説明

シリンダ錠の保護装置

【課題】閉塞位置にあるシャッターを開放位置まで動作させる際、当該シャッターのロック解除の操作性をより向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができるシリンダ錠の保護装置を提供する。
【解決手段】シャッター2と、コイルスプリングと、ソレノイドと、トランスポンダ6と、アンテナ7と、認証手段と、認証手段による認証を開始させるアクセススイッチの操作手段(操作部12)とを具備したシリンダ錠の保護装置であって、認証手段により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、ソレノイドによるロックを解除し、コイルスプリングによる付勢力にてシャッター2を閉塞位置から開放位置まで移動させるシリンダ錠の保護装置であって、操作部12(アクセススイッチの操作手段)の近傍にアンテナ7を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車などが具備するシリンダ錠の破壊等を防止し得るシリンダ錠の保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、第三者によるはさみやドライバ等のキー孔への差し込みで二輪車などのシリンダ錠がいたずらされて破壊されるのを防止するために、例えば特許文献1で開示されたようなシリンダ錠の保護装置が提案されている。かかる保護装置は、キー孔を閉状態とする閉塞位置から当該キー孔を開状態とする開放位置まで摺動可能なシャッターと、該シャッターを開放位置と閉塞位置との間で摺動自在に保持するハウジングと、シャッターを閉塞位置に保持することによりキー孔を閉塞して施錠するマグネット錠と、磁石の磁気によりマグネット錠を解錠するマグネットキーを具備していた。
【0003】
上記シリンダ錠の保護装置によれば、ハウジングから突出したシャッターの一部を当該ハウジング内に押し込む操作を行うことによりキー孔を閉塞しつつ、その位置でマグネット錠にて施錠することができる。即ち、シャッターを閉塞位置とするための操作部が形成されており、運転者が当該操作部を操作することによってシャッターを閉塞位置とし、キー孔を覆ってシリンダ錠を保護し得る構成とされているのである。
【特許文献1】特開平11−44132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のシリンダ錠の保護装置においては、閉塞位置にあるシャッターを開放位置まで動作させるには、マグネットキーをマグネット錠に挿通させつつ操作して当該マグネット錠を解錠する必要があり、操作が面倒であるという問題があった。特に、夜間等の暗闇においては、マグネットキーをマグネット錠に挿通させる動作に困難性が生じてしまうという問題があった。
【0005】
然るに、本出願人は、運転者が携帯可能とされて認証コードを送信可能な送信手段と、該送信手段が近接されることにより当該送信手段からの認証コードを非接触にて受信可能な受信手段と、該受信手段にて受信した認証コードが正規のものであるか否かを認証する認証手段と、認証手段による認証を開始させるアクセススイッチの操作手段とを具備し、認証手段により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、シャッターのロックを解除可能なシリンダ錠の保護装置を検討するに至った。
【0006】
この場合、マグネットキーをマグネット錠に挿通させる動作が不要となって操作性を向上させ得るものの、一方の手で送信手段を受信手段に近接させながら、他方の手でアクセススイッチの操作手段を操作して認証を開始させる必要があるため、更なる操作性の向上を求められることが予想される。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、閉塞位置にあるシャッターを開放位置まで動作させる際、当該シャッターのロック解除の操作性をより向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができるシリンダ錠の保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、シリンダ錠のキー孔の上方に設けられたハウジングと、該ハウジング内で閉塞位置と開放位置との間で移動可能とされ、閉塞位置で前記キー孔を塞ぐとともに開放位置で当該キー孔を開放するシャッターと、該シャッターを常時開放位置へ付勢する付勢手段と、閉塞位置にある前記シャッターをロックして開放位置への移動を規制するロック手段と、運転者が携帯可能とされ、認証コードを送信可能な送信手段と、該送信手段が近接