説明

ゴムホース製造

【課題】一端側が内外径共に縮径状に賦形されたゴムホースを製造する際の内外径の縮径作業の簡略化と品質向上を図る。
【解決手段】ホース一端側の外径縮径用の外径縮径ジグ150の装着に際し、作業者は、外径縮径ジグ150を、ガイドシャフト部118を案内にしてゴムホース素材PGHの側に押し込む。これにより、ゴムホース素材PGHは、その端部側から外径縮径ジグ150の縮径賦形嵌合孔152に入り込み、その外径において縮径賦形嵌合孔152で縮径され、内径は、縮径賦形シャフト部114にて縮径される。こうした外径縮径ジグ150の嵌め込み装着は、縮径賦形シャフト部114と同軸のガイドシャフト部118により、ゴムホース素材PGHに対してセンター合わせができた状態での装着となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫前のゴムホース素材を加硫して一端側が内外径共に縮径状に賦形されたゴムホースの製造方法と、こうしたゴムホース製造に用いるジグセットに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムホースとして一般的なものは、内外径とも均一とされたストレート状のゴムホースであるが、ホース端部においてのみ、内外径共に縮径したゴムホースも多用されている。こうしたゴムホースでは、内外径の縮径を簡便とするため、種々の手法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特許第3661338号公報
【0004】
この特許文献では、ホース(加硫前のゴムホース素材)の一端側に、まずホース外側から外径縮径用のジグを装着し、その上で、ゴムホース素材に棒状のマンドレルを挿入させている。
【0005】
こうした手法では、マンドレル挿入の際に、外径縮径ジグをゴムホース素材と一緒に手で支える必要がある。ゴムホース素材は、加硫前である都合上、軟質でいわゆる腰がない状態であることから、外径縮径ジグをゴムホース素材と一緒に手で支えながらマンドレルを挿入する作業には熟練が必要であった。
【0006】
また、ホース端部がその外側から外径縮径ジグで覆われていることから、マンドレル先端がこのホース端部近くまで達したときに、マンドレル先端部位とゴムホース素材との位置関係を視認できない。よって、この状態のままマンドレル挿入を継続する必要があることから、マンドレル挿入時において、マンドレル先端部位とゴムホース素材とのセンター合わせにも熟練を要していた。なお、このセンター合わせが上手くいかないままマンドレル挿入を行うと、ゴムホース素材に無用な屈曲を起こしてしまい、外観不良を招きかねない。
【0007】
こうした不具合は、マンドレル挿入済みのゴムホース素材に外径縮径ジグを嵌め込み装着すればある程度改善されると予想される。しかしながら、内径にマンドレルが存在した状態のゴムホース素材に対して、その外側から外径縮径ジグを嵌め込み装着する必要があるので、この際のセンター合わせが不十分であると、外径縮径ジグの孔周壁でゴムホース素材端部外縁をこすってしまい、当該端部外縁にめくれや膨らみを残しがちとなる。こうしためくれや膨らみは外観不良となることから、マンドレル挿入済みのゴムホース素材への外径縮径ジグの嵌め込み装着に際しても、慎重な作業や熟練を要することとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一端側が内外径共に縮径状に賦形されたゴムホースを製造する上での上記問題点を解決するためになされ、内外径の縮径の際の作業の簡略化と品質向上の両立を図ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題の少なくとも一部を解決するため、本発明では、ゴムホースの一端側を内外径共に縮径状に賦形するに当たり、加硫前のゴムホース素材に棒状のマンドレルを挿入して、該マンドレルの端部にゴムホース素材の内径よりも小径に形成されたホース内径縮径賦形用の縮径賦形シャフト部をゴムホース素材の一端側に位置させて、この縮径賦形シャフト部をゴムホース素材で覆う。このマンドレルは、縮径賦形シャフト部から、この縮径賦形シャフト部の外径と同径以下の外径で形成されたガイドシャフト部を同軸に突出して備える。よって、このガイドシャフト部は、マンドレル挿入後の状態においては、縮径賦形シャフト部を覆うゴムホース素材に対してセンターが合った状態でゴムホース素材からも突出する。
