説明

ジャッキ固定構造

【課題】車体を軽量化しつつ、スペアタイヤ収納仕様及びスペアタイヤレス仕様の何れでも、充分なエネルギ吸収量を確保出来るジャッキ固定構造を提供する。
【解決手段】 車体2に設けられたリヤフロアパネル6に、スペアタイヤ収納凹部7が、凹設形成されている。
このスペアタイヤ収納凹部7の後側辺8aに設けられたリヤパネル部材9と、リヤパネル部材9に対向する内側辺8cとの間に、スペアタイヤ収納凹部7の底面部8b方向へ向けて、折れモーメントを発生させるメンバ部材11が、架設されている。
この底面部8bと、メンバ部材11の底面部対向面11gとの間には、ジャッキ14が、介装されて、装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の荷室内に収納されるジャッキ固定構造に関するもので、特に、スペアタイヤ収納空間を利用したジャッキ固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のジャッキ固定構造としては、車両後部に設けられたトランクルームの床部にタイヤ収納凹部を凹設形成して、このタイヤ収納凹部に、ジャッキを収納して固定するジャッキ固定構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
まず、構成から説明すると、このようなものでは、前記トランクルームのリヤフロアパネルの後縁に沿って延設されるリヤパネル部材には、ジャッキブラケットが固設されて、設けられている。
【0004】
このジャッキブラケットは、略垂直に面延設方向を有する縦壁面部を前記リヤパネル側に固着させると共に、車両前後方向鉛直断面形状を略L字状とすることにより、車両前方へ向けて、この縦壁面部から、水平方向に水平面部が一体に延設されている。
【0005】
そして、この水平面部には、下面側に、前記ジャッキを倒立させた状態で、このジャッキのジャッキボトムを圧接させることにより、前記ジャッキを倒立状態で、前記タイヤ収納凹部の底面部と、このジャッキブラケットの下面側との間に収容されるように構成されている。
【0006】
次に、この従来例のジャッキ固定構造の作用効果について説明する。
【0007】
この従来のジャッキ固定構造では、前記ジャッキを倒立状態で、前記タイヤ収納凹部の底面部と、このジャッキブラケットの下面側との間に介在させる。
【0008】
そして、ジャッキアップ状態とすることにより、ジャッキボトム及びジャッキヘッド間が拡開されて、このジャッキのジャッキボトムが、ジャッキブラケットの下面側に圧接される。
【0009】
このため、前記タイヤ収納凹部の底面部と、ジャッキブラケットの他側面との間に、ジャッキが張設されて、車体にジャッキが、固定される。
【0010】
ジャッキを装着していない状態では、前記タイヤ収納凹部内の定位置に、スペアタイヤが収納固定される。
【特許文献1】特開平9−76947号公報(第0017段落乃至第0037段落、図1乃至図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来のジャッキ固定構造においては、前記スペアタイヤが、前記タイヤ収納凹部内の定位置に、収納固定された所謂、スペアタイヤ仕様では、車両の後部から荷重入力が生じた際に、リアフロアパネル等の車体側構造部材のエネルギ吸収に加えて、このスペアタイヤに、一部のエネルギ吸収構造を受け持たせて、トータルのエネルギ吸収量を増大させていた。
【0012】
また、前記ジャッキのみを前記タイヤ収納凹部の底面部と、ジャッキブラケットの他側面との間に、介装させて固定する、所謂スペアタイヤレスの仕様では、前記スペアタイヤが、タイヤ収納凹部内に存在しない状態となる。
【0013】
このため、車両の後方から荷重入力に対して、前記車体側構造部材のみでも、所定の反力を得られるようにしなければならない。
【0014】
従って、別途補強材を追加したり、或いは、前記リヤフロアパネルの厚みが増加してしまう等、スペアタイヤ仕様では、過剰な補強となり、車体重量が増大してしまう虞があった。
【0015】
そこで、本発明の目的は、車体を軽量化しつつ、スペアタイヤ仕様及びスペアタイヤレス仕様の何れでも、充分なエネルギ吸収量を確保出来るジャッキ固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載されたものは、車体に設けられたフロアパネルに、スペアタイヤ収納凹部を凹設形成して、該スペアタイヤ収納凹部の少なくとも一外側辺と、該一外側辺に対向する内側辺との間に、該スペアタイヤ収納凹部の底面部方向へ向けて、折れモーメントを発生させるメンバ部材を架設すると共に、該底面部と、前記メンバ部材の底面部対向面との間に、ジャッキを介装して装着するジャッキ固定構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載されたものによれば、車体の外側からの荷重入力が加わると、スペアタイヤ収納凹部の前記一外側辺で吸収しきれない荷重入力は、該一外側辺と、該一外側辺に対向する内側辺との間に、架け渡された前記メンバ部材を介して、前記スペアタイヤ収納凹部が形成されたフロアパネルのスペアタイヤ収納凹部内側辺へ伝達され、分散吸収される。
【0018】
そして、該メンバ部材は、荷重入力によって、該スペアタイヤ収納凹部の底面部方向へ向けて、折れモーメントを発生させながら、屈曲する。
【0019】
該底面部と、前記メンバ部材の底面部対向面との間には、ジャッキが介装されているので、吸収されるエネルギ量を、増大させることが出来、充分な荷重入力に対しての吸収量を得ることが出来る。
【0020】
従って、スペアタイヤレス仕様でも、前記メンバ部材が、変形しようとする方向に介装されたジャッキによって、車両後部に充分な反力を有するエネルギー吸収構造を与えられる。
【0021】
更に、前記車体側のリアフロアパネル等の車体側構造部材に、重厚な板状パネル材を用いたり、別途補強部材を追加する必要が無く、車体の軽量化を図りながら、充分な車両の後方からの荷重入力に対するエネルギー吸収量を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の最良の実施の形態のジャッキ固定構造を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1乃至図23は、この発明の実施の形態のジャッキ固定構造を示すものである。
【0024】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態のジャッキ固定構造では、図2に示すように自動車1の車体2の後部には、ラゲッジルーム3が設けられていて、このラゲッジルーム3の後壁部に形成された開口部4が、リヤハッチゲート部材5によって、開閉塞可能となるように構成されている。
【0025】
このラゲッジルーム3の床部には、面延設方向を略水平とするように、平板状のリヤフロアパネル6が設けられている。
【0026】
そして、このリヤフロアパネル6のうち、前記開口部4側に位置する後側辺近傍には、車両下方側を凸とするタイヤ収納凹部としてのスペアタイヤ収納凹部7が、凹設形成されている。
【0027】
このスペアタイヤ収納凹部7の床部上面側には、スペアタイヤを収納するタイヤパン8が設けられている。
【実施例1】
【0028】
図1乃至図9は、この発明の実施の形態の実施例1のジャッキ固定構造を示すものである。
【0029】
なお、前記実施の形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0030】
この実施例1のタイヤパン8の底面部8bの略中央には、図1に示すように、前後一対の係合凸部10a,10aと、これらの係合凸部10a,10a間に一体に形成される係合凹部10bとから主に、構成される台座位置規制部10が、凸設形成されている。
【0031】
これらの係合凸部10a,10a間の係合凹部10bには、図1に示すように、ジャッキ14のジャッキボトムを構成する上面視小鼓型の台座部14bが、装着されて、車両前後左右方向へのジャッキ14の移動が、規制されるように構成されている。
【0032】
また、このタイヤパン8には、底面部8bの一外側辺としての後側辺8aには、略平板状のリアパネル部材9が、面延設方向を車両上下方向に沿わせて、車幅方向に延設されている。 このリヤパネル部材9の段部上面9aには、車幅方向略中央位置に、後側左右方向位置規制部としての後側メンバ装着凹部9bが、凹設形成されている。
【0033】
更に、この一外側辺としてのリアパネル部材9に対向する前記タイヤパン8の内側辺8cは、前記スペアタイヤの外周縁形状に沿うように、略半円状に形成されると共に、この内側辺8cの車幅方向略中央には、前側左右方向位置規制部としての前側メンバ装着凹部8dが、凹設形成されている。
【0034】
