説明

ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】従来の再生ゴムや粉末ゴム等を配合したゴム組成物に比べて高い破壊特性を有し、廃ゴムのマテリアルリサイクル率を向上させることが可能なゴム組成物を提供する。
【解決手段】廃ゴムのゴムチップを微粉砕して得られる粉末ゴムを含有するゴム組成物であって、該粉末ゴムが、回転ロールと該回転ロールに対向配置した固定刃とからなり、前記回転ロールは、その周面に回転軸方向に延在した等間隔の溝を備え、かつ、前記固定刃は前記回転ロールの外周円に対応した円周面に等間隔に形成された複数条の刃を形成する溝を有する破砕機の前記回転ロールと前記固定刃間に前記ゴムチップを投入し、前記回転ロールを回転させることによって前記ゴムチップを微粉砕して得られた粉末ゴムであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関し、特に、高い破壊特性を維持し、使用済みタイヤ等のゴム製品や、ゴム製品の製造過程で生じたゴム屑などから得られる廃ゴムのマテリアルリサイクル率を向上し得るゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の高まりと共に、廃タイヤなどの使用済みゴム製品や、ゴム製品の製造過程で生じたゴム屑などから得られた廃ゴムを破砕したゴム片や粉末ゴムをそのまま使用する、いわゆる、マテリアルリサイクル率の向上が求められている。
【0003】
従来、粉末ゴムを得るための代表的な手法として、廃タイヤなどの使用済みゴム製品などから得られた廃ゴムを粉砕したゴムチップを、その周面に粉砕用の凹凸を備えた一対のロールからなる破砕機によって破砕するロール粉砕法が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記破砕機では、粉砕箇所は互いに回転ロールが接触する部分、つまり一箇所に限られているため、一対のロール間にゴムチップを通過させてもそれ程破砕が進まない。そのため、#200(0.07mm)以下といった小さい粒径の粉末ゴムを得るのが困難であり、上記破砕機でゴムチップを破砕することによって得られる粉末ゴムを新ゴムに単に添加するのみではゴム特性(特に破壊特性)の低下が避けられないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、従来の再生ゴムや粉末ゴム等を配合したゴム組成物に比べて高い破壊特性を有し、使用済みタイヤ等のゴム製品やゴム製品の製造過程で生じたゴム屑から得られる廃ゴムのマテリアルリサイクル率を向上させることが可能なゴム組成物、並びに該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の構造を有する、回転ロールとこれに対向配置した固定刃とからなる破砕機で廃ゴムのゴムチップを微粉砕して得られた従来よりも粒径が小さい粉末ゴムをゴム組成物に配合することによって、十分に高い破壊特性を維持しているゴム組成物を得ることができ、該ゴム組成物をタイヤを始めとする各種ゴム製品に使用することにより、廃ゴムのマテリアルリサイクル率を向上させることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明のゴム組成物は、廃ゴムのゴムチップを微粉砕して得られる粉末ゴムを含有するゴム組成物であって、該粉末ゴムが、回転ロールと該回転ロールに対向配置した固定刃とからなり、前記回転ロールは、その周面に回転軸方向に延在した等間隔の溝を備え、かつ、前記固定刃は前記回転ロールの外周円に対応した円周面に等間隔に形成された複数条の刃を形成する溝を有する破砕機の前記回転ロールと前記固定刃間に前記ゴムチップを投入し、前記回転ロールを回転させることによって前記ゴムチップを微粉砕して得られた粉末ゴムであることを特徴とする。
【0008】
本発明のゴム組成物の好適例においては、前記破砕機において、前記固定刃を、前記回転ロールの外周に沿って複数個配置したことを特徴とする。
