説明

ゴム部材の接合装置及び接合方法

【課題】ゴム部材の端部同士を重ねて接合する際に、接合面積を増大させることで従来よりも少ない接合面積で接合できるようにする。
【解決手段】ゴム部材(タイヤ構成部材)70の一方の端部71を上側に他方の端部72を下側に重ね合わせて、前記ゴム部材70の端部同士を接合するための接合装置であって、傾斜軸の回りで回転する押圧ロール(円盤状ロール)45を、前記重ね合わせたゴム部材70の上側端部71に押し付けて転動させ、その時生じるせん断力で、前記上側端部71を延伸させ、前記両端部71、72間の接合面積を増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム部材の端部同士を突き合わせて接合するゴム部材の接合装置、及びゴム部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム部材、例えばタイヤ構成部材の端部同士を成形ドラム上で上下に、つまり、一方をタイヤ成形ドラムの半径方向外側、他方を同内側にして重ね合わせ、その重なった部分に押圧ロールを押し付けて端部同士を接合する接合装置は、タイヤの成形装置において既によく知られている(例えば特許文献1参照)。
図9は、このようなタイヤ構成部材の接合の原理を模式的に示した斜視図である。
この従来のタイヤ構成部材の接合装置では、ゴム材料でできた所定長さのタイヤ構成部材100を成形ドラムに巻回して端部101、102同士を上下に重ね合わせ、重ね合わせた部分を転動する押圧ロール110で押圧する。これによって、タイヤ構成部材100の端部101、102同士を、未加硫ゴムの粘着性を利用して接合してカーカスプライなどの筒状体を構成している。
【0003】
ところで、このようにタイヤ構成部材の両端部を重ね合わせ、その上から押圧ロール110で押し付けて接合する場合、当然のことながら重ね合わせた量(接合面積)が小さくなる(又は狭くなる)にしたがってその接合強度も小さくなる。そのため、一定の接合面積を確保しないと、必要な接合強度が保てなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−173395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、所定長さのゴム部材の端部同士を接合する場合における前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来のようにゴム部材の両端を重ね合わせ、その重ねた部分を従来の押圧ロールで押圧するだけでは接合強度が保てないような小さな接合面積の場合であっても、接合の際に接合面積を増大させて必要な接合力(又は接着力)で接合できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゴム部材の端部を、一方を上側に他方を下側に重ね合わせて、前記ゴム部材の端部同士を接合するための接合装置であって、前記ゴム部材の端部表面に対して傾斜した傾斜軸の回りで回転する押圧ロールと、前記押圧ロールの転動面を前記重ね合わせたゴム部材の上側端部に押し付ける手段と、前記押圧ロールの転動面をゴム部材の上側端部に押し付けた状態で転動させる移動装置と、を有し、前記押圧ロールの転動面を前記ゴム部材の上側端部に押し付けて転動させることにより、前記上側端部を延伸させ、接合する端部間の接合面積を増大させて接合を行うゴム部材の接合装置である。
本発明は、ゴム部材の端部を、一方を上側に他方を下側に重ね合わせて、前記ゴム部材の端部同士を接合するための接合方法であって、前記ゴム部材の端部表面に対して傾斜した傾斜軸の回りで回転する押圧ロールの転動面を前記重ね合わせたゴム部材の上側端部に押し付ける工程と、前記押圧ロールの転動面をゴム部材の上側端部に押し付けた状態で転動させる工程と、を有し、前記押圧ロールの転動面を前記ゴム部材の上側端部に押し付けて転動させることにより、前記上側端部を延伸させ、接合する端部間の接合面積を増大させて接合を行うゴム部材の接合方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ゴム部材の端部同士を重ね合わせ、上から押圧して接合する従来の押圧ロールでは接合力が不足する場合であっても、接合面積を増大させてゴム部材を必要な接合力で接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る接合装置で用いる円盤状ロールを示し、図1Aはその斜視図、図1Bはその正面図である。
