説明

ジチオケトピロロピロール系ポリマー

【課題】高いフィールド効果移動性、空気安定性、及び良好な溶解性を示す半導体ポリマーを提供すること。
【解決手段】ピロロ[3,4−C]ピロールー2,5−ジチオンを必須単位とし、該化合物の3−位及び6−位を結合手として繰り返し単位を構成し、エテニル、エチニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール等を共重合成分として含むポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は薄膜トランジスタ(TFT)および/または半導体層を含む他の電子装置に関する。半導体層は本明細書に説明される半導体組成物から形成される。組成物が装置の半導体層に用いられるとき、高い移動性および優れた安定を達成することができる。
【背景技術】
【0002】
TFTは、一般に基板上の導電性ゲート電極と、ソースおよびドレイン電極と、ゲート電極をソースとドレイン電極から分離する電気絶縁性のゲート誘電層と、ゲート誘電層に接触してソースとドレイン電極を短絡する半導体層とからなる。それらの性能はフィールド効果移動性およびトランジスタ全体の電流オン/オフ比で決定することができる。高い移動性および高いオン/オフ比が望ましい。
【0003】
有機薄膜トランジスタ(OTFT)は、無線周波数識別(RFID)タグ、および看板、リーダー、および液晶ディスプレイなど、高速スイッチングおよび/または高い密度が必須ではないディスプレイ用バックプレーンスイッチング回路などに用いることができる。また、それらは物理的に小型、軽量、および可撓性であるなどの魅力的な機械的特性を有する。
【0004】
有機薄膜トランジスタは、スピンコーティング、溶液キャスティング、ディップコーティング、ステンシル/スクリーン印刷、フレクソグラフィ、グラビア、オフセット印刷、インクジェット印刷、マイクロコンタクト印刷等など、低コストの溶液系パターニングおよび堆積技術を用いて製造することができる。したがって、薄膜トランジスタ回路の製造にこれらの溶液系プロセスを用いるには、溶液加工可能な材料が必要である。しかし、溶液加工によって形成される有機またはポリマー半導体は、溶解性、空気感受性が制限され、特にフィールド効果移動性が低い。この性能の低さは小さな分子のフィルム形成特性の低さを招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高いフィールド効果移動性、空気安定性、および良好な溶解性を示す半導体ポリマーの開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願はさまざまな実施形態において、式(I)の半導体材料を開示する。
【化1】

式中、RおよびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールであり、各ArおよびArは独立にエテニル、エチニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、pおよびqはArおよびArユニットの数であり、独立に1〜約25であり、nは繰り返しユニットの数であり、2〜約5,000である。
【0007】
実施形態において、少なくとも1つのArまたはArユニットはチエノ[3,2−b]チオフェンである。
【化2】

【0008】
各ArおよびArユニットは独立に、
【化3】

【化4】

からなる群およびその組み合わせから選択することができ、式中、R’は独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、または−CNから選択され、各炭素原子は、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、−CN、または−NOで周辺を置換することができる。
【0009】
およびRは同じとすることができる。いくつかの実施形態において、RおよびRはアルキルである。
【0010】
式(II)のポリマー、
【化5】

も開示され、式中、RおよびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、ヘテロアリール、置換アリール、または置換ヘテロアリールであり、XおよびXは独立に、S、Se、OまたはNR”であり、各R”は独立に水素またはアルキルとすることができ、各ZおよびZは独立にアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、−CN、または−NOであり、Mは共役部であり、a、c、およびdは独立に少なくとも1であり、bは0〜約20であり、eおよびfは独立に0〜2であり、nは2〜約5,000である。
【0011】
ポリマーは式(1)〜(20)の1つの構造を有することができる。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

式中、RおよびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールであり、R、R、R、およびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロゲンアルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、−CN、または−NOであり、nは2〜約5,000である。
【0012】
さらに、式(I)の半導体ポリマーを含む半導体組成物が開示される。
【化26】

式中、RおよびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールであり、各ArおよびArは独立にエテニル、エチニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、pおよびqはArおよびArユニットの数であり、独立に1〜約25であり、nは繰り返しユニットの数であり2〜約5,000である。
【0013】
さらに、半導体層を含む電子装置が開示され、半導体層は式(I)のポリマーを含む。
【化27】