【0010】
本発明は、このようにマンドレル挿入を行った後、縮径賦形シャフト部を覆った側のゴムホース素材の一端側から外径縮径ジグをゴムホース素材の外側に嵌め込み装着する。本発明では、こうして嵌め込み装着される外径縮径ジグを、ゴムホース素材の外径よりも小径に形成されたホース外径縮径賦形用の縮径賦形嵌合孔と、ガイドシャフト部が入り込むガイド孔とを同軸に備えるものとした。
【0011】
よって、ゴムホース素材の一端側からの外径縮径ジグの嵌め込み装着の際には、外径縮径ジグの縮径賦形嵌合孔の開口端にゴムホース素材の一端側が入り込む前の状態において、既述したようにゴムホース素材からセンターが合った状態で突出したガイドシャフト部が外径縮径ジグのガイド孔に入り込む。そして、外径縮径ジグは、このガイドシャフト部に案内されてゴムホース素材の外側に嵌め込み装着される。このため、ゴムホース素材に対してセンターが合った状態で外径縮径ジグをゴムホース素材の外側に嵌め込み装着できるので、外径縮径ジグの縮径賦形嵌合孔周壁でゴムホース素材端部外縁を不用意に擦るようなことを回避できる。この結果、ゴムホース端部外縁にめくれや膨らみを招かないようにして、縮径賦形嵌合孔にてゴムホース素材の一端側の外径を縮径できることから、マンドレルが挿入済みで外径縮径ジグも嵌め込み装着済みのゴムホース素材を加硫して得られた縮径賦形済みのゴムホースにおいて、その品質が向上する。
【0012】
また、ゴムホース素材外側への外径縮径ジグの嵌め込み装着を経た縮径賦形嵌合孔へのゴムホース素材の入り込みにより、縮径賦形嵌合孔の内径に倣ってゴムホース素材外径が縮径され、この外径縮径によりゴムホース素材の内径も縮径される。そして、ゴムホース素材の内径が縮径賦形シャフト部の外径に倣うことで、ゴムホース素材内径の縮径が規定される。
【0013】
しかも、外径縮径ジグのガイド孔に入り込んだガイドシャフト部による案内機能により、ゴムホース素材の一端側からの外径縮径ジグの嵌め込み装着作業の再現性が高まるので、装着作業には熟練を要さず、簡便となる。また、外径縮径ジグの嵌め込み装着後にあっても、ガイドシャフト部はガイド孔に入り込んだままであるので、加硫装置へのゴムホース素材の搬出入時や加硫期間にあっては外径縮径ジグの脱落を起こさない。よって、外径縮径ジグの脱落に起因する不具合、例えば加硫装置搬入時や加硫期間におけるジグ脱落による縮径賦形不良を回避できる。
【0014】
加えて、外径縮径ジグの未装着の状態でマンドレルをゴムホース素材に挿入すればよいことから、この挿入作業の過程において、常時、マンドレルとゴムホース素材との位置関係を把握できる。よって、マンドレル先端部位であるガイドシャフト部や縮径賦形シャフト部がゴムホース素材端部近くまで達した場合であっても、これらマンドレル先端部位とゴムホース素材との位置関係を視認できるので、マンドレル先端部位とゴムホース素材とのセンター合わせが簡便となり、無用なゴムホース素材の屈曲、延いてはゴムホースとしての外観不良を抑制できる。
【0015】
上記構成を有する本発明において、ゴムホース製造時に使用するマンドレルを、前記縮径賦形シャフト部と前記ガイドシャフト部との間に、前記外径縮径ジグの位置関係規定用の係合シャフト部を備えるものとし、外径縮径ジグを、前記係合シャフト部に係合して前記マンドレルに対する前記外径縮径ジグの位置決めを行う係合部を備えるものとできる。こうした上で、前記マンドレルの前記縮径賦形シャフト部を前記ゴムホース素材で覆う際において、前記係合シャフト部を前記ゴムホース素材の内部に位置させたまま前記ガイドシャフト部を前記ゴムホース素材から突出させ、該突出した前記ガイドシャフト部が前記外径縮径ジグの前記ガイド孔に入り込んで前記案内機能を果たし得るまで前記ゴムホース素材に前記マンドレルを挿入する。そして、前記ゴムホース素材の一端側を前記外径縮径ジグの前記縮径賦形嵌合孔内に位置させる際には、前記係合部が前記係合シャフト部に係合するまで、前記ガイドシャフト部による案内を受けつつ前記外径縮径ジグを前記ゴムホース素材の一端側から装着するようにする。
