説明

コーティング方法および装置

本発明は、新規のコーティング装置、前記装置を使用して実行される方法、それによって得られる製品、および前記製品の使用に関する。円筒状支持体であり、それぞれ、2つの端面(301)、円周面(302)、および軸方向長さLを有し、第1の端面から第2の端面まで多数のチャネル(310)が横断する、特に自動車用の、排気ガス浄化触媒製造用基材を液体コーティング媒体でコーティングする装置であって、液体を充填され、ピストンを備えたシリンダを有する装置であって、液体を充填されたシリンダはタンクと連通し、タンクの内部では、移動体が、ピストンが移動するときに、液体により比例して移動するように構成され、タンクは、基材用のコーティング装置と連通し、移動体は、液体コーティング媒体に作用し、その結果として、コーティング装置内の液体コーティング媒体の高さが比例して変化する、装置などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
下記に基材と呼ぶセラミックまたは金属ハニカム構造体/フィルタの、液体コーティング媒体を用いたコーティング中には様々な問題が発生する。
【背景技術】
【0002】
基材をコーティングするために可能なことの1つとして、基材の片側の開口を、利用できるコーティング媒体と接触させ、基材の反対側を減圧することにより、液体コーティング媒体を基材のチャネルを通じて引き込むものがある。チャネルをチャネルの長さの一部だけに沿ってコーティングすることを意図する場合、発生する不可避の流動分布のために、異なるチャネルが異なる長さにわたってコーティングされることは不都合である。
【0003】
コーティング媒体が、重力に抗する圧力によってチャネルに押し込まれる場合、チャネル全体をコーティングする事例において、液体が上部にいつ出現するかを(通常はセンサによって)チェックする必要がある。チャネルの長さの一部にわたってコーティングする場合、チャネル内のコーティング媒体の液柱高さがセンサによって測定される。しかし、この方法は、基材が、金属または炭化ケイ素などの導電性または半導電性材料で構成される場合に機能しない。
【0004】
別の欠点は、コーティング媒体は通常セラミック粒子を含有しており、このセラミック粒子には研磨作用があり、その結果として、コーティング媒体を移送するポンプ(例えば、ピストンポンプ)において深刻な摩耗が生じることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、先行技術の上記の欠点がない、基材をコーティングする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、液体(103、203)を充填され、ピストン(101、201)を備えたシリンダ(102、202)を有する、基材を液体コーティング媒体(113、213)でコーティングする装置によって達成され、液体を充填されたシリンダ(102、202)は、タンク(112、212)と連通し、タンクの内部では、移動体(111、211)が、ピストン(101、201)が移動するときに、液体(103、203)により比例して移動するように構成され、タンク(112、212)は、基材(121、221)用のコーティング装置(122、222)と連通し、移動体(111、211)は、液体コーティング媒体(113、213)に作用し、その結果として、コーティング装置(122、222)内の液体コーティング媒体(113、213)の高さが比例して変化する。
【0007】
1.円筒状支持体であり、それぞれ、2つの端面(301)、円周面(302)、および軸方向長さLを有し、第1の端面から第2の端面まで多数のチャネル(310)が横断する、特に自動車用の、排気ガス浄化触媒製造用基材を液体コーティング媒体でコーティングする装置であって、液体を充填され、ピストンを備えたシリンダを有する装置であって、液体を充填されたシリンダはタンクと連通し、タンクの内部では、移動体が、ピストンが移動するときに、液体により比例して移動するように構成され、タンクは、基材用のコーティング装置と連通し、移動体は、液体コーティング媒体に作用し、その結果として、コーティング装置内の液体コーティング媒体の高さが比例して変化する、装置。
【0008】
2.1項に記載の装置であって、ピストンは電気アクチュエータにより移動する装置。
【0009】
3.1項または2項に記載の装置であって、液体は移動体の内側に配置され、液体コーティング媒体は外側に配置され、移動体の閉じた外側がコーティング媒体に作用する装置。
【0010】
4.1項または2項に記載の装置であって、液体は移動体の外側に配置され、液体コーティング媒体は内側に配置され、移動体の閉じた内側がコーティング媒体に作用する。
【0011】
5.1項〜3項の1つまたは複数に記載の装置であって、コーティング装置は液体コーティング媒体の高さに反応し制御ユニットに接続されたセンサを取り付けられ、制御ユニットは、ピストンの動作を観測し、ピストンの動作を観測するために、センサから送られた信号を処理し、それにより、液体媒体の利用可能な量にかかわらず、コーティング装置内の高さを確実に再現可能にする装置。
【0012】
6.1項〜5項の1つまたは複数に記載の装置であって、移動体の位置を観測するためのセンサを有する装置。
【0013】
7.1項〜6項の1つまたは複数に記載の装置であって、基材内の液体コーティング媒体の液体高さを観測するためのセンサを有する装置。
【0014】
8.基材をコーティングする方法はであって、以下のステップ、すなわち、
−基材を用意するステップと、
−1項〜7項の1つに記載の装置を用意するステップと、
−基材をコーティング装置に配置するステップと、
−ピストンの移動を開始し、その結果として、ピストンによって移動した液体が、移動した液体体積量に比例して移動体を移動させるステップと、
−移動体をコーティング媒体に作用させ、移動体の移動に比例した体積のコーティング媒体が移動し、コーティング装置内のコーティング媒体の高さが相応して上昇するステップと、
−コーティング媒体を基材のチャネルに所望の充填レベルまで、または移動したコーティング媒体の体積に比例するチャネルのコーティング長さまで浸透させるステップと、
−チャネル内にコーティングを形成して、基材のチャネルからコーティング媒体を除去するステップと、
を含む方法。
【0015】
9.8項に記載の基材をコーティングする方法は、以下のステップ、すなわち、
−基材を用意するステップと、
−1項〜7項の1つに記載の装置を用意するステップと、
−基材をコーティング装置に配置するステップと、
−ピストンの移動を開始し、その結果として、ピストンによって移動した液体が、移動した液体体積量に比例して移動体を移動させるステップと、
−移動体をコーティング媒体に作用させ、移動体の移動に比例した体積のコーティング媒体が移動し、コーティング装置内のコーティング媒体の高さが、コーティング媒体の第1の高さまで相応して上昇するステップと、
−コーティング媒体が第1の高さに達したことを検出するステップと、
−ピストンを新たに始動させるか、または引き続き移動させ、その結果として、ピストンによって移動した液体が、移動した液体体積量に比例して移動体を移動させるステップと、
−移動体をコーティング媒体に作用させ、移動体の移動に比例した体積のコーティング媒体が移動し、コーティング装置内のコーティング媒体の高さが、コーティング媒体の第2の高さまで相応して上昇し、その結果として、コーティング媒体が基材のチャネルに所望の充填高さまで、または移動したコーティング媒体の体積に比例するチャネルのコーティング長さまで浸透するステップと、
