説明

ゴムストッパの組付構造

【課題】ゴムストッパを非接着でブラケットに組み付けた場合においても、ばね剛性を高く確保し得て耐久性を高めることができ、更に組み付けのための挿込軸部の付根部への応力集中を回避し得て挿込軸部が破断してしまう恐れのある問題を解消することのできるゴムストッパの組付構造を提供する。
【解決手段】ゴムストッパ18のストッパ本体54に連続してブロック状の拘束部56を一体に形成する一方、ブラケット52に有底の嵌込凹部70を設けて、拘束部56の嵌込凹部70への嵌込みにより嵌込凹部70を拘束部56にて埋めるようになし、更に挿込軸部58を拘束部56の下面から突出させるとともに、嵌込凹部70の底部72に挿込孔74を設けて、拘束部56と掛止部60とで底部72を表裏両側から弾性挟持させる状態に、ゴムストッパ18をブラケット52に組み付けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は防振マウントにおけるマウント本体と別体に構成されたゴムストッパの組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンを防振支持するエンジンマウント,サスペンションメンバを防振支持するメンバマウント等の防振マウントにおいて、エンジンやサスペンションメンバ等の防振対象を荷重支持するマウント本体とは別体で板状のゴムストッパを構成して、これを相手側の剛性のブラケットに組み付けるといったことが行われている。
【0003】
またその組付構造として、ゴムストッパを以下のゴム製の挿込軸部及び掛止部を有する形態、即ち(イ)剛性のブラケットの支持面に載置され着座せしめられるゴム製の板状のストッパ本体と、(ロ)ブラケットの貫通の挿込孔に挿し込まれる、ストッパ本体と一体に形成されたゴム製の挿込軸部と、(ハ)挿込軸部に一体に形成され、ブラケットの裏側に位置してブラケットの裏面に掛止する、挿込軸部よりも大径のゴム製の掛止部と、を有する形態となし、その挿込軸部を挿込孔に挿し込んで掛止部をブラケットの裏面に掛止させ、表側のストッパ本体と裏側の掛止部とでブラケットを表裏両側から弾性挟持させる状態にゴムストッパをブラケットに組み付ける構造が採用されている。
【0004】
図7はその具体例を示している。
図7において、200はマウント本体とは別体に構成されたゴムストッパで、202は相手側の剛性のブラケットである。
ブラケット202には、所定位置にこれを板厚方向に貫通する挿込孔204が形成されている。この例において挿込孔204は、互いに異なった位置の3箇所に設けられている。
【0005】
ゴムストッパ200は、板状をなしブラケット202の支持面205に載置され着座せしめられる板状のストッパ本体206と、そのストッパ本体206の着座面(下面)208から下向きに突き出す棒状の挿込軸部210と、着座面208から離隔した位置において軸直角方向に突出する形態で挿込軸部210に一体に形成された、挿込軸部210よりも大径の掛止部212とを有する形態で構成されている。
【0006】
そして図7(B)に示しているように挿込軸部210をブラケット202の挿込孔204に挿し込み、掛止部212をブラケット202の裏面に掛止させて、かかる掛止部212とストッパ本体206とでブラケット202を表裏両側から弾性的に挟み付ける状態で、ゴムストッパ200がブラケット202に組み付けられる。
【0007】
この組付構造にあっては、挿込軸部210における掛止部212とストッパ本体206との間の部分が首部211とされており、更に掛止部212より先端側に突き出した部分が小径の引張り部214とされている。
この組付構造では、実際の組付けに際して図8に示しているように引張り部214を下向きに引っ張ることで、挿込軸部210をブラケット202の挿込孔204に挿し込み、そして掛止部212を挿込孔204を通過させてブラケット202の裏面に弾性的に当接させ、以って掛止部212とストッパ本体206とでブラケット202を表裏両側から弾性的に挟み込ませる状態とする。
【0008】
詳しくは、先ず引張り部214をブラケット202の挿込孔204に図中下向きに挿し込み(図8(I)参照)、そして図8(II)に示すようにブラケット202の裏側からこの引張り部214を掴んで下向きに引張り力を加え、掛止部212を挿込孔204を通過させて首部211を挿込孔204に嵌め入れる。
【0009】
このとき、図8(III)に示しているように掛止部212がブラケット202の裏面から離れる位置まで引張り部214を下向きに引っ張り、その後に引張り力を解除する。
この引張り力の解除によって、軸方向に伸び変形していた挿込軸部210、詳しくは首部211が弾性復元力で軸方向に縮むとともに、併せてその弾性復元力で掛止部212がブラケット202の裏側の面に弾性当接し、掛止した状態となる。
