説明

シリコン微粒子とその製造方法およびそれらを用いた太陽電池とその製造方法

【課題】低コストでシリコン太陽電池を製造するためのシリコン微粒子とその製造方法、およびそれらを用いた太陽電池とその製造方法を提供する。
【解決手段】太陽電池10において、反応性基を有する膜化合物の形成する被膜3で表面が覆われたp型シリコン微粒子14が積層されてなるp型シリコン微粒子層と、膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたn型シリコン微粒子15が積層されてなるn型シリコン微粒子層とが、透明電極11と裏面電極17との間に積層形成されており、p型シリコン微粒子層とn型シリコン微粒子層は、反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する架橋剤16の架橋反応基との架橋反応により硬化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、微粒子の表面に導入された反応性基と架橋剤との架橋反応により微粒子を含む塗膜を硬化して得られる太陽電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られているシリコン太陽電池としては、ガラス基板の表面にプラズマCVD法を用いて製膜したアモルファスシリコン太陽電池、シリコンの単結晶または多結晶を切断して板状に加工した後不純物拡散したシリコン結晶型太陽電池等が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−247629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アモルファスシリコン太陽電池の製造には高価な真空機器を必要とするという問題点がある。また、シリコン結晶型太陽電池の製造には、高純度のシリコン単結晶または多結晶を大量に必要とするため、製造コストが高くなるという問題点がある。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑み、より安価なシリコン微粒子を原料として低コストでシリコン太陽電池を製造するためのシリコン微粒子とその製造方法、およびそれらを用いた太陽電池とその製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題に沿う第1の発明に係るシリコン微粒子は、表面に共有結合した膜化合物の形成する被膜で表面が覆われている。
【0007】
第1の発明に係るシリコン微粒子において、前記膜化合物は、一端に反応性基を有し、他端に前記シリコン微粒子の表面基と反応するシリル基を有することが好ましい。
【0008】
第1の発明に係るシリコン微粒子において、前記反応性基は、熱反応性基、光反応性基、イオン反応性基、およびラジカル反応性基のいずれかであることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係るシリコン微粒子において、前記反応性基は、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、シンナモイル基およびカルコニル基のいずれか1であってもよい。
【0010】
第1の発明に係るシリコン微粒子において、前記被膜は単分子膜であることが好ましい。
【0011】
第2の発明に係るシリコン微粒子の製造方法は、反応性基およびシリコン微粒子の表面基と反応するシリル基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を含む溶液を微粒子と接触させ、前記シリル基と前記シリコン微粒子の表面との間で結合を形成させる工程Aを有する。
【0012】
第2の発明に係るシリコン微粒子の製造方法において、前記工程Aの後に、未反応の前記膜化合物を洗浄除去する工程をさらに有することが好ましい。
【0013】
第2の発明に係るシリコン微粒子の製造方法において、前記膜化合物は全てアルコキシシラン化合物であり、前記膜化合物を含む溶液は、さらに縮合触媒として、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、およびチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1または2以上の化合物を含んでいてもよく、さらに助触媒として、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、およびアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1または2以上の化合物をさらに含むことが好ましい。
【0014】
第2の発明に係るシリコン微粒子の製造方法において、前記膜化合物は全てアルコキシシラン化合物であり、前記膜化合物を含む溶液は、さらに縮合触媒として、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、およびアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1または2以上の化合物をさらに含んでいてもよい。
【0015】
第3の発明に係る太陽電池は、反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたp型シリコン微粒子が積層されてなるp型シリコン微粒子層と、前記膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたn型シリコン微粒子が積層されてなるn型シリコン微粒子層とが、透明電極と裏面電極との間に積層形成されている。
【0016】
第3の発明に係る太陽電池において、前記膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたp型シリコン微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する架橋剤とを含む第1の混合物の塗膜が、前記反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により硬化して、前記p型シリコン微粒子層が積層形成され、前記膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたn型シリコン微粒子と、前記架橋剤とを含む第2の混合物の塗膜が、前記反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により硬化して、前記n型シリコン微粒子層が積層形成されていることが好ましい。
【0017】
第3の発明に係る太陽電池において、前記p型シリコン微粒子層と前記n型シリコン微粒子層との間は、前記反応性基と前記架橋反応基との架橋反応を介して固定されていてもよい。
【0018】
第3の発明に係る太陽電池において、前記膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることが好ましい。
【0019】
第3の発明に係る太陽電池において、前記反応性基は、熱反応性基、光反応性基、イオン反応性基、およびラジカル反応性基のいずれかであることが好ましい。
【0020】
第3の発明に係る太陽電池において、前記の架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であってもよい。
【0021】
