説明

シリコーンコーティングを含む繊維質支持体

本発明は、少なくとも2つのシリコーンタイプの連続した層から成るシリコーンコーティングを含む繊維質支持体に関する。前記繊維質支持体と接触する第1の層は、シリコーンエラストマー組成物をベースとする層である。この第1の層と接触する第2の層は、充填剤を高い割合で含み、重付加反応によって架橋可能なポリオルガノシロキサンの水性エマルションを架橋させることによって得られる薄い層である。本発明はまた、このようなコーティングされた繊維質支持体、特にエアバッグタイプの膨らませることができる保護用バッグの製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのシリコーンタイプの連続した層から作られたシリコーンコーティングを含む繊維質支持体に関する。前記繊維質支持体と接触する第1の層は、シリコーンエラストマー組成物をベースとする層である。この第1の層と接触する第2の層は、充填剤を高い割合で含み、重付加反応によって架橋可能なポリオルガノシロキサンの水性エマルションを架橋させることによって得られる薄い層である。本発明はまた、かかるコーティングされた繊維質支持体、特にエアバッグを製造するための方法にも関する。
【0002】
本発明の一般分野は、重付加反応によって架橋して薄いフィルム状のエラストマーを生成することができるシリコーン組成物{特に2構成型(2成分型若しくは2液型)又は多構成型(多成分型若しくは多液型)のもの}を、様々な繊維質支持体(例えば織布、編布又は不織布繊維質支持体)用のコーティングとして用いることの分野である。
【背景技術】
【0003】
かかるシリコーンコーティングは一般的に、繊維質支持体をコーティングし、次いで硬化させることによって得られ、この硬化は、ポリオルガノシロキサンの不飽和(アルケニル、例えばSi−Vi)基と同じポリオルガノシロキサン又は別のポリオルガノシロキサンの水素との重付加によって進行するものである。
【0004】
特にエアバッグ、シール用可撓性スリーブ、衣類又は建築用布帛の分野におけるような多くの繊維質支持体については、シリコーンコーティングによって、シール特性を付与すると同時に低摩擦係数をも付与して支持体表面の手触りが粗くなったり触ることによってすり減ったりすることがないようにすることが求められる。また、これらの特性に加えて、機械的特性、例えば凝集性、可撓性、柔軟性、耐ほつれ性、引裂き強さ及びしわくちゃ化適性(aptitude au froissement)に関して、要求されるその他の特性を有するシリコーンコーティングを得ることも、求められている。
【0005】
これらの用途においては、これらの特性の間の良好な折衷点を得ることが難しいことが多い。
【0006】
現在、多くの自動車には、自動車の減速を測定する加速度センサーが備え付けられている。減速の基準値を超えると、爆発性ペレットが補完装填物の燃焼を開始させ、次いで固体燃料の燃焼を開始させる。この固体燃料が気体になり、クッションを膨らませる。この個別エアバッグ又は膨張クッションのさらなる詳細については、特にフランス国特許第2668106A号明細書を参照することができる。
【0007】
これらは、合成繊維(例えばポリアミド)の布の少なくとも一方の面がシリコーン組成物の層で被覆されて成るのが一般的である。これらのシリコーン組成物は、乗物の乗員用の個別エアバッグを製造するために用いられる可撓性(織布、編布又は不織布)材料のコーティングにおいて、重要な市場を見出した。
【0008】
フロントエアバッグは、衝突の激しさに適応してそれに比例して展開する(広がる)ことができるものである。この保護システムは、現在では次第にサイドエアバッグやカーテンエアバッグによって補完されてきている。このタイプのエアバッグについては、特に自動車が何度も横転するような事故を起こした時に、エアバッグができるだけ長く膨らんだままであり続けることが大切である。従って、これらのエアバッグはこの観点から完全に気密性であることが重要である。
【0009】
エアバッグの気密性を高めるために、特別なエアバッグ製織技術、例えば英国特許第2383304号明細書及び同第2397805号明細書に記載されたような一体製織(one piece woven)技術を用いることができる。
【0010】
得られたエアバッグは次いで、良好な空気気密性を確保するためにその外側面を充分多量のシリコーン組成物で被覆される。
【0011】
しかしながら、エアバッグの表面にこのように多量のシリコーン組成物を塗布すると、得られる表面は、「粘ついた」感触及び高い摩擦係数を有する手触りが粗くて摩耗性のものとなる。このような表面には、エアバッグを折り畳む際やその後にエアバッグが膨らむ際に多くの問題点があり、展開しにくくなったり、展開する際に望まれない方向に優先的に展開するようになったり、さらにはサイドウィンドウのガラスのような自動車部品との摩擦が過度に大きくなったり、また、乗員の頭や手足が展開したエアバッグに擦られて傷つく危険性をもたらしたりする。
【特許文献1】フランス国特許第2668106A号明細書
【特許文献2】英国特許第2383304号明細書
【特許文献3】英国特許第2397805号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、必要な気密性を有し、手触りが粗かったり摩耗性だったりせず、より柔らかい感触及び低い摩擦係数を有する繊維質支持体(特にエアバッグ)を提供することができるシリコーンコーティングを開発することが必要とされている。
【0013】
本発明者らは、上記の欠点を克服する繊維質支持体用の2つの連続した層から成るシリコーンコーティングを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かくして、本発明は、シリコーンタイプの2つの連続層を含むエアバッグのような繊維質支持体の表面に関する。前記繊維質支持体と接触する第1の層は、シリコーンエラストマー組成物をベースとする層である。この第1の層と接触する第2の層は、充填剤を高い割合で含み、重付加反応によって架橋可能なポリオルガノシロキサンの水性エマルションを架橋させることによって得られる薄い層である。
【発明の効果】
【0015】
得られるシリコーンコーティングは、繊維質支持体に凝集性、可撓性、柔軟性、耐ほつれ性、引裂き強さ及びコーミング強さ、並びにしわくちゃ化適性のような優れた機械的品質を与えながら、気密性(特に空気気密性)と耐摩耗性{擦り(スクラブ)試験}と低摩擦係数を表わす摩擦係数特性とに関する優れた折衷点を得るのに好適である。本発明の解決策はさらに、その他の期待される特性及び要求される特性、例えば良好な耐火性及び耐熱性をも有する繊維質支持体を得ることを可能にする。
【0016】