−チャネル内にコーティングを形成して、基材のチャネルからコーティング媒体を除去するステップと、
を含む方法。
【0016】
10.9項に記載の方法であって、コーティング媒体の第2の高さは基材の範囲内である方法。
【0017】
11.8項〜10項の1つまたは複数に記載の方法であって、濡れた、または酸性、アルカリ性溶液、もしくは食塩水を含浸した基材がコーティング装置に配置される方法。
【0018】
12.8項〜11項の1つまたは複数に記載の方法であって、コーティング媒体は、基材の下側端面を減圧することで除去される方法。
【0019】
13.自動車用の排気ガスフィルタ製造用コーティング基材であって、チャネルには、内部に少なくとも1つの触媒活性コーティングが形成され、チャネルのコーティング長さは、軸方向長さL未満であり、基材のチャネルの少なくとも95%については、チャネルのコーティング長さは、5mm以下、好ましくは3mm以下だけ異なる基材。
【0020】
14.13項に記載のコーティング基材であって、40%〜75%の多孔率を有する基材。
【0021】
15.13項または14項に記載のコーティング基材であって、7μmを超える平均細孔径を有する基材。
【0022】
16.13項〜15項の1つに記載のコーティング基材であって、0.002インチ〜0.1インチの壁厚さを有する基材。
【0023】
17.13項〜16項の1つに記載のコーティング基材であって、100〜400セル/平方インチのセル密度を有するコーティング基材。
【0024】
18.13項〜17項の1つに記載のコーティング基材であって、チャネルには、内部に少なくとも、1つの第1の触媒活性コーティングと1つの第2の触媒活性コーティングとが形成され、第1の触媒活性コーティングおよび第2の触媒活性コーティングでコーティングされたチャネル長さは、いずれの場合も、基材の軸方向長さL未満であり、基材のチャネルの少なくとも95%については、第1の触媒活性コーティングおよび第2の触媒活性コーティングでコーティングされたチャネル長さは、それぞれ互いに5mm以下、好ましくは3mm以下だけ異なり、2つのコーティング間の間隔は、基材のチャネルの少なくとも95%については、5mm以下、有利には3mm以下、特に、1mm以下であるコーティング基材。
【0025】
19.18項に記載のコーティング基材であって、第1のコーティングはSCR触媒であり、第2のコーティングは酸化触媒であるコーティング基材。
【0026】
20.19項に記載のコーティング基材であって、酸化触媒は、プラチナ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、金、イリジウム、またはそれらの混合物などの、元素周期律表のVIII族の貴金属であるコーティング基材。
【0027】
21.20項に記載のコーティング基材であって、酸化触媒は、多孔質の固体支持体、好ましくは、酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素などの多孔質無機酸化物に加えられるコーティング基材。
【0028】
22.19項に記載のコーティング基材であって、SCR触媒は、二酸化チタン、五酸化バナジウム、三酸化タングステン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、またはそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含有するコーティング基材。
【0029】
23.22項に記載のコーティング基材であって、SCR触媒は、母材としての二酸化チタンと、最大で10重量%の五酸化バナジウムと、最大で20重量%の三酸化タングステンとを含有するコーティング基材。
【0030】
24.19項〜23項の1つに記載のコーティング基材であって、第1のコーティングは、五酸化バナジウムおよび酸化アルミニウムを含有するSCR触媒であり、第2のコーティングは、プラチナ、金、パラジウム、および酸化アルミニウムを含有する酸化触媒であるコーティング基材。
【0031】
25.19項〜23項の1つに記載のコーティング基材であって、第1のコーティングは、二酸化チタン、五酸化バナジウム、および三酸化タングステンを含有するSCR触媒であり、第2のコーティングは、プラチナおよび酸化アルミニウムを含有する酸化触媒であるコーティング基材。
【0032】
26.19項〜21項の1つに記載のコーティング基材であって、第1のコーティングは、ゼオライトの組成物、特に、鉄または銅で置換したゼオライトを含有するSCR触媒であり、第2のコーティングは、プラチナおよび酸化アルミニウムを含有する酸化触媒であるコーティング基材。
【0033】
27.19項〜21項の1つに記載のコーティング基材であって、第1のコーティングは、鉄で置換され、アンモニア貯蔵能力が触媒材料1グラム当たり少なくともアンモニア20ミリリットルであるβゼオライトを含有するSCR触媒であり、第2のコーティングは、プラチナおよび酸化アルミニウムを含有する酸化触媒であるコーティング基材。
【0034】
28.19項〜21項の1つに記載のコーティング基材であって、第1のコーティングは、ゼオライトの組成物、特に、鉄または銅で置換したゼオライトを含有するSCR触媒であり、第2のコーティングは、パラジウムおよび/またはロジウム、さらには酸化アルミニウムを含有する酸化触媒であるコーティング基材。
【0035】
29.自動車用の排気ガスフィルタを製造するための、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法の、1項〜7項の1つまたは複数に記載の装置の使用。
【0036】
30.窒素酸化物および/または炭化水素および/または粒子を含有する排気ガス流を浄化する方法であって、13項〜28項の1つに記載のコーティング基材を含む方法。
【0037】
31.窒素酸化物および/または炭化水素および/または粒子を含有する排気ガス流を浄化する装置であって、13項〜28項の1つに記載のコーティング基材を有する装置。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】基材(121)内のチャネル(110)をコーティングするための本発明の装置を示している。
【図2】基材(221)内のチャネル(210)をコーティングするための本発明の装置を示している。
【図3】本発明によるコーティング構造の内部を見ることを可能にするために、中央部分に3つの平面に破断された部分を有する基材(300)を斜視図で示している。
【図4】基材をコーティングする方法の流れ図を示している。
【図5】基材をコーティングする方法の流れ図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ピストン(101、201)は、有利には、電気アクチュエータ(100、200)により移動する。このために、例えば、ギヤホイールの付いた電気モータを使用して、ラックの付いたピストンを移動させることが可能である。
【0040】
