説明

シート給送装置及び画像形成装置

【課題】生産性を低下させることなくシートを給送することのできるシート給送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】紙面検知機構49から、浮上したシートの最上位シートが適正範囲にあることを示す信号が出力されている場合でも、搬送される最上位シートが後端シート面センサ56を通過した際、後端シート面センサ56から、浮上したシートの最上位シートの上面がシートの給送が可能な高さを判断する基準位置よりも下側にあることを示す信号が出力された場合には、昇降部を制御してトレイを上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置に関し、特にシートに空気を吹き付けることによりシートを分離給送するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機等の画像形成装置においては、複数のシートが収納されたシート収納部からシートを1枚ずつ給送するシート給送装置を備えている。そして、このようなシート給送装置としては、昇降可能なトレイに支持されたシート束の端部にエアを吹き付けてシートを複数枚浮上させ、上方に配された吸着搬送ベルトにシートを1枚だけ吸着させて搬送するエア給紙方式のものがある(特許文献1参照)。
【0003】
図13は、このような従来のエア給紙方式のシート給送装置の一例を示すものであり、図13に示すように、複数のシートSが収納されるシート収納部であるシート収納庫11にはシートSを積載するトレイ12が昇降可能に設けられている。シートSがトレイ12上にセットされると、シートSは、シート給送方向下流側端(以下、先端という)は先端規制板17により、シート給送方向上流側端(以下、後端という)は後端規制板13により位置が保持される。また、シート給送方向と直交する方向(以下、幅方向という)の両側端はサイド規制板14によって位置が保持される。
【0004】
また、シート収納庫11の上部には、シートSを吸着搬送する吸着搬送ベルト21を備えた吸着搬送部20と、トレイ上のシートSの束の端部にエアを吹き付けて複数枚のシートSを浮上させると共に1枚ずつ分離するエア吹き付け部30とが設けられている。
【0005】
そして、エア吹き付け部30により矢印C方向に吸い込まれたエアの一部を矢印D方向に吹き付けることにより、トレイ12上に積載されているシート束のうち上部の数枚を浮上させる。また、他のエアを矢印E方向に吹き付けることにより、浮上した数枚のシートのうち最上位シートを1枚ずつ分離して吸着搬送ベルト21に吸着させる。
【0006】
このようなシート給送装置はA4もしくはLTRサイズのシートを毎分70枚以上給送出来るような生産性の高い装置に採用され、トレイ12は不図示の駆動手段によって、略水平を維持したまま鉛直方向に昇降する機構を備えている。
【0007】
図14は、シート収納庫11の詳細を示す平面図であり、シートの後端を規制する後端規制板13は矢印Hで示すシート給送方向と平行に、またシートの側端を規制するサイド規制板14,16は矢印Vで示す幅方向に移動可能に構成されている。
【0008】
このように、後端規制板13及びサイド規制板14,16を移動可能に構成することにより、トレイ12上に最小サイズのシートSSから最大サイズのシートLSを積載支持することができる。なお、後端規制板13は、サイド規制板14,16の移動を妨げないようにトレイ12の幅方向中央部分にのみ移動するように設けられている。
【0009】
ここで、後端規制板13には最上位シートSaのシート給送方向上流側端部である後端部の位置を規制する後端分離部18が上下方向に移動可能に設けられている。この後端分離部18は、図13に示す後端規制板13の規制部面13Cから水平方向に突出し、最上位シートSaの後端部を上方から押えるための突出部18Dを備えている。この突出部18Dの下面側、すなわちシート当接面側には、積載されたシート上面に抵抗を加えるための高摩擦係数の材料によって構成された分離補助シート18Eが貼り付けられている。
【0010】
そして、最上位シートSaを、図13に示す突出部18Dの突出長さL2分給送すると、後端分離部18が下降し、その直下のシートSbに当接する。このとき、後端分離部18の重さによって生じる摩擦力によって、最上位シートSaの搬送中に直下のシートSbが連れ送りされるのを防ぐことができ、重送の発生を抑制することができる。また、この突出部18Dはセットされたシートがないときはトレイ12の表面に当接する。
【0011】
なお、図13において、18Aは後端分離部18に設けられ、後端規制板13に設けられた係合部13Eと係合する支持部である。そして、この支持部18Aにはボールベアリングや表面の摩擦抵抗の低いローラ等が設けられており、これにより後端分離部18の図中G方向への移動がスムーズに行われるように構成されている。
【0012】
ところで、このような従来のエア給紙方式のシート給送装置においては、シート収納庫11に収納されているシートの最上面の位置を制御するための紙面検知機構を備えたものがある(特許文献2参照)。
【0013】
図15の(a)及び(b)は、このような従来の紙面検知機構の構成を示す図である。図15に示すように、この紙面検知機構49は、シート面検知センサフラグ52、シート面検知センサフラグ52の回動によりON/OFF(オン・オフ)される第1シート面センサ54、第2シート面センサ55及びセンサフラグ機構50を備えている。なお、この第1シート面センサ54及び第2シート面センサ55は、フォトセンサであり、不図示の制御装置に接続されている。
【0014】
ここで、シート面検知センサフラグ52は、支持軸53に揺動自在に支持されている。そして、第1シート面センサ54の受光部を遮光する第1の検出部52Bと、第2シート面センサ55の受光部を遮光する第2の検出部52Cと、後述するシート面検知部材61を回動自在に支持する支持部52Dを備えている。
【0015】
また、センサフラグ機構50は、一端60aが吸引ダクト22の内部に回動自在に保持されている支持部材60と、支持部材60の回動端60bとシート面検知センサフラグ52の支持部52Dに支持されるシート面検知部材61とを備えている。
【0016】
ここで、このシート面検知部材61は、吸着搬送部20の吸着搬送領域の下方に、トレイ12に積載されたシートSと平行に、かつ上下方向に移動可能に設けられている。また、吸引ダクト内に回動自在に支持されている支持部材60は、図16に示すように複数の吸着搬送ベルト21のシート幅方向の隙間に形成されている退避穴51H1、51H2から吸着搬送ベルト21の吸着搬送領域の下側に突出している。
【0017】
そして、これら支持部材60、シート面検知センサフラグ52、シート面検知部材61により平行リンクが構成される。これにより、シート面検知部材61の長手方向のどの位置にシートが当接してもシート面検知部材61は、シート面検知センサフラグ52を揺動させながら平行な状態(水平な状態)を維持して上下に移動することができる。
【0018】
次に、このように構成された紙面検知機構49の検知に基づく紙面制御動作について説明する。
【0019】
シート収納庫11に収納されているシートがトレイ12の上昇により持上げられると、最上位シートSaの上面がシート面検知部材61に当接する。そして、この後、さらにトレイ12が上昇すると、シート面検知部材61が最上位シートSaと一体的に上昇し、このシート面検知部材61の上昇に伴ってシート面検知センサフラグ52は支持軸53を中心に支持部52Dが上方に向かう方向に揺動する。
