説明

シロキサン含有バインダー分散体

【課題】本発明は、シロキサン含有量を有する有機バインダーおよび無機ナノ粒子を含んでなる水性処方物、その製造方法および水性被覆組成物の製造のためのその使用に関する。
【解決手段】ヒドロキシル基を含有するポリオルガノシロキサンを含有する水性コポリマーは、無機ナノ粒子との組み合わせで、優れた光沢および非常に低い曇り(曇り度)での著しく向上した耐引掻性を有する被覆物の製造に適していることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサン含有量を有する有機バインダーおよび無機ナノ粒子を含んでなる水性処方物、その製造方法および水性被覆組成物の製造のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の自動車のラッカー塗概念においては、透明ラッカーはトップ層として重要な役割を果たす。これに関して、高い光沢および透明性のような審美的効果に加えて、透明ラッカーの保護機能は重要な態様である。透明ラッカーは、外部の影響、例えば日光、水、溶媒および積極的化学薬品などに対して、および最後ではあるが重要な機械的応力に対して、基礎をなすラッカー層を保護する。従って、自動車用透明ラッカーの耐引掻性は未だ、自動車用透明ラッカーの品質のための本質的基準である。
【0003】
ポリマー被覆物中のナノ粒子は、耐引掻性、紫外線防護または伝導性のような特性を目標とする形で向上させ得る。ナノ粒子の表面修飾および分散の制御は、被覆物の要求される透明な外観およびその特性を決定する。
【0004】
被覆組成処方物へのナノ粒子の導入について種々の取り組みが過去に行われてきた。これに関して、樹脂または硬化剤成分中にまたはすぐに塗布できる被覆組成物中に直接、粒子を混合させることができる。水性系においては、水性相中に粒子を分散させる可能性がある。バインダー成分の1つにおける粒子のその場製造、および樹脂または硬化剤成分のいずれかへの表面の適合がさらに記載されている。
【0005】
実際的な観点からは、長期間の貯蔵安定性およびラッカーの処方における扱いやすさを確保するため、成分の1つにおいて安定したマスターバッチとしてナノ粒子を分散させることは有利である。最終用途においては、透明性、耐引掻性または伝導性のような有利な特性を生じさせるため、ナノ粒子は同様に、微細に分配された形での容易な分散性でなければならない。
【0006】
実際には、ナノ粒子を、樹脂成分中に、水性相中にまたは硬化する直前の硬化剤と樹脂の完成混合物中に従来的に分散させる。通常、このために、被覆組成物または接着剤の特定の母材にナノ粒子の表面を適合させる必要がある。単に修飾ナノ粒子を混合することの欠点は、完成処方物、すなわち全ての処方成分についての安定性の依存性である。この場合、1つのパラメーターの変更は分離を引き起こし得る(Pilotek,Steffen;Tabellion,Frank(2005年)、European Coatings Journal、4、第170頁以下参照)。
【0007】
ラッカー系の修飾のためのポリジメチルシロキサン(PDMS)の使用は先行技術から既知である。PDMDの高い表面張力に起因して、良好な表面濡れ、滑り止めおよび掃除し易い表面のような特定の特性が生じる(Reusmann、Farbe und Lack、105、第8/99巻、第40〜47頁、Adams、Paintindia、1996年10月、第31〜37頁)。
【0008】
PDMSの良好な組み込みを確実とするために、およびPDMSの移行をできるだけ大きく避けるために、有機官能性PDMS型、例えばアルキレンアミン官能性PDMS誘導体またはアルキレンヒドロキシ官能性PDMS誘導体が用いられることが多い。このようなラッカー系はWO91/18954、EP−A0329260またはUS4774278に記載されている。
【0009】
それにも拘わらず、アミン官能性PDMS型は、これらに基づくポリウレタン系のポットライフがウレアの形成への高い傾向のため極端な形で短縮される欠点を有している。
【0010】
既知のヒドロキシ官能性PDMS型は実際に向上したポットライフを生じさせるが、通常、これらはポリイソシアネート成分と不相溶性を示すため、均質なフィルムを製造することができず、架橋は不完全にしか行われない。その結果、遊離非結合PDMSがラッカー中に存在し、これはやがて、被覆物の外に移行し、被覆物の特性における低下を生じさせる。
【0011】
WO−A2007/025670には、イソシアネート基に反応性である反応性成分、特にポリヒドロキシ成分と組み合わせてポリイソシアネート成分をバインダーとして含んでなる二成分被覆組成物が開示されている。そこに記載された組成物は高官能性ヒドロキシポリジメチルシロキサン単位に起因して、特に向上した掃除し易い特性によって区別される高品質の被覆物の製造に適しているが、硬度およびエタノール耐性は向上していない。耐引掻性における向上は記載されておらず、検出することもできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第91/18954号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第0329260号明細書
【特許文献3】米国特許第4774278号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/025670号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Pilotek,Steffen、Tabellion,Frank著、「European Coatings Journal」、4、2005年、第170頁以下
【非特許文献2】Reusmann著、Farbe und Lack、105、第8/99巻、第40〜47頁
【非特許文献3】Adams著、Paintindia、1996年10月、第31〜37頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、良好な光学特性での向上した耐引掻性を有する自動車用水性透明ラッカーを提供する緊急の必要性がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くべきことに、ヒドロキシル基を含有するポリオルガノシロキサンを含有する水性コポリマーは、無機ナノ粒子との組み合わせで、優れた光沢および非常に低い曇り(曇り度)での著しく向上した耐引掻性を有する被覆物の製造に適していることを見出した。
【0016】
従って、本発明の目的は、最適な光沢と曇りを有し、向上した耐引掻性を示す、特に自動車用透明ラッカーとしての高品質の被覆組成物を提供することであった。さらに、該分散体は十分な貯蔵安定性となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の他の実施態様は、
A)コポリマーa1)およびヒドロキシル基を含有するポリオルガノシロキサンa2)、
B)分散体中での動的光散乱を用いて決定された、200nm未満の平均粒度(Z平均値)を有する、必要に応じて表面修飾された無機粒子、および
C)水
を含んでなる水性処方物である。
【0018】
本発明の他の実施態様は、前記ポリオルガノシロキサンa2)が式(I):
【化1】