基材(121、221)は通常、金属またはセラミックで構成された中空の基材であり、少なくとも1つの内側チャネル(110、210、310)、通常は多数の内側チャネルを有する。基材は通常、それぞれが、円筒軸、2つの端面、円周面、および軸方向長さLを有する略円筒形の支持体であり、第1の端面から第2の端面まで多数のチャネルが横断する。そのような支持体は、ハニカム構造体と呼ばれることも多い。特に、基材は、約10個/平方センチ〜250個/平方センチの高いセル密度(断面積当たりの内側チャネルの数量)を有することができる貫通流ハニカム構造体とすることができるが、壁面流フィルタとすることもできる。基材は、例えば、菫青石、ムライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、または鋼もしくはステンレス鋼などの金属で構成することができる。基材は、有利には、一体構造の円筒形触媒支持体であり、内燃機関からの排気ガス用の、円筒軸に平行な多数の流れチャネルが横断する。そのような一体構造の触媒支持体は、自動車の排気ガス触媒を製造するために大量に使用されている。触媒支持体の断面形状は、自動車の設置要件によって決まる。丸い断面、だ円形または三角形断面の触媒本体が幅広く使用されている。流れチャネルは通常、正方形断面を有し、触媒本体の断面全体にわたってわずかに離間したパターンで配置されている。流れチャネルのチャネルまたはセル密度は通常、用途に応じて10〜250個/平方センチの範囲で変わる。自動車の排気ガス浄化の場合、セル密度が約62個/平方センチの触媒支持体が、現今でもまだ頻繁に使用されている。基材は、有利には、液体密封した態様でコーティング装置に配置されており、少なくとも1つのシールを用いて液体密封することが可能である。シールは中空とすることができ、コーティング装置に取り付けられる、または挿入されるときに、ガスまたは液体を充填することができ、漏れのない覆いを形成することができる。接合部の漏れ防止性は、圧力または流れセンサを用いてチェックすることができる。
【0041】
移動体(111、211)は、適切な圧力作用を通じて膨張し、再度収縮する中空体であり、ゴム、プラスチック、または金属などの任意の可撓性材料から製造することができるが、材料は、液体(103、203)および液体媒体(113、213)に対して不活性でなければならない。
【0042】
液体は、任意の特定の要件を満たす必要はないが、腐食および研磨作用を有してはならず、使用条件下でその特性が変化してはならない。例えば、油圧オイルまたは水が適切である。
【0043】
液体コーティング媒体(113、213)は、例えば、触媒活性成分またはその前駆体と、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、またはそれらの組み合わせなどの無機酸化物とを含有する、自動車用の排気ガスフィルタをコーティングするための懸濁液または分散液(「ウォッシュコート」)であり、酸化物に、例えば、シリコンまたはランタンを添加することが可能である。バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ニッケル、またはランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、もしくはそれらの組み合わせなどの希土類金属の酸化物は、触媒活性成分として使用することができる。プラチナ、パラジウム、金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、およびそれらの組み合わせなどの貴金属も、触媒活性成分として使用することができる。これらの金属はまた、互いに、もしくは他の金属とともに合金として、または酸化物として存在することができる。金属は、前記貴金属の硝酸塩、亜硫酸塩、またはオルガニルなどの前駆体としても存在することができ、特に、硝酸パラジウム、亜硫酸パラジウム、硝酸プラチナ、亜硫酸プラチナ、またはPt(NH(NOを液体コーティング媒体内に使用することができる。この場合に、約400℃〜約700℃でか焼することで、前駆体から触媒活性成分を得ることができる。自動車の排気ガス触媒製造用基材をコーティングするために、無機酸化物の懸濁液または分散液をコーティング用に最初に使用することができ、その後、次のコーティングステップで、1つまたは複数の触媒活性成分を含有する懸濁液または分散液を加えることができる。ただし、液体コーティング媒体が、これらの成分をともに含有することも可能である。液体コーティング媒体は、多くの場合、35%〜52%の固形物量と、15cps〜300cpsの粘度とを有する。
【0044】
移動体(111、211)の幾何形状は、タンク(112、212)の内部形状に合致させることができるが、これは、絶対的に必須のものではない。こうして、一方で、長方形または円形のベース部領域を備えたベローズを、合致する内部形状のタンク内で使用することができ、したがって、ベローズは、液体コーティング媒体(113、213)に作用する、油圧で膨張可能なスタンプのように機能することができる。タンクの内部幾何形状に特に適応することなく、液体コーティング媒体(113、213)に作用する球状ゴム袋として移動体(111、211)を設計することも同様に可能である。移動体(111、211)は、タンクをほぼ完全に埋めることができるが、これは、移動体(111、211)が、コーティング装置(122、222)とコーティングされる基材(121、221)の容量とを液体コーティング媒体で満たすのに十分に大きい限り、絶対的に必要なものではない。タンクがシリンダ(102、202)およびコーティング装置(122、222)と連通するための開口は別として、タンク(112、212)は密封される、すなわち、周囲に対して閉鎖されることが可能でなければならない。一方、タンク(112、212)が、液体コーティング媒体(113)または液体(203)用の入口を有し、有利には、保守および清浄目的で開放され得る、または分解され得るならば、それは有利である。
【0045】
シリンダ(102、202)は、さまざまな方法でタンク(112、212)と連通することができる。一方で、液体は、移動体(111)の内側に配置することができ、液体コーティング媒体(113)は、タンク(112)内で移動体(111)の外側に配置することができ、その結果として、移動体(111)の閉じた外側が液体コーティング媒体(113)に作用する。この場合に、タンク内に圧力が発生し、この圧力により、液体媒体(113)は、開口を通ってタンクを出て、導管(114)を介してコーティング装置(122)に搬送される。
【0046】
本発明の別の実施形態では、液体(203)は、タンク(212)内で移動体(211)の外側に配置することができ、液体コーティング媒体(213)は、移動体(211)の内側に配置することができ、その結果として、移動体(211)の閉じた内側が液体コーティング媒体(213)に作用し、液体コーティング媒体(213)は、開口を通ってタンク(212)を出て、導管(214)を介してコーティング装置(222)に搬送される。
【0047】
本発明の別の実施形態では、コーティング装置(122、222)は、液体コーティング媒体(113、213)の高さに反応するセンサ(123、223)を取り付けられる。
【0048】
適切な使用可能センサとして、液体高さが上昇したときに、屈折率の変化に反応する屈折率センサ、伝導度センサ、または単なる光電バリアがある。
【0049】
