説明

コポリマー及びそのフィルム

(a)0.900〜0.940g/cm3の範囲の密度、(b)0.01〜50g/10分の範囲のメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、(c)3.5〜4.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)、(d)40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)、及び(e)式[DRI/MI2]>0及び[DRI/MI2]<0.0225G'−0.745を満たすメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、ダウレオロジーインデックス(DRI)及びメルト弾性係数G'(G''=500Pa)を有する、エチレンとα-オレフィンの新規コポリマーを提供する。新規コポリマーは改良された加工性を有し、機械特性及び光学特性が改良されたフィルムの調製に特に好適である。新規コポリマーは、気相内で担持メタロセン触媒系の存在下で好適に調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規コポリマー、特にエチレンとα-オレフィンの新規コポリマー、特に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)に関し、また前記コポリマー製フィルムにも関する。
【背景技術】
【0002】
最近、メタロセン触媒の導入によってポリオレフィンコポリマーの製造において多くの進歩があった。メタロセン触媒は、伝統的チーグラー触媒より一般に高い活性という利点を提供し、事実上シングルサイトの触媒として一般的に述べられている。そのシングルサイト特質のため、メタロセン触媒によって製造されたポリオレフィンコポリマーは、その分子構造が完全に均一であることが多い。例えば、伝統的なチーグラー製物質に比し、メタロセン製物質は相対的に狭い分子量分布(MWD)及び狭い単鎖分岐分岐(SCBD)を有する。
メタロセン製品の一定の性質は狭いMWDによって高められるが、これらの物質を有用な物品やフィルムに加工する際にチーグラー製物質に比較して困難に遭遇することが多い。さらに、メタロセン製物質のSCBDの均一特性は、得るべき一定の構造を容易には許容しない。
最近、いくつかの特許がメタロセン触媒組成物を用いて調製した低密度ポリエチレンに基づくフィルムの製法について公表した。
EP608369は、≧5.63のメルトフロー比(I10/I2)と、関係MWD≦(I10/I2)−4.63を満たす分子量分布(MWD)とを有するコポリマーを開示する。このコポリマーは、改良された加工性を有し、かつ1000個のC原子当たり0.01〜3個の長鎖分岐を有する弾力性のある実質的に直鎖状のオレフィンポリマーとして記載され、I10/I2が本質的にMWDに無関係であるというユニークな特性を示す。
WO94/14855は、メタロセン、アルモキサン(alumoxane)及び担体を用いて調製された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを開示する。このメタロセン成分は典型的に、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドによって例示されるビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム錯体であり、シリカ上に担持されたメチルアルモキサンと共に使用される。この特許では、LLDPEが2.5〜3.0の狭いMw/Mn、15〜25のメルトフロー比(MFR)及び低いジルコニウム残渣を有すると記載されている。
WO94/26816も、狭い組成分布を有するエチレンコポリマーから調製されたフィルムを開示している。このコポリマーも伝統的なメタロセン(例えばビス(1-メチル, 3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド及びシリカ上に沈着したメチルアルモキサン)から調製され、この特許でも典型的に3〜4の範囲の狭いMw/Mn値を有すると特徴づけられ、さらに2.0未満というMz/Mwの値によって特徴づけられている。
しかし、これらのタイプの触媒系から製造されるポリマーは、その狭いMw/Mnのため加工性が欠如することが認められる。この欠陥を克服するために種々のアプローチが提案されている。狭いMw/Mnのポリマーにおける加工性を回復するための有効な方法は、ポリマー分子構造中に長鎖分岐(LCB)を組み入れる能力を有する特定触媒の使用による方法である。このような触媒は文献によく開示されており、WO93/08221及びEP-A-676421に説明に役立つ実例が与えられている。
WO97/44371は、長鎖分岐が存在するポリマー及びフィルムを開示しており、該製品は、ポリマー構造内にコモノマーの特に有利な置換を有する。ポリマーは、例えば2.19から6.0までの広狭両方のMw/Mnを有し、かつLCBの指標である、流れの活性化エネルギーが7.39〜19.2kcal/mol(31.1〜80.8kJ/mol)であると実証されている。しかし、11.1kcal/mol(46.7kJ/mol)未満の流れの活性化エネルギーによって示されるように、低量又は中量のLCBをも有する例えば3.4未満という狭いMw/Mnのポリマーの実例はない。
WO00/68285は、2.3〜3.2の範囲の分子量分布、1.02〜1.57のメルトインデックス及び約32kJ/molの活性化エネルギーを有する、エチレンとα-オレフィンのコポリマーを例示した。このコポリマーは、良い加工性、改良された光学特性及び機械特性並びに良いヒートシール特性を示すフィルムの用途で使うのに最適だった。このコポリマーはモノシクロペンタジエニルメタロセン錯体を用いて気相内で好適に調製された。
EP1360213は、良い機械特性、優れた光学特性及び非常に良い押出しポテンシャルを有するメタロセンフィルム樹脂を開示する。この樹脂は、0.001〜150g/10分の範囲のメルトインデックスMI2及び少なくとも20/MI2という高いダウレオロジーインデックス(Dow Rhelogy Index)(DRI)を示す。この樹脂は、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド/MAO触媒系から好適に調製される。
EP1260540及びEP1225201は、それぞれ少なくとも8/MI2及び5/MI2というDRIを有するポリマーを同様に開示する。
US5674342は、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.3のDRI及び8〜約12の範囲のメルトフロー比(I10/I2)を有するエチレンポリマーを開示する。具体的に例示されたポリマーは、0.3〜0.7の範囲のDRI及び2.15〜3.4の範囲の分子量分布(Mw/Mn)を示す。