【0009】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記破砕機において、前記回転ロールと前記固定刃とは互いの対向端面間に実質上隙間が生じないように配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記破砕機において、前記固定刃の溝は該固定刃の前記回転ロール側外周面から該固定刃と該回転ロール間に投入されたゴムチップが推進される方向に向かってその深さを増すとともに前記回転ロールの中心を通る方向に形成された壁面で終わる断面形状を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記破砕機において、前記固定刃の前記回転ロールに対向する刃巾がその溝間ピッチよりも短いことを特徴とする。
【0012】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記破砕機において、前記刃巾は0.5〜5mmであり、前記溝間ピッチは1〜20mmであることを特徴とする。
【0013】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記破砕機において、前記回転ロールと前記固定刃との間から排出された破砕ゴムチップを、該回転ロールと該固定刃の間に再投入して破砕処理を繰り返すことを特徴とする。
【0014】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記再投入と破砕処理の繰り返しは、荒破砕用の溝幅の溝を備えた荒破砕用回転ロールと、仕上げ破砕用の溝幅が前記荒破砕用溝幅よりも狭い溝を備えた仕上げ破砕用回転ロールとからなり、前記荒破砕と前記仕上げ破砕とをそれぞれ所定回数繰り返す破砕機によって行うことを特徴とする。
【0015】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記破砕処理において、更に凝集防止材を添加することを特徴とする。
【0016】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記破砕処理によって得られた粉末ゴムを更に分級し、貯留する。
【0017】
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記粉末ゴムが200メッシュのフィルターを通過したものを75質量%以上含有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定の構造を有する破砕機で廃ゴムのゴムチップを微粉砕して得られた粉末ゴムを含有し、高い破壊特性を有するゴム組成物並びに該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することができ、また、上記粉末ゴムを含有するゴム組成物をタイヤを始めとする各種ゴム製品に使用することによって、廃ゴムのマテリアルリサイクル率を向上させることができるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の詳細について説明する。本発明のゴム組成物は、廃ゴムのゴムチップを微粉砕して得られる粉末ゴムを含有するゴム組成物であって、該粉末ゴムが、回転ロールと該回転ロールに対向配置した固定刃とからなり、前記回転ロールは、その周面に回転軸方向に延在した等間隔の溝を備え、かつ、前記固定刃は前記回転ロールの外周円に対応した円周面に等間隔に形成された複数条の刃を形成する溝を有する破砕機の前記回転ロールと前記固定刃間に前記ゴムチップを投入し、前記回転ロールを回転させることによって前記ゴムチップを微粉砕して得られた粉末ゴムであることを特徴とする。本発明のゴム組成物に配合される粉末ゴムは、#100(0.14mm)以下、好ましくは#200(0.07mm)以下の小さい粒径を有し、当該粉末ゴムをゴム組成物に配合することによって、高い破壊特性を有するゴム組成物を得ることができる。
【0021】
図1に、本発明のゴム組成物に配合する粉末ゴムを製造するのに好適な製造設備の一例の概略図を示す。図1に示す製造設備は、廃ゴムのゴムチップを微粉砕する破砕機10と、破砕機10より排出された粉末ゴムを粒径に応じて分級するふるい機16と、分級した粉末ゴムを貯留するストレージタンクT1、T2、T3とを備える。
ここで、破砕機10で破砕する廃ゴムのゴムチップとして、廃タイヤなどの使用済みゴム製品や、ゴム製品の製造過程で生じたゴム屑などを周知のチップ化設備でチップ化したものを用いることができ、該廃ゴムのゴムチップの粒径は2mm〜4mmが好ましい。
【0022】