このうち、前側メンバ装着凹部8dは、図4に示すように、車両後側に向けて下がる傾斜角度αを有している。
【0035】
この前側メンバ装着凹部8dには、図3に示すように、前記車体2への取付点としてのボルト孔9cが開口形成されていて、後述するボルト部材12の雄ネジ部12aを挿通可能としている。
【0036】
また、前記後側メンバ装着凹部9bは、図4に示すように、車両前側に向けて下がる傾斜角度βを有している。
【0037】
そして、これらの前側メンバ装着凹部8d及び後側メンバ装着凹部9b間には、メンバ部材11が、架設されている。
【0038】
また、この実施例1のメンバ部材11には、前端部11aに、前側傾斜面としての被装着面部11bが、後端部11dに、後側傾斜面としての被装着面部11eが、各々形成されている。
【0039】
このうち、前記被装着面部11bは、前記前側メンバ装着凹部8dの傾斜角度αと同一の車両後側に向けて下がる傾斜角度αを有している。
【0040】
この被装着面部11bには、前記車体2への取付点としてのボルト孔11cが、前記ボルト孔9cに対向して開口形成されている。
【0041】
そして、これらのボルト孔11c及びボルト孔9cを介して、固定手段としてのボルト部材12の雄ネジ部12aが、挿通されることにより、前記後側メンバ装着凹部9bのボルト孔9c周縁裏面側に設けられるナット部材13の雌ネジ部に、前記ボルト部材12の雄ネジ部12aが、螺着可能となるように構成されている。
【0042】
また、この実施例1のメンバ部材11には、後端部11dに形成された前記被装着面部11eは、前記後側メンバ装着凹部9bの傾斜角度βと同一の車両前側に向けて下がる傾斜角度βを有している。
【0043】
この被装着面部11eには、前記車体2側の取付点としてのボルト孔11fが、前記ボルト孔9dに対向する位置に開口形成されている。
【0044】
そして、これらのボルト孔11f及びボルト孔9dを介して、固定手段としてのボルト部材12の雄ネジ部12aが挿通されることにより、前記後側メンバ装着凹部9bのボルト孔9d周縁裏面側に設けられるナット部材13の雌ネジ部に、前記ボルト部材12の雄ネジ部12aが、各々螺着されている。
【0045】
このため、これらのボルト部材12,12のナット部材13,13への螺合及び螺合解除により、前記メンバ部材11が、車体2に対して、装脱着自在となるように、固定されている。
【0046】
このメンバ部材11は、長尺板状の底面部対向面11gの車幅方向左右両側縁に、フランジ部11h,11hが、左,右対称に凸設形成されることにより、断面略逆ハット状を呈して、車両前後方向に長手方向を沿わせるように、前記タイヤパン8の上部を覆うように、前記底面部8bと所定の間隔が設けられて、固着されている。
【0047】
そして、この底面部8bと、前記メンバ部材11の底面部対向面11gとの間に、ジャッキ14が介装されて、装着されるように構成されている。
【0048】
この実施例1では、前記ジャッキ14の装着位置として、前記底面部8bに設けられた台座位置規制部10に対向する位置に、ジャッキ14のジャッキヘッド14aを当接させて保持することにより、このジャッキヘッド14aの位置を規制する、上側の位置規制部としてのエンボス部15が、設けられている。
【0049】
このエンボス部15は、前記メンバ部材11の底面部対向面11gのうち、車両前後方向で、前側に位置する前記車体2への前側止め点としての前記ボルト孔11cと、メンバ部材11の後側に位置する前記車体2への後側止め点としての前記ボルト孔11fの間に形成されている。
【0050】
しかも、このエンボス部15は、前記スペアタイヤ収納凹部7の車幅方向及び、車両前後方向で、略中央位置に位置するように、前記底面部対向面11gに、上向きに凸として、上面視略方形形状を呈して凹設されている。
【0051】
更に、この実施例1では、このメンバ部材11が、このスペアタイヤ収納凹部7のタイヤパン8の底面部8b方向へ向けて、折れモーメントを発生させるように架設されている。
【0052】
すなわち、この実施例1では、図3乃至図5に示すように、前記メンバ部材11の一側としての前側に位置する前側止め点としてのボルト孔11c中央と、前記他側としての後側に位置する後側止め点としてのボルト孔11f中央とを結ぶ直線上に、荷重入力が加わることから、この底面部8bと、前記後側他側に位置する後側位置する後側止め点とを結ぶ直線上に、入力軸直線F(この実施例1では、図4に示す入力軸直線F1又はF2)が、設けられている。
【0053】
この実施例1の前記メンバ部材11のうち、車両前後方向に沿って略直線状を呈する一般部11iでは、中立軸である図芯G位置よりも、車両上方位置に設けられて、前記底面部8bから離れる方向に、間隔h(この実施例1では、図4に示す間隔h1又はh2)離間した位置に、前記入力軸直線Fが、位置することにより、前記メンバ部材11の一般部11iの図6に示す一般断面の入力軸直線Fよりも、前記底面部8bから離間した側の断面二次モーメントが、前記底面部8bに近接した側の断面二次モーメントよりも大きくなるように、設定されている。
【0054】
ここで、図芯Gから、前記メンバ部材11の一般断面の下縁である底面部対向面11gの下縁までの高さ方向寸法を寸法e1とすると共に、前記メンバ部材11の一般断面の上縁である左,右フランジ部11h,11hの上縁までの高さ方向寸法を寸法e2、断面二次モーメントをIとすると、図芯Gを挟んで、下,上の断面係数をZ1,Z2とすると、断面二次モーメントIは、次式で求められる。
〔数式1〕
Z1=I/e1
〔数式2〕
Z2=I/e2
ここで、Z1=Z2となるように設定されたe1,e2により、前記図芯Gの位置が設定されるので、この図芯G車両上方位置に、前記入力軸直線Fが位置することにより、下向き(図4中底面部8b方向)に、凸となるような折れ曲がりモード(図7参照)を得られる。
【0055】
このように、車体2に装着された前記メンバ部材11の底面部対向面11gと、底面部8bとの間に介装されるジャッキ14が、一定量ジャッキアップされることにより、上下方向の反力が与えられながら、前記底面部対向面11gに形成されたエンボス部15の凹状の下面側と、前記タイヤパン8の底面部8b上面に設けられた台座位置規制部10の係合凸部10a,10a間に位置する係合凹部10bとの間に圧接されて、保持される。
【0056】
また、ジャッキ14が、ジャッキダウンされると、前記底面部対向面11gと、底面部8bとの間から、挿抜可能となると共に、前記ジャッキアップしたままの状態でも、前記ボルト部材12,12の各ナット部材13,13への螺合を解除することにより、ジャッキ14を車体2のタイヤパン8内の略中央位置から、装脱着可能としている。
【0057】
この実施例1では、前記エンボス部15の凹状の下面側で、前記ジャッキ14のジャッキヘッド14aが当接する部分の車両前後方向位置Jが、図7に示すように、前記ジャッキ14が装着されていない場合の屈曲点K位置近傍で、しかも、この屈曲点Kよりも、図8に示すように、車両前方方向に寸法L1、オフセットされて設定されることにより、図9に示すように、前記ジャッキ14が装着された場合の屈曲点K1,K2の数量が、複数箇所に増大するように構成されている。
【0058】
更に、この実施例1では、前記メンバ部材11には、前端部11aの被装着面部11bには、所定の傾斜角度αが与えられて、前記前側止め点としてのボルト孔11cが開口形成されると共に、前記後端部11dの被装着面部11eには、所定の傾斜角度βが与えられて、前記後側止め点としてのボルト孔11fが、開口形成されて、このメンバ部材11
の長手方向(車両前後方向)の中央に向けて、対向して傾斜する一対の傾斜面部とすることにより、これらのボルト孔11c,11f間を結ぶ各入力軸直線F1,F2が、前記図芯Gよりも、車両上方位置に設けられて、前記底面部8bから、間隔h、離間した位置(図3中上側)に、設けられると共に、この実施例1では、図4に示す前側の間隔h1よりも、後側の間隔h2が、大きくなるようにオフセットされて、設定されている。
【0059】
このため、前記ジャッキヘッド14aよりも、車両後方側のメンバ部材11が、前記底面部8b方向に向けて、更に、屈曲しやすく設定されている。
【0060】
また、この被装着面部11bには、所定の傾斜角度αが与えられると共に、前記後端部11dの被装着面部11eには、所定の傾斜角度βが与えられているので、メンバ部材11の一般断面部と、これらの傾斜面部との接続部分から、このメンバ部材11の長手方向の中央に向けて、対向して屈曲しやすく構成されている。
【0061】
更に、この実施例1では、図1に示すように、前記メンバ部材11と共に、前記スペアタイヤ収納凹部7の開口部7aに上方から係合されて、覆うように、左右分割型収納ボックス16が設けられている。
【0062】
この左右分割型収納ボックス16は、合成樹脂製の薄板材から、形成される左側収納ボックス17及び右側収納ボックス18によって、主に構成されている。