我々の前の公報WO06/085051は、3.5〜4.5の範囲の広い分子量分布(Mw/Mn)を有する、エチレンとα-オレフィンのコポリマーを開示した。これらのコポリマーは40〜150Paの範囲のメルト弾性係数(melt elastic modulus)G'(G''=500Pa)及び28〜45kJ/molの範囲の流れの活性化エネルギー(Ea)を示したが、低量又は中量のLCBを有した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今や、我々は、はるかに低いダウレオロジーインデックス(DRI)を有するが、よりバランスのとれた加工性と改良された特性、特に優れたバランスの加工、光学及び機械特性を有するフィルムを調製するのに好適な当該特性を有する、エチレンとα-オレフィンの新規コポリマーを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本発明の第一局面により、エチレンとα-オレフィンのコポリマーであって、前記コポリマーが、
(a)0.900〜0.940g/cm3の範囲の密度、
(b)0.01〜50g/10分の範囲のメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、
(c)3.5〜4.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)、
(d)40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)、及び
(e)下記式
[DRI/MI2]>0及び[DRI/MI2]<0.0225G'−0.745
を満たすメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、ダウレオロジーインデックス(DRI)及びメルト弾性係数G'(G''=500Pa)
を有する、コポリマーが提供される。
特に好ましいエチレンとα-オレフィンのコポリマーは、
(a)0.900〜0.940g/cm3の範囲の密度、
(b)0.01〜50g/10分の範囲のメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、
(c)3.5〜4.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)、
(d)40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)、及び
(e)下記式
[DRI/MI2]>0及び[DRI/MI2]<0.0197G'−0.62
を満たすメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、ダウレオロジーインデックス(DRI)及びメルト弾性係数G'(G''=500Pa)
を有する、コポリマーである。
【0005】
コポリマーは、好ましくは0.915〜0.930g/cm3の範囲の密度を有する。
コポリマーは、好ましくは0.05〜20g/10分の範囲、最も好ましくは0.5〜5g/10分の範囲のメルトインデックスを有する。
コポリマーは、好ましくは40〜80Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)を有する。
好ましいα-オレフィンは、C4〜C12炭素原子を有するものである。最も好ましいα-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン及び1-オクテンである。
好ましいα-オレフィンは1-ヘキセンである。
本発明の新規コポリマーは小量の長鎖分岐を含み、長鎖分岐パラメーターg'の値<1.0によっても実証される。パラメーターg'は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)オンラインビスコメトリーデータから適切に計算される。長鎖分岐パラメーターg'の詳細は、我々の前の公報EP1045868で見つけられ、この公報の関連部分を参照によって本明細書に引用したものとする。
【0006】
伝統的チーグラー・ナッタ触媒を用いて調製されたポリマーは直鎖状ポリマーであり、かつ1に等しいg'値を示す。
本発明の新規コポリマーをダウレオロジーインデックス(DRI)とメルト弾性係数G'(G''=500Pa)の間の関係によって適切に定義することもでき、以下のとおりである。
DRI>0及びDRI<0.0225G'−0.705
従って、本発明の別の局面により、エチレンとα-オレフィンのコポリマーであって、前記コポリマーが、
(a)0.900〜0.940g/cm3の範囲の密度、
(b)0.01〜50g/10分の範囲のメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、
(c)3.5〜4.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)、
(d)40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)、及び
(e)下記式
DRI>0及びDRI<0.0225G'−0.705
を満たすダウレオロジーインデックス(DRI)及びメルト弾性係数G'(G''=500Pa)
を有する、コポリマーが提供される。
本発明の新規コポリマーは、好ましくは適切な活性体と共に「拘束構造(contrained geometry)」配置を有するモノシクロペンタジエニルメタロセン錯体を含むメタロセン触媒系を用いて適切に調製される。
本発明で使うのに好適なモノシクロペンタジエニル又は置換モノシクロペンタジエニル錯体の例は、EP416815、EP418044、EP420436及びEP551277に記載されている。
好適な錯体は、下記一般式で表される。
CpMXn
式中、Cpは単純なシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニル基であり、任意に置換基を介してMに共有結合していてよく、Mは、η5結合様式でシクロペンタジエニル又は置換シクロペンタジエニル基に結合しているVIA族金属であり、Xは、各存在がヒドリド、又は20個までの非水素原子を有するハロ、アルキル、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミドアルキル、シロキシアルキル等及び20個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基リガンドから成る群より選択される成分であり、或いは任意に1個のXがCpと共にMとのメタロ環を形成していてもよく、nは金属の原子価によって決まる。
好ましいモノシクロペンタジエニル錯体は下記式を有する。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、
R'は、各存在が独立に水素、ヒドロカルビル、シリル、ゲルミル、ハロ、シアノ、及びその組合せから選択され、前記R'は20個までの非水素原子を有し、かつ任意に、2個のR'基(ここで、R'は水素、ハロ又はシアノでない)が一緒に、シクロペンタジエニル環の隣接位置に結合したその二価誘導体を形成して、縮合環構造を形成してもよく;
Xは、ヒドリド、又は20個までの非水素原子を有するハロ、アルキル、アリール、アリールオキシ、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミドアルキル、シロキシアルキル等及び20個までの非水素原子を有する中性ルイス塩基リガンドから成る群より選択される成分であり、
Yは、-O-、-S-、-NR*-、-PR*-であり、
Mは、ハフニウム、チタニウム又はジルコニウムであり、
Z*は、SiR*2、CR*2、SiR*2SIR*2、CR*2CR*2、CR*=CR*、CR*2SiR*2、又はGeR*2であり、
ここで、