〔式中、
Xは、脂肪族の必要に応じて分枝したC〜C10基または[−CH−O−(CH−]Si単位(式中、rは1〜4の整数である)であり、
Rは、CH(OH)Y基
(式中、Yは−CH−N(R)基
(式中、
は、H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基またはシクロヘキシル基、または2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、または3−ヒドロキシプロピル基であり、および
は、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、または3−ヒドロキシプロピル基である)である)
であり、
は、同一にまたは別々に、水素または必要に応じてヘテロ原子を含有するC〜C10炭化水素基であり、および
nは1〜40の整数である〕
で示される化合物である、上記水性処方物である。
【0019】
rが3である、請求項2に記載の水性処方物。
【0020】
本発明の他の実施態様は、前記ポリオルガノシロキサンa2)が式(V):
【化2】

〔式中、
mは、5〜15の整数であり、
Zは、Hまたはメチルであり、および
nおよびoは、同一にまたは別々に、1〜12の整数である〕
で示される化合物である、上記水性処方物である。
【0021】
本発明の他の実施態様は、前記ポリオルガノシロキサンa2)が式(VI):
【化3】

〔式中、
mは、5〜15の整数であり、および
yは、2〜4の整数である〕
で示される化合物である、上記水性処方物である。
【0022】
本発明の他の実施態様は、前記コポリマーa1)が
I)Ia)アルコール部分中にC〜C18炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物および/またはビニルエステル、および
Ib)ヒドロキシ官能性モノマー
をビルダーモノマーとして含有するヒドロキシ官能性疎水性ポリマー、および
II)IIa)アルコール部分中にC〜C18炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物および/またはビニルエステル、
IIb)ヒドロキシ官能性モノマー、および
IIc)酸官能性モノマー
をビルダー成分として含有するヒドロキシ官能性親水性ポリマー
から製造される、上記水性処方物である。
【0023】
本発明の他の実施態様は、前記式(I)の化合物が200〜3000g/molの範囲の数平均分子量および少なくとも1.8の平均OH官能価を有する、上記水性処方物である。
【0024】
本発明の他の実施態様は、前記式(I)の化合物が250〜2250g/molの数平均分子量を有する、上記水性処方物である。
【0025】
本発明の他の実施態様は、前記必要に応じて表面修飾された無機粒子B)が周期表の第II主族〜第IV主族の元素および/または第I亜属〜第VIII亜属の元素(ランタニドを含む)の無機酸化物、混合酸化物、カーバイド、ホウ化物および窒化物からなる群から選択される、上記水性処方物である。
【0026】
本発明の他の実施態様は、前記必要に応じて表面修飾された無機粒子B)が有機溶媒中または水中でのコロイド的分散形態での無機ナノ粒子である、上記水性処方物である。
【0027】
本発明の他の実施態様は、B)が上記水性処方物の形態での無機粒子である、上記水性処方物である。
【0028】
本発明の他の実施態様は、B)が表面修飾された無機ナノ粒子である、上記水性処方物である。
【0029】
本発明のさらに他の実施態様は、上記水性処方物および少なくとも1つの架橋剤を含んでなる水性被覆組成物である。
【0030】
本発明のさらに他の実施態様は、上記水性処方物およびポリイソシアネートを含んでなる二成分水性被覆組成物である。
【0031】
本発明のさらに他の実施態様は、上記水性処方物を含んでなる透明ラッカーである。
【0032】
従って、本発明は、
A)コポリマーa1)およびヒドロキシル基を含有するポリオルガノシロキサンa2)、
B)分散体中での動的光散乱を用いて決定された、200nm未満の平均粒度(Z平均値)を有し、必要に応じて表面修飾されている無機粒子、および
C)水
を含んでなる水性処方物である。
【0033】
ヒドロキシル基を含有するポリオルガノシロキサンa2)は、一般式(I):
【化4】