図示例の製造設備において、破砕機10は、1軸ロールからなる回転ロール12と、該回転ロール12の外周に沿って配置された複数個、図示例では3個(枚)の固定刃14とからなり、複数段、図示例では2段設けられている。なお、固定刃14の数は、破砕能力をさらに向上させるという観点から、3枚以上であることが好ましい。
【0023】
図2Aは上記破砕機10の断面を示す断面図であり、図2Bは図2Aの溝部分を示した拡大図である。図示のように、破砕機10は、回転ロール12と固定刃14とからなっている。図示の破砕機10において、回転ロール12と固定刃14とは互いの対向端面間に実質上隙間が生じないように配置されていることが好ましい。これは隙間があるとゴムのチヂレが発生するからである。そのため回転ロール12の固定刃14に対する真直度は0、即ち回転ロール12の回転軸は固定刃14の対向面に対して真直であることが好ましい。真直でないと両者間に隙間ができて上述のようにゴムのチヂレが発生する。
【0024】
図示の破砕機10において、回転ロール12は、ロールの表面に等間隔に複数の溝12(1)を備えている。溝12(1)は、従来のものと同様に回転ロール12の表面に例えばローレット加工で形成された両綾目で構成される。なお、溝12(1)を片綾目で構成すると破砕時にゴムチップの微細化を妨げるゴムのチヂレができることが判明したため、図示例では上述のように両綾目で溝を構成している。
【0025】
図示の破砕機10において、固定刃14の回転ロール12の周面と対向する面は、前記回転ロール12の外周面に対応して、その径と略同一の径を有する円周面に形成されており、この円周面には等間隔に溝(又は刃)14(1)が形成されている。
【0026】
ここで、前記固定刃14の溝14(1)は、図示のように固定刃本体と一体に形成された断面鋸溝状をなして刃を形成し、その溝14(1)は、前記円周面に沿って等間隔で設けられ、ここでは6個設けられている。溝14(1)の溝壁と次の溝の始点間は円周面として形成されている。この周面の幅(刀巾)Pは、固定刃14の溝間ピッチQより短いことが好ましい。なお、刃巾Pは、0.5〜5mm、好ましくは1〜2mmである。この刀巾がそれ以上大きく、例えば6mmであると、ゴムのチヂレが発生するからである。また、溝間ピッチQは1〜20mm、好ましくは6mmであり、20mmを越えるとゴムのチヂレが発生する。
【0027】
また、固定刃14側の溝14(1)の形状は、投入された廃ゴムのゴムチップ又は破砕ゴムチップGの移動方向側の溝壁面が、図示のように回転ロール12の中心Oと前記溝先端部とを結ぶ線の延長上に形成されており、回転ロール12の回転方向に向かって深くなる図2Bに示す形状である。また、この溝14(1)は、図2Bに示すように、溝底面の外周面に対する傾斜角θが鋭角であることが好ましい。これは溝14の傾斜を図2Cのようにこれと逆にすると、破砕時にゴムのチヂレが発生し微細化できず好ましくないからである。また、前記溝14(1)を図2Dのように直角溝に形成すると、溝の角部でゴムのチヂレが発生するため好ましくない。
【0028】
図2Aに示すように、ゴムチップ又は破砕ゴムチップGの投入口はテーパー面Sに形成されている。これはテーパーを付与せずにストレートに形成した場合よりもゴムチップGの噛み込みがよいからである。更に、回転ロール12の溝12(1)のピッチRは、#6〜25を荒仕上げ用とし、#26〜59を仕上げ用とする。例えば#5では粗すぎてゴムチップGが小さくならず、逆に#60では細かすぎてゴムのチヂレが発生する。
【0029】
図3は、以上で説明した破砕機10による廃ゴムのゴムチップの破砕処理の様子を概略的に示す断面図である。本発明のゴム組成物に配合する粉末ゴムを得るには、廃タイヤなどの使用済みゴム製品や、ゴム製品の製造過程で生じたゴム屑を周知のチップ化設備にて破砕して得られたゴムチップGを破砕機10の回転ロール12と固定刃14間に投入し、回転ロール12を回転させ、回転ロール12と固定刃14間を通過する際の剪断力によりゴムチップGの破砕処理を行う。この破砕処理は、1個(枚)の固定刃14毎にそれに設けた溝14(1)の数だけ繰り返し行われる。