【0063】
また、これらの各左側収納ボックス17及び右側収納ボックス18は、図1中二点鎖線で示されるように、車幅方向中央位置で、近接配置される各上縁部17b,18bを、前記メンバ部材11の左,右フランジ部11h,11hの下面側に各々潜り込ませて、係止させることにより、前記メンバ部材11の車幅方向両側の前記スペアタイヤ収納凹部7内に、装着されるように構成されている。
【0064】
そして、これらの各左側収納ボックス17及び右側収納ボックス18には、下面側に、スペアタイヤ収納凹部7の開口部7aを、前記メンバ部材11と共に、覆う状態で、前記ジャッキ14との干渉を防止する様に、上側を凸として凹設形成されたジャッキ収納凹部17a及び18aが、車幅方向に沿って設けられている。
【0065】
次に、この実施の形態の実施例1のジャッキ固定構造の作用効果について説明する。
【0066】
このように構成された実施例1のジャッキ固定構造では、図8に示すように、前記ジャッキ14が、タイヤパン8の底面部8bと、メンバ部材11の底面部対向面11gとの間に、装着された状態で、前記車体2の車両後方外側から、前記ラゲッジルーム3の後壁部を構成するリヤパネル部材9に、荷重入力が加わると、スペアタイヤ収納凹部7の前記後側辺8aで吸収しきれない荷重入力が、この後側辺8aと、後側辺8aに対向する内側辺8cとの間に、架け渡された前記メンバ部材11を介して、前記リヤフロアパネル6のスペアタイヤ収納凹部7の内側辺8cへ伝達され、分散吸収される。
【0067】
この際、前記メンバ部材11は、この荷重入力によって、屈曲点Kから、スペアタイヤ収納凹部7の底面部8b方向へ向けて、折れモーメントを発生させながら、屈曲する。
【0068】
この底面部8bと、前記メンバ部材11の底面部対向面11gとの間には、ジャッキ14が介装されているので、メンバ部材11の下方向への屈曲により、上下方向の荷重に変換された荷重入力は、このジャッキ14を介して、平板状のタイヤパン8の底面部8bに伝達される。
【0069】
従って、ジャッキ14が装着されていない場合に比して、吸収されるエネルギ量を、増大させることが出来、充分な荷重入力に対しての吸収量を得ることが出来る。
【0070】
従って、スペアタイヤが装着されていない所謂、スペアタイヤレス仕様の使用態様でも、前記メンバ部材11が、変形しようとする方向に介装されたジャッキ14によって、車両後部に充分な反力を有するエネルギー吸収構造を与えられる。
【0071】
また、前記底面部8bと、前記メンバ部材11の底面部対向面11gとの間には、前記ジャッキ14が介装されて、前記メンバ部材11の屈曲点K1,K2等の位置をコントロール出来る。
【0072】
従って、例えば、屈曲点Kを屈曲点K1,K2…に増やす等、前記メンバ部材11単体で荷重入力を吸収する場合に比して、エネルギ吸収量を、増大させることが出来、メンバ部材11の単体剛性を、高く設定しなくてもよい。
【0073】
このため、前記メンバ部材11の板厚を薄くしたり、或いは、材質を樹脂製にする等、軽量化を図ることができる。
【0074】
更に、前記車体2側のリヤフロアパネル6等の車体側構造部材に、重厚な板状パネル材を用いたり、別途補強部材を追加する必要が無く、車体の軽量化を図りながら、充分な車両の後方からの荷重入力に対するエネルギー吸収量を確保することができる。
【0075】
よって、スペアタイヤ収納仕様及びスペアタイヤレス仕様の何れでも、このジャッキ固定構造を適用することにより、同一の車体側構造部材を用いて、構成出来る。
【0076】
また、前記ジャッキ14が介装される車両前後方向位置によって、前記メンバ部材11の屈曲点K1,K2等の位置をコントロール出来る。
【0077】
すなわち、この実施例1では、図8に示すように、前記ジャッキ14のジャッキヘッド14aが、当接するエンボス部15の車両前後方向位置Jが、前記ジャッキ14が装着されていない場合の屈曲点K位置近傍で、しかも、この屈曲点Kよりも、車両前方方向に寸法L1、オフセットされて設定されている。
【0078】
このため、図9に示すように、更に、荷重入力が増大すると、前記ジャッキ14が装着された場合の屈曲点K1,K2の数量が、2箇所に増大すると共に、前記屈曲点K2には、車両下向きに荷重が、また、前記ジャッキ14を挟んで反対側に位置する屈曲点K1には、逆向きである車両上向きの荷重が加わり、確実に2箇所の屈曲点を形成することが出来る。
【0079】
従って、前記メンバ部材11のエネルギ吸収量を、図7に示すように、屈曲点Kが、1箇所の場合に比して、約2倍若しくは、2倍以上とすることが、出来る。
【0080】
このため、前記メンバ部材11の肉厚を薄く設定したり、或いは合成樹脂材料で構成する等、部品の軽量化を図ることが出来ると共に、前記リヤフロアパネル6若しくは、リヤパネル部材9の板厚を減少させて、車体2の軽量化も図ることが出来る。
【0081】
しかも、別途、前記リヤパネル部材9に固設される従来のようなジャッキブラケットも不要となるので、この点においても軽量化が可能である。
【0082】
また、前記メンバ部材11は、ボルト部材12,12及びナット部材13,13で、着脱自在となるように、前記前側メンバ装着凹部8dと、後側メンバ装着凹部9bとに対して、固定されている。
【0083】
このため、スペアタイヤが、前記スペアタイヤ収納凹部7内のタイヤパン8に装着される際には、スペアタイヤに一部のエネルギ吸収構造を受け持たせることにより、前記メンバ部材11を取り外すことも可能で、この点においても軽量化を図れる。
【0084】
従って、車体を軽量化しつつ、スペアタイヤ収納仕様及びスペアタイヤレス仕様の何れでも、充分なエネルギ吸収量を確保出来るジャッキ固定構造が提供される。
【0085】
また、車体2に装着された前記メンバ部材11の底面部対向面11gと、底面部8bとの間に介装されるジャッキ14が、一定量ジャッキアップされることにより、上下方向に沿って圧縮される反力が与えられながら、前記底面部対向面11gに形成されたエンボス部15の凹状の下面側と、前記タイヤパン8の底面部8b上面に設けられた台座位置規制部10の係合凹部10bとの間に圧接されて、車両前後両側からは、前記係合凸部10a,10aに挟持される状態で、保持される。
【0086】
更に、この実施例1では、前記ジャッキヘッド14aが、当接する前記底面部対向面11gに設けられたエンボス部15が凹設されていて、ジャッキヘッド14a上面の車両前後左右方向への移動が規制されるように係合される。
【0087】
また、前記底面部8bに設けられた前記係合凹部10bが、ジャッキ14の台座部14bを係合した状態では、前記係合凸部10a,10aが、ジャッキ14の台座部14bの車両前後方向に位置して、スペアタイヤ収納凹部7内での車両前後方向への移動を規制する。
【0088】
このため、多少、ジャッキヘッド14aが、振動等により、ジャッキダウンしても、係合が解除される虞が少なく、安定した保持状態を維持出来る。
【0089】
また、前記メンバ部材11が、車両後部からの荷重入力により、多少車両上方へ向けて撓んでも、係合が解除される虞が少なく、安定した保持状態を維持出来る。
【0090】
しかも、この実施例1では、図4及び図6に示すように、前記メンバ部材11のうち、車両前後方向に沿って略直線状を呈する一般部11iでは、中立軸である図芯G位置よりも、車両上方位置に設けられて、前記底面部8bから、間隔h(この実施例1では、間隔h1又はh2)離間した位置に、前記入力軸直線Fが、位置することにより、前記メンバ部材11の一般部11iのうち、図6に示す一般断面の入力軸直線Fよりも、前記底面部8bから離間した側の断面二次モーメントが、前記底面部8bに近接した側の断面二次モーメントよりも大きくなるように、設定されている。
【0091】
このため、前記入力軸直線Fに沿って、荷重入力が加わると、底面部8bから、離間した側のメンバ部材11の撓み量が、底面部8bに近接した側のメンバ部材11の撓み量に比して小さく、車両下方に向けて、屈曲変形される。
【0092】
この荷重入力の初期の状態では、図8に示すように、メンバ部材11と底面部8bとの間に存在するジャッキ14が、メンバ部材11の屈曲方向に位置されて、図7に示すように、屈曲点Kのみ1箇所で、屈曲する変形モードとなることが、防止されている。
【0093】
そして、荷重入力により車両下方に向けて、屈曲変形する屈曲点Kの近傍に、前記ジャッキヘッド14aが当接する部分の車両前後方向位置Jが存在するので、更に、エンボス部15が、ジャッキヘッド14aから、車両上方へ離間する方向へ屈曲変形する虞が少なく、更に、安定した保持状態が維持される。
【0094】
しかも、この実施例1では、前記メンバ部材11には、前端部11aの被装着面部11bには、所定の傾斜角度αが与えられて、前記前側止め点としてのボルト孔11cが開口形成されると共に、前記後端部11dの被装着面部11eには、所定の傾斜角度βが与えられて、前記後側止め点としてのボルト孔11fが、開口形成されている。