式中、RおよびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールであり、各ArおよびArは独立にエテニル、エチニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、pおよびqはArおよびArユニットの数であり、独立に1〜約25であり、nは繰り返しユニットの数であり2〜約5,000である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本開示によるTFTの第1実施形態の図である。
【図2】図2は本開示によるTFTの第2実施形態の図である。
【図3】図3は本開示によるTFTの第3実施形態の図である。
【図4】図4は本開示によるTFTの第4実施形態の図である。
【図5】図5は本開示によるポリマー層の例示的形成方法のフロー図である。
【図6】図6は式(I)のポリマーの例示的合成を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照することによって、本開示に論じられる成分、プロセス、および装置のさらに完全な理解を得ることができる。これらの図は単に便宜および本開示を説明するための容易さに基づく概要の表現であり、したがって、装置または成分の相対サイズ、および寸法を示すものではなく、および/または例示的実施形態の範囲を定義または制限するものではない。
【0016】
明解さのために、以下の説明において特定の用語が用いられるが、これらの用語は図面に示すために選択された実施形態の特定の構造を示すためであり、本開示の範囲を定義または制限するものではない。図面および以下の説明において、同じ符号は同じ機能の成分を指す。
【0017】
量に関して用いられる修飾句「約(about)」は記載された値を含み、文脈によって指示される意味を有する(例えば、特定の量の測定に伴う少なくとも誤差程度を含む)。範囲の文脈で用いられるとき、修飾句「約(about)」は2つの端末点の絶対値で定義される範囲を表すものと考えられる。例えば、「約2から約10」の範囲は「2から10」の範囲を表す。
【0018】
本明細書において、用語「含む(comprising)」は指名された成分の存在を要求し、他の成分の存在も許すものとして用いられる。用語「含む(comprising)」は用語「からなる(consisting of)」を含むものと解釈すべきであり、これは、指名成分の製造から得られるあらゆる不純物と一緒に、指名成分の存在だけを許す。
【0019】
本開示は本明細書に開示される半導体ポリマーに関する。半導体ポリマーは良好な溶解性を示す。半導体ポリマーを含む組成物も開示される。組成物から形成される半導体層は空気中で非常に安定であり高い移動性を有する。これらの半導体組成物は薄膜トランジスタ(TFT)などの電子装置の層の形成に有用である。
【0020】
図1は本開示による底ゲート底コンタクトTFT構成を示す。TFT10はゲート電極18とゲート誘電体層14に接触する基板16を含む。ゲート電極18は基板16の上に描かれているが、ゲート電極は基板中に埋設することもできる。ゲート誘電体層14がゲート電極18をソース電極20、ドレイン電極22、および半導体層12から分離することは重要である。半導体層12はソース電極20とドレイン電極22の上およびその間を走る。半導体はソース電極20とドレイン電極22の間にチャンネル長さを有する。
【0021】
図2は本開示による他の底ゲート上コンタクトTFT構成を示す。TFT30はゲート電極38およびゲート誘電体層34に接触する基板36を含む。半導体層32はゲート誘電体層34の上に配置され、それをソース電極40およびドレイン電極42から分離する。
【0022】
図3は本開示による底ゲート底コンタクトTFT構成を示す。TFT50はゲート電極としても働きゲート誘電体層54と接触する基板56を含む。ソース電極60、ドレイン電極62、および半導体層52はゲート誘電体層54の上に配置される。
【0023】
図4は本開示による上ゲート上コンタクトTFT構成を示す。TFT70はソース電極80、ドレイン電極82、および半導体層72に接触する基板76を含む。半導体層72はソース電極80とドレイン電極82の上およびその間を走る。ゲート誘電体層74は半導体層72の上にある。ゲート電極78はゲート誘電体層74の上にあり、半導体層72と接触しない。
【0024】
半導体ポリマーは式(I)の構造を有する。
【化28】