上に示した特性及び特徴のおかげで、乗物の乗員のための個別エアバッグであってひとたびコーティングされると良好な摩擦係数並びに良好なコーミング強さ及び引裂き強さを有し、さらに最適な特性、特に不透過性、熱保護、多孔性、折り畳みやすさ及び耐火性をも有するものを、上記のような目の粗い布帛(特にポリアミド又はポリエステル布帛)から製造することが可能である。これは、従来技術のコーティングされた布帛から製造されるエアバッグより高性能であり且つ安上がりなエアバッグを製造することを可能にする。
【0017】
本発明に従う解決策はまた、繊維質支持体上のシリコーンコーティングの所望の厚さのより良好な制御をも可能にし、従って不透過性及び手触り特徴に関してできるだけ最善の性能を保証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
かくして、本発明は、繊維質支持体の少なくとも1つの面が少なくとも次の2つのシリコーンタイプの連続した層:
・前記繊維質支持体と接触する、シリコーンエラストマー組成物をベースとする内側層(1);及び
・前記内側層(1)と接触する、1〜20g/m2の範囲の面密度を有する外側層(2):
でコーティングされて成る物品に関するものであり、
前記外側層(2)は、次の成分:
(A)ケイ素に結合したC2〜C6アルケニルタイプの不飽和官能基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(POS);
(B)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(POS);
(C)少なくとも1種の界面活性剤;
(D)少なくとも1種の架橋触媒;
(E)架橋後の前記外側層の乾燥重量に対して少なくとも10〜80重量%の、0.5〜50μmの範囲のd50粒子寸法を有する充填剤;及び
(F)水;
(G)随意としての、1個以上、好ましくは2個以上のアルケニル基を随意に含む1種以上のポリオルガノシロキサン(POS)樹脂;
(H)随意としての1種以上の架橋抑制剤;
(I)随意としての1種以上の粘着促進剤;及び
(J)随意としての1種以上の配合物添加剤:
を含む重付加反応によって架橋可能なポリオルガノシロキサンの水性エマルションを架橋させることによって得られたものである。
【0019】
本発明は、上記のシリコーン層を繊維質支持体上に付着させることによって得ることができるすべての製品を対象とする。例として、乗物の乗員を保護するために用いられるエアバッグ、ガラスブレード、例えば電線の熱及び誘電保護用のガラス繊維鞘、コンベアーベルト、耐火性布帛、断熱材、補償器、例えば配管用のシール用可撓性スリーブ、布類又は室内若しくは屋外テキスタイル建造物に用いることが予定される可撓性材料、例えば防水シート、テント、スタンド(屋台、売店等)及びサーカステント類を挙げることができる。
【0020】
コーティングすることが予定される繊維質支持体は、例えば織布、不織布若しくは編布であることができ、又はより一般的には繊維及び/若しくはガラス、シリカ、金属、セラミック、炭化ケイ素、炭素、ホウ素を含む材料の群から選択される繊維、天然繊維、例えば綿、羊毛、麻、亜麻、人造繊維、例えばビスコース、若しくはセルロース繊維、合成繊維、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル、クロロ繊維、ポリオレフィン、ポリイミド、合成ゴム、ポリビニルアルコール、アラミド、フルオロ繊維、フェノール等を含む任意の繊維質支持体であることができる。
【0021】
本発明において好ましく用いられるエアバッグは、英国特許第2383304号明細書及び同第2397805号明細書に記載されたような一体製織エアバッグである。これらのエアバッグは、例えばポリアミドやポリエステルのような様々な繊維質材料をベースとするものであることができる。
【0022】
本発明に従う組成物の主成分であるポリオルガノシロキサン(POS)は、線状であっても分岐状であっても網目状(架橋)であってもよく、炭化水素基と例えばアルケニル基及び/又は水素原子のような反応性基とを含むことができる。オルガノポリシロキサン組成物は、文献中、特にWalter Nollの著書「Chemistry and Technology of Silicones」(Academic Press社、1968年)第2版、第386〜409頁に詳細に記載されている。
【0023】
周囲温度又は高温において、一般的に金属触媒(好ましくは白金触媒)の存在下で、重付加反応によって、主としてヒドロシリル基とアルケニルシリル基との反応によって架橋する広範な2構成型又は1構成型オルガノポリシロキサン組成物を用いることができる。これらの組成物は、例えば米国特許第3220972号明細書、同第3284406号明細書、同第3436366号明細書、同第3697473号明細書及び同第4340709号明細書に記載されている。
【0024】
これらの組成物中に加えられるオルガノポリシロキサンは、少なくとも2個のアルケニル基を含む少なくとも1種の線状、分岐状又は網目状ポリシロキサンと、少なくとも2個、時には少なくとも3個の水素原子を含む少なくとも1種の線状、分岐状又は網目状ヒドロポリシロキサンとをベースとする組合せから構成されるのが一般的である。
【0025】
重付加によって架橋可能なポリオルガノシロキサン(A)は、式(I)の単位を(特に少なくとも2個)有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(II)の単位であるものであることができる。
【化1】

【化2】

これら式中、
Wはアルケニル基、好ましくはビニル又はアリル基であり;
記号Yは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に1個以上のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基(このアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピルであるのが好ましい);
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基;
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基;並びに/又は
・アルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基:
を表わし、
aは1又は2、好ましくは1であり、
bは0、1又は2であり、
a+bは1、2又は3であり、そして
cは0、1、2又は3である。
【0026】
ポリオルガノシロキサン化合物(B)は、式(III)の単位を少なくとも2個又は場合により少なくとも3個有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(IV)の単位であるものであることができる。