〔式中、
Xは、脂肪族の必要に応じて分枝したC〜C10基、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基またはtert−ブチル基、特に好ましくはメチル基、または[−CH−O−(CH−]Si単位(式中、r=1〜4、好ましくはr=3)であり、
Rは、CH(OH)Y基
(式中、Yは−CH−N(R)基
(式中、
は、H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基またはシクロヘキシル基または2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基または3−ヒドロキシプロピル基であり得、および
は、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基または3−ヒドロキシプロピル基であり得る)である)
であり、
は、同一であるかまたは異なっていてよく、水素または必要に応じてヘテロ原子を含有するC〜C10炭化水素基であり、および
nは1〜40である〕
による化合物である。
【0034】
コポリマーa1)は、
I)Ia)アルコール部分中にC〜C18炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物および/またはビニルエステル、および
Ib)ヒドロキシ官能性モノマー
をビルダーモノマーとして含有するヒドロキシ官能性疎水性ポリマー、および
II)IIa)アルコール部分中にC〜C18炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物および/またはビニルエステル、
IIb)ヒドロキシ官能性モノマー、および
IIc)酸官能性モノマー
をビルダー成分として含有するヒドロキシ官能性親水性ポリマー
から製造される。
【0035】
コポリマーa1)中でのモノマーIa)/IIa)の含有量は34.3〜89.4重量部、好ましくは51.8〜85.3重量部、特に好ましくは58〜81.5重量部であり、コポリマーa2)中でのモノマーIb)/IIb)の含有量は10〜65重量部、好ましくは13.5〜46.5重量部、特に好ましくは17.25〜40重量部であり、コポリマーa2)中でのモノマーIIc)の含有量は0.6〜12重量部、好ましくは1.2〜5.5重量部、特に好ましくは1.25〜3.5重量部である。
【0036】
適当なモノマーIa)/IIa)は、単純アルコールによるアクリル酸またはメタクリル酸のエステル化生成物、例えばエチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソ−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレートまたはシクロヘキシルメタクリレート、およびビニルフェニル、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンまたはこれらと他のモノマーとの混合物である。
【0037】
モノマーIa)/IIa)として適当な(メタ)アクリル酸エステル型のさらなる化合物は、アクリル酸またはメタクリル酸と、8個の炭素原子を有する直鎖脂肪族モノオール、例えばいわゆる脂肪アルコール(モノオール)など、または天然由来脂肪酸から誘導される直鎖脂肪族飽和アルコール、例えばラウリル(C12)アルコール、ミリスチル(C14)アルコール、パルミチル(C16)アルコールまたはステアリル(C18)アルコールなどとのエステルである。同様に適当な脂肪族飽和アルコールは、例えばn−オクタノール、ノナノールまたはn−デカノールである。少なくとも8個の炭素原子を有する脂肪族基を含有する(メタ)アクリル酸エステル型の適当なモノマーは、例えばn−オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、n−デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレートおよび相当するメタクリル酸誘導体である。
【0038】
さらに適当な上記の型のモノマーは、アクリル酸またはメタクリル酸と、少なくとも10個の炭素原子を有する脂環式アルコール(モノオール)とのエステル、例えばi−ボルニルアクリレート、n−ボルニルメタクリレート、ジヒドロキシジシクロペンタジエニルアクリレートまたは3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレートなどである。
【0039】
さらに、適当なモノマーIa)/IIa)は、直鎖または分枝状脂肪族カルボン酸によるビニルアルコールのエステル化生成物、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネートまたはビニルブチレートなどである。好適なビニルエステルは、一般式(II):
【化5】

〔式中、
およびRは、化合物VeoVa(商標)9、10および11に相当する、合計で6、7または8個の炭素原子を含有する飽和アルキル基である〕
で示される分枝状脂肪族カルボン酸のものである。
【0040】
上記のモノマーはそのホモポリマーのガラス転移温度に関して異なる。
【0041】
【表1】

【0042】
好適なモノマーIa)/IIa)は、n−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソ−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、i−ボルニルアクリレート、i−ボルニルメタクリレートおよびスチレンであり、およびn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、i−ボルニルアクリレート、i−ボルニルメタクリレートおよびスチレンは特に好適である。
【0043】
ラジカル共重合可能なさらなるモノマーは、コポリマーa1)の製造において成分Ia)/IIa)の化合物として必要に応じて用いてもよい。これらは、例えばアクリル酸またはメタクリル酸の誘導体、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルなどであってよい。ビニルエステルまたはビニルアセテートは、さらに必要に応じて可能である。必要に応じて、少量で用いられるべき可能なさらなる成分Ia/IIa)は、二官能性以上である(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはビニルモノマー、例えばヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートまたはジビニルベンゼンなどである。
【0044】
適当なヒドロキシ官能性モノマーIb)/IIb)は、例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートまたは4−ヒドロキシブチルメタクリレートである。好適なモノマーIb)/IIb)は、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたは4−ヒドロキシブチルアクリレートおよびこれらの化合物の混合物である。
【0045】
適当なオレフィン性不飽和酸官能性モノマーIIc)は、スルホン酸官能性モノマーまたはカルボン酸官能性モノマー、好ましくはカルボン酸官能性モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸または二塩基酸もしくは無水物のモノアルキルエステル、例えばマレイン酸モノアルキルエステルなどであり、アクリル酸またはメタクリル酸は特に好適である。
【0046】
さらに、例えばWO−A00/39181(第8頁第13行〜第9頁第19行)に記載されているような、ホスフェートまたはホスホネート、またはスルホン酸またはスルホネート基を有するラジカル重合可能な不飽和化合物も、成分IIc)の化合物として適当である。
【0047】
重合反応用の適当な開始剤は、有機ペルオキシド、例えばジ−tert−ブチルペルオキシド、ジ−tert−アミルペルオキシドまたはtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートなど、およびアゾ化合物、例えばアゾジイソ酪酸ニトリル(AIBN)などである。用いる開始剤の量は所望の分子量に依存する。また、プロセス信頼性およびより容易な取扱性のため、ペルオキシド開始剤を下記の型の適当な有機溶媒中の溶液として用いてもよい。
【0048】
コポリマーa1)の製造を、ラジカルによって開始する、有機溶媒(混合物)中のモノマー混合物I)およびII)の共重合によって実施する。有機溶媒の量は、得られるコポリマーa1)の溶液が95〜60重量%、好ましくは92.5〜80重量%の固形分を有するように選択される。
【0049】
不飽和モノマーの重合のための手順は、当業者にそれ自体よく知られている。典型的には、このために、適当な溶媒をまず反応容器中に導入し、不飽和モノマーを、ラジカル開始剤を用いて供給工程において重合する。
【0050】
可能な適当な有機溶媒は、ラッカー技術において既知の任意の所望の溶媒であって、好ましくは水性分散体中の共溶媒として従来的に用いられるもの、例えばアルコール、エーテル、エーテル基を含有するアルコール、エステル、ケトンまたは無極性炭化水素、例えば脂肪族炭化水素もしくは芳香族炭化水素またはこれらの溶媒の混合物である。
【0051】
成分a1)の製造を、上記の順序においてモノマー混合物I)およびII)の二段階添加および重合によって実施する。これに関して、第一工程(i)において、12〜250mgKOH/g固体、好適には50〜200mgKOH/g固体のOH価を有するヒドロキシ官能性疎水性ポリマーI)をモノマーIa)およびIb)から製造する。引き続く工程(ii)において、ヒドロキシ官能性親水性ポリマーII)は工程(i)から得られたポリマーI)の溶液中においてモノマーIIa)〜IIc)から製造され、該ヒドロキシ官能性親水性ポリマーII)は20〜250mgKOH/g固体、好適には120〜220mgKOH/g固体のOH価および50〜250mgKOH/g固体、好ましくは110〜200mgKOH/g固体の酸価を有する。
【0052】
コポリマーa1)は、1000〜50000Da、好ましくは1200〜20000Da、特に好ましくは1500〜12500Daの分子量を有する。
【0053】
有機アミンまたは水溶性無機塩基をコポリマーa1)中に重合されたカルボキシル基の中和のために用いてよい。N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたはエチルジイソプロピルアミンは好適である。ジエチルエタノールアミン、ブタノールアミン、モルホリン、2−アミノメチル−2−メチルプロパノールまたはイソホロンジアミンは同様に適当である。
【0054】
中和剤を、中和度がカルボキシル基の70〜130%、好適には90%〜105%となるような量で添加し、全てのカルボキシル基の塩形態への変換後に遊離中和剤がなお存在するような中和剤の量を特に好ましく添加する。これは100%を越える中和度に相当する。
【0055】
ヒドロキシル基を含有する、一般式(I)の適当なポリオルガノシロキサンa2)は、200〜3000g/molの数平均分子量および1.8以上の平均OH官能価を特徴とする。
【0056】
ヒドロキシル基を含有する、一般式(I)のポリオルガノシロキサンa2)は、好ましくは250〜2250g/mol、特に好ましく350〜1500g/molの数平均分子量を有する。
【0057】
ヒドロキシル基を含有する、一般式(I)のポリオルガノシロキサンa2)は、相当するエポキシ官能性ポリオルガノシロキサンとヒドロキシアルキル官能性アミンとを好ましくはアミノ官能基に対するエポキシド基の化学量論的比で反応させることによって得られる。
【0058】
このために用いるエポキシ官能性シロキサンは、1分子あたり、好ましくは1〜4個、特に好ましくは2個のエポキシド基を含有する。これらは、150〜2000g/mol、好ましくは250〜1500g/mol、非常に特に好ましくは250〜1250g/molの数平均分子量をさらに有する。
【0059】
好適なエポキシ官能性シロキサンは、式(III):
【化6】