【0010】
以上のような別体をなすゴムストッパの組付構造については例えば下記特許文献1に開示されている。
しかしながらこの組付構造の場合、ゴムストッパ200をブラケット202に組み付けるに際し、先ず表側からゴムストッパ200をブラケット202の上に載せた上で、ブラケット202の裏側から引張り部を掴み、更にこれを引張り込むことが必要で、作業の工数が多く、しかも防振マウントの場合、通常このような挿込軸部210,掛止部212及び引張り部214がゴムストッパ200の複数個所に設けられているため、複数の個所のそれぞれにおいて上記の作業を行わなければならず、組付けに際して多大の手間を要する問題が生じていた。
【0011】
そこでこのような問題の解決を狙いとしたものが下記特許文献2に開示されている。
この特許文献2に示すゴムストッパの組付構造は、図9に示しているように板状のストッパ本体206を板厚方向に貫通して挿込軸部210の内部に到る内孔216をゴムストッパ200に設け、ブラケット202を受治具218で受けた状態で、内孔216に押ピン220を挿入して図中下向きの押込力を加えることで、ゴムストッパ200をブラケット202に組み付けるようになしたものである。
【0012】
この組付構造では、押ピン220を内孔216に挿入して下向きの押込力を加えると、挿込軸部210の肉厚の薄い首部211が軸方向に伸び変形しながら、掛止部212が挿込孔204を表側から裏側へと通過し、そしてその状態で押込力を除くと、ゴムの有する弾性復元力で掛止部212がブラケット202の裏側の面に掛止した状態となり、ここにおいて掛止部212とゴムストッパ本体206とがブラケット202を表裏両側から弾性的に挟み付ける状態に、ゴムストッパ200がブラケット202に組み付いた状態となる。
【0013】
しかしながら図7及び図8に示す組付構造,図9に示す組付構造の何れにおいても、挿込軸部210をブラケット202の挿込孔204に挿し込んで、ゴムストッパ200を非接着でブラケット202に組み付ける関係上、ストッパ本体206に対してストッパ作用時の荷重が繰り返し加わったときに、挿込軸部210の付根に応力が集中して作用し、使用中に挿込軸部210の付根の部分に亀裂発生する恐れがあり、場合により挿込軸部210が破断に到ってしまう恐れがある。
【0014】
この場合、ゴムストッパ200はブラケット202に対して非接着であるために、ゴムストッパ200がブラケット202から脱落してしまう恐れが生ずる。
【0015】
また板状をなすストッパ本体206はブラケット202に対して非接着であるために、ストッパ作用時にストッパ本体206に対し板厚方向に下向きの荷重がかかると、図10の模式図に示しているように、ブラケット202の支持面205に対するストッパ本体206の着座面208の滑りを伴って、ストッパ本体206が変形し、水平方向に逃げてしまうため、ストッパ本体206による図中上向きの弾性反力が十分に得られず、ストッパの機能即ち本来の変位規制の機能が十分に得られなくなってしまう。
【0016】
このことはストッパ本体206に対して水平方向、即ち車両前後及び左右方向に荷重が加わった場合においても同様で、その際にストッパ本体206がブラケット202に対する滑りを伴って荷重の作用方向に逃げてしまい、十分な変位規制力が得られなくなってしまう。
また板状のストッパ本体206が滑りを伴って水平方向に大きく変位することから、ストッパ本体206ひいてはゴムストッパ200の耐久性が低下してしまう恐れが生ずる。
【0017】
その他に、図9に示す組付構造の場合、ゴムストッパ200の挿込軸部210及びブラケット202の挿込孔204の軸線位置にずれ(芯ずれ)があった場合、或いは挿込軸部210に対して押ピン220の軸線の位置がずれていたりした場合、掛止部212が挿込孔204内に入り込む際、又はこれを通過しようとする際に掛止部212に加わる抵抗が不均等となったり、或いは掛止部212に対する押ピン220の押込力が中心位置とは偏った位置で加わってしまうことがあり、この場合図11に示すように挿込軸部210の、柔らかで変形し易い首部211を含む押ピン220よりも先端側の部分が傾き変形したり座屈を起したりしてしまって、掛止部212が円滑に挿込孔204を通過できず、場合によって掛止部212よりも上側位置において首部211に対し押ピン220の力が横向きに働いて、押ピン220が首部211を突き破ってしまう恐れのあることが判明した。
【0018】
尚、本発明に対する先行技術として下記特許文献3に、スタビライザブッシュのブラケットへの組付構造として、スタビライザブッシュの組付けのためのゴム製の係合爪部の付根部分に、同じくゴム製のブロックを設けた点が開示されている。