R*は、各存在が独立に水素、又はヒドロカルビル、シリル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、及びその組合せから選択される基であり、
前記R*は、10個までの非水素原子を有し、かつ任意に、Z*の2個のR*基(このときR*は水素でない)、又はZ*のR*基とYのR*基が環系を形成していてもよく、
かつnは、Mの原子価によって1又は2である。
適切なモノシクロペンタジエニル錯体の例は、(tert-ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シランチタニウムジクロリド及び(2-メトキシフェニルアミド)ジメチル(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シランチタニウムジクロリドである。
本発明のコポリマーの調製で使うのに特に好ましいメタロセン錯体は下記一般式で表される。
【0009】
【化2】

【0010】
式中、
R'は、各存在が独立に水素、ヒドロカルビル、シリル、ゲルミル、ハロ、シアノ、及びその組合せから選択され、前記R'は20個までの非水素原子を有し、かつ任意に、2個のR'基(ここで、R'は水素、ハロ又はシアノでない)が一緒に、シクロペンタジエニル環の隣接位置に結合したその二価誘導体を形成して、縮合環構造を形成していてもよく;
Xは、30個までの非水素原子を有し、Mとπ-錯体を形成する中性η4結合ジエン基であり、
Yは、-O-、-S-、-NR*-、-PR*-であり、
Mは、+2の形式的酸化状態のチタニウム又はジルコニウムであり、
Z*は、SiR*2、CR*2、SiR*2SIR*2、CR*2CR*2、CR*=CR*、CR*2SiR*2、又はGeR*2であり、
ここで、
R*は、各存在が独立に水素、又はヒドロカルビル、シリル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、及びその組合せから選択される基であり、
前記R*は、10個までの非水素原子を有し、かつ任意に、Z*の2個のR*基(このときR*は水素でない)、又はZ*のR*基とYのR*基が環系を形成していてもよい。
適切なX基の例として、s-trans-η4-1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、s-trans-η4-3-メチル-1,3-ペンタジエン;s-trans-η4-2,4-ヘキサジエン;s-trans-η4-1,3-ペンタジエン;s-trans-η4-1,4-ジトリル-1,3-ブタジエン;s-trans-η4-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,3-ブタジエン;s-cis-η4-3-メチル-1,3-ペンタジエン;s-cis-η4-1,4-ジベンジル-1,3-ブタジエン;s-cis-η4-1,3-ペンタジエン;s-cis-η4-1,4-ビス(トリメチルシリル)-1,3-ブタジエンが挙げられ、前記s-cisジエン基は、本明細書で定義されるように、Mとπ-錯体を形成する。
最も好ましくは、R'が水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ベンジル、若しくはフェニルであるか、又は2個のR'基(水素以外)が一緒に結合することによって、C5R'4基全体が、例えば、インデニル、テトラヒドロインデニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、又はオクタヒドロフルオレニル環である。
非常に好ましいY基は、式-N(R'')-又は-P(R'')-(ここで、R''はC1-10ヒドロカルビルである)に対応する基を含む窒素又はリン含有基である。
最も好ましい錯体は、アミドシラン錯体又はアミドアルカンジイル錯体である。
最も好ましい錯体は、Mがチタニウムである当該錯体である。
具体的な錯体は、WO95/00526に開示されている当該錯体であり、参照によって本明細書に引用したものとする。
特に好ましい錯体は(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタニウム-η4-1.3-ペンタジエンである。
【0011】
本発明の新規コポリマーの調製で使うのに好適な共触媒は、上記メタロセン錯体と共に典型的に使用される当該共触媒である。
これには、アルミノキサン、例えばメチルアルミノキサン(MAO)、ボラン、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン及びボレートが挙げられる。
アルミノキサンは技術上周知であり、好ましくはオリゴマーの直鎖状及び/又は環状アルキルアルミノキサンを含む。アルミノキサンはいくつかの方法で調製されるが、好ましくは水とトリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウムを適切な有機媒体、例えばベンゼン又は脂肪族炭化水素中で接触させることによって調製される。
好ましいアルミノキサンはメチルアルミノキサン(MAO)である。
他の適切な共触媒は有機ホウ素化合物、特にトリアリールホウ素化合物である。特に好ましいトリアリールホウ素化合物はトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0012】
共触媒として好適な他の化合物は、カチオンとアニオンを含む化合物である。カチオンは典型的にプロトンを供与できるブレンステッド酸であり、アニオンは典型的にカチオンを安定化できる適合性の非配位性のかさ高い種である。
このような触媒を下記式で表すことができる。
(L*-H)+d(Ad-)
式中、
L*は、中性ルイス塩基であり、
(L*-H)+dは、ブレンステッド酸であり、
Ad-は、電荷d-を有する非配位性の適合性アニオンであり、かつ
dは、1〜3の整数である。
イオン性化合物のカチオンは、酸性カチオン、カルボニウムカチオン、シリリウムカチオン、オキソニウムカチオン、有機金属カチオン及びカチオン性酸化剤から成る群より選択され得る。
適切な好ましいカチオンとして、トリヒドロカルビル置換アンモニウムカチオン、例えばトリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n-ブチル)アンモニウム等が挙げられる。N.N-ジアルキルアニリニウムカチオン、例えばN,N-ジメチルアニリニウムカチオンも好適である。
共触媒として使用される好ましいイオン性化合物は、該イオン性化合物のカチオンがヒドロカルビル置換アンモニウム塩を構成し、かつアニオンがアリール置換ボレートを構成する当該化合物である。
イオン性化合物として好適な典型的ボレートとして以下のものが挙げられる。
トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、
トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、
トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、
トリ(t-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、
N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、
トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0013】
メタロセン錯体と共に使うのに適した好ましいタイプの共触媒は、カチオンとアニオンを含むイオン性化合物であって、アニオンが、活性水素を有する部分を含む少なくとも1つの置換基を有する、イオン性化合物を含む。
このタイプの好適な共触媒はWO98/27119に記載されており、この文献の関連部分を参照によって本明細書に引用したものとする。
このタイプのアニオンの例として、以下のものが挙げられる。
トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート
トリ(p-トリル)(ヒドロキシフェニル) ボレート
トリス(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート
トリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)ボレート
このタイプの共触媒に好適なカチオンの例として、トリエチルアンモニウム、トリイソプロピルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルアンモニウム等が挙げられる。
より長いアルキル鎖を有する当該カチオン、例えばジヘキシルデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ビス(水素化獣脂アルキル)メチルアンモニウム等が特に好適である。
このタイプの特に好ましい共触媒は、アルキルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)4-(ヒドロキシフェニル)ボレートである。特に好ましい共触媒は、ビス(水素化獣脂アルキル)メチルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)(4-ヒドロキシフェニル)ボレートである。
このタイプの共触媒に関連して、好ましい化合物は、アルキルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)-4-(ヒドロキシフェニル)ボレートと有機金属化合物、例えばトリエチルアルミニウム又はアルミノキサン、例えばテトライソブチルアルミノキサンとの反応生成物である。
【0014】
本発明の新規コポリマーを調製するための触媒を適切に担持することができる。
好適な担体材料として無機金属酸化物が挙げられ、又は代わりにポリマー担体、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、クレー、ゼオライト等を使用し得る。
本発明の方法に従って担持触媒と共に使う最も好ましい担体材料はシリカである。好適なシリカとして、Ineos ES70及びGrace Davison 948シリカが挙げられる。
担体材料を熱処理及び/又は化学処理に供して該担体材料の含水量又はヒドロキシル含量を減らすことができる。典型的な化学的脱水剤は反応性の金属水素化物、アルミニウムアルキル及びハロゲン化物である。その使用前に減圧下、不活性雰囲気内で100℃〜1000℃、好ましくは200〜850℃における処理に担体材料を供してよい。
多孔性担体は、好ましくは、希釈溶媒中で有機金属化合物、好ましくは有機アルミニウム化合物、最も好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物を用いて前処理される。
担体材料は、有機金属化合物を用いて-20℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃の温度で前処理される。
【0015】
本発明のコポリマーの調製で使うのに特に適した触媒は、重合可能モノマーで処理したメタロセン錯体である。我々の先願WO04/020487及びWO05/019275は、触媒の調製で重合可能モノマーを使用する担持触媒組成物を開示している。
本発明のこの局面で使うのに適した重合可能モノマーとして、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、スチレン、ブタジエン、及び極性モノマー、例えば酢酸ビニル、メタクリル酸メチル等が挙げられる。好ましいモノマーは、2〜10個の炭素原子を有するもの、特にエチレン、プロピレン、1-ブテン又は1-ヘキセンである。
或いは、1つ以上のモノマーの組合せ、例えばエチレンと1-ヘキセンを使用し得る。
好ましい重合可能モノマーは1-ヘキセンである。
重合可能モノマーは液体形態で適切に使用され、或いは適切な溶媒中で使用される。適切な溶媒として、例えばヘプタンが挙げられる。
メタロセン錯体の添加前に重合可能モノマーを共触媒に加えてよく、或いは錯体を重合可能モノマーで前処理してよい。
【0016】
本発明の新規コポリマーは、スラリー又は気相内で行われる方法で好適に調製される。
スラリー法は典型的に不活性な炭化水素希釈剤と、約0℃から、結果として生じるポリマーが不活性な重合媒体中で実質的に可溶になる温度直下の温度までの温度とを使う。好適な希釈剤として、トルエン又はアルカン、例えばヘキサン、プロパン若しくはイソブタンが挙げられる。好ましい温度は、約30℃から約200℃まで、好ましくは約60℃〜100℃である。スラリー重合法では、ループ反応器が広く使用される。
新規コポリマーは、最も好適には気相法で調製される。
オレフィンの重合、特にエチレン及びα-オレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンのホモ重合及び共重合についての気相法は技術上周知である。
気相の典型的操作条件は、大気圧以下から100バールの圧力で20℃〜100℃、最も好ましくは40℃〜85℃である。
好ましい気相法は、流動床内で操作する当該方法である。特に好ましい気相法は、EP89691及びEP699213に記載されているように(特に後者が好ましい方法である)、「凝縮モード」で操作する当該方法である。
「凝縮モード」とは、「液相と気相を有する再循環流を、該再循環流の総質量に対する液体の質量パーセントが典型的に約2.0質量パーセントより高くなるように意図的に反応器中に導入する方法」を意味する。
【0017】
本発明の新規コポリマーは、エチレンとα-オレフィンの共重合によって好適に調製される。
好ましいα-オレフィンは1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン及び1-オクテンである。最も好ましいα-オレフィンは1-ヘキセンである。
従って、本発明の別の局面により、
(a)0.900〜0.940g/cm3の範囲の密度、
(b)0.01〜50g/10分の範囲のメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、
(c)3.5〜4.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)、
(d)40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)、及び
(e)下記式
[DRI/MI2]>0及び[DRI/MI2]<0.0225G'−0.745
を満たすメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、ダウレオロジーインデックス(DRI)及びメルト弾性係数G'(G''=500Pa)