これらのセンサが、ピストン(101、201)の移動を観測し、ピストンの移動を観測するために、センサ(123、223)から送られた信号を処理し、それにより、液体コーティング媒体(113、213)の量にかかわらず、コーティング装置(122、222)内の液体コーティング媒体(113、213)の高さを確実に再現可能にすることができる制御ユニット(115、215)に接続されるならば、それは有利である。複数の基材(121、221)が順次コーティングされる場合、装置内の液体コーティング媒体(113、213)の量は、各コーティング作業とともに連続して減少し、その結果として、プロセスパラメータが同じ場合、コーティング装置(122、222)内の液体高さは下がる。センサ(123、223)の使用によって、この結果を補償し、さらなる液体コーティング媒体を追加した場合でさえ、確実に液体高さを一定にすることが可能である。センサからの信号を処理し、ピストン(101、201)、または、ピストンを駆動するのに使用される、好ましくは、電動アクチュエータ(100、200)を制御する適切な制御ユニット(125、225)の使用によって、コーティング装置(122、222)内の液体コーティング媒体(113、213)の特定の高さ(130、230)を自動的に合わせることができる。
【0050】
さらに、本発明による装置は、移動体の位置を観測するためのセンサを有することができる。このために、例えば、移動体の膨張または位置を観測する光電バリア(124、224)、超音波センサ、または機械式センサ(例えば、トグルスイッチ)を使用することができる。移動体に漏れがある場合、移動体は、もはやその始動位置に完全には戻らないか、または最大限に膨張しないので、この手段によって漏れを検出することができる。この場合に、この種のセンサは、そのような事象を示す。
【0051】
さらに、本発明による装置は、基材(121、221)内の液体コーティング媒体の液体高さ(123、232)を観測するためのセンサを有することができる。こうして、基材が、所望の基材長さにわたってコーティングされたときに、液体コーティング媒体の基材への供給を中断することができる。しかし、当然ながら、基材の内部容量が既知の場合に、この観測が行われる必要がもはやないことが、本発明による装置の1つの利点であることから、そのようなセンサが常に必要なわけではない。ただし、この種のセンサが、装置を校正するために存在する場合、それは有利であり得る。
【0052】
本発明はまた、特に自動車用の、排気ガスフィルタまたは排気ガス浄化触媒製造用コーティング基材に関し、コーティング基材において、チャネルには、内部に触媒活性コーティングが形成され、チャネルのコーティング長さは、軸方向長さL未満であり、基材のチャネルの少なくとも95%については、チャネルのコーティング長さは5mm以下、好ましくは3mm以下だけ異なる。本発明に従った趣旨内の排気ガスフィルタは、排気ガスの機械的清浄(例えば、すすの除去)ではなくて化学的な清浄のみを行う貫通流ハニカム構造体か、または、例えば、排気ガスが流れチャネルの多孔質壁を通り抜け、それによって、排気ガスの化学的および機械的清浄を両方行う壁面流フィルタのいずれかから製造することができる。
【0053】
基材のチャネルは、多くの場合、軸方向長さL全体にわたってではなくて、上記のように、長さの一部にわたってのみコーティングされる。この場合に、できれば、チャネルが内部をコーティングされる長さが、すべてのチャネルで実質的に同じならば、それは有利である。本発明による装置を用いて、基材のチャネルを内部コーティングした後、次いで、これらの基材は乾燥され、少なくとも1つの熱処理を受ける。
【0054】
自動車用の排気ガスフィルタの製造に適した、完成した基材は、特に均一なコーティングを有し、このコーティングは、異なるチャネルのコーティング長さが、5mm以下、特に、3mm以下だけ互いに異なり、これは、基材のすべてのチャネルの少なくとも95%、有利には、基材のすべてのチャネルの少なくとも99%、特に、すべてのチャネルの100%に当てはまることを特徴とする。欠陥とは、基材の一部のチャネルの流れおよび圧力状態が、他のチャネルと大きく異なり、その結果として、コーティング条件下で、液体コーティング媒体が、かなりの困難を伴って浸透するか、またはかなり容易に浸透し、個々のチャネルのより短い長さか、またはより長い長さのいずれかにわたって堆積することを意味することがある。これらの場合に、所望する均一なコーティング長さは、チャネルの一部についてのみ達成できるが、これは、通常、すべてのチャネルの95%を超える。
【0055】
本発明はまた、本発明の装置を用いて行われる、基材をコーティングする方法に関する。
【0056】
基材をコーティングするこの方法は、以下のステップ、すなわち、
−基材を用意するステップと、
−本発明による装置を用意するステップと、
−基材をコーティング装置に配置するステップと、
−ピストンの移動を開始し、その結果として、ピストンによって移動した液体が、移動した液体体積量に比例して移動体を移動させるステップと、
−移動体をコーティング媒体に作用させ、移動体の移動に比例した体積のコーティング媒体が移動し、コーティング装置内のコーティング媒体の高さが相応して上昇するステップと、
−コーティング媒体を基材のチャネルに所望の充填高さまで、またはコーティング媒体の移動した体積に比例するチャネルのコーティング長さまで浸透させるステップと、
−チャネル内にコーティングを形成して、基材のチャネルからコーティング媒体を除去するステップと、
を含む。
【0057】
コーティング媒体は、コーティング媒体の基材への供給を中断した後、圧力勾配をかけることで基材のチャネルから除去され、それによって、余分なコーティング懸濁液を除去する。
【0058】
本発明によれば、除去は、ピストン(101、201)を後退させことで行うことができ、その理由は、後退させることで、コーティング装置(122、222)および基材(121、221)内のコーティング媒体の高さが下がるからであり、こうして、圧力勾配を生じさせ、基材のチャネルから余分なコーティング媒体を除去する。ただし、コーティング媒体は、公知の先行技術の方法で除去することもでき、これについては下記に説明される。
【0059】
例として、これは、下側端面を減圧することで、例えば、減圧された真空貯蔵器につながる弁を開けることで行うことができる。同時に、空気、またはコーティング基材およびコーティング懸濁液に対して不活性である窒素などの他のガスを、加圧することなく、基材の上側端面から上側端面に供給することができる。真空貯蔵器内の圧力は下がるので、したがって、基材のチャネル内のガスの流量も減少する。この種の手順については、参照される欧州特許出願公開第A1−941763号明細書の4ページ、56行〜5ページ、36行に記載されている。
【0060】
一方、手順は逆にすることもでき、上側端面を減圧し、基材の下側端面にガスを供給する。米国特許第7094728号明細書によれば、さらに、この供給を1回または複数回変える、すなわち、逆にすることも可能であり、基材のチャネルのコーティングがより均一になる。
【0061】
減圧する(「吸引により基材を空にする、またはあける」)代わりに、超過圧力を加える(基材に「吹きつける」)ことも可能である。このために、空気、またはコーティング基材およびコーティング懸濁液に対して不活性である窒素などの他のガスが、圧力をかけられて上側端面または下側端面に供給される。このプロセス中に、ガス圧を受ける端面の反対側にある端面により、十分な量のガスが流出できることが保証されなければならない。このために、減圧することも可能であるが、これは、絶対的に必須のものではない。しかし、また、基材のチャネルから余分なコーティング懸濁液を除去するのに十分なガス流量を保証するためには、ガス圧または液体圧を両側から加えてはならない。この場合も、上記に簡単に説明した米国特許第7094728号明細書による方法と同様に、上側端面および下側端面から交互に超過圧力を供給することができる。
【0062】
余分なコーティング懸濁液を除去した後、適切な場合、基材は乾燥され、熱処理を受ける(か焼される)。
【0063】