されることにより当該送信手段からの認証コードを非接触にて受信可能な受信手段と、該受信手段にて受信した認証コードが正規のものであるか否かを認証する認証手段と、前記認証手段による認証を開始させるアクセススイッチの操作手段とを具備し、当該認証手段により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、前記ロック手段によるロックを解除し、前記付勢手段による付勢力にて前記シャッターを閉塞位置から開放位置まで移動させるシリンダ錠の保護装置であって、前記アクセススイッチの操作手段の近傍に前記受信手段を配設したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のシリンダ錠の保護装置において、前記送信手段は、イグニッションキーの把持部内に形成されるとともに、前記アクセススイッチの操作手段は、当該把持部の一部で操作可能とされたものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のシリンダ錠の保護装置において、前記把持部は、一体的に突出形成された突出部を有するとともに、当該突出部で前記アクセススイッチの操作手段が押圧操作可能とされたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のシリンダ錠の保護装置において、前記アクセススイッチの操作手段に対する操作と連動して前記シャッターが前記付勢手段の付勢力に抗する方向に移動し、前記ロック手段によるロックを解除するとともに、前記アクセススイッチをオンして前記認証手段による認証を開始させることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1つに記載のシリンダ錠の保護装置において、前記送信手段は、イグニッションキーの把持部に内蔵されたトランスポンダから成るとともに、前記認証コードは、車両固有のIDコードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、送信手段を受信手段に近接させることにより認証手段による認証が行われた後、正規の認証コードを受信したことを条件としてロック手段によるロックが解除され、シャッターを閉塞位置から開放位置まで移動可能な状態とするので、閉塞位置にあるシャッターを開放位置まで動作させる際、当該シャッターのロック解除の操作性を向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができる。
【0014】
更に、アクセススイッチの操作手段の近傍に受信手段を配設したので、当該アクセススイッチの操作手段に対する操作時に、送信手段と受信手段とが近接することとなり、当該アクセススイッチの操作手段の操作と送信手段の受信手段への近接動作とを別個に行わせるものに比べ、シャッターのロック解除の操作性をより向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、送信手段は、イグニッションキーの把持部内に形成されるとともに、前記アクセススイッチの操作手段は、当該把持部の一部で操作可能とされたものであるので、アクセススイッチの操作手段を把持部の一部で操作する際、送信手段から送信された認証コードが受信手段にて受信され、認証手段による認証が開始されることとなる。従って、アクセススイッチの操作手段に対する1つの操作により、送信手段の受信手段への近接動作が同時に行われ、操作性を更に向上させることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、把持部は、一体的に突出形成された突出部を有するとともに、当該突出部でアクセススイッチの操作手段が押圧操作可能とされたので、アクセススイッチの操作手段に対する操作をより確実且つスムーズに行わせることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、アクセススイッチの操作手段に対する操作と連動してシャッターが前記付勢手段の付勢力に抗する方向に移動し、ロック手段によるロックを解除するとともに、アクセススイッチをオンして認証手段による認証を開始させるので、アクセススイッチの操作手段に対する1つの操作により、送信手段の受信手段への近接動作、及びロック手段の解除動作が同時に行われ、操作性を更に向上させることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、送信手段は、イグニッションキーの把持部に内蔵されたトランスポンダから成るとともに、認証コードは、車両固有のIDコードであるので、トランスポンダから受信