を有する、エチレンとα-オレフィンのコポリマーの調製方法であって、
前述したように触媒系の存在下でエチレンと前記αオレフィンを共重合させる工程を含む方法が提供される。
【0018】
本発明の新規コポリマーの特定の利点は、ダウレオロジーインデックス(DRI)によって示される長鎖分岐の度合と、長鎖分岐及び分子量分布の両方の関数であるメルト弾性率(G')との間に優れたバランスがあることである。このバランスが、特にフィルム用途に向けた場合に有利な組合せの所望特性をもたらす。
従って、新規コポリマーは、技術上周知の伝統的方法を用いて調製されるフィルム及びシートの製造に特に好適である。該方法の例は、インフレーション(film blowing)、フィルムキャスティング及び部分結晶化生成物の延伸である。フィルムは良い加工性、改良された光学特性及び機械特性並びに良いヒートシール特性を示す。
フィルムは、特に優れた組合せのダートインパクト(dart impact)、低い曇り及び高い光沢を示す。
フィルムは、典型的に3〜20の範囲の曇りと、>500g、好ましくは>1000g、最も好ましくは>1500gのダートインパクト(25μmフィルム)を示す。
フィルムは、好ましくは<10%の曇り及び>60%の光沢を示す。
フィルムは、CMGインフレーション処理ラインを用いて特定押出しインフレーション条件下で押し出されたとき、典型的に150〜250バールの範囲、好ましくは160〜190バールの範囲の融解圧力を示す。
フィルムは、多くの用途、例えば工業、小売り、食品包装、非食品包装及び医療用途に適し得る。例として、バッグ用フィルム、衣類バッグ、食糧雑貨類袋、商品バッグ、セルフサービスバッグ、食糧雑貨類ウェットパック、食品ラップ、パレット伸縮ラップ、バンドリング及びオーバラップ、工業用裏張り、ゴミ袋、強力バッグ、農業用フィルム、オムツ用裏張り等が挙げられる。
フィルムを収縮フィルム、粘着フィルム、伸縮フィルム、シールフィルム又は他の適切なタイプのフィルムとして利用することができる。
本発明の新規コポリマーは、インフレーションフィルム(blown film)の製造で使うのに特に好適である。
従って、本発明の別の局面により、
(a)0.900〜0.940g/cm3の範囲の密度、
(b)0.01〜50g/10分の範囲のメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、
(c)3.5〜4.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)、
(d)40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)、及び
(e)下記式
[DRI/MI2]>0及び[DRI/MI2]<0.0225G'−0.745
を満たすメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、ダウレオロジーインデックス(DRI)及びメルト弾性係数G'(G''=500Pa)
を有する、エチレンとα-オレフィンのコポリマーを含むフィルムが提供される。
特に好ましいフィルムは、>1000gのダートインパクト(25μmフィルム)、<10%の曇り及び>60%の光沢を有し、かつ前記フィルムは、
(a)0.900〜0.940g/cm3の範囲の密度、
(b)0.01〜50g/10分の範囲のメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、
(c)3.5〜4.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)、
(d)40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)、及び
(e)下記式
[DRI/MI2]>0及び[DRI/MI2]<0.0225G'−0.745
を満たすメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、ダウレオロジーインデックス(DRI)及びメルト弾性係数G'(G''=500Pa)
を有する、エチレンとα-オレフィンのコポリマーを含む。
従って、本発明の別の局面により、メタロセン触媒系を用いて調製されたフィルムであって、前記フィルムが、>1000gのダートインパクト(25μmフィルム)、<10%の曇り、>60%の光沢、及びCMGインフレーション処理ラインを用いて特定のインフレーション条件下で押し出されたときに150〜250バールの範囲の融解圧力を有するフィルムが提供される。
好ましいフィルムは、1500g>のダートインパクトがを有する当該フィルムである。
ここで、本発明を以下の実施例を参照してさらに説明する。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
触媒の調製
(a)シリカのトリエチルアルミニウム(TEA)による処理
連続撹拌下、1678Lのイソヘキサンと499kgのシリカD948(W.R. Graceから入手可能)を反応器に加えた。(シリカを前もって窒素下でか焼してヒドロキシル基のレベルを1.50mmol/gに到達させた)。次に、ペンタン中のoctastat2000(Octelから入手可能)溶液(2g/l)24.3kgを加えて混合物を15分間撹拌した。次に、イソヘキサン中12%のトリエチルアルミニウム(TEA)溶液853kgを1時間にわたってゆっくり加えて混合物を30℃でさらに1時間撹拌した。
スラリーをろ過し、イソヘキサンで徹底的に洗浄した後、乾燥機に移した。ペンタン中のoctastat2000溶液(2g/l)24.3kgを加え、最後に混合物を真空下で60℃にて乾燥させた。
固体のアルミニウム含量は3.48wt%だった。
(b)触媒成分1の調製
トルエン中[N(H)Me(C18-22H37-45)2][B(C6F5)3(p-OHC6H4)]の10.72%溶液337kgに15分にわたってイソヘキサン中12%のTEA溶液31.4kgを加えた。混合物をさらに15分間撹拌して触媒成分1の溶液を得た。
(c)(C5Me4SiMe2NtBu)Ti(η4-1,3-ペンタジエン)と1-ヘキセンの混合物の調製
ヘプタン中(C5Me4SiMe2NtBu)Ti(η4-1,3-ペンタジエン)の9.94%溶液109.5kgに83kgの1-ヘキセンを加えた。
(d)担持触媒の調製
499kgの上記調製シリカ/TEAを反応器中に導入した。
上記調製触媒成分1の溶液を45分にわたって反応器に供給してから混合物をさらに30分間撹拌した。
次に、反応器の中身を15℃に冷却し、(C5Me4SiMe2NtBu)Ti(η4-1,3-ペンタジエン)と1-ヘキセンの上記調製溶液を40分かけて供給してから混合物をさらに2.5時間撹拌した。添加中、内部温度が最高26℃に上昇した。
次に、ペンテン中のoctastat2000溶液(2g/l)57.6kgを加え、触媒中の残存溶媒含量が<1%になるまで混合物を45℃で27時間撹拌した。結果として生じた乾燥粉末の分析は、チタニウム含量46.2μmol/g、ホウ素含量48μmol/g及びアルミニウム含量2.92wt%を示した。
(実施例2)
触媒の調製は、最終混合物を60℃で15時間乾燥させたことを除き、実施例1と同様だった。
結果として生じた乾燥粉末の分析は、チタニウム含量46.6μmol/g、ホウ素含量49μmol/g及びアルミニウム含量2.92wt%を示した。
【0020】
(実施例3)