【図2】図2Aは円盤状ロールの平面図であり、図2Bは図2Aの線L1と直交する方向からみた側面図である。
【図3】本実施形態のタイヤ構成部材の接合装置の構成を模式的に示す要部正面図である。
【図4】図3の矢印X方向から見た接合ユニットの底面図である。
【図5】図4の矢視Y−Y方向でみた断面図であり、円盤状ロールをその支持体に取り付けたロール軸に装着した状態を示している。
【図6】接合したタイヤ構成部材の端部を示す斜視図である。
【図7】成型ドラム上で端部同士を接合して形成したカーカスプライを同じ引っ張り力で引張したときの、本発明の実施品と従来品の引っ張り強さを、カーカスプライに埋設されているコード間隔の延びと、接合部の接着範囲(成型ドラムの軸方向の長さ)との関係を表したグラフである。
【図8】従来品であるカーカスプライと本発明の実施品であるカーカスプライの、それぞれ引っ張り前と引っ張り後とを対比して示した模式図である。
【図9】従来の押圧ロールによるタイヤ構成部材の接合の原理を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る接合装置を、添付図面を参照して説明する。
まず、本接合装置で用いる押圧ロール(本実施形態では円盤状ロール)について説明する。
図1は円盤状ロールを示し、図1Aはその斜視図、図1Bはその正面図であり、図2Aは円盤状ロールの平面図、図2Bは図2Aの線L1と直交する方向からみた側面図である。
【0010】
本円盤状ロール45は、図1Aに示すように、上下に重ね合わせたゴム部材、即ち本実施形態ではタイヤ構成部材70の上側及び下側の端部71、72上を転動する、中心に向かって傾斜した転動面45bを有し、好ましくはその上下の平らな面からなる円錐台形に形成されている。
円盤状ロール45は、図2Bに示すように、後述する接合装置の支持体45aに固定された傾斜軸であるロール軸46に軸受47を介して回転自在に支承されている。
【0011】
ロール軸46は、図2Aに示すように、平面視でその進行方向に対してその接合端73の方向に所定の傾斜角θだけ傾斜して配置されていると共に、タイヤ構成部材70の上側の端部71に対して、前傾する方向にθだけ傾斜して配置されている。また、円盤状ロール45の転動面45bには、その全体にわたり、ローレット加工等により複数の凸状や凹溝又は複数の凸起や凹みが形成された粗面に形成されている。
【0012】
円盤状ロール45は、円盤状ロール45を備えた後述する接合装置を移動させる際に、ロール軸46の回りでその前記傾斜した転動面45bがタイヤ構成部材70の上側の端部71上に押し付けられて転動する。ここで、円盤状ロール45は、進行方向に対してθ(図2A)、前記端部71の表面に対してθ(図2B)だけ傾斜して配置されているため、接合装置により円盤状ロール45を前記端部71に押し付けながら移動させると、円盤状ロール45は、転動時に図2Aの線L1に沿って前記端部71に当接し、線L1と直交する方向のせん断力Sを作用させる。
【0013】
タイヤ構成部材70の端部71にせん断力Sが作用すると、ゴム材料でできた前記端部71は引き伸ばされ、したがって、端部71と端部72との重ね合わさった接合(接着)面積が増大し、その増大された接合面積により接合がなされる。
そのため、従来のように、タイヤ構成部材70の端部同士を重ね合わせた状態で、円筒状ロールを上側の端部71上に押圧転動させただけでは必要な接合強度が得られない場合であっても、本円盤状ロール45を用いることで必要な接合強度を得ることができる。また、接合前における前記端部71、72の重ね代が同じ場合には、より大きな接合力を得ることができる。
【0014】
本円盤状ロール45には、その接合面に粗面加工が施されているが、粗面加工を行ったことにより、円盤状ロール45をタイヤ構成部材70上で押圧転動させる際に、その摩擦力により、当接した前記端部71に粗面加工を施さない場合に比べて、より大きなせん断力Sを発生させることができ、前記端部71の延伸をより効果的に行うことができる。
