シートスルー方式の原稿読取装置
【課題】原稿の長さに関わらず適切な量のループを原稿に与えること。
【解決手段】搬送されてきた原稿Dを、固定の読取り位置Aにて読み取る読取手段を備えるシートスルー方式の原稿読取装置であって、複数枚の原稿を載置する原稿トレイと、前記原稿トレイ上の原稿Dの長さを判別する判別手段と、原稿Dを分離して送り出す給送手段82と、前記給送手段82により送り出された原稿Dに対し整合処理を行うレジスト搬送手段83と、前記レジスト搬送手段83の回転駆動を行う第1駆動手段と、前記レジスト搬送手段83で整合処理された原稿Dを、前記読取り位置Aに送り込む読取搬送手段84と、前記読取搬送手段84の回転駆動を行う第2駆動手段と、前記判別手段による判別結果に基づき、前記レジスト搬送手段83及び前記読取搬送手段84の間の相対的な搬送速度を変更する制御手段と、を備える。
【解決手段】搬送されてきた原稿Dを、固定の読取り位置Aにて読み取る読取手段を備えるシートスルー方式の原稿読取装置であって、複数枚の原稿を載置する原稿トレイと、前記原稿トレイ上の原稿Dの長さを判別する判別手段と、原稿Dを分離して送り出す給送手段82と、前記給送手段82により送り出された原稿Dに対し整合処理を行うレジスト搬送手段83と、前記レジスト搬送手段83の回転駆動を行う第1駆動手段と、前記レジスト搬送手段83で整合処理された原稿Dを、前記読取り位置Aに送り込む読取搬送手段84と、前記読取搬送手段84の回転駆動を行う第2駆動手段と、前記判別手段による判別結果に基づき、前記レジスト搬送手段83及び前記読取搬送手段84の間の相対的な搬送速度を変更する制御手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートスルー方式の原稿読取装置に関し、より特定的には、レジスト搬送手段及び読取搬送手段の間で、原稿にループ(たるみ)を発生させる原稿読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の原稿読取装置においては、原稿トレイにセットされた各原稿は、捌きローラ、レジストローラ及び読取ローラを通過して、画像読取部に搬送される。ここで、レジストローラでの原稿の搬送速度v1は、読取ローラでの搬送速度v2に対して若干高速に設定されることで、レジストローラと読取ローラの間のUターン経路にて原稿にループが形成される。これにより、捌きローラのニップから原稿後端が抜け出た時の速度変動は、原稿に形成されたループにより吸収される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−146337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の画像読取装置には、まず、原稿の長さに応じて適切なループ量を与えることができないという問題点があった。具体的には、原稿が搬送方向に長い場合には、同時に捌きローラ、レジストローラ及び読取ローラの全てに跨って存在することがある。この場合、捌きローラでの負荷トルクによりレジストローラでのスリップが発生しやすくなるので、全てのローラに跨って原稿が搬送されている期間においてはレジストローラでの実際の搬送速度は読取ローラでの実際の搬送速度よりも相対的に小さくなる。逆に、原稿が搬送方向に短い場合、レジストローラ及び読取ローラの両方に同時に跨るが、捌きローラには存在しないことがある。この場合、原稿に対する捌きローラによる負荷トルクの影響はなくなり、レジストローラ及び読取ローラに跨って原稿が搬送されている期間においてはレジストローラの実際の搬送速度は読取ローラでの実際の搬送速度よりも相対的に大きくなる。このように、原稿の長さにより、レジストローラでの実際の搬送速度に差が生じ、その結果、原稿の後端がレジストローラを抜ける時点でUターン経路にて与えられるループ量に差が生じる。
【0005】
また、他にも、従来の画像読取装置では、原稿の坪量に応じて適切なループ量を与えることができないという問題点があった。具体的には、厚みのある、つまり坪量の大きな原稿を搬送すると、レジストローラにてスリップが生じやすくなるため、レジストローラの実際の搬送速度が安定しなくなる。その結果、坪量に応じて、Uターン経路で原稿に与えられるループ量に差が生じる。
【0006】
それゆえに、本発明の目的は、原稿の長さ又は坪量に関わらず適切な量のループを原稿に与えることが可能な、シートスルー方式の原稿読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、搬送されてきた原稿を、固定の読取り位置にて読み取る読取手段を備えるシートスルー方式の原稿読取装置であって、複数枚の原稿を載置する原稿トレイと、前記原稿トレイ上の原稿の長さ及び/又は坪量を判別する判別手段と、原稿を分離して送り出す給送手段と、前記給送手段により送り出された原稿に対し整合処理を行うレジスト搬送手段と、前記レジスト搬送手段の回転駆動を行う第1駆動手段と、前記レジスト搬送手段で整合処理された原稿を、前記読取り位置に送り込む読取搬送手段と、前記読取搬送手段の回転駆動を行う第2駆動手段と、前記判別手段による判別結果に基づき、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する制御手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、原稿の長さや坪量に関わらず適切な量のループを原稿に与えることが可能な、シートスルー方式の原稿読取装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る原稿読取装置の大略的な構成を示す模式図である。
【図2】図1のADF(Automatic Document Feeder)のブロック構成を示す模式図である。
【図3】図1のADFの動作を示すフローチャートである。
【図4】(A)は、ADFにおける各要部の経路長を示す模式図であり、(B)は原稿後端がレジストローラのニップを抜けた時の挙動を示す模式図である。
【図5】(A)は、A5Yの原稿を搬送させた際の速度変動の測定結果を示すグラフであり、(B)は、原稿の長さに対する速度変動を示すグラフである。
【図6】(A),(B)は、搬送速度比Kに対する、A5Y,A5T以上の原稿搬送時の8ドット速度変動率の最大値と最小値との測定結果を示すグラフである。
【図7】第2の実施形態に係る原稿読取装置の大略的な構成を示す模式図である。
【図8】図7のADFの動作を示すフローチャートである。
【図9】(A),(B)は、搬送速度比Kに対する、A5Y,A5T以上の原稿の反転搬送時の8ドット速度変動率の最大値と最小値との測定結果を示すグラフである。
【図10】第3の実施形態に係る原稿読取装置の大略的な構成を示す模式図である。
【図11】図10のADFのブロック構成を示す模式図である。
【図12】図10のADFの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1に示す原稿読取装置は、大略的に、固定光学系の読取手段としてのスキャナ7と、自動原稿搬送装置(以下、「ADF」と称する)8と、を備えている。
【0011】
スキャナ7は、読取り位置Aの直下に固定され、読取り位置Aを通過する原稿Dを1ライン毎に順次的に読み取る。具体的には、スキャナ7において、LEDなどのランプ71は、読取ガラス72を介して、読取り位置Aに向けて光を出射する。読取り位置A上の原稿Dからの反射光は、ミラー73,74,75を介して結像レンズ76に入射され、その後、撮像部(CCDカラーラインセンサ)77に結像させる。
【0012】
ADF8は、図1,図2に示すように、トレイ81と、給送手段82と、レジスト搬送手段83と、読取搬送手段84と、ガイド手段85と、排出手段86と、CPU87と、排紙トレイ88と、を含む。
【0013】
トレイ81は、スキャナ7により読み取られる原稿Dが載置可能に構成される。また、トレイ81には、原稿サイズ検出のために、エンプティセンサSE0と、長さセンサSE1と、が設けられる。センサSE0,SE1は、反射型のフォトセンサ等であり、原稿Dの載置エリアにおける基準位置(例えば、原稿Dの先端位置)から距離d0,d1だけ離して配置される。センサSE0,SE1は、載置エリアに向けて光を出射し、反射光を受信した場合に、信号S0,S1をCPU87に出力する。本実施形態では、d1は例えば170mmである。この場合、信号S1は、供給方向に沿う辺の長さが170mm以上の原稿Dが載置されていることを表す。d0は、d1よりも小さい値であり、信号S0は、トレイ81上に原稿Dが載置されていることを表す。
【0014】