【化3】

【化4】

ここで、
Hは水素原子を表わし;
記号Yは同一であっても異なっていてもよく、上で定義した通りであり;
cは0、1又は2であり;そして
gは0、1、2又は3である。
【0027】
ケイ素原子に直接結合した有機基Yの例としては、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;ブチル;イソブチル;n−ペンチル;t−ブチル;クロロメチル;ジクロロメチル;α−クロロエチル;α,β−ジクロロエチル;フルオロメチル;ジフルオロメチル;α,β−ジフルオロエチル;3,3,3−トリフルオロプロピル;トリフルオロシクロプロピル;4,4,4−トリフルオロブチル;3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロペンチル;β−シアノエチル;β−シアノプロピル;フェニル;p−クロロフェニル;m−クロロフェニル;3,5−ジクロロフェニル;トリクロロフェニル;テトラクロロフェニル;o−、p−若しくはm−トリル;α,α,α−トリフルオロトリル;又はキシリル基、例えば2,3−ジメチルフェニル若しくは3,4−ジメチルフェニル基を挙げることができる。
【0028】
好ましくは、ケイ素原子に結合した有機基Yは、メチル若しくはフェニル基(これらの基は随意にハロゲン化されていてもよい)、又はシアノアルキル基である。
【0029】
特に、(CH3)2ViSiO1/2単位(MVi)を鎖の各末端とするポリジメチルシロキサンオイルに相当するPOS(A)が好ましい。
【0030】
特に、(CH3)2HSiO1/2単位(MH)を鎖の各末端とするポリ(ジメチル)(ヒドロメチル)シロキサンオイルに相当するPOS(B)が好ましい。
【0031】
本発明に従うエマルションには、1個以上、好ましくは2個以上のアルケニル基(特にヒドロキシル化されていないもの)を随意に含むポリオルガノシロキサン(POS)樹脂タイプの1種以上のシリコーン樹脂(G)を追加的に含ませることができる。この樹脂は特に前記のポリオルガノシロキサン(A)の定義に相当するものであることができる。
【0032】
これらのシリコーン樹脂は、よく知られていて商品として入手できる分岐状POSポリマーである。これらは、1分子当たりに式R13SiO1/2(M単位)、R12SiO2/2(D単位)、R1SiO3/2(T単位)及びSiO4/2(Q単位)から選択される少なくとも2個の異なる単位を有する。
【0033】
基R1は同一であっても異なっていてもよく、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、ビニル、フェニル及び/又は3,3,3−トリフルオロプロピル基から選択される。前記アルキル基は、1〜6個の炭素原子を有するのが好ましい。アルキル基R1としては、より特定的にはメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びn−ヘキシル基を挙げることができる。
【0034】
有利には、重付加タイプのエマルションにおいて、基R1の少なくとも一部はビニル(Vi)残基であり、Viの重量含有率は特に0.1〜2%の範囲である。これらのビニル官能基は、M、D又はT単位が有するものとする。例として、ビニルMDQ樹脂、例えばMDViQ、又はMMViQ樹脂を挙げることができる(ここで、DViは式(R12SiO2/2)で表わされ、その基R1の1つはビニル残基に相当し;MViは式R13SiO1/2で表わされ、その基R1の1つはビニル残基に相当する)。
【0035】
特に、MDViQ樹脂に相当する樹脂(G)(随意に(CH3)2ViSiO1/2単位を鎖の各末端とするポリジメチルシロキサンオイル中の溶液状のもの)が好ましい。
【0036】
POS(A)は、少なくとも200mPa・sであって好ましくは500000mPa・s未満、好ましくは3500〜100000mPa・sの範囲の動的粘度を有する。
【0037】
POS(B)は、特に300mPa・s未満、好ましくは1〜50mPa・sの範囲の動的粘度を有するものであることができる。
【0038】
POS樹脂(G)は、200〜500000mPa・sの範囲、好ましくは3000〜100000mPa・sの範囲の動的粘度を有するものであることができる。
【0039】
本明細書における粘度はすべて、ブルックフィールドタイプの装置を用いて25℃において既知の態様で測定した動的粘度値に相当する。
【0040】
界面活性剤(C)に関しては、これらはアニオン性、カチオン性又は非イオン性であることができる。これらは特に1種以上のポリエトキシル化脂肪アルコールであることができる。この界面活性剤は、非イオン性であるのが好ましい。界面活性剤の役割は特に、エマルションの粒子寸法分布を精錬すること、随意にその安定性を改善すること、そしてまた第1のシリコーン層に対するその濡れを保証することもある。
【0041】
非イオン性界面活性剤は、アルコキシル化脂肪酸類、ポリビニルアルコール類、ポリアルコキシル化アルキルフェノール類、ポリアルコキシル化脂肪アルコール類、ポリアルコキシル化又はポリグリセロール化脂肪アミド類、ポリグリセロール化アルコール類及びα−ジオール類、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマー類及びアルキルグリコシド類、アルキルポリグリコシド類、ショ糖エーテル類、ショ糖エステル類、ショ糖グリセリド類、ソルビタンエステル類並びにこれらの糖誘導体のエトキシル化化合物から選択することができる。これらは、少なくとも10のHLBを有するのが有利である。
【0042】
アニオン性界面活性剤は、アルカリ金属のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩及びエーテルリン酸塩から選択することができる。これらは、少なくとも10のHLBを有するのが有利である。
【0043】
カチオン性界面活性剤の中では、脂肪族又は芳香族脂肪アミン、脂肪族脂肪アミド、及び第4級アンモニウム誘導体を挙げることができる。これらは、少なくとも10のHLBを有するのが有利である。
【0044】
この界面活性剤は、単独で又は混合物として用いられ、特に用いるPOSの性状に応じて選択される。ポリアルキレンオキシドで変性されたアルキルシロキサンが本発明において特に有用である。
【0045】