【0020】
やがて、図17の(a)に示すように、シート面検知部材61を上昇させながら上昇した最上位シートSaの上面と吸着搬送ベルト21のベルト面との距離がS1になる。この状態になると、シート面検知センサフラグ52の第1の検出部52Bにより第1シート面センサ54が遮光され、第2の検出部52Cにより第2シート面センサ55がそれぞれ遮光され、ON信号を出力する。そして、制御手段は、この第1シート面センサ54及び第2シート面センサ55からのON信号に基づき、トレイ12を停止する。
【0021】
次に、給送開始信号を受けると、制御手段はエアの吹き付けを開始し、図17の(b)に示すようにシート束の上部部分を浮上させると共に、トレイ12を上昇または下降させて最上位シートSaが規定の領域で浮上するように制御する。
【0022】
ここで、シート面検知センサフラグ52の第2の検出部52Bにより遮光されると、第2シート面センサ55はON信号を出力するように構成されている。そして、第2シート面センサ55がONとなる位置を浮上領域の下限とし、第1シート面センサ54がONで、第2シート面センサ55のON信号を得られない場合は、「低すぎる」と判断する。この場合には、第1シート面センサ54のON信号が得られるまでトレイ12を上昇させる。
【0023】
また、図18に示すように、搬送ベルト21のベルト面と最上位シートSaの上面との距離がSHよりも小さくなると、第1の検出部52Bによる遮光が解除され、吸着第1シート面センサ54がON信号を出力しないように構成されている。そして、この位置を浮上領域の上限とし、第2シート面センサ55がONで、第1シート面センサ54のON信号を得られない場合は、「高すぎる」と判断し、第1シート面センサ54のON信号が得られるまでトレイ12を下降させる。
【0024】
下表は、このような一連の動作をまとめたものである。
【0025】
【表1】

【0026】
そして、このように第1及び第2シート面センサ54,55の信号に基づいてトレイ12を上昇及び下降させることにより、トレイ12の位置を最上位シートSaのみを分離給送できる位置に制御することができる。これにより、吸着搬送ベルト21によりシートを吸着する際、シートSを1枚ずつ分離して画像形成部に向けて給送することができ、安定したシートの給送が可能となる。
【0027】
ところで、トレイ12上に、シート給送方向の下流側端部が上方向に向いたカールが生じているシートが積載される場合がある。この場合でも、既述した図15の(a)に示すように、シート面検知部材61は、カールが生じているシートとシート給送方向下流の端部側で当接する。そして、シートと当接するシート面検知部材61は平行に上下に変位してシート面検知センサフラグ52を回動させるため、第1シート面センサ54及び第2シート面センサ55が適宜ON/OFFされて、上述した紙面制御が行われる。
【0028】
つまり、シートとシート面検知部材61が当接する位置で適正な高さ(吸着搬送ベルト21とシート状面との適正距離)S1が得られるようにトレイ12の昇降が制御される。そして、このように適正な高さにシートの上面が制御されるため、シート端部と吸着搬送ベルト21の間には隙間が生じ、図中矢印で示す分離エアが円滑に進入するようになる。この結果、分離エアによりシート同士の分離が確実に行われるようになり、シートの重送やジャムの発生を防止することが出来る。
【0029】
なお、シート面検知センサフラグ52、第1及び第2シート面センサ54,55を吸着搬送ベルト21の吸着搬送領域の外側で且つシート給送方向の上流側に配置しても、シートSの先端側での検知も可能となり、確実なシートSの給送を行うことができる。また、このように吸引ダクト51内に第1及び第2シート面センサ54,55を配置しないようにすることにより、吸着搬送部20の高さ方向の小型化を図ることが可能となり、画像形成装置の高さ方向の小型化にもつながる。
【0030】
ところで、吸引ダクト51には、吸着搬送ベルト21が最上位シートを吸着した際に、シートの搬送の抵抗とならないように、既述した図16に示すように、シート面検知部材61を格納するための穴51H1、51H2が形成されている。この穴51H1は、複数の吸着搬送ベルト21の間で吸着面(シートが吸着される面)と平行に吸引ダクト51に形成した穴であり、穴51H2は、吸引ダクト51の縦壁に沿って形成した穴である。そして、吸着搬送ベルト21により最上位シートが吸着されると、この吸着されたシートによりシート面検知部材61が上方に退避して穴51H1、51H2に格納され、シート面検知部材61が吸着搬送ベルト21の吸着面から下側に突出することはない。
【0031】
穴51H1は吸着搬送ベルト21と平行に形成されている穴であるため、吸着搬送ベルト21が吸着する最上位シートよって覆われ、その穴51H1からの吸引エアの漏れはほとんどない。また、穴部51H2は吸着搬送ベルト21の吸着面と直交する方向に空いている穴であるが、シート面検知部材61が格納された際、シート面検知部材61自体で穴部51H2を塞ぐため、吸引エアの漏れもほとんどない。結果として、吸引ダクト51に穴51H1、51H2が形成されていても吸引力が低下することはないため、シートの給送不良が発生することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開平7−196187号公報
【特許文献2】特開2007−276910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
ところで、このような従来のシート処理装置及びこれを備えた画像形成装置において、図19に示すように、最上位シートSaを搬送している間は、シート面検知部材61が吸着ダクト51の内部に格納されてしまう。そして、このようにシート面検知部材61が吸着ダクト内部に格納されている間は、吸着されている最上位シートSaの直下のシートSbの紙面高さが把握できない。
【0034】
ここで、直下のシートSbの紙面が把握できるのは、吸着搬送ベルト21により搬送される最上位シートSaの後端がシート面検知部材61を通過してシート面検知部材61が自重により落下し、シートSbの表面に接触したときである。例えば、A4サイズのシート(搬送長さ210mm)Saが、吸着搬送ベルト21により搬送され、シート面検知部材61の搬送方向下流側の端部(図中L1=10mm)を通り過ぎると、シート面検知部材61が落下する。そして、このようにシート面検知部材61が落下してシートSbに接触する際の時間は以下のようになる。
【0035】
吸着搬送ベルト21のシート搬送速度を約1000mm/secとすると、シート面検知部材61が落下してシートSbに接触する際の時間(シート面検知部材61の格納が解除されるまでの時間)は、(210−10)/1000=約200msecとなる。また、シートSbが適正位置から1mm下方で浮上していた場合、実験の結果、吸引力に抗しながら自重により落下したシート面検知部材61がシートSbの上面に接触するまで約20msecかかる。
【0036】
また、シートSbの浮上高さが適正な高さではない場合は、適正な高さまでシート面が上昇するようにトレイを上昇させる時間がかかる。例えば、トレイの上昇速度を約0.1m/secだとすれば、適正位置までトレイを上昇させるために約100msecかかる。