また、前記端部71、72の重なり幅は、円盤状ロール45の転動面45bの幅(押し当て幅)よりも小さくすることで、前記端部71にせん断力を作用して延伸させるときに、前記端部71が一様に延伸される。
【0015】
次に、以上で説明した円盤状ロール45を備えた接合装置について説明する。
図3は、この接合装置の構成を模式的に示す要部正面図である。
接合装置1は、図示のように、軸線が水平方向に保持された円筒状の成形ドラム2と、成形ドラム2の軸線方向に並べて配置された、タイヤ構成部材70を接合する一対の接合ユニット30とを備えている。また、接合装置1は、一対の接合ユニット30を成形ドラム2の軸線方向及び半径方向(図1では左右及び上下方向)に移動させる移動手段10を備え、移動手段10が、成形ドラム2の外周面に沿って上方に配置されている。
【0016】
成形ドラム2は、未加硫タイヤの成形時に、接合するタイヤ構成部材70を支持する支持体であり、軸線回りに回転可能で、かつ外周に設けられたブラダ等により拡縮可能に構成されている。また、成形ドラム2は、外周の所定位置にタイヤ構成部材70がその1周分巻き付けられ、円筒状のタイヤ構成部材70を同芯状に保持する。この成形ドラム2は、連結された駆動装置(図示せず)と、駆動装置に設けられたモータ等の駆動源と、その回転動力の伝達機構とにより回転駆動されて、タイヤ構成部材70を所定の回転速度で回転させて任意の回転角で停止させることができる。
【0017】
タイヤ構成部材70は、成形ドラム2に向かって供給装置(図示せず)から供給されて巻き付けられ、その巻き付けの先端部と後端部とが、互いに重なり合うようにして配置されている。
タイヤ構成部材70は、それ自体は周知のものであり、有機繊維やスチール製のコードを未加硫ゴムで被覆して形成され、表面のゴム内に、複数のコード(図示せず)が、成形ドラム2の軸線方向に沿って延びるように並列して配置されている。
【0018】
成形ドラム2は、タイヤ構成部材70の接合する両端部71、72を上下に重なり合った状態で支持し、接合装置1は、タイヤ構成部材70の上下に重なった端部71、72上で、各接合ユニット30をその端部71、72の接合端73に沿って移動させて端部71、72同士を接合する。
なお、接合装置1は、成形ドラム2の軸線方向の中央部CLを挟んで左右対称に構成されている。そこで、以下の説明は、中央部CLを挟んだ一方側(図の左側)について行う。
【0019】
移動手段10は、成形ドラム2の軸線と平行に架け渡されたガイドレール11と、その上方に平行に配置されたネジ軸12と、回転軸13Aがネジ軸12と平行になるように配置されたモータ13と、それらが取り付けられたフレーム(図示せず)と、を有する。
移動手段10は、このフレームによりネジ軸12を回転自在に支持するとともに、ネジ軸12に固定した従動プーリ14と、モータ13の回転軸13Aに固定した駆動プーリ15に無端状のベルト16を架け渡している。また、移動手段10は、これら駆動プーリ15、ベルト16及び従動プーリ14を介して、モータ13の回転動力をネジ軸12に伝達し、ネジ軸12を軸線回りの両方向に所定速度で回転させる。
【0020】
移動手段10は、ネジ軸12に取り付けられた取付ブラケット17と、その側面に下方に向けて固定されたピストン・シリンダ機構18とを有している。
取付ブラケット17は、ネジ軸12が貫通して螺合するボールネジなどで構成するネジ伝動機構により駆動される。即ち、この取付ブラケット17は、ネジ孔と、ガイドレール11が摺動自在に貫通する案内孔とを有し、ネジ軸12の回転に伴い、ガイドレール11により案内されて、成形ドラム2の軸線方向の両方向に所定速度で移動する。
【0021】
ピストン・シリンダ機構18は、シリンダ18Sから進退するピストンロッド18Pが、成形ドラム2の上方に、その軸線に向けて配置されており、ピストンロッド18Pを進退させて、その先端(下端)に取り付けた接合ユニット30をタイヤ構成部材70に接近又は離間させる。つまり、ピストン・シリンダ機構18は、接合ユニット30に取り付けた円盤状ロール45等を、接合するタイヤ構成部材70の上側の端部71に所定圧力で押し付け或いはそこから引き上げる。