給送手段82は、トレイ81の下流側に設けられ、ピックアップローラ82aと、給紙ローラ82bと、捌きローラ82cと、給紙ローラ82bを回転駆動するモータM1と、を有する。ピックアップローラ82aは、給紙ローラ82bと同期回転可能に接続される。給紙ローラ82bは、例えばφ20.0の外径を有し、モータM1の駆動力により回転し、例えば440mm/sの搬送速度で原稿Dを送り出す。捌きローラ82cには、不図示のトルクリミッタにより例えば500gf・cmの負荷トルクが与えられている。
【0015】
ここで、各ローラによる用紙の「搬送速度」は厳密には、用紙のスリップやローラのつぶれ量を考慮する必要があるが、以下においては特に断りがない限り、ローラ外径、円周率、及びローラ回転数(rpm)を乗じた設計上の搬送速度のことを、単に「搬送速度」若しくは「制御上の搬送速度」と称する。そして当該搬送速度の制御はCPU87により各モータの回転数を制御することにより行う。一方で、負荷トルクの影響による用紙のスリップ等を考慮した搬送速度のことを「送り量」若しくは「実際の搬送速度」と称する。
【0016】
レジスト搬送手段83は、給送手段82の下流側に設けられ、レジストローラ83aと、これに当接するピンチローラ83bと、第1駆動手段の一例としてのモータM2と、原稿通過センサSE2と、を有する。レジストローラ83aは、例えばφ20.1の外径を有する。レジストローラ83aからの原稿の搬送速度は、モータM2からの駆動力に基づき定められる。詳細は後述するが、この搬送速度は、CPU87の制御下で、原稿Dの長さに応じて設定される。センサSE2は、例えば反射型のフォトセンサであり、ローラ83a,83bの間のニップよりも若干上流側に配置される。センサSE2は、搬送経路に向けて光を出射し、その反射光の有無を示す信号S2をCPU87に出力する。
【0017】
読取搬送手段84は、レジスト搬送手段83の下流側に設けられ、読取ローラ84aと、これに当接するピンチローラ84bと、第2駆動手段の一例としてのモータM3と、を有する。読取ローラ84aは、例えばφ20.0の外径を有する。読取ローラ84aからの原稿の搬送速度は、モータM3の駆動力により予め定められており、例えば250mm/sと設定される。なお、読取ローラ84aの搬送速度を固定的な250mm/sに設定すると、スキャナ7での読取精度を安定させることが可能となるので好ましい。
【0018】
ガイド手段85は、外側及び内側のガイド部材85a,85bを有する。これらガイド部材85a,85bにより、レジストローラ83a及び読取ローラ84aの間には、原稿DのUターン経路が形成される。このガイド部材85a,85bの間隔は、2.0mm以上3.0mm以下であることが望ましい。
【0019】
排出手段86は、読取搬送手段84の下流側に設けられ、複数のローラ対86a,86bを有する。これらローラ対86a,86bは、読取搬送手段84のモータM3と接続され、その駆動力により回転する。
【0020】
次に、図3のフローチャートを参照して、原稿読取装置の動作について説明する。ユーザは、原稿Dをトレイ81に載置した後、図示しない操作パネルのスタートボタンを押下する。これに応答して、CPU87は、センサSE0,SE1の出力信号S0,S1に基づき、トレイ81上の原稿Dの長さが170mm以上か否かを判別し、判別結果(原稿Dの長さ)を記憶する(S100)。
【0021】
また、モータM1は、CPU87の制御下で、給紙ローラ82bの回転駆動を開始する(S101)。給紙ローラ82bに同期してピックアップローラ82aも回転する。これにより、トレイ81から原稿Dが取り込まれ、ローラ82b,82cのニップに送り込まれる。取り込まれた原稿Dが1枚であれば、ローラ82b,82cの間から、レジスト搬送手段83に向けて送り出される。なお、原稿Dが複数枚ならば、捌きローラ82cはトルクリミッタの作用により給紙ローラ82bとは逆方向に回転し、これら原稿Dはトレイ81に送り返される。
【0022】
CPU87は、モータM1の駆動開始後、センサSE2の出力信号S2により、センサSE2上を原稿Dが通過したと判断すると(S102)、タイマ(図示せず)による計時を開始する(S103)。CPU87は、タイマのカウント値Tが所定時間t0になると(S104)、モータM2は、CPU87の制御下で、レジストローラ83aの回転駆動を開始する(S105)。ここで、S100で判別した原稿Dの長さに応じて、レジストローラ83aからの搬送速度は、読取ローラ84aからの搬送速度250mm/sに、所定の搬送速度比として、下記の第1又は第2の搬送速度比K1,K2を乗じた値にされる。
長さ170mm以上の原稿Dの場合:K1=1.0075
長さ170mm未満の原稿Dの場合:K2=0.9874
【0023】
この一連の処理により、レジスト搬送手段83では、原稿整合処理の一例としてのスキュー補正が行われる。具体的には、給送手段82からの原稿Dは、まず、停止中のローラ83a,83bの間のニップに突き当てられる。T=t0になるまでの間に、原稿Dには初期ループが形成され、その先端がニップに揃う。T=t0になると、レジストローラ83aは、読取ローラ84aの搬送速度×搬送速度比Kで原稿を送り出し始める。これにより、原稿Dは、レジストローラ83aから送り出され、外側ガイド85aと内側ガイド85bの間に送り込まれていく。
【0024】
モータM2の駆動開始後、モータM3は、CPU87の制御下で、読取ローラ84aの回転駆動を開始する(S106)。ガイド手段85を搬送されてくる原稿Dはローラ84b,84cのニップに送り込まれる。その原稿Dは、回転するローラ84a,84bの間から、搬送速度250mm/sで、図1に示す読取り位置Aに向けて送り出される。また、この間、ガイド手段85内において、原稿Dには、読取ローラ及びレジストローラの送り量の差に基づくループが形成される。
【0025】
また、原稿Dは、読取り位置Aに到達して以降、スキャナ7により1ライン毎に順次的に読み取られ始める(S107)。その後、原稿Dは、排出手段86のローラ対86a,86bを先頭から通過して、排紙トレイ88に排出され始める。以上の動作は、原稿Dの後端の読取りが完了し、排紙トレイ88への排紙が完了するまで続く。
【0026】
ところで、「発明が解決しようとする課題」にも記載したが、従来の原稿読取装置には、原稿Dの長さに応じて適切なループ量を与えることができないという問題点があった。この問題点に加え、本原稿読取装置による技術的効果を、図4,図5を参照して詳細に説明する。
【0027】
図4(A)に示すように、本原稿読取装置において、捌きローラからレジストローラまでの搬送経路長L1は概ね66.5mmで、レジストローラから読取ローラまでの搬送経路長L2は概ね76.6mmと仮定する。また、この経路上を、A5Yの原稿Dが搬送されると仮定する。ここで、A5Yの原稿Dとは、A5サイズであって、その短辺(長さ148mm)に沿って搬送させる原稿Dを意味する。さらに、原稿Dの長さを考慮せずに単純に、レジストローラの搬送速度は読取ローラの搬送速度よりも大きく設定されると仮定する。以上の仮定下では、負荷トルクによる影響は、原稿Dが読取ローラのニップN1に入ってから4.9mm分しか及ばない。それゆえ、Uターン経路で過剰なループが原稿Dに与えられてしまう。もし原稿Dに過剰ループが与えられると、図4(B)に示すように、原稿Dの後端EがレジストローラのニップN2を抜け、過剰ループを解放する際に、搬送方向とは逆方向の速度成分が原稿Dに加わるので、原稿Dの実際の搬送速度が急激に低下してしまう。
【0028】
発明者は、実際に、原稿読取装置を用いて、A5Yの原稿Dを搬送させた際の速度変動を実測して、図5(A)のような実測結果を得た。図5(A)中、ドット速度変動率は、8ドット中での速度変動による色ずれのシミュレーション値であり、0%は色ずれ無しで、4.5%は15ミクロンの色ずれを表すものとする。0.09秒辺りまでは、ニップN2に原稿Dが存在するため、8ドット速度変動率は、概ね0(%)近辺で推移しているが、ニップN2を原稿Dの後端が抜ける0.09秒直後に、最小値の−8%程度まで急激に低下し、その直後に最大値の4%程度まで急上昇している(図中の楕円内を参照)。発明者は、この8ドット速度変動率が±4.5%の範囲内を目標にしていることから、上記の−8%程度まで落ち込むような速度変動は非常に大きいものとなる。
【0029】
次に、図5(B)を参照して、原稿Dの長さと速度変動との関係について説明する。発明者は、様々な長さの薄い原稿D(坪量50g/m2 ,原稿Dの幅は210mm)を3枚ずつ搬送させ、ニップN2を抜ける際の8ドット速度変動率の最大値と最小値とを計測し、図5(B)に示すように●でプロットした。その結果から、長さが170mm以下の場合に、8ドット速度変動率が上記目標範囲をオーバーすることが分かった。
【0030】