熱処理の前に、基材を乾燥させることができる。基材は、いずれにせよ、次の熱処理時に乾燥されるので、この対策は任意選択的である。
【0064】
このために、コーティング装置から取り外した後、5秒〜20秒にわたって、4m/秒、好ましくは、7m/秒〜10m/秒を超える速度で流れる、20℃〜150℃の温度の予熱空気流を、例えば、重力に逆らって下方から基材のチャネルに通すことができる。熱処理(か焼)の前に、この種の予備乾燥を用いて、非常に高い給気速度においてしばしば見られる、基材の下端での流れチャネルの詰まり、またはチャネルの狭小化を回避することができる。このさらなる対策により、乾燥およびか焼プロセス時に流れチャネルが閉塞したり、または狭小化したりすることなく、基板に通常よりも多い量のコーティングを充填することが可能になる。したがって、この対策により、コーティング分散液の基材上での集中を高めることができる。
【0065】
熱処理は通常、約150℃〜800℃の温度で、特に、約200℃〜700℃で、有利には、約250℃〜約600℃で行われる。熱処理の時間は、約10℃/分〜約50℃/分、特に、約20℃/分〜約40℃/分、有利には、約35℃/分〜約45℃/分の加熱速度で、約1時間〜5時間、有利には、2時間〜3時間であり、加熱速度は炉の温度に関係する。バッチ式の熱処理の場合、加熱速度は、適切に制御された炉の加熱によって、または、連続プロセスでは、特定の温度分布で稼働されるトンネル炉を通る基材の送り速度を制御することによって達成することができる。
【0066】
本発明の方法の一実施形態では、基材は、コーティング装置に配置される前に濡らされる。乾燥状態では、基材はかなりの液体吸収能力を有する。特に、120個/平方センチ以上のセル密度を有する多孔性の高い基材をコーティングする場合、これは、充填プロセス時でさえ、コーティング媒体の凝固および流れチャネルの閉塞をもたらすことがある。したがって、コーティングの前に基材を濡らすことは有利である。これは、酸性溶液、塩基性溶液、または食塩水を用いた予備含浸で済ませることができる。予備含浸は、ゾルゲル法によりチャネル壁上でのコーティングの形成を容易にする。コーティング分散液と予備含浸したチャネル壁との間の接触により、分散液のpHがシフトする。それによって、分散液はゲルに変換される。
【0067】
本発明の方法の別の実施形態では、移動体は、コーティング装置内のコーティング媒体の第1の高さが得られるまで、移動体の移動に比例した体積のコーティング媒体が移動し、コーティング装置内のコーティング媒体の高さが相応して上昇するようにコーティング媒体に作用する。この第1の高さは、コーティング装置内の液体高さが、基材に対する各コーティング作業の開始前と常に同じであり、したがって、液体コーティング媒体の量が減少しても、チャネルのコーティング長さを再現することができるように設定されている。第1の高さに到達したことは、センサ(123、223)から発せられた信号を用いて検出することができる。
【0068】
コーティング媒体が第1の高さに達した後、基材をコーティングするのに必要とされる量(すなわち、基材のチャネルの内側をチャネルの所望するコーティング長さまでコーティングするのに必要とされる量)のコーティング媒体が、チャネル内に導入される。このために、移動体は、コーティング装置内のコーティング媒体の第2の高さが得られるまで、移動体の移動に比例した体積のコーティング媒体が移動し、コーティング装置内のコーティング媒体の高さが相応して上昇するように、すなわち、コーティング媒体が、所望の充填高さまで、または移動した体積に比例したチャネルのコーティング長さまで、基材のチャネル内に浸透するようにコーティング媒体に作用する。第2の高さに到達したことは、センサを用いて検出することができる。コーティング媒体の第1の高さは、コーティング装置(122、222)の範囲内であるが、コーティング媒体の第2の高さは、基材(121、221)の範囲内であるか、または基材(121、221)の上側端面と少なくとも同じ高さであるが、好ましくはそれを超えるかのいずれかである。第2の高さが基材の範囲内の場合、基材の軸方向長さL未満である基材のコーティング長さが得られる。コーティング媒体の第2の高さが、基材(121、221)の上側端面と同じ高さであるがそれを超えるのが好ましい場合、基材のチャネルの内側は、軸方向長さL全体にわたってコーティングされる。
【0069】
第2の高さがセンサによって観測されるが、校正目的でのみ、すなわち、装置の制御用パラメータを設定する目的でのみ観測される場合、それは有利である。これらのパラメータが分かっていると、同種の基材は、各コーティング作業において、センサを用いて第2の高さを観測することなく、同じパラメータを使用して再現可能にコーティングすることができる。
【0070】
次いで、チャネル内にコーティングを形成して、(余分な)コーティング媒体が基材のチャネルから除去される。次いで、上記のように、適切な場合、得られた基材は乾燥され、熱処理を受ける。
【0071】
したがって、本発明はまた、基材をコーティングする方法に関し、その方法は、以下のステップ、すなわち、
−基材を用意するステップと、
−本発明による装置を用意するステップと、
−基材をコーティング装置に配置するステップと、
−ピストンの移動を開始し、その結果として、ピストンによって移動した液体が、移動した液体体積量に比例して移動体を移動させるステップと、
−移動体をコーティング媒体に作用させ、移動体の移動に比例した体積のコーティング媒体が移動し、コーティング装置内のコーティング媒体の高さが、コーティング媒体の第1の高さまで相応して上昇するステップと、
−コーティング媒体が第1の高さに達したことを検出するステップと、
−ピストンを新たに始動させるか、または引き続き移動させ、その結果として、ピストンによって移動した液体が、移動した液体体積量に比例して移動体を移動させるステップと、
−移動体をコーティング媒体に作用させ、移動体の移動に比例した体積のコーティング媒体が移動し、コーティング装置内のコーティング媒体の高さが、コーティング媒体の第2の高さまで相応して上昇し、その結果として、コーティング媒体が基材のチャネルに所望の充填高さまで、またはコーティング媒体の移動した体積に比例するチャネルのコーティング長さまで浸透するステップと、
−チャネル内にコーティングを形成して、基材のチャネルからコーティング媒体を除去するステップと、
を含む。
【0072】
こうして、本発明は、基材内のコーティング長さの偏差がほとんどない、基材のチャネルの再現可能なコーティング長さを可能にし、高い研磨作用を有するコーティング媒体の場合でさえ、わずかな摩耗しか示さないコーティング用の装置を利用可能にする。
【0073】