〔式中、
Xは、脂肪族の必要に応じて分枝したC〜C10基、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基またはtert−ブチル基、特に好ましくはメチル基、または[−CH−O−(CH]−Si単位(式中、r=1〜4、好ましくはr=3)であり、
は、同一であるかまたは異なっていてよく、水素または必要に応じてヘテロ原子を含有するC〜C10炭化水素基であり、および
nは1〜40である〕
に相当するα,ω−エポキシシロキサンである。
【0060】
式(I)および(III)におけるRは好ましくはフェニル基、アルキル基、アラルキル基、フルオロアルキル基、アルキルエチレン−コプロピレンオキシド基または水素であり、フェニル基またはメチル基は特に好適である。Rは非常に特に好ましくはメチル基である。
【0061】
式(III)に相当する適当な化合物は、例えば、式IIIa):
【化7】

および式IIIb):
【化8】

〔式中、
nは4〜12、好ましくは6〜9の整数である〕
で示されるものである。
【0062】
この系列の市販されている生成物の例は、例えば、CoatOsil(登録商標) 2810(Momentive Performance Materials、レーフェルクーゼン、独国)またはTegomer(登録商標) E−Si2330(Tego Chemie Service GmbH、エッセン、独国)である。
【0063】
適当なヒドロキシアルキル官能性アミンは、一般式(IV):
【化9】

〔式中、
は、H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基またはシクロヘキシル基または2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基または3−ヒドロキシプロピル基であってよく、および
は、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基または3−ヒドロキシプロピル基であってよい〕
に相当する。
【0064】
好適なヒドロキシアルキルアミンは、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、プロピルエタノールアミンおよびシクロヘキシルエタノールアミンである。ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンまたはシクロヘキシルエタノールアミンは特に好適である。ジエタノールアミンは非常に特に好適である。
【0065】
成分a2)の製造のために、まず、一般式(III)のエポキシ官能性シロキサンを必要に応じて溶媒中に導入し、次いで所要量のヒドロキシアルキルアミン(IV)またはいくつかのヒドロキシアルキルアミン(IV)の混合物と反応させる。該反応温度は、典型的には20〜150℃であり、さらなる遊離エポキシド基が検出されなくなるまで継続する。
【0066】
エポキシ官能性ポリオルガノシロキサンとヒドロキシアルキルアミンとの上記の反応によって得られた式(I)のヒドロキシアルキル官能性シロキサンa2)を特に好ましく用いる。
【0067】
特に好適なポリオルガノシロキサンa2)は、例えば、式(Ia):
【化10】

式(Ib):
【化11】

式(Ic):
【化12】

式(Id):
【化13】

式(Ie):
【化14】

式(If):
【化15】

式(Ig):
【化16】

式(Ih):
【化17】

〔式中、
nは、4〜12、好ましくは6〜9である〕
で示されるものである。
【0068】
成分a2)として同様に適当なシロキサンは、例えば、式(V):
【化18】

〔式中、
mは、5〜15であり、
Zは、Hまたはメチル、好ましくはHであり、および
n、oは、1〜12、好ましくは1〜5である〕
に相当するヒドロキシアルキル官能性シロキサン(α,ω−カルビノール)である。
【0069】
式(V)のヒドロキシアルキル官能性シロキサン(α,ω−カルビノール)は好ましくは250〜2250g/mol、特に好ましくは250〜1500g/mol、非常に特に好ましくは250〜1250g/molの数平均分子量を有する。上記の型の市販されているヒドロキシアルキル官能性シロキサンの例は、Baysilone(登録商標)OF−OH 502 3および6%濃度(GE−Bayer Silicones、レーフェルクーゼン、独国)である。
【0070】
成分a2)に相当するヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンの製造のためのさらなる手段は、式(V)のα−ωカルビノール型の上記のヒドロキシアルキル官能性シロキサンと環状ラクトンとの反応である。適当な環状ラクトンは、例えばε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトンまたはバレロラクトンである。
【0071】
これは、1:2〜2:1のOH基とラクトン官能基の比で、好ましくはOH基とラクトン官能基との化学量論的比で達成される。このようにして得られたヒドロキシアルキル官能性シロキサンa2)は好適である。このような化合物の例は、一般式(VI):
【化19】