式中、RおよびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールであり、各ArおよびArは独立にエテニル、エチニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、pおよびqはArおよびArユニットの数であり、独立に1〜約25であり、nは繰り返しユニットの数であり2〜約5,000である。
【0025】
さらに特定の実施形態において、pおよびqは独立に1〜3である。他の実施形態において、p+qの和は2〜4である。いくつかの実施形態において、RおよびRは同じである。特定の実施形態において、RおよびRはアルキルである。
【0026】
用語「アルキル」は完全に飽和した炭素と水素原子のみからなるラジカルを指す。アルキルラジカルは線形、分岐、または環状とすることができる。アルキルラジカルは一価または二価とすることができ、すなわち1つまたは2つの異なる非水素原子と結合することができる。
【0027】
用語「エテニル」は−CH=CH−ラジカルを指す。
【0028】
用語「エチニル」は−C≡C−を指す。
【0029】
用語「アリール」は、完全に炭素原子と水素原子のみからなる芳香族ラジカルを指す。アリールが炭素原子の数の範囲に関して記述されるとき、置換芳香族ラジカルを含むものと解釈すべきではない。例えば、句「6〜10の炭素原子を含むアリール」はフェニル基(6炭素原子)またはナフチル基(10炭素原子)のみを指すものと解釈すべきであり、メチルフェニル基(7炭素原子)を含むものと解釈すべきではない。アリールラジカルは一価または二価とすることができる。
【0030】
用語「置換された」は、指名されたラジカル上の少なくとも1つの水素原子がハロゲン、−CN、−NO、−COOH、およびSOHなどの他の官能基によって置換されることを指す。例示的置換アルキル基はパーハロアルキル基であり、アルキル基中の1つ以上の水素原子がフッ素、塩素、ヨウ素、臭素などのハロゲン原子で置き換えられている。また、前述の官能基に加えて、アルキル基はアリールまたはヘテロアリール基で置換することができる。また、アリールまたはヘテロアリール基はアルキルまたはアルコキシで置換することができる。例示的置換アリール基は、メチルフェニルおよびメトキシフェニルを含む。例示的置換ヘテロアリール基は3−メチルチエニルを含む。
【0031】
一般に、アルキル基は独立に1〜30の炭素原子を含む。同様に、アリール基は独立に6〜30の炭素原子を含む。ヘテロアリール基は2〜30の炭素原子を含む。
【0032】
他の特定の例示的アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびその異性体を含む。
【0033】
他の特定の例示的アリールおよび置換アリール基は、フェニル、ポリフェニル、およびナフチルを含み、p−メトキシフェニル、m−メトキシフェニル、o−メトキシフェニル、エトキシフェニル、p−tert−ブトキシフェニル、m−tert−ブトキシフェニルなどのアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、エチルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−ブチルフェニル、およびジメチルフェニルなどのアルキルフェニル基、メチルナフチル、エチルナフチルなどのアルキルナフチル基、メトキシナフチル、エトキシナフチルなどのアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル、ジエチルナフチルなどのジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル、ジエトキシナフチルなどのジアルコキシナフチル基、例示的M基としてリストされた他のアリール基、およびその組み合わせを含む。
【0034】
他の例示的ヘテロアリール基は、オキサゾール、イソキサゾール、ピリジン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール、フラザン、チアジアゾール、オキサジアゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、イソインドール、インダゾール、クロメン、キノリン、イソキノリン、チノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プリン、プテリジン、チエノフラン、イミダゾチアゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンズチアジアゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾピリジン、ピロロピリジン、ピロロピリミジン、ピリドピリミジン、およびその組み合わせを含む。
【0035】
各ArおよびArユニットは独立に以下の構造およびその組み合わせからなる群から選択することができ、
【化29】

【化30】

式中、R’は独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、または−CNから選択され、各炭素原子は周辺をアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、−CN、または−NOで置換することができる。
【0036】
用語「アルコキシ」は、酸素原子に付着したアルキルラジカル、例えば−O−C2n+1を指す。酸素原子は化合物の核に付着する。
【0037】
用語「アルキルチオ」は、硫黄原子に付着したアルキルラジカル、例えば、−S−C2n+1を指す。硫黄原子は化合物の核に付着する。
【0038】
用語「トリアルキルシリル」は、シリコン原子に付着した3つのアルキルラジカルを有する四価のシリコン原子からなるラジカル、すなわち、−Si(R)を指す。3つのアルキルラジカルは同じか、または異なることができる。シリコン原子は化合物の核に付着する。
【0039】
特定の実施形態において、ArおよびArユニットの1つはチエノ[3,2−b]チオフェンユニットである。また、チオフェンユニットは式(I)のポリマーにおいて特に望ましい。
【0040】
ポリマーは式(II)の構造を有することができ、
【化31】