【0022】
接合ユニット30は、移動手段10のピストンロッド18Pに固定された矩形板状の固定部材60と、固定部材60の下面に取り付けられた矩形状の枠体31とを有し、枠体31がタイヤ構成部材70の接合部分に沿って配置されている。接合ユニット30は、移動手段10により固定部材60と枠体31が一体に移動する。
【0023】
図4は、接合ユニット30を図3の矢印X方向から見た底面図であり、固定部材60(図4では点線で示す)を透視して枠体31側の構成を示している。
接合ユニット30には、図4に示すように、浮き上がり防止ロール32、ジッパロール40、押圧ロールである円盤状ロール45が、枠体31内に接合方向の前方側(左側)から後方側(右側)に向かって順に配置されており、円盤状ロール45に隣接して(図では下側に)、他の押圧ロールである小径の側押圧ロール(好ましくはリング状である)48が取り付けられている。また、円盤状ロール45の後方側にさらに他の押圧ロールである後部押圧ロール(本実施形態ではリング状ロール)50が配置されている。
【0024】
浮き上がり防止ロール32、ジッパロール40は、その支持体32a、40aに支承されて軸線周りに回転可能に支持されており、支持体32a、40aは固定部材60に後述する付勢手段を介して連結されている。また、円盤状ロール45はこれもその支持部材45aが同様に付勢手段を介して固定部材60に連結されている。他方、リング状ロール50は固定部材60に直接取り付けられている。
【0025】
ここで、浮き上がり防止ロール32は支持体32aで回転可能に支持され、外周面が成形ドラム2の表面形状に応じた曲率の凹曲面状をなす形状に形成され、軸線方向を成形ドラム2の軸線方向と直交する方向にして配置されている。
浮き上がり防止ロール32は、タイヤ構成部材70の両端部71、72に押し付けられて転動しながら両端部71、72の上下に重ね合わさった部分及びその近傍を成形ドラム2に対して押さえる。
【0026】
ジッパロール40は、円筒状をなし、一端部が、両側の軸支持体40aにより支持されている。また、ジッパロール40は、タイヤ構成部材70の接合端73を挟んで対称に、かつ、それぞれの軸線が進行方向に直交する線から進行方向に所定角度傾けて配置されている。ここでは、前記角度は、例えば、5〜30°間の角度をなし、かつ両軸線同士の交点が接合端73上に位置するように配置されている。
【0027】
ジッパロール40は、互いの対向する縁部に沿って、それぞれ軸線方向に突出する複数の突起41が周方向に等間隔で同数形成され、接合端73側に、突起41と、それらの間の凹みとが、周方向に交互に同一ピッチで設けられている。
ジッパロール40は、これら突起41と凹みが周方向に沿って互い違いに配置され、突起41の一部が他方側の突起41間(凹み)に入り込んで互いに噛み合い、これにより同期して等速度で回転する。
ジッパロール40はその回転移動中、各突条がタイヤ構成部材70の端部71、72に当接して、端部71、72の所定範囲に押し付けられて端部71、72を互いに引き寄せてタイヤ構成部材の弛み等をなくし、成形ドラム2上に正しく位置決めする。
【0028】
図5は、図4の矢視Y−Y方向でみた断面図であり、円盤状ロール45をその支持体45aに取り付けたロール軸46に装着した状態を示している。
ロール軸46は、既に述べたように、タイヤ構成部材の前記端部71に対して図示のように傾斜している。
円盤状ロール45に隣接して側押圧ロール48が円盤状ロール45と同じ支持体45aに固定されたロール軸48aに対し、軸受47を介して回転可能に取り付けられている。側押圧ロール48は、その円周面には複数の溝が等間隔で設けられており、円盤状ロール45の図5において右側つまり外側(接合端側)に並んで配置されている。
【0029】
側押圧ロール48は、円盤状ロール45の転動面45bが、タイヤ構成部材70の上側の端部71に当接して延伸する際に、タイヤ構成部材70の下側になる端部72に当接してそれが上側の端部71と一緒に動かないように保持する。
【0030】
