、空気の流れにより水分の蒸発を促進することが記載されている。また特許文献2には、小型化が可能でケーブル抜け強度が高い回路基板内蔵コネクタ及びキャッチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−243660号公報
【特許文献2】特開2008−35479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記従来の技術では、コネクタに内蔵された電気回路を車両や車両用窓ガラス板の温度変化に対応可能に設計することと、コネクタの小型化との両立は、以下の理由から困難である。
【0008】
コネクタを小型化させるためには、コネクタに内蔵される電気回路を基板上に密集させて実装する必要があるが、電気回路を密集させて実装した場合、電気回路の発熱により基板の温度は上昇する。この状態で車両や車両用窓ガラス板の温度が上昇した場合、基板の温度はさらに上昇し、電気回路が破損する可能性が高くなる。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みて、これを解決すべく成されたものであり、小型で、且つ高温時にも動作が保証されたコネクタ及び該コネクタを搭載した車両用窓ガラスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の如き構成を採用した。
【0011】
本発明は、車両用窓ガラスに固定され、前記車両用窓ガラスに設けられたアンテナ導体と接続されるコネクタであって、前記アンテナ導体と電気的に接続させる接続端子と、該接続端子を介して送られる前記アンテナ導体が受信した受信信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段により増幅された信号を車両に搭載された通信装置へ出力する信号出力端子と、を有し、前記増幅手段は、アンプ回路と、該アンプ回路に接続され電源電圧を給電する電源回路と、サーミスタを有する前記電源電圧を分圧する分圧回路により、該サーミスタの周辺温度が所定温度を超えたとき、前記アンプ回路に供給される電流を制限する電流制限回路と、を有することを特徴とするコネクタを提供する。
【0012】
また本発明のコネクタにおいて、前記電流制限回路は、差動増幅回路とトランジスタとを含み、前記差動増幅回路の反転入力端子には、前記電源電圧から生成される定電圧が供給され、前記差動増幅回路の非反転入力端子には、前記分圧回路により分圧された前記電源電圧が供給され、前記差動増幅回路の出力は、前記トランジスタのベースに供給され、前記トランジスタのコレクタは前記アンプ回路に接続され、前記トランジスタのエミッタは接地されている構成としても良い。
【0013】
また本発明のコネクタにおいて、前記アンプ回路は、前記アンテナ導体から受信されたAM信号を増幅させるAMアンプ回路と、前記アンテナ導体から受信されたFM信号を増幅させるFMアンプ回路と、を含み、該AMアンプ回路と該FMアンプ回路とは並列で設けられ、それぞれ前記電流制限回路と接続されている構成としても良い。
【0014】
また本発明のコネクタにおいて、前記接続端子と前記増幅手段との間に接続されており、インピーダンスを整合する入力回路を有し、前記入力回路を介して前記受信信号が前記増幅手段に入力される構成としても良い。
【0015】
また本発明のコネクタにおいて、前記入力回路は、AM入力回路とFM入力回路とを含み、前記AMアンプ回路には、前記AM入力回路を介して前記受信信号が入力され、前記FMアンプ回路には、前記FM入力回路を介して前記受信信号が入力される構成としても良い。
【0016】
また本発明のコネクタにおいて、前記増幅手段と前記信号出力端子との間に接続されており、インピーダンスを整合する出力回路を有する構成としても良い。
【0017】
また本発明のコネクタにおいて、前記増幅手段、前記入力回路及び前記出力回路の周囲を覆うケースを有し、前記ケースには樹脂が充填されている構成としても良い。
【0018】
また本発明のコネクタにおいて、前記信号出力端子は、前記通信装置に接続された通信ケーブルと着脱可能なケーブル差込部を有する構成としても良い。
【0019】
さらに本発明は、アンテナ導体と、該アンテナ導体に接続されるコネクタと、を備えた車両用窓ガラスにおいて、前記コネクタは、前記アンテナ導体と電気的に接続される接続端子と、該接続端子を介して送られる前記アンテナ導体で受信した受信信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段により増幅された信号を車両に搭載された通信装置へ出力する信号出力端子と、を有し、前記増幅手段は、アンプ回路と、該アンプ回路に接続され電源電圧を給電する電源回路と、サーミスタを有する前記電源電圧を分圧する分圧回路により、該サーミスタの周辺温度が所定温度を超えたとき、前記アンプ回路に供給される電流を制限する電流制限回路と、を有することを特徴とする車両用窓ガラスを提供する。