(a)シリカのTEAによる処理
連続撹拌下、1370Lのイソヘキサンと407kgのシリカD948(W.R. Graceから入手可能)を反応器に加えた。(シリカを前もって窒素下でか焼してヒドロキシル基のレベルを1.50mmol/gに到達させた)。次に、ペンタン中のoctastat2000(Octelから入手可能)溶液(2g/l)19.8kgを加えて混合物を15分間撹拌した。次に、イソヘキサン中12%のTEA溶液696kgを1時間にわたってゆっくり加えて混合物を30℃でさらに1時間撹拌した。
スラリーをろ過し、イソヘキサンで徹底的に洗浄した後、乾燥機に移した。ペンタン中のoctastat2000溶液(2g/l)19.8kgを加え、最後に混合物を真空下で60℃にて乾燥させた。
固体のアルミニウム含量は3.52wt%だった。
(b)触媒成分1の調製
トルエン中[N(H)Me(C18-22H37-45)2][B(C6F5)3(p-OHC6H4)]の9.24%溶液391kgに15分にわたってイソヘキサン中12%のTEA溶液30kgを加えた。混合物をさらに15時間撹拌して触媒成分1の溶液を得た。
(c)(C5Me4SiMe2NtBu)Ti(η4-1,3-ペンタジエン)と1-ヘキセンの混合物の調製
ヘプタン中(C5Me4SiMe2NtBu)Ti(η4-1,3-ペンタジエン)の10.55%溶液97.6kgに82.9kgの1-ヘキセンを加えた。
(d)担持触媒の調製
458kgの上記調製シリカ/TEAを反応器中に導入した。
上記調製触媒成分1の溶液を反応器に45分にわたって加えてから混合物をさらに30分間撹拌した。
次に、反応器の中身を15℃に冷却し、(C5Me4SiMe2NtBu)Ti(η4-1,3-ペンタジエン)と1-ヘキセンの上記調製溶液を40分かけて加えてから混合物をさらに1時間撹拌した。添加中、内部温度が最高21℃に上昇した。
次に、12kgのoctastat2000を加え、触媒中の残存溶媒含量が<1%になるまで混合物を45℃で27時間乾燥させた。結果として生じた乾燥粉末の分析は、チタニウム含量46.5μmol/g、ホウ素含量51μmol/g及びアルミニウム含量2.79wt%を示した。
【0021】
(実施例4)
(a)シリカのTEAによる処理
連続撹拌下、1430Lのイソヘキサンと425kgのシリカD948(W.R. Graceから入手可能)を反応器に加えた。(シリカを前もって窒素下でか焼してヒドロキシル基のレベルを1.50mmol/gに到達させた)。次に、ペンタン中のoctastat2000(Octelから入手可能)溶液(2g/l)20.7kgを加えて混合物を15分間撹拌した。次に、イソヘキサン中12%のTEA溶液727kgを1時間にわたってゆっくり加えて混合物を30℃でさらに1時間撹拌した。
スラリーをろ過し、イソヘキサンで徹底的に洗浄した後、乾燥機に移した。ペンタン中のoctastat2000溶液(2g/l)20.7kgを加え、最後に混合物を真空下で60℃にて乾燥させた。
固体のアルミニウム含量は3.45wt%だった。
(b)触媒成分1の調製
トルエン中[N(H)Me(C18-22H37-45)2][B(C6F5)3(p-OHC6H4)]の9.24%溶液333kgに15分にわたってイソヘキサン中12%のTEA溶液25kgを加えた。混合物をさらに15分間撹拌して触媒成分1の溶液を得た。
(c)(C5Me4SiMe2NtBu)Ti(η4-1,3-ペンタジエン)と1-ヘキセンの混合物の調製
ヘプタン中(C5Me4SiMe2NtBu)Ti(η4-1,3-ペンタジエン)の10.55%溶液83kgに70.6kgの1-ヘキセンを加えた。
(d)担持触媒の調製
477kgの上記調製シリカ/TEAを反応器中に導入した。
上記調製触媒成分1の溶液を45分にわたって反応器に供給してから混合物をさらに30分間撹拌した。
次に、反応器の中身を15℃に冷却し、(C5Me4SiMe2NtBu)Ti(η4-1,3-ペンタジエン)と1-ヘキセンの上記調製溶液を40分かけて供給してから混合物をさらに1時間撹拌した。添加中、内部温度が最高21℃に上昇した。
次に、12kgのoctastat2000を加え、触媒中の残存溶媒含量が<1%になるまで混合物を45℃で27時間撹拌した。結果として生じた乾燥粉末の分析は、チタニウム含量40.7μmol/g、ホウ素含量42μmol/g及びアルミニウム含量2.89wt%を示した。
【0022】
(重合)
15.8mの垂直円筒部を有する直径5mの流動床気相反応器を用いて、重合を連続的に行った。重合条件を下表1に示す。
【0023】
表1


【0024】
(生成物の特性)
生成物の特性を下表2に示す。
【0025】
表2


【0026】
(比較例)
上述したWO06/085051は、3.5〜4.5の範囲の広い分子量分布(Mw/Mn)を有する、エチレンとα-オレフィンのコポリマーコポリマーを開示した。これらのコポリマーは、40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)及び28〜45kJ/molの範囲の流れの活性化エネルギー(Ea)を示したが、低量又は中量のLCBを有した。表3は、この特許出願の実施例2〜6(比較例CE2〜CE6)で調製されたコポリマーのDRIとメルトインデックスの間の関係を報告し、これらのコポリマーがどれも本発明のコポリマーのDRI/メルトインデックス及びメルト弾性係数の関係を満たさないことを明白に示す。
【0027】
表3


【0028】
(試験方法)
ISO1133に準拠してメルトインデックス(190/2.16)を測定した。
そのメルトインデックスの押出し品を沸騰水中で30分間アニールすることを除き、ISO1872/1の方法に準拠して密度カラムを用いて密度を測定した。次に、それをさらに加熱せずに水中で60分間冷却した。2つのサンプルを取り、イソプロパノールで洗浄し、密度勾配カラムに入れた。より深く沈んだサンプルの密度の値を20分後に測定した。
(分子量分布決定のためのゲル浸透クロマトグラフィー分析)
4つのWaters HMW 6Eカラムと示差屈折率検出器を備えたWaters 150CVを用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって、長鎖分岐について未補正の見掛けの分子量分布及び関連平均を決定した。使用した溶媒は135℃の1,2,4-トリクロロベンゼン(BHTで安定化し、濃度が0.2g/リットルで、0.45μmのOsmonics Inc.の銀フィルターでろ過した)だった。160℃にて1時間で最後の30分だけ撹拌して濃度1.0g/リットルのポリマー溶液を調製した。公称注入量を400μlに設定し、公称流速を1ml/分に設定した。
13種の狭い分子量の直鎖状ポリスチレン標準物質を用いて相対較正を構築した。
【0029】

【0030】
各PS標準物質について溶出量、Vを記録した。次に、以下のMark Houwinkパラメーター:kps=1.21×10、αps=0.707、kpe=3.92×10、αpe=0.725を用いてPS分子量をPE当量に変換した。次に、一次線形方程式を用いて較正曲線MwPE=f(V)を当てはめた。WatersからのMillennium 3.2ソフトウェアを用いて全ての計算を行った。
分子量曲線の下端の積分を向上させて、これらのパラメーターの抽出及び計算の良い再現性と反復性をもたらすため、数平均分子量Mn、ひいてはポリマー多分散の計算において非常に低い分子量フラクション(1000ダルトン未満)を機械的に排除した。