【0037】
つまり、シートの浮上高さが適正でない場合は、シートSbの紙面を把握するには、シート面検知部材61の格納が解除されるまでの時間、シート面検知部材61が検出可能になるための時間及びシートSbを適正な高さで浮上させるまでの時間が必要になる。すなわち、このように浮上高さが適正でないシートSbの紙面を把握するには約320msec(=約200msec+約20msec+約100msec)かかる。
【0038】
ここで、通常、A4サイズを毎分約120枚給送できるシート給送装置を考慮した場合、1枚あたりの時間は約500msecである。しかし、シートSbの紙面を把握するために約320msecかかるような場合、生産性が毎分約120枚(1枚あたり約500msec)から毎分約71枚(1枚あたり約820msec)まで低下する。さらに、シートの長さが長くなればなるほど、シート面検知部材61が格納されている時間が長くなるため、A3サイズ以上の大きなシートの場合は、生産性がさらに低下する。
【0039】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、生産性を低下させることなくシートを給送することのできるシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明は、シートを支持する昇降可能なトレイと、前記トレイに支持されたシートの側端にエアを吹き付けてシートを浮上させるエア吹き付け部と、浮上させたシートを吸着して給送する吸着搬送部とを備え、エアの吹き付けで浮上した最上位のシートを前記吸着搬送部により吸着して搬送を行うシート給送装置において、前記トレイの上方に配置され、浮上したシートの上面を検知する第1紙面検知部と、前記第1紙面検知部よりもシート給送方向上流側に配置され、浮上したシートの上面を検知する第2紙面検知部と、前記トレイを昇降させる昇降部と、前記第1紙面検知部及び前記第2紙面検知部の検知に基づいて前記昇降部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吸着搬送部により吸着搬送されるシートの後端が前記第2紙面検知部による検知領域よりも下流に搬送されたときに、前記第2紙面検知部から、浮上しているシートの上面がシートの給送が可能な高さを判断する基準位置よりも下側にあることを示す信号が出力された場合には、前記トレイを上昇させるように前記昇降部を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0041】
本発明のように、第2紙面検知部が浮上したシートの最上位シートが適正範囲よりも下側にあることを検知した場合には、第1紙面検知部からの信号にかかわらず、トレイを上昇させることにより、生産性を低下させることなくシートを給送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるプリンタの概略構成を示す図。
【図2】図1の画像形成装置に設けられるシート給送装置の構成を示す図。
【図3】図1の画像形成装置に設けられるシート給送装置の制御ブロック図。
【図4】図1の画像形成装置に設けられるシート給送装置のシート給送動作を説明する第1の図。
【図5】図1の画像形成装置に設けられるシート給送装置のシート給送動作を説明する第2の図。
【図6】図1の画像形成装置に設けられるシート給送装置に設けられたトレイと後端規制部の詳細を示す図。
【図7】図1の画像形成装置に設けられるシート給送装置に設けられた紙面検知機構の構成を説明する図。
【図8】図1の画像形成装置に設けられるトレイの昇降制御を説明するフローチャート。
【図9】図1の画像形成装置に設けられるシート給送装置のシート給送動作中の状態を説明する図。
【図10】図1の画像形成装置に設けられるシート給送装置の紙面制御を説明する図。
【図11】図1の画像形成装置に設けられるシート給送装置に設けられた後端シート面センサがOFFとなった状態を示す図。
【図12】図1の画像形成装置に設けられるトレイの昇降制御を説明するフローチャート。
【図13】従来の画像形成装置に設けられるシート給送装置の構成を説明する図。
【図14】図13のシート給送装置のシート収納庫の詳細を示す平面図。
【図15】図13のシート給送装置の紙面検知機構の構成を示す第1の図。
【図16】図13のシート給送装置の紙面検知機構の構成を示す第2の図。
【図17】図13のシート給送装置の紙面制御動作を説明する第1の図。
【図18】図13のシート給送装置の紙面制御動作を説明する第2の図。
【図19】図13のシート給送装置の紙面制御動作を説明する第3の図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0044】
図1は、本発明の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の一例であるプリンタの概略構成を示す図である。
【0045】
図1において、100はプリンタ、101はプリンタ本体である。このプリンタ本体101の上部には自動原稿給送装置120により原稿載置台としてのプラテンガラス120aに載置された原稿Dを読み取る画像読み取り部130が設けられている。また、画像読み取り部130の下方には画像形成部102と、画像形成部102にシートSを給送するシート給送装置103が設けられている。
【0046】
ここで、画像形成部102には、感光ドラム112、現像器113、レーザスキャナユニット111等が設けられている。また、シート給送装置103は、OHT等のシートSを収容して装置本体101に着脱自在な複数のシート収納部11及びシート収納部11に収納されたシートSを送り出すシート給送手段の一例としての給送ベルトである吸着搬送ベルト21等を備えている。
【0047】
次に、このような構成のプリンタ100の画像形成動作について説明する。
【0048】
装置本体101に設けられている後述する図3に示す制御装置から画像読取部130に画像読取信号が出力されると、画像読取部130により画像が読み取られる。この後、レーザスキャナユニット111から、この電気信号に対応したレーザ光が感光ドラム112上に照射される。このとき感光ドラム112は、予め帯電されおり、光が照射されることによって静電潜像が形成され、次いで静電潜像を現像器113によって現像することにより、感光ドラム上にトナー像が形成される。
【0049】
一方、制御装置から給紙信号がシート給送装置103に出力されると、シート収納部11からシートSが給送される。この後、給送されたシートSはレジストローラ117により感光ドラム上のトナー画像と同期を取って感光ドラム112と転写帯電器118とにより構成される転写部に送られる。
【0050】
次に、このように転写部に送られたシートは、トナー像が転写され、この後、定着部114に搬送される。さらにこの後、定着部114により加熱及び加圧されることにより、シートSに未定着転写画像が永久定着される。そして、このように画像が定着されたシートは排出ローラ116により装置本体101から排紙トレイ119に排出される。
【0051】
図2は、シート給送装置103の構成を示す図である。なお、図2において、既述した図9と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0052】