手段に対して車両固有のIDコードを送信し、そのIDコードが正規のものである場合に限りエンジン始動を許可するイモビライザシステムのIDコードと認証コードとを共用させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るシリンダ錠の保護装置は、二輪車が具備するシリンダ錠のキー孔上方に設けられ、当該キー孔を外側から開閉可能とすることによりシリンダ錠を保護し得るもので、図1〜図9で示すように、ハウジング1と、シャッター2と、ロック手段としてのソレノイド3と、アクセススイッチ4と、付勢手段としてのコイルスプリング5と、送信手段としてのトランスポンダ6と、受信手段としてのアンテナ7と、認証手段8と、アクセススイッチの操作手段としての操作部12とから主に構成されている。
【0020】
ハウジング1は、シリンダ錠Sのキー孔Aの上方に設けられたもので、本保護装置の筐体を成すものである。このハウジング1には、略中央にキー孔Aを外部に臨ませる貫通孔1aが形成されるとともに、シャッター2を摺動自在に収容させる収容部1bが形成されている。尚、シリンダ錠Sを構成するシリンダボディ内には、複数のタンブラ(不図示)を内在したロータRが配設されるとともに、キー孔Aが形成されてイグニッションキーIK(図1参照)を抜き差しし得るよう構成されている。
【0021】
シャッター2は、ハウジング1内で閉塞位置と開放位置との間で移動可能とされ、閉塞位置(図10参照)でキー孔Aを塞ぐとともに開放位置(図12参照)で当該キー孔Aを外部に臨ませて開放するものである。より具体的には、シャッター2は、ハウジング1内で摺動自在とされており、一方の摺動端で閉塞位置となってキー孔Aを塞ぎ、他方の摺動端で開放位置となって当該キー孔Aを開放するよう構成されている。
【0022】
また、シャッター2には、その裏面側に形成されて閉塞位置でプランジャ3a(係合手段)先端を挿通し得る凹部2bと、側方に延設されてアクセススイッチ4をオンさせる腕部2cとが形成されており、シャッター2を摺動操作(開放位置から閉塞位置への動作)すると、凹部2bがソレノイド3のプランジャ3aと対向した位置となるよう構成されている。
【0023】
ロック手段としてのソレノイド3は、閉塞位置にあるシャッター2をロックして開放位置への移動を規制するためのものであり、コイル3cへの通電により出没(図3中上下動)し得るプランジャ3aを具備している。このプランジャ3aは、閉塞位置にあるシャッター2と係合して当該シャッター2の開放位置へ向かう方向(図3中右方向)及びそれと略垂直な方向(同図中上下方向)への変位を規制するロック位置(図3の状態)と、当該シャッター2との係合が解除される非ロック位置(コイル3への通電により下方へ移動した状態)との間を移動可能な係合手段を構成している。
【0024】
より具体的には、図13に示すように、プランジャ3aの先端には、その移動方向に対して略直交する方向に突出した突起3aaを有するとともに、当該突起3aaと合致する溝形状Eがシャッター2の凹部2bに形成されており、ソレノイド3(ロック手段)がロック位置とされて当該突起3aaが当該溝形状Eに嵌合することにより当該シャッター2と係合可能とされ、ロックされるよう構成されている。而して、突起3aaが溝形状Eに嵌合することにより、シャッター2の開放位置へ向かう方向及びそれと略垂直な方向への変位が規制されるのである。
【0025】
これにより、シャッター2が閉塞位置にあるとき、プランジャ3aが突出状態(ロック位置)となり、その先端の突起3aaをシャッター2の溝形状Eに嵌合させることによりロックして当該シャッター2の開放位置への移動を規制する一方、溝形状Eに対する突起3aaの嵌合を解除しつつ(図14参照)プランジャ3aを没入させて非ロック位置とする(図15参照)ことにより、シャッター2のロックが解除され、閉塞位置から開放位置への動作が許容され得るよう構成されているのである。
【0026】
然るに、プランジャ3aは、図3に示すように、スプリング3bにより常時上方へ付勢されており、シャッター2が開放位置にあるとき、その裏面に押されて没入位置とされるとともに、当該シャッター2が閉塞位置に至ると、スプリング3bの付勢力で当該シャッター2の裏面に形成された凹部2b内で突出し、先端の突起3aaが溝形状Eに嵌合してシャッター2をロック(係合)し得るようになっている。
【0027】
送信手段としてのトランスポンダ6は、運転者が携帯可能とされ、認証コードを無線にて送信可能なもので、イグニッションキーIKの把持部Dに内蔵されて、図17に示すように、車両側に配設されたアンテナ7(受信手段)との間で通信可能とされて成るものである。より詳しくは、イグニッションキーIKの把持部Dに内蔵したトランスポンダ6は、アンテナ7から送信される無線信号に基づいて動作し、その無線信号に対して回答となる信号(認証コード及び車両固有のIDコード)を送信するものである。