自動車用の排気ガスフィルタの製造に適した、完成した基材(すなわち、コーティングされ、熱処理またはか焼された基材)は、特に均一なコーティングを有し、このコーティングは、異なるチャネルのコーティング長さが、5mm以下、特に、3mm以下だけ互いに異なり、これは、基材のすべてのチャネルの少なくとも95%、有利には、基材のすべてのチャネルの少なくとも99%、特に、すべてのチャネルの100%に当てはまることを特徴とする。欠陥とは、基材の一部のチャネルの流れおよび圧力状態が、他のチャネルと異なり、その結果として、コーティング条件下で、液体コーティング媒体が、かなりの困難を伴って浸透するか、またはかなり容易に浸透し、個々のチャネルのより短い長さか、またはより長い長さのいずれかにわたって堆積することを意味することがある。これらの場合に、所望する均一なコーティング長さは、チャネルの一部についてのみ達成できるが、これは、通常、すべてのチャネルの95%を超える。この場合に、チャネルのコーティング長さは、軸方向長さL未満である。均一なコーティング長さは、それぞれの基材の互いに反対の端部から2つのコーティングを導入することをこの方法で可能にするという利点を有する。これらのコーティングが異なっており、(例えば、コーティング成分が望ましくない形で互いに反応する、またはその反応で互いを害するために)互いから離さなければならない場合、2つのコーティング間で、間隔が維持され、確実に保証されなければならない。この方法において、コーティングされない、したがって、機能しないままである、コーティング間の間隔に対しては、基材のうちの短い長さだけを使用せざるを得ないので、コーティング長さを可能な限り正確に、かつ確実に合わせることができるならば、この場合に、それは有利である。それにより、排気ガス浄化を改善する、または基材へのコーティングの充填を減らすことが可能である。
【0074】
したがって、チャネルには、内部に少なくとも、1つの第1の触媒活性コーティングと1つの第2の触媒活性コーティングとが形成され、第1の触媒活性コーティングおよび第2の触媒活性コーティングでコーティングされたチャネル長さは、いずれの場合も、基材の軸方向長さL未満であり、基材のチャネルの少なくとも95%については、第1の触媒活性コーティングおよび第2の触媒活性コーティングでコーティングされたチャネル長さは、それぞれ互いに5mm以下、好ましくは3mm以下だけ異なり、2つのコーティング間の間隔は、基材のチャネルの少なくとも95%については、5mm以下、有利には、3mm以下、特に、1mm以下である、自動車用の排気ガスフィルタ製造用コーティング基材を得るために、本発明の装置および方法を使用することが、特に有利な形で可能である。
【0075】
図3Aおよび図3Bは、この種のコーティング基材(300)を示している。基材は、2つの端面(301)、円周面(302)、および長さ(L)を有し、端面間を多数のチャネル(310)が横断する。この場合に、チャネルには、2つの領域を形成する、図3Aに太線で示した、第1の部分長さ(303)にわたる第1のコーティング(330)と、さらなる部分長さ(305)にわたる第2のコーティング(340)とが形成され、2つの領域には、それぞれ第1および第2のコーティングが形成される。2つの領域(303、305)間の間隔(304)は、最小限であるのが好ましく、それには、オーバラップを回避するために、可能な限り均一なコーティング長さが両方の領域(303、305)で必要である。本発明によれば、このコーティングのない間隔(304)は、5mm以下、有利には、3mm以下、特に、1mm以下である。この図3Aでは、円形端面を有する基材(300)が示されている。もちろん、端面が長方形、正方形、だ円形、三角形、六角形、または他の多角形形状を有することも可能であり、結果として、基材の対応する様々な3次元形状、例えば、角柱または直方体などが得られる。
【0076】
第1のコーティング(330)および第2のコーティング(340)を形成された部分長さは、同じとすることも、または異なるものとすることもできる。
【0077】
第1および第2のコーティングには、有利には様々なタイプがある。本発明の一実施形態では、コーティングの少なくとも1つは、酸化触媒またはSCR触媒である。本発明の特に有利な実施形態では、第1のコーティング(330)はSCR触媒であり、第2のコーティング(340)は酸化触媒である。
【0078】
酸化触媒が、有利には、多孔質の固体支持体、通常は、酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素などの多孔質無機酸化物上にあって、プラチナ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、金、イリジウム、またはそれらの混合物などの、元素周期律表のVIII族の貴金属を含有するならば、それは有利である。支持体としての多孔質酸化アルミニウム上にプラチナがあると特に有利である。コーティング基材上のこのコーティングは、通常、0.1〜10g/ftのプラチナを含有する。
【0079】
本発明の特定の実施形態では、SCR触媒は、二酸化チタン、五酸化バナジウム、三酸化タングステン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、またはそれらの混合物からなる群から選択される酸化物を含有する。
【0080】
本発明の別の特定の実施形態では、SCR触媒は、母材としての二酸化チタンと、最大で10重量%の五酸化バナジウムと、最大で20重量%の三酸化タングステンとを含有する。
【0081】
本発明の別の特定の実施形態では、第1のコーティングは、五酸化バナジウムおよび酸化アルミニウムを含有するSCR触媒を含み、第2のコーティングは、プラチナ、金、パラジウム、および酸化アルミニウムを含有する酸化触媒を含む。この場合に、第2のコーティングは、0.1〜10g/ftのプラチナ、金、またはそれらの組み合わせを含有するのが好ましい。
【0082】
本発明の別の特定の実施形態では、第1のコーティングは、二酸化チタン、五酸化バナジウム、および三酸化タングステンを含有するSCR触媒を含み、第2のコーティングは、プラチナおよび酸化アルミニウムを含有する酸化触媒を含む。この場合に、第2のコーティングは、0.1〜10g/ftのプラチナを含有するのが好ましい。
【0083】
本発明の別の特定の実施形態では、第1のコーティングは、ゼオライトの組成物、特に、鉄または銅で置換したゼオライトを含有するSCR触媒を含み、第2のコーティングは、プラチナおよび酸化アルミニウムを含有する酸化触媒を含む。この場合に、第2のコーティングは、0.1〜10g/ftのプラチナを含有するのが好ましい。
【0084】
本発明の別の特定の実施形態では、第1のコーティングは、鉄で置換され、アンモニア貯蔵能力が触媒材料1グラム当たり少なくともアンモニア20ミリリットルであるβゼオライトを含有するSCR触媒を含み、第2のコーティングは、プラチナおよび酸化アルミニウムを含有する酸化触媒を含む。この場合に、第2のコーティングは、0.1〜10g/ftのプラチナを含有するのが好ましい。
【0085】
本発明の別の特定の実施形態では、第1のコーティングは、ゼオライトの組成物、特に、鉄または銅で置換したゼオライトを含有するSCR触媒を含み、第2のコーティングは、プラチナおよび/またはロジウム、さらには酸化アルミニウムを含有する酸化触媒を含む。この場合に、第2のコーティングは、0.1〜10g/ftのプラチナ、ロジウム、またはそれらの組み合わせを含有するのが好ましい。
【0086】
自動車用の排気ガスフィルタの製造に適したコーティング基板は、40%を超える、通常は、40%〜75%、特に、45%〜60%の多孔率を有する。平均小孔径は、少なくとも7μm、例えば、7μm〜34μm、好ましくは、10μmを超え、特に、10μm〜20μm、または11μm〜19μmである。11μm〜33μmの平均小孔径と、40%〜60%の多孔率とを有する、自動車用の排気ガスフィルタの製造に適した、完成した基板が特に有利である。
【0087】