【0016】
こうすれば、ゴムホース素材の一端側を外径縮径ジグの縮径賦形嵌合孔内に位置させるに当たり、まず、ガイドシャフト部による案内を受けた上での外径縮径ジグの嵌め込み装着を経たゴムホース素材一端側の縮径賦形嵌合孔内への入り込みがなされる。その後、外径縮径ジグの係合部がマンドレルの係合シャフト部に係合するまでの外径縮径ジグの装着の間においては、縮径賦形嵌合孔に入り込んだままのゴムホース素材が外径縮径ジグと共にマンドレルの縮径賦形シャフト部を覆うよう、ゴムホース素材へのマンドレルの挿入が継続して進む。こうしたマンドレル継続挿入の間にあっても、外径縮径ジグはガイドシャフト部による案内を受けているので、センターズレに起因する既述した不具合を回避できる。そして、縮径賦形嵌合孔に入り込んだゴムホース素材とマンドレルの位置関係は、外径縮径ジグの係合部とマンドレルの係合シャフト部との係合により定まるので、マンドレルの縮径賦形シャフト部とゴムホース素材の相対的な位置もゴムホース素材ごとに再現され、ゴムホース品質の向上にとっても好ましい。
【0017】
なお、本発明は、上記した製造方法に用いるマンドレルと外径縮径ジグとを有するジグセットとしても適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、その実施例を説明する。図1は製造対象となるゴムホースGHを一部破断して概略的に示す斜視図、図2はこのゴムホースGHの製造のためのマンドレルを示す概略斜視図である。
【0019】
図1に示すように、完成品としてのゴムホースGHは、3次元的に屈曲形成され、ホース一端側を内外径共に縮径状に賦形された縮径賦形ホース部GSとする。つまり、ゴムホースGHにおいて、この縮径賦形ホース部GSの部位を除くホース残余部GZでは、その内径・外径が縮径賦形ホース部GSより大きくされている。縮径賦形ホース部GSはホース端部において直管状とされ、ホース残余部GZは3次元的に屈曲している。
【0020】
図2に示すように、マンドレル100は、丸棒状をなし、一端側にマンドレル基部102を有し、他端側にゴムホース内径の縮径賦形用の賦形シャフト部110を有し、マンドレル基部102と賦形シャフト部110との間を、均一外径の中間シャフト部104としている。この中間シャフト部104は、図1に示した完成品としてのゴムホースGHと同じ3次元的な屈曲形状を備え、その外径はゴムホースGHの内径とほぼ同じとされている。
【0021】
賦形シャフト部110は、中間シャフト部104の一端側で連設シャフト部112を経て繋がり、この連設シャフト部112の側から、縮径賦形シャフト部114と、係合シャフト部116と、ガイドシャフト部118とを有する。連設シャフト部112は、中間シャフト部104と縮径賦形シャフト部114の両シャフト部をその外周が徐々に繋がるよう連設するものであり、本実施例では、円弧状とされている。連設シャフト部112をテーパ状とすることもできる。
【0022】
縮径賦形シャフト部114は、後述のホース製造過程におけるホース内径の縮径賦形に関与し、その外径は、図1の完成品のゴムホースGHにおけるホース残余部GZのホース内径およびゴムホース素材PGHの内径よりも小径であり、ゴムホースGHの縮径賦形ホース部GSにおける内径とほぼ同じである。係合シャフト部116は、環状凹所117を介在させて縮径賦形シャフト部114に繋がり、この環状凹所117にて後述の外径縮径ジグの位置決め機能を果たす。係合シャフト部116の外径は縮径賦形シャフト部114と同じとされている。ガイドシャフト部118は、係合シャフト部116を挟んで縮径賦形シャフト部114から同軸に突出形成され、その外径は縮径賦形シャフト部114より僅かに小径とされている。ガイドシャフト部118を縮径賦形シャフト部114と同径とすることもできる。
【0023】