架橋触媒としては、特に、これもまたよく知られた白金族からの少なくとも1種の金属又は化合物から成る触媒を選択することができる。白金族金属は、プラチノイドの名称で知られたものであり、この用語には、白金に加えてルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムが包含される。白金化合物及びロジウム化合物を用いるのが好ましい。特に、米国特許第3159601号明細書、同第3159602号明細書及び同第3220972号明細書並びにヨーロッパ特許公開第0057459A号公報、同第0188978A号公報及び同第0190530A号公報に記載された白金と有機物質との錯体、米国特許第3419593号明細書、同第3715334号明細書、同第3377432号明細書及び同第3814730号明細書に記載された白金とビニルオルガノシロキサンとの錯体(Karstedt錯体)を用いることができる。一般的に好ましい触媒は、白金である。この場合、白金金属の重量として計算した触媒(III)の重量による量は、ポリオルガノシロキサン(I)及び(II)の総重量を基準として2〜400ppmの範囲とするのが一般的であり、5〜200ppmの範囲とするのが好ましい。
【0046】
前に説明したように、前記エマルションは架橋後の前記外側層の乾燥重量に対して10〜80重量%の充填剤を含み、この充填剤は0.5〜50μmの範囲、好ましくは1〜10μmの範囲のd50粒子寸法を有する。このd50粒子寸法とは、重量による分布の50%がそれより低いものとなる粒子寸法に相当する。
【0047】
本発明に従うエマルションは、特に異なる粒子寸法分布を有する2つのタイプの充填剤(E)を含むことができる。例えば、1つのタイプの充填剤(E)は0.5〜5μmの範囲の粒子寸法分布を有することができ、別のタイプの充填剤(E)は10〜50μmの範囲の粒子寸法分布を有することができる。
【0048】
このタイプの充填剤としては、特にシリカ、炭酸カルシウム、石英粉末、焼成クレー、ケイ藻土、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ水和物、膨張バーミキュライト、非膨張バーミキュライト、酸化亜鉛、雲母、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム及び消石灰を含む群に含まれる充填剤を挙げることができる。これらの充填剤は、そのまま組み込むこともでき、表面処理することもできる。これらの充填剤は、随意に水性分散体(スラリー)の形にあることもできる。
【0049】
一般的に、架橋後の前記外側層(即ちシリコーン相)の乾燥重量に対して20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%の充填剤を用いることができる。
【0050】
架橋抑制剤(H)としては、POS架橋反応に従来から用いられているものを用いることができる。これらは、特に次の化合物から選択することができる:
・少なくとも1個のアルケニルで置換されたポリオルガノシロキサン(これは随意に環状の形で存在することができ、テトラメチルビニルテトラシロキサンが特に好ましい);
・ピリジン;
・有機ホスフィン及びホスファイト;
・不飽和アミド;
・アルキル化マレエート;並びに
・アセチレン性アルコール。
【0051】
アセチレン性アルコール(フランス国特許第1528464B号明細書及び同第2372874A号明細書を参照されたい)(これはヒドロシリル化反応用の好ましい熱ブロッカーの1つである)としては、特に1−エテニル−1−シクロヘキサノール、3−メチル−1−ドデセン−3−オール、3,7,11−トリメチル−1−ドデセン−3−オール、1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール、3−エチル−6−エチル−1−ノニン−3−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3−メチル−1−ペンタデシン−3−オール、マレイン酸ジアリル又はマレイン酸ジアリルの誘導体を選択することができる。
【0052】
かかる抑制剤は、オルガノポリシロキサン(I)及び(II)の総重量に対して最大3000ppm、好ましくは100〜1000ppmの量で存在させることができる。
【0053】
この分野において従来から用いられている任意の粘着促進剤(I)を随意に用いることが可能である。例えば、次のものを用いることができる:
・単独の若しくは一部加水分解されたビニル化シラン若しくはビニルオルガノシロキサン及びその反応生成物の1種;
・単独の若しくは一部加水分解されたエポキシ官能化シラン若しくはオルガノシロキサン及びその反応生成物の1種;
・単独の若しくは一部加水分解されたアミノ官能化シラン若しくはオルガノシロキサン及びその反応生成物の1種;
・単独の若しくは一部加水分解された酸無水物基官能化シラン若しくはオルガノシロキサン及びその反応生成物の1種;並びに/又は
・キレートタイプのチタン酸ブチル。
【0054】
この粘着促進剤は特に次のものから選択することができる:
・少なくとも1種の保護ヒドロコロイド、好ましくはポリビニルアルコール(これはまた、随意に他の乳化剤との組合せにおいて、界面活性剤としての働きをすることもできる);
・特定のシラン又はポリオルガノシロキサン、即ちヒドロキシル化され且つアミノ塩形成されたもの;
・ヒドロキシル化され且つアミノ塩形成された保護ヒドロコロイド、好ましくはポリビニルアルコール、及びヒドロキシル化され且つアミノ塩形成されたシラン及び/又はポリオルガノシロキサン。
【0055】
本発明に従うエマルションにはまた、他の慣用の配合物添加剤(J)、例えば縮合触媒、着色剤、難燃剤、殺菌剤、無機又は有機顔料、有機増粘剤(ポリエチレンオキシド及び誘導ポリマー、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル若しくはカチオン性ポリマー等)又は無機増粘剤(laponite)、酸化防止剤、並びにpH調節剤、ケイ質又は非ケイ質無機材料、特に補強用材料、増量用材料又は特異的な性質を有する材料を含ませることもできる。
【0056】
前記エマルション中に用いられるpH調節剤は、pHをアルカリ性値、例えば7〜8の範囲に保つことを可能にする。このpH維持システムは、例えば重炭酸ナトリウムであることができる。
【0057】
随意として、前記エマルションには補強用又は増量用無機充填剤を追加的に含有させることができ、これらは熱分解法シリカ及び沈降シリカから選択するのが好ましい。これらは、BET法に従って測定して少なくとも50m2/g、特に50〜400m2/gの範囲、好ましくは70m2/g超の比表面積、0.1μm未満の一次粒子平均寸法及び200g/リットル未満の嵩密度を有する。
【0058】