また、図5において、62は枠体31に取り付けられた機械式或いは流体式バネなどの付勢手段であって、枠体31は、これらの付勢手段62を介して固定部材60に連結されている。他方、既に述べたようにリング状ロール50は直接固定部材60に連結されており、タイヤ構成部材70に当接していない自由な状態で、その下端は、図3に示すように、浮き上がり防止ロール32、ジッパロール40及び円盤状ロール45の下端を結ぶ線よりも上側に位置している。
したがって、図3の状態で、ピストン・シリンダ機構18のピストンロッド18Pを作動させて固定部材60を下降すると、まず、浮き上がり防止ロール32、ジッパロール40及び円盤状ロール45がタイヤ構成部材70の上側端部71に当接する。その後、これらの付勢手段62による付勢力に抗して固定部材60をさらに下降させ、リング状ロール50が前記端部71に当接したとき前記端部71のゴム材料にリング状ロール50を押し込むように加圧して下降を停止する。
【0031】
このような構成を採ることで、浮き上がり防止ロール32、ジッパロール40及び円盤状ロール45は、前記付勢手段62の付勢力に抗する抗力により、また、リング状ロール50はピストン・シリンダ機構18による押圧力により、それぞれ前記端部71を押圧して両端部71、72同士の接合を行う。
この場合、リング状ロール50の押圧力はピストンロッド18Pの押し下げ力が直接作用するため、その他の付勢部材Rを介在させたロール等32、40、45よりも大きい。
【0032】
次に、接合装置1により、ゴムで形成されたタイヤ構成部材70の端部71、72同士を接合する手順、及び端部71、72同士を接合してタイヤ構成部材70を製造する製造方法について説明する。以下の手順等は、制御装置(図示せず)により制御されて行われる。
制御装置は、図示しない、例えばマイクロプロセッサ(MPU)と、各種制御処理のためのプログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、MPUが直接アクセスするデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータを有する。また、制御装置は、接続手段を介して装置各部が接続されており、接続された各部を制御して予め設定されたタイミングや条件で関連動作させて、接合のための各動作を実行させる。
【0033】
タイヤ構成部材70(図1参照)の端部71、72同士を接合するときには、まず、その内側に配置されるインナーライナ等の部材を成形ドラム2の外周に配置した後、タイヤ構成部材70を回転する成形ドラム2の外周に1周巻き付けて成形ドラム2を停止する。その際、その端部71、72同士を上下に重ね合わせるとともに、移動手段10による接合ユニット30の押し付け位置に配置する。
【0034】
次に、移動手段10により、一方(図3では左方)の接合ユニット30を、成形ドラム2の中央部CLに移動させる。ここで移動手段10を一旦停止して、ピストン・シリンダ機構18を作動させて接合ユニット30を下降させ、タイヤ構成部材70の重ね合わせた端部71、72(図2参照)に、浮き上がり防止ロール32、各ジッパロール40、及び、リング状ロール50を押し付ける(ピストン・シリンダ機構18の圧力条件としては、20kgf〜140kgfが好ましい)。これにより、浮き上がり防止ロール32及びジッパロール40の外周部(突条41の突端部)を、タイヤ構成部材70の端部71、72に当接させる。
【0035】
続いて、移動手段10を作動させて、接合ユニット30を成形ドラム2の軸線方向、つまりタイヤ構成部材70の接合端73に沿って移動させる。浮き上がり防止ロール32と、ジッパロール40と、円盤状ロール45と、側押圧ロール48と、リング状ロール50は、タイヤ構成部材70の端部71、72に押し付けられているため、接合ユニット30の移動に伴いそれぞれタイヤ構成部材の接合端73に沿って転動する。
【0036】