次に、ゴムホースGHの製造プロセスについて説明する。図3はゴムホースGHの製造プロセスの手順を示した工程図である。この工程図に示すように、まず、加硫前のゴムホース素材PGHを準備する(ステップS100)。このゴムホース素材PGHは、加硫ゴム、例えば、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(EPDM)であれば、このEPDMゴムの加硫処理前の材料を押し出し成形手法等で成形したストレートの筒状体素材であり、完成品としてのゴムホースGHの長さと同じ長さでカッティングされたものである。図4はこのゴムホース素材PGHをマンドレル100と共に表した説明図である。図示するように、ゴムホース素材PGHは貫通孔を備え、この貫通孔の径はホース残余部GZの内径とほぼ同じか若干小さくされ、縮径賦形ホース部GSの内径より大きくされている。つまり、マンドレル100の縮径賦形シャフト部114や係合シャフト部116、ガイドシャフト部118は、その外径がゴムホース素材PGHの貫通孔孔径より小さく形成されていることになる。
【0024】
次に、マンドレル100をこのゴムホース素材PGHの貫通孔に挿入する(ステップS110)。図5はマンドレル挿入の様子を順を追って示す説明図である。図示するように、作業者は、ゴムホース素材PGHを両手で或いは図示しないジグで支え(図5(a)参照)、ゴムホース素材PGHの一端側から素材貫通孔にマンドレル100のガイドシャフト部118を差し入れる。そして、ゴムホース素材PGHを支えつつマンドレル100の屈曲した中間シャフト部104に倣うように、このゴムホース素材PGHを押し込む(図5(b)参照)。こうしたマンドレル100の挿入は、賦形シャフト部110のガイドシャフト部118がゴムホース素材PGHの末端側から突出するまで継続される。なお、マンドレル挿入に先立ち、マンドレル外表面に適宜な離型剤が塗布される。
【0025】
このステップS110でのマンドレル挿入後では、マンドレル100における賦形シャフト部110の縮径賦形シャフト部114をゴムホース素材PGHの一端側に位置させて、この縮径賦形シャフト部114をゴムホース素材PGHで覆う(図5(b)参照)。この状態において、マンドレル100は、縮径賦形シャフト部114と同軸で小径のガイドシャフト部118をゴムホース素材PGHから突出させる。
【0026】
また、このマンドレル挿入により、中間シャフト部104を覆う箇所では、ゴムホース素材PGHは、内径が中間シャフト部104の外径に倣って賦形される。この場合、ゴムホース素材PGHの貫通孔径はホース残余部GZの内径とほぼ同じか若干小さく、中間シャフト部104の外径はホース残余部GZの内径とほぼ同じあることから、ゴムホース素材PGHの内径が中間シャフト部104により拡張されたとしても、この内径拡張に伴う外径の拡張は若干に過ぎない。その一方、賦形シャフト部110の側では、ゴムホース素材PGHは、既述したように中間シャフト部104(詳しくは、ゴムホース内径・ゴムホース素材内径)より小径の縮径賦形シャフト部114を覆うことになる。
【0027】
次に、内外径賦形のための外径縮径ジグの当初装着を行う(ステップS120)。図6は外径縮径ジグ150の概略断面図、図7は外径縮径ジグ150の当初装着の様子を示す説明図である。図6に示すように、外径縮径ジグ150は、図1の完成品のゴムホースGHにおける縮径賦形ホース部GSの内外径をホース残余部GZより縮径賦形するためのものであり、縮径賦形嵌合孔152と、ガイド孔154とを同軸に備える。縮径賦形嵌合孔152は、開口端側がテーパ状のホース挿入案内部153とされ、嵌合孔内径は、ホース残余部GZの外径(詳しくは、ゴムホース素材PGHの外径)より小さくされており、縮径賦形ホース部GSの外径を規定する。よって、この縮径賦形嵌合孔152にゴムホース素材PGHが嵌合して入り込むことで、ホース外径の縮径賦形がなされる。こうしたホース外径の縮径に伴ってゴムホース素材PGHの内径も縮径されるが、この内径縮径は後述するように縮径賦形シャフト部114にて規定される。
【0028】