【0020】
また本発明の車両用窓ガラスにおいて、前記電流制限回路は、差動増幅回路とトランジスタとを含み、前記差動増幅回路の反転入力端子には、前記電源電圧から生成される定電圧が供給され、前記差動増幅回路の非反転入力端子には、前記分圧回路により分圧された前記電源電圧が供給され、前記差動増幅回路の出力は、前記トランジスタのベースに供給され、前記トランジスタのコレクタは前記アンプ回路に接続され、前記トランジスタのエミッタは接地されている構成としても良い。
【0021】
また本発明の車両用窓ガラスにおいて、前記アンプ回路は、前記アンテナ導体から受信されたAM信号を増幅させるAMアンプ回路と、前記アンテナ導体から受信されたFM信号を増幅させるFMアンプ回路と、を含み、該AMアンプ回路と該FMアンプ回路とは並列で設けられ、それぞれ前記電流制限回路と接続されている構成としても良い。
【0022】
また本発明の車両用窓ガラスにおいて、前記接続端子と前記増幅手段との間に接続されており、インピーダンスを整合する入力回路を有し、前記入力回路を介して前記受信信号が前記増幅手段に入力される構成としても良い。
【0023】
また本発明の車両用窓ガラスにおいて、前記入力回路は、AM入力回路とFM入力回路とを含み、前記AMアンプ回路には、前記AM入力回路を介して前記受信信号が入力され、
前記FMアンプ回路には、前記FM入力回路を介して前記受信信号が入力される構成としても良い。
【0024】
また本発明の車両用窓ガラスにおいて、前記増幅手段と前記信号出力端子との間に接続されており、インピーダンスを整合する出力回路を有する構成としても良い。
【0025】
また本発明の車両用窓ガラスにおいて、前記増幅手段、前記入力回路及び前記出力回路の周囲を覆うケースを有し、前記ケースには樹脂が充填されている構成としても良い。
【0026】
また本発明の車両用窓ガラスにおいて、前記信号出力端子は、前記通信装置に接続された通信ケーブルと着脱可能なケーブル差込部を有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、小型で、且つ高温時にも動作が保証されたコネクタ及び該コネクタを搭載した車両用窓ガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のコネクタ10の斜視図である。
【図2】本発明のコネクタ10のA−A断面図である。
【図3】基板20に実装された電気回路30を説明する図である。
【図4】電流制限回路80の一例を示す図である。
【図5】電流制限回路80により電流制限した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0030】
以下に説明する本実施形態は、車両に搭載された通信装置の一つであるAM/FMラジオのチューナユニットと、車両用窓ガラスGの表面に形成されたガラスアンテナ(以下、アンテナ導体という)とを接続するコネクタに本発明を適用した形態である。アンテナ導体は、電波を受信するための線状導体16a、16bと、アンテナ導体に励起した電流を取り出す四角形の2つの給電部15a、15bとを有している。
【0031】
本発明のコネクタは、コネクタの形状と、コネクタに内蔵された電気回路とにそれぞれ特徴を有する。本発明のコネクタは、これらの特徴を併せ持つ構成により、小型で且つ車両や車両用窓ガラスの温度変化に対応可能な耐久性を有するコネクタを実現する。
【0032】
始めに、図1、図2を参照して本発明のコネクタの形状について説明する。図1は、本発明のコネクタ10の斜視図であり、図2は、本発明のコネクタ10のA−A断面図である。
【0033】
コネクタ10は、ケース11、ケーブル差込部12、2つの接続端子13a、13bを有する。ケース11は、内部に後述する電気回路30が実装された基板20が設けられている。ケーブル差込部12は、車両内部に搭載されたチューナユニットとコネクタ10とを接続する通信ケーブルが差し込まれる。接続端子13a、13bは、導体で形成されており、コネクタ10を車両用窓ガラスGに固定するための固定部材である。接続端子13a、13bは、導体で形成されており、車両用窓ガラス上に設けられたアンテナ導体の2つの給電部15a、15bそれぞれに半田または導電性接着剤など(図示せず)で電気的に接続される。これにより、コネクタ10はアンテナ導体に電気的に接続され、かつ車両用窓ガラスGに固定される。
【0034】
本実施形態の給電部は、1つの給電部15aには、線状導体である主エレメント16aが接続され、もう一つの給電部15bには、線状導体である調整エレメント16bが接続される。そして、図1では、主エレメント16aが接続されている給電部15aに接続端子13aが、調整エレメント16bが接続されている給電部15bに接続端子13bがそれぞれ半田により接続されている。なお、請求項の接続端子とは接続端子13aのことを指している。