これらの親水性シリカは、そのまま前記エマルションの水性(連続)相中に加えるのが好ましい。1つの別態様に従えば、これらのシリカは随意に1種又は数種の有機ケイ素化合物で処理することもできる。この有機ケイ素化合物は、この目的で通常用いられる化合物である。別の別態様に従えば、前記シリカはシリコーンオイル中に予め分散させることもできる。これらの化合物の中では、次のものを挙げることができる:メチルポリシロキサン類、例えばヘキサメチルジシロキサン、オキサメチルシクロテトラシロキサン、メチルポリシラザン類、例えばヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、クロロシラン類、例えばジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、アルコキシシラン類、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン。この処理の際に、シリカの重量が出発時の重量より20%増量し得る。
【0059】
一般的に、前記配合のシリコーン相の重量に対して0.5〜60重量%まで、好ましくは10〜25重量%の充填剤を用いる。
【0060】
前記シリコーンエマルションの組成物は、例えば次のものであることができる:
(A)(CH3)2ViSiO1/2単位を鎖の各末端とするポリジメチルシロキサンオイル;
(B)(CH3)2HSiO1/2単位を鎖の各末端とするポリ(ジメチル)(ヒドロメチル)シロキサンオイル;
(C)少なくとも1種の非イオン性界面活性剤;
(D)白金ベースの架橋触媒;
(E)架橋後の前記外側層の乾燥重量に対して20〜80重量%の、1〜10μmの範囲のd50粒子寸法を有する炭酸カルシウム;
(F)水;
(G)随意としてのポリオルガノシロキサン樹脂、特にMDViQタイプのもの(随意に(CH3)2ViSiO1/2単位を鎖の各末端とするポリジメチルシロキサンオイル中の溶液状のもの);
(H)随意としての1種以上の架橋抑制剤;
(I)少なくとも1種の保護ヒドロコロイド、好ましくはポリビニルアルコール(これはまた、界面活性剤としての働きを、随意に他の乳化剤との組合せにおいて、することもある);特定のシラン又はポリオルガノシロキサン、即ちヒドロキシル化され且つアミノ塩形成されたもの;ヒドロキシル化され且つアミノ塩形成された保護ヒドロコロイド、好ましくはポリビニルアルコール、及びヒドロキシル化され且つアミノ塩形成されたシラン及び/又はポリオルガノシロキサン:を含む群から選択される、随意としての1種以上の粘着促進剤;並びに
(J)随意としての1種以上の配合物添加剤。
【0061】
本発明に従う水性シリコーンエマルションは、周囲温度において重付加によって架橋可能な(RTV)タイプのものであり、この白金で触媒される架橋は高温(100〜200℃)において活性化できることが知られている。
【0062】
このエマルションは、良好な機械的特性(柔軟性、引裂き強さ及び耐ほつれ性)を有し且つ燃焼の際の熱をほとんど放出しないシリコーンエラストマーの薄い撥水性層でコーティングされた布帛を得ることを可能にする。
【0063】
本発明に従うエマルションのシリコーン相は、重付加メカニズムに従って周囲温度(23℃)において架橋/硬化することによってエラストマーを生成することが意図されるPOSを含む。この架橋は、周囲温度より高い温度における熱活性化によって促進することができる。重付加室温加硫性エラストマー及び重付加高温加硫性エラストマーが本発明の範囲内に入る。
【0064】
前記水性エマルションは、周囲温度(25℃)且つ大気圧において製造することができる。
【0065】
上で規定したPOSの水性エマルションは、成分(A)〜(J)を1つの同じ反応器中に導入してエマルションを形成させることによって製造することができる。
【0066】
このエマルションは、複数のプレエマルションを混合することによって製造することもできる。これらプレエマルションは、重付加に必要な反応性部分及び触媒のすべて(特に≡SiVi含有POS+≡SiH含有POS+触媒)を含有するものではないという事実のせいでそれぞれが別々に架橋させることができないものである。
【0067】
例えば、≡SiVi部分及び≡SiH部分並びに随意としての抑制剤を含有するエマルションと、白金及び≡SiViオイルをベースとして触媒用エマルションとを製造し、これらをコーティング浴の調製の際に一緒にすることもできる。これによって本発明に従う安定なエマルションの製造が大いに容易になり、工業条件下で容易に製造することができるようになる。
【0068】
例えば、次のプレエマルションを製造することができる:
・POS(A)のベースとしてのプレエマルション;
・POS(B)のベースとしてのプレエマルション(架橋用エマルション);及び/又は
・触媒(D)のベースとしてのプレエマルション(触媒用エマルション)、例えばビニル化シリコーンオイル中に希釈された白金触媒の水性エマルションから成るもの。
【0069】
これらのプレエマルションは次いで混合される。界面活性剤(C)、充填剤(E)及びその他の随意成分(G)〜(J)は、前記プレエマルションのどれかに追加的に含有させることができる。
【0070】
物品に塗布する前に、浴を配合する際に前記触媒用エマルションを他のシリコーンエマルション(特にSiHをベースとするもの)に添加することができる。
【0071】
界面活性剤(C)は、直接経路でエマルションにすることができ、即ち界面活性剤を含有する水溶液中にシリコーン相を流し込むこともでき、また、その逆も可能である。
【0072】
粘着促進剤(I)は、任意の時点で添加することができ、特に浴を調製する際に添加することができる。
【0073】
繊維質支持体と接触する内側層(1)は、シリコーンエラストマー組成物をベースとする。この組成物としては、様々なタイプのものを用いることができる。
【0074】
周囲温度又は高温において、特に重付加、ヒドロシリル化又はラジカル反応によって架橋してエラストマーを生成する様々な多構成型、2構成型又は1構成型オルガノポリシロキサン組成物を用いることができる。重付加反応としては、一般的に金属触媒(好ましくは白金触媒)の存在下におけるヒドロシリル基とアルケニルシリル基との反応を特に挙げることができる(例えば米国特許第3220972号明細書、同第3284406号明細書、同第3436366号明細書、同第3697473号明細書及び同第4340709号明細書を参照されたい)。
【0075】
特に、少なくとも
・ケイ素原子に結合したC2〜C6アルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン;及び
・ケイ素原子に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン:
を含み、重付加反応によって架橋可能なポリオルガノシロキサン混合物を、
・有効量の白金ベース架橋触媒の存在下で
架橋させることによって得られるシリコーンエラストマー組成物を挙げることができる。
【0076】
これらのポリオルガノシロキサンは、外側層(2)について前に記載したものと同じであることができる。この組成物もまた、外側層(2)を形成させるために用いられる各種添加剤を含むことができる。
【0077】