7〜600セル/平方インチ、特に100〜400セル/平方インチ(400セル/平方インチは、約62セル/平方センチに相当する)などのかなり低いセル密度が一般的であるが、基材のセル密度は、平方インチ当たり最大で700以上であり、セルの形状は、長方形、正方形、円形、だ円形、三角形、または六角形とすることも、他の何らかの多角形形態を有することもできる。セル密度は、長手軸に対して平行な基材を横断する平面図における単位面積当たりのチャネル数を示すものである。壁厚、すなわち、チャネルを互いから分離する壁の厚さは、0.002インチ〜0.1インチ(約0.005cm〜約0.25cm)、好ましくは、0.002インチ〜0.015インチ(約0.005cm〜0.038cm)である。有利な基材は、好ましくは、40%〜60%の多孔率および10μm〜20μmの平均小孔径とともに、約0.01インチ〜0.02インチ(約0.0254cm〜0.058cm)の壁厚を有する。
【0088】
図1は、基材(121)内のチャネル(110)をコーティングするための本発明の装置を示し、この装置は、液体(103)で満たされたシリンダ(102)内でアクチュエータ(100)によって駆動されるピストン(101)を有し、移動体(111)に至るシリンダ(102)の接続部(104)を通じて、液体コーティング媒体(113)で満たされたタンク(112)内での移動体(111)の動作を可能にし、タンク(112)とコーティング装置(122)との間に、多方弁(115)を間に挟んで、2つの導管部(114、116)を有しており、コーティング装置(122)には、基材(121)と第1の高さ(130)を測定するためのセンサ(123)とが設けられている。さらなるセンサ(124)を使用して、コーティング媒体(113)の移動体積と、タンク(112)内の移動体(111)の状態とを観測する。
【0089】
センサ(123、124)によって測定された値は、したがって、アクチュエータ(100)を、ひいてはピストン(101)を制御する制御ユニット(125)に送られる。
【0090】
一方で、多方弁(115)は、充填流方向(117)に第1の高さ(130)まで、コーティング装置(122)にコーティング媒体(113)を充填するように切り換え、他方で、基材(121)内の第2の高さ(132)に達した後、戻り流方向(118)で、排出ポンプ(119)と、コーティング媒体をさらに使用する準備のできた状態に保つ、余分なコーティング媒体(113)用の貯蔵タンクに通じる接続管(120)との接続に切り換える。
【0091】
このために必要とされるすべての制御コマンドは、同様に、中央制御ユニット(125)から出力されるのが好ましい。
【0092】
図2は、基材(221)内のチャネル(210)をコーティングするための本発明の装置を示し、この装置は、液体(203)を充填され、シリンダ(202)の接続部(204)を通じて、タンク(212)と連通するシリンダ(202)内でアクチュエータ(200)によって駆動されるピストン(201)を有し、タンク内には移動体(211)が置かれ、タンクは液体コーティング媒体(213)を含み、多方弁(215)を間に挟んだ2つの導管部(214、216)を介してコーティング装置(222)に接続され、コーティング装置には、基材(221)と、コーティング媒体(213)の第1の高さ(230)を測定するためのセンサ(223)とが設けられている。
【0093】
タンク(212)上のさらなるセンサ(224)を用いて、コーティング媒体の移動体積と、タンク(212)内の移動体(211)の状態とが観測される。センサ(223、224)によって測定された値は、したがって、アクチュエータ(200)を、ひいてはピストン(201)を制御する制御ユニット(225)に送られる。
【0094】
一方で、多方弁(215)は、充填流方向(217)に第1の高さ(230)まで、コーティング装置(222)にコーティング媒体(213)を充填するように切り換え、他方で、基材(221)内の第2の高さ(232)に達した後、戻り流方向(218)で、排出ポンプ(219)と、コーティング媒体をさらに使用する準備のできた状態に保つ、余分なコーティング媒体(213)用の貯蔵タンクに通じる接続管(220)との接続に切り換える。このために必要とされるすべての制御コマンドは、同様に、中央制御ユニット(225)によって出力されるのが好ましい。
【0095】
図3Aおよび図3Bは、本発明によるコーティング構造の内部を見ることを可能にするために、中央部分に3つの平面に破断された部分を有する基材(300)を斜視図で示している。
【0096】
2つの部分長さ領域(303、305)にコーティングされた基材(300)は、2つの端面(301)、円周面(302)、および長さ(L)を有し、2つの端面(301)間を多数のチャネル(310)が横断する。
【0097】
第1のコーティング(330)は、チャネル(310)内の第1の部分長さ領域(303)に施され、さらなる部分長さ領域(305)には、第2のコーティング(340)が形成されている。
【0098】
2つの部分長さ領域(303)、(305)間、または2つのコーティング(330)、(340)間には、図3Bのように、特に、縮尺を拡大して示すように、コーティングのない領域(304)がある。
【0099】
(実施例1)
101.6mmの長さと、短軸が86mmで長軸が131mmのだ円形断面と、62/平方センチのセル密度とを有する、菫青石でできた貫通流ハニカム構造体を、コーティング媒体として、固形物量35重量%の水中で、(欧州特許第957064号明細書の実施例1に従って得られた)酸化アルミニウムに担持されたプラチナの懸濁液でコーティングする。このために、図2による装置を使用する。コーティング高さは45.8mmである。コーティング後、コーティング基材を100℃の空気流で乾燥させ、500℃でか焼する。コーティングされた支持体1000個ごとに、コーティング後のコーティング長さをX線撮影によって測定し、チャネルのコーティング長さをデジタル画像評価法によって求め、それぞれの最大長さと最少長さとの間の差をまとめる。差は常に3.0mm未満である。200個のコーティング支持体を分析する。図2に示すコーティング装置の運転は続ける。325,000回のコーティング作業を行うのに、保守および修理のための中断は全く必要ない。
【0100】
(実施例2)
手順は実施例1と同様であるが、図1に示す装置を使用した。最大長さと最少長さとの間の差は常に2mm未満であった。170個のコーティング支持体を分析する。225,000回のコーティング作業を行うのに、保守および修理のための中断は全く必要ない。
【符号の説明】
【0101】
100 アクチュエータ
101 ピストン
102 シリンダ
103 液体
104 接続部
110 基材121内のチャネル
111 移動体
112 タンク
113 コーティング媒体
114 導管部
115 多方弁
116 導管部
117 充填流方向
118 コーティング媒体113を除去する戻り流方向
119 排出ポンプ
120 コーティング媒体用の貯蔵器に通じる接続管
121 基材
122 コーティング装置
123 高さ130を検出するセンサ
124 移動体111の位置を観測するセンサ
125 制御ユニット
130 コーティング装置122内の113の第1の高さ
132 基材121内の113の第2の高さ
200 アクチュエータ
201 ピストン
202 シリンダ
203 液体
204 接続部
210 基材221内のチャネル
211 移動体
212 タンク
213 コーティング媒体
214 導管部
215 多方弁
216 導管部
217 充填流方向
218 213の抽出流方向
219 排出および抽出ポンプ
220 余分なコーティング媒体213用の貯蔵器に通じる接続管
221 基材
222 コーティング装置
223 高さ230を検出するセンサ
224 移動体の位置を観測するセンサ
225 制御ユニット
230 コーティング装置222内の第1の高さ