第3の発明に係る太陽電池において、前記架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であってもよい。
【0022】
第3の発明に係る太陽電池において、前記架橋反応により形成された結合が、シンナモイル基およびカルコニル基のいずれか一方の光二量化反応により形成された四員環を構成する結合であってもよい。
【0023】
第4の発明に係る太陽電池の製造方法は、反応性基およびシリコン微粒子の表面基と反応するシリル基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物をp型シリコン微粒子と接触させ、前記シリコン微粒子の表面基と反応するシリル基と前記微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が覆われた反応性p型シリコン微粒子を製造する工程Aと、反応性基およびシリコン微粒子の表面基と反応するシリル基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物をn型シリコン微粒子と接触させ、前記シリコン微粒子の表面基と反応するシリル基と前記微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が覆われた反応性n型シリコン微粒子を製造する工程Bと、前記反応性p型シリコン微粒子、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する架橋剤、および溶媒とを混合してペースト状の第1の膜前駆体を製造する工程Cと、前記反応性n型シリコン微粒子、前記架橋剤、および溶媒とを混合してペースト状の第2の膜前駆体を製造する工程Dと、透明電極の表面に前記第1および第2の膜前駆体のいずれか一方を塗布して第1の塗膜を形成し、次いで該第1の塗膜の上に第1および第2の膜前駆体の他方を塗布して第2の塗膜を形成する工程Eと、前記架橋反応により前記第1および第2の塗膜を硬化させる工程Fとを有する。
【0024】
第4の発明に係る太陽電池の製造方法において、前記膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることが好ましい。
【0025】
第4の発明に係る太陽電池の製造方法において、前記架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であってもよい。
【0026】
第4の発明に係る太陽電池の製造方法において、前記架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であってもよい。
【0027】
第4の発明に係る太陽電池の製造方法において、前記架橋反応により形成された結合が、シンナモイル基およびカルコニル基のいずれか一方の光二量化反応により形成された四員環を構成する結合であってもよい。
【0028】
第4の発明に係る太陽電池の製造方法において、前記反応性基がエポキシ基を有する官能基であり、前記架橋剤がイミダゾール誘導体であってもよい。
【0029】
第4の発明に係る太陽電池の製造方法において、前記反応性基がアミノ基およびイミノ基のいずれか一方を含む官能基であり、前記架橋剤が2または3以上のイソシアネート基を有する化合物および2または3以上のエポキシ基を有する化合物のいずれか一方であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
請求項1〜5記載のシリコン微粒子および請求項6〜10記載のシリコン微粒子の製造方法は、太陽電池の原料となる、表面に共有結合した膜化合物の形成する被膜で表面が覆われていることを特徴とするシリコン微粒子を低コストでかつ簡便な操作により提供できる。また、シリコン微粒子の表面を膜化合物の形成する被膜で覆うことにより、耐酸化性を向上できる。
【0031】
また、請求項11〜18記載の太陽電池、および請求項19〜25記載の太陽電池の製造方法は、反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたp型シリコン微粒子が積層されてなるp型シリコン微粒子層と、前記膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたn型シリコン微粒子が積層されてなるn型シリコン微粒子層とが、透明電極と裏面電極との間に積層形成させているため、高価な真空装置およびシリコン単結晶や多結晶といった高価な材料を用いることなく、低コストで太陽電池を製造できる。
【0032】
特に、請求項2記載のシリコン微粒子においては、膜化合物が、シリコン微粒子表面のシラノール基等の表面基に対する高い反応性を有するシリル基を有しているので、容易に共有結合を形成できる。
【0033】
請求項3記載のシリコン微粒子、および請求項15記載の太陽電池においては、反応性基として熱反応性基、光反応性基、イオン反応性基、およびラジカル反応性基のいずれかを用いているので、特殊な反応装置および反応条件を用いることなくp型シリコン微粒子層、およびn型シリコン微粒子層を形成できる。
【0034】
請求項4記載のシリコン微粒子においては、反応性基としてエポキシ基、アミノ基、イミノ基、シンナモイル基およびカルコニル基のいずれか1を用いているので、加熱または光照射によりp型シリコン微粒子層、およびn型シリコン微粒子層を形成できる。
【0035】
請求項5記載のシリコン微粒子、請求項14記載の太陽電池、および請求項20記載の太陽電池の製造方法においては、膜化合物の形成する被膜が単分子膜であるため、シリコン密度の高い太陽電池を提供できる。
【0036】
請求項7記載のシリコン微粒子の製造方法においては、未反応の膜化合物を洗浄除去することにより、得られるシリコン微粒子を用いて製造される太陽電池におけるシリコン密度をさらに向上できる。
【0037】
請求項8記載のシリコン微粒子の製造方法においては、膜化合物を含む溶液が、さらに縮合触媒として、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、およびチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1または2以上の化合物を含むので、反応性微粒子の調製時間を短縮し、絶縁性微粒子膜の製造をより高効率に行うことができる。
【0038】
請求項9および10記載のシリコン微粒子の製造方法においては、膜化合物を含む溶液が、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からからなる群より選択される1または2以上の化合物をさらに含むので、反応性微粒子の調製時間を短縮し、絶縁性微粒子膜の製造をより高効率に行うことができる。特に、これらの化合物と上述の縮合触媒の両者をともに含む場合には、調製時間をさらに短縮できる。
【0039】
請求項12記載の太陽電池においては、p型およびn型シリコン微粒子層が架橋反応により硬化して積層形成しているので、信頼性および耐久性の高い太陽電池を得ることができる。
【0040】
請求項13記載の太陽電池においては、p型シリコン微粒子層とn型シリコン微粒子層との間は、前記反応性基と前記架橋反応基との架橋反応を介して固定されているので、さらに信頼性および耐久性を向上できる。
【0041】
請求項14記載の太陽電池においては、第2の膜化合物の形成する被膜が単分子膜であるので、太陽電池の剥離強度をより向上できる。
【0042】