【0028】
然るに、かかるトランスポンダ6には、アンテナ7側から送られる無線信号を受信し及び当該トランスポンダ6側で生成した情報を送信するためのアンテナ、受信した無線信号を復調するための高周波回路、トランスポンダ6の制御を行う認証コード生成IC、イグニッションキーIK固有(即ち、車両固有)の情報を格納すべく不揮発性記憶手段から成るEEPROM及びコンデンサ等が配設されており、アンテナ7側からの電波にて励磁されて電力供給がなされるよう構成されている。即ち、乾電池やバッテリ等の電源を具備していないのである。
【0029】
受信手段としてのアンテナ7は、イグニッションキーIKと共にトランスポンダ6が近接されることにより当該トランスポンダ6からの認証コード(IDコード)を非接触にて受信可能なものであり、図5に示すように、ハウジング1内の基板11上に搭載されたチップ状の素子から成るものである。かかる基板11及びアンテナ7は、ハウジング1の正面側に形成された操作部12の下方(図5における右側であって当該操作部12と近接した位置)に配設されている。尚、アンテナ7は、上記の如くチップ状のものの他、コイル状のものとしてもよい。
【0030】
然るに、本実施形態においては、上述したように、アンテナ7側からの電波にて励磁されてトランスポンダ6の電力供給がなされるので、アンテナ7とトランスポンダ6とを極めて近い位置まで近接させた状態にてアンテナ7が認証コードを受信し得るようになっている。アンテナ7は、認証手段8と電気的に接続されており、アンテナ7で受信した認証コード(IDコード)を認証コード8に送信し得るよう構成されている。
【0031】
認証手段8は、アンテナ7(受信手段)にて受信した認証コード(IDコード)が正規のものであるか否かを認証するためのものであり、図17に示すように、ロック手段としてのソレノイド3と電気的に接続されている。而して、シャッター2が閉塞位置にてロックされた状態において、認証手段8にて正規の認証コードが受信されたと認証されると、ソレノイド3のプランジャ3aが没入(下降)して非ロック位置まで移動(図15参照)することにより、当該シャッター2との係合が解かれてロックが解除される一方、認証手段8による正規の認証コードの認証がないと、プランジャ3aによる係合(突起3aaの溝形状Eへの嵌合状態)が維持されてロックは解除されない。
【0032】
即ち、認証手段8により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、ソレノイド3(ロック手段)によるロックを解除し、シャッター2を閉塞位置から開放位置まで移動可能な状態とするのである。尚、認証手段8は、二輪車のエンジンを制御するためのECU9と電気的に接続されており、イグニッションキーIKがキー孔Aに挿通されつつ回動操作された状態においては、認証手段8により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、エンジン始動が許可されるようになっている。
【0033】
コイルスプリング5(付勢手段)は、閉塞位置にあるシャッター2を常時開放位置へ付勢するものであり、ソレノイド3(ロック手段)によるロックが解除されると当該コイルスプリング5による付勢力にてシャッター2が閉塞位置から開放位置まで自然に移動するよう構成されている。即ち、開放位置から閉塞位置までシャッター2を摺動操作すると、コイルスプリング5を押圧して圧縮せしめ、付勢力(開放位置へ向かう付勢力)を得ることができるのである。
【0034】
更に、ハウジング1内には、ソレノイド3(ロック手段)によりロックされたシャッター2を更に押圧操作してコイルスプリング5の付勢力に抗して移動させることによりオンし、認証手段8による認証を開始させるアクセススイッチ4が配設されている。より具体的には、把持部Dの突出部Daで操作部12を押圧操作すると、図11に示すように、それと連動してシャッター2がコイルスプリング5の付勢力に抗した方向に移動し、当該シャッター2から延設された腕部2cがアクセススイッチ4の操作部4aを押圧して電気的にオンし、これにより認証手段8による認証が開始するよう構成されているのである。
【0035】
また更に、本実施形態においては、認証手段8により認証コードが正規のものであると認証したことを条件に点灯して報知するLED10がハウジング1に形成されている。これにより、運転者に対し、正規の認証コードの受信が良好に行われたか否かを把握させることができるとともに、認証コードが受信されるとロックが解除されてコイルスプリング5にてシャッター2が開放位置となるので、暗闇でもシャッター2が開放位置にあるか否かが分かるようになっている。