以上の実測結果に基づき、発明者は、S100での長さ判別の閾値を170mmに選んでいる。なお、実際の原稿読取装置において、長さ170mm以下の原稿Dの中で搬送可能であるのは、A5Yのみである。この点を考慮して、発明者は、前述の搬送速度比Kを様々な値に設定してA5Yの原稿Dを搬送させ、ニップN2を抜ける際の8ドット速度変動率の最大値と最小値とを計測し、図6(A)に示すように●でプロットした。この実測結果から、搬送速度比Kが概ね0.9874であればよいことが確認された。
【0031】
また、発明者は、同様の測定をA5T以上の原稿D(A5サイズの長辺以上の長さを有する原稿D)でも実施した。その結果を図6(B)に示す。この実測結果から、搬送速度比Kが概ね1.0075であれば良いことが確認された。
【0032】
なお、この現象は、捌きローラの負荷トルクが450gf・cmでは見られず、500gf・cm以上の場合に確認された。繊維が粗く平滑性が低い比較的安価な素材の原稿Dを用いた場合には、複数の原稿D間の摩擦抵抗が高いため、複数枚の原稿Dは分離されにくい。また、読取生産性を向上させるために原稿Dを高速で搬送させた場合にも原稿Dと捌きローラ間でスリップが発生しやすくなり、複数枚の原稿Dは分離されにくい。その結果、複数の原稿Dを一度に搬送する重送が発生しやすくなる。このように多様な原稿Dの紙種に対応するため、及び原稿読取を高い生産性で行いたいというユーザの要望に対応するため、捌きローラの捌きトルク(負荷トルク)を上げて給紙性能を確保する必要があり、発明者は検討を行った結果500gf・cm以上を適正値とした。このように、速度変動としては、捌きローラの負荷トルクは低い方が好ましいが、一方で負荷トルクを下げた場合には原稿の分離不良や重送という問題が生じるため、後者を優先して捌きローラの負荷トルクを500gf・cmあるいはこれ以上に設定し、前者の速度変動の問題に対しては第1の実施形態等のように搬送速度を制御することにより解決を図った。
【0033】
なお、A3サイズ等、長い原稿Dの場合、「発明が解決しようとする課題」の欄でも述べたが、負荷トルクにより、レジストローラでの実際の搬送速度(送り量)は、制御上の搬送速度250mm/s×1.0075という設計値よりも小さくなる。しかし、本原稿読取装置では、ガイド部材85a,85bの間隔が2.0mm以上3.0mm以下に選ばれているので、この空間により原稿Dにループが形成されるので、上記のように搬送速度が低下しても問題は生じない。なお、3.0mmを超えてしまうと、特に薄い原稿Dではスキュー要因となり好ましくない。
【0034】
以上説明したように、本原稿読取装置によれば、原稿Dが長い場合、搬送速度比K=1.0075が用いられるので、読取ローラ84aに対するレジストローラ83aの相対的な制御上の搬送速度は大きな値になる。これにより、負荷トルクに起因するレジストローラ83aでのスリップに対応し、レジストローラ83aでの実際の搬送速度を最適化することが可能となる。それに対し、原稿Dが短い場合には、搬送速度比K=0.9874が用いられるので、読取ローラ84aに対するレジストローラ83aの相対的な制御上の搬送速度は小さな値になる。これにより、負荷トルクの影響が少ない原稿Dに対応し、レジストローラ83aでの実際の搬送速度を最適化することが可能となる。以上のとおり、本原稿読取装置によれば、原稿Dの長さの判別結果に応じて、予め実測で求められた適切な量のループを原稿Dに与えることが可能となる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る原稿読取装置について説明するが、本実施形態の原稿読取装置において、第1の実施形態の原稿読取装置の構成・処理ステップに相当するものには同一の参照符号・ステップ番号を付け、それぞれの説明を省略する。
【0036】
図7において、ADF10は、図1に示すADF8と比較すると、原稿Dの両面を読み取り可能にするために、読取り位置Aを通過した原稿Dを、その表裏を反転させて読取り位置Aの上流側(レジストローラ83a)へ再度送り込むためのスイッチバック経路(図中の一点鎖線で示す)Pをさらに備えている点で相違する。スイッチバック経路Pを形成するために、ADF10は、図1に示す排出手段86に代えて、反転搬送/排出手段101を備えている。なお、この反転搬送/排出手段101に関しては、周知であるため、その図示や説明を省略する。
【0037】
次に、図8のフローチャートを参照して、本原稿読取装置の動作について説明する。ユーザは、原稿Dをトレイ81に載置した後、図示しない操作パネルの両面読取モードボタンを押下し、さらにスタートボタンを押下する。これに応答して、CPU87は、S100〜S107を実行する。これによって、原稿Dの表面が読み取られ、その後、原稿Dは、反転搬送/排出手段101により反転(スイッチバック)され、レジストローラ83aに向けて再度搬送される。
【0038】
その後、CPU87は、前述同様のS102〜S104を実行する。その後、モータM2は、レジストローラ83aの回転駆動を開始する(S200)。ここで、S100で判別した原稿Dの長さに応じて、原稿Dの裏面読取向けに、レジストローラ83aの搬送速度は、読取ローラ84aの搬送速度250mm/sに、所定の搬送速度比として、下記の第3又は第4の搬送速度比K3,K4を乗じた値にされる。
裏面時の長さ170mm以上の原稿Dの場合:K3=1.0000
(前述のように表面時は、K1=1.0075)
裏面時の長さ170mm未満の原稿Dの場合:K4=0.9899
(前述のように表面時は、K2=0.9874)
【0039】
このS102〜S104,S200の一連の処理により、原稿Dは、設定された第3又は第4の搬送速度比K3又はK4に搬送速度250mm/sを乗じた搬送速度でレジストローラ83aから送り出され、外側ガイド85aと内側ガイド85bの間に送り込まれていく。
【0040】
モータM2の駆動開始後、CPU87は、前述同様のS106を実行する。その結果、原稿Dは、第1の実施形態と同じ搬送速度で、図7に示す読取り位置Aに向けて送り出される。原稿Dは、スキャナ7による原稿Dの表面の読取り後、反転搬送/排出手段101を通過して、排紙トレイ88に排出され始める(S107)。以上の動作は、原稿Dの後端の読取りが完了し、排紙トレイ88への排紙が完了するまで続く。
【0041】
ところで、スイッチバック経路Pを通過する場合、原稿Dは、給紙ローラ82bと捌きローラ82c間のニップを通過しないため、長さに関わらず負荷トルクの影響を受けない。それゆえ、レジストローラによる原稿Dの送り量は、表面の読取時と比較して相対的に大きくなる。また、原稿Dの両面を読み取る場合、周知のとおり、排出トレイ88上で原稿のページ順を合わせるために、原稿Dは、スイッチバック経路Pを2度通過することになる。それゆえ、原稿Dへのダメージを考慮する必要がある。
【0042】
上記送り量の増加及び原稿Dへのダメージを考慮して、レジストローラ83a及び読取ローラ84aは、裏面読取り時、表面読取り時とは異なる搬送速度に設定されることが望ましい。具体的には、A5T以上で(A5サイズの長辺以上の長さを有する原稿D)で同じ長さの原稿Dであれば、裏面読取り時のレジストローラ83aの搬送速度比Kは、表面読取り時のものと比較して小さくされる。発明者は、実際、前述の搬送速度比Kを様々な値に設定してA5T以上の原稿Dをスイッチバック経路Pに沿って搬送させ、ニップN2を抜ける際の8ドット速度変動率の最大値と最小値とを計測し、図9(B)に示すように●でプロットした。この実測結果から、裏面時は搬送速度比K(K3)が概ね1.0000であればよいことが確認された。これは表面時の搬送速度比K1の1.0075に比較して小さい。
【0043】
また、発明者は、同様の測定をA5Yの原稿Dでも実施した。その結果を図9(A)に示す。この実測結果から、搬送速度比Kが概ね0.9899であればよいことが確認された。
【0044】
(第1及び第2の実施形態の変形について)
なお、第1及び第2の実施形態では、レジストローラ83aの搬送速度は、読取ローラ84aの搬送速度250mm/sに所定の搬送速度比を乗じた値にされていた。しかし、これに限らず、読取ローラ84aの搬送速度が、予め設定されているレジストローラ83aの搬送速度に、実測で定められた搬送速度比を乗じた値に設定されても構わない。
【0045】
また、第1及び第2の実施形態では、CPU87は、170mmを閾値として原稿Dの長さを2段階で判別していたが、3段階以上に判別しても構わない。
【0046】
また、第1及び第2の実施形態では、原稿Dの長さは、トレイ81に設けられたセンタSE0,SE1の出力信号S0,S1に基づき判別されていた。しかし、これに限らず、例えばユーザによるマニュアル入力等、他の判別方法でも構わない。
【0047】
また、第1及び第2の実施形態では、異なる長さの原稿Dがトレイに同時に積載される混載モードでは、最大値に合わせて、搬送速度比Kが設定される。例えば、A5Yの原稿Dと、A4Yの原稿Dとが混載される場合、A4Yの長さに合わせて搬送速度比Kが設定される。