前記シリコーンエラストマー組成物は、補強用充填剤、例えば前記したもの、特にポリオルガノシロキサン樹脂、及び/又はシリカ(好ましくは処理されたもの)を、より一層好ましくは内側層の5〜50%の範囲の割合で、含むのが好ましい。
【0078】
本発明の別の主題は、
・重付加、ヒドロシリル化又はラジカル反応によって架橋可能なシリコーンエラストマー組成物を繊維質支持体の表面上に付着させ;そして随意にこれを特に乾燥させることによって架橋させて内側層(1)を形成させ;そして
・前に規定した重付加反応によって架橋可能なポリオルガノシロキサンの水性エマルションを前記内側層(1)上に付着させ、そしてこれを特に乾燥させることによって架橋させて外側層(2)をこの外側層が1〜20g/m2の範囲の面密度を有するように形成させる:
ことを含む、繊維質支持体のコーティング方法にある。
【0079】
付着工程は、コーティングによって実施するのが有利である。コーティング工程は特に、ナイフ塗布、特にロール式ナイフ塗布、フローティングナイフ塗布又はナイフ−オーバー−ブランケット塗布を用いて、トランスファー(転写)コーティングにより、パジング、即ち2本のロールの間の圧搾(スクイージング)により、又はキスロール(lick roll)コーティング、ロータリーマシンコーティング、反転ロールコーティングにより、及び/又は吹付により、実施することができる。外側層の塗布については、グラビアロール又はトランスファーロールコーティングが特に有用である。
【0080】
次に、乾燥及び架橋を好ましくは熱風又は電磁放射線、例えば赤外線によって、特に10秒〜5分間、好ましくは10〜60秒、繊維質支持体の分解温度を超えない架橋温度において、実施する。
【0081】
外側層(2)用の組成物を付着させる前に、内側層(1)を形成させるために塗布した組成物を架橋させてもいいし、架橋させなくてもよいということに留意すべきである。内側層(1)を形成させるために塗布した組成物を架橋させない場合には、その架橋は、外側層(2)を形成させるための組成物の架橋を実施する時に、実施される。
【0082】
シリコーンエラストマー組成物の塗布量は、10〜200g/m2の範囲、好ましくは40〜120g/m2の範囲の面密度を有する内側層(1)を形成させることができるような量とする。一般的に、架橋後の最終付着厚さが30〜70μmの範囲となるようにする。
【0083】
重付加反応によって架橋可能なポリオルガノシロキサンの水性エマルションの塗布量は、1〜20g/m2の範囲、好ましくは5〜15g/m2の範囲の面密度を有する外側層(2)を形成させることができるような量とする。一般的に、架橋後の最終付着厚さが1〜15μmの範囲、好ましくは2〜10μmの範囲、さらにより一層好ましくは3〜9μmの範囲、特に4、5、6又は7μmとなるようにする。
【0084】
一体製織エアバッグに関しては、本発明の主題のシリコーンコーティングは、エアバッグの外側の、乗物の使用者や各種部品と接触する面上に形成される。
【0085】
本発明の原理の理解を容易にするために、本明細書においては特定的な用語が用いられる。しかしながら、この特定的な用語を用いることによって本発明の範囲が何ら限定されるものではないことを理解されたい。当業者であれば、その一般的な知識に基づいて本発明の変法、本発明の改良及び本発明の仕上げを考えることができる。
【0086】
用語「及び/又は」は、「及び」、「又は」及びこの用語に関連する要素のすべてのその他の可能な組合せの意味を包含する。
【0087】
本発明のその他の詳細又は利点は、単に指標として与えた以下の実施例からより一層明らかになるであろう。
【実施例】
【0088】
実験の部
これらの実施例において、粘度は1982年5月からのAFNOR規格NFT-76-106の指標に従ってブルックフィールド粘度計を用いて測定した。
【0089】
以下の実施例においては、下に規定する成分を用いた:
・POS−A:(CH3)2ViSiO1/2単位を鎖の各末端とし、60000mPa・sの粘度を有するポリジメチルシロキサンオイル。
・POS−B:(CH3)2HSiO1/2単位を鎖の各末端とし、25mPa・sの粘度を有するポリ(ジメチル)(ヒドロメチル)シロキサンオイルであって、オイル100g当たり合計0.7個のSi−H官能基を含有するもの(その内の0.6個のSi−H官能基が鎖中に配置される)。
・樹脂G:(CH3)2ViSiO1/2単位を鎖の各末端とするポリジメチルシロキサンオイル中の溶液状の、ビニル0.7重量%を含み、粘度60000mPa・sのMDViQ樹脂。
・触媒(D):Karstedt触媒の名称で知られている、白金金属10重量%を含む有機金属錯体の形で導入される白金金属。
・抑制剤(H):1−エチニルシクロヘキサノール(ECH)。
・界面活性剤(C)1:商品名RHODOVIOL(登録商標)のポリビニルアルコール25/140(4%溶液状の粘度/エステル価)を10%含有する水溶液。この溶液は、粘着促進剤(I)としての働きもする。
・界面活性剤(C)2:ポリアルキレンオキシドで変性されたヘプタメチルトリシロキサン。
・充填剤(E):適合化処理(加熱又は表面官能化)を行っていないd50粒子寸法2μmを有する商品名ALBACAR(登録商標)5970の炭酸カルシウム。
【0090】
例1:架橋用エマルションRの調製
【0091】
様々な重量組成(g)の架橋用エマルションを表1に挙げる。
【0092】
【表1】

CR1及びCR2は比較用組成物である。
【0093】
掻き取り馬蹄型撹拌機及び台座(冷却水の循環により冷却されたもの)を備えたIKA実験室用反応器中に界面活性剤1及びソルビン酸を導入した。次いで撹拌しながら樹脂Gを170分かけて注いだ。次に、ECHを予め分散させたPOS−Aを150分かけて注いだ。次いで、ultra-turrax(IKA)回転子−固定子を加え、エマルションを90分かけて、20分間は16000rpmで、次いで70分間は13000rpmで、剪断混合した。最終温度は28.6℃だった。平均粒子寸法は3μmだった。次にPOS−Bを20分かけて注いだ。次いで脱イオン水を60分かけて徐々に添加することによってエマルションを希釈した。
【0094】
次に、界面活性剤2及び次いで充填剤(E)を添加し、撹拌して均質化させた。
【0095】
例2:触媒用エマルションCの調製
【0096】
このエマルションは、POS−Aを53重量%、界面活性剤1を28重量%、触媒を0.45重量%、そして水を17.5重量%含むものとして調製した。
【0097】
例3:コーティングされた織布の調製
【0098】
この織布は、1cm当たり18本のヤーンを有する、470dtex経糸及び緯糸ポリアミド布帛だった。この織布を、Rhodia Silicones社製のRHODORSIL TCS 7510シリコーンの面密度65g/m2の内側層(1)でコーティングした。この内側層(1)は、60μmの厚さを有していた。