【0036】
操作部12は、本発明の「アクセススイッチの操作手段」を構成するもので、スプリング13にて付勢されつつハウジング1に配設されて成り、イグニッションキーIKの把持部Dに一体形成された突出部Daと平面視で略同一形状とされている。即ち、図7〜9に示すように、把持部Dを把持しつつ突出部Daを操作部12に当てがい、そのまま押し込んでスプリング12の付勢力に抗して押圧操作し得るよう構成されているのである。
【0037】
一方、操作部12からは操作腕12aが延設されており、シャッター2から延設された操作腕2aに対してオーバーラップしつつ互いの上下面で当接して組み付けられている。操作部12の操作腕12aとシャッター2の操作腕2aとの当接面は、図6に示すように、傾斜面12aa、2aaがそれぞれ形成されており、これら傾斜面12aa、2aaが互いに対峙した状態とされている。そして、操作部12をスプリング13の付勢力に抗して押圧操作すると、操作腕12aが同図中下方へ移動するとともに、それぞれの傾斜面12aa、2aaがカムとして作用して、シャッター2をコイルスプリング5の付勢力に抗した方向に移動させ得るよう構成されている。
【0038】
即ち、閉塞位置にあるシャッター2(図10、13参照)は、プランジャ3a先端の突起3aaが溝形状Eに嵌合することによりロックされているので、当該ロックを解除するには、把持部Dの突出部Daを操作部12に当てがい、そのまま押圧操作することにより、図11に示すように、シャッター2をコイルスプリング5の付勢力に抗した方向(同図左側)へ移動させ、腕部2cにてアクセススイッチ4の操作部4aを押圧させ得るのである。
【0039】
また、この状態においては、図14に示すように、溝形状Eが突起3aaから離間して当該突起3aaと溝形状Eとの嵌合が解かれるので、ソレノイド3のプランジャ3aを下降させて非ロック位置まで移動(図15参照)させるとともに、突出部Daを操作部12から離すことにより、図12に示すように、コイルスプリング5の付勢力によりシャッター2が開放位置まで移動し、キー孔Aが開放されることとなる。
【0040】
尚、本実施形態においては、ロック位置にあるプランジャ3aを強制的に非ロック位置に移動させてソレノイド3(ロック手段)によるロックを解除する強制解除機構を具備している。かかる強制解除機構は、図3に示すように、一端14aがプランジャ3aに形成された凸部3acに当接するとともに、他端14bがワイヤWと接続された強制操作部14から構成されている。
【0041】
そして、ワイヤWを引っ張ることにより強制操作部14がスプリング15の付勢力に抗して移動(図3において下方へ移動)するよう構成されており、これにより、コイル3cへの通電がなくてもプランジャ3aを強制的に非ロック位置まで移動可能とされている。ワイヤWを引っ張る機構は、例えば本シリンダ錠の保護装置とは別個に配設されるとともにイグニッションキーIKを挿通しつつ回転操作可能なシリンダ錠のロータとしてもよく、或いはイグニッションキーIK等でロック解除して開放可能な収容空間(シートの下部空間)に配設された操作ノブ等としてもよい。
【0042】
一方、本実施形態においては、図13に示すように、シャッター2の溝形状Eとプランジャ3aの突起3aaとの当接面を互いに対峙した傾斜面2ba、3abとし、図16に示すように、ワイヤWが引張り操作されてプランジャ3aが強制的に非ロック位置に移動する過程で当該傾斜面2ba、3abがカムとして作用してシャッター2を移動させ、当該突起3aaと溝形状Eとの嵌合が解かれるよう構成されている。然るに、上記の如き強制解除機構は、任意取り付けるものであれば足り、取り付けないものとしてもよい。その場合、図18に示すように、シャッター2の溝形状E’とプランジャ3aの突起3aa’との当接面が平坦なもの(上記の如く傾斜面が形成されないもの)としてもよい。
【0043】
次に、上記構成のシリンダ錠の保護装置における動作について説明する。
まず、駐車時においては、イグニッションキーIKをキー孔Aから抜き取った後、開放位置にあるシャッター2の凸部2aを摘みつつ閉塞位置まで押し込んで摺動させる。このような開放位置から閉塞位置への摺動の過程で、図4に示すように、シャッター2がコイルスプリング5を圧縮し、閉塞位置に至ったシャッター2が常時開放位置側(同図中右側)へ付勢された状態となる。尚、このとき、シャッター2の腕部2cは、アクセススイッチ4の操作部4aと近接した位置にあるものの当該操作部4aを押圧しておらず、当該アクセススイッチ4は電気的にオフした状態となっている。