式中、RおよびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、ヘテロアリール、置換アリール、または置換ヘテロアリールであり、XおよびXは独立に、S、Se、OまたはNR”であり、各R”は独立に水素またはアルキルとすることができ、各ZおよびZは独立にアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、−CN、または−NOであり、Mは共役部であり、a、c、およびdは独立に少なくとも1であり、bは0〜約20であり、eおよびfは独立に0〜2であり、nは2〜約5,000である。
【0041】
M基はArおよびAr基について上で論じた任意の基とすることができる。好ましい実施形態において、Mは約4〜約30の炭素原子を含む共役部である。
【0042】
さらに特定の実施形態において、aは1である。他のp実施形態において、cおよびdは独立に1または2である。特定の実施形態において、Mは1である。
【0043】
式(I)または式(II)の例示的半導体ポリマーは式(1)〜(20)のものを含む。
【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

【化51】

式中、RおよびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールであり、R、R、R、Rは独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換nはヘテロアリール、ハロゲン、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、−CN、または−NOであり、nは2〜約5,000である。これらの式のいくつかの実施形態において、R、R、R、R、R、Rの少なくとも1つは水素ではない。
【0044】
式(1)〜(20)のポリマーは全て式(I)のポリマーの例である。式(1)、(2)、(3)、(4)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(17)、(18)、および(20)のポリマーは式(II)のポリマーの例である。
【0045】
実施形態において、式(I)の半導体ポリマーは、約1.2〜約2.8eV、または約1.2〜約2.0eVを含んで、約1.1〜約3.2eVのバンドギャップを有する。
いくつかの実施形態において、式(I)の半導体ポリマーは約1.0〜約2.0eVの小さなバンドギャップを有する。この小さなバンドギャップは繰り返しユニットの弱いドナーとアクセプタの効果の結果である。ジチオケトピロロピロールユニットは電子受容部であるが、上で論じたArおよびAr部の大部分は電子供与部である。この電子ドナーと電子アクセプタの組み合わせは小さなバンドギャップをもたらし、ポリマーは依然として非常に良好な安定性を有する。半導体ポリマーは半導体層中で結晶、半結晶、または液晶構造を有する。結晶度は例えばX線回折法を用いて求めることができる。
【0046】
本半導体ポリマーの例示的なポリマーは図5に示したように5ステップのプロセスで調製することができる。
【0047】
ステップS100で、DKPP(ジケトピロロピロール)部は、塩基および有機溶媒の存在中で、2モルの適切なニトリルまたはシフ塩基と1モルのコハク酸ジエステルとの反応によって形成することができる。例えば、選択されたAr基(例えばチオフェンカルボニトリル)を形成するためのカルボニトリル(Ar−CN)は適切な条件下でコハク酸塩(例えば、ジイソプロピルスクシナートまたはジ−n−ブチルスクシナート)と反応させてDKPP部を閉環し、一般式、
【化52】

のモノマーM1を形成する。式中、Arは上で定義されている。
【0048】
例えば、ステップS100は、インシトゥーに形成することのできる、t−C11ONaなどのナトリウムアルコキシドの存在する溶液中で行うことができ、続いて氷酢酸などの有機酸で中和される。反応は約85℃などの適切な反応温度で行うことができる。
【0049】
ステップS102で、ステップS100で得られたモノマー(M1)の窒素原子上のH基は、場合によって式R−Yのハロゲン化物とモノマーの反応によってHから選択されたR基に変換することができ、式中Rは上で定義され(H以外)、Yは塩素、臭素、ヨウ素から選択されるハロゲンである。このようにして以下のモノマー構造(M2)が形成される。
【化53】