【0035】
本実施形態のケース11は、例えばプラスチック等で形成されている。ケース11の内部は、図2に示すように、ケース11内部に樹脂等からなる充填材14が充填されて封止されている。ケーブル差込部12は、少なくとも基板20に実装された電気回路30の出力端子と接続された信号出力端子(図示せず)を有する。本実施形態では、ケーブル差込部12にケーブルが差し込まれると、この信号出力端子を介して電気回路30の出力信号がチューナユニットへ出力される。
【0036】
本実施形態の接続端子13a、13bは、ケース11内で基板20に実装された電気回路30と導通している。接続端子13a、13bは、車両用窓ガラスGに形成されたアンテナ導体の給電部15a、15bと接するように配置され、半田等により直接固定される。本実施形態のコネクタ10は、接続端子13a、13bがアンテナ導体の給電部15a、15bと接するように固定されることにより、基板20に実装された電気回路30とアンテナ導体とが接続される。
【0037】
本実施形態では、ケース11内部を充填材14で充填し封止することにより、ケース11の強度を向上させ、且つケース11内への水分等の浸透を防止することができる。さらに本実施形態では、ケース11内部に樹脂が充填されているため、接続端子13a、13bを半田付けにより車両用窓ガラスGに固定する際に発生する基板20上の半田の流動を防止することができる。
【0038】
また本実施形態のコネクタ10は、半田により直接車両用窓ガラスGに固定されるため、コネクタ10を車両用窓ガラスGに強固に固定することができる。また本実施形態のコネクタ10は、コネクタ10を車両用窓ガラスGに固定するための保持部材や、コネクタ10を車両用窓ガラスGに着脱可能とする着脱部材等を必要としない。このため本実施形態のコネクタ10は、従来のコネクタと比べて小型化することができる。
【0039】
次に、図3を参照して本実施形態の基板20に実装された電気回路30について説明する。図3は、基板20に実装された電気回路30を示す図である。
【0040】
本実施形態の電気回路30は、入力回路32、増幅回路35、出力回路95を有する。本実施形態の入力回路32は、AM入力回路40とFM入力回路60とを含む。また本実施形態の増幅回路35は、AMアンプ回路50、FMアンプ回路70、オートゲインコントロール回路75、電流制限回路80、電源回路90を有する。
【0041】
本実施形態の電気回路30では、電気回路30の入力端子Tinがアンテナ導体と接続されている。入力端子TinからAM信号が入力されると、AM信号はAM入力回路40を介してAMアンプ回路50で増幅され、出力回路95を介して電気回路30の出力端子Toutから車両内のチューナユニットへ出力される。また入力端子TinからFM信号が入力されると、FM信号はFM入力回路60を介してFMアンプ回路70で増幅され、出力回路95を介して電気回路30の出力端子Toutから車両内のチューナユニットへ出力される。
【0042】
AM入力回路40は、電気回路30の入力端子Tinと接続され、入力端子Tinは接続端子13aを介して車両用窓ガラスGに形成されたアンテナ導体の主エレメント16aと接続されている。AM入力回路40の後段にはAMアンプ回路50が接続されている。AM入力回路40は、アンテナ導体の給電部15a、主エレメント16aの持つインピーダンスとAMアンプ回路50のインピーダンスとの整合を行う。AMアンプ回路50は、アンテナ導体から受信され、AM入力回路40を介して入力されたAM信号を増幅する。
【0043】
FM入力回路60は、電気回路30の入力端子Tinと接続され、接続端子13aを介してアンテナ導体の主エレメント16aと接続されている。FM入力回路60の後段にはFMアンプ回路70が接続されている。FM入力回路60は、アンテナ導体の給電部15a、主エレメント16aの持つインピーダンスとFMアンプ回路70のインピーダンスとの整合を行う。FMアンプ回路70は、アンテナ導体から受信され、FM入力回路60を介して入力されたFM信号を増幅する。オートゲインコントロール回路75は、FMアンプ回路70のゲインを制御する。
【0044】
電流制限回路80は、基板20の周辺温度が所定温度以上になった場合に、AMアンプ回路50とFMアンプ回路70とに流れる電流を制限する。電流制限回路80の詳細は後述する。電源回路90は、電気回路30を構成する各回路に電源を供給する。
【0045】
出力回路95は、電気回路30の出力端子Toutと接続されている。出力回路95の前段にはAMアンプ回路50及びFMアンプ回路70が接続されている。出力回路95は、AMアンプ回路50のインピーダンス及びFMアンプ回路70のインピーダンスと、チューナユニットのインピーダンスとの整合を行う。