【0095】
そして、このメンバ部材11の長手方向(車両前後方向)の中央に向けて、対向して傾斜する一対の傾斜面部をこれらの被装着面部11b,11eが構成することにより、これらのボルト孔11c,11f間を結ぶ各入力軸直線F1,F2が、前記図芯Gよりも、車両上方位置に位置して、設けられて、前記底面部8bから、間隔h、離間した位置(図3中上側)に、設けられている。
【0096】
このように、被装着面部11bには、所定の傾斜角度αが与えられると共に、前記後端部11dの被装着面部11eには、所定の傾斜角度βが与えられているので、メンバ部材11の一般断面部と、これらの被装着面部11b,11e傾斜面部との接続部分から、このメンバ部材11の長手方向の中央に向けて、対向して屈曲しやすく構成されている。
【0097】
更に、この実施例1では、図4に示すように、前側の間隔h1よりも、後側の間隔h2が、大きくなるようにオフセットされて、設定されている。
【0098】
このため、車両前後方向で、前記ジャッキヘッド14aよりも、車両後方側のメンバ部材11が、前記底面部8b方向に向けて、更に、屈曲しやすい。
【0099】
従って、荷重入力が、車両後方から有ると、図9に示すように、まず、車両前後方向で、前記ジャッキヘッド14aよりも、車両後方側のメンバ部材11が、前記底面部8b方向に向けて、屈曲点K2から屈曲変形して、前記ジャッキヘッド14aに、エンボス部15を押圧する。
【0100】
このため、車両前後方向で、前記ジャッキヘッド14aよりも、車両前方側のメンバ部材11が、屈曲点K1から車両上方に向けて屈曲変形しやすい。
【0101】
よって、側面視で、略S字状に変形したメンバ部材11は、複数の屈曲点K1,K2を各々異なる上,下別方向に屈曲させながら、突出させる変形モードを容易に得られる。
【0102】
また、この実施例1では、図1に示すように、前記メンバ部材11と共に、前記スペアタイヤ収納凹部7の開口部7aに上方から係合されて、覆うように、薄板の合成樹脂製材料で構成される左側収納ボックス17及び右側収納ボックス18からなる左右分割型収納ボックス16が、設けられている。
【0103】
この左,右側収納ボックス17,18は、前記スペアタイヤ収納凹部7内に係合装着されて、前記内側辺8cと、リアパネル部材9との間に介在することにより、前記メンバ部材11と一体化するように構成されている。
【0104】
このため、これらの左,右側収納ボックス17,18に、所望の反力を設定することにより、重量の増大を抑制しながら、更に、容易に、充分なエネルギ吸収量を、車体2に与えることが出来る。
【0105】
しかも、これらの左,右側収納ボックス17,18の下面側に、各々車幅方向に沿って、形成されたジャッキ収納凹部17a,18aが、前記ジャッキ14に干渉することなく、このジャッキ14を収納して、図1中二点鎖線で示すように、車幅方向中央位置で、近接配置される各上縁部17b,18bを、前記メンバ部材11の左,右フランジ部11h,11hの下面側に各々潜り込ませて、係止させる。
【0106】
このため、前記メンバ部材11が、車幅方向両側の前記スペアタイヤ収納凹部7内に、装着された前記左,右側収納ボックス17,18を押さえ込んで、容易に、このスペアタイヤ収納凹部7内から、離脱しないように保持する。
【0107】
従って、前記左,右側収納ボックス17,18のジャッキ収納凹部17a,18a内側面によって上方を覆われた前記ジャッキ14は、例えば、車両前後方向に移動したり、或いは、前記ジャッキヘッド14a及び台座部14bを結ぶ直線を回転中心として、回転する等の虞が無くなり、更に、タイヤパン8から外れにくい。
【0108】
しかも、前記上方に凸状のジャッキ収納凹部17a,18a以外の部分は、物入れとして利用出来るので、空間利用効率が良好であると共に、左,右分離型収納ボックス16を構成する左,右側収納ボックス17,18を薄板の合成樹脂材料で、形成して材料効率を良好なものとすることができる。
【0109】
他の構成、及び作用効果については、前記実施の形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例2】
【0110】
図10乃至図14は、この発明の実施の形態の実施例2のジャッキ固定構造を示すものである。
【0111】
なお、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0112】
まず、この実施例2のジャッキ固定構造の構成を、前記実施例1のジャッキ固定構造との相違点を中心に説明すると、この実施例2のジャッキ固定構造では、前記メンバ部材11に相当するメンバ部材21では、車両前後方向に沿って延設される一般部21aが、車両後方に向けて、一直線状となるように延設されて、一般断面と同一の逆ハット状の断面形状を有する後端部の下面側に被装着面部21eが、設けられている。
【0113】
また、この被装着面部21eが重合されて、前記ボルト部材12及びナット部材13によって、固定される車体側の後側メンバ装着凹部19bは、この被装着面部21eの直線状形状に適合させて、車両前側に向けて下がる傾斜角度βを、β=0°とするように形成されている。
【0114】
そして、このメンバ部材21の後端部21d近傍で、前記ボルト部材12,ナット部材13及びリヤパネル部材9配設位置よりも車両前方の上縁側には、切り欠き形状から構成される脆弱部20が形成されている。
【0115】
この脆弱部20は、前記車両後方からの荷重入力で、前記メンバ部材21の後端部21d及び、前記被装着面部21eに開口形成されたボルト孔11fを、図13に示すように、車両上方へ向けて、屈曲変形させる屈曲開始点として機能するように構成されている。
【0116】
また、前記実施例1のエンボス部15に対応するこの実施例2のエンボス部25は、車両前後方向へ、内側下面の車両前後方向への寸法L3が、前記ジャッキヘッド14aの車両前後方向寸法L2よりも大きく(L3>L2)なるように構成されている。
【0117】
更に、この実施例2では、前端部11a側のうち、前記実施例1の前記ボルト部材被装着面部11eに相当する部分に、開口形成されるボルト孔21cが、車両前後方向へ長手方向を有する長孔形状として構成されることにより、挿通されるボルト部材12のネジ部12aの車両前後方向へスライド移動が可能とされて、前記メンバ部材21の車両前方への移動が許容されるように構成されている。
【0118】
次に、この実施例2のジャッキ固定構造の作用効果に付いて説明する。
【0119】
この実施例2のジャッキ固定構造では、前記実施例1のジャッキ固定構造の作用効果に加えて、更に、図11に示すように、前記ジャッキ14が、前記タイヤパン8の底面部8bと、前記メンバ部材11との間に、介装されて、固定されている状態では、車両後方から、荷重入力が加わると、図12に示すように、前記メンバ部材21の後端部21dが、車両前方に向けて押圧されて、前端部11aを前記前側メンバ装着凹部8dに沿わせて、白抜き矢印に示すように、押し上げる。
【0120】
この前側メンバ装着凹部8dの段差部に、前端部11a前端縁が、突き当たるか或いは、前記長孔状のボルト孔21cの後方側内縁が、前記ボルト部材12のネジ部12aに当接することにより、前記前端部11aの車両前方方向へのスライド移動は停止する。
【0121】
このため、図13に示すように、前記脆弱部20から、前記後端部21dの車両前方方向上側への屈曲が、白抜き矢印に示すように開始される。
【0122】
この際、前記前側のボルト孔11cと、後側のボルト孔11fとを結ぶ、入力軸直線F4は、前記一般部21aの中立軸である図芯G位置よりも、車両上方に位置しているので、図14に示すように、複数の屈曲点K3,K4を形成しながら、折れモーメントを発生させて、エネルギー吸収量を増大させることが出来る。
【0123】
また、この実施例2では、荷重入力が無い状態で、図11に示すように、前記ボルト孔21c,11f間を結ぶ入力軸F3が、一般部21aの図芯Gの車両上下方向で下方若しくは、近傍に存在しても、図12又は図13に示すように、車両後方からの荷重入力で、前記前端部11aが、前記前側メンバ装着凹部8dに沿わせて、白抜き矢印に示すように、押し上げられる。
【0124】
そして、図13に示すように、前記脆弱部20を起点とする後端部21dの車両前方方向への屈曲で、上方に、前記ボルト孔21c,11f間を結ぶ入力軸F3が、車両上下方向位置を、前記図芯Gよりも上方の入力軸F5位置まで、引き上げられる。
【0125】
このため、荷重入力が加わっていない通常の状態では、ボルト部材12及びナット部材13による前記メンバ部材21の前後端部固定位置を引き下げて、設定出来るので、空間効率を向上させて、レイアウトの自由度を増大させることができる。
【0126】