【0050】
Rがアリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであるとき、場合によってパラジウムまたは銅触媒が必要であろう。
【0051】
ステップS102は、約40〜180℃(例えば約120℃)などの適切な温度で、溶液中で行うことができる。反応はジメチルホルムアミドなどの適切な溶媒中で、アルカリ金属水酸化物または炭酸塩などの適切な塩基、および18−クラウン−6などのクラウンエーテルの存在中で行うことができる。適切な塩基は、NaH、NaOH、KOH、t−BuONa、t−BuOK、NaCO、KCO等を含む。通常、化合物M1に対する塩基のモル比は0.5:1〜50:1の範囲で選択される。
【0052】
ステップS103で、モノマーはチオール化されてカルボニル基をチオカルボニル基に変換し、DTKPP(ジチオケトピロロピロール)部を形成する。このステップは、例えばローソン試薬を用いて行うことができる。
【0053】
アルキル化ステップS102およびチオール化ステップS103は逆の順序とすることができることに留意されたい。やはり、アルキル化ステップは任意である。これらの2つのステップの後、モノマーM3が形成される。
【化54】

式中、M3中のRは水素、アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリール(アルキル化ステップ行われたかどうか、およびアルキル化中のR基の選択による)。
【0054】
ステップS104で、Ar基はN−ハロスクシンイミド、臭素、塩素、またはヨウ素などのハロゲン化剤でハロゲン化されて一般式、
【化55】

のモノマーを形成する。
【0055】
Yは、臭素、塩素、またはヨウ素などのハロゲンとすることができる。ステップS104は、クロロホルムなどの任意の適切な非反応性媒体中、例えば室温以上で行うことができる。
【0056】
図6は式(I)の例示的DTKPPモノマーの合成を示し、ArおよびArはチオフェン基である。
【0057】
ステップS106に続いて、モノマー(M4)を重合して式(I)のホモポリマーを形成することができ、式中、pおよびqは各々1である。
【0058】
替りに、ステップS108で、モノマー(M4)は式(II)のポリマーを形成するためのコモノマーMBと共重合することができ、コモノマーは式(I)中で共役部Mを提供する。適切な共役部はチオフェン、フラン、ピロール、チエノ[3,2−b]チオフェン、ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン、およびその組み合わせなど、ArおよびArについて上に挙げたものを含む。
【0059】
ステップS106およびS108は、ヘキサメチルジチン、ヘキサ−n−ブチルジチン、またはヘキサフェニルジチンなどのヘキサアルキル−ジ−チンまたはヘキサアリール−ジ−チン化合物などのジ−チン化合物、および結合反応または縮重合反応に適した触媒の存在中、および場合によってヨウ化銅(I)の存在中、溶液中で行うことができる。適切な結合触媒はパラジウム系触媒、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(O)(Pd(PPh)、Pd(PPhCl、PdOAc、Pd(dba):P(o−Tol)、またはその誘導体などのテトラキス(トリアリールホスホニウム)−パラジウム触媒である。通常、触媒は触媒に対するDTKPPモノマーのモル比が約1000:1〜約10:1の範囲、例えば約100:1〜約30:1で加えられる。反応のための適切な溶媒はTHFと1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)の混合物とすることができる。反応は溶媒の沸点またはその僅かに上の温度で還流の下で行うことができる。
【0060】
例えば、コモノマーMBは式G−M−Gを有し、式中Mは共役部であり、Gは縮重合反応に応じた反応基である。例えば、Suzuki反応において、反応基Gは以下のものの1つとすることができる。
【化56】