但しこの特許文献3に開示のブロックは、その働きが本発明のものとは異なったもので、特許文献3に開示のものは本発明とは別異のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平11−173370号公報
【特許文献2】特許第4103763号公報
【特許文献3】特開2002−274145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は以上のような事情を背景とし、防振マウントとは別体をなすゴムストッパを非接着でブラケットに組み付けた場合においても、ゴムストッパのストッパ作用時のばね剛性を高く確保できるとともに、そのことによってゴムストッパの耐久性を高めることができ、更に挿込軸部の挿込みによってゴムストッパをブラケットに組み付けた場合においても、挿込軸部の付根への応力集中により挿込軸部が破断してしまう恐れを解消し得るゴムストッパの組付構造を提供することを目的としてなされたものである。
また本発明の他の目的は、ゴムストッパのブラケットへの組付作業性を良好とし、その際に挿込軸部が倒れ変形したり座屈を起したりして組付作業が良好に行えなかったり、或いは挿込軸部が破断してしまう恐れのある問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
而して請求項1のものは、防振対象を荷重支持するマウント本体とは別体をなすゴムストッパを、(イ)剛性のブラケットの支持面に載置され着座せしめられるゴム製の板状のストッパ本体と、(ロ)該ブラケットの貫通の挿込孔に挿し込まれる、該ストッパ本体と一体に形成されたゴム製の挿込軸部と、(ハ)該挿込軸部に一体に形成され、前記ブラケットの裏側に位置して該ブラケットの裏面に掛止する、該挿込軸部よりも大径のゴム製の掛止部と、を有する形態となし、前記挿込軸部を前記ブラケットの挿込孔に挿し込んで、前記掛止部を該ブラケットの裏面に掛止させることで、前記ストッパ本体を前記支持面に着座させる状態に前記ゴムストッパを非接着で該ブラケットに組み付けるようになしたゴムストッパの組付構造において、前記ゴムストッパには、前記ストッパ本体の下面に連続してブロック状のゴム製の拘束部を一体に形成する一方、前記ブラケットには、該拘束部に対応した形状の有底の嵌込凹部を前記支持面から凹陥する形態で設けて、該拘束部の該嵌込凹部への嵌込みにより該嵌込凹部を該拘束部にて埋めるようになし、更に前記挿込軸部は該拘束部の下面から突出させるとともに、前記挿込孔を前記嵌込凹部の底部に設けて、該拘束部と前記掛止部とで該底部を表裏両側から弾性挟持させる状態に、前記ゴムストッパを前記ブラケットに組み付けるようになしたことを特徴とする。
【0022】
請求項2のものは、請求項1において、前記ゴムストッパには、前記ストッパ本体及び前記拘束部を厚み方向に貫通して前記挿込軸部の内部に到る、該挿込軸部を非貫通の孔であって、該挿込軸部に下向きの力を加える押ピンを内部に挿入させる内孔が設けてあり、且つ該内孔は、該挿込軸部における前記掛止部と前記拘束部との間の首部を通過して該掛止部の内側の位置にまで到る深さで設けてあることを特徴とする。
【0023】
請求項3のものは、請求項2において、前記掛止部は、軸方向の中間部に最大径部を有し、該最大径部よりも前記挿込軸部の付根側の面と、該挿込軸部の先端側の面とが、ともに該最大径部に向って互いに反対向きで傾斜した面となしてあり、該掛止部が断面山形状をなしていることを特徴とする。
【0024】
請求項4のものは、請求項3において、前記最大径部よりも前記挿込軸部の付根側の面が軸直角方向に対してなす角度θが0°よりも大で90°よりも小の角度となしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0025】
以上のように本発明は、挿込軸部をブラケットの挿込孔に挿し込み、その挿込軸部に一体に形成した掛止部をブラケットの裏面に掛止させて、ゴムストッパをブラケットに取り付ける構造において、ゴムストッパにはストッパ本体に連続してブロック状のゴム製の拘束部を一体に形成する一方、ブラケットにはその拘束部に対応した形状の有底の嵌込凹部を支持面から凹陥する形態で設けて、その嵌込凹部への拘束部への嵌込みにより嵌込凹部を拘束部にて埋めるようになし、更に挿込軸部を拘束部から突出させるとともに、ブラケット側の挿込孔を嵌込凹部の底部に設けて、拘束部と掛止部とでその底部を表裏両側から弾性挟持させる状態にゴムストッパをブラケットに対し非接着で組み付けるようになしたものである。
【0026】