また、図11に示すように、前記メンバ部材21の上下方向厚さ寸法h3を減少させても、前記屈曲点K3,K4等の複数箇所で屈曲させることが出来、充分なエネルギー吸収量を確保出来るので、タイヤパン8上方の空間を増大させて、ラゲッジルーム3内のトランクスペースを有効に活用することが出来る。
【0127】
他の構成、及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例3】
【0128】
図15は、この発明の実施の形態の実施例3のジャッキ固定構造を示すものである。
【0129】
なお、前記実施の形態及び実施例1又は2と、同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0130】
まず、この実施例3のジャッキ固定構造の構成を、前記実施例1のジャッキ固定構造との相違点を中心に説明すると、この実施例3のジャッキ固定構造では、メンバ部材31の前後両端部31a,31dに形成された被装着面部31b,31eは、一般部31iの底面部対向面31gよりも、車両上下方向に一段高くなるように構成されている。
【0131】
このため、前記被装着面部31b,31e間を結ぶ入力軸直線F6が、中立軸である図芯G位置よりも、車両上方位置に設けられて、前記メンバ部材31の一般部31iのうち、図15に示す一般断面の入力軸直線F6よりも、前記底面部8bから離間した側の断面二次モーメントが、前記底面部8bに近接した側の断面二次モーメントよりも小さくなるように、設定されている。
【0132】
他の構成、及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1又は2と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例4】
【0133】
図16は、この発明の実施の形態の実施例4のジャッキ固定構造を示すものである。
【0134】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至3と、同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0135】
まず、この実施例4のジャッキ固定構造の構成を、前記実施例1のジャッキ固定構造との相違点を中心に説明すると、この実施例4では、前記メンバ部材11に相当するメンバ部材41のうち、車両前後方向に沿って延設される一般部41iには、車両前方に向けて、一直線状となるように、この一般断面と同一の逆ハット状の断面形状を呈する前端部41aからなる被装着面部41bが、形成されている。
【0136】
この被装着面部41bには、ボルト孔41cが開口形成されていて、前記内側辺8cに凹設形成された前側メンバ装着凹部8dの水平載置面に重合された状態で、ボルト部材12及びナット部材13によって、固定される。
【0137】
このため、車体側の前側メンバ装着凹部8dの角度は、この被装着面部41bの直線状形状と同様に、傾斜角度αが、α=0°となるように形成されている。
【0138】
また、このメンバ部材41の一般部41iと、後端部41dとの間には、上面側に、屈曲点K7が設けられていて、車両後方からの荷重入力により、被装着面部41eを屈曲変形させることにより、ボルト孔41fの位置を上方に向けて移動させるように構成されている。
【0139】
次に、この実施例4のジャッキ固定構造の作用効果について、説明する。
【0140】
このように構成されたこの実施例4のジャッキ固定構造では、前記実施の形態及び実施例1乃至3の作用効果に加えて、更に、車両後方からの荷重入力により、被装着面部41eが、屈曲点K7を起点として、屈曲変形されて、前記ボルト孔41fの位置を上方に向けて移動させる。
【0141】
このため、入力軸直線F7が、前記メンバ部材41の車両前側に形成された被装着面部41bの固定に用いられているボルト孔41cを回動中心として、更に、車両前方への傾斜角度β1を増大させながら、入力軸直線F7の上下方向位置を上方に向けて変更する。
【0142】
この際、ジャッキヘッド14aが当接しているエンボス部15よりも、車両後方側では、前方側よりも、早く、前記入力軸直線F7よりも上側の底面部8bから離れた方向の断面二次モーメントを、下側の底面部8bに近接した方向の断面二次モーメントよりも小さくすることが出来る。
【0143】
従って、このエンボス部15よりも、車両後方側で、被装着面部41eとの間の一般部41iでは、エンボス部15よりも車両前方側の一般部41iに比して、先に底面部8bへ向かう方向である、図中白抜き矢印に示す方向への屈曲変形を、屈曲点K8から開始して、遅れて、車両前方側の一般部41iが反対方向である車両上方へ図中白抜き矢印に示す方向へ、屈曲点K9から、屈曲変形を開始させることが出来る。
【0144】
このため、容易に、複数の屈曲点K7〜K9等を起点とする屈曲変形を容易に行わせることが出来る。
【0145】
他の構成、及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至3と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例5】
【0146】
図17は、この発明の実施の形態の実施例5のジャッキ固定構造を示すものである。
【0147】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至4と、同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0148】
まず、この実施例5のジャッキ固定構造の構成を、前記実施例1のジャッキ固定構造との相違点を中心に説明すると、この実施例5のジャッキ固定構造では、長手方向を車両前後方向へ沿わせた前記メンバ部材11に相当するメンバ部材51のうち、車両前後方向に沿って延設される逆ハット状の一般部51iの前,後端部51a,51bには、車両上方に向けて、角度α及び角度βで、各々傾斜する被装着面部51c及び51dが、形成されている。
【0149】
また、これらの被装着面部51c及び51dには、ボルト孔51e及び51fが、開口形成されていて、前記内側辺8c及び後側辺8aに設けられた前側メンバ装着凹部8d及び後側メンバ装着凹部9bの向かい合って傾斜する各斜面に重合された状態で、ボルト部材12及びナット部材13によって、固定されている。
【0150】
そして、この一般部51iの車幅方向左右側縁に位置する上縁部には、実施例1の左,右フランジ部11h,11h(図3参照)よりも、低い位置、具体的には、前記リヤフロアパネル6の上面よりも低い位置に、左,右対称となるように、水平方向へ一体に突設される左,右フランジ部51h,51hが、設けられている。
【0151】
このため、この実施例5のメンバ部材51の図芯Gは、図3に示すメンバ部材11と比較すると、車両上下方向で低い位置に設定されている。
【0152】
また、前記左,右フランジ部51h,51hの前後端部は、直線状の一般部51iのみに一体に設けられて、前記被装着面部51c及び51dの左,右両側縁には、存在せず、一般部51iと、車両前後両端部の被装着面部51c及び51dとの間に、脆弱部としての屈曲点K8,K9が形成されている。
【0153】
次に、この実施例5のジャッキ固定構造の作用効果について説明する。
【0154】
このように構成された実施例5記載のジャッキ固定構造では、前記実施の形態及び実施例1乃至4の作用効果に加えて、更に、前記リヤフロアパネル6の上面よりも低い位置に、左,右フランジ部51h,51hが設けられているので、前記被装着面部51c及び51dの傾斜角度α,βを大きく取らなくても、容易に図芯Gよりも、車両上下方向上方に、ボルト孔51e,51f間を結ぶ入力軸F8を位置させることができる。
【0155】
このため、前記入力軸直線F8よりも上側の底面部8bから離れた方向の断面二次モーメントを、下側の底面部8bに近接した方向の断面二次モーメントよりも小さく設定出来る。
【0156】
従って、前記メンバ部材51を更に、薄型化して、軽量化を図れると共に、ラゲッジルーム3内のスペース効率を、更に、向上させることができる。
【0157】
しかも、前記左,右フランジ部51h,51hの前後端部で、一般部51iと、被装着面部51c及び51dとの間の連結部分を、屈曲点K8,K9とすることが出来るので、更に、屈曲点を増大させて、吸収されるエネルギ量を増加させることにより、タイヤパン8等の分担するエネルギ量を相対的に減少させることが出来、リヤフロアパネル6等の厚みを減少させて、重量の増大を抑制出来る。
【0158】
他の構成、及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至4と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例6】
【0159】