ガイド孔154は、マンドレル100のガイドシャフト部118が挿入できるような径で形成されており、このガイド孔154に入り込んだガイドシャフト部118にて、外径縮径ジグ150の案内が可能となる。
【0029】
外径縮径ジグ150は、縮径賦形嵌合孔152の底部側に係合室155を備え、この係合室にて鋼球156をスプリングにより出入り自在に備える。係合室155は、賦形シャフト部110における係合シャフト部116が入り込むものとされ、鋼球156は、係合シャフト部116の環状凹所117に入り込んで係合する。こうした係合により、マンドレル100(詳しくは、賦形シャフト部110)に対する外径縮径ジグ150の位置決めが行われる。
【0030】
この外径縮径ジグ150の当初装着に際しては、図7に示すように、外径縮径ジグ150をホース挿入案内部153の側からゴムホース素材PGHに近づけ、当該素材末端側から突出している賦形シャフト部110のガイドシャフト部118を、外径縮径ジグ150のガイド孔154に挿入する。これにより、ガイドシャフト部118は、その軸心方向、即ち縮径賦形シャフト部114、延いてはその外側の部分のゴムホース素材PGHの軸心方向に沿って外径縮径ジグ150を図中左方に案内する。つまり、ガイドシャフト部118は、外径縮径ジグ150の縮径賦形嵌合孔152の開口端であるホース挿入案内部153にゴムホース素材PGHの一端側が入り込む前の状態において、外径縮径ジグ150のガイド孔154に入り込み、ゴムホース素材PGHの外側への外径縮径ジグの嵌め込み装着の案内機能を果たすことになる。しかも、ガイドシャフト部118は縮径賦形シャフト部114と同軸であることから、このガイドシャフト部118は、縮径賦形シャフト部114を覆うゴムホース素材PGHに対してセンターが合った状態で外径縮径ジグ150を案内する。
【0031】
こうした外径縮径ジグ150の当初装着に続いては、ホース内外径賦形のための外径縮径ジグ150の装着を行う(ステップS130)。図8は外径縮径ジグ150の賦形用装着の様子を順を追って示す説明図である。この図8に示すように、作業者は、外径縮径ジグ150を、ガイドシャフト部118を案内にしてゴムホース素材PGHの側に押し込む。この押し込みにより、ゴムホース素材PGHの外側への外径縮径ジグ150の嵌め込み装着が進み、ゴムホース素材PGHは、その端部側から外径縮径ジグ150のホース挿入案内部153に倣って縮径賦形嵌合孔152に入り込み、縮径賦形嵌合孔152の底部に端部が当たるまで縮径賦形嵌合孔152に端部部分を嵌合させる(図8(a)参照)。こうした外径縮径ジグ150の嵌め込み装着は、既述したようにゴムホース素材PGHに対してセンター合わせができた状態での装着となる。また、ゴムホース素材PGHにあっては、外径縮径ジグ150における縮径賦形嵌合孔152の内径に外径が倣うことで、外径が縮径され、この外径縮径によりゴムホース素材PGHの内径も縮径される。この場合、外径縮径前の素材貫通孔径が縮径賦形シャフト部114やガイドシャフト部118より大きいことから、ゴムホース素材PGHの内径縮径はいわゆるフリーの状態で進む。
【0032】
ゴムホース素材PGHの端部が縮径賦形嵌合孔152の底部に当たった状態となると、外径縮径ジグ150の更なる押し込みにより(図8(b)参照)、ゴムホース素材PGHは、外径縮径ジグ150と一体となって図5に示した以上にマンドレル挿入が進むよう移動する。つまり、図5において、ゴムホース素材PGHの先端がマンドレル基部102に近づき、マンドレル挿入が最後まで進む。
【0033】
しかも、賦形シャフト部110の側では、上記したようにフリーの状態で内径縮径されたゴムホース素材PGHに対して、縮径賦形シャフト部114が素材貫通孔内に入り込むようになる。このため、ゴムホース素材PGHの内径が縮径賦形シャフト部114の外径に倣うことで、ゴムホース素材内径の縮径が規定される。こうした外径縮径ジグ150の嵌め込み装着による外径縮径ジグ150の縮径賦形嵌合孔152による外径縮径と、これに伴う縮径賦形シャフト部114による内径縮径の過程では、外径縮径ジグ150は、ガイドシャフト部118に案内されてゴムホース素材PGHとセンターが合った状態であることから、縮径賦形シャフト部114の素材貫通孔内への入り込みもセンターが合った状態となる。なお、上記したフリーの状態での内径縮径が縮径賦形シャフト部114の外径より小径となるように進んだとしても、上記したようにセンターが合った状態での縮径賦形シャフト部114の入り込みであることから、特段の支障はなく、縮径賦形シャフト部114の外径による内径縮径が規定される。