【0048】
また、第2の実施形態において、スイッチバック経路P上に裏面用のレジスト搬送手段が設けられていても構わない。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る原稿読取装置について説明するが、本実施形態の原稿読取装置において、第1の実施形態の原稿読取装置の構成・処理ステップに相当するものには同一の参照符号・ステップ番号を付け、それぞれの説明を省略する。
【0050】
図10,図11において、ADF20は、図1,図2に示すADF8と比較すると、センサSE0,SE1に加えて坪量センサSE3を備える点で相違する(なお同図では、センサSE0、SE1の図示は省略している)。坪量センサSE3は、例えば超音波を用いたアクティブセンサであり、ローラ83a,83bの間のニップよりも若干上流側に、送信側と受信側で搬送経路を挟み込むように配置される。センサSE3において、送信側は超音波を受信側に向けて出力し、受信側は受信超音波に基づき、原稿Dの坪量を示す信号S3をCPU87に出力する。
【0051】
次に、図12のフローチャートを参照して、原稿読取装置の動作について説明する。ユーザは、原稿Dをトレイ81に載置した後、図示しない操作パネルのスタートボタンを押下する。これに応答して、前述のS101〜S104を実行する。その後、CPU87は、センサSE3の出力信号S3により、原稿Dの坪量を検出する(S300)。その後、モータM2は、CPU87の制御下で、レジストローラ83aの回転駆動を開始する(S301)。ここで、S300で判別した原稿Dの坪量が157g/m2 以上(紙厚0.23mm相当)であれば、レジストローラ83aの搬送速度は、読取ローラ84aの搬送速度250mm/sに、所定の搬送速度比として、下記の第5又は第6の搬送速度比K5,K6を乗じた値にされる。
長さ170mm以上の原稿Dの場合:K5=1.0125
長さ170mm未満の原稿Dの場合:K6=0.9923
【0052】
なお、坪量が157g/m2 未満の場合、第1の実施形態で説明した第1又は第2の搬送速度比K1,K2が用いられる。両者の比較から明らかなように原稿Dの坪量が157g/m2 以上での搬送速度比K5,K6は、同157g/m2 未満の搬送速度比K1,K2に対してそれぞれ0.5%増加させたものである。
【0053】
この一連の処理により、T=t0になると、原稿Dは、設定された搬送速度比に搬送速度250mm/sを乗じた搬送速度で、レジストローラ83aから送り出される。
【0054】
モータM2の駆動開始後、前述のS106が行われ、読取ローラ84aの回転駆動が開始され、原稿Dは、回転するローラ84a,84bの間から、250mm/sの搬送速度で、図10に示す読取り位置Aに向けて送り出される。
【0055】
ところで、「発明が解決しようとする課題」にも記載したが、従来の原稿読取装置には、原稿Dの坪量に応じて適切なループ量を与えることができないという問題点があった。この問題点は、厚みのある原稿Dでは、レジストローラ83aの送り量がスリップにより小さくなる傾向があるため、センサSE3により、所定の基準値(例えば157g/m2 )以上の原稿Dを検出したとき、基準値未満の原稿Dの場合と比較して、レジストローラ83aの送り量が大きくなるように搬送速度比を大きくしている。
【0056】
(第3の実施形態の変形例)
なお、原稿Dの坪量が157g/m2 以上での両面読取りモードの場合、原稿Dの表面読取り時には上述の搬送速度比を用いればよい。裏面読取り時には、搬送速度比として、(原稿Dの坪量が157g/m2 未満での第3又は第4の搬送速度比K3,K4に対して0.5%増加させた)以下の第7又は第8の搬送速度比K7,K8が用いられる。
長さ170mm以上の原稿Dの場合:K7=1.0050
長さ170mm未満の原稿Dの場合:K8=0.9946
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るシートスルー方式の原稿読取装置は、原稿の長さ又は坪量に関わらず適切な量のループを原稿に与えることが可能であり、複写機やスキャナ等に好適である。
【符号の説明】
【0058】
7 スキャナ(読取手段)
A 読取り位置
8,10,20 自動原稿搬送装置(ADF)
82 給送手段
83 レジスト搬送手段
84 読取搬送手段
85 ガイド手段
86 排出手段
101 反転搬送/排出手段
87 CPU(原稿長さ判別手段,坪量判別手段)
SE3 坪量センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートスルー方式の原稿読取装置に関し、より特定的には、レジスト搬送手段及び読取搬送手段の間で、原稿にループ(たるみ)を発生させる原稿読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の原稿読取装置においては、原稿トレイにセットされた各原稿は、捌きローラ、レジストローラ及び読取ローラを通過して、画像読取部に搬送される。ここで、レジストローラでの原稿の搬送速度v1は、読取ローラでの搬送速度v2に対して若干高速に設定されることで、レジストローラと読取ローラの間のUターン経路にて原稿にループが形成される。これにより、捌きローラのニップから原稿後端が抜け出た時の速度変動は、原稿に形成されたループにより吸収される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−146337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の画像読取装置には、まず、原稿の長さに応じて適切なループ量を与えることができないという問題点があった。具体的には、原稿が搬送方向に長い場合には、同時に捌きローラ、レジストローラ及び読取ローラの全てに跨って存在することがある。この場合、捌きローラでの負荷トルクによりレジストローラでのスリップが発生しやすくなるので、全てのローラに跨って原稿が搬送されている期間においてはレジストローラでの実際の搬送速度は読取ローラでの実際の搬送速度よりも相対的に小さくなる。逆に、原稿が搬送方向に短い場合、レジストローラ及び読取ローラの両方に同時に跨るが、捌きローラには存在しないことがある。この場合、原稿に対する捌きローラによる負荷トルクの影響はなくなり、レジストローラ及び読取ローラに跨って原稿が搬送されている期間においてはレジストローラの実際の搬送速度は読取ローラでの実際の搬送速度よりも相対的に大きくなる。このように、原稿の長さにより、レジストローラでの実際の搬送速度に差が生じ、その結果、原稿の後端がレジストローラを抜ける時点でUターン経路にて与えられるループ量に差が生じる。
【0005】
また、他にも、従来の画像読取装置では、原稿の坪量に応じて適切なループ量を与えることができないという問題点があった。具体的には、厚みのある、つまり坪量の大きな原稿を搬送すると、レジストローラにてスリップが生じやすくなるため、レジストローラの実際の搬送速度が安定しなくなる。その結果、坪量に応じて、Uターン経路で原稿に与えられるループ量に差が生じる。
【0006】
それゆえに、本発明の目的は、原稿の長さ又は坪量に関わらず適切な量のループを原稿に与えることが可能な、シートスルー方式の原稿読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、搬送されてきた原稿を、固定の読取り位置にて読み取る読取手段を備えるシートスルー方式の原稿読取装置であって、複数枚の原稿を載置する原稿トレイと、前記原稿トレイ上の原稿の長さ及び/又は坪量を判別する判別手段と、原稿を分離して送り出す給送手段と、前記給送手段により送り出された原稿に対し整合処理を行うレジスト搬送手段と、前記レジスト搬送手段の回転駆動を行う第1駆動手段と、前記レジスト搬送手段で整合処理された原稿を、前記読取り位置に送り込む読取搬送手段と、前記読取搬送手段の回転駆動を行う第2駆動手段と、前記判別手段による判別結果に基づき、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する制御手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、原稿の長さや坪量に関わらず適切な量のループを原稿に与えることが可能な、シートスルー方式の原稿読取装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る原稿読取装置の大略的な構成を示す模式図である。
【図2】図1のADF(Automatic Document Feeder)のブロック構成を示す模式図である。
【図3】図1のADFの動作を示すフローチャートである。