図18は、この発明の実施の形態の実施例6のジャッキ固定構造を示すものである。
【0160】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至5と、同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0161】
まず、この実施例6のジャッキ固定構造の構成を、前記実施例1のジャッキ固定構造との相違点を中心に説明すると、この実施例6のジャッキ固定構造では、車両前後方向に、長手方向を沿わせて、メンバ部材61が、延設されている。
【0162】
このメンバ部材61は、一般部61iから、この一般部61iの前,後端部61a,61bに位置して、一体に延設される前,後側被装着面部61c,61dに至るまで、車両前後方向の全長に渡り、上縁としての左,右上縁フランジ部61h,61hが、車幅方向左,右両側縁から各々左,右水平方向へ突設されることにより、略同一の断面略逆ハット形状を呈するように構成されている。
【0163】
更に、この実施例6のメンバ部材61では、前記各前,後側被装着面部61c,61dの両側縁に位置する各左,右上縁フランジ部61h,61hに、ボルト孔61j,61j及びボルト孔61k,61kが、各一対づつ、合計4箇所開口形成されている。
【0164】
また、この実施例6では、車体62側の内側辺8cには、前記前側被装着面部61cを係止する段部8fには、前側左右方向位置規制部としての前側メンバ装着凹部8dが、凹設形成されている。
【0165】
この段部8fのうち、前側メンバ装着凹部8dの左,右両側縁部には、前記ボルト孔61j,61jに対応して、車体側のボルト孔69c,69cが開口形成されている。
【0166】
更に、この実施例6では、車体62側の後側辺8aのうち、前記後側被装着面部61dを係止する一外側辺としての後側辺8aの段部8gには、前側左右方向位置規制部としての後側メンバ装着凹部8hが、凹設形成されている。
【0167】
この段部8gのうち、後側メンバ装着凹部8hの左,右両側縁部には、前記ボルト孔61k,61kに対応して、車体側のボルト孔69d,69dが、左,右一対、開口形成されている。
【0168】
そして、前記被装着面部61c,61dを、各々前記前側メンバ装着凹部8d及び、後側メンバ装着凹部8hに係合させて、前記ボルト部材12…,及びナット部材13…を用いて、各々螺合させることにより、このメンバ部材61をタイヤパン8上面近傍に固定するように構成されている。
【0169】
次に、この実施例6のジャッキ固定構造の作用効果について、説明する。
【0170】
この実施例6のジャッキ固定構造では、前記メンバ部材61の車幅方向左,右両側縁から各々左,右水平方向へ突設される左,右上縁フランジ部61h,61hに、前記ボルト部材12…が、挿通されるボルト孔61k,61kが開口形成されている。
【0171】
このため、更に、容易に入力軸F9を、図芯Gよりも、更に、車両上方に位置させて、底面部8b方向に屈曲させ易くすることが出来る。
【0172】
しかも、ボルト部材12…の頭部12b…は、リヤフロアパネル6の上面部位置等、比較的車両上下方向で高い位置に設けられるので、螺合作業が容易で、前記メンバ部材61の装脱着作業性を、更に、良好なものとすることができる。
【0173】
他の構成、及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至5と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例7】
【0174】
図19は、この発明の実施の形態の実施例7のジャッキ固定構造を示すものである。
【0175】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至6と、同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0176】
まず、この実施例7のジャッキ固定構造の構成を、前記実施例1のジャッキ固定構造との相違点を中心に説明すると、この実施例7のジャッキ固定構造では、図1に示される実施例1の左,右側収納ボックス17,18に代えて、発泡スチロール製の左,右側収納ボックス77,78からなる左右分離型収納ボックス76が、設けられている。
【0177】
この各左,右側収納ボックス77,78には、各々下面側に、車幅方向に沿って、凹溝延設方向を有するジャッキ収納凹部77a,78aが、上方を凸とすることにより形成されている。
【0178】
このジャッキ収納凹部77a,78aは、これらの各左,右側収納ボックス77,78が、図1に示す実施例1の左,右側収納ボックス17,18のように、スペアタイヤ収納凹部7の開口部7aに係合されて、図示省略の前記メンバ部材11等と共に、この開口部7aが覆われる状態で、前記ジャッキ14との干渉が、防止されるように構成されている。
【0179】
また、これらの各左,右側収納ボックス77,78には、各々上面側に、前記ジャッキ収納凹部77a,78aの凸部の前,後側に各々前後側収納ボックス部77b,77c及び78b,78cが凹設形成されている。
【0180】
次に、この実施例7のジャッキ固定構造の作用効果に付いて、前記実施例1乃至6に記載された作用効果に加えて、更に、前後方向に沿って延設されたメンバ部材11による前記ジャッキ14の固定が、解除されても、前記左,右側収納ボックス17,18のジャッキ収納凹部77a,78a内に、前記ジャッキ14が、車両上方から覆われるように、位置している。
【0181】
このため、前記ジャッキ14装着後、容易に、前記ジャッキ収納凹部77a,78a内に、ジャッキ14が来るように位置合わせを行って、左,右側収納ボックス17,18を被せるように装着出来る。
【0182】
しかも、前記ジャッキ14が、車両上方から覆われるように、前記ジャッキ収納凹部77a,78a内で、車両前後方向から挟持されて、位置されている。
【0183】
このため、更に、前記ジャッキ14が、車両前後方向に移動する虞が減少して、前記ジャッキ14のスペアタイヤ収納凹部7内からの離脱を、容易に抑制できる。
【0184】
また、前記各左,右側収納ボックス77,78には、各々上面側に、前記ジャッキ収納凹部77a,78aの凸部の前後側に、各々凹設形成された前後側収納ボックス部77b,77c及び78b,78cが、凹設形成されて、用途別に小物入れとすることが出来、ラゲッジルーム3内の収納効率を良好なものとすることができる。
【0185】
他の構成、及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至6と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例8】
【0186】
図20及び図21は、この発明の実施の形態の実施例8のジャッキ固定構造を示すものである。
【0187】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至7と、同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0188】
まず、この実施例8のジャッキ固定構造の構成を、前記実施例1のジャッキ固定構造との相違点を中心に説明すると、この実施例8のジャッキ固定構造では、図1に示される実施例1の左右分離型収納ボックス16の左,右側収納ボックス17,18に代えて、左,右一体型の収納ボックス86が、設けられている。
【0189】
この収納ボックス86には、左,右各々下面側に、車幅方向に沿って、凹溝延設方向を有するジャッキ収納凹部86a,86aが、上側に凸条となるように、凹設形成されている。
【0190】
このジャッキ収納凹部86a,86a間の下面側には、鞍型のメンバ用凹部86dが、車両前後方向に沿って、凹設形成されている。
【0191】
そして、この収納ボックス86の上面部では、これらのメンバ用凹部86d及び前記各ジャッキ収納凹部86a,86aの凸条状の隆起によって、収納部が仕切られて、前,後側及び左,右側に分離された各々前後側収納ボックス部86b,86c及び86b,86cが、凹設形成されている。
【0192】
また、この実施例8のジャッキ固定構造では、前記収納ボックス86の上部開口周縁部には、水平係止フランジ部86eが、略全周に渡り、一体に凸設されている。
【0193】
この水平係止フランジ部86eは、前記スペアタイヤ収納凹部7の開口部7aの周縁に係止されて、前記収納ボックス86を、前記タイヤパン8内に係合装着するように構成されている。
【0194】
このように構成されたこの実施例8のジャッキ固定構造では、前記実施の形態及び実施例1乃至7の作用効果に加えて、更に、図21に示すように、前記収納ボックス86を、前記タイヤパン8内に降下させて、ラゲッジルーム3内空間上方から係合させる。
【0195】