【0044】
また、シャッター2が閉塞位置に至ると、図13に示すように、ソレノイド3のプランジャ3a先端の突起3aaがシャッター2の溝形状Eと嵌合し、開放位置へ向かう摺動動作を規制してロックするとともに、シャッター2がキー孔Aの上方を覆ってキー等を差し込むことができない状態となる。これにより、第三者がキー孔Aに他のキーやハサミ等を差し込んでいたずら等がなされてしまうのを防止することができる。
【0045】
更に、プランジャ3aの突起3aaが溝形状Eに嵌合することによりシャッター2が係合(ロック)されるので、ロック状態においては、シャッター2の開放位置側への移動(変位)の規制は勿論、それと略垂直方向(図13中上下方向)の移動(変位)も傾斜面2ba、3abの当接により規制されることとなる。従って、シャッター2のロック状態をより強固とすることができ、盗難やいたずらを目的とした第三者が当該シャッター2に対してハンマ等で衝撃を加えたとしてもロックが解除してしまうのを抑制することができる。
【0046】
一方、閉塞位置にあるシャッター2を開放位置まで摺動させてキー孔Aを外部に臨ませるには、まず、図7〜9に示すように、把持部Dの突出部Daで操作部12を押圧操作する。これにより、操作部12の操作腕12a及びシャッター2の操作腕2aがカムとして機能して協働し、シャッター2がコイルスプリング5の付勢力に抗して僅かに摺動する。これにより、アクセススイッチ4がオンしてイモビライザシステムを含む車両の電源がオンするとともに、認証手段8による認証が開始される。このとき、LED10(報知手段)が点灯して運転者に電源がオンされたことを報知可能となっている。
【0047】
同時に、把持部Dの突出部Daで操作部12を押圧操作してシャッター2が僅かに摺動することにより、図14に示すように、溝形状Eが突起3aaから離間して当該突起3aaと溝形状Eとの嵌合が解かれた状態となる。また、把持部Dの突出部Daで操作部12を押圧操作することにより、当該把持部D内のトランスポンダ6とアンテナ7とが無線にて通信して認証手段8による認証が行われるので、認証コードが正規のものであれば、プランジャ3aが非ロック位置まで移動されることとなる。
【0048】
これにより、シャッター2のロックが解除されるので、その状態から把持部D及び突出部Daを操作部12から離せば、コイルスプリング5による付勢力にてシャッター2が閉塞位置から開放位置まで自然に移動する。こうして、シャッター2が開放位置に至ると、キー孔Aが外部に臨んだ状態となるので、イグニッションキーIKを当該キー孔Aに挿通して所定方向へ回転操作すれば、エンジンが始動され走行可能な状態となる。然るに、イグニッションキーIKがキー孔Aに挿通した状態においても、トランスポンダ6とアンテナ7との間で通信による通信を行わせ、アンテナ7にトランスポンダ6から認証コード(IDコード)を送信する。この認証コード(IDコード)が、予め定められた正規のものか否かを認証手段8が認証し、正規のものである場合に限り、エンジンの始動が許可されるようになっている。
【0049】
上記実施形態によれば、操作部12(アクセススイッチの操作手段)の近傍(本実施形態においては、下方近傍)にアンテナ7を配設したので、当該操作部12に対する操作時に、トランスポンダ6とアンテナ7とが近接することとなり、当該操作部12の操作とトランスポンダ6のアンテナ7への近接動作とを別個に行わせるものに比べ、シャッター2のロック解除の操作性をより向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができる。
【0050】
また、把持部Dの突出部Daにて操作部12を押圧操作することにより、トランスポンダ6(送信手段)をアンテナ7(受信手段)に近接させることができ、認証手段8による認証が行われた後、正規の認証コードを受信したことを条件としてソレノイド3(ロック手段)によるロックが解除され、シャッター2を閉塞位置から開放位置まで移動可能な状態とするので、閉塞位置にあるシャッター2を開放位置まで動作させる際、従来の如きマグネット錠を用いるものに比べ、当該シャッター2のロック解除の操作性を向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができる。
【0051】
更に、トランスポンダ6(送信手段)は、イグニッションキーIKの把持部D内に形成されるとともに、操作部12(アクセススイッチ4の操作手段)は、当該把持部Dの一部(突出部Da)で操作可能とされたものであるので、当該操作部12(アクセススイッチの操作手段)を把持部Dの一部(突出部Da)で操作する際、トランスポンダ6から送信された認証コードがアンテナ7にて受信され、認証手段8による認証が開始されることとなる。従って、操作部12(アクセススイッチの操作手段)に対する1つの操作により、トランスポンダ6(送信手段)のアンテナ7(受信手段)への近接動作が同時に行われ、操作性を更に向上させることができる。