【0099】
表2に示した所定量の架橋用調製物及び触媒用調製物を混合し、浴の粘度及び濃度を調節して織布上へのシリコーンの付着量を調節するために随意に希釈水を添加して、コーティング浴を形成させてから、織布への塗布を行った。
【0100】
3番マイヤーバーを用いてシリコーンの内側層をコーティング済の布帛に対して前記コーティング浴による塗布を行った。次に、コーティングされた織布を、表2に示した条件に従って通気加熱室に通した。
【0101】
コーティングされた織布の特徴付け
【0102】
・濡れ性:シリコーンの外側層用に塗布されるエマルションがシリコーンの内側層全体にうまく行き渡ったかどうかを最初に視覚的に評価した。シリコーンの均一フィルムが形成していれば、「良」とする。
【0103】
・付着:付着した外側層の重量を評価するために、織布をコーティング前に計量し、次いでシリコーンの外側層を乾燥させた後に計量した。
【0104】
・外側層(2)の平均厚さ:コーティングされた織布を横に切って得られた断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。
【0105】
・動的摩擦係数Kd:これらは、引張試験用に用いられる万能試験機を用い、そのクロスヘッドで200gのそり状物(patin)をセーム革材料で又は透明ガラス板で被覆した水平面上で引っ張ることによって測定した。前記そり状物は被検用のコーティングされた織布のサンプルで覆った。セーム革材料又はガラス板で被覆した水平面の側部はシリコーン面。Kdは、そのサンプルが対象とする面上で摺動できるかどうかを示す。得られた値が低いほど、その材料を摺動させるのに必要な力が小さかったということである。
【0106】
・擦り試験:これは、耐しわくちゃ化性及び耐摩耗性(ISO規格5981 A)試験であり、組成物の粘着性及び耐老化性を反映する。この試験は、織布を、試験片の両端部を2つのジョーで掴んで前後に動かして剪断運動に付し、また、可動性支持体と接触させることによる摩耗に付すことから成る。単位として、「クリージング」(cr)を使った(1クリージング=1/2サイクル)。
【0107】
【表2】

C0、C1及びC2は比較例である。
【0108】
例4:一体製織布帛のコーティング及び気密性の測定
【0109】
一体製織布帛(一般的に「T−バッグ」と称される)のサンプルを最初に液状シリコーンエラストマーの内側層(1)でコーティングした。次いで、エマルションの外側層を塗布した。
【0110】
内側層(1)のコーティングは、実験室用連続コーティングパイロットライン(Rotary)上でナイフを用いて2m/分で実施し、次いでインライン式に180℃のオーブン中に通した。付着させた内側層(1)の面密度は、それぞれの面について60g/m2だった。
【0111】
次いで、同じライン上で、エマルションの浴中に浸漬させたグラビアロールを用いて、エマルションR5を100g、エマルションCを5g、及び水を50g含むエマルションを塗布し、次いでこの織布をマイヤーバーによってワイプした。4m/分でこのコーティングを実施し、170℃のオーブン中に通した後に、10g/m2の面密度を有する外側層(2)が得られた。
【0112】
これらのコーティングされたバッグを動的透過性試験に付した。この試験の際に、前もって加圧して密閉したチャンバーを、瞬間的に電磁弁を介してバッグの内側と接触させた。その時の容器及びシリコーンコーティングされた一体製織バッグ中の圧力は1バールだった。次いでこの系を分離した。漏れはバッグのコーティングされた表面を通して起こっただけだった。気密性は、圧力が1バールから1.5バールまで低下するまでにかかる時間によって特徴付けられる。この試験は、バッグの急激な加圧及び採用する圧力が通常の透過性試験におけるものより大きいという事実のせいで、特に攻撃的である。
【0113】
内側層(1)コーティングを含むだけのバッグについては、5秒かかった。対照的に、内側層(1)及び外側層(2)を含むバッグについては、18秒かかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質支持体の少なくとも1つの面が少なくとも次の2つのシリコーンタイプの連続した層:
・前記繊維質支持体と接触する、シリコーンエラストマー組成物をベースとする内側層(1);及び
・前記内側層(1)と接触する、1〜20g/m2の範囲の面密度を有する外側層(2):
でコーティングされて成る物品であって、
前記外側層(2)が、次の成分:
(A)ケイ素に結合したC2〜C6アルケニルタイプの不飽和官能基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン;
(B)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン;
(C)少なくとも1種の界面活性剤;
(D)少なくとも1種の架橋触媒;
(E)架橋後の前記外側層の乾燥重量に対して少なくとも10〜80重量%の、0.5〜50μmの範囲のd50粒子寸法を有する充填剤;及び
(F)水;
(G)随意としての、1個以上のアルケニル基を随意に含む1種以上のポリオルガノシロキサン樹脂;
(H)随意としての1種以上の架橋抑制剤;
(I)随意としての1種以上の粘着促進剤;及び
(J)随意としての1種以上の配合物添加剤:
を含む重付加反応によって架橋可能なポリオルガノシロキサンの水性エマルションを架橋させることによって得られたものである、前記物品。
【請求項2】
前記架橋触媒(D)が白金族からの少なくとも1種の金属又は化合物から成ることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記充填剤(E)がシリカ、炭酸カルシウム、石英粉末、焼成クレー、ケイ藻土、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ水和物、膨張バーミキュライト、非膨張バーミキュライト、酸化亜鉛、雲母、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム及び消石灰を含む群に含まれるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記シリコーン水性エマルションが架橋後の前記外側層の乾燥重量に対して30〜50%の充填剤(E)を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の物品。
【請求項5】
前記充填剤(E)が1〜10μmの範囲のd50粒子寸法を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の物品。
【請求項6】