〔式中、
mは5〜15であってよく、および
yは2〜4、好ましくは4であってよい〕
で示されるポリオルガノシロキサンa2)である。
【0072】
ヒドロキシル基を含有するポリオルガノシロキサンa2)を、水中におけるその分散前に成分a2)の樹脂溶融物に好ましく添加し、均質に組み込む。ヒドロキシル基を含有するポリオルガノシロキサンa2)を、コポリマーa1)に組み込まれたカルボキシル基の中和に用いる成分と同時に成分a2)の樹脂溶融物に特に好ましく組み込む。
【0073】
可能な粒子B)は、周期表の第II主族〜第IV主族の元素および/または第I亜属〜第VIII亜属の元素(ランタニドを含む)の無機酸化物、混合酸化物、水酸化物、スルフェート、カーボネート、カーバイド、ホウ化物および窒化物である。好適な粒子B)は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブおよび酸化チタンであり、酸化ケイ素ナノ粒子は特に好適である。
【0074】
B)において用いる粒子は、分散体中で動的光散乱によってZ平均値として決定された、好ましくは5〜100nm、特に好ましくは5〜50nmの平均粒度を有する。
【0075】
用いる全粒子の、好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも90%、非常に特に好ましくは少なくとも95%は、上記の大きさを有する。
【0076】
必要に応じて表面修飾されたナノ粒子B)を成分a1)と成分a2)の混合物の製造中または製造後に導入する。これは、粒子を単に導入して撹拌することによって行ってよい。しかしながら、例えば超音波、ジェット分散またはローター−ステーター原理による高速攪拌器によるような増加した分散エネルギーの使用も考えられる。単に機械的に攪拌することによって導入することは好ましい。
【0077】
粒子B)は、原則的には、粉末の形態で使用することも、適当な溶媒中のコロイド懸濁液または分散液の形態で使用することもできる。無機ナノ粒子B)を有機溶媒(オルガノゾル)中または水中でのコロイド的分散形態で好ましく用いる。
【0078】
オルガノゾル用の適当な溶媒は、メタノール、エタノール、i−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、ブチルアセテート、エチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、トルエン、キシレン、1,4−ジオキサン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールn−プロピルエーテルまたはこうした溶媒の任意の所望の混合物である。適当なオルガノゾルは、固形分10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%を有する。適当なオルガノゾルは、例えば、例えば商品名Organosilicasol(登録商標)およびSuncolloid(登録商標)(Nissan Chemical Am. Corp.)として、または商品名Highlink(登録商標)NanO G(Clariant GmbH)として得られるようなシリコンジオキシドオルガノゾルである。
【0079】
ナノ粒子を有機溶媒(オルガノゾル)中に用いる場合には、これらを、その水での分散前に成分a1)および成分a2)の混合物と共に混合する。次いで、得られる混合物を水の添加によって、または水への移動によって水中に分散する。オルガノゾルと、成分a1)および成分a2)の混合物との混合は、成分a1)および成分a2)の混合物中に重合されたカルボキシル基の中和前または中和後のいずれかに行ってよい。必要に応じて、オルガノゾルの有機溶媒を水での分散前または分散後、好ましくは水での分散後に蒸留によって除去してよい。
【0080】
本発明において、無機粒子B)を水性処方物の形態でさらに好ましく用いる。表面修飾された無機ナノ粒子の水性処方物の形態での無機粒子B)の使用は特に好適である。これらは、例えばシラン修飾ポリマー有機バインダーまたはシラン修飾ポリマー有機バインダーの水性分散体への組み込み前または組み込みと同時にシラン化によって修飾してよい。この方法は、文献から原理上既知であり、例えばDE−A 19846660またはWO03/44099に記載されている。
【0081】
無機ナノ粒子の表面は、例えばWO2006/008120に記載のように、界面活性剤またはブロックコポリマーによって吸着的/会合的にさらに修飾してよい。
【0082】
好適な表面修飾は、アルコキシシランおよび/またはクロロシランによるシラン化である。WO2004/035474に相当するγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランによる部分修飾は特に好適である。
【0083】
好適な市販されているナノ粒子水性分散体は、 Levasils(登録商標)(H.C.Starck GmbH、Goslar、独国)およびBindzils(登録商標)(EKA Chemical AB、Bohus、スウェーデン)である。EKA(EKA Chemical AB、Bohus、スウェーデン)製のBindzil(登録商標)CC 15、Bindzil(登録商標)CC 30およびBindzil(登録商標)CC 40の水性分散体を特に好ましく用いる。
【0084】
ナノ粒子を水性形態で用いる場合、これらをコポリマーa1)の水性分散体に添加する。さらなる実施態様においては、水性ナノ粒子コロイドを成分a1)および成分a2)の混合物に重合されたカルボキシル基の中和後にコポリマーa1)に添加し、次いで該混合物を必要に応じてさらに水で希釈する。
【0085】
本発明による水性処方物を水性被覆組成物に加工してよい。これに関して、架橋剤D)との組み合わせによって、架橋剤の反応性または適切な場合にはブロッキングに応じて、一成分ラッカーおよび二成分ラッカーを製造してよい。本発明における一成分ラッカーはこの場合、顕著な程度までまたは後の用途に害を及ぼす程度まで架橋反応を生じさせずにバインダー成分と架橋成分を一緒に貯蔵することができる被覆組成物と理解される。架橋反応を架橋剤の活性化後の適用についてのみ実施する。該活性化は、例えば温度を上昇させることによって達成させてよい。本発明における二成分ラッカーはバインダー成分と架橋剤成分とが、それらの高い反応性のため、別々の容器に貯蔵されなければならない被覆組成物を意味すると理解される。二成分は、適用する直前にのみ混合し、次いで、通常はさらなる活性化なしに反応させる。しかしながら、架橋反応を促進させるために、触媒を用いるか、またはより高い温度を適用してもよい。
【0086】
従って、本発明はまた、本発明による水性処方物および少なくとも1つの架橋剤D)を含んでなる水性被覆組成物を提供する。
【0087】
適当な架橋剤D)は、ポリイソシアネート架橋剤、アミド−およびアミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂およびアルデヒドおよびケトンの樹脂である。
【0088】
好適な架橋剤D)は、必要に応じて親水性的に修飾されていてよい遊離ポリイソアネートまたはブロックトポリイソアネート、および/または少なくとも部分的に親水性的に修飾されている非ブロックトポリイソアネートである。
【0089】
本発明は同様に、本発明による水性処方物およびポリイソシアネートを含んでなる水性二成分(2C)被覆組成物を提供する。好ましくは、少なくとも一部のポリイソシアネートが親水性的に修飾されている。
【0090】
適当なポリイソシアネートは二官能性イソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレン−ジイソシアネート、2,4−または2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートおよび/またはその高分子量トリマー、ビウレット、ウレタン、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはアロファネートである。脂肪族イソシアネートまたは脂環式イソシアネートに基づく上記の型の、必要に応じて親水性化された低粘性のポリイソシアネートの使用は特に好適である。
【0091】
ブロッキングのために、上記のポリイソシアネートをブロッキング剤、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、アセトキシム、ブタノンオキシム、カプロラクタム、フェノール、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、ジメチルピラゾール、トリアゾール、ジメチルトリアゾール、酢酸エチル、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、tert−ブチルベンジルアミン、シクロペンタノンカルボキシルエチルエステル、ジシクロヘキシルアミンおよび/またはtert−ブチルイソプロピルアミンなどと反応させる。
【0092】
非ブロックトポリイソアネートおよびブロックトポリイソアネートを、親水性基、例えばカルボキシレート、スルホネートおよび/またはポリエチレンオキシド構造などの組み入れによって水分散性形態に変換し、こうして本発明による処方物と組み合わせて用いてもよい。上記のブロックトポリイソアネートは、ヒドロキシ官能性またはアミノ官能性で、さらに高分子量の成分、例えばジオール、トリオール、アミノアルコール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートおよび上記の原料の混合物および/または他の原料を併用して製造してもよい。
【0093】
架橋剤D)として用いるポリイソシアネートは通常、23℃で10〜5000mPasの粘度を有し、必要に応じて粘度を調節しながら、少量の不活性溶媒との混合物として用いてもよい。
【0094】
種々の架橋剤D)の混合物の使用も当然、原則として可能である。
【0095】
ラッカー技術の従来の補助物質および添加剤、例えば消泡剤、増粘剤、顔料、分散助剤、触媒、皮張り防止剤(skin prevention agent)、沈降防止剤または乳化剤などは、本発明による水性処方物の製造前、製造中、製造後に添加してよい。
【0096】