シート収納庫11は、昇降可能なトレイ12と、後端規制板13と、先端規制板17と、シートSのシート給送方向と直交する幅方向の位置を規制する側端規制板14を備えている。なお、後端規制板13及び側端規制板14は、収納されるシートのサイズによって位置を任意に変えられるように構成されている。また、シートのシート搬送方向上流側の端部である後端に当接する後端規制板13には最上位シートSaのシート給送方向上流側端部である後端部の位置を規制する後端分離部18が上下方向に移動可能に設けられている。
【0053】
このシート収納庫11は、スライドレール15によりプリンタ本体101から引き出し可能となっており、シート収納庫11がプリンタ本体から引き出されたときにトレイ12が所定の位置まで下降してシートの補充や交換等を行うことができる。なお、トレイ12は、ステッピングモータ又はDCサーボモータにより昇降され、トレイ12の下降時には所定時間下降した後に所定時間停止するようなステップ動作を繰り返して下降させることが可能である。
【0054】
さらに、このシート収納庫11の上部にはシートを1枚ずつ分離して給送するためのエア給紙方式のシート給送機構(以下、エア給紙機構150という)が配置されている。このエア給紙機構150は、トレイ12に積載されたシートSを吸着搬送する吸着搬送部20と、トレイ上のシート束の上部部分を浮上させて捌くと共に、シートSを1枚ずつ分離するためのエア吹き付け部30とを備えている。
【0055】
ここで、吸着搬送部20は、ベルト駆動ローラ41に掛け渡されると共にシートSを吸着して図中右方向に給送する吸着搬送ベルト21と、シートSを吸着搬送ベルト21に吸着させるための負圧を発生する吸着ファン36を備えている。また、吸着搬送ベルト21の内側に配置され、吸着ベルト21に形成されている不図示の吸引穴を介してエアを吸引するための吸引ダクト22を備えている。
【0056】
さらに、吸着ファン36と吸引ダクト22との間に配置され、吸着搬送ベルト21の吸着動作をON/OFFする吸着シャッタ37を備えている。なお、本実施の形態において、吸着搬送ベルト21は、幅方向(シート搬送方向と直交する方向)に所定の間隔を持って複数配置されている。
【0057】
また、エア吹き付け部30は、収納されているシートSの上部前側にエアを吹き付けるための捌きノズル33及び分離ノズル34と、分離ファン31と、各ノズル33,34に分離ファン31からエアを送る分離ダクト32を備えている。なお、説明上、積載されているシートのシート給送方向下流端をシートの先端とし、上流端をシートの後端と以下称する。
【0058】
そして、分離ファン31により矢印C方向に吸い込まれたエアの一部は分離ダクト32を通過して捌きノズル33により矢印D方向に吹き付けられ、トレイ12上に積載されているシートSの上部のうち数枚を浮上させる。また、他のエアは分離ノズル34により矢印E方向に吹き付けられ、捌きノズル33により浮上したシートを1枚ずつ分離して吸着搬送ベルト21に吸着させる。
【0059】
なお、図3は、上記シート給送装置の制御ブロック図であり、制御部である制御装置200には、シートの後端面を検知する後端シート面センサ65、後述する紙面検知機構に設けられた第1シート面センサ54及び第2シート面センサ55が接続される。また、トレイ21を昇降させるトレイ昇降駆動モータM1、吸着搬送ベルト21を駆動する吸着搬送ベルト駆動モータM2、吸着シャッタ37を回転させる吸着シャッタソレノイドSLが接続されている。また、制御装置200には、シートを吸着搬送ベルト21に吸着させるための負圧を発生する吸着ファン36、シートにエアを吹き付ける分離ファン31が接続されている。
【0060】
次に、このように構成されたシート給送装置103(エア給紙機構150)のシート給送動作について説明する。
【0061】
まず、ユーザーがシート収納庫11を引き出してシートSをセットし、この後、図2に示すように所定の位置にシート収納庫11を格納すると、まず図3に示す制御装置200によりトレイ昇降駆動モータM1が駆動される。これにより、図4に示すようにトレイ12が矢印A方向に上昇し始める。やがて、吸着搬送ベルト21との距離がBとなる給送可能位置に達すると、制御装置200は、この位置でトレイ12を停止させる。この後、給送を開始するためのシート給送信号に備える。
【0062】
次に、シート給送信号を検知すると、制御装置200は分離ファン31を作動させ、図5の(a)に示すように矢印C方向へエアを吸い込む。このエアは分離ダクト32を介して捌きノズル33、分離ノズル34からそれぞれ矢印D及びE方向からシート束に吹き付けられる。これにより、シート束のうちの上位の数枚のシートが浮上する。また、制御装置200は吸着ファン36を作動させ、図中F方向にエアを吐き出す。この際、吸着シャッタ37はまだ閉じられている。
【0063】
次に、給送信号を検知してから所定時間が経過し、上位のシートSAの浮上が安定したところで、制御装置200はシャッタソレノイドSLを駆動し、図5の(b)に示すように吸着シャッタ37を矢印G方向に回転させる。これにより、吸着搬送ベルト21に設けられた吸引穴から矢印H方向へエアが吸引され、吸引力が発生する。そして、この吸着力と、分離ノズル34からの分離エアにより最上部のシートSaのみが吸着搬送ベルト21に吸着される。
【0064】
続いて、制御装置200は、図3に示す吸着搬送ベルト駆動モータM2を駆動し、ベルト駆動ローラ41を矢印J方向に回転させる。これにより、吸着搬送ベルト21に吸着された状態で最上部のシートSaが矢印K方向に給送され、この後、矢印L、M方向に回転する引き抜きローラ対42により画像形成部に向けてシートSaが送られる。
【0065】
図6は、トレイ12と後端規制部13の詳細を示す図であり、後端規制部13は、樹脂材料や板金で形成された後端分離部18を備えている。なお、この後端分離部18は、最上位シートの上面に自重で当接する突出部18D、突出部18Dの下面に設けられ、樹脂部材や板金よりも摩擦係数が大きい分離補助シート18Eを備えている。また、突出部18D及び分離補助シート18Eを保持すると共に、矢印G方向にスライド移動可能なスライダ18Fを備えている。
【0066】
そして、スライダ18Fをスライド移動可能に設けることにより、後端分離部18は最上位シートと一体的に昇降することができ、最上位シートのシート面の動きに確実に追従することができる。なお、捌きノズル33からエアをシートの前端から吹き付けたときに、エアはシートの間に吹き込まれて上位の複数のシートを浮上させる。このとき、図7に示すように、最上位のシートSaが浮上する高さは捌きノズル近傍の前端側が高く、捌きノズルから離れる後端側になるほど低くなる。
【0067】
また、図7に示すように、後端分離部18のスライダ18Fには後端シート面検知センサフラグ18Gが設けられており、後端シート面検知センサフラグ18Gも最上位シートの後端側の上面の動きに追従することができる。そして、後端規制部13に設けられた、本発明の第2紙面検知部としての後端シート面センサ56は、この後端シート面検知センサフラグ18Gの上下方向の位置によりON/OFFされる。
【0068】
即ち、後述するようにシートが順次給送されて浮上している最上位シートの上面位置が下降し、やがて基準位置よりも下側になると、これに伴って後端シート面検知センサフラグ18Gが下降することにより、後端シート面センサ56はOFFとなる。つまり、浮上しているシートが順次給送され、最上位シートの上面位置が基準位置よりも下側になると、後端シート面センサ56はOFFとなる。ここで、本実施の形態のように、浮上したシートの最上位シートのシート給送方向上流側部分を検知する後端シート面センサ56をシートサイズに応じて移動可能な後端規制部13に設けるようにすれば、シート搬送方向の長さの異なるシートに対応できる。