本発明のゴムストッパの取付構造にあっては、板状のストッパ本体の下面に連続して形成されたブロック状の拘束部がブラケットの嵌込凹所に嵌り込んで拘束された状態となる。
そのため板状のストッパ本体に対してストッパ作用時に板厚方向の荷重が加わったとき、ストッパ本体がブラケットに対して滑りを生じながらブラケットの支持面に沿って逃げてしまう現象を効果的に抑制できる。
【0027】
この結果、ストッパ本体がストッパ作用時に板厚方向(肉厚方向)に効果的に圧縮弾性変形し得て、大きな弾性反力即ち変位規制力を発揮することができる。
即ち本発明によれば、ストッパ本体に対する下向きの荷重に対し、大きな変形抵抗力を発揮し得て、本来の変位規制の機能を十分に発揮することができる。
【0028】
同様にストッパ本体に対してブラケットの支持面に沿った方向の荷重、即ち前後及び左右方向の荷重がストッパ本体に加わった場合においても、ストッパ本体に対する拘束部の拘束作用によって、良好なストッパ機能を発揮することができる。
【0029】
本発明では、ゴムストッパの組付けを行うための挿込軸部が拘束部から突き出していて、拘束部と挿込軸部に形成された掛止部とでブラケットの嵌込凹部の底部を表裏両側から弾性挟持するようになしてあるため、即ち加えられた荷重によって位置移動を生じない拘束部から挿込軸部が突出しているため、ゴムストッパに対して繰り返し荷重が加わった場合においても、挿込軸部の付根部位に応力が集中的に加わるのを有効に防止でき、従って挿込軸部が付根部位で応力集中により亀裂発生する恐れ或いは破断してしまう恐れを有効に防止することができる。
またこのことによって、ゴムストッパがブラケットから脱落してしまう恐れを防止することができる。
【0030】
更に万一挿込軸部が破断するようなことがあっても、ゴムストッパはブロック状の拘束部がブラケットの嵌込凹所に嵌り込んでいて、それらの嵌合によりゴムストッパがブラケットにより保持されるため、挿込軸部が破断することによって直ちにゴムストッパがブラケットから脱落してしまうといったことも有効に防ぐことができる。
【0031】
加えてストッパ本体がブラケットの支持面上を滑って大きく変位してしまうのが防止されるために、ゴムストッパの耐久性を高めることができる。
【0032】
次に請求項2は、ゴムストッパ本体及びブロック状の拘束部を貫通して挿込軸部の内部に到る内孔を設け、且つその内孔を、挿込軸部における掛止部と拘束部との間の首部を通過して掛止部の内側の位置にまで到る深さとなしたものである。
この請求項2においては、内孔に押ピンを挿入し且つ下向きの押込力を加えることで、挿込軸部をブラケットの挿込孔に挿し込み、ゴムストッパをブラケットに組み付けることができる。
【0033】
而してこの請求項2においては、その内孔が掛止部の内側の位置にまで到る深さで設けてあるため、押ピンにて挿込軸部を下向きに押してブラケットの挿込孔に挿し込む際、首部がふらついて安定しない等より挿込軸部が変形を生じて、そのことにより掛止部が挿込孔を円滑に通過できず、挿込作業が円滑に行えなかったり、或いは場合によって首部が押ピンにて破られてしまう恐れのある問題を解決でき、ゴムストッパを作業性良く良好にブラケットに組み付けることができる。
【0034】
この場合において上記掛止部は、軸方向の中間部に最大径部を有し、その最大径部よりも挿込軸部の付根側の面と、先端側の面とがともに最大径部に向かって互いに反対向きに傾斜した面となし、掛止部を断面山形状に形成しておくことができる(請求項3)。
具体的には、最大径部よりも挿込軸部の付根側の面を、該挿込軸部の先端側に向って進むに連れて径方向外方へと移行して最大径部にと到る面となし、また最大径部よりも先端側の面を、挿込軸部の付根側に向って進むに連れて径方向外方へと移行して最大径部に到る面となしておくことができる。
【0035】
このようにしておくと、掛止部を挿込孔を通過させるように挿込軸部を挿込孔に挿し込む際の挿込性(挿入性)が良好となり、またその際に押ピンが挿込軸部を突き破ってしまう恐れのある問題を解決することができる。
【0036】
ここで最大径部よりも挿込軸部の付根側の面は、軸直角方向に対して成す角度θが0°よりも大で90°よりも小の角度をなすようにしておくことができる(請求項4)。
θが90°であると掛止部が挿込孔に対して抜け方向に通過し易くなってしまう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態のゴムストッパの組付構造を含むエンジンマウントの取付状態の図である。
【図2】図1のゴムストッパの組付構造の図である。
【図3】図2のゴムストッパをブラケットへの組付前の状態で示した図である。