Suzuki反応には、KCO、CsCO、KPO、KF、またはCsFなどの追加の塩基も必要である。替りに、Stille反応において、反応基Gは、−SnMeまたは−Sn(n−Bu)などのトリアルキルスタンニル基である。また、図6はポリマーを形成するモノマーM4のコモノマーMBとの反応(すなわちステップS108)を示す。
【0061】
ステップS110で、得られるポリマーは例えばソックスレー抽出によって精製される。
【0062】
このようにして形成されたポリマー/コポリマーは約700〜約1,000,000の範囲の重量平均分子量Mを有することができる。いくつかの実施形態において、式(I)のポリマーは約2,000〜約500,000を含んで約1,000〜約800,000のMを有する。
【0063】
S112で、ポリマーを含む層は半導体装置に組み込むことができる。
【0064】
また、半導体ポリマーを含む半導体組成物が開示される。半導体組成物はポリマーが溶解可能な溶媒を含むことができる。溶液に用いられる例示的溶媒は、クロロベンゼン、クロロトルエン、ジクロロベンゼン、ジクロロエタン等などの塩化物溶媒、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘキサンジオール等などのアルコールおよびジオール、ヘキサン、へプタン、トルエン、キシレン、メシチレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、デカリン、メチルナフタレン等などの炭化水素または芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等などのケトン、エチルアセタートなどのアセタート、ピリジン、テトラヒドロフラン等を含むことができる。
【0065】
実施形態において、式(I)の半導体ポリマーを含む半導体組成物は、約2〜約100cps、または約2〜約20cpsを含んで、約1.5センチポイズ(cps)〜約1000cpsの粘度を有することができる。
【0066】
半導体ポリマーは任意の電子装置、例えば、薄膜トランジスタ、光電池、発光ダイオード、発光トランジスタ、センサー等の半導体層に存在することができる。実施形態において、半導体ポリマーは薄膜トランジスタまたは光電池装置の層を形成するのに用いることができよう。
【0067】
半導体層は、当分野に既知の従来プロセスを用いて電子装置に形成することができる。実施形態において、半導体層は溶液堆積技術を用いて形成される。例示的溶液堆積技術は、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スタンピング、ステンシル印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレクソグラフィ印刷等を含む。
【0068】
半導体組成物を用いて形成された半導体層は、約20〜約100ナノメートルの深さを含んで、約5ナノメートル〜約1000ナノメートルの深さとすることができる。図1および4に示したものなどいくつかの構成において、半導体層はソースおよびドレイン電極を完全に被覆する。半導体チャンネルの幅は、例えば、約5メイクロメートル〜約5ミリメートルとすることができ、特定のチャンネル幅は約100マイクロメートル〜約1ミリメートルである。半導体チャンネルの長さは、例えば、約1マイクロメートル〜約1ミリメートルとすることができ、より特定のチャンネル長さは約5マイクロメートル〜約100マイクロメートルである。
【0069】
TFTの性能は移動性によって測定することができる。移動性はcm/V・秒の単位で測定される。移動性は高いほうが望ましい。本開示の半導体組成物を用いて得られるTFTは少なくとも0.01cm/V・秒のフィールド効果移動性を有することができる。本開示のTFTは少なくとも10の電流オン/オフ比を有することができる。
【0070】
薄膜トランジスタは一般に基板と、場合によってゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、半導体層に加えて誘電層を含む。
【0071】
基板は、シリコン、ガラスプレート、プラスチックフィルムまたはシートを含む材料からなることができるが、それらに限定されない。構造的に可撓性のある装置については、例えば、ポリエステル、ポリカーボナート、ポリイミドシート等などのプラスチック基板が好ましい。基板の厚さは、約10マイクロメートル〜10ミリメートル以上とすることができ、例示的厚さは、特に可撓性プラスチック基板で約50〜約100マイクロメートル、ガラスまたはシリコンなどの硬質基板で約0.5〜約10ミリメートルである。
【0072】
誘電体層は一般に無機材料フィルム、有機ポリマーフィルム、または有機−無機複合フィルムとすることができる。誘電体層として適した無機材料の例はシリコン酸化物、シリコン窒化物、アルミニウム酸化物、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムジルコニウム等を含む。適切な有機ポリマーの例は、ポリエステル、ポリカーボナート、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメタクリラート、ポリアクリラート、エポキシ樹脂等を含む。誘電体層の厚さは、使用される材料の誘電率に依存し、例えば、約10ナノメートル〜約500ナノメートルとすることができる。誘電体層は、例えばセンチメートルあたり約10−12ジーメンス(S/cm)未満の導電性を有することができる。誘電体層は、ゲート電極を形成するのに説明されるプロセスを含んで、当分野に既知の従来プロセスを用いて形成される。
【0073】