請求項15記載の太陽電池においては、反応性基が、熱反応性基、光反応性基、イオン反応性基、およびラジカル反応性基のいずれかであるので、特殊な反応条件を用いる必要がなく、加熱や光照射により架橋反応を起こすことができる。
【0043】
請求項16記載の太陽電池、および請求項21記載の太陽電池の製造方法においては、架橋反応により形成される結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されるN−CHCH(OH)結合であるので、加熱により強固な結合を形成できる。
【0044】
請求項17記載の太陽電池、および請求項22記載の太陽電池の製造方法においては、架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であるので、加熱により強固な結合を形成できる。
【0045】
請求項18記載の太陽電池、および請求項23記載の太陽電池の製造方法においては、架橋反応により形成された結合が、シンナモイル基およびカルコニル基のいずれか一方の光二量化反応により形成された四員環を構成する結合であるので、光照射により強固な結合を形成できる。
【0046】
請求項24記載の太陽電池の製造方法においては、第1の反応性基と架橋反応基との第1の反応性基がエポキシ基を有する官能基であり、架橋剤がイミダゾール誘導体であるので、加熱により強固なN−CHCH(OH)結合が形成し、得られる太陽電池の強度を向上できる。
【0047】
請求項25記載の太陽電池の製造方法においては、第1の反応性基がアミノ基およびイミノ基のいずれか一方を含む官能基であり、架橋剤が2または3以上のイソシアネート基を有する化合物および2または3以上のエポキシ基を有する化合物のいずれか一方であるので、加熱により強固なN−CHCH(OH)結合およびNH−CONH結合のそれぞれいずれかが形成し、得られる太陽電池の強度を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係るシリコン微粒子およびその製造方法について説明する。
シリコン微粒子の一例であるエポキシ化p型シリコン微粒子4は、p型シリコン微粒子(シリコン微粒子の一例)1の表面が、一端にエポキシ基(反応性基の一例)を有し、他端にp型シリコン微粒子1の表面の水酸基(表面基の一例)2と共有結合するシリル基を有する膜化合物の単分子膜3で覆われている。
【0049】
エポキシ化p型シリコン微粒子4は、エポキシ基およびシリル基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を含む溶液をp型シリコン微粒子1と接触させ、シリル基と水酸基2との間で結合を形成させる工程Aを有する方法により製造される。
【0050】
以下、工程Aについて詳細に説明する。
工程Aでは、エポキシ基を有する膜化合物をp型シリコン微粒子1と接触させ、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜で表面が覆われたエポキシ化p型シリコン微粒子4を製造する。
【0051】
用いることのできるp型シリコン微粒子1の粒径に特に制限はないが、例えば、10nm〜0.1mmである。
【0052】
エポキシ基を有する膜化合物としては、p型シリコン微粒子1の表面に吸着または結合し、自己組織化により単分子膜を形成することのできる任意の化合物を用いることができるが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にエポキシ基(オキシラン環)を含む官能基を、他方の末端にアルコキシシリル基(シリコン微粒子の表面基と反応するシリル基の一例)をそれぞれ有し、下記の一般式(化1)で表されるアルコキシシラン化合物が好ましい。
【0053】
【化1】

【0054】
上式において、Eはエポキシ基を有する官能基を、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
用いることのできるエポキシ基を有する膜化合物の具体例としては、下記(1)〜(12)に示したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0055】
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(3) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(8) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(9) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(12) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
【0056】
ここで、(CHOCH)CHO−基は、化2で表される官能基(グリシドキシ基)を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、化3で表される官能基(3,4−エポキシシクロヘキシル基)を表す。
【0057】
【化2】

【0058】
【化3】

【0059】
エポキシ化シリカ微粒子11の製造は、エポキシ基を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基とp型シリコン微粒子1の表面の水酸基22との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合した反応液中にp型シリコン微粒子1を分散させ、室温の空気中で反応させることにより行われる。
【0060】
縮合触媒としては、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステルおよびチタン酸エステルキレート等の金属塩が利用可能である。
縮合触媒の添加量は、好ましくはアルコキシシラン化合物の0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜1質量%である。
【0061】
カルボン酸金属塩の具体例としては、酢酸第1スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第1スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄が挙げられる。
【0062】
カルボン酸エステル金属塩の具体例としては、ジオクチルスズビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸金属塩ポリマーの具体例としては、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマーが挙げられる。
カルボン酸金属塩キレートの具体例としては、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレートが挙げられる。
【0063】
チタン酸エステルの具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネートが挙げられる。
チタン酸エステルキレート類の具体例としては、ビス(アセチルアセトニル)ジ−プロピルチタネートが挙げられる。
【0064】