【図4】同実施形態の組付構造における組付けの手順を示した図である。
【図5】本発明の他の実施形態の図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態の図である。
【図7】従来のゴムストッパの組付構造の一例を示す図である。
【図8】図7のゴムストッパの組付構造の組付手順を示した図である。
【図9】図8とは異なるゴムストッパの組付構造の説明図である。
【図10】図7,図8及び図9に示した組付構造のストッパ作用時のストッパ本体の変形状態の説明図である。
【図11】図9に示した組付構造において組付時に挿込軸部及び周辺部が不規則変形する際の様子を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に本発明を、エンジンマウントのマウント本体とは別体に構成されたゴムストッパの組付構造に適用した場合の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1において、10はエンジンから車両左右方向に延び出したエンジン側の金属製のブラケット、12は車体側のブラケットの一部をなす円筒部で、14はブラケット10を介してエンジンを防振支持するエンジンマウントである。
エンジンマウント14は、エンジンを荷重支持するマウント本体16と、マウント本体16とは別体に構成されたゴムストッパ18とを有している。
【0039】
マウント本体16は、図中上部に位置するインナ金具19と、図中下部に位置する円筒状の外筒金具20と、インナ金具19と外筒金具20とに加硫接着されて、それら外筒金具20とインナ金具19とを弾性連結するゴム弾性体から成るゴム支持部24とを有しており、外筒金具20において車体側ブラケットの円筒部12に圧入されてかかる円筒部12にて嵌合状態に保持され、またインナ金具19においてエンジン側のブラケット10に締結されている。
ここでインナ金具19は、プレート部30とプレート部30から下向きに突出する突出部32とを有しており、その突出部32がゴム支持部24の内部に埋込状態とされている。
【0040】
マウント本体16の内部には金属製の仕切部材34が設けられており、この仕切部材34によって、マウント本体16の内部が上側の主液室36と下側の副液室38とに区画されている。
ここで上側の主液室36は、仕切部材34とゴム支持部24とによって形成されており、また下側の副液室38は、仕切部材34とゴム製のダイヤフラム40を有する蓋体42とによって形成されている。
【0041】
この蓋体42において、ダイヤフラム40の外周端部には円筒状の金具44が加硫接着により一体化されており、蓋体42はこの金具44においてゴムシール部46を介し外筒金具20に内嵌せしめられている。
ここでゴムシール部46は、ゴム支持部24に連続して円筒状に一体成形されており、また外筒金具20は図中下端部が内向きに曲げられてかしめられている。
図中48はそのかしめ部を表しており、このかしめ部48によって蓋体42が抜止状態に保持されている。
【0042】
仕切部材34の外周部には、上側のオリフィス通路50-1とこれに周方向に連続した下側のオリフィス通路50-2とが形成されている。
上側のオリフィス通路50-1は、図示しない開口を通じて主液室36と連通しており、また下側のオリフィス通路50-2は、図示しない開口を通じて下側の副液室38と連通している。
このマウント本体16においては、主液室36と副液室38とに封入された液がオリフィス通路50-1,50-2を通じて一方から他方に、また他方から一方に移動し、その際の液の流動に基づいて振動減衰作用をなす。
【0043】
図1において、52は車体側ブラケットの一部をなす円筒部12に一体化された、ゴムストッパ18用の金属製のブラケットで、このブラケット52に対してゴムストッパ18が組み付けられている。
ここでゴムストッパ18は、エンジン側のブラケット10が下向きに相対変位したときに、ブラケット10に当接してブラケット10の過大な変位を規制する。即ちこの例においてゴムストッパ18はバウンドストッパとしてのものである。
【0044】
図2及び図3に、ゴムストッパ18のブラケット52への組付構造が具体的に示してある。
図に示しているように、ゴム弾性体から成る別体のゴムストッパ18は、ブラケット52の後述する支持面68上に載置され着座せしめられる平板状(ここでは平面矩形状)のストッパ本体54と、ストッパ本体54の下面から下向きに突出する、ストッパ本体54よりも外形形状の小さなブロック状の拘束部56と、拘束部56の更に下面から互いに離隔した位置において下向きに突出した一対の挿込軸部58、及び拘束部56の下面から下側に離隔した位置において挿込軸部58に一体に形成された、挿込軸部58よりも大径の掛止部60とを一体に有している。