(動的流体力学分析)
実質的に直鎖状のエチレンポリマーの流体力学的挙動を特徴づけるため、S Lai及びG. W. Knightは、ポリマーの「長鎖分岐の結果として正規化された緩和時間」を表す新しい流体力学の尺度、ダウレオロジーインデックス(Dow Rheology Index)(DRI)を導入した(ANTEC '93 Proceedings, Insite (TM) Technology Polyolefins (ITP)-New Rules in the Structure/Rheology Relationship of Ethylene &-Olefin Copolymers, New Orleans, La., May 1993)。S. Laiら(Antec '94, Dow Rheology Index (DRI) for Insite(TM) Technology Polyolefins (ITP): Unique structure-Processing Relationships, pp. 1814-1815)は、DRIを、ポリマー骨格中に長鎖分岐を組み入れている、ITP(Dow's Insite Technology Polyolefins)として知られるエチレン-オクテンコポリマーのレオロジーが、下記正規化方程式によって長鎖分岐(LCB)を持たないと報告されている通常の直鎖状の均一ポリオレフィンのレオロジーから外れる程度として定義した。
DRI=[365000(τ00)−1]/10
式中、τ0は該物質の特有の緩和時間であり、η0は該物質のゼロせん断粘度である。DRIは米国特許第6,114,486号に記載されているように、以下の一般化交差方程式、すなわち
η(ω)=η0/[1+(ωτ0)n]
(式中、nは該物質のべき法則指数(power law index)であり、η(ω)及びωは、それぞれ測定錯体粘度及び適用振動数データである)
を用いて、流体力学曲線(動的錯体粘度対適用振動数、例えば0.01〜100ラジアン/秒)の最小二乗適合によって計算される。
ASTM D4440に準拠し、直径25mmの平行プレートを備えた動的流動計(例えば、ARES)で、不活性雰囲気下、動的モードで動的流体力学測定を行う。全ての実験のため、190℃で少なくとも30分間流動計を熱的に安定化した後、適宜安定化した(抗酸化添加剤を用いて)、圧縮成形サンプルを平行プレート上に挿入する。次に、流動計上に記載された正の垂直力でプレートを閉じて良い接触を保証する。190℃で約5分後、プレートを軽く圧縮してプレートの周囲の余分なポリマーをトリミングする。熱的安定にさらに10分割り当て、垂直力を減らしてゼロに戻す。すなわち、サンプルを190℃で約15分間平衡化させた後に全ての測定を実施し、完全窒素ブランケット下で行う。
初めに2つのひずみ掃引(strain sweep)(SS)実験を190℃で行って、全振動数(例えば0.01〜100ラジアン/秒)範囲にわたって、変換機の低目盛の10%より高いトルクシグナルを生じさせるであろう線形粘弾性ひずみを決定する。0.1ラジアン/秒という低い振動数を適用して最初のSS実験を行う。この試験を用いて低振動数におけるトルクの感度を決定する。100ラジアン/秒という高い振動数を適用して二番目のSS実験を行う。これは、試験中に振動性流体力学測定がポリマーに構造変化を生じさせないように、選択した適用ひずみが確実に十分ポリマーの線形粘弾性領域内にあるようにするためである。さらに、選択ひずみ(SS実験で決定したとおり)で0.1ラジアン/秒という低い振動数を適用して時間掃引(time sweep)(TS)実験を行って、試験中のサンプルの安定性を点検する。
【0031】
(190℃におけるメルト弾性係数G'(G''=500Pa)の測定)
次に、上記適宜選択したひずみレベルを用いて振動数掃引(frequency sweep)実験を行ってから、このようにして測定した動的流体力学データを流動計ソフトウェア(viz., Rheometrics RHIOS V4.4又はOrchestrator Software)を用いて分析して、メルト粘性係数(G'')の一定の基準値(500Pa)におけるメルト弾性係数G'(G''=500Pa)を決定する。
(フィルムの特徴)
実施例5及び6で調製したコポリマーから厚さ25μmのインフレーションフィルムを調製した。押出し条件並びにフィルムの機械特性及び光学特性の詳細を下表5に示す。
【0032】
表5

【0033】
(押出機&押出しの特徴)
押出機:
CMG(Costruzione Meccaniche Gallia)1200 TSA
スクリュー径 55mm
スクリューL/D比 30
ダイ径/ギャップ 150/2.2mm
スクリーンパック フラット
押出し:
温度プロファイル:
スクリュー 200/210/210/210/210℃
ダイ 210/210/220/225DO℃
出力 50kg/時間
出発速度 30m/分
ブローアップ比 2.5:1
凍結線高さ 430mm
フィルム厚 15μm
ASTM D1709(方法A)によりダートインパクト、ASTM D1003により曇り、ASTM D2457により光沢、ASTM 1922により引裂き強さを測定し、ISO1084に準拠して引張り特性を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンとα-オレフィンのコポリマーであって、前記コポリマーが、
(a)0.900〜0.940g/cm3の範囲の密度、
(b)0.01〜50g/10分の範囲のメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、
(c)3.5〜4.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)、
(d)40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)、及び
(e)下記式
[DRI/MI2]>0及び[DRI/MI2]<0.0225G'−0.745
を満たすメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、ダウレオロジーインデックス(DRI)及びメルト弾性係数G'(G''=500Pa)
を有する、コポリマー。
【請求項2】
エチレンとα-オレフィンのコポリマーあって、前記コポリマーが、
(a)0.900〜0.940g/cm3の範囲の密度、
(b)0.01〜50g/10分の範囲のメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、
(c)3.5〜4.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)、
(d)40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)、及び
(e)下記式
[DRI/MI2]>0及び[DRI/MI2]<0.0197G'−0.62
を満たすメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、ダウレオロジーインデックス(DRI)及びメルト弾性係数G'(G''=500Pa)
を有する、コポリマー。
【請求項3】
エチレンとα-オレフィンのコポリマーであって、前記コポリマーが、
(a)0.900〜0.940g/cm3の範囲の密度、