【0069】
なお、本実施の形態においては、トレイ12の上方には、図7に示すようシート面検知センサフラグ52、第1シート面センサ54、第2シート面センサ55及びセンサフラグ機構50を備えた紙面検知機構49が配置されている。ここで、この紙面検知機構49は、浮上したシートの最上位シートSaの上面を検知する、本発明の第1紙面検知部を構成する。そして、紙面検知機構49の第1及び第2シート面センサ54,55、後端シート面センサ56のON/OFFに基づき、既述した図3に示す制御装置200はトレイ12の昇降制御を行う。
【0070】
なお、既述した表1に記載されているように第1シート面センサ54がON、第2シート面センサ55がOFFの場合には、浮上している最上位シートの位置が、吸着搬送部20によるシートの吸着が可能な適正範囲よりも下側にあることを検知する。また、第1シート面センサ54がOFF、第2シート面センサ55がONの場合は、浮上している最上位シートの位置が、吸着搬送部20による吸着可能な適正範囲よりも上側にあることを検知する。そして、このような第1シート面センサ54と第2シート面センサ55との検知に基づいて、制御装置200は浮上されている最上位シートが給送可能な適正範囲内にあるかどうかを判断することができる。これにより、最上位のシートが適正範囲内にある場合にシートの給送を行うことが可能となる。
【0071】
次に、本実施の形態に係るシート給送時のトレイ12の昇降制御について図8に示すフローチャートを用いて説明する。
【0072】
制御装置200は、給送開始信号を受けると、給送準備を開始し、まず分離ファン31の回転を開始し、エアの吹き付けを開始してシートを浮上させる。この後、第1シート面センサ54及び第2シート面センサ55からON/OFFに基づき、トレイ12を昇降させる昇降部を構成するトレイ昇降駆動モータM1を駆動してトレイ12を昇降させる。
【0073】
そして、この後、第1及び第2シート面センサ54,55がONとならない場合は(S20のN)、トレイ12を昇降させ(S21)、第1及び第2シート面センサ54,55がONとなると(S20のY)、シートの給送を開始する(S22)。
【0074】
シートの給送が開始されると、最上位シートSaは吸着搬送ベルト21に吸着された状態で給送される。この後、最上位シートSaが図7に示すL2以上給送され、後端シート面センサ56による検知領域よりも下流に搬送されると、分離補助シート18Eの下面が次のシートSbの後端側上面に当接する。このとき、浮上されている次のシートSbの後端側の高さに応じて後端分離部18が移動する。
【0075】
なお、最上位シートSaが給送されて、次のシートSbの上面位置が下がると、後端シート面検知センサフラグ18Gも下降する。そして、シートが給送されて最上位シートの後端側の上面が、設定されている基準位置よりも下側になると、後端シート面センサ56から、浮上したシートの最上位シートが基準位置よりも下側にあることを示す検知信号であるOFF信号が出力される。なお、このようにOFF信号が出力されるのは、最上位シートSaが後端分離部18を抜けたとき以降である。
【0076】
ここで、後端シート面センサ56からOFF信号が出力されると、制御装置200はトレイ12を上昇させると共に、後端シート面センサ56の検知に基づいて、最上位シートが基準位置よりも上方にあるかどうかを判断する。すなわち、このようにトレイ12を上昇させた後、後端シート面センサ56がONとなるかを判断し(S23)、後端シート面センサ56がONとならない場合(S23のN)、「低すぎる」と判断し、ON信号が得られるまでトレイ12を上昇させる(S24)。
【0077】
なお、既述したように、浮上している最上位シートの先端側と後端側では浮上高さが先端側のほうが高くなっている。このため、第1シート面センサ54と第2シート面センサ55との検知に基づいて判断される最上位シートが給送可能な適正範囲と、後端シート面センサ56の検知に基づいて判断される、最上位シートの基準位置とでは、高さ方向で異なる位置となる。つまり、本実施の形態では基準位置が適正範囲よりも低い位置で設定されている。
【0078】
このためシートが給送されて最上位シートの高さが低くなると、この状態を後端シート面センサ56が紙面検知機構49によりも先に検知する。すなわち、最上位シートが吸着搬送ベルト21に吸着された状態では、吸着されているシートに押されてシート面検知部材61が上方に退避して穴51H1,51H2に格納されてしまう。この場合、吸着搬送されているシートの後端が格納されたシート面検知部材61よりも下流まで搬送され、シート面検知部材61が下降し、最上位シートに当接するまで、最上位シートの高さを検知ができない。
【0079】
これに対して、後端シート面センサ56は最上位シートが後端分離部18よりも下流まで搬送されたときに次のシートの高さの検知が可能であるため、紙面検知機構49によりも先に次のシートの高さを検知することができる。なお、本実施の形態では、シート面検知部材61が上方に退避して穴51H1,51H2に格納されている状態では、第1シート面センサ54及び第2シート面センサ55からの検知信号は制御装置200が受け入れないようになっている。
【0080】
なお、既述したように、後端シート面センサ56がOFFになった場合には、後端シート面センサ56がONになるまでトレイ12を上昇させる。ここで、トレイ12の上昇途中で、吸着搬送ベルト21によって吸着搬送されている最上位シートの後端が格納されたシート面検知部材61よりも下流まで搬送されることにより、シート面検知部材61が下降し、最上位シートに当接する場合がある。
【0081】
この場合、紙面検知機構49により最上位シートの高さが検知可能になる。しかし、次のシートの前側の最上位の高さが紙面検知機構49によって判明した直後は、シートが適正範囲外にある可能性がある。このため、この場合でも、紙面検知機構49の検知にかかわらず、後端シート面センサ56がONになるまでトレイ12を上昇させる。そして、このように紙面検知機構49の検知にかかわらず、後端シート面センサ56がONになるまでトレイ12を上昇させることにより最上位シートを適正範囲に予め移動させることができる。
【0082】
このように紙面検知機構49の検知にかかわらず、後端シート面センサ56の信号に基づいてトレイ12の上昇を制御するようにすれば、トレイ12を早いタイミングで上昇させることができ、シート給送装置としての生産性を低下させることはほとんどなくなる。なお、後端シート面センサ56からの信号に基づいてトレイ12の上昇を開始してトレイ12を上昇させる時、シートの厚さ等の情報に基づいて予め設定されている基準位置に基づいて上昇させるように制御する。すなわち、シートの浮上状態は、シートの坪量、サイズ等のシートの種類により異なるため、基準位置もシートの種類に応じて最適な位置に設定してある。
【0083】
また、先端側の紙面を検知する紙面検知機構49では、シートを吸着搬送ベルト21が吸着搬送していない状態で、最上位シートが適正範囲で浮上しているかどうかを検知する。
【0084】