その際、浮き上がり防止ロール32は、前記両端部71、72を順次押えながら、また互いに逆方向に傾斜したジッパロール40は前記両端部71、72を引き寄せながら前記両端部71、72上を転動する。続いて転動する円盤状ロール45の転動面45bによるせん断力がタイヤ構成部材70の上側の端部71に作用してこれを延伸させる、つまり、端部71、72の重なり合った部分の接着面積を増大させる。同時に側押圧ロール48が下側の端部72を抑えて、円盤状ロール45が上側の端部71の延伸を行う際に、下側の端部72が上側の端部71と一緒に動かないように保持する。続いて、リング状ロール50(図4参照)は、前記両端部71、72の増大された接合領域を強く押圧して、端部71、72同士を接合する。
【0037】
なお、リング状ロール50の内部又は外部からリング状ロール50を加熱する加熱手段(図示せず)を備えていることが好ましい。即ち、加熱手段を設けることにより、リング状ロール50の転動面を所定温度に加熱して温度を維持し、押圧(摩擦)位置のタイヤ構成部材70の両端部71、72の付近のゴムを軟化させ、リング状ロール50による両端部71、72の接合する効果を高めて高い接合強度で端部71、72同士を接合することができる。
【0038】
以上のようにして、一方の接合装置1によるタイヤ構成部材の接合を少し行った後、他方のピストン・シリンダ機構18を作動させて(図3では右方の)接合ユニット30を、成形ドラム2の中央部CL近傍に下降させる。但し、降下位置はすでに左側の接合ユニット30で接合が修了した位置とし、その位置から右側ユニット30の進行方向とは逆向きに移動させる。つまり、一対の接合ユニット30を、成形ドラム2の軸線方向外側に向かって互いに逆方向に同じ速度で移動させ、各ロール32、50、ジッパロール40及び円盤状ロール45を端部71、72に沿って転動させて端部71、72同士を全体に亘って順次接合する。
【0039】
図6は、以上のようにして接合したタイヤ構成部材70の端部71、72を示す斜視図である。タイヤ構成部材70は端部71が延伸されて接合領域が増大した状態で接合されている。
この接合したタイヤ構成部材70に、他のタイヤ構成部材を配置する等して、所定形状及び構造の未加硫タイヤが成形され、未加硫タイヤを加硫成型して各種のタイヤが製造される。
【0040】
以上、本実施形態について説明したが、本実施形態では、円盤状ロール45を、浮き上がり防止ロール32、ジッパロール40、リング状ロール50、側押圧ロール48と組み合わせて接合ユニット30を構成したことにより、転動に伴う進行方向が規制されて直進性が確保され安定した動作が可能である。
また、本発明の実施形態として、成形ドラム2上でタイヤ構成部材70を接合す接合装置に例を採って説明したが、この接合装置1を使用することで、平面状の支持体やコンベヤ等、成形ドラム2以外の支持体上でも、同様にタイヤ構成部材70を接合できる。
【0041】
次に、タイヤ構成部材としてカーカスプライを例に採って、本発明の接合装置により接合して得た実施品と、前記従来の装置により接合を行った従来品について行った実験結果について説明する。
図7は、成型ドラム上で端部同士を接合して形成したカーカスプライを同じ引っ張り力で引張したときの、本発明の実施品と従来品の引っ張り強さを、カーカスプライに埋設されているコード間隔の延びと、接合部の接着範囲(成型ドラムの軸方向の長さ)との関係を表したグラフである。
図中、○は従来品を、また、×は本発明の実施品を示す。
【0042】
また、図8は、従来品であるカーカスプライと本発明の実施品であるカーカスプライの、それぞれ引っ張り前と引っ張り後とを対比して示した模式図である。
図7及び8から明らかなように、本発明の実施品では接合範囲が従来品よりも大きく、また、引っ張ったときのコードC間の間隔が従来品よりも少ないこと、つまり引っ張り強さが優れていることが示されている。
【0043】
なお、実験の結果によれば、本実施形態で対象とするタイヤ構成部材70の上側及び下側端部71,72同士の重ね幅については、0.1mm〜10mmの範囲が好ましい。この範囲にある場合、前記上側の端部71を本接合装置により延伸させて接合することによる効果が顕著である。重ね幅が0.1mm未満では、そもそも重ね幅の絶対値が小さく上側を延伸することによる効果は限定的である。逆に、10mmを越えると重ね幅の絶対値が大きいためその重ね幅自体から必要とする接合力が得られ、前記効果は限定的である。
【符号の説明】
【0044】