【0052】
また更に、把持部Dは、一体的に突出形成された突出部Daを有するとともに、当該突出部Daで操作部12(アクセススイッチの操作手段)が押圧操作可能とされたので、当該操作部12に対する操作をより確実且つスムーズに行わせることができる。また、操作部12に対する操作と連動してシャッター2がコイルスプリング5の付勢力に抗する方向に移動し、ソレノイド3によるロックを解除(図14で示す如く、プランジャ3aの突起3aaと溝形状Eとの嵌合を解除)するとともに、アクセススイッチ4をオンして認証手段8による認証を開始させるので、操作部12に対する1つの操作により、トランスポンダ6のアンテナ7への近接動作、及びソレノイド3(ロック手段)の解除動作が同時に行われ、操作性を更に向上させることができる。
【0053】
然るに、本実施形態によれば、送信手段は、イグニッションキーIKの把持部に内蔵されたトランスポンダ6から成るとともに、認証コードは、車両固有のIDコードであるので、トランスポンダ6からアンテナ7(受信手段)に対して車両固有のIDコードを送信し、そのIDコードが正規のものである場合に限りエンジン始動を許可するイモビライザシステムのIDコードと認証コードとを共用(共通化)させることができる。
【0054】
尚、ソレノイド3から成るロック手段によるロックが解除されるとコイルスプリング5から成る付勢手段による付勢力にてシャッター2が閉塞位置から開放位置まで移動するので、閉塞位置にあるシャッター2を開放位置まで運転者が操作する必要がなく、ロック解除からキー孔A開放までの一連の操作性をより向上させることができる。
【0055】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば操作部12(アクセススイッチの操作手段)の近傍にアンテナ7が配設されていれば足り、例えば操作部12の下方とは異なる位置であって、当該操作部12の近傍にアンテナ7を配設してもよい。その場合であっても、操作部12(アクセススイッチの操作手段)に対する操作時に、トランスポンダ6(送信手段)とアンテナ7(受信手段)とが近接することとなり、シャッター2のロック解除の操作性をより向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができる。
【0056】
また、トランスポンダ6(送信手段)が把持部Dに埋め込まれておらず、運転者が別個に携帯可能なものとされてもよい。その場合であっても、操作部12(アクセススイッチ4の操作手段)の近傍に受信手段としてのアンテナ7が配設されていれば、トランスポンダ6(送信手段)をアンテナ7(受信手段)に近接させた手の近傍に操作部(アクセススイッチの操作手段)が位置することとなり、その手の指を伸ばせば当該操作部を容易に操作することができる。従って、閉塞位置にあるシャッターを開放位置まで動作させる際、当該シャッターのロック解除の操作性をより向上させて容易且つスムーズにロック解除を行わせることができる。更に、受信手段としてのアンテナ7やアクセススイッチ4を、ハウジング1とは異なる部位(例えば、二輪車のハンドルバーに固定されたハンドルスイッチ等)に形成してもよい。
【0057】
また更に、運転者が携帯可能とされ、認証コードを送信可能な送信手段は、本実施形態の如くイモビライザシステムを構成するトランスポンダに限定されず、他の送信手段(例えばイグニッションキーIKとは別個独立した携帯型のもの等)としてもよい。この場合、イモビライザシステムを具備していない車両にも適用できる。また、二輪車の他、四輪車やバギー、雪上車等他の車両におけるシリンダ錠の保護装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
アクセススイッチの操作手段の近傍に受信手段を配設したシリンダ錠の保護装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係るシリンダ錠の保護装置を示す斜視図
【図2】同シリンダ錠の保護装置(シャッターが閉塞位置)を示す平面図
【図3】図2におけるIII−III線断面図
【図4】図3におけるIV−IV線断面図
【図5】図2におけるV−V線断面図
【図6】図2におけるVI−VI線断面図
【図7】同シリンダ錠の保護装置の操作部を把持部の突出部にて押圧操作した状態を示す平面図
【図8】同シリンダ錠の保護装置の操作部を把持部の突出部にて押圧操作した状態を示す側面図