【0046】
接続端子13bは、基板20に実装された電気回路30で接地と接続される。電気回路30の接地と調整エレメント16bとを導通させることにより、アンテナ導体の受信感度を調整することができる。尚充分な受信感度が得られるのであれば、調整エレメント16bから接続端子13bまでの系統は設けなくてもよい。
【0047】
本実施形態では、基板20の周辺温度が所定温度以上になった場合に、AMアンプ回路50とFMアンプ回路70に流れる電流を制限し、AMアンプ回路50とFMアンプ回路70に流れる電流を小さくすることにより、電気回路30の消費電流を削減し、基板20の発熱を抑制する。
【0048】
図4を参照して電流制限回路80について説明する。図4は、電流制限回路80の一例を示す図である。
【0049】
電流制限回路80は、サーミスタR10、抵抗R20、R30、R40、トランジスタM10、トランジスタM20、定電圧回路81、差動増幅回路82を有する。
【0050】
サーミスタR10と抵抗R20は直列に接続されており、電源回路90から供給される電源電圧を分圧する分圧回路を構成している。サーミスタR10の一端は接地されており、他端は抵抗R20の一端と接続されている。抵抗R20の他端は電源回路90の出力端子と接続されている。
【0051】
サーミスタR10と抵抗R20との接続点は、差動増幅回路82の非反転入力端子T1と接続されている。すなわち差動増幅回路82の非反転入力端子T1には、電源回路90から供給される電流電圧をサーミスタR10と抵抗R20とで分圧した電圧が供給される。
差動増幅回路82の反転入力端子T2は、定電圧回路81の出力端子と接続されている。定電圧回路81は、電源回路90から供給される電源電圧から所定の定電圧を生成する。
すなわち差動増幅回路82の反転入力端子T2には、電源電圧から生成された定電圧が供給される。
【0052】
差動増幅回路82の出力は、抵抗R30を介してトランジスタM10のベースへ供給される。また差動増幅回路82の出力は、抵抗R40を介してトランジスタM20のベースへ供給される。
【0053】
差動増幅回路82の出力端子は、抵抗R30の一端と抵抗R40の一端とに接続されている。抵抗R30の他端は、トランジスタM10のベースと接続されている。トランジスタM10のエミッタは接地されており、トランジスタM10のコレクタはAMアンプ回路50の一方の入力端子と接続されている。AMアンプ回路50の他方の入力端子は、AM入力回路40の出力端子と接続されている。
【0054】
抵抗R40の他端は、トランジスタM20のベースと接続されており、トランジスタM20のエミッタは接地されている。トランジスタM20のコレクタはFMアンプ回路70の一方の入力端子と接続されている。FMアンプ回路70の他方の入力端子は、FM入力回路60の出力端子と接続されている。
【0055】
本実施形態のサーミスタR10は、周辺温度が上昇すると抵抗値が小さくなる特性を有する。したがって本実施形態の電流制限回路80では、基板20の温度が上昇するとサーミスタR10の抵抗値が小さくなる。サーミスタR10の抵抗値が小さくなると、差動増幅回路82の非反転入力端子T1に入力される電圧が低くなり、反転入力端子T2に入力される定電圧との電位差が小さくなる。よってトランジスタM10とトランジスタM20のベース電位が下がり、AMアンプ回路50とFMアンプ回路70とに流れる電流が制限される。電流が制限されると、電気回路30の発熱は抑制される。
【0056】
図5は、電流制限回路80により電流制限した結果を示す図である。図5では、サーミスタR10の周辺温度が上昇すると、電流が制限されて消費電流が小さくなることがわかる。このように本実施形態では、電流制限回路80により電流を制限して発熱を抑制することにより、動作保証温度範囲を−40℃〜115℃とすることができる。動作保証温度範囲とは、システムを動作させても回路破壊に至ることが無いことを保証できる温度範囲である。
【0057】
また本実施形態の電流制限回路80では、サーミスタR10の周辺温度が性能保証温度範囲の上限の85℃を超えると、AMアンプ回路50とFMアンプ回路70とに流れる電流の制限が開始されるものとした。AMアンプ回路50及びFMアンプ回路70のゲインは、電流が制限されると小さくなる。よって本実施形態では、性能保証温度の上限で電流制限回路80が電流制限を開始することにより、動作保証温度範囲を広くすることができる。
【0058】
尚本実施形態の電流制限回路80において、サーミスタR10、定電圧回路81、差動増悪回路82は、サーミスタR10の周辺温度が性能保証温度範囲の上限温度以上(本実施形態では85℃)になると電流制限が開始されるように設計されることが好ましい。
【0059】