【図4】(A)は、ADFにおける各要部の経路長を示す模式図であり、(B)は原稿後端がレジストローラのニップを抜けた時の挙動を示す模式図である。
【図5】(A)は、A5Yの原稿を搬送させた際の速度変動の測定結果を示すグラフであり、(B)は、原稿の長さに対する速度変動を示すグラフである。
【図6】(A),(B)は、搬送速度比Kに対する、A5Y,A5T以上の原稿搬送時の8ドット速度変動率の最大値と最小値との測定結果を示すグラフである。
【図7】第2の実施形態に係る原稿読取装置の大略的な構成を示す模式図である。
【図8】図7のADFの動作を示すフローチャートである。
【図9】(A),(B)は、搬送速度比Kに対する、A5Y,A5T以上の原稿の反転搬送時の8ドット速度変動率の最大値と最小値との測定結果を示すグラフである。
【図10】第3の実施形態に係る原稿読取装置の大略的な構成を示す模式図である。
【図11】図10のADFのブロック構成を示す模式図である。
【図12】図10のADFの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1に示す原稿読取装置は、大略的に、固定光学系の読取手段としてのスキャナ7と、自動原稿搬送装置(以下、「ADF」と称する)8と、を備えている。
【0011】
スキャナ7は、読取り位置Aの直下に固定され、読取り位置Aを通過する原稿Dを1ライン毎に順次的に読み取る。具体的には、スキャナ7において、LEDなどのランプ71は、読取ガラス72を介して、読取り位置Aに向けて光を出射する。読取り位置A上の原稿Dからの反射光は、ミラー73,74,75を介して結像レンズ76に入射され、その後、撮像部(CCDカラーラインセンサ)77に結像させる。
【0012】
ADF8は、図1,図2に示すように、トレイ81と、給送手段82と、レジスト搬送手段83と、読取搬送手段84と、ガイド手段85と、排出手段86と、CPU87と、排紙トレイ88と、を含む。
【0013】
トレイ81は、スキャナ7により読み取られる原稿Dが載置可能に構成される。また、トレイ81には、原稿サイズ検出のために、エンプティセンサSE0と、長さセンサSE1と、が設けられる。センサSE0,SE1は、反射型のフォトセンサ等であり、原稿Dの載置エリアにおける基準位置(例えば、原稿Dの先端位置)から距離d0,d1だけ離して配置される。センサSE0,SE1は、載置エリアに向けて光を出射し、反射光を受信した場合に、信号S0,S1をCPU87に出力する。本実施形態では、d1は例えば170mmである。この場合、信号S1は、供給方向に沿う辺の長さが170mm以上の原稿Dが載置されていることを表す。d0は、d1よりも小さい値であり、信号S0は、トレイ81上に原稿Dが載置されていることを表す。
【0014】
給送手段82は、トレイ81の下流側に設けられ、ピックアップローラ82aと、給紙ローラ82bと、捌きローラ82cと、給紙ローラ82bを回転駆動するモータM1と、を有する。ピックアップローラ82aは、給紙ローラ82bと同期回転可能に接続される。給紙ローラ82bは、例えばφ20.0の外径を有し、モータM1の駆動力により回転し、例えば440mm/sの搬送速度で原稿Dを送り出す。捌きローラ82cには、不図示のトルクリミッタにより例えば500gf・cmの負荷トルクが与えられている。
【0015】
ここで、各ローラによる用紙の「搬送速度」は厳密には、用紙のスリップやローラのつぶれ量を考慮する必要があるが、以下においては特に断りがない限り、ローラ外径、円周率、及びローラ回転数(rpm)を乗じた設計上の搬送速度のことを、単に「搬送速度」若しくは「制御上の搬送速度」と称する。そして当該搬送速度の制御はCPU87により各モータの回転数を制御することにより行う。一方で、負荷トルクの影響による用紙のスリップ等を考慮した搬送速度のことを「送り量」若しくは「実際の搬送速度」と称する。
【0016】
レジスト搬送手段83は、給送手段82の下流側に設けられ、レジストローラ83aと、これに当接するピンチローラ83bと、第1駆動手段の一例としてのモータM2と、原稿通過センサSE2と、を有する。レジストローラ83aは、例えばφ20.1の外径を有する。レジストローラ83aからの原稿の搬送速度は、モータM2からの駆動力に基づき定められる。詳細は後述するが、この搬送速度は、CPU87の制御下で、原稿Dの長さに応じて設定される。センサSE2は、例えば反射型のフォトセンサであり、ローラ83a,83bの間のニップよりも若干上流側に配置される。センサSE2は、搬送経路に向けて光を出射し、その反射光の有無を示す信号S2をCPU87に出力する。
【0017】
読取搬送手段84は、レジスト搬送手段83の下流側に設けられ、読取ローラ84aと、これに当接するピンチローラ84bと、第2駆動手段の一例としてのモータM3と、を有する。読取ローラ84aは、例えばφ20.0の外径を有する。読取ローラ84aからの原稿の搬送速度は、モータM3の駆動力により予め定められており、例えば250mm/sと設定される。なお、読取ローラ84aの搬送速度を固定的な250mm/sに設定すると、スキャナ7での読取精度を安定させることが可能となるので好ましい。
【0018】
ガイド手段85は、外側及び内側のガイド部材85a,85bを有する。これらガイド部材85a,85bにより、レジストローラ83a及び読取ローラ84aの間には、原稿DのUターン経路が形成される。このガイド部材85a,85bの間隔は、2.0mm以上3.0mm以下であることが望ましい。
【0019】
排出手段86は、読取搬送手段84の下流側に設けられ、複数のローラ対86a,86bを有する。これらローラ対86a,86bは、読取搬送手段84のモータM3と接続され、その駆動力により回転する。
【0020】
次に、図3のフローチャートを参照して、原稿読取装置の動作について説明する。ユーザは、原稿Dをトレイ81に載置した後、図示しない操作パネルのスタートボタンを押下する。これに応答して、CPU87は、センサSE0,SE1の出力信号S0,S1に基づき、トレイ81上の原稿Dの長さが170mm以上か否かを判別し、判別結果(原稿Dの長さ)を記憶する(S100)。
【0021】
また、モータM1は、CPU87の制御下で、給紙ローラ82bの回転駆動を開始する(S101)。給紙ローラ82bに同期してピックアップローラ82aも回転する。これにより、トレイ81から原稿Dが取り込まれ、ローラ82b,82cのニップに送り込まれる。取り込まれた原稿Dが1枚であれば、ローラ82b,82cの間から、レジスト搬送手段83に向けて送り出される。なお、原稿Dが複数枚ならば、捌きローラ82cはトルクリミッタの作用により給紙ローラ82bとは逆方向に回転し、これら原稿Dはトレイ81に送り返される。
【0022】
CPU87は、モータM1の駆動開始後、センサSE2の出力信号S2により、センサSE2上を原稿Dが通過したと判断すると(S102)、タイマ(図示せず)による計時を開始する(S103)。CPU87は、タイマのカウント値Tが所定時間t0になると(S104)、モータM2は、CPU87の制御下で、レジストローラ83aの回転駆動を開始する(S105)。ここで、S100で判別した原稿Dの長さに応じて、レジストローラ83aからの搬送速度は、読取ローラ84aからの搬送速度250mm/sに、所定の搬送速度比として、下記の第1又は第2の搬送速度比K1,K2を乗じた値にされる。
長さ170mm以上の原稿Dの場合:K1=1.0075
長さ170mm未満の原稿Dの場合:K2=0.9874
【0023】
この一連の処理により、レジスト搬送手段83では、原稿整合処理の一例としてのスキュー補正が行われる。具体的には、給送手段82からの原稿Dは、まず、停止中のローラ83a,83bの間のニップに突き当てられる。T=t0になるまでの間に、原稿Dには初期ループが形成され、その先端がニップに揃う。T=t0になると、レジストローラ83aは、読取ローラ84aの搬送速度×搬送速度比Kで原稿を送り出し始める。これにより、原稿Dは、レジストローラ83aから送り出され、外側ガイド85aと内側ガイド85bの間に送り込まれていく。
【0024】
モータM2の駆動開始後、モータM3は、CPU87の制御下で、読取ローラ84aの回転駆動を開始する(S106)。ガイド手段85を搬送されてくる原稿Dはローラ84b,84cのニップに送り込まれる。その原稿Dは、回転するローラ84a,84bの間から、搬送速度250mm/sで、図1に示す読取り位置Aに向けて送り出される。また、この間、ガイド手段85内において、原稿Dには、読取ローラ及びレジストローラの送り量の差に基づくループが形成される。
【0025】
また、原稿Dは、読取り位置Aに到達して以降、スキャナ7により1ライン毎に順次的に読み取られ始める(S107)。その後、原稿Dは、排出手段86のローラ対86a,86bを先頭から通過して、排紙トレイ88に排出され始める。以上の動作は、原稿Dの後端の読取りが完了し、排紙トレイ88への排紙が完了するまで続く。