1・・・接合装置、2・・・成形ドラム、10・・・移動手段、11・・・ガイドレール、12・・・ネジ軸、13・・・モータ、14・・・従動プーリ、15・・・駆動プーリ、16・・・ベルト、17・・・取付ブラケット、18・・・ピストン・シリンダ機構、30・・・接合ユニット、31・・・枠体、32・・・浮き上がり防止ロール、45・・・円盤状ロール、45a・・・支持体、45b・・・転動面、48・・・側押圧ロール、50・・・リング状ロール、60・・・固定部材、62・・・付勢手段、70・・・タイヤ構成部材、71、72・・・端部、73・・・接合端、C・・・コード、CL・・・中央部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム部材の端部を、一方を上側に他方を下側に重ね合わせて、前記ゴム部材の端部同士を接合するための接合装置であって、
前記ゴム部材の端部表面に対して傾斜した傾斜軸の回りで回転する押圧ロールと、前記押圧ロールの転動面を前記重ね合わせたゴム部材の上側端部に押し付ける手段と、前記押圧ロールの転動面をゴム部材の上側端部に押し付けた状態で転動させる移動装置と、を有し、
前記押圧ロールの転動面を前記ゴム部材の上側端部に押し付けて転動させることにより、前記上側端部を延伸させ、接合する端部間の接合面積を増大させて接合を行うゴム部材の接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたゴム部材の接合装置において、
前記押圧ロールは回転中心に向かって傾斜した前記転動面を備えた円盤状ロールであるゴム部材の接合装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたゴム部材の接合装置において、
前記ゴム部材の前記端部の重ね合わせ幅は、前記円盤状ロールの転動面の幅よりも小さいゴム部材の接合装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたゴム部材の接合装置において、
前記重ね合わせ幅は、0.1mm〜10mmであるゴム部材の接合装置。
【請求項5】
請求項2に記載されたゴム部材の接合装置において、
前記円盤状ロールの前記ゴム部材に当接する転動面が粗面加工されているゴム部材の接合装置。
【請求項6】
請求項2に記載されたゴム部材の接合装置において、
前記円盤状ロールが前記ゴム部材の前記上側端部を延伸させるとき、前記ゴム部材の下側端部を拘束する側押圧ロールを有するゴム部材の接合装置。
【請求項7】
請求項2に記載されたゴム部材の接合装置において、
前記円盤状ロールは、接合ユニットに取り付けられており、前記接合ユニットの前記円盤状ロールの進行方向前方に前記ゴム部材の浮き上がり防止ロールが配置されているゴム部材の接合装置。
【請求項8】
請求項7に記載されたゴム部材の接合装置において、
前記接合ユニットにおいて、前記浮き上がり防止ロールと前記円盤状ロールの間にジッパロールが配置されているゴム部材の接合装置。
【請求項9】
請求項7に記載されたゴム部材の接合装置において、
前記接合ユニットにおいて、前記円盤状ロールの進行方向後方に後部押圧ロールが配置されているゴム部材の接合装置。
【請求項10】
ゴム部材の端部を、一方を上側に他方を下側に重ね合わせて、前記ゴム部材の端部同士を接合するための接合方法であって、
前記ゴム部材の端部表面に対して傾斜した傾斜軸の回りで回転する押圧ロールの転動面を前記重ね合わせたゴム部材の上側端部に押し付ける工程と、前記押圧ロールの転動面をゴム部材の上側端部に押し付けた状態で転動させる工程と、を有し、
前記押圧ロールの転動面を前記ゴム部材の上側端部に押し付けて転動させることにより、前記上側端部を延伸させ、接合する端部間の接合面積を増大させて接合を行うゴム部材の接合方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−103454(P2013−103454A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250109(P2011−250109)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】