本実施形態では、サーミスタR10の周辺温度が高くなったとき、電流制限を行い発熱を抑制することで、通常使用よりも高い115℃まで、高温時の動作を保証することができる。
【0060】
以下に、本実施形態による発熱の抑制効果についてさらに説明する。
【0061】
まず始めに、環境温度25℃の状態で電気回路30が実装された基板20に13.2Vの電圧を印加した状態で30分以上設置した場合の基板20の温度をサーモトレーサで測定した結果について説明する。尚このときの電気回路30における消費電流は、32.5mAである。
【0062】
本実施形態の基板20の表面において最も高い温度は64.1℃であり、最も低い温度は29.9℃であり、平均温度は44.7℃であった。また基板20の裏面において最も高い温度は52.2℃であり、最も低い温度は29.9℃であり、平均温度は42.3℃である。尚基板20の表面とは電気回路30が実装されている面であり、裏面とは電気回路30が実装された面と反対側の面である。また本発明の基板20の大きさは、29mm×10.6mmである。
【0063】
次に、環境温度25℃の状態で電気回路30が実装された基板20に13.2Vの電圧を印加して、電流制限回路80が115℃で動作している場合と同等の状態を作り出す為に消費電流を8mAに制限した状態で30分以上設置した場合の基板20の温度をサーモトレーサで測定した結果について説明する。
【0064】
このとき本実施形態の基板20の表面において最も高い温度は30.7℃であり、最も低い温度は28.4℃であり、平均温度は29.3℃であった。また基板20の裏面において最も高い温度は31.4℃であり、最も低い温度は28.4℃であり、平均温度は29.6℃である。
【0065】
以上の測定の結果から、本実施形態では、周辺温度が高温である場合(環境温度115℃)の基板20の発熱は、通常温度の場合(環境温度25℃)の発熱と比較して抑制されていることがわかる。よって本実施形態では、周辺温度の上昇に伴い基板20の発熱が増長されることがない。また本実施形態では、電気回路30を構成する各素子を密集させた場合にも発熱を抑制することができる。
【0066】
よって本実施形態によれば、小型で、且つ高温時にも動作が保証されたコネクタ10を提供することができる。また、温度変化に対応可能なコネクタを搭載することにより、アンテナ導体から安定して電波を受信することが可能な車両用窓ガラスを提供することができる。
【0067】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、車両用窓ガラス板に固定されるコネクタに利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 コネクタ
11 ケース
12 ケーブル差込部
13 固定部
20 基板
30 電気回路
40 AM入力回路
50 AMアンプ回路
60 FM入力回路
70 FMアンプ回路
75 オートゲインコントロール回路
80 電流制限回路
90 電源回路
95 出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用窓ガラスに固定され、前記車両用窓ガラスに設けられたアンテナ導体と接続されるコネクタであって、
前記アンテナ導体と電気的に接続させる接続端子と、
該接続端子を介して送られる前記アンテナ導体が受信した受信信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段により増幅された信号を車両に搭載された通信装置へ出力する信号出力端子と、を有し、
前記増幅手段は、
アンプ回路と、
該アンプ回路に接続され電源電圧を給電する電源回路と、
サーミスタを有する前記電源電圧を分圧する分圧回路により、該サーミスタの周辺温度が所定温度を超えたとき、前記アンプ回路に供給される電流を制限する電流制限回路と、
を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記電流制限回路は、差動増幅回路とトランジスタとを含み、
前記差動増幅回路の反転入力端子には、前記電源電圧から生成される定電圧が供給され、
前記差動増幅回路の非反転入力端子には、前記分圧回路により分圧された前記電源電圧が供給され、
前記差動増幅回路の出力は、前記トランジスタのベースに供給され、
前記トランジスタのコレクタは前記アンプ回路に接続され、前記トランジスタのエミッタは接地されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記アンプ回路は、
前記アンテナ導体から受信されたAM信号を増幅させるAMアンプ回路と、
前記アンテナ導体から受信されたFM信号を増幅させるFMアンプ回路と、を含み、