【0026】
ところで、「発明が解決しようとする課題」にも記載したが、従来の原稿読取装置には、原稿Dの長さに応じて適切なループ量を与えることができないという問題点があった。この問題点に加え、本原稿読取装置による技術的効果を、図4,図5を参照して詳細に説明する。
【0027】
図4(A)に示すように、本原稿読取装置において、捌きローラからレジストローラまでの搬送経路長L1は概ね66.5mmで、レジストローラから読取ローラまでの搬送経路長L2は概ね76.6mmと仮定する。また、この経路上を、A5Yの原稿Dが搬送されると仮定する。ここで、A5Yの原稿Dとは、A5サイズであって、その短辺(長さ148mm)に沿って搬送させる原稿Dを意味する。さらに、原稿Dの長さを考慮せずに単純に、レジストローラの搬送速度は読取ローラの搬送速度よりも大きく設定されると仮定する。以上の仮定下では、負荷トルクによる影響は、原稿Dが読取ローラのニップN1に入ってから4.9mm分しか及ばない。それゆえ、Uターン経路で過剰なループが原稿Dに与えられてしまう。もし原稿Dに過剰ループが与えられると、図4(B)に示すように、原稿Dの後端EがレジストローラのニップN2を抜け、過剰ループを解放する際に、搬送方向とは逆方向の速度成分が原稿Dに加わるので、原稿Dの実際の搬送速度が急激に低下してしまう。
【0028】
発明者は、実際に、原稿読取装置を用いて、A5Yの原稿Dを搬送させた際の速度変動を実測して、図5(A)のような実測結果を得た。図5(A)中、ドット速度変動率は、8ドット中での速度変動による色ずれのシミュレーション値であり、0%は色ずれ無しで、4.5%は15ミクロンの色ずれを表すものとする。0.09秒辺りまでは、ニップN2に原稿Dが存在するため、8ドット速度変動率は、概ね0(%)近辺で推移しているが、ニップN2を原稿Dの後端が抜ける0.09秒直後に、最小値の−8%程度まで急激に低下し、その直後に最大値の4%程度まで急上昇している(図中の楕円内を参照)。発明者は、この8ドット速度変動率が±4.5%の範囲内を目標にしていることから、上記の−8%程度まで落ち込むような速度変動は非常に大きいものとなる。
【0029】
次に、図5(B)を参照して、原稿Dの長さと速度変動との関係について説明する。発明者は、様々な長さの薄い原稿D(坪量50g/m2 ,原稿Dの幅は210mm)を3枚ずつ搬送させ、ニップN2を抜ける際の8ドット速度変動率の最大値と最小値とを計測し、図5(B)に示すように●でプロットした。その結果から、長さが170mm以下の場合に、8ドット速度変動率が上記目標範囲をオーバーすることが分かった。
【0030】
以上の実測結果に基づき、発明者は、S100での長さ判別の閾値を170mmに選んでいる。なお、実際の原稿読取装置において、長さ170mm以下の原稿Dの中で搬送可能であるのは、A5Yのみである。この点を考慮して、発明者は、前述の搬送速度比Kを様々な値に設定してA5Yの原稿Dを搬送させ、ニップN2を抜ける際の8ドット速度変動率の最大値と最小値とを計測し、図6(A)に示すように●でプロットした。この実測結果から、搬送速度比Kが概ね0.9874であればよいことが確認された。
【0031】
また、発明者は、同様の測定をA5T以上の原稿D(A5サイズの長辺以上の長さを有する原稿D)でも実施した。その結果を図6(B)に示す。この実測結果から、搬送速度比Kが概ね1.0075であれば良いことが確認された。
【0032】
なお、この現象は、捌きローラの負荷トルクが450gf・cmでは見られず、500gf・cm以上の場合に確認された。繊維が粗く平滑性が低い比較的安価な素材の原稿Dを用いた場合には、複数の原稿D間の摩擦抵抗が高いため、複数枚の原稿Dは分離されにくい。また、読取生産性を向上させるために原稿Dを高速で搬送させた場合にも原稿Dと捌きローラ間でスリップが発生しやすくなり、複数枚の原稿Dは分離されにくい。その結果、複数の原稿Dを一度に搬送する重送が発生しやすくなる。このように多様な原稿Dの紙種に対応するため、及び原稿読取を高い生産性で行いたいというユーザの要望に対応するため、捌きローラの捌きトルク(負荷トルク)を上げて給紙性能を確保する必要があり、発明者は検討を行った結果500gf・cm以上を適正値とした。このように、速度変動としては、捌きローラの負荷トルクは低い方が好ましいが、一方で負荷トルクを下げた場合には原稿の分離不良や重送という問題が生じるため、後者を優先して捌きローラの負荷トルクを500gf・cmあるいはこれ以上に設定し、前者の速度変動の問題に対しては第1の実施形態等のように搬送速度を制御することにより解決を図った。
【0033】
なお、A3サイズ等、長い原稿Dの場合、「発明が解決しようとする課題」の欄でも述べたが、負荷トルクにより、レジストローラでの実際の搬送速度(送り量)は、制御上の搬送速度250mm/s×1.0075という設計値よりも小さくなる。しかし、本原稿読取装置では、ガイド部材85a,85bの間隔が2.0mm以上3.0mm以下に選ばれているので、この空間により原稿Dにループが形成されるので、上記のように搬送速度が低下しても問題は生じない。なお、3.0mmを超えてしまうと、特に薄い原稿Dではスキュー要因となり好ましくない。
【0034】
以上説明したように、本原稿読取装置によれば、原稿Dが長い場合、搬送速度比K=1.0075が用いられるので、読取ローラ84aに対するレジストローラ83aの相対的な制御上の搬送速度は大きな値になる。これにより、負荷トルクに起因するレジストローラ83aでのスリップに対応し、レジストローラ83aでの実際の搬送速度を最適化することが可能となる。それに対し、原稿Dが短い場合には、搬送速度比K=0.9874が用いられるので、読取ローラ84aに対するレジストローラ83aの相対的な制御上の搬送速度は小さな値になる。これにより、負荷トルクの影響が少ない原稿Dに対応し、レジストローラ83aでの実際の搬送速度を最適化することが可能となる。以上のとおり、本原稿読取装置によれば、原稿Dの長さの判別結果に応じて、予め実測で求められた適切な量のループを原稿Dに与えることが可能となる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る原稿読取装置について説明するが、本実施形態の原稿読取装置において、第1の実施形態の原稿読取装置の構成・処理ステップに相当するものには同一の参照符号・ステップ番号を付け、それぞれの説明を省略する。
【0036】
図7において、ADF10は、図1に示すADF8と比較すると、原稿Dの両面を読み取り可能にするために、読取り位置Aを通過した原稿Dを、その表裏を反転させて読取り位置Aの上流側(レジストローラ83a)へ再度送り込むためのスイッチバック経路(図中の一点鎖線で示す)Pをさらに備えている点で相違する。スイッチバック経路Pを形成するために、ADF10は、図1に示す排出手段86に代えて、反転搬送/排出手段101を備えている。なお、この反転搬送/排出手段101に関しては、周知であるため、その図示や説明を省略する。
【0037】
次に、図8のフローチャートを参照して、本原稿読取装置の動作について説明する。ユーザは、原稿Dをトレイ81に載置した後、図示しない操作パネルの両面読取モードボタンを押下し、さらにスタートボタンを押下する。これに応答して、CPU87は、S100〜S107を実行する。これによって、原稿Dの表面が読み取られ、その後、原稿Dは、反転搬送/排出手段101により反転(スイッチバック)され、レジストローラ83aに向けて再度搬送される。
【0038】
その後、CPU87は、前述同様のS102〜S104を実行する。その後、モータM2は、レジストローラ83aの回転駆動を開始する(S200)。ここで、S100で判別した原稿Dの長さに応じて、原稿Dの裏面読取向けに、レジストローラ83aの搬送速度は、読取ローラ84aの搬送速度250mm/sに、所定の搬送速度比として、下記の第3又は第4の搬送速度比K3,K4を乗じた値にされる。
裏面時の長さ170mm以上の原稿Dの場合:K3=1.0000
(前述のように表面時は、K1=1.0075)
裏面時の長さ170mm未満の原稿Dの場合:K4=0.9899
(前述のように表面時は、K2=0.9874)
【0039】
このS102〜S104,S200の一連の処理により、原稿Dは、設定された第3又は第4の搬送速度比K3又はK4に搬送速度250mm/sを乗じた搬送速度でレジストローラ83aから送り出され、外側ガイド85aと内側ガイド85bの間に送り込まれていく。
【0040】
モータM2の駆動開始後、CPU87は、前述同様のS106を実行する。その結果、原稿Dは、第1の実施形態と同じ搬送速度で、図7に示す読取り位置Aに向けて送り出される。原稿Dは、スキャナ7による原稿Dの表面の読取り後、反転搬送/排出手段101を通過して、排紙トレイ88に排出され始める(S107)。以上の動作は、原稿Dの後端の読取りが完了し、排紙トレイ88への排紙が完了するまで続く。