アルコキシシリル基とp型シリコン微粒子1の表面の水酸基2とが縮合反応を起こし、下記の化4で示されるような構造を有するエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜3を生成する。なお、酸素原子から延びた3本の単結合はp型シリコン微粒子1の表面または隣接するシラン化合物のケイ素(Si)原子と結合しており、そのうち少なくとも1本はp型シリコン微粒子1の表面のケイ素原子と結合している。
【0065】
【化4】

【0066】
アルコキシシリル基は、水分の存在下で分解するので、反応は相対湿度45%以下の空気中で行うことが好ましい。なお、縮合反応は、p型シリコン微粒子1の表面に付着した油脂分や水分により阻害されるので、p型シリコン微粒子1をよく洗浄して乾燥することにより、これらの不純物を予め除去しておくことが好ましい。
縮合触媒として上述の金属塩のいずれかを用いた場合、縮合反応の完了までに要する時間は2時間程度である。
【0067】
上述の金属塩の代わりに、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1または2以上の化合物を縮合触媒として用いた場合、反応時間を1/2〜2/3程度まで短縮できる。
【0068】
あるいは、これらの化合物を助触媒として、上述の金属塩と混合(質量比1:9〜9:1の範囲で使用可能だが、1:1前後が好ましい)して用いると、反応時間をさらに短縮できる。
【0069】
例えば、縮合触媒として、ジブチルスズオキサイドの代わりにケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3を用い、その他の条件は同一にしてエポキシ化シリカ微粒子11の製造を行うと、エポキシ化シリカ微粒子11の品質を損なうことなく反応時間を1時間程度にまで短縮できる。
【0070】
さらに、縮合触媒として、ジャパンエポキシレジン社のH3とジブチルスズビスアセチルアセトネートとの混合物(混合比は1:1)を用い、その他の条件は同一にしてエポキシ化シリカ微粒子11の製造を行うと、反応時間を20分程度に短縮できる。
【0071】
なお、ここで用いることができるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等が挙げられる。
【0072】
また、用いることができる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸等が挙げられる。
【0073】
反応液の製造には、有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、シリコーン系溶媒、およびこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコキシシラン化合物の加水分解を防止するために、乾燥剤または蒸留により使用する溶媒から水分を除去しておくことが好ましい。また、溶媒の沸点は50〜250℃であることが好ましい。
【0074】
具体的に使用可能な溶媒としては、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
さらに、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることもできる。
【0075】
また、用いることができるフッ化炭素系溶媒としては、フロン系溶媒、フロリナート(米国3M社製)、アフルード(旭硝子株式会社製)等がある。なお、これらは1種単独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、ジクロロメタン、クロロホルム等の有機塩素系溶媒を添加してもよい。
【0076】
反応液におけるアルコキシシラン化合物の好ましい濃度は、0.5〜3質量%である。
【0077】
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った過剰なアルコキシシラン化合物および縮合触媒を除去すると、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜3で表面が覆われたエポキシ化p型シリコン微粒子4が得られる。このようにして製造されるエポキシ化p型シリコン微粒子4の断面構造の模式図を図2(b)に示す。
【0078】
洗浄溶媒としては、アルコキシシラン化合物を溶解できる任意の溶媒を用いることができるが、安価であり、溶解性が高く、風乾により容易に除去することのできるジクロロメタン、クロロホルム、N−メチルピロリドン等が好ましい。
【0079】
反応後、生成したエポキシ化p型シリコン微粒子4を溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、エポキシ化p型シリコン微粒子4の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、エポキシ化p型シリコン微粒子4の表面に共有結合により固定されていないが、エポキシ基を含んでいるため、エポキシ化p型シリコン微粒子4に対してエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜3と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、以下の製造工程に特に支障をきたすことはない。
【0080】
なお、本実施の形態においては、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いたが、直鎖状アルキレン基の一方の末端にアミノ基を、他方の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ有し、下記の一般式(化5)で表されるアルコキシシラン化合物を用いてもよい。
【0081】
【化5】

【0082】
上式において、mは3〜20の整数を、Rは炭素数1〜4のアルキル基をそれぞれ表す。
用いることのできるアミノ基を有する膜化合物の具体例としては、下記(21)〜(28)に示したアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0083】
(21) H2N(CH2)Si(OCH)3
(22) H2N(CH2)Si(OCH)3
(23) H2N(CH2)Si(OCH)3
(24) H2N(CH2)Si(OCH)3
(25) H2N(CH2)Si(OC)3
(26) H2N(CH2)Si(OC)3
(27) H2N(CH2)Si(OC)3
(28) H2N(CH2)Si(OC)3
【0084】
他に、工程Aにおいて用いることができる化合物としては、下記(41)〜(46)に示すものが挙げられる。
(41)CH≡C−C≡C−(CH)15SiCl
(42)CH≡C−C≡C−(CH2)Si(CH(CH)15SiCl
(43)CH≡C−C≡C−(CH)Si(CH(CH)SiCl
(44)(C)(CH)CO(C)O(CH)OSi(OCH
(45)(C)(CH)CO(C)O(CH)OSi(OC
(46)(C)CO(CH)(C)O(CH)OSi(OCH
ここで、(C)(CH)COはシンナモイル基を、(C)CO(CH)(C)はカルコニル基をそれぞれ表す。
【0085】
反応液において用いることのできる縮合触媒のうち、スズ(Sn)塩を含む化合物は、アミノ基と反応して沈殿を生成するため、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物に対しては縮合触媒として用いることができない。