本発明による処方物を含んでなる水性被覆組成物は、フィルムの耐性に関して厳しい要件を有する水性塗料および被覆系が使用される全ての分野、例えば鉱物建築材料表面の被覆、木材および木質材料の被覆およびシーリング、金属表面の被覆(金属被覆)、アスファルト含有被覆物またはビチューメン含有被覆物の被覆およびラッカー塗、種々のプラスチックの表面のラッカー塗およびシーリング(プラスチック被覆)および高光沢ラッカーに適している。
【0097】
本発明による処方物を含んでなる水性被覆組成物を、プライマー、充填剤、着色されるかまたは透明なトップラッカー、透明ラッカーおよび高光沢ラッカーならびに個々の用途または一連の用途、例えば工業ラッカー塗の分野および自動車用の最初のラッカー塗および補修のラッカー塗に用いることができる、一塗りラッカーのために用いる。
【0098】
本発明による処方物を含んでなる水性被覆組成物の硬化を、この場合、典型的には0〜160℃、好ましくは18〜130℃の温度にて行う。
【0099】
これらの被覆物は、フィルムの非常に良好な光学特性と共に、高水準の耐引掻性、耐溶媒性および耐化学薬品性、良好な耐水性、高い硬度および迅速な乾燥性を有する。
【0100】
該被覆物は、一成分噴霧装置、または必要に応じて二成分噴霧装置を用いる種々の噴霧法、例えば、空気圧による噴霧法、または無気噴霧法または静電噴霧法などにより製造することができる。しかしながら、本発明による水性被覆組成物を含んでなるラッカーおよび被覆組成物を他の方法、例えば刷毛塗り法、ローリング法またはナイフ被覆法によって塗布してもよい。
【0101】
上記の全ての参照は、全ての有用な目的のためにその全体を参照することによって組み込まれる。
【0102】
本発明を具体的に表現するある特定の構造が示され、および記載されているが、根本的な本発明の概念の精神および範囲から逸脱することなく種々の変形および一部を再構成することができることは当業者には明らかであり、本明細書に示され、および記載された特定の形態に制限されないことも同様である。
【実施例】
【0103】
特記のない限り、百分率データは重量パーセントと理解される。
【0104】
ヒドロキシル価(OH価)はDIN 53240−2に従って決定した。
【0105】
粘度は、DIN EN ISO 3219に従って回転式粘度計「Paar Physica MCR51」を用いて決定した。
【0106】
酸価はDIN EN ISO 2114に従って決定した。
【0107】
粒度の決定
粒度はHPPS粒度分析器(Malvern、Worcestershire、英国)を用いて動的光散乱により決定した。評価はDispersion Technology software 4.10によって行った。多重散乱を防止するために、非常に希薄なナノ粒子の分散体を調製した。希薄ナノ粒子分散体の1滴(約0.1〜10%)を分散体と同じ溶媒約2ml含有するセルに導入し、該セルを振とうし、HPPS粒度分析器中において20〜25℃で測定を実施した。当業者に通常既知であるように、分散媒の関連するパラメーター(温度、粘度および屈折率)を事前にソフトウェアに入力した。有機溶媒の場合、ガラス製セルを用いた。強度−粒径および体積−粒径の曲線および粒径についてのZ平均値を結果として得た。多分散指数が確実に0.5未満となるようにした。
【0108】
〔Bayhydur(登録商標) XP 2655〕
ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく親水性脂肪族ポリイソシアネート、イソシアネート含有量:21.2±0.5%(Bayer MaterialScience AG/レーフェルクーゼン、独国)
〔Bindzil(登録商標) CC40〕
水中での40%濃度コロイド的分散表面修飾二酸化ケイ素、平均粒度12nm(EKA Chemical AB、ブーフス、スウェーデン)
〔Byk(登録商標) 325〕
流れ助剤(Byk−Chemie GmbH、ヴェーゼル、独国)
〔Byk(登録商標) 345〕
湿潤添加剤(Byk−Chemie GmbH、ヴェーゼル、独国)
〔Desmodur(登録商標) XP 2410〕
脂肪族ポリイソシアネート、イソシアネート含有量:23.5±0.5%(Bayer MaterialScience AG/レーフェルクーゼン、独国)
〔Dowanol(登録商標) PnB〕
溶媒(Dow Chem. Corp.、ホルゲン、スイス)
〔Rhodiasolv(登録商標) RPDE〕
溶媒(Rhodia Syntech GmbH、フランクフルトアムマイン、独国)
〔CoatoSil(登録商標) 2810〕
エポキシ官能性ポリジメチルシロキサン、エポキシド含有量11.4%(Momentive Performance Materials、レーフェルクーゼン、独国)
【0109】
実施例1 ヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン
WO2007025670(ポリオールIの製造、第14頁)に従えば、まず、770gのエポキシ官能性ポリジメチルシロキサンCoatOSil(登録商標) 2810を反応容器に導入し、80℃に予備加熱し、ジエタノールアミン231gを添加した。次いで該混合物を100℃で2時間撹拌した。該生成物は、0.01%未満のエポキシド含有量、約365mgKOH/g(11.1%)のOH価および23℃で約2900mPasの粘度を有した。
【0110】
比較例2 比較例
まず、Dowanol(登録商標) PnB220gを攪拌、冷却および加熱装置を備えた5Lの反応容器に導入し、138℃まで加熱した。Dowanol(登録商標) PnB4g中のジ−tert−ブチルペルオキシド4gの混合物1)を該温度で30分間にわたって滴下した。その直後、i−ボルニルメタクリレート298.3g、ヒドロキシエチルアクリレート292.0g、ブチルメタクリレート169.8g、スチレン139gおよび2−エチルヘキシルアクリレート90.4gの混合物2)を3.5時間にわたって計量し、その直後、スチレン63.8g、ヒドロキシエチルアクリレート90g、ブチルアクリレート50gおよびメタクリル酸28.7gの混合物3)を1.5時間にわたって計量した。混合物2)および3)と並行して、Dowanol(登録商標) PnB14.5g中のジ−tert−ブチルペルオキシド14.5gの混合物4)を5時間にわたって計量した。次いでDowanol(登録商標) PnB4g中のジ−tert−ブチルペルオキシド4gの混合物5)を1時間にわたって計量した。次いで該混合物を100℃に冷却し、N,N−ジメチルエタノールアミン31.2gを添加した。30分間の均質化後、1245gの水を用いて80℃で2時間にわたって分散を実施した。以下のデータを有するコポリマー分散体を得た:
OH含有量(固体に対して計算) 4.5%
酸価(固体に対して) 18.6mgKOH/g
固形分 44.9%
粘度 2050mPas23℃
pH(水中での10%濃度) 8.0
中和度 105%
平均粒度 105nm
共溶媒 7.4重量%
【0111】
実施例3 本発明による
まず、Dowanol(登録商標) PnB220gを攪拌、冷却および加熱装置を備えた5Lの反応容器に導入し、138℃まで加熱した。Dowanol(登録商標) PnB4g中のジ−tert−ブチルペルオキシド4gの混合物1)を該温度で30分間にわたって滴下した。その直後、i−ボルニルメタクリレート298.3g、ヒドロキシエチルアクリレート292.0g、ブチルメタクリレート169.8g、スチレン139gおよび2−エチルヘキシルアクリレート90.4gの混合物2)を3.5時間にわたって計量し、その直後、スチレン63.8g、ヒドロキシエチルアクリレート90g、ブチルアクリレート50gおよびメタクリル酸28.7gの混合物3)を1.5時間にわたって計量した。混合物2)および3)と並行して、Dowanol(登録商標) PnB14.5g中のジ−tert−ブチルペルオキシド14.5gの混合物4)を5時間にわたって計量した。次いでDowanol(登録商標) PnB4g中のジ−tert−ブチルペルオキシド4gの混合物5)を1時間にわたって計量した。次いで該混合物を100℃に冷却し、次いでN,N−ジメチルエタノールアミン31.2gおよび12.5gのヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサン実施例1を添加した。30分間均質化した後、1260gの水を用いて80℃で2時間にわたって分散を実施した。以下のデータを有するコポリマー分散体を得た:
OH含有量(固体に対して計算) 4.6%
酸価(固体に対して) 20.1mgKOH/g
固形分 45.2%
粘度 2450mPas23℃
pH(水中での10%濃度) 8.0
中和度 105%
平均粒度 125nm
共溶媒 7.4重量%
【0112】
実施例4
まず、Dowanol(登録商標) PnB220gを攪拌、冷却および加熱装置を備えた5Lの反応容器に導入し、138℃まで加熱した。Dowanol(登録商標) PnB4g中のジ−tert−ブチルペルオキシド4gの混合物1)を該温度で30分間にわたって滴下した。その直後、i−ボルニルメタクリレート298.3g、ヒドロキシエチルアクリレート292.0g、ブチルメタクリレート169.8g、スチレン139gおよび2−エチルヘキシルアクリレート90.4gの混合物2)を3.5時間にわたって計量し、その直後、スチレン63.8g、ヒドロキシエチルアクリレート90g、ブチルアクリレート50gおよびメタクリル酸28.7gの混合物3)を1.5時間にわたって計量した。混合物2)および3)と並行して、Dowanol(登録商標) PnB14.5g中のジ−tert−ブチルペルオキシド14.5gの混合物4)を5時間にわたって計量した。次いでDowanol(登録商標) PnB4g中のジ−tert−ブチルペルオキシド4gの混合物5)を1時間にわたって計量した。次いで該混合物を100℃に冷却し、N,N−ジメチルエタノールアミン31.2gおよびBaysilon(登録商標) OFOH(6%)12.5gを添加した。30分間均質化した後、1260gの水を用いて80℃で2時間にわたって分散を実施した。以下のデータを有するコポリマー分散体を得た:
OH含有量(固体に対して計算) 4.5%
酸価(固体に対して計算) 19.1mgKOH/g
固形分 43.6%
粘度 2200mPas23℃
pH(水中での10%濃度) 8.2
中和度 105%
平均粒度 165nm
共溶媒 7.4重量%
【0113】
【表2】