【0041】
ところで、スイッチバック経路Pを通過する場合、原稿Dは、給紙ローラ82bと捌きローラ82c間のニップを通過しないため、長さに関わらず負荷トルクの影響を受けない。それゆえ、レジストローラによる原稿Dの送り量は、表面の読取時と比較して相対的に大きくなる。また、原稿Dの両面を読み取る場合、周知のとおり、排出トレイ88上で原稿のページ順を合わせるために、原稿Dは、スイッチバック経路Pを2度通過することになる。それゆえ、原稿Dへのダメージを考慮する必要がある。
【0042】
上記送り量の増加及び原稿Dへのダメージを考慮して、レジストローラ83a及び読取ローラ84aは、裏面読取り時、表面読取り時とは異なる搬送速度に設定されることが望ましい。具体的には、A5T以上で(A5サイズの長辺以上の長さを有する原稿D)で同じ長さの原稿Dであれば、裏面読取り時のレジストローラ83aの搬送速度比Kは、表面読取り時のものと比較して小さくされる。発明者は、実際、前述の搬送速度比Kを様々な値に設定してA5T以上の原稿Dをスイッチバック経路Pに沿って搬送させ、ニップN2を抜ける際の8ドット速度変動率の最大値と最小値とを計測し、図9(B)に示すように●でプロットした。この実測結果から、裏面時は搬送速度比K(K3)が概ね1.0000であればよいことが確認された。これは表面時の搬送速度比K1の1.0075に比較して小さい。
【0043】
また、発明者は、同様の測定をA5Yの原稿Dでも実施した。その結果を図9(A)に示す。この実測結果から、搬送速度比Kが概ね0.9899であればよいことが確認された。
【0044】
(第1及び第2の実施形態の変形について)
なお、第1及び第2の実施形態では、レジストローラ83aの搬送速度は、読取ローラ84aの搬送速度250mm/sに所定の搬送速度比を乗じた値にされていた。しかし、これに限らず、読取ローラ84aの搬送速度が、予め設定されているレジストローラ83aの搬送速度に、実測で定められた搬送速度比を乗じた値に設定されても構わない。
【0045】
また、第1及び第2の実施形態では、CPU87は、170mmを閾値として原稿Dの長さを2段階で判別していたが、3段階以上に判別しても構わない。
【0046】
また、第1及び第2の実施形態では、原稿Dの長さは、トレイ81に設けられたセンタSE0,SE1の出力信号S0,S1に基づき判別されていた。しかし、これに限らず、例えばユーザによるマニュアル入力等、他の判別方法でも構わない。
【0047】
また、第1及び第2の実施形態では、異なる長さの原稿Dがトレイに同時に積載される混載モードでは、最大値に合わせて、搬送速度比Kが設定される。例えば、A5Yの原稿Dと、A4Yの原稿Dとが混載される場合、A4Yの長さに合わせて搬送速度比Kが設定される。
【0048】
また、第2の実施形態において、スイッチバック経路P上に裏面用のレジスト搬送手段が設けられていても構わない。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る原稿読取装置について説明するが、本実施形態の原稿読取装置において、第1の実施形態の原稿読取装置の構成・処理ステップに相当するものには同一の参照符号・ステップ番号を付け、それぞれの説明を省略する。
【0050】
図10,図11において、ADF20は、図1,図2に示すADF8と比較すると、センサSE0,SE1に加えて坪量センサSE3を備える点で相違する(なお同図では、センサSE0、SE1の図示は省略している)。坪量センサSE3は、例えば超音波を用いたアクティブセンサであり、ローラ83a,83bの間のニップよりも若干上流側に、送信側と受信側で搬送経路を挟み込むように配置される。センサSE3において、送信側は超音波を受信側に向けて出力し、受信側は受信超音波に基づき、原稿Dの坪量を示す信号S3をCPU87に出力する。
【0051】
次に、図12のフローチャートを参照して、原稿読取装置の動作について説明する。ユーザは、原稿Dをトレイ81に載置した後、図示しない操作パネルのスタートボタンを押下する。これに応答して、前述のS101〜S104を実行する。その後、CPU87は、センサSE3の出力信号S3により、原稿Dの坪量を検出する(S300)。その後、モータM2は、CPU87の制御下で、レジストローラ83aの回転駆動を開始する(S301)。ここで、S300で判別した原稿Dの坪量が157g/m2 以上(紙厚0.23mm相当)であれば、レジストローラ83aの搬送速度は、読取ローラ84aの搬送速度250mm/sに、所定の搬送速度比として、下記の第5又は第6の搬送速度比K5,K6を乗じた値にされる。
長さ170mm以上の原稿Dの場合:K5=1.0125
長さ170mm未満の原稿Dの場合:K6=0.9923
【0052】
なお、坪量が157g/m2 未満の場合、第1の実施形態で説明した第1又は第2の搬送速度比K1,K2が用いられる。両者の比較から明らかなように原稿Dの坪量が157g/m2 以上での搬送速度比K5,K6は、同157g/m2 未満の搬送速度比K1,K2に対してそれぞれ0.5%増加させたものである。
【0053】
この一連の処理により、T=t0になると、原稿Dは、設定された搬送速度比に搬送速度250mm/sを乗じた搬送速度で、レジストローラ83aから送り出される。
【0054】
モータM2の駆動開始後、前述のS106が行われ、読取ローラ84aの回転駆動が開始され、原稿Dは、回転するローラ84a,84bの間から、250mm/sの搬送速度で、図10に示す読取り位置Aに向けて送り出される。
【0055】
ところで、「発明が解決しようとする課題」にも記載したが、従来の原稿読取装置には、原稿Dの坪量に応じて適切なループ量を与えることができないという問題点があった。この問題点は、厚みのある原稿Dでは、レジストローラ83aの送り量がスリップにより小さくなる傾向があるため、センサSE3により、所定の基準値(例えば157g/m2 )以上の原稿Dを検出したとき、基準値未満の原稿Dの場合と比較して、レジストローラ83aの送り量が大きくなるように搬送速度比を大きくしている。
【0056】
(第3の実施形態の変形例)
なお、原稿Dの坪量が157g/m2 以上での両面読取りモードの場合、原稿Dの表面読取り時には上述の搬送速度比を用いればよい。裏面読取り時には、搬送速度比として、(原稿Dの坪量が157g/m2 未満での第3又は第4の搬送速度比K3,K4に対して0.5%増加させた)以下の第7又は第8の搬送速度比K7,K8が用いられる。
長さ170mm以上の原稿Dの場合:K7=1.0050
長さ170mm未満の原稿Dの場合:K8=0.9946
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るシートスルー方式の原稿読取装置は、原稿の長さ又は坪量に関わらず適切な量のループを原稿に与えることが可能であり、複写機やスキャナ等に好適である。
【符号の説明】
【0058】
7 スキャナ(読取手段)
A 読取り位置
8,10,20 自動原稿搬送装置(ADF)
82 給送手段
83 レジスト搬送手段
84 読取搬送手段
85 ガイド手段
86 排出手段
101 反転搬送/排出手段
87 CPU(原稿長さ判別手段,坪量判別手段)
SE3 坪量センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてきた原稿を、固定の読取り位置にて読み取る読取手段を備えるシートスルー方式の原稿読取装置であって、
複数枚の原稿を載置する原稿トレイと、
前記原稿トレイ上の原稿の長さを判別する判別手段と、
原稿を分離して送り出す給送手段と、
前記給送手段により送り出された原稿に対し整合処理を行うレジスト搬送手段と、
前記レジスト搬送手段の回転駆動を行う第1駆動手段と、
前記レジスト搬送手段で整合処理された原稿を、前記読取り位置に送り込む読取搬送手段と、
前記読取搬送手段の回転駆動を行う第2駆動手段と、
前記判別手段による判別結果に基づき、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する制御手段と、を備えるシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記原稿の長さが所定の基準値以上と判別された場合、前記レジスト搬送手段の搬送速度を、前記読取搬送手段の搬送速度に第1の搬送速度比を乗じた値に設定して、前記相対的な搬送速度を変更し、
前記原稿の長さが前記基準値未満と判別された場合、前記レジスト搬送手段の搬送速度を、前記読取搬送手段の搬送速度に、第1の搬送速度比よりも小さい第2の搬送速度比を乗じた値に設定して、前記相対的な搬送速度を変更する、請求項1に記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項3】