前記水性エマルションが少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(C)を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の物品。
【請求項7】
前記水性エマルションがアルコキシル化脂肪酸類、ポリビニルアルコール類、ポリアルコキシル化アルキルフェノール類、ポリアルコキシル化脂肪アルコール類、ポリアルコキシル化又はポリグリセロール化脂肪アミド類、ポリグリセロール化アルコール類及びα−ジオール類、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマー類、アルキルグリコシド類、アルキルポリグリコシド類、ショ糖エーテル類、ショ糖エステル類、ショ糖グリセリド類、ソルビタンエステル類並びにこれら糖誘導体のエトキシル化化合物を含む群から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(C)を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の物品。
【請求項8】
前記のシリコーンエマルションの組成物が、
(A)(CH3)2ViSiO1/2単位を鎖の各末端とするポリジメチルシロキサンオイル;
(B)(CH3)2HSiO1/2単位を鎖の各末端とするポリ(ジメチル)(ヒドロメチル)シロキサンオイル;
(C)少なくとも1種の非イオン性界面活性剤;
(D)白金ベースの架橋触媒;
(E)架橋後の前記外側層の乾燥重量に対して10〜80重量%の、1〜10μmの範囲のd50粒子寸法を有する炭酸カルシウム;
(F)水;
(G)随意としてのポリオルガノシロキサン樹脂、特にMDViQタイプのもの(随意に(CH3)2ViSiO1/2単位を鎖の各末端とするポリジメチルシロキサンオイル中の溶液状のもの);
(H)随意としての1種以上の架橋抑制剤;
(I)少なくとも1種の保護ヒドロコロイド、好ましくはポリビニルアルコール(これは界面活性剤としての働きを随意に他の乳化剤との組合せにおいてすることもある);特定のシラン又はポリオルガノシロキサン、即ちヒドロキシル化され且つアミノ塩形成されたもの;ヒドロキシル化され且つアミノ塩形成された保護ヒドロコロイド、好ましくはポリビニルアルコール、及びヒドロキシル化され且つアミノ塩形成されたシラン及び/又はポリオルガノシロキサン:を含む群から選択される随意としての1種以上の粘着促進剤;並びに
(J)随意としての1種以上の配合物添加剤:
を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の物品。
【請求項9】
前記外側層(2)を形成する水性エマルションが周囲温度又は高温において重付加反応によって架橋してエラストマーを生成する多構成型、2構成型又は1構成型ポリオルガノシロキサン組成物であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の物品。
【請求項10】
前記内側層(1)のシリコーンエラストマー組成物が周囲温度又は高温において重付加、ヒドロシリル化又はラジカル反応によって架橋してエラストマーを生成する多構成型、2構成型又は1構成型オルガノポリシロキサン組成物であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の物品。
【請求項11】
前記内側層(1)が10〜200g/m2の範囲、好ましくは40〜120g/m2の範囲の面密度を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の物品。
【請求項12】
前記内側層(1)が30〜70μmの範囲の架橋後の厚さを有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の物品。
【請求項13】
前記外側層(2)が5〜15g/m2の範囲の面密度を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の物品。
【請求項14】
前記外側層(2)が1〜15μmの範囲の架橋後の厚さを有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の物品。
【請求項15】
前記繊維質支持体が乗物の乗員を保護するために用いられるエアバッグ、ガラスブレード、コンベアーベルト、耐火性布帛、断熱材、補償器、衣類、及び室内又は屋外テキスタイル建造物に用いることが予定される可撓性材料を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の物品。
【請求項16】
繊維質支持体が乗物の乗員を保護するための一体製織エアバッグであること;並びに前記層(1)及び(2)から構成されるシリコーンコーティングが、前記エアバッグの外側の、乗物の使用者や各種部品と接触する面上に配置されること:を特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の物品。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の物品を得るための繊維質支持体のコーティング方法であって、
重付加、ヒドロシリル化又はラジカル反応によって架橋可能なシリコーンエラストマー組成物を繊維質支持体の表面上に付着させ;そして随意にこれを特に乾燥させることによって架橋させて内側層(1)を形成させ;そして
前記の重付加反応によって架橋可能なポリオルガノシロキサンの水性エマルションを前記内側層(1)上に付着させ、そしてこれを特に乾燥させることによって架橋させて外側層(2)をこの外側層が1〜20g/m2の範囲の重量を有するように形成させる:
ことを含む、前記方法。
【請求項18】
層(1)及び(2)の付着がコーティングすることによって実施されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記乾燥が熱風又は電磁放射線によって実施されることを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。

【公表番号】特表2009−531552(P2009−531552A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546404(P2008−546404)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069789
【国際公開番号】WO2007/071631
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(507421304)ブルースター シリコーン フランス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】