(b)0.01〜50g/10分の範囲のメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、
(c)3.5〜4.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)、
(d)40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)、及び
(e)下記式
DRI>0及びDRI<0.0225G'−0.705
を満たすダウレオロジーインデックス(DRI)及びメルト弾性係数G'(G''=500Pa)
を有する、コポリマー。
【請求項4】
前記密度が0.915〜0.930g/cm3の範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記メルトインデックスが0.05〜20g/10分の範囲である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記メルト弾性係数G'(G''=500Pa)が40〜80Paの範囲である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項7】
前記α-オレフィンがC4〜C12炭素原子を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項8】
前記α-オレフィンが1-ヘキセンである、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項9】
メタロセン触媒系の存在下でエチレンとα-オレフィンを重合させる工程を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコポリマーの調製方法。
【請求項10】
前記メタロセン触媒系がモノシクロペンタジエニルメタロセン錯体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記モノシクロペンタジエニルメタロセン錯体が下記式を有する、請求項10に記載の方法。
【化1】

(式中、
R'は、各存在が独立に水素、ヒドロカルビル、シリル、ゲルミル、ハロ、シアノ、及びその組合せから選択され、前記R'は20個までの非水素原子を有し、かつ任意に、2個のR'基(ここで、R'は水素、ハロ又はシアノでない)が一緒に、シクロペンタジエニル環の隣接位置に結合したその二価誘導体を形成して、縮合環構造を形成していてもよく;
Xは、30個までの非水素原子を有し、Mとπ-錯体を形成する中性η4結合ジエン基であり、
Yは、-O-、-S-、-NR*-、-PR*-であり、
Mは、+2の形式的酸化状態のチタニウム又はジルコニウムであり、
Z*は、SiR*2、CR*2、SiR*2SIR*2、CR*2CR*2、CR*=CR*、CR*2SiR*2、又はGeR*2であり、
ここで、
R*は、各存在が独立に水素、又はヒドロカルビル、シリル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、及びその組合せから選択される基であり、
前記R*は、10個までの非水素原子を有し、かつ任意に、Z*の2個のR*基(このときR*は水素でない)、又はZ*のR*基とYのR*基が環系を形成していてもよい。)
【請求項12】
前記メタロセン触媒系が、下記式
(L*-H)+d(Ad-)
(式中、
L*は、中性ルイス塩基であり、
(L*-H)+dは、ブレンステッド酸であり、
Ad-は、電荷d-を有する非配位性の適合性アニオンであり、かつ
dは、1〜3の整数である)
で表される触媒を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が、カチオンとアニオンを含むイオン性化合物であって、前記アニオンが、活性水素を有する部分を含む少なくとも1つの置換基を有するイオン性化合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記メタロセン触媒系が担持されている、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
担体がシリカである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
気相内で行われる、請求項9〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
流動床反応器内で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記重合プロセスが凝縮モード操作で行われる、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
以下
(a)0.900〜0.940g/cm3の範囲の密度、
(b)0.01〜50g/10分の範囲のメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、
(c)3.5〜4.5の範囲の分子量分布(Mw/Mn)、
(d)40〜150Paの範囲のメルト弾性係数G'(G''=500Pa)、及び
(e)下記式
[DRI/MI2]>0及び[DRI/MI2]<0.0225G'−0.745
を満たすメルトインデックスMI2(2.16kg、190℃)、ダウレオロジーインデックス(DRI)及びメルト弾性係数G'(G''=500Pa)
を有する、エチレンとα-オレフィンのコポリマーを含むフィルム。
【請求項20】
>1000gのダートインパクト(25μmフィルム)、<10%の曇り及び>60%の光沢を有する請求項19に記載のフィルム。
【請求項21】
前記フィルムが、CMGインフレーション処理ラインを用いて特定押出しインフレーション条件下で押し出されたとき、150〜250バールの範囲の融解圧力を有する、請求項19又は20に記載のフィルム。
【請求項22】
CMGインフレーション処理ラインを用いて特定押出しインフレーション条件下で押し出されたとき、160〜190バールの範囲の融解圧力を有する、請求項21に記載のフィルム。
【請求項23】
メタロセン触媒系を用いて調製されたコポリマーを含むフィルムであって、前記フィルムが、>1000gのダートインパクト(25μmフィルム)、<10%の曇り、>60%の光沢、及びCMGインフレーション処理ラインを用いて特定押出しインフレーション条件下で押し出されたとき、150〜250バールの範囲の融解圧力を示す、フィルム。
【請求項24】
前記メタロセン触媒系がモノシクロペンタジエニルメタロセン錯体を含む、請求項23に記載のフィルム。
【請求項25】
>1500gのダートインパクトを有する、請求項23に記載のフィルム。
【請求項26】
請求項19〜25のいずれか1項に記載のインフレーションフィルム。

【公表番号】特表2010−513627(P2010−513627A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541978(P2009−541978)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063670
【国際公開番号】WO2008/074689
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(507391775)イネオス ユーロープ リミテッド (19)
【Fターム(参考)】