この際、前記メンバ部材61が、前記メンバ用凹部86d内に収納されて、車幅方向の位置決めが行われると共に、前記ジャッキ収納凹部86a内に、前記ジャッキ14が、収納されて、車両前後方向の位置決めが行われる。
【0196】
そして、前記水平係止フランジ部86eが、前記スペアタイヤ収納凹部7の開口部7aの周縁に係止されて、前記収納ボックス86が、前記タイヤパン8内に位置するように装着される。
【0197】
従って、ワンタッチで、前記収納ボックス86の装脱着が行えて、前記収納ボックス86の車体に対する装脱着性が良好である。
【0198】
また、前記ジャッキ収納凹部86a内に、前記ジャッキ14が、収納されて、前記ジャッキ14の車両前後方向の位置決めが行われて、車両前後方向に角度が与えられてしまう、傾き等を防止することができる。
【0199】
このため、前記台座位置規制部10を省略、若しくは簡素化することもできる。
【0200】
他の構成、及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至7と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例9】
【0201】
図22及び図23は、この発明の実施の形態の実施例9のジャッキ固定構造を示すものである。
【0202】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至8と、同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0203】
まず、この実施例9のジャッキ固定構造の構成を、前記実施例1のジャッキ固定構造との相違点を中心に説明すると、この実施例9のジャッキ固定構造では、図1に示される実施例1の左,右側収納ボックス17,18に代えて、左,右一体型の収納ボックス96が、設けられている。
【0204】
この収納ボックス96の下面側には、鞍型のメンバ用凹部96aが、車両前後方向に凹溝延設方向を沿わせて、凹設形成されている。
【0205】
このメンバ用凹部96aは、前記メンバ部材11及びこのメンバ部材11の延設方向である車両前後方向Lに沿って、メンバ部材の下面側にジャッキ14が、装着された状態で、干渉を防止する為、上方を凸とする突状形状を呈して形成されている。
【0206】
そして、この収納ボックス96の上面部では、このメンバ用凹部96aの凸状隆起によって仕切られて、左,右側に分離された左,右収納ボックス部96b,96bが、各々凹設形成されている。
【0207】
また、この実施例9のジャッキ固定構造では、前記収納ボックス96の上部開口周縁部には、水平係止フランジ部96eが、略全周に渡り、一体に凸設されている。
【0208】
この水平係止フランジ部96eは、前記スペアタイヤ収納凹部7の開口部7aの周縁に係止されて、前記収納ボックス96を、前記タイヤパン8内に係合装着するように構成されている。
【0209】
このように構成されたこの実施例9のジャッキ固定構造では、前記実施の形態及び実施例1乃至8の作用効果に加えて、更に、図23に示すように、前記収納ボックス96を、前記タイヤパン8内に降下させて、ラゲッジルーム3内空間上方から係合させる。
【0210】
この収納ボックス86の上側で、車幅方向左,右側に区切られた左,右収納ボックス部96b,96bが、各々車両前後左右方向で、一体に連設されているので、収納空間の効率を良好なものとすることが出来る。
【0211】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0212】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例1乃至9を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0213】
即ち、前記実施の形態及び実施例1では、バン又はステーションワゴンタイプの自動車1のラゲッジルーム3に本発明を適用したものを用いて説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、乗用車タイプの自動車のトランクルームに適用してもよい。
【0214】
また、この実施の形態では、前記開口部4側に位置する後側辺近傍は、下方を凸とするタイヤ収納凹部としてのスペアタイヤ収納凹部7が、凹設形成されている車体2を用いて説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、左右何れか一方の外側辺や、前側の外側辺等の何れかの一外側辺で、荷重入力が発生する部分であれば、何れの箇所であっても良く、更に、上向きを凸とするタイヤ収納凹部で、車外側にタイヤ収納凹部を設けて、車外側にスペアタイヤを装着した構成であっても良く、スペアタイヤ収納凹部の少なくとも一外側辺と、該一外側辺に対向する内側辺との間に、メンバ部材を架設するものであれば良く、スペアタイヤ収納凹部7の板厚や凹凸形状、ビードの数量及び材質が、特に限定されるものではない。
【0215】
更に、前記メンバ部材11等は、断面略逆ハット型を呈して、ボルト部材12を挿通するボルト孔11c,11f等の形成位置によって、主に、前記入力軸直線F,F1〜F8の位置を図芯よりも、前記底面部8bから離間するように構成されているが、特にこれに限らず、メンバ部材の断面形状は、ハット型、台形、コの字状、門型等、どのような形状であっても良く、ボルト孔11c,11fが形成される傾斜面の有無及び傾斜角度、ボルト孔11c,11f等の形成位置や大きさ及び数量、形状、並びに、脆弱部20の有無及び形成位置等が、特に限定されるものではない。
【0216】
更に、前記実施の形態では、ジャッキ14の車両前後方向位置が、前記ジャッキヘッド14aが当接する部分の車両前後方向位置Jを、図7に示すように、前記ジャッキ14が装着されていない場合の屈曲点K位置近傍としていると共に、しかも、この屈曲点Kよりも、図8に示すように、車両前方方向に寸法L1、オフセットされて設定されているが、特にこれに限らず、前後側止め点としての前後のボルト部材12,12間で、前記スペアタイヤ収納凹部7の中央位置等、前記ジャッキ14が介装される前記底面部8bと、前記メンバ部材11の底面部対向面11gとの間に設けられているものであれば、どの部分であっても良く、ジャッキヘッド14aが当接されるエンボス部15や、下側前後位置規制部10の形状,数量及び材質についても、特に限定されるものではない。
【0217】
また、前記固定手段として、前記実施の形態等では、ボルト部材12…及びナット部材13…を用いているが、特にこれに限らず、ファスナ部材やクリップ部材等、メンバ部材11等を、車体2側に装脱着自在となるように固定するものであれば、どのようなものであってもよい。
【0218】
更に、変形モードについても、図9に示すように、屈曲点K1は、底面部8bから離間する方向へ、屈曲点K2は、底面部8bに近接する方向へ向けて、屈曲変形しているが、特にこれに限らず、例えば、脆弱部20を、前記メンバ部材11上に、複数形成する等により、2つ以上の屈曲点を各々底面部8b方向若しくは、底面部8bから離間する方向へ向けさせて、屈曲変形させたり、或いは、これらの逆向きの屈曲点を多数交互に配置する等、ジャッキ14の介装により、屈曲点の位置をコントロールすると共に、数量を増加させて、吸収されるエネルギ量を、増大させることが出来る構成であるならば、どのような変形モードであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】本発明の実施の形態のジャッキ固定構造で、ジャッキ装着状態で、収納ボックスを取り付ける様子を説明する分解斜視図である。
【図2】実施の形態のジャッキ固定構造で、全体の構成を説明する車両の後部のリヤハッチゲート付近の模式的な斜視図である。
【図3】実施の形態の実施例1のジャッキ固定構造で、長手方向を一部省略したメンバ部材の車両前後方向(図1中A−A線)に沿う、車幅方向略中央部での断面図である。
【図4】実施の形態の実施例1のジャッキ固定構造で、全体の構成を説明する車幅方向略中央部での断面図である。
【図5】実施の形態の実施例1のジャッキ固定構造で、メンバ部材を、車両後方方向から見た正面図である。
【図6】実施の形態の実施例1のジャッキ固定構造で、メンバ部材の一般部の一般断面形状を説明する縦断面図である。
【図7】実施の形態の実施例1のジャッキ固定構造で、比較の為に示すジャッキが装着されていない状態での車両後部から荷重入力が加わった様子を説明し、図4に相当する部分での模式的な断面図である。
【図8】実施の形態の実施例1のジャッキ固定構造で、ジャッキが装着された状態で、車両後部から荷重入力が加わった初期の様子を説明し、図4に相当する部分での模式的な断面図である。
【図9】実施の形態の実施例1のジャッキ固定構造で、ジャッキが装着された状態で、車両後部から荷重入力が加わった様子を説明し、図4に相当する部分での模式的な断面図である。