該AMアンプ回路と該FMアンプ回路とは並列で設けられ、それぞれ前記電流制限回路と接続されている請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記接続端子と前記増幅手段との間に接続されており、インピーダンスを整合する入力回路を有し、
前記入力回路を介して前記受信信号が前記増幅手段に入力される請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記入力回路は、AM入力回路とFM入力回路とを含み、
前記AMアンプ回路には、前記AM入力回路を介して前記受信信号が入力され、
前記FMアンプ回路には、前記FM入力回路を介して前記受信信号が入力される請求項3または4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記増幅手段と前記信号出力端子との間に接続されており、インピーダンスを整合する出力回路を有する請求項1から5のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項7】
前記増幅手段、前記入力回路及び前記出力回路の周囲を覆うケースを有し、前記ケースには樹脂が充填されている請求項1から6のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項8】
前記信号出力端子は、前記通信装置に接続された通信ケーブルと着脱可能なケーブル差込部を有する請求項1から7のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項9】
アンテナ導体と、該アンテナ導体に接続されるコネクタと、を備えた車両用窓ガラスにおいて、
前記コネクタは、
前記アンテナ導体と電気的に接続される接続端子と、該接続端子を介して送られる前記アンテナ導体で受信した受信信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段により増幅された信号を車両に搭載された通信装置へ出力する信号出力端子と、を有し、
前記増幅手段は、
アンプ回路と、
該アンプ回路に接続され電源電圧を給電する電源回路と、
サーミスタを有する前記電源電圧を分圧する分圧回路により、該サーミスタの周辺温度が所定温度を超えたとき、前記アンプ回路に供給される電流を制限する電流制限回路と、
を有することを特徴とする車両用窓ガラス。
【請求項10】
前記電流制限回路は、差動増幅回路とトランジスタとを含み、
前記差動増幅回路の反転入力端子には、前記電源電圧から生成される定電圧が供給され、
前記差動増幅回路の非反転入力端子には、前記分圧回路により分圧された前記電源電圧が供給され、
前記差動増幅回路の出力は、前記トランジスタのベースに供給され、
前記トランジスタのコレクタは前記アンプ回路に接続され、前記トランジスタのエミッタは接地されている請求項9に記載の車両用窓ガラス。
【請求項11】
前記アンプ回路は、
前記アンテナ導体から受信されたAM信号を増幅させるAMアンプ回路と、
前記アンテナ導体から受信されたFM信号を増幅させるFMアンプ回路と、を含み、
該AMアンプ回路と該FMアンプ回路とは並列で設けられ、それぞれ前記電流制限回路と接続されている請求項9または10に記載の車両用窓ガラス。
【請求項12】
前記接続端子と前記増幅手段との間に接続されており、インピーダンスを整合する入力回路を有し、
前記入力回路を介して前記受信信号が前記増幅手段に入力される請求項9または10に記載の車両用窓ガラス。
【請求項13】
前記入力回路は、AM入力回路とFM入力回路とを含み、
前記AMアンプ回路には、前記AM入力回路を介して前記受信信号が入力され、
前記FMアンプ回路には、前記FM入力回路を介して前記受信信号が入力される請求項11または12に記載の車両用窓ガラス。
【請求項14】
前記増幅手段と前記信号出力端子との間に接続されており、インピーダンスを整合する出力回路を有する請求項9から13のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
【請求項15】
前記増幅手段、前記入力回路及び前記出力回路の周囲を覆うケースを有し、前記ケースには樹脂が充填されている請求項9から14のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
【請求項16】
前記信号出力端子は、前記通信装置に接続された通信ケーブルと着脱可能なケーブル差込部を有する請求項9から15のいずれかに記載の車両用窓ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−44272(P2011−44272A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190514(P2009−190514)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】