【0034】
本実施例では、ゴムホース素材PGHと一体となった外径縮径ジグ150の押し込み(嵌合装着)が、賦形シャフト部110の係合シャフト部116における環状凹所117に外径縮径ジグ150の鋼球156が入り込むことで終了するようにした(図8(c)参照)。つまり、鋼球の入り込みによる節度感により、作業者は外径縮径ジグ150の嵌合装着を終了することとし、この状態で、マンドレル挿入についても終了する。図9はマンドレル挿入および外径縮径ジグ150の嵌合装着が終了した状態のゴムホース素材PGHの様子を概略的に示す斜視図である。
【0035】
図8(c)や図9に示す状態では、環状凹所117への鋼球156の上記した入り込みにより、マンドレル100、延いては縮径賦形シャフト部114に対する外径縮径ジグ150の位置決めがなされることになる。つまりは、縮径賦形シャフト部114を覆うゴムホース素材PGHに対する縮径賦形嵌合孔152の位置関係も定まり、縮径賦形嵌合孔152に嵌合したゴムホース素材PGHの領域が図1に示す縮径賦形ホース部GSとなる。
【0036】
こうしてマンドレル挿入と外径縮径ジグ装着が終了すると、図9に示す状態のまま、図示しない台車等に載置して加硫処理装置まで搬送し、当該装置にて加硫処理を行って台車ごと装置から搬出する(ステップS140)。これにより、ゴムホース素材PGHは加硫済みのゴムホースGHとなるが、この状態では、ゴムホースGHは図9に示したままの形態であるので、完成品のGHとすべく、外径縮径ジグ150の取り外し(ステップS150)、マンドレル100からのGHの取り外しを行う(ステップS160)。この結果、図1に示した完成品のゴムホースGHが得られる。
【0037】
以上説明した本実施例によれば、次のような利点がある。
(1)ホース外径の縮径賦形用の縮径賦形嵌合孔152を有する外径縮径ジグ150をゴムホース素材PGHにその端部側から嵌め込み装着するに当たり、このゴムホース素材PGHの端部から突出し、このゴムホース素材PGHが覆う縮径賦形シャフト部114およびゴムホース素材PGHと同軸のガイドシャフト部118にて外径縮径ジグ150をセンター合わせして案内する。このため、ゴムホース素材PGHに対してセンターが合った状態で外径縮径ジグ150をゴムホース素材PGHの外側に嵌め込み装着できるので、この嵌め込み装着当初において、外径縮径ジグ150のホース挿入案内部153や縮径賦形嵌合孔152の周壁でゴムホース素材端部外縁を不用意に擦るようなことを回避できる。この結果、ゴムホース端部外縁にめくれや膨らみを招かないようにして、外径縮径ジグ150の縮径賦形嵌合孔152にてゴムホース素材PGHの一端側の外径を縮径できることから、加硫処理を経て得られた縮径賦形済みの完成品のゴムホースGHにおける品質向上をもたらすことができる。
【0038】
(2)外径縮径ジグ150の当初挿入(ステップS120)ばかりかその後の挿入(ステップS130)にあっても、ガイドシャフト部118によるセンター合わせと案内が行われるので、外径縮径ジグ150を、ゴムホース素材PGHに対してずれて装着してしまうようなことがない。また、案内の再現性も高い。よって、外径縮径ジグ150の装着作業には熟練が不要となり、簡便である。
【0039】
(3)外径縮径ジグ150を嵌め込み装着する以前に、マンドレル100をゴムホース素材PGHに挿入すればよいことから、図5に示すマンドレル挿入作業の過程において、常時、マンドレル100とゴムホース素材PGHとの位置関係を把握できる。よって、マンドレル先端部位であるガイドシャフト部118や縮径賦形シャフト部114がゴムホース素材端部近くまで達した場合であっても、これらマンドレル先端部位とゴムホース素材PGHとの位置関係を視認できるので、マンドレル先端部位とゴムホース素材PGHとのセンター合わせが簡便となり、無用なゴムホース素材PGHの屈曲、延いてはゴムホースGHとしての外観不良を抑制できる。