【0045】
ここで挿込軸部58は、掛止部60とブロック状の拘束部56との間の首部62の軸方向寸法が、後に述べるブラケット52の底部72の板厚よりも小寸法とされている。
またこれら挿込軸部58の、掛止部60から下向きに突出した先端部は、ゴムストッパ18の組付けの際に後の挿込孔74(図3(A)参照)に嵌合して位置出しを行う位置決部63とされている。
尚この実施形態において、首部62と位置決部63とは同径とされている。
【0046】
ブラケット52は平面形状が略コ字形状をなし、車体側ブラケットの一部をなす上記円筒部12に固定された固定部64と、その上端に溶接接合され、ゴムストッパ18を支持する支持部66とを有している。
固定部64は、円筒部12側の面及び上下の面が何れも開放形状をなしており、円筒部12側の両端部が、かかる円筒部12に対して溶接接合にて固定されている。
またその上端の開放部がプレート状の支持部66にて閉鎖されている。
ここで支持部66は、図1に示しているようにゴム支持部24側の端部が、ゴム支持部24の外周部に対し上下に重複する位置まで図1中左側に突き出している。
【0047】
支持部66は略中央部、詳しくはゴムストッパ18のブロック状の拘束部56に対応した部分が支持面68から凹陥した形態の嵌込凹部70とされている。
この嵌込凹部70は底部72を有する有底のもので、その底部72に、ゴムストッパ18における一対の挿込軸部58に対応した位置において一対の貫通の挿込孔74が設けられている。
【0048】
この嵌込凹部70は、ゴムストッパ18の拘束部56の上下方向の厚みと同じ深さを有しており、また平面の外形形状が拘束部56の外形形状と同一形状とされている。
従って拘束部56を嵌込凹部70に嵌め込んだとき、底部72が拘束部56の下面に接触し、また嵌込凹部70の周壁77が拘束部56の外周面に接触した状態となって、嵌込凹部70が拘束部56にて埋まった状態となる。
【0049】
図2に示しているように、ゴムストッパ18にはブラケット52に対する組付面となる着座面(下面)76とは反対側の上面からストッパ本体54及びブロック状の拘束部56を貫通して、挿込軸部58の内部に到る一対の内孔78が設けてある。
一対の内孔78のそれぞれは深さ方向に漸次小径となる逆テーパ形状をなしており、またその深さは、挿込軸部58における掛止部60の内側位置、詳しくは挿込軸部58における首部62を通過して掛止部60の内側の位置にまで到る深さで設けられている。
【0050】
一方掛止部60は、軸方向の上端と下端との中間部に最大径部84を有し、その最大径部84よりも上側の面(挿込軸部58の付根側の面)80と、下側の面(挿込軸部58の先端側の面)82とが、ともに最大径部84に向って互いに反対向きで傾斜した面となしてあり、掛止部60が断面山形状で形成されている。
【0051】
詳しくは、最大径部84よりも上側の面80は、挿込軸部58の先端側に向って進むにつれ径方向外方へと移行して最大径部84に到る面となしてあり、また下側の面82は、挿込軸部58の付根側に向って進むにつれ径方向外方へと移行して最大径部84に到る面となしてある。
【0052】
本実施形態において、掛止部60における上側の面80は、軸直角方向に対してなす角度θが0°よりも大で90°よりも小の角度とされている。
具体的にはこの実施形態ではθ=22°とされている。
尚下側の面82は軸直角方向に対してなす角度が53°とされている。
【0053】
図2に示しているように、この実施形態ではゴムストッパ18におけるブロック状の拘束部56を嵌込凹部70に嵌め込み、また一対の挿込軸部58を、嵌込凹部70の底部72に設けた対応する一対の挿込孔74に挿し込むことで、ゴムストッパ18をブラケット52に対して非接着で組み付ける。
【0054】
詳しくは、一対の挿込軸部58を挿込孔74に挿し込み、このとき掛止部60を挿込孔74を通過してブラケット52の底部72の裏側に位置させると、掛止部60が底部72の裏面に掛止してゴムストッパ18をブラケット52から抜止めする。
またこのとき、掛止部60とブロック状をなす拘束部56とが、ブラケット52における嵌込凹部70の底部72を表裏両側から弾性的に挟持した状態となり、ゴムストッパ18がブラケット52に固定状態となる。
【0055】
図4はブラケット52に対するゴムストッパ18の組付方法の手順を示している。
図4に示しているようにこの実施形態では、ゴムストッパ18をブラケット52の上側に位置させ、そして挿込軸部58の先端部分の位置決部63を、ブラケット52の挿込孔74に嵌め合せて位置決めする。