このため、後端シート面センサ56がONとなった場合には(S23のY)、次に第2シート面センサ55の信号により、最上位シートの位置が適正範囲にあるかを判断する。そして、第2シート面センサ55がONでない場合には(S25のN)、第2シート面センサ55がONとなるまで(S25のY)、トレイ12を上昇させる(S26)。
【0085】
なお、後端シート面センサ56のON信号が得られているにもかかわらず、先端側の紙面が適正範囲を外れている場合、すなわち第2シート面センサ55がOFFの場合は(S25のN)、トレイ12を上昇させる(S26)。しかし、この場合でも、トレイ12(最上位シート)は、すでに後端シート面センサ56のON信号が得られる高さまでは上昇しているため、生産性に影響を及ぼすほどの時間はかからない。
【0086】
次に、第2シート面センサ55がONとなると(S25のY)、トレイ12を停止させ(S27)、この後、シートの給送動作を開始する(S28)。なお、このような制御をトレイ12にシートがN枚積載(支持)された場合には、N枚目のシートが給送されるまで繰り返し、N枚目のシートが給送されると(S29のY)、給送動作を終了する。
【0087】
このように、本実施の形態においては、シートの吸着搬送の途中で、後端シート面センサ56が浮上したシートの最上位シートが基準位置よりも下側にあることを検知した場合には、トレイ12を上昇させるようにしている。これにより、従来、紙面検知機構49でしか紙面検知ができなかった構成に対して、最上位シートの吸着搬送中に次のシートの高さを検知してトレイ12の上昇制御を行うことができる。このため、次のシートの高さを適正位置にいち早く移動させることができ、生産性を低下させることなくシートを給送することができる。
【0088】
なお、このように構成した場合、後端シート面センサ56は、少なくとも、シートが順次給送されることにより、最上位シートが「低すぎる」という状態となったことを検知できれば良いので、紙面検知機構49よりも簡略化できる。この結果、後端シート面センサ56を後端規制部内に設けやすくなる。
【0089】
また、最上位シートを適正範囲内に位置させるため、後端シート面センサ56が高さ不足信号を出力する検知位置を切り換え可能に複数設け、後端部のシート面高さの制御を複数位置で行えるようにしても良い。これにより、シートの重さやサイズによって先端側と後端側のシート面の高さの差が異なる場合に対応でき、より安定した浮上状態を達成し、シートの重送やジャムの発生をより確実に防止することが可能となる。
【0090】
ところで、吸着搬送ベルトに最上位シートを吸着する前と吸着した後、または最上位シートの給送が始まり、後端分離部18が次のシート表面に接触するまでのほんのわずかな間等に、捌きエアや分離エアの吹き付け状態が変わることがある。そして、このように吹き付け状態が変わると、先端側や後端側のシートの浮上状態が乱れ、シートとシートの分離が不十分となり、重送やジャムが発生することがある。また、シートの特性によっても、同様に浮上状態が乱れ、同様の問題が発生することがある。
【0091】
図9は、給送中のシートの浮上状態を示す図であり、図9の(a)は、給送中のシートの好ましい浮上状態を、図9の(b)は、好ましくない浮上状態を示している。
【0092】
ここで、シートの好ましい浮上状態では、図9の(a)に示すように、後端シート面センサ56はONしている状態で不図示のトレイは停止しているが、その際の、吸着搬送ベルト21と最上位シートSaの先端側の距離はZ1、後端側の距離はZ2である。浮上しているシート束は、ほぼ均等に浮上しており、分離が良好に行われている。また吸着搬送ベルト21と最上位シートSaとの距離Z1が確保されているため、最上位シートSaを吸着した後にその直下のシートSbとの隙間に分離エアが確実に入り、重送が防止できる。
【0093】
これに対し、好ましくない浮上状態では、図9の(b)に示すように、最上位シートSaの後端の位置は(a)の位置と変わらず、吸着搬送ベルト21と最上位シートSaの後端側の距離はZ2であるにもかかわらず、先端側の距離はZ3(<Z1)になっている。さらに、最上位シートSaが直下のシートSbも含めて束状に浮上している。このような状態においてはシート同士の分離が不十分で重送が発生しやすい。なお、このような状態のとき、仮に均等に浮上できたとしても先端側の距離Z3が小さいため分離エアがうまく入らず重送の発生頻度が高まる可能性がある。
【0094】
なお、このような好ましくない浮上状態は、例えばシートの特性によってシート自体がたわみにくい厚いシートの場合に生じる。すなわち、厚いシートの場合、シート自体がたわみにくいため、エアの吹き付けにより浮上した場合、図9に示すほどは、Z1もしくはZ3とZ2との段差ができにくくなる。この結果、後端側にもシートとシートの間に微小な空気層ができる。一方で先端側から離れているために浮上を維持する捌きエアが入りにくいため、微小な上下動を繰り返す可能性がある。
【0095】
このような状態になると、後端シート面センサ56が頻繁にOFF/ONを繰り返すようになり、先端側が良好な浮上状態にもかかわらず、後端側のシート面の検出結果によっては必要以上にトレイが上昇してしまう恐れがある。
【0096】
また、例えばシートが1枚の厚みが約0.1mm以下の薄いシートの場合、後端シート面センサ56を構成する部品の寸法誤差の積み重ねによって1mm程度のずれがあったとすると、10枚以上のシートが束状に浮上してしまう。このような部品の寸法誤差要因を考慮することは非常に重要である。
【0097】
さらに、部品の寸法誤差を抑えたとしても、シートの特性から薄いシートの場合、もともと捌けやすいので、シートの給送中に想定以上にシートが捌けて、後端シート面センサ56が不定期にOFF/ONを繰り返すような浮上状態になることがある。この場合でも、厚いシートと同様に不必要なトレイの上昇が行われるが、その影響は厚いシートの場合よりも大きく、束状に浮上するシートの量が大幅に増え重送やジャムが発生してしまう。
【0098】
このため、本実施の形態においては、シートの給送、言い換えれば紙面確認を開始してから制限時間が経過した場合は、トレイ12を停止させるようにしている。ここで、図10は、このようにシート給送開始してから制限時間が経過した場合に、トレイ12を停止させる場合の、シートの後端側のシート面の位置の変化と後端シート面センサ56の信号について示している。
【0099】
なお、図10の(a)は、従来の制御の場合、図10の(b)は本実施の形態の制御の場合を示している。従来は、図10の(a)に示すように、給送動作が開始され、1枚目から2枚目、3枚目に移行するとその分シート面は徐々に低下する。そして、例えば、3枚目の給送が終わり、後端分離部が4枚目のシート上面に接触した時点でシート面が基準高さ(基準位置)を下回ると、後端シート面センサ56からの信号はONからOFFに変化する。
【0100】
このように信号が変化すると、4枚目のシートを1枚目のシートと同じ高さとするようにトレイ12が上昇を始める。しかし、このときシートは浮上した状態にあるのでトレイ12が上昇を始めても、シート面がすぐには上昇するわけではなく、トレイ12を上昇させることにより、まず先端側の浮上状態が変化する。
【0101】
次に、浮上状態の変化により捌きエアや分離エアの吹き付け状態が変わった後、ある程度の時間的なずれを経て紙面が上昇を始める。このため、この後、後端シート面センサ56からの信号がOFFからONに変化し、これによりトレイが停止しても、しばらくは最上位シートは上昇する。
【0102】