【0040】
(4)本実施例では、マンドレル100の賦形シャフト部110において、縮径賦形シャフト部114とガイドシャフト部118との間に係合シャフト部116を設け、外径縮径ジグ150の鋼球156と協働して、マンドレル100(詳しくは、縮径賦形シャフト部114)に対する外径縮径ジグ150の位置決め、延いては、ゴムホース素材PGHと縮径賦形嵌合孔152との位置決めを行う。この結果、ゴムホース素材PGHを所定位置(詳しくは、素材端部が縮径賦形嵌合孔152の底部に当たった位置)まで縮径賦形嵌合孔152に嵌合した上で、縮径賦形嵌合孔152とPGHと縮径賦形シャフト部114の相互の位置関係を高い再現性で規定できる。このため、完成品としてのゴムホースGHにおけるホース残余部GZの長さ、その内外径の縮径賦形程度が均一となり、ゴムホース品質の向上の上から好ましい。
【0041】
(5)外径縮径ジグ150の嵌め込み装着後にあっても、ガイドシャフト部118はガイド孔154に入り込んだままであるので、加硫装置へのゴムホース素材の搬出入時や加硫期間にあっては外径縮径ジグ150の脱落を起こさない。よって、外径縮径ジグ150の脱落に起因する不具合、例えば加硫装置搬入時や加硫期間におけるジグ脱落による縮径賦形不良を回避できる他、ジグ脱落に対する配慮が不要となり、作業性が高まる。
【0042】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。
【0043】
例えば、外径縮径ジグ150を、縮径賦形嵌合孔152を有するホース縮径加工部位と、鋼球156およびガイド孔154を有するジグ位置決め部位とに分け、この両部位を分割・装着可能な構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】製造対象となるゴムホースGHを一部破断して概略的に示す斜視図である。
【図2】このゴムホースGHの製造のためのマンドレルを示す概略斜視図である。
【図3】ゴムホースGHの製造プロセスの手順を示した工程図である。
【図4】このゴムホース素材PGHをマンドレル100と共に表した説明図である。
【図5】マンドレル挿入の様子を順を追って示す説明図である。
【図6】外径縮径ジグ150の概略断面図である。
【図7】外径縮径ジグ150の当初装着の様子を示す説明図である。
【図8】外径縮径ジグ150の賦形用装着の様子を順を追って示す説明図である。
【図9】マンドレル挿入および外径縮径ジグ150の嵌合装着が終了した状態のゴムホース素材PGHの様子を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
100…マンドレル
102…マンドレル基部
104…中間シャフト部
110…賦形シャフト部
112…連設シャフト部
114…縮径賦形シャフト部
116…係合シャフト部
117…環状凹所
118…ガイドシャフト部
150…外径縮径ジグ
152…縮径賦形嵌合孔
153…ホース挿入案内部
154…ガイド孔
155…係合室
156…鋼球
GH…ゴムホース
GS…縮径賦形ホース部
GZ…ホース残余部
PGH…ゴムホース素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が内外径共に縮径状に賦形されたゴムホースの製造方法であって、
加硫前のゴムホース素材に棒状のマンドレルを挿入して、該マンドレルの端部に前記ゴムホース素材の内径よりも小径に形成されたホース内径縮径賦形用の縮径賦形シャフト部を前記ゴムホース素材の一端側に位置させて、前記縮径賦形シャフト部を前記ゴムホース素材で覆う工程と、
前記縮径賦形シャフト部を覆った側の前記ゴムホース素材の一端側から、前記ゴムホース素材の外径よりも小径に形成されたホース外径縮径賦形用の縮径賦形嵌合孔を有する外径縮径ジグを前記ゴムホース素材の外側に嵌め込み装着して、前記ゴムホース素材の一端側を前記縮径賦形嵌合孔内に位置させる工程と、