【図10】実施の形態の実施例2のジャッキ固定構造で、全体の構成を説明するラゲッジルームの床面部の斜視図である。
【図11】実施の形態の実施例2のジャッキ固定構造で、図10中B−B線に沿った位置での断面図である。
【図12】実施の形態の実施例2のジャッキ固定構造で、ジャッキが装着された状態で、車両後部から荷重入力が加わり、メンバ部材が、車両前方に向けてスライド移動する初期の様子を説明する図11に相当する部分での模式的な断面図である。
【図13】実施の形態の実施例2のジャッキ固定構造で、車両後部から荷重入力が加わって、メンバ部材が変形を開始した様子を説明し、図11に相当する部分での模式的な断面図である。
【図14】実施の形態の実施例2のジャッキ固定構造で、ジャッキが装着された状態で、車両後部からの荷重入力で、メンバ部材が変形する様子を説明し、図11に相当する部分での模式的な断面図である。
【図15】実施の形態の実施例3のジャッキ固定構造で、全体の構成を説明する図11に相当する部分での模式的な断面図である。
【図16】実施の形態の実施例4のジャッキ固定構造で、全体の構成を説明する図11に相当する部分での模式的な断面図である。
【図17】実施の形態の実施例5のジャッキ固定構造で、全体の構成を説明する図11に相当する部分での模式的な断面図である。
【図18】実施の形態の実施例6のジャッキ固定構造で、全体の構成を説明する図10中C−C線に沿った部分に相当する位置での模式的な断面図である。
【図19】実施の形態の実施例7のジャッキ固定構造で用いられる分離型収納ボックスの分解斜視図である。
【図20】実施の形態の実施例8のジャッキ固定構造で、一体型収納ボックスを取り付ける様子を説明する分解斜視図である。
【図21】実施の形態の実施例8のジャッキ固定構造で、図20中D−D線に沿った位置での断面図である。
【図22】実施の形態の実施例9のジャッキ固定構造で、一体型収納ボックスを取り付ける様子を説明する分解斜視図である。
【図23】実施の形態の実施例9のジャッキ固定構造で、図22中E−E線に沿った位置での断面図である。
【符号の説明】
【0220】
2 車体
3 ラゲッジルーム
6 リヤフロアパネル(フロアパネル)
7 スペアタイヤ収納凹部
8a 後側辺(一外側辺)
8c 内側辺
8d 前側メンバ装着凹部(前側左右方向位置規制部)
9b 後側メンバ装着凹部(後側左右方向位置規制部)
10 下側前後位置規制部(台座位置規制部)
11,21,31,41,51,61 メンバ部材
11i,21a,31i,41i,51i,61i 一般部
11b 被装着面部(前側傾斜面)
11e 被装着面部(後側傾斜面)
12… ボルト部材(前後側止め点及び固定手段)
13… ナット部材(前後側止め点及び固定手段)
14 ジャッキ
14a ジャッキヘッド
14b 台座部(ジャッキボトム)
15 エンボス部(ヘッド位置規制部)
16 左右分離型収納ボックス
17a,18a,77a,86a ジャッキ収納凹部
96a メンバ用凹部(ジャッキ収納凹部)
61h,61h 左,右上縁フランジ部(上縁フランジ部)
76,86,96 収納ボックス
K,K1〜K9 屈曲点
G 図芯(中立軸)
F,F1〜F9 入力軸
Z1,Z2 断面二次モーメント
L1 オフセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられたフロアパネルに、スペアタイヤ収納凹部を凹設形成して、該スペアタイヤ収納凹部の少なくとも一外側辺と、該一外側辺に対向する内側辺との間に、該スペアタイヤ収納凹部の底面部方向へ向けて、折れモーメントを発生させるメンバ部材を架設すると共に、該底面部と、前記メンバ部材の底面部対向面との間に、ジャッキを介装して装着することを特徴とするジャッキ固定構造。
【請求項2】
前記メンバ部材の長手方向を、車両前後方向に沿わせると共に、前記ジャッキの装着位置を、前記メンバ部材の前側に位置する前記車体への前側止め点と、該メンバ部材の後側に位置する前記車体への後側止め点との間で、しかも、前記スペアタイヤ収納凹部の中央位置に設けたことを特徴とする請求項1記載のジャッキ固定構造。
【請求項3】
前記前側止め点及び後側止め点は、前記メンバ部材を装脱着自在となるように固定する固定手段を有していることを特徴とする請求項2記載のジャッキ固定構造。
【請求項4】
前記ジャッキをジャッキアップさせた状態で装着することにより、前記底面部と、前記メンバ部材の底面部対向面との間にジャッキの反力を与えながら介装させることを特徴とする請求項1乃至3のうち、何れか一項記載のジャッキ固定構造。
【請求項5】
前記ジャッキのジャッキヘッドが、前記メンバ部材の底面部側面に当接する部分は、前記メンバ部材の底面部方向への屈曲点近傍に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のうち、何れか一項記載のジャッキ固定構造。
【請求項6】
前記ジャッキのジャッキヘッドが、前記メンバ部材の底面部側面に当接する部分は、前記ジャッキヘッドが装着されていない場合の前記メンバ部材の底面部方向への屈曲点近傍に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のうち、何れか一項記載のジャッキ固定構造。
【請求項7】
前記ジャッキのジャッキヘッドが、前記メンバ部材の底面部側面に当接する部分は、前記ジャッキヘッドが装着されていない場合の前記メンバ部材の底面部方向への屈曲点よりも、車両前後方向にオフセットされる事により、前記ジャッキヘッドが装着された場合の屈曲点を増大させることを特徴とする請求項1乃至6のうち、何れか一項記載のジャッキ固定構造。
【請求項8】
前記メンバ部材の底面部対向面には、前記ジャッキのジャッキヘッドの位置を規制するヘッド位置規制部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のうち、何れか一項記載のジャッキ固定構造。
【請求項9】
前記スペアタイヤ収納凹部の底面部には、前記ジャッキの台座部の位置を規制する台座位置規制部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のうち、何れか一項記載のジャッキ固定構造。
【請求項10】
前記メンバ部材の一側に位置する前側止め点と、該メンバ部材の他側に位置する後側止め点とを結ぶ直線が、前記メンバ部材の一般部の中立軸G位置よりも、前記底面部から離間した位置に設けられるように設定されていることを特徴とする請求項1乃至9のうち、何れか一項記載のジャッキ固定構造。
【請求項11】
前記メンバ部材の一般部の一般断面の中立軸G位置よりも、前記底面部から離間した側の断面二次モーメントが、前記底面部に近接した側の断面二次モーメントよりも小さくなるように、前記直線の位置が設定されていることを特徴とする請求項10記載のジャッキ固定構造。
【請求項12】
前記メンバ部材の一般部の一般断面の中立軸G位置よりも、前記底面部から離間した側に、前記前側に位置する前側止め点を有する前側傾斜面を設けると共に、前記後側に位置する後側止め点を有する後側傾斜面を設けて、これらの前,後側傾斜面を、該メンバ部材の長手方向中央に向けて形成させるように、構成されていることを特徴とする請求項1乃至11のうち、何れか一項記載のジャッキ固定構造。
【請求項13】
前記メンバ部材の一般部の一般断面の中立軸G位置よりも、前記底面部から離間した側に、前記前側に位置する前側止め点、或いは、前記一外側片に対するメンバ部材の後側に位置する後側止め点のうち、少なくとも何れか一方を、オフセットして設定することを特徴とする請求項1乃至12のうち、何れか一項記載のジャッキ固定構造。
【請求項14】
前記メンバ部材の一般部の一般断面の中立軸G位置よりも、前記底面部から離間した側に、前記前側に位置する前側止め点、又は、後側に位置する後側止め点のうち、少なくとも何れか一方を有する上縁が、形成されていることを特徴とする請求項1乃至13のうち、何れか一項記載のジャッキ固定構造。
【請求項15】
前記メンバ部材と共に、前記スペアタイヤ収納凹部の開口部を覆う収納ボックスが設けられていることを特徴とする請求項1乃至14のうち、何れか一項記載のジャッキ固定構造。
【請求項16】
前記収納ボックスには、スペアタイヤ収納凹部の開口部を、前記メンバ部材と共に、覆う状態で、前記ジャッキとの干渉を防止するジャッキ収納凹部を有することを特徴とする請求項15記載のジャッキ固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−58561(P2010−58561A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224014(P2008−224014)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】