ここで、1個の固定刃14による破砕処理で発生する破砕ゴムチップGは大小さまざまであり、図3に示すように、比較的大きな破砕ゴムチップGは固定刃14を離れると直ちに落下し、また、比較的小さな破砕ゴムチップGは、回転ロール12の溝12(1)に挟まり回転ロール12と共に回転を続け、固定刃14と略対称位置に配置されたブラシ18によって掻き落とされる。これらの回転ロール12と固定刃14との間から排出された破砕ゴムチップGを、該回転ロールと該固定刃の間に再投入して破砕処理を繰り返す。このようにして再投入して破砕処理を繰り返すことによってゴムチップGを微粉砕して、最終的に#200以下の粒径を有する粉末ゴムを得ることができる。
【0030】
ここで、破砕ゴムチップGの再投入と破砕処理の繰り返しを、荒破砕用の溝幅の溝を備えた荒破砕用回転ロールと、仕上げ破砕用の溝幅が前記荒破砕用溝幅よりも狭い溝を備えた仕上げ破砕用回転ロールとからなり、前記荒破砕と前記仕上げ破砕とをそれぞれ所定回数繰り返す破砕機によって行ってもよい。当該構成の破砕機で再投入と破砕処理の繰り返しを行うことによって、より効率良く小さい粒径の粉末ゴムを得ることができる。
当該構成の破砕機の一例として、図1に示すように、荒破砕用回転ロールとして荒仕上げ用の溝ピッチR(図2)[例えば#20(0.9mm)]を有する溝を備えた回転ロールを備える破砕機10aと、仕上げ破砕用回転ロールとして溝ピッチRが前記荒破砕用回転ロールの溝ピッチRよりも狭い[例えば#40(0.9mm)]溝を備えた回転ロールを備える破砕機10bとを2段配置したものが挙げられ、前段の当該破砕機10aで、破砕ゴムチップGの粒径が#100(0.14mm)程度となるまで荒破砕を繰り返し行い、次に、荒破砕したゴムチップGを後段の当該破砕機10bで、破砕ゴムチップGの粒径が#200(0.07mm)程度となるまで仕上げ破砕を繰り返し行って、十分に微細化された粉末ゴムを得ることができる。
ただし、前記荒破砕と前記仕上げ破砕とをそれぞれ所定回数繰り返すことが可能な破砕機の構成はこれに限定されず、例えば、荒仕上げ用と仕上げ用にそれぞれ複数段数の破砕機を用いても、或いはその間にふるい機を配置して破砕ゴムチップGを分級し、その粒径に応じて以前の破砕機に再投入して破砕を繰り返すように構成してもよい。また、複数段数の破砕機を用いる場合、それぞれの破砕機の回転ロールの溝幅を順次狭くなるように変化させて破砕を行うこともでき、このように溝幅を変化させることによって、より微細化された粉末ゴムを得ることができる。
なお、設備を小型化し、製造コストを抑え、より効率良く小さい粒径の粉末ゴムを得るという観点から、上記荒仕上げ用回転ロールを備える破砕機と、上記仕上げ用回転ロールを備える破砕機とを2段配置して、それぞれの破砕機で荒破砕と仕上げ破砕を繰り返すことが好ましい。
【0031】
なお、上記破砕機10による破砕処理において、凝集防止材を添加してもよい。凝集防止材を添加することによって、粉末ゴムの凝集を防止し、低い粒径を有する粉末ゴムをより多く得ることが可能になる。上記凝集防止材としては、炭酸カルシウム、アルミナ等の充填材や、カーボンブラック、タルク、シリカ等の補強性充填材等が挙げられるが、同じ粒径の粉末ゴムを得るのに破砕回数を少なくすることができることから、カーボンが好ましい。また、凝集防止材の添加量は、上記粉末ゴム100質量部に対して10〜20質量部の範囲が好ましい。凝集防止材の添加量が10質量部未満では、粉末ゴムの凝集を十分に防止することができず、一方、20質量部を超えると、最終的に得られる製品の利用分野が限られることがある。
【0032】
なお、本発明のゴム組成物に配合する粉末ゴムを得るにあたって、図1に示すように、前記破砕処理によって得られた粉末ゴムを更に周知のふるい機16で分級し、分級した粉末ゴムを周知のストレージタンクT1、T2、T3にて貯留してもよい。
【0033】
本発明のゴム組成物に配合する粉末ゴムは、200メッシュのフィルターを通過したものを75質量%以上含有することが好ましい。そのため、上記破砕機を用いて製造される粉末ゴムの粒径は0.074mm(♯200)以下であることが好ましい。
【0034】
本発明のゴム組成物において、上述した粉末ゴムの含有量は、新ゴム100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、1〜30質量部の範囲が更に好ましい。粉末ゴムの含有量が40質量部を超えると、ゴム組成物の破壊特性を十分に確保できないことがある。
【0035】