前記マンドレルが挿入済みで前記外径縮径ジグが外側に嵌め込み装着済みの状態で、前記ゴムホース素材を加硫する工程とを備え、
前記マンドレルは、前記縮径賦形シャフト部から、前記縮径賦形シャフト部の外径と同径以下の外径で形成されたガイドシャフト部を同軸に突出して備え、
前記外径縮径ジグは、前記ガイドシャフト部が入り込むガイド孔を前記縮径賦形嵌合孔と同軸に備え、
前記ガイドシャフト部は、前記外径縮径ジグの前記縮径賦形嵌合孔の開口端に前記ゴムホース素材の一端側が入り込む前の状態において前記外径縮径ジグの前記ガイド孔に入り込み、前記ゴムホース素材の外側への前記外径縮径ジグの嵌め込み装着の案内機能を果たす
ゴムホースの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のゴムホースの製造方法であって、
前記マンドレルは、前記縮径賦形シャフト部と前記ガイドシャフト部との間に、前記外径縮径ジグの位置関係規定用の係合シャフト部を備え、
前記外径縮径ジグは、前記係合シャフト部に係合して前記マンドレルに対する前記外径縮径ジグの位置決めを行う係合部を備え、
前記マンドレルの前記縮径賦形シャフト部を前記ゴムホース素材で覆う工程では、前記係合シャフト部を前記ゴムホース素材の内部に位置させたまま前記ガイドシャフト部を前記ゴムホース素材から突出させ、該突出した前記ガイドシャフト部が前記外径縮径ジグの前記ガイド孔に入り込んで前記案内機能を果たし得るまで前記ゴムホース素材に前記マンドレルを挿入し、
前記ゴムホース素材の一端側を前記外径縮径ジグの前記縮径賦形嵌合孔内に位置させる工程では、前記係合部が前記係合シャフト部に係合するまで、前記ガイドシャフト部による案内を受けつつ前記外径縮径ジグを前記ゴムホース素材の一端側から嵌め込み装着する
ゴムホースの製造方法。
【請求項3】
加硫前のゴムホース素材を加硫して一端側が内外径共に縮径状に賦形されたゴムホースを製造する際に用いるジグセットであって、
前記ゴムホース素材に挿入される棒状のマンドレルと、該マンドレルが挿入済みの前記ゴムホース素材の一端側の外側に嵌め込み装着される外径縮径ジグとを備え、
前記マンドレルは、
前記ゴムホース素材の内径よりも小径でマンドレル端部側に形成されたホース内径縮径賦形用の縮径賦形シャフト部と、
該縮径賦形シャフト部と同軸に突出して連設され、前記縮径賦形シャフト部の外径と同径以下の外径で形成されたガイドシャフト部と、
該ガイドシャフト部と前記縮径賦形シャフト部との連設部に形成された係合シャフト部とを備え、
前記外径縮径ジグは、
前記ゴムホース素材の外径よりも小径に形成され、前記ゴムホース素材が一端側から嵌合されるホース外径縮径賦形用の縮径賦形嵌合孔と、
該縮径賦形嵌合孔と同軸に形成され、前記ゴムホース素材の外側への装着の際に前記ガイドシャフト部が入り込むガイド孔と、
前記係合シャフト部に係合して前記マンドレルに対する前記外径縮径ジグの位置決めを行う係合部とを備え、
前記ガイドシャフト部は、前記外径縮径ジグの前記縮径賦形嵌合孔の開口端に前記ゴムホース素材の一端側が入り込む前の状態において、前記外径縮径ジグの前記ガイド孔に入り込んで前記ゴムホース素材の外側への前記外径縮径ジグの装着の案内機能を果たし、
前記マンドレルは、前記係合シャフト部を前記ゴムホース素材の内部に位置させたまま前記ガイドシャフト部が前記ゴムホース素材から突出し、該突出した前記ガイドシャフト部が前記外径縮径ジグの前記ガイド孔に入り込んで前記案内機能を果たし得るまで前記ゴムホース素材に挿入され、
前記外径縮径ジグは、前記係合部が前記係合シャフト部に係合するまで、前記ガイドシャフト部による案内を受けつつ前記ゴムホース素材の一端側から装着される
ゴムホースの製造ジグセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−92966(P2007−92966A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286376(P2005−286376)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】