【図9】図7におけるIX−IX線断面図
【図10】同シリンダ錠の保護装置におけるシャッターが閉塞位置にある状態を示す模式図
【図11】同シリンダ錠の保護装置におけるシャッターが閉塞位置から更にコイルスプリングの付勢力に抗した方向に移動した状態を示す模式図
【図12】同シリンダ錠の保護装置におけるシャッターが開放位置にある状態を示す模式図
【図13】同シリンダ錠の保護装置におけるプランジャがロック位置とされ、その突起が溝形状に嵌合した状態を示す断面模式図
【図14】同シリンダ錠の保護装置におけるプランジャの突起と溝形状との嵌合が解除された状態を示す断面模式図
【図15】同シリンダ錠の保護装置におけるプランジャが非ロック位置とされた状態を示す断面模式図
【図16】同シリンダ錠の保護装置における強制解除機構によりプランジャを強制的に非ロック位置まで移動させる過程を示す断面模式図
【図17】同シリンダ錠の保護装置を示すブロック図
【図18】本発明の他の実施形態に係るシリンダ錠の保護装置におけるプランジャがロック位置とされ、その突起が溝形状に嵌合した状態を示す断面模式図
【符号の説明】
【0060】
1 ハウジング
2 シャッター
3 ソレノイド(ロック手段)
3a プランジャ
4 アクセススイッチ
5 コイルスプリング(付勢手段)
6 トランスポンダ(送信手段)
7 アンテナ(受信手段)
8 認証手段
9 ECU
10 LED
11 基板
12 操作部(アクセススイッチの操作手段)
13 スプリング
14 強制操作部(強制解除機構)
15 スプリング
IK イグニッションキー
D 把持部
Da 突出部
E 溝形状
A キー孔
S シリンダ錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ錠のキー孔の上方に設けられたハウジングと、
該ハウジング内で閉塞位置と開放位置との間で移動可能とされ、閉塞位置で前記キー孔を塞ぐとともに開放位置で当該キー孔を開放するシャッターと、
該シャッターを常時開放位置へ付勢する付勢手段と、
閉塞位置にある前記シャッターをロックして開放位置への移動を規制するロック手段と、
運転者が携帯可能とされ、認証コードを送信可能な送信手段と、
該送信手段が近接されることにより当該送信手段からの認証コードを非接触にて受信可能な受信手段と、
該受信手段にて受信した認証コードが正規のものであるか否かを認証する認証手段と、
前記認証手段による認証を開始させるアクセススイッチの操作手段と、
を具備し、当該認証手段により正規の認証コードが受信されたと認証された場合に限り、前記ロック手段によるロックを解除し、前記付勢手段による付勢力にて前記シャッターを閉塞位置から開放位置まで移動させるシリンダ錠の保護装置であって、
前記アクセススイッチの操作手段の近傍に前記受信手段を配設したことを特徴とするシリンダ錠の保護装置。
【請求項2】
前記送信手段は、イグニッションキーの把持部内に形成されるとともに、前記アクセススイッチの操作手段は、当該把持部の一部で操作可能とされたものであることを特徴とする請求項1記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項3】
前記把持部は、一体的に突出形成された突出部を有するとともに、当該突出部で前記アクセススイッチの操作手段が押圧操作可能とされたことを特徴とする請求項2記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項4】
前記アクセススイッチの操作手段に対する操作と連動して前記シャッターが前記付勢手段の付勢力に抗する方向に移動し、前記ロック手段によるロックを解除するとともに、前記アクセススイッチをオンして前記認証手段による認証を開始させることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のシリンダ錠の保護装置。
【請求項5】
前記送信手段は、イグニッションキーの把持部に内蔵されたトランスポンダから成るとともに、前記認証コードは、車両固有のIDコードであることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載のシリンダ錠の保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−53648(P2010−53648A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222190(P2008−222190)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】