本発明のゴム組成物に用いる新ゴムとしては、特に制限はなく、例えば、天然ゴム(NR)の他、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等の合成ゴムが挙げられる。これら新ゴムは、一種単独で用いても、複数種を混合して用いてもよい。
【0036】
本発明のゴム組成物には、上述の粉末ゴム、新ゴムの他、充填材、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、軟化剤等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。なお、本発明のゴム組成物は、新ゴムに対して、上記粉末ゴムと、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0037】
本発明の空気入りタイヤは、上述したゴム組成物をいずれかの部材に適用したことを特徴とする。上述したゴム組成物は、十分な破壊特性を有しているため、トレッドを始めとしてタイヤの種々の部材に使用することができる。なお、本発明の空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
廃ゴム成分として、本発明に従う粉末ゴムA、市販の再生ゴム及び市販の粉ゴム(24メッシュ品)をそれぞれ準備した。なお、粉末ゴムAは下記のようにして製造した。
【0040】
<粉末ゴムAの製造方法>
図1に示す製造設備を用いて、粉末ゴムを製造した。なお、ゴムチップとしては、粒径が3mmのゴムチップを使用し、また、固定刃14の回転ロール12に対する刀巾Pは1.25mm、固定刃14の溝間ピッチQは6mmである。更に、破砕機10による破砕処理中に、凝集防止材としてカーボンブラックを粉末ゴム100質量部に対して20質量部の割合で添加した。得られた粉末ゴムを200メッシュのふるいに掛け、当該ふるいを通過したもののみを含む粉末ゴムAを得た。
【0041】
<ゴム組成物の調製>
新材のゴム成分としてのスチレンブタジエンゴム(油展SBR)137.5質量部に対して、下記表1に示す配合割合で上記廃ゴム成分及び各種配合剤を配合し、90ccのプラストミルを用いて混練することにより、各ゴム組成物を得た。なお、廃ゴム成分及び粉末硫黄の配合量は、表2及び表3に示す通りである。また、混練は、以下のように2工程に分けて実施した。即ち、まず、第1工程で、廃ゴム成分を、油展SBR、カーボンブラック、ステアリン酸及び老化防止剤と共に最高温度160℃で混練し、次に、第2工程にて、第一工程で得られたゴム組成物と、亜鉛華、加硫促進剤A、加硫促進剤B、加硫促進剤C及び粉末硫黄とを、最高温度105℃で混練した。なお、新ゴムのみを配合した比較例1についても、廃ゴム成分を添加しなかった以外は、同様の手法にて混練を行った。
【0042】
<ゴム組成物及びそれを用いたタイヤの評価>
上記のようにして得られたゴム組成物を160℃で13分間加圧加硫することにより、加硫ゴムサンプルを作製し、各加硫ゴムサンプルに対して下記の方法で破壊特性(Tb)を測定・評価した。また、下記の方法に従って各ゴム組成物を用いた空気入りタイヤの実地耐摩耗性を評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0043】
(1)破壊特性の評価方法
JIS K6301に準拠して破壊強度(Tb)を測定し、比較例1(廃ゴム成分を配合せず、新ゴムのみを使用)の値を100として、指数表示した。指数値が大きい程、破壊特性が良好であることを示す。
【0044】
(2)実地耐摩耗性
各ゴム組成物をトレッドゴムとして適用し、サイズ195/65R15の乗用車用空気入りタイヤ(PSR)をそれぞれ作製し、実地で各タイヤの耐摩耗性を評価した。結果は、比較例1の値を100として指数表示した。指数値が大きい程、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0045】
【表1】

【0046】
*1 SBR(油展)#1712[JSR株式会社製], ゴム成分100質量部当たりアロマティックオイル37.5質量部を含有する油展ゴム.
*2 シースト7HM[東海カーボン株式会社製].
*3 ノクラック6C[大内新興化学工業株式会社製].
*4 ノクセラーDM−P[大内新興化学工業株式会社製].
*5 ノクセラーNS−P[大内新興化学工業株式会社製].
*6 ノクセラーD[大内新興化学工業株式会社製].