本開示において、誘電体層は表面改質剤で表面改質することができる。例示的な表面改質剤は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、オクチルトリクロロシラン(OTS−8)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS−18)、およびフェニルトリクロロシラン(PTS)などのオルガノシランを含む。半導体層はこの改質された誘電体層表面に直接接触することができる。接触は完全または部分的である。また、表面改質は誘電体層と半導体層の間に境界層を形成するものと考えることができる。
【0074】
ゲート電極は導電性材料からなる。それは薄い金属フィルム、導電性ポリマーフィルム、導電性インクまたはペーストからつくられた導電性フィルム、または基板自体、例えば多量にドーピングされたシリコンとすることができる。ゲート電極材料の例は、アルミニウム、金、銀、クロム、インジウムスズ酸化物、ポリスチレンスルホナート−ドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)などの導電性ポリマー、およびカーボンブラック/グラファイトからなる導電性インク/ペーストを含むが、それらに限定されない。ゲート電極は真空蒸着、金属または導電性金属酸化物のスパッタリング、従来のリソグラフィおよびエッチング、化学的蒸着、スピンコーティング、鋳造または印刷、または他の堆積プロセスによって調製することができる。ゲート電極の厚さは、例えば、金属フィルムで約10〜約200ナノメートル、導電性ポリマーで約1〜約10マイクロメートルの範囲である。ソースおよびドレイン電極として用いるための適切な典型的な材料は、アルミニウム、金、銀、クロム、亜鉛、インジウム、および亜鉛ガリウム酸化物、インジウムスズ酸化物、インジウムアンチモン酸化物などの導電性金属酸化物、および導電性ポリマーおよび導電性インクなど、ゲート電極材料のものを含む。ソースおよびドレイン電極の典型的な厚さは、例えば、約100〜約400ナノメートルのより特定の厚さを含んで、約40ナノメートル〜約1マイクロメートルである。
【0075】
ソースおよびドレイン電極として用いるために適した典型的な材料は金、銀、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマー、および導電性インクなどのゲート電極材料のものを含む。特定の実施形態において、電極材料は半導体に対して低い接触抵抗を提供する。典型的な厚さは、例えば、約40ナノメートル〜約1マイクロメートルであり、より特定の厚さは約100〜約400ナノメートルである。
【0076】
ソース電極は接地され、例えば約0ボルト〜約80ボルトのバイアス電圧がドレイン電極に印加され、例えば、約+10ボルト〜約−80ボルトの電圧がゲート電極に印加されるとき、半導体チャンネルを横断して輸送される電荷キャリアを収集する。電極は当分野に既知の従来プロセスを用いて形成または堆積することができる。
【0077】
望むならば、障壁層をTFTの上に堆積して、その電気的特性を劣化させることのある光、酸素、および湿気等などの環境状態からそれを保護することもできる。それらの障壁層は当技術分野に既知であり、単純にポリマーからなる。
【0078】
OTFTのさまざまな成分を任意の順序で基板上に堆積することができる。しかし、一般に、ゲート電極および半導体層は両方ともゲート誘電層に接触しなければならない。さらに、ソースおよびドレイン電極は両方とも半導体層に接触しなければならない。句「任意の順序で」は、連続的および同時形成を含む。例えば、ソース電極およびドレイン電極は同時にまたは連続的に形成することができる。用語の基板「上」または「上に」は、底部にあり、またはその上にある層および成分を支持する基板に対するさまざまな層および成分を指す。言い換えれば、成分の全ては、それらの全てが基板に直接接触しなくても基板上にある。例えば、誘電体層および半導体層は、1つの層が他の層よりも基板により近くても、両方とも基板上にある。得られるTFTは良好な移動性と良好なオン/オフ比を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のポリマーであって、
【化1】

式中、RおよびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールであり、各ArおよびArは独立にエテニル、エチニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、pおよびqはArおよびArユニットの数であり、独立に1〜約25であり、nは繰り返しユニットの数であり、2〜約5000である。
【請求項2】
式(I)の半導体ポリマーを含む半導体組成物であって、
【化2】

式中、RおよびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールであり、各ArおよびArは独立にエテニル、エチニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、pおよびqはArおよびArユニットの数であり、独立に1〜約25であり、nは繰り返しユニットの数であり、2〜約5000である。
【請求項3】
半導体層を含む電子装置であって、前記半導体層が式(I)のポリマーを含む電子装置であり、
【化3】

式中、RおよびRは独立に水素、アルキル、置換アルキル、アリール、または置換アリールであり、各ArおよびArは独立にエテニル、エチニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、または置換ヘテロアリールであり、pおよびqはArおよびArユニットの数であり、独立に1〜約25であり、nは繰り返しユニットの数であり、2〜約5000である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−180515(P2012−180515A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31469(P2012−31469)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】