このような最上位シートの上昇により、シートの後端部が後端シート面センサ56を通過した後、シートの浮上状態の乱れが生じる場合がある。この浮上状態の乱れは、瞬時に解消され、シート面は基準高さよりも高い状態に戻っているため、本来ならトレイ12を上昇させる必要はないが、浮上状態が乱れると、後端シート面センサ56からの信号はONからOFFに変化してしまう。そして、このように後端シート面センサ56からの信号が変化すると、その変化した時間分だけトレイ12が上昇してしまう。
【0103】
例えば、図10の(a)に示すように、トレイ12の上昇により1枚目のシートと同じ高さとなった4枚目が給送され、5枚目のシートの給送に移行した際、2度浮上状態の乱れが生じたとすると、後端シート面センサ56からの信号の変化が2回発生する。そして、このような信号変化が2回発生すると、本来のシート面高さとのずれは図中R2となり、給送を始めた高さよりも図中R1だけ高くなってしまう。このようにシート面の高さが高くなると、シートの重送等が発生する場合がある。なお、このような浮上の乱れはシートの種類や状態によって予期せず発生する。
【0104】
これに対し、本実施の形態においては、4枚目のシートの給送を行う際、後端シート面センサ56の信号がONに変化すると、4枚目のシートが1枚目のシートよりも低い、少なくとも4枚目のシートの吸着搬送が可能となる位置でトレイ12を停止させる。あるいは、後端シート面センサ56からの信号がOFFになってトレイ12が上昇した後、後端シート面センサ56がONにならなくても、制限時間が経過すると、トレイ12を停止させるようにしている。なお、この制限時間は、例えば4枚目のシートを、1枚目のシートよりも低い、図10の(b)に示す少なくとも4枚目のシートの吸着搬送が可能となる位置まで上昇させる時間である。
【0105】
このように、3枚目から4枚目に移行する段階で、少なくとも4枚目のシートの吸着搬送が可能となる位置でトレイ12を停止させ、以後、4枚目のシートの上昇量を制限することにより、浮上状態の乱れによる影響を少なくすることができる。例えば、図10の(b)に示すように、5枚目に移行した後、図10の(a)と同様に2度浮上状態が乱れた場合、1度目は図10の(a)と同様に上昇する。
【0106】
しかし、例えば後端シート面センサ56からの信号がOFFからONに変化すると、トレイ12を停止させ、シート面の上昇量を制限するようにすることにより、本来のシート面高さとのずれは、図中R4で抑えられている。また、2度目については1度目で上昇量の上限に到達しているため、トレイ12は上昇しない。この結果、給送を始めた高さよりもむしろ図中R3だけ低い位置で抑えられている。
【0107】
このように、本実施の形態においては、不必要なトレイ12の上昇を防ぐために、図11に示すように、トレイ12が上昇している途中で後端シート面センサ56がOFFとなると、この後、上昇するトレイ12の上昇量を制限するようにしている。
【0108】
なお、この上昇量の制限は1枚のシート毎に行われる。つまり、制御の対象が次のシートに移ったら上昇量の制限は一旦解除される。これにより、シート毎に最適な制御が実施可能となる。ここで、1枚の定義は例えば、あるシートと次のシートを給送するために吸着搬送ベルトを回し始める時間的間隔と定義しても良い。また、シートを給送することで得られる吸着エリアに一番近い第1及び第2シート面センサ54,55からのON信号の時間的間隔、吸着シャッタ37を回転させるため吸着シャッタソレノイドSLを動作させる時間的間隔と定義しても良い。
【0109】
次に、このようなトレイ12の昇降制御について図12に示すフローチャートを用いて説明する。
【0110】
制御装置200は、給送開始信号を受けると、給送準備を開始し、まず分離ファン31の回転を開始し、エアの吹き付けを開始してシートを浮上させる。この後、第1シート面31のN)、トレイ12を昇降させ(S32)、第1及び第2シート面センサ54,55がONとなると(S31のY)、シートの給送を開始する(S33)。
【0111】
次に、シートの給送が開始されると、最上位シートSaは吸着搬送ベルト21に吸着された状態で給送される。この後、シートSaが図7に示すL2以上給送されると、後端分離部18が落下し、分離補助シート18Eの下面が次のシートSbの表面に当接する。
【0112】
ここで、最上位シートが給送されて次のシートの上面位置が下がった場合には、後端シート面検知センサフラグ18Gも下降する。そして、シート後端側の下降が続いて後端シート面センサ56が後端シート面検知センサフラグ18Gを検知しなくなると、後端シート面センサ56がOFFとなり、後端シート面センサ56がOFFとなると、トレイ12を上昇させる。
【0113】
次に、このようにトレイ12を上昇させた後、後端シート面センサ56がONしたかを判断し、後端シート面センサ56がOFFの場合には「低すぎる」と判断し、トレイ12を上昇させる。
【0114】
次に、後端シート面センサ56がON、もしくはシート給送開始から制限時間が経過したかを判断する(S34)。ここで、後端シート面センサ56がONとならない、もしくはシート給送開始から制限時間が経過しない場合には(S34のN)、トレイ12の上昇を継続させ、トレイ12を引き続き上昇させる(S35)。
【0115】
この後、後端シート面センサ56がONとなる、もしくはシート給送開始から制限時間が経過すると(S34のY)、トレイ12を停止させる(S36)。ここで、このタイミングでトレイ12を停止させることにより、シートは、例えば図10の(b)に示すような1枚目のシートの吸着搬送が可能となる位置まで上昇して停止する。これにより、シートの給送が可能となる。また、このように上昇するトレイ12を停止させ、トレイ12の上昇量を制限することにより、以後、後端シート面センサ56が頻繁にOFF/ONを繰り返すようになったとしても、不必要なトレイ12の上昇を行わないようにすることができる。
【0116】
なお、先端側の紙面を検知する紙面検知機構49では、シートを吸着搬送ベルト21が吸着搬送していない状態で、最上位シートが適正範囲内で浮上しているかどうかを検知する。
【0117】
このため、後端シート面センサ56がONとなった場合には、次に第2シート面センサ55の信号により、最上位シートの位置が適正範囲にあるかを判断する。即ち、第2シート面センサ55がONでない場合には(S37のN)、第2シート面センサ55がONとなるまで(S37のY)、トレイ12を上昇させる(S38)。
【0118】
また、もし後端シート面センサ56のON信号が得られているにもかかわらず、先端側の紙面が適正範囲を外れている場合、すなわち第2シート面センサ55がOFFの場合は(S37のN)、トレイ12を上昇させる(S38)。しかし、この場合でも、トレイ12(最上位シート)は、すでに後端シート面センサ56のON信号が得られる高さまでは上昇しているため、生産性に影響を及ぼすほどの時間はかからない。
【0119】
次に、第2シート面センサ55がONとなると(S37のY)、トレイ12を停止させ(S39)、この後、シートの給送を開始する(S40)。なお、このような制御をトレイ12にシートがN枚積載(支持)された場合には、N枚目のシートが給送されるまで繰り返し、N枚目のシートが給送されると(S41のY)、給送動作を終了する。
【0120】