したがって、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物を用いる場合には、カルボン酸スズ塩、カルボン酸エステルスズ塩、カルボン酸スズ塩ポリマー、カルボン酸スズ塩キレートを除き、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の場合と同様の化合物を単独でまたは2種類以上を混合して縮合触媒として用いることができる。
用いることのできる助触媒の種類およびそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、および助触媒の濃度、反応条件ならびに反応時間についてはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0086】
また、本実施の形態においては、p型シリコン微粒子を用いたが、n型シリコン微粒子を用いることもできる。
p型またはn型シリコン微粒子以外の微粒子であっても、その表面に水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する半導体微粒子である場合には、膜化合物としてアルコキシシラン化合物を用いることができる。この様な微粒子の具体例としては、ゲルマニウム微粒子、ガリウム砒素微粒子等が挙げられる。
(以上工程A)
【0087】
次に、図2を参照しながら本発明の第2の実施の形態に係る太陽電池について説明する。
太陽電池10は、エポキシ化p型シリコン微粒子(反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたp型シリコン微粒子の一例)14が積層されてなるp型シリコン微粒子層と、エポキシ化n型シリコン微粒子(膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたn型シリコン微粒子の一例)15が積層されてなるn型シリコン微粒子層とが、エポキシ化ITOガラス板(透明電極の一例)11とアルミニウム電極(裏面電極の一例)17との間に積層形成されている。
エポキシ化ITOガラス板11は、ガラス板12の表面に透明な導電物質であるITO(インジウムスズ酸化物)被膜13が形成されているITOガラス板のITO被膜13上に、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜18で表面が覆われている。
エポキシ化p型シリコン微粒子14の塗膜、エポキシ化n型シリコン微粒子15の塗膜は、エポキシ基と、架橋剤の一例である2−メチルイミダゾール16の有するイミノ基およびアミノ基(架橋反応基の一例)との架橋反応により硬化して、それぞれp型シリコン微粒子層およびn型シリコン微粒子層を積層形成している。また、p型シリコン微粒子層およびn型シリコン微粒子層との間も、エポキシ基と、2−メチルイミダゾール16の有するイミノ基およびアミノ基との架橋反応により固定されている。
【0088】
太陽電池10の製造方法は、エポキシ化p型シリコン微粒子14を製造する工程Aと、エポキシ化n型シリコン微粒子15を製造する工程Bと、エポキシ化p型シリコン微粒子14、2−メチルイミダゾール16、および溶媒とを混合してペースト状の第1の混合物を製造する工程Cと、エポキシ化n型シリコン微粒子15、2−メチルイミダゾール16、および溶媒とを混合してペースト状の第2の混合物を製造する工程Dと、エポキシ化ITOガラス板11の表面に第1の混合物を塗布して第1の塗膜を形成し、ついでその上に第2の混合物を塗布して第2の塗膜を形成する工程Eと、エポキシ基と架橋反応基との架橋反応により第1および第2の塗膜を硬化させる工程Fとを含んでいる。
【0089】
以下、工程A〜Fについてより詳細に説明する。
エポキシ化p型シリコン微粒子14を製造する工程A、およびエポキシ化n型シリコン微粒子15を製造する工程Bについては、第1の実施の形態に係るエポキシ化p型シリコン微粒子4の製造方法と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0090】
なお、本実施の形態においては、工程AおよびBにおいて用いたものと同様のエポキシ基を有する膜化合物を、ガラス板12の表面に形成されたITO被膜13に接触させ、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜18で表面が覆われたエポキシ化ITOガラス板11を製造する。
なお、ガラス板12の大きさには特に制限はない。
【0091】
エポキシ化ITOガラス板11の製造は、エポキシ基およびアルコキシシリル基(シリコン微粒子の表面基と反応するシリル基の一例)を含むアルコキシシラン化合物と、アルコキシシリル基とITO被膜13の表面の水酸基との縮合反応を促進するための縮合触媒と、非水系の有機溶媒とを混合した反応液をITO被膜13の表面に塗布し、室温の空気中で反応させることにより行われる。塗布は、ドクターブレード法、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、スクリーン印刷法等の任意の方法により行うことができる。
【0092】
ここで用いることのできるエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の種類、縮合触媒、助触媒の種類およびそれらの組み合わせ、溶媒の種類、アルコキシシラン化合物、縮合触媒、および助触媒の濃度、反応条件ならびに反応時間については工程AおよびBと同様であるので、説明を省略する。
【0093】
反応後、溶媒で洗浄し、未反応物として表面に残った過剰なアルコキシシラン化合物および縮合触媒を除去すると、エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜18で表面が覆われたエポキシ化ITOガラス板11が得られる。
【0094】
洗浄溶媒としては、工程AおよびBと同様の洗浄溶媒を用いることができる。
反応後、生成したエポキシ化ITOガラス板11を溶媒で洗浄せずに空気中に放置すると、表面に残ったアルコキシシラン化合物の一部が空気中の水分により加水分解を受け、生成したシラノール基がアルコキシシリル基と縮合反応を起こす。その結果、エポキシ化ITOガラス板11の表面にポリシロキサンよりなる極薄のポリマー膜が形成される。このポリマー膜は、エポキシ化ITOガラス板11の表面に共有結合により固定されていないが、エポキシ基を含んでいるため、エポキシ化ITOガラス板11に対してエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜33と同様の反応性を有している。そのため、洗浄を行わなくても、以下の製造工程に特に支障をきたすことはない。
【0095】
なお、本実施の形態においてはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いたが、工程AおよびBと同様、直鎖状アルキレン基の一方の末端にアミノ基を、他方の末端にアルコキシシリル基をそれぞれ有するアルコキシシラン化合物を用いてもよい。
また、本実施の形態においては工程AおよびBと同一のアルコキシシラン化合物を用いているが、異なるアルコキシシラン化合物を用いてもよい。ただし、工程CおよびDにおいて用いる架橋剤の架橋反応基と反応して結合を形成する反応性基を有するものでなければならない。
【0096】