232 基材221内の第2の高さ
300 基材
301 端面
302 円周面
303 第1の部分長さ領域
304 2つの部分長さ303、305間の間隔
305 第2の部分長さ領域
310 基材300内のチャネル
330 チャネル310内の第1のコーティング
340 チャネル310内の第2のコーティング
L 基材300の全長
401〜407 請求項5に記載の7つの方法ステップを示す
501〜509 請求項6に記載の9つの方法ステップを示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状支持体であり、それぞれ、2つの端面(301)、円周面(302)、および軸方向長さLを有し、第1の端面から第2の端面まで多数のチャネル(310)が横断する、特に自動車用の、排気ガス浄化触媒製造用基材を液体コーティング媒体でコーティングする装置であって、液体を充填され、ピストンを備えたシリンダを有する装置であって、前記液体を充填されたシリンダはタンクと連通し、タンクの内部では、移動体が、前記ピストンが移動するときに前記液体により比例して移動するように構成され、前記タンクは、前記基材用のコーティング装置と連通し、前記移動体は、前記液体コーティング媒体に作用し、その結果として、前記コーティング装置内の液体コーティング媒体の高さが比例して変化する、装置。
【請求項2】
前記ピストンは電気アクチュエータにより移動する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コーティング装置は、前記液体コーティング媒体の高さに反応し、制御ユニットに接続されたセンサを取り付けられ、制御ユニットは、前記ピストンの動作を観測し、前記ピストンの動作を観測するために、前記センサから送られた信号を処理し、それにより、液体媒体の利用可能な量にかかわらず、前記コーティング装置内の高さを確実に再現可能にする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記移動体の位置を観測するためのセンサを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
多数のチャネルが第1の端面から第2の端面まで横断する基材をコーティングする方法であって、以下のステップ、すなわち、
−前記基材を用意するステップと、
−請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置を用意するステップと、
−前記基材を前記コーティング装置に配置するステップと、
−前記ピストンの移動を開始し、その結果として、前記ピストンによって移動した液体が、移動した液体体積量に比例して前記移動体を移動させるステップと、
−前記移動体を前記コーティング媒体に作用させ、前記移動体の移動に比例した体積のコーティング媒体が移動し、前記コーティング装置内のコーティング媒体の高さが相応して上昇するステップと、
−前記コーティング媒体を前記基材の前記チャネルに所望の充填高さまで、または前記コーティング媒体の移動した体積に比例する前記チャネルのコーティング長さまで浸透させるステップと、
−前記チャネル内にコーティングを形成して、前記基材の前記チャネルから前記コーティング媒体を除去するステップと、
を含む、基材をコーティングする方法。
【請求項6】
以下のステップ、すなわち、
−前記基材を用意するステップと、
−請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置を用意するステップと、
−前記基材を前記コーティング装置に配置するステップと、
−前記ピストンの移動を開始し、その結果として、前記ピストンによって移動した液体が、移動した液体体積量に比例して前記移動体を移動させるステップと、
−前記移動体を前記コーティング媒体に作用させ、前記移動体の移動に比例した体積のコーティング媒体が移動し、前記コーティング装置内の前記コーティング媒体の高さが、コーティング媒体の第1の高さまで相応して上昇するステップと、
−コーティング媒体の第1の高さに達したことを検出するステップと、
−前記ピストンを新たに始動させるか、または引き続き移動させ、その結果として、前記ピストンによって移動した液体が、前記移動した液体体積量に比例して前記移動体を移動させるステップと、
−前記移動体を前記コーティング媒体に作用させ、前記移動体の移動に比例した体積のコーティング媒体が移動し、前記コーティング装置内の前記コーティング媒体の高さが、コーティング媒体の第2の高さまで相応して上昇し、その結果として、前記コーティング媒体が前記基材の前記チャネルに所望の充填高さまで、または前記コーティング媒体の移動した体積に比例する前記チャネルのコーティング長さまで浸透するステップと、
−前記チャネル内にコーティングを形成して、前記基材の前記チャネルから前記コーティング媒体を除去するステップと、
を含む、請求項5に記載の基材をコーティングする方法。
【請求項7】
自動車用の排気ガスフィルタ製造用コーティング基材であって、チャネルには、内部に少なくとも1つの触媒活性コーティングが形成され、前記チャネルのコーティング長さは、軸方向長さL未満であり、前記チャネルの少なくとも95%については、前記チャネルの前記コーティング長さは、5mm以下、好ましくは3mm以下だけ異なる、コーティング基材。
【請求項8】
前記チャネルには、内部に少なくとも、1つの第1の触媒活性コーティングと1つの第2の触媒活性コーティングとが形成され、前記第1の触媒活性コーティングおよび前記第2の触媒活性コーティングでコーティングされたチャネル長さは、いずれの場合も、前記軸方向長さL未満であり、前記チャネルの少なくとも95%については、前記第1の触媒活性コーティングおよび前記第2の触媒活性コーティングでコーティングされた前記チャネル長さは、それぞれ互いに5mm以下、好ましくは3mm以下だけ異なり、前記2つのコーティング間の間隔は、前記チャネルの少なくとも95%については、5mm以下、有利には、3mm以下、特に、1mm以下である、請求項7に記載のコーティング基材。
【請求項9】
前記第1のコーティングはSCR触媒であり、前記第2のコーティングは酸化触媒である、請求項8に記載のコーティング基材。
【請求項10】
自動車用の排気ガスフィルタの製造のための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置、または請求項5〜6のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項11】
窒素酸化物および/または炭化水素および/または粒子を含有する排気ガス流を浄化する方法であって、請求項7〜9のいずれか一項に記載のコーティング基材を含む方法。
【請求項12】
窒素酸化物および/または炭化水素および/または粒子を含有する排気ガス流を浄化する装置であって、請求項7〜9のいずれか一項に記載のコーティング基材を有する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−518708(P2013−518708A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551649(P2012−551649)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051826
【国際公開番号】WO2011/098450
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】