このように、本実施の形態においては、不必要なトレイ12の上昇を防ぐため、図11に示すように、後端シート面センサ56がOFFとなると、この後、上昇するトレイ12を停止させ、トレイ12の上昇量を制限するようにしている。そして、このように上昇量を制限することにより、後端シート面センサ56が頻繁にOFF/ONを繰り返すようになったとしても不必要なトレイ12の上昇は行われず、良好な浮上状態を保つことができる。
【0121】
なお、この制限時間は、例えばタイマー等により測定されるものであって、シートの種類や坪量、サイズ等によって、関連する部品の寸法誤差要因も考慮した最適な浮上状態を達成できる値に設定し、切り換え可能であることが望ましい。本実施の形態において、制限時間は薄いシートの場合は40ms、厚いシートの場合は100msとしている。
【0122】
また、これまでの説明においては、上昇量をタイマー等による計時(時間)に基づいて制限したが、本発明は、これに限らず、例えばトレイ昇降駆動モータM1の回転数(パルス数)や、回転角度をモニターすることで決定しても良い。さらに、上昇量の制限は生産性が低下せず、良好な浮上状態が得られるように実施されるべきであり、両立が難しければシートの種類や坪量、サイズ等によって細かく設定すれば良い。
【0123】
さらに、本発明にかかるシート給送装置103は、画像形成部102と、画像形成部102で画像が形成されたシートを処理するためのシート処理装置と、を備えた画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0124】
11 シート収納庫
12 トレイ
20 吸着搬送部
21 吸着搬送ベルト
30 エア吹き付け部
33 捌きノズル
34 分離ノズル
36 吸着ファン
49 紙面検知機構
54 第1シート面センサ
55 第2シート面センサ
56 後端シート面センサ
100 プリンタ
101 プリンタ本体
102 画像形成部
103 シート給送装置
150 エア給紙機構
200 制御装置
M1 トレイ昇降駆動モータ
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを支持する昇降可能なトレイと、前記トレイに支持されたシートの側端にエアを吹き付けてシートを浮上させるエア吹き付け部と、浮上させたシートを吸着して給送する吸着搬送部とを備え、エアの吹き付けで浮上した最上位のシートを前記吸着搬送部により吸着して搬送を行うシート給送装置において、
前記トレイの上方に配置され、浮上したシートの上面を検知する第1紙面検知部と、
前記第1紙面検知部よりもシート給送方向上流側に配置され、浮上したシートの上面を検知する第2紙面検知部と、
前記トレイを昇降させる昇降部と、
前記第1紙面検知部及び前記第2紙面検知部の検知に基づいて前記昇降部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記吸着搬送部により吸着搬送されるシートの後端が前記第2紙面検知部による検知領域よりも下流に搬送されたときに、前記第2紙面検知部から、浮上しているシートの上面がシートの給送が可能な高さを判断する基準位置よりも下側にあることを示す信号が出力された場合には、前記トレイを上昇させるように前記昇降部を制御することを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記トレイに積載されたシートのシート搬送方向上流側に当接し、シートの位置を規制する規制部を備え、
前記第2紙面検知部を前記規制部に設けたことを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記第2紙面検知部は、前記規制部に、前記トレイに積載されたシートに上方から当接して浮上したシートと一体的に昇降するフラグと、
前記フラグの位置に応じて検知信号を出力するセンサと、を備えることを特徴とする請求項2記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記第2紙面検知部による浮上したシートの上面を検知して検知信号を出力する検知位置を、切り換え可能に複数設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記第2紙面検知部からの信号に基づいて前記トレイの上昇を開始して前記トレイを上昇させる時、シートの情報に基づいて予め設定されている上昇量に基づいて上昇させるように前記昇降部を制御することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記第2紙面検知部からの信号に基づいて前記トレイの上昇を開始し、前記予め設定されている上昇量に基づいて上昇している途中で、前記第2紙面検知部が浮上したシートの最上位シートが前記適正範囲に達したことを示す信号が出力された場合には、前記トレイを停止させるように前記昇降部を制御することを特徴とする請求項5記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記第2紙面検知部から出力された信号に基づき、浮上したシートの最上位シートが前記基準位置に達するまで前記トレイを上昇させた後、停止させ、次に吸着搬送されるシートが前記第2紙面検知部を通過するまでは前記第2紙面検知部から信号が出力されても前記トレイを上昇させないように前記昇降部を制御することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項8】
前記第2紙面検知部からの信号に基づいて前記トレイの上昇を開始し、前記第2紙面検知部が浮上したシートの最上位シートが前記適正範囲に達したことを示す信号が出力されるまで前記トレイの上昇を継続させるように前記昇降部を制御することを特徴とする請求項7記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記第2紙面検知部からの信号に基づいて前記トレイの上昇を開始し、前記第2紙面検知部が浮上したシートの最上位シートが前記適正範囲に達する量だけ前記トレイを上昇させるように前記昇降部を制御することを特徴とする請求項7記載のシート給送装置。
【請求項10】
前記第1紙面検知部は、最上位シートの位置が前記適正範囲よりも下側にあることを検知する第1シート面センサと、前記適正範囲よりも上側にあることを検知する第2シート面センサと、を備え、
前記第1シート面センサ及び第2シート面センサからの信号に基づいて最上位シートが適正範囲内に位置するように前記昇降部を制御することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項11】
前記トレイを浮上したシートの最上位シートが前記適正範囲に達するまで上昇させた後、前記第1紙面検知部の検知に基づいてシートの上面が低すぎると判断した場合は、停止している前記トレイを上昇させて最上位シートが適正範囲内に位置するように前記昇降部を制御することを特徴とする請求項10記載のシート給送装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置から給送されるシートに画像を形成する画像形成部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−195588(P2010−195588A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19021(P2010−19021)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】