本実施の形態においては、ITOガラス板を基材として用いたが、表面基として水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する透明な導電層を有し、かつ工程C以降の工程において変形や分解を起こさない任意の透明基板を用いることができる。
【0097】
工程Cでは、エポキシ化p型シリコン微粒子14、2−メチルイミダゾール16、および溶媒とを混合してペースト状の第1の混合物を製造する。
2−メチルイミダゾールはエポキシ基と反応するアミノ基およびイミノ基をそれぞれ1−位および3−位に有しており、下記の化6に示すような架橋反応により結合を形成する。
【0098】
【化6】

【0099】
2−メチルイミダゾール16の添加量は、エポキシ化p型シリコン微粒子14の5〜15重量%が好ましい。2−メチルイミダゾール16の添加量がエポキシ化p型シリコン微粒子14の5重量%未満だと、製造させる太陽電池10の強度が低くなり、15重量%を上回ると、第1の混合物がゲル化を起こしやすくなる等ハンドリングが悪化する。第1の混合物の製造には、2−メチルイミダゾール16が可溶な任意の溶媒を用いることができるが、価格、室温での揮発性、および毒性等を考慮すると、イソプロピルアルコール、エタノール等の低級アルコール系溶媒が好ましい。
【0100】
第1の混合物の製造に用いる溶媒の量は、エポキシ化p型シリコン微粒子14の粒径、製造する太陽電池10におけるp型およびn型シリコン微粒子層の厚さ等によって適宜定められるため一義的に決定することは困難であるが、得られる第1の混合物の粘度が5〜20Pa・sとなる程度の量が好ましく、より具体的にはエポキシ化p型シリコン微粒子14および2−メチルイミダゾール16の10〜50重量%である。具体的には、エポキシ化p型シリコン微粒子14の表面を2−メチルイミダゾール16の単分子被膜で被覆するために必要な量に設定すればよい。
エポキシ化p型シリコン微粒子14、2−メチルイミダゾール16、および溶媒の混合は、撹拌ばね、ハンドミキサー等の任意の手段により行うことができる。
【0101】
本実施の形態においては、架橋剤として2−メチルイミダゾールを用いたが、下記化7で表される任意のイミダゾール誘導体を用いることができる。あるいは、イミダゾール−金属錯体を用いてもよい。
【0102】
【化7】

【0103】
化7で表されるイミダゾール誘導体の具体例としては、下記(31)〜(38)に示すものが挙げられる。
(31) 2−メチルイミダゾール(R=Me、R=R=H)
(32) 2−ウンデシルイミダゾール(R=C1123、R=R=H)
(33) 2−ペンタデシルイミダゾール(R=C1531、R=R=H)
(34) 2−メチル−4−エチルイミダゾール(R=Me、R=Et、R=H)
(35) 2−フェニルイミダゾール(R=Ph、R=R=H)
(36) 2−フェニル−4−エチルイミダゾール(R=Ph、R=Et、R=H)
(37) 2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(R=Ph、R=Me、R=CHOH)
(38) 2−フェニル−4,5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール(R=Ph、R=R=CHOH)
なお、Me、Et、およびPhは、それぞれメチル基、エチル基、およびフェニル基を表す。
【0104】
また、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物、ジシアンジアミド、ノボラック等のフェノール誘導体等の化合物を架橋剤として用いてもよい。この場合、架橋反応を促進するためにイミダゾール誘導体を触媒として用いてもよい。
【0105】
なお、本実施の形態においては反応性基としてエポキシ基を有する膜化合物を用いた場合について説明しているが、反応性基としてアミノ基またはイミノ基を有する膜化合物を用いる場合には、架橋反応基として2もしくは3以上のエポキシ基または2もしくは3以上のイソシアネート基を有する架橋剤を用いる。イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。
これらのジイソシアネート化合物の添加量は、2−メチルイミダゾールの場合と同様、エポキシ化シリカ微粒子の5〜15重量%が好ましい。この場合、第1の混合物の製造に用いることのできる溶媒としては、キシレン等の芳香族有機溶媒が挙げられる。
また、架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の2または3以上のエポキシ基を有する化合物を用いることもできる。
(以上工程C)
【0106】
工程Dでは、エポキシ化n型シリコン微粒子15、2−メチルイミダゾール16、および溶媒とを混合してペースト状の第2の混合物を製造する。エポキシ化p型シリコン微粒子14の代わりにエポキシ化n型シリコン微粒子15を用いる以外は工程Cと同様であるので、詳しい説明を省略する。
(以上工程D)
【0107】
工程Eでは、エポキシ化板ガラス13の表面にエポキシ化ITOガラス板11の表面に第1の混合物を塗布して第1の塗膜を形成し、ついでその上に第2の混合物を塗布して第2の塗膜を形成する。
第1および第2の混合物の塗布には、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレー法等の任意の方法により行うことができる。
なお、塗布の順序に特に制限はなく、先に第2の混合物を塗布して第2の塗膜を形成し、ついで第1の塗膜を形成してもよい。
(以上工程E)
【0108】
工程Fでは、第1および第2の塗膜を加熱し、エポキシ化ITOガラス板11、エポキシ化p型シリコン微粒子14、およびエポキシ化n型シリコン微粒子15上のエポキシ基と2−メチルイミダゾール16との架橋反応により第1および第2の塗膜を硬化させ、太陽電池10を製造する。
加熱温度は、100〜200℃が好ましい。加熱温度が100℃未満だと、架橋反応の進行に長時間を要し、200℃を上回ると、被膜14の表面で架橋反応が迅速に進行することにより、閉じ込められた溶媒が揮発しにくくなり均一な太陽電池10が得られない。
【0109】
工程Fにおいて、架橋反応により形成される結合は、共有結合、イオン結合、配位結合、および分子間力による結合のいずれであってもよいが、形成される太陽電池10の強度および第1および第2の混合物、ならびに第1および第2の塗膜の形成の容易さ等を考慮すると、工程Eの後に加熱または光等のエネルギー線の照射により形成される共有結合が好ましい。
加熱により形成される共有結合の具体例としては、エポキシ基とアミノ基またはイミノ基との反応(化8参照)により形成されるN−CHCH(OH)結合、イソシアネート基とアミノ基との反応(化9参照)により形成されるNH−CONH結合等が挙げられる。
【0110】
【化8】

【0111】
【化9】

【0112】
光照射により形成される共有結合の具体例としては、シンナモイル基(化10参照)またはカルコニル(chalconyl)基(化11)の光二量化反応により形成される共有結合が挙げられる。
【0113】
【化10】

【0114】
【化11】

(以上工程F)
【0115】
このようにして得られたn型シリコン微粒子層の上に、蒸着等の任意の公知の方法を用いて、アルミニウム電極17を形成することにより、太陽電池10が得られる。
なお、裏面電極として本実施の形態においてはアルミニウムを用いたが、太陽電池に通常用いられる任意の金属を用いることができる。また、裏面電極の形成方法として、蒸着以外の任意の公知の方法を用いてもよい。