【0114】
光沢および曇り
光沢はDIN EN ISO 2813に従って測定した。光沢測定値が高いほど、良好な光沢である。曇りはDIN EN ISO 13803に従って測定した。曇り値が低いほど、透明なラッカーである。
【0115】
耐引掻性
製造された透明ラッカーの耐引掻性の試験をDIN 55668に従って行った。
パーセントでの相対残留光沢は、引掻き前の光沢度と比較した、DIN 5668による引掻き後の光沢度[20°]の高さを再現する。この数値が高いほど、良好な耐引掻性である。
【0116】
実施例5A〜Fに明確に示されるように、本発明による処方物EおよびEは、良好な光学特性、特に低い曇りを維持しながら、向上した耐引掻性によって区別される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)コポリマーa1)およびヒドロキシル基を含有するポリオルガノシロキサンa2)、
B)分散体中での動的光散乱を用いて決定された、200nm未満の平均粒度(Z平均値)を有する、必要に応じて表面修飾された無機粒子、および
C)水
を含んでなる水性処方物。
【請求項2】
前記ポリオルガノシロキサンa2)は、式(I):
【化1】

〔式中、
Xは、脂肪族の必要に応じて分枝したC〜C10基または[−CH−O−(CH−]Si単位(式中、rは1〜4の整数である)であり、
Rは、CH(OH)Y基
(式中、Yは−CH−N(R)基
(式中、
は、H、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基またはシクロヘキシル基、または2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、または3−ヒドロキシプロピル基であり、および
は、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、または3−ヒドロキシプロピル基である)である)
であり、
は、同一にまたは別々に、水素または必要に応じてヘテロ原子を含有するC〜C10炭化水素基であり、および
nは1〜40の整数である〕
で示される化合物である、請求項1に記載の水性処方物。
【請求項3】
rが3である、請求項2に記載の水性処方物。
【請求項4】
前記ポリオルガノシロキサンa2)は、式(V):
【化2】