しかる後、図4(I)に示しているように逆テーパ状をなす押ピン86を、ゴムストッパ18の内孔78に挿入してゴムストッパ18に対し、具体的には挿込軸部58に対し下向きの力を加える。
【0056】
この押ピン86による下向きの力によって、掛止部60は挿込孔74を通過し、更に首部62の軸方向の伸びを伴って底部72の下面から離れる位置まで移動せしめられる(図4(II)参照)。
その後押ピン86に加えていた力を除くと、図4(III)に示すように首部62の弾性復元力によって首部62が軸方向に縮むとともに、掛止部60が底部72の下面に掛止し、かかる掛止部60が拘束部56とともに底部72を表裏両側から弾性挟持した状態となって、ここにゴムストッパ18がブラケット52に固定され組み付けられる。
【0057】
本実施形態では、内孔78が挿込軸部58の首部62を通過して掛止部60にかかる位置まで深く形成されているため、押ピン86による下向きの力が、掛止部60の中間部よりも下側の部分に直接加えられる。
そのため、内孔78に挿入された押ピン86の軸線位置が内孔78の軸線から僅かに芯ずれしていたり、或いは挿込軸部58の首部62の軸線が挿込孔74の軸線に対して芯ずれしていたような場合であっても、図11に示す従来の組付構造のように押ピン86の下向きの押込力によって、薄肉をなす首部62がふらついたり傾いたりして挿込軸部58が円滑に挿込孔74に挿し込まれず、挿込軸部58の首部62が傾いたまま押ピン86により強い力で押されて破れてしまう恐れを生じず、良好に挿込軸部58を挿込孔74に挿し込むことができる。
【0058】
加えてこの実施形態では掛止部60が断面山形状をなしているため、詳しくは上側の面80と下側の面82とが最大径部84に向って互いに逆向きに傾斜した面とされているため、押ピン86の押込みにつれてかかる掛止部60の最大径部84が、首部62の軸方向の伸び変形を伴って縮径するように変形し、最大径部84が、つまり掛止部60が少ない抵抗で円滑にブラケット52の挿込孔74を下向きに通過することができる。
【0059】
以上のような本実施形態においては、ストッパ本体54に連続して形成されたブロック状の拘束部56が、ブラケット52の嵌込凹所70に嵌り込んで拘束された状態となる。
そのため板状のストッパ本体54に対してストッパ作用時に板厚方向の荷重が加わったとき、ストッパ本体54がブラケット52に対して滑りを生じながらブラケット52の支持面68に沿って逃げてしまう現象を効果的に抑制できる。
【0060】
この結果、ストッパ本体54がストッパ作用時に板厚方向(肉厚方向)に効果的に圧縮弾性変形し得て、大きな弾性反力即ち変位規制力を発揮することができる。即ちストッパ本体54に対する下向きの荷重に対し大きな変形抵抗力を発揮し得て、本来の変位規制の機能を十分に発揮することができる。
【0061】
同様にストッパ本体54に対してブラケット52の支持面68に沿った方向の荷重、即ち前後及び左右方向の荷重がストッパ本体54に加わった場合においても、ストッパ本体54に対する拘束部56の拘束作用によって、良好なストッパ機能を発揮することができる。
【0062】
また本実施形態では、加えられた荷重によって位置移動を生じない拘束部56から挿込軸部58が突き出していて、拘束部56と挿込軸部58に形成された掛止部60とでブラケット52の嵌込凹部70の底部72を表裏両側から弾性挟持するようになしてあるため、ゴムストッパ18に対して繰り返し荷重が加わった場合においても、挿込軸部58の付根部位に応力が集中的に加わるのを有効に防止でき、従って挿込軸部58が付根部位で応力集中により亀裂発生する恐れ或いは破断してしまう恐れを有効に防止することができる。
またこのことによって、ゴムストッパ18がブラケット52から脱落してしまう恐れを防止することができる。
【0063】
更に万一挿込軸部58が破断するようなことがあっても、ゴムストッパ18はブロック状の拘束部56がブラケット52の嵌込凹部70に嵌り込んでいて、それらの嵌合によりゴムストッパ18がブラケット52により保持されるため、挿込軸部58が破断することによって直ちにゴムストッパ18がブラケット52から脱落してしまうといったことも有効に防ぐことができる。
【0064】
加えてストッパ本体54がブラケット52の支持面68上を滑って大きく変位してしまうのが防止されるために、ゴムストッパ18の耐久性を高めることができる。
【0065】
更に本実施形態においては、内孔78が首部62を通過して掛止部60の内側の位置にまで到る深さで挿込軸部58に設けてあるため、押ピン86にて挿込軸部58を下向きに押してブラケット52の挿込孔74に挿し込む際に円滑にこれをなし得、ゴムストッパ18を作業性良く良好にブラケット52に組み付けることができる。
【0066】