【0047】
【表2】

【0048】
*7 24メッシュ品の粉ゴムより得られた再生ゴム[村岡ゴム工業株式会社製].
*8 24メッシュ品[村岡ゴム工業株式会社製].
【0049】
【表3】

【0050】
*9 図1に示す製造設備で製造した粉末ゴムA, 200メッシュのフィルターに掛けて通過したもののみを含む.
【0051】
表2及び表3の結果から明らかなように、本発明に従う粉末ゴムAを含有する実施例1〜3のゴム組成物は、新ゴムのみを用いた比較例1のゴム組成物と比べて遜色のない優れた破壊特性を有することが確認された。また、かかるゴム組成物を用いた実施例のタイヤについても、比較例1のタイヤに比べて遜色のない優れた耐摩耗性を有することが確認できた。
【0052】
一方、市販の再生ゴムや粉ゴムを用いた比較例2〜5のゴム組成物は、比較例1に比べて破壊特性の低下が大きく、また、該ゴム組成物を用いた比較例2〜5のタイヤは、比較例1に比べて耐摩耗性の低下が大きかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のゴム組成物に配合する粉末ゴムを製造するのに好適な製造設備の一例の概略図である。
【図2】図2Aは、図1に示す破砕機10の断面を示す断面図であり、かつ図2Bは図2Aの溝部分を示した拡大図である。図2C、図2Dはそれぞれ溝部分の比較例を示す。
【図3】破砕機10による廃ゴムのゴムチップの破砕処理の様子を概略的に示す破砕機10の断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 破砕機
12 回転ロール
12(1) 溝
14 固定刃
14(1) 溝
16 ふるい機
18 ブラシ
G ゴムチップ又は破砕ゴムチップ
P 刃先の巾
Q 溝のピッチ
S テーパー面
T1 ストレージタンク
T2 ストレージタンク
T3 ストレージタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃ゴムのゴムチップを微粉砕して得られる粉末ゴムを含有するゴム組成物であって、該粉末ゴムが、回転ロールと該回転ロールに対向配置した固定刃とからなり、前記回転ロールはその周面に回転軸方向に延在した等間隔の溝を備え、かつ、前記固定刃は前記回転ロールの外周円に対応した円周面に等間隔に形成された複数条の刃を形成する溝を有する破砕機の前記回転ロールと前記固定刃間に前記ゴムチップを投入し、前記回転ロールを回転させることによって前記ゴムチップを微粉砕して得られた粉末ゴムであることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記破砕機において、前記固定刃を前記回転ロールの外周に沿って複数個配置したことを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記破砕機において、前記回転ロールと前記固定刃とは互いの対向端面間に実質上隙間が生じないように配置されていることを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記破砕機において、前記固定刃の溝は該固定刃の前記回転ロール側外周面から、該固定刃と該回転ロール間に投入されたゴムチップが推進される方向に向かってその深さを増すとともに前記回転ロールの中心を通る方向に形成された壁面で終わる断面形状を有することを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記破砕機において、前記固定刃の前記回転ロールに対向する刃巾がその溝間ピッチよりも短いことを特徴とする請求項4記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記破砕機において、前記刃巾は0.5〜5mmであり、前記溝間ピッチは1〜20mmであることを特徴とする請求項5記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記破砕機において、前記回転ロールと前記固定刃との間から排出された破砕ゴムチップを、該回転ロールと該固定刃の間に再投入して破砕処理を繰り返すことを特徴とする請求項1記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記再投入と破砕処理の繰り返しは、荒破砕用の溝幅の溝を備えた荒破砕用回転ロールと、仕上げ破砕用の溝幅が前記荒破砕用溝幅よりも狭い溝を備えた仕上げ破砕用回転ロールとからなり、前記荒破砕と前記仕上げ破砕とをそれぞれ所定回数繰り返す破砕機によって行うことを特徴とする請求項7記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記破砕処理において、更に凝集防止材を添加することを特徴とする請求項7又は8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記破砕処理によって得られた粉末ゴムを更に分級し、貯留する請求項7又は8記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記粉末ゴムが200メッシュのフィルターを通過したものを75質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−152218(P2007−152218A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350514(P2005−350514)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】