〔式中、
mは、5〜15の整数であり、
Zは、Hまたはメチルであり、および
nおよびoは、同一にまたは別々に、1〜12の整数である〕
で示される化合物である、請求項1に記載の水性処方物。
【請求項5】
前記ポリオルガノシロキサンa2)は、式(VI):
【化3】

〔式中、
mは、5〜15の整数であり、および
yは、2〜4の整数である〕
で示される化合物である、請求項1に記載の水性処方物。
【請求項6】
前記コポリマーa1)は、
I)Ia)アルコール部分中にC〜C18炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物および/またはビニルエステル、および
Ib)ヒドロキシ官能性モノマー
をビルダーモノマーとして含有するヒドロキシ官能性疎水性ポリマー、および
II)IIa)アルコール部分中にC〜C18炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはビニル芳香族化合物および/またはビニルエステル、
IIb)ヒドロキシ官能性モノマー、および
IIc)酸官能性モノマー
をビルダー成分として含有するヒドロキシ官能性親水性ポリマー
から製造される、請求項1に記載の水性処方物。
【請求項7】
前記式(I)の化合物は、200〜3000g/molの範囲の数平均分子量および少なくとも1.8の平均OH官能価を有する、請求項2に記載の水性処方物。
【請求項8】
前記式(I)の化合物は、250〜2250g/molの数平均分子量を有する、請求項2に記載の水性処方物。
【請求項9】
前記必要に応じて表面修飾された無機粒子B)は、周期表の第II主族〜第IV主族の元素および/または第I亜属〜第VIII亜属の元素(ランタニドを含む)の無機酸化物、混合酸化物、カーバイド、ホウ化物および窒化物からなる群から選択される、請求項1に記載の水性処方物。
【請求項10】
前記必要に応じて表面修飾された無機粒子B)は、有機溶媒中または水中でのコロイド的分散形態での無機ナノ粒子である、請求項1に記載の水性処方物。
【請求項11】
B)は水性処方物の形態での無機粒子である、請求項1に記載の水性処方物。
【請求項12】
B)は表面修飾された無機ナノ粒子である、請求項1に記載の水性処方物。
【請求項13】
請求項1に記載の水性処方物および少なくとも1つの架橋剤を含んでなる水性被覆組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の水性処方物およびポリイソシアネートを含んでなる二成分水性被覆組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の水性処方物を含んでなる透明ラッカー。

【公開番号】特開2009−173886(P2009−173886A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−322298(P2008−322298)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】