【実施例】
【0116】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0117】
(実施例1)
(1)エポキシ化p型シリコン微粒子の製造
p型シリコン微粒子(粒径10〜100nm)を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(化12、信越化学工業株式会社製)0.99重量部、およびジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン溶媒に溶解し、反応液を調製した。
【0118】
【化12】

【0119】
このようにして得られた反応液中にp型シリコン微粒子を混合し、撹拌しながら空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物およびジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去した。
単分子膜の厚さは厚さが1nm程度であるため、シリコン導電性を損なうことはなく、しかも得られたエポキシ化p型シリコン微粒子の耐酸化性は向上していた。
【0120】
(2)エポキシ化n型シリコン微粒子の製造
n型シリコン微粒子(粒径10〜100nm)を用いて、(1)と同様にエポキシ化n型シリコン微粒子を製造した。
【0121】
(3)エポキシ化ITOガラス板の製造
ITOガラス板を用意し、よく洗浄して乾燥した。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(化11)0.99重量部、およびジブチルスズビスアセチルアセトナート(縮合触媒)0.01重量部を秤量し、これを100重量部のヘキサメチルジシロキサン溶媒に溶解し、反応液を調製した。
【0122】
反応液をITOガラス板のITO被膜側の表面に塗布し、空気中(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。
その後、クロロホルムで洗浄し、過剰なアルコキシシラン化合物およびジブチルスズビスアセチルアセトナートを除去した。
【0123】
(4)第1および第2の混合物の製造、第1および第2の塗膜の形成、および太陽電池の形成
(1)で製造したエポキシ化p型シリコン微粒子100重量部と、2−メチルイミダゾール7重量部を混合し、これにイソプロピルアルコール40重量部を加えた。得られた混合物を十分混合してペースト状の第1の混合物を得た。
(2)で製造したエポキシ化n型シリコン微粒子100重量部と、2−メチルイミダゾール7重量部を混合し、これにイソプロピルアルコール40重量部を用いて、同様に第2の混合物を得た。
このようにして得られた第1の混合物を、(3)で製造されたエポキシ化ITOガラス板上(ITO被膜側)に塗布し、第1の塗膜を形成した。次いで、第1の塗膜の上に第2の混合物を塗布して第2の塗膜を得た。
室温下でイソプロピルアルコールを蒸発させた後、ITOガラス板およびその上に形成された塗膜を170℃で30分間加熱した。
その後、裏面電極としてアルミニウム蒸着膜を作成することにより、太陽電池を形成した。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシリコン微粒子の製造方法において、エポキシ化p型シリコン微粒子を製造する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前のp型シリコン微粒子の断面構造、(b)はエポキシ基を有する膜化合物の単分子膜が形成されたp型シリコン微粒子の断面構造をそれぞれ表す。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る太陽電池の断面構造を模式的に表した説明図である。
【符号の説明】
【0125】
1:p型シリコン微粒子、2:水酸基、3:エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜、4:エポキシ化p型シリコン微粒子、10:太陽電池、11:エポキシ化ITOガラス板、12:ガラス板、13:ITO被膜、14:エポキシ化p型微粒子、15:エポキシ化n型微粒子、16:2−メチルイミダゾール、17:アルミニウム電極、18:エポキシ基を有する膜化合物の単分子膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に共有結合した膜化合物の形成する被膜で表面が覆われていることを特徴とするシリコン微粒子。
【請求項2】
請求項1記載のシリコン微粒子において、前記膜化合物は、一端に反応性基を有し、他端に前記シリコン微粒子の表面基と反応するシリル基を有することを特徴とするシリコン微粒子。
【請求項3】
請求項2記載のシリコン微粒子において、前記反応性基は、熱反応性基、光反応性基、イオン反応性基、およびラジカル反応性基のいずれかであることを特徴とするシリコン微粒子。
【請求項4】
請求項3記載のシリコン微粒子において、前記反応性基は、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、シンナモイル基およびカルコニル基のいずれか1であることを特徴とするシリコン微粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコン微粒子において、前記被膜は単分子膜であることを特徴とするシリコン微粒子。
【請求項6】
反応性基およびシリコン微粒子の表面基と反応するシリル基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物を含む溶液を微粒子と接触させ、前記シリル基と前記シリコン微粒子の表面との間で結合を形成させる工程Aを有することを特徴とするシリコン微粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のシリコン微粒子の製造方法において、前記工程Aの後に、未反応の前記膜化合物を洗浄除去する工程をさらに有することを特徴とするシリコン微粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項6および7のいずれか1項に記載のシリコン微粒子の製造方法において、前記膜化合物は全てアルコキシシラン化合物であり、前記膜化合物を含む溶液は、さらに縮合触媒として、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル、およびチタン酸エステルキレートからなる群から選択される1または2以上の化合物を含むことを特徴とするシリコン微粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項6および7のいずれか1項に記載のシリコン微粒子の製造方法において、前記膜化合物は全てアルコキシシラン化合物であり、前記膜化合物を含む溶液は、さらに縮合触媒として、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、およびアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1または2以上の化合物をさらに含むことを特徴とするシリコン微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項8記載のシリコン微粒子の製造方法において、さらに助触媒として、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、およびアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1または2以上の化合物をさらに含むことを特徴とするシリコン微粒子の製造方法。