加えてこの実施形態では掛止部60が断面山形状をなすように形成してあるため、掛止部60を挿込孔74を通過させるように挿込軸部58を挿込孔74に挿し込む際の挿込性(挿入性)がより良好となる。
【0067】
以上の実施形態では複数の、具体的には一対の挿込軸部58を1つのブロック状の拘束部56から突出させるようになしているが、図5に示しているように拘束部56を、各挿込軸部58に対応して複数、詳しくはここでは2つの別の拘束部56-1,56-2に分けた形態とし、それぞれから挿込軸部58を突出させるようになすこともできる。
【0068】
或いは図6に示しているようにゴムストッパ18に、挿込軸部58を突出させない形態で拘束部56-3を設けて、これをブラケット52に対応して設けた嵌込凹部70に嵌め込むようになすことも可能である。
この場合にはより多くの拘束部56がブラケット52の対応する数の嵌込凹部70に嵌った状態となって、より多くの複数個所で拘束部による拘束作用が得られ、ゴムストッパ18のばね剛性をより効果的に高剛性化することができる。
【0069】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は上記エンジンマウント以外のメンバマウントその他の防振マウントにおける別体のゴムストッパの組付構造に適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0070】
14 エンジンマウント
16 マウント本体
18 ゴムストッパ
52 ブラケット
54 ストッパ本体
56 拘束部
58 挿込軸部
60 掛止部
62 首部
68 支持面
70 嵌込凹部
72 底部
74 挿込孔
76 着座面
78 内孔
80 上側の面
82 下側の面
84 最大径部
86 押ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振対象を荷重支持するマウント本体とは別体をなすゴムストッパを、(イ)剛性のブラケットの支持面に載置され着座せしめられるゴム製の板状のストッパ本体と、(ロ)該ブラケットの貫通の挿込孔に挿し込まれる、該ストッパ本体と一体に形成されたゴム製の挿込軸部と、(ハ)該挿込軸部に一体に形成され、前記ブラケットの裏側に位置して該ブラケットの裏面に掛止する、該挿込軸部よりも大径のゴム製の掛止部と、を有する形態となし、前記挿込軸部を前記ブラケットの挿込孔に挿し込んで、前記掛止部を該ブラケットの裏面に掛止させることで、前記ストッパ本体を前記支持面に着座させる状態に前記ゴムストッパを非接着で該ブラケットに組み付けるようになしたゴムストッパの組付構造において、
前記ゴムストッパには、前記ストッパ本体の下面に連続してブロック状のゴム製の拘束部を一体に形成する一方、前記ブラケットには、該拘束部に対応した形状の有底の嵌込凹部を前記支持面から凹陥する形態で設けて、該拘束部の該嵌込凹部への嵌込みにより該嵌込凹部を該拘束部にて埋めるようになし、
更に前記挿込軸部は該拘束部の下面から突出させるとともに、前記挿込孔を前記嵌込凹部の底部に設けて、該拘束部と前記掛止部とで該底部を表裏両側から弾性挟持させる状態に、前記ゴムストッパを前記ブラケットに組み付けるようになしたことを特徴とするゴムストッパの組付構造。
【請求項2】
請求項1において、前記ゴムストッパには、前記ストッパ本体及び前記拘束部を厚み方向に貫通して前記挿込軸部の内部に到る、該挿込軸部を非貫通の孔であって、該挿込軸部に下向きの力を加える押ピンを内部に挿入させる内孔が設けてあり、且つ該内孔は、該挿込軸部における前記掛止部と前記拘束部との間の首部を通過して該掛止部の内側の位置にまで到る深さで設けてあることを特徴とするゴムストッパの組付構造。
【請求項3】
請求項2において、前記掛止部は、軸方向の中間部に最大径部を有し、該最大径部よりも前記挿込軸部の付根側の面と、該挿込軸部の先端側の面とが、ともに該最大径部に向って互いに反対向きで傾斜した面となしてあり、該掛止部が断面山形状をなしていることを特徴とするゴムストッパの組付構造。
【請求項4】
請求項3において、前記最大径部よりも前記挿込軸部の付根側の面が軸直角方向に対してなす角度θが0°よりも大で90°よりも小の角度となしてあることを特徴とするゴムストッパの組付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−75006(P2011−75006A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226340(P2009−226340)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】