前記シートスルー方式の原稿読取装置は、前記読取手段にて表面が読み取られた原稿の表裏を反転して、表裏反転した原稿を前記レジスト搬送手段に再度送り込む反転搬送手段、をさらに備え、
前記制御手段は、さらに、前記原稿の表面及び裏面で、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する、請求項1又は2に記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記原稿が表面の場合、前記レジスト搬送手段の搬送速度を、前記読取搬送手段の搬送速度に第3の搬送速度比を乗じた値に設定して、前記相対的な搬送速度を変更し、
前記原稿が裏面の場合、前記レジスト搬送手段の搬送速度を、前記読取搬送手段の搬送速度に、第3の搬送速度比よりも小さい第4の搬送速度比を乗じた値に設定して、前記相対的な搬送速度を変更する、請求項3に記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項5】
前記給送手段は、500gf・cmの負荷トルクにて原稿を分離する、
請求項1〜4のいずれかに記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項6】
前記判別手段は、前記原稿トレイ上に異なる長さの原稿が存在する場合、最大値を判別し、
前記制御手段は、前記判別手段にて判別された最大値に基づき、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する、
請求項1〜5のいずれかに記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項7】
前記シートスルー方式の原稿読取装置は、原稿の坪量を判別する坪量判別手段、をさらに備え、
前記制御手段は、前記判別手段による判別結果と、前記坪量判別手段による判別結果とに基づき、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する、
請求項1〜6のいずれかに記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項8】
搬送されてきた原稿を、固定の読取り位置にて読み取る読取手段を備えるシートスルー方式の原稿読取装置であって、
原稿の坪量を判別する判別手段と、
原稿を分離して送り出す給送手段と、
前記給送手段により送り出された原稿に対し整合処理を行うレジスト搬送手段と、
前記レジスト搬送手段の回転駆動を行う第1駆動手段と、
前記レジスト搬送手段で整合処理された原稿を、前記読取り位置に送り込む読取搬送手段と、
前記読取搬送手段の回転駆動を行う第2駆動手段と、
前記判別手段による判別結果に基づき、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する制御手段と、を備えるシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項9】
前記シートスルー方式の原稿読取装置は、前記レジスト搬送手段の上流側に設けられ、前記原稿の坪量を検出する坪量センサ、をさらに備え、
前記判別手段は、前記坪量センサの検出結果に基づき、原稿の坪量を判別する、請求項8に記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項1】
搬送されてきた原稿を、固定の読取り位置にて読み取る読取手段を備えるシートスルー方式の原稿読取装置であって、
複数枚の原稿を載置する原稿トレイと、
前記原稿トレイ上の原稿の長さを判別する判別手段と、
原稿を分離して送り出す給送手段と、
前記給送手段により送り出された原稿に対し整合処理を行うレジスト搬送手段と、
前記レジスト搬送手段の回転駆動を行う第1駆動手段と、
前記レジスト搬送手段で整合処理された原稿を、前記読取り位置に送り込む読取搬送手段と、
前記読取搬送手段の回転駆動を行う第2駆動手段と、
前記判別手段による判別結果に基づき、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する制御手段と、を備えるシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記原稿の長さが所定の基準値以上と判別された場合、前記レジスト搬送手段の搬送速度を、前記読取搬送手段の搬送速度に第1の搬送速度比を乗じた値に設定して、前記相対的な搬送速度を変更し、
前記原稿の長さが前記基準値未満と判別された場合、前記レジスト搬送手段の搬送速度を、前記読取搬送手段の搬送速度に、第1の搬送速度比よりも小さい第2の搬送速度比を乗じた値に設定して、前記相対的な搬送速度を変更する、請求項1に記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項3】
前記シートスルー方式の原稿読取装置は、前記読取手段にて表面が読み取られた原稿の表裏を反転して、表裏反転した原稿を前記レジスト搬送手段に再度送り込む反転搬送手段、をさらに備え、
前記制御手段は、さらに、前記原稿の表面及び裏面で、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する、請求項1又は2に記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記原稿が表面の場合、前記レジスト搬送手段の搬送速度を、前記読取搬送手段の搬送速度に第3の搬送速度比を乗じた値に設定して、前記相対的な搬送速度を変更し、
前記原稿が裏面の場合、前記レジスト搬送手段の搬送速度を、前記読取搬送手段の搬送速度に、第3の搬送速度比よりも小さい第4の搬送速度比を乗じた値に設定して、前記相対的な搬送速度を変更する、請求項3に記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項5】
前記給送手段は、500gf・cmの負荷トルクにて原稿を分離する、
請求項1〜4のいずれかに記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項6】
前記判別手段は、前記原稿トレイ上に異なる長さの原稿が存在する場合、最大値を判別し、
前記制御手段は、前記判別手段にて判別された最大値に基づき、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する、
請求項1〜5のいずれかに記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項7】
前記シートスルー方式の原稿読取装置は、原稿の坪量を判別する坪量判別手段、をさらに備え、
前記制御手段は、前記判別手段による判別結果と、前記坪量判別手段による判別結果とに基づき、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する、
請求項1〜6のいずれかに記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項8】
搬送されてきた原稿を、固定の読取り位置にて読み取る読取手段を備えるシートスルー方式の原稿読取装置であって、
原稿の坪量を判別する判別手段と、
原稿を分離して送り出す給送手段と、
前記給送手段により送り出された原稿に対し整合処理を行うレジスト搬送手段と、
前記レジスト搬送手段の回転駆動を行う第1駆動手段と、
前記レジスト搬送手段で整合処理された原稿を、前記読取り位置に送り込む読取搬送手段と、
前記読取搬送手段の回転駆動を行う第2駆動手段と、
前記判別手段による判別結果に基づき、前記レジスト搬送手段及び前記読取搬送手段の間の相対的な搬送速度を変更する制御手段と、を備えるシートスルー方式の原稿読取装置。
【請求項9】
前記シートスルー方式の原稿読取装置は、前記レジスト搬送手段の上流側に設けられ、前記原稿の坪量を検出する坪量センサ、をさらに備え、
前記判別手段は、前記坪量センサの検出結果に基づき、原稿の坪量を判別する、請求項8に記載のシートスルー方式の原稿読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−70211(P2013−70211A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206876(P2011−206876)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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