【請求項11】
反応性基を有する膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたp型シリコン微粒子が積層されてなるp型シリコン微粒子層と、前記膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたn型シリコン微粒子が積層されてなるn型シリコン微粒子層とが、透明電極と裏面電極との間に積層形成されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項12】
請求項11記載の太陽電池において、前記膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたp型シリコン微粒子と、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する架橋剤とを含む第1の混合物の塗膜が、前記反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により硬化して、前記p型シリコン微粒子層が積層形成され、
前記膜化合物の形成する被膜で表面が覆われたn型シリコン微粒子と、前記架橋剤とを含む第2の混合物の塗膜が、前記反応性基と前記架橋反応基との架橋反応により硬化して、前記n型シリコン微粒子層が積層形成されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項13】
請求項12記載の太陽電池において、前記p型シリコン微粒子層と前記n型シリコン微粒子層との間は、前記反応性基と前記架橋反応基との架橋反応を介して固定されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の太陽電池において、前記膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることを特徴とする太陽電池。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の太陽電池において、前記反応性基は、熱反応性基、光反応性基、イオン反応性基、およびラジカル反応性基のいずれかであることを特徴とする太陽電池。
【請求項16】
請求項15記載の太陽電池において、前記の架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であることを特徴とする太陽電池。
【請求項17】
請求項15記載の太陽電池において、前記架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であることを特徴とする太陽電池。
【請求項18】
請求項15記載の太陽電池において、前記架橋反応により形成された結合が、シンナモイル基およびカルコニル基のいずれか一方の光二量化反応により形成された四員環を構成する結合であることを特徴とする太陽電池。
【請求項19】
反応性基およびシリコン微粒子の表面基と反応するシリル基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物をp型シリコン微粒子と接触させ、前記シリコン微粒子の表面基と反応するシリル基と前記微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が覆われた反応性p型シリコン微粒子を製造する工程Aと、
反応性基およびシリコン微粒子の表面基と反応するシリル基を分子の両端にそれぞれ有する膜化合物をn型シリコン微粒子と接触させ、前記シリコン微粒子の表面基と反応するシリル基と前記微粒子の表面との間で結合を形成させ、前記膜化合物の形成する被膜で表面が覆われた反応性n型シリコン微粒子を製造する工程Bと、
前記反応性p型シリコン微粒子、前記反応性基と反応して結合を形成する複数の架橋反応基を有する架橋剤、および溶媒とを混合してペースト状の第1の膜前駆体を製造する工程Cと、
前記反応性n型シリコン微粒子、前記架橋剤、および溶媒とを混合してペースト状の第2の膜前駆体を製造する工程Dと、
透明電極の表面に前記第1および第2の膜前駆体のいずれか一方を塗布して第1の塗膜を形成し、次いで該第1の塗膜の上に第1および第2の膜前駆体の他方を塗布して第2の塗膜を形成する工程Eと、
前記架橋反応により前記第1および第2の塗膜を硬化させる工程Fとを有することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載の太陽電池の製造方法において、前記膜化合物の形成する被膜が単分子膜であることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項21】
請求項19および20のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法において、前記架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とエポキシ基との反応により形成されたN−CHCH(OH)結合であることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項22】
請求項19および20のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法において、前記架橋反応により形成された結合が、アミノ基またはイミノ基とイソシアネート基との反応により形成されたNH−CONH結合であることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項23】
請求項19記載の太陽電池の製造方法において、前記架橋反応により形成された結合が、シンナモイル基およびカルコニル基のいずれか一方の光二量化反応により形成された四員環を構成する結合であることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項24】
請求項21記載の太陽電池の製造方法において、前記反応性基がエポキシ基を有する官能基であり、前記架橋剤がイミダゾール誘導体であることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項25】
請求項19および20のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法において、前記反応性基がアミノ基およびイミノ基のいずれか一方を含む官能基であり、前記架橋剤が2または3以上のイソシアネート基を有する化合物および2または3以上のエポキシ基を有する化合物のいずれか一方であることを特徴とする太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−255143(P2008−255143A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95860(P2007−95860)
【出願日】平成19